| 【発明の名称】 |
抗菌剤・高分子複合物及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】田畑 泰彦
【氏名】米田 正始
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| 【要約】 |
【課題】局所に有効濃度の抗生物質を数週間にわたり徐放することにより、抗生物質の長期全身投与による影響を最低限にし、感染治癒、再発予防を図る。
【解決手段】抗菌剤含有水溶液と、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体含有有機溶液を混合し、ホモジェナイザー及び/又は超音波にて撹拌した後、凍結乾燥することより、抗菌剤と、これを保持する担体とからなる抗菌剤・高分子複合物において、担体が、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体であることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】抗菌剤と、これを保持する担体とからなるものにおいて、担体が、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体であることを特徴とする抗菌剤・高分子複合物。 【請求項2】抗菌剤/共重合体の重量比が1/20〜6/10である請求項1に記載の複合物。 【請求項3】前記抗菌剤がバンコマイシンである請求項1に記載の複合物。 【請求項4】前記共重合体がシート状に成形されたものである請求項1に記載の複合物。 【請求項5】前記ラクトン及び/又はラクタムがε−カプロラクトンである請求項1に記載の複合物。 【請求項6】請求項3に記載の複合物からなるMRSA縦隔洞炎治療剤。 【請求項7】抗菌剤含有水溶液と、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体含有有機溶液を混合し、粉砕及び/又は超音波撹拌した後、凍結乾燥することを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤・高分子複合物の製造方法。 【請求項8】抗菌剤微小粉末と、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体含有有機溶液を混合し、凍結乾燥することを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤・高分子複合物の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、抗菌剤と高分子との複合物に属し、特にMRSA縦隔洞炎治療剤として好適に利用される。 【0002】 【従来の技術】MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus/メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)縦隔洞(註:縦隔洞とは心臓の周囲や胸骨の裏側にあるスペース)炎と感染性心内膜炎、とりわけ再発症例は、技術革新、化学療法の進歩した現在の心臓外科領域においても、未だ難治性の疾患である。元来の治療法として、MRSA縦隔洞炎は、いわゆる解剖学的死腔(註:死腔とは血液などが行かない孤立した場所)に発生するため、外科的には大網(註:腹部にある血管を沢山持った網のような組織)、腹直筋充填、感染性心内膜炎特に弁輪膿瘍には外科的に感染弁に対しての弁置換、弁形成術を施行し、いずれの疾患に対しても再発予防のために、バンコマイシンなどの抗生物質を経口又は注射にて長期間全身投与する。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、感染による全身状態低下に加えて、重なる外科的侵襲と長期の抗生物質全身投与が多剤耐性菌(註:多くの抗生物質が効かない菌)の出現を起こし、また、死腔には血管が乏しく抗生物質が十分に作用しないため、依然として再発率は高い。従来から、心臓外科領域では、人工材料(人工弁、人工血管、各種動物心嚢膜、人工シートなど)を必要とすることが多く、こうした人工物(註:人工物には細菌に対する免疫・抵抗力は無い)が感染に対して弱いことも、治療をより困難なものとしている。 【0004】近年、他領域で、薬剤の有効性を向上すべく、局所での薬剤徐放システムの試みが一部で、検討されている。血管外科領域では人工血管感染に対して、抗生物質含有人工血管を開発しての再置換術の試みがなされたが、これは若干の改善を得られるのみで、原因としては非常に短時間の抗生物質徐放しか得られなかったためと考えられた。それ故、この発明の課題は、局所に有効濃度の抗生物質を数週間にわたり徐放することにより、抗生物質の長期全身投与による影響を最低限にし、感染治癒、再発予防を図ることにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】その課題を解決するために、この発明は、抗菌剤と、これを保持する担体とからなる抗菌剤・高分子複合物において、担体が、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体であることを特徴とする。 【0006】D,L-乳酸とε−カプロラクトンなどのラクトン及び/又はラクタムは生体内親和性高分子であり、その安全性は広く知られている。そして、乳酸とラクトン又はラクタムとの共重合体は、柔軟性があって体内に留置しやすく且つ薬剤の徐放性を有することが判明した。従って、この共重合体を担体として抗菌剤を保持させ、感染部位に留置することにより、抗菌剤が徐放し、治癒が促進され、また長期抗生物質投与による合併症が防止される。 【0007】抗菌剤/共重合体の好ましい重量比は、1/20〜6/10、特に好ましいのは1/10〜4/10である。バンコマイシンは薬剤耐性菌、特にMRSA縦隔洞炎に対しての抗菌効果は周知の如く認められている抗菌剤である。前記共重合体がシート状に成形されたものであると、成形が容易であって、しかも体内での留置性に優れるので、好ましい。 【0008】この発明の抗菌剤・高分子複合物を製造する適切な方法は、抗菌剤含有水溶液と、D,L-乳酸とラクトン及び/又はラクタムとの共重合体含有有機溶液を混合し、粉砕及び/又は超音波撹拌した後、凍結乾燥することを特徴とする。粉砕はホモジェナイザーのように同時に撹拌することができる機械を用いて行うのが好ましい。この特徴を備えれば、混合及び攪拌を経ることによって抗菌剤を共重合体マトリックス内に均一に分布させることができる。また、その抗菌剤の塊りのサイズが小さくなる。その結果、組織液や生理食塩水などが共重合体マトリックス内に混入してきた場合にも、その水により抗菌剤が少しずつ溶けだし、長期にわたって、抗菌剤を徐放することができる。尚、抗菌剤の微小粉砕物などの微小粉末を共重合体含有有機溶液に分散混合した後、凍結乾燥することによっても同様の効果が得られる。 【0009】 【発明の実施の形態】前記ラクトン及び/又はラクタムとしては、ε−カプロラクトンの他に、グリコリド、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ラクチド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム及びω−ラクタムが挙げられる。 【0010】 【実施例】−実施例1−[1]抗菌剤・高分子複合物からなるシートの構成と作製方法この実施例のバンコマイシン徐放シート(以下、VMシート)は、D,L-乳酸とε−カプロラクトンの共重合体(P(L-LA-CO-CL)、50:50、分子量300000)を6.2mg/sheet、バンコマイシンを0.9mg/ sheetの含有で構成されている。作成方法は以下の通りである。 【0011】D,L-乳酸とε−カプロラクトンの共重合体を有機溶媒のジオキサンで十分に溶解し、予めバンコマイシンを蒸留水で溶解した溶液を混ぜて簡易攪拌器、ホモジェナイザー、超音波攪拌器の3工程で、均一に混じりあうように十分な攪拌を行った。でき上がった混合溶液を容器に移して、液体窒素で瞬時に凍結し、続いて2日間持続乾燥した後、切り出すことによって厚さ約3mm、平面サイズ10×5mmのバンコマイシン徐放シートを得た。 【0012】[2]バンコマイシン徐放試験先ず、上記で作成したVMシートのin vitroにおける2週間徐放を検討した。生理食塩水10mlの入った試験管内にVMシートを入れ、2週間37℃に維持し、溶出液中のバンコマイシン濃度測定を、bioassay法(B.subtilis ATCC 6633を用いた)により、開始後1,2,3,4,7,10,14日目の7回行った。濃度は、MRSAの抗菌力最小阻止濃度(MIC値)3.13μg/mlを最低基準とした。同一条件で5回の徐放試験を行った結果を表1に示す。 【0013】 【表1】
その結果、表1に見られるように、7回の測定すべてで基準値以上を得られ、徐放に成功した。 【0014】次に、作成したVMシートのin vivoにおける徐放を検討した。ラットの背部皮下にVMシートを埋め込み、開始0.5,1,2,3,5,7日目にシート周辺の組織を摘出し、bioassay法で濃度測定を行った。同一条件で6回の徐放試験を行った結果を表2に示す。 【0015】 【表2】
In vitroにおける試験と同様、すべてで基準値以上のバンコマイシン濃度を測定でき、in vivoにおいての局所徐放を確立しえた。 【0016】[3]バンコマイシン徐放シートの抗菌力試験これは、VMシートの抗菌力を評価したものである。In vivoでの徐放試験と同様にラットの背部皮下に各々VMシートを埋め込み、その後2日目にラットの同部位にMRSA(103CFU/abscessの菌量)を注入して感染成立させ、24時間後の菌量の変化を検討した。菌注入は皮下膿瘍という感染を惹起させるための担体(abscess-promoting agent)として直径約60〜80μmのデキストラン微小球(dextran- based microcarrier beads)を用いたマイクロキャリアー法により行った。 【0017】実験は、対照(無処置)群(A群)、VMシート埋め込み群(B群)、バンコマイシン溶液10mg皮下注群(C群)で比較し、結果はA群5.64±0.6:B群4.05±0.59:C群4.55±0.27 log of CFU/ abscessとB群が有意に菌量を抑えた(P<0.05)。各群の検体数は6とした。 【0018】また、MRSA注入量を104CFU/abscessの菌量とし、注入日を14日目とする以外は上記と同様に別のラットに感染成立させ、菌量の変化を検討した。その結果、A群6.04±0.25:B群5.09±0.47:C群6.33±0.61 log of CFU/ abscessとB群が有意に菌量を抑えた(P<0.05)。これら2日目と14日目の各群の菌量を各々図1及び図2に示す。 【0019】−実施例2−これは、バンコマイシン徐放シートの適正なバンコマイシン含有量を評価した例である。実施例1のVMシート作製法において、共重合体溶液とバンコマイシン水溶液との混合比を変えて種々のバンコマイシン含有量のVMシートを作製し、実施例1と同一条件でin vitroでの徐放試験を行った。測定結果を表3に示す。尚、共重合体の量はいずれも6.2mgで一定である。 【0020】 【表3】
表3に見られるように、1シート当たりのバンコマイシン含有量が1.91mgのものが最も徐放性に優れていた。以上の結果から、この実施例のバンコマイシン徐放シートは生体内局所でのバンコマイシンの有効な徐放を得られ、且つその抗菌力も十分に得られたことを示した。本材料はMRSA感染症という難治性感染症に対して有効である。 【0021】 【発明の効果】以上の通り、この発明の抗菌剤・高分子複合物は、抗菌剤の徐放性に優れているので、有益である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】599029420 【氏名又は名称】田畑 泰彦 【識別番号】500348664 【氏名又は名称】米田 正始
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| 【出願日】 |
平成13年11月22日(2001.11.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100098969 【弁理士】 【氏名又は名称】矢野 正行
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| 【公開番号】 |
特開2003−155404(P2003−155404A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月30日(2003.5.30) |
| 【出願番号】 |
特願2001−357328(P2001−357328) |
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