トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 保護コロイドで安定化された乳化剤不含の水性分散液の製造方法およびその使用
【発明者】 【氏名】ダヴィデ ブリッツォラーラ

【要約】 【課題】有機溶剤を使用しながらの粘性率の調節を克服し、低コストであってかつ小さい平均粒径の調節を可能にし、かつ変換率が99%を上回るまでの重合を可能にする、乳化剤不含の、保護コロイドで安定化されたスチロール/ブタジエンコポリマーの水性分散液の製造方法を提供する。

【解決手段】モノマー100%に対して変換率が60〜80%である場合、油溶性調節剤0.01〜0.4質量%を反応容器中に添加し、かつモノマー100%に対して変換率が80〜95%である場合、再度油溶性調節剤0.01〜0.4質量%を添加することを特徴とする、ビニル芳香族化合物および1,3−ジエンから選択された少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された乳化剤不含の水性分散液の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビニル芳香族化合物および1,3−ジエンから選択された少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された乳化剤不含の水性分散液を、助剤の存在で、場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の他のコモノマーの存在で製造する方法において、モノマー100%に対して変換率が60〜80%である場合、油溶性調節剤0.01〜0.4質量%を反応容器中に添加し、かつモノマー100%に対して変換率が80〜95%である場合、再度油溶性調節剤0.01〜0.4質量%を添加することを特徴とする、保護コロイドで安定化された乳化剤不含の水性分散液の製造方法。
【請求項2】 ビニル芳香族化合物として、スチロールおよび/またはメチルスチロールを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】 1,3−ジエンとして、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】 保護コロイド、開始剤、活性剤、pH値調節剤、分子量調節剤から選択された助剤を使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】 保護コロイドとして、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、改質された澱粉、デキストリン、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチロール−b−ポリエチレンオキシド−ブロックコポリマーまたはポリメタクリレート−b−ポリエチレンオキシド−ブロックコポリマーまたはカゼインを単独かまたは混合して使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】 開始剤として、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ナトリウムペルオキソジスルフェート、カリウムペルオキソジスルフェートまたはアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾ化合物を単独かまたは混合して使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】 pH値調節剤として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリカリウムホスフェート、エチレンジアミンテトラアセテートまたはニトリロトリ酢酸を単独かまたは混合して使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】 分子量調節剤として、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステルおよび/またはトリエタノールアミンを単独かまたは混合して使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】 ヒドロキシ(C〜Cアルキル)(メタ)アクリル酸エステル、エチレン系不飽和モノカルボン酸およびエチレン系不飽和ジカルボン酸、エチレン系不飽和カルボン酸アミドおよびエチレン系不飽和カルボン酸ニトリル、フマル酸のモノエステルおよびフマル酸のジエステル、またはマレイン酸のモノエステルおよびマレイン酸のジエステル、エチレン系不飽和スルホン酸もしくはエチレン系不飽和スルホン酸の塩、前架橋するコモノマー、後架橋するコモノマー、エポキシ官能性コモノマーおよびケイ素官能性コモノマーから選択されたコモノマーを単独かまたは混合して使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】 コモノマーとして、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ(2−エチルヘキシル)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、フマル酸のジエチルエステルおよび/またはフマル酸のジイソプロピルエステルおよびマレイン酸のジエチルエステルおよび/またはマレイン酸のジイソプロピルエステル、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアクリルアミドのエステルまたはN−メチロールメタクリルアミドのエステル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シランおよびメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシランを単独かまたは混合して使用し、その際、アルコキシ基は例えばエトキシ基およびエトキシプロピレングリコールエーテル基であってよい、請求項9項記載の方法。
【請求項11】 重合温度が30〜90℃である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】 水に対する固体の割合を、完成分散液の固体含量に相応して30〜70質量%に調節する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】 全保護コロイド量を装入し、かつモノマーおよび助剤を重合の間に供給する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】 再分散可能な粉末を製造するための、請求項1から13までのいずれか1項の記載に従って製造された分散液の使用。
【請求項15】 接着剤組成物、パテ、モルタル、プラスター、石膏建材および分散塗料を製造するための、請求項1から13までのいずれか1項の記載に従って製造された分散液の使用。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の対象は、保護コロイドで安定化された水性分散液の製造方法である。
【0002】本発明は、保護コロイドで安定化された水性分散液の製造方法およびその使用に関する。
【0003】
【従来の技術】疎水性モノマー、例えば極性スチロールまたはブタジエンを含有し、極性の保護コロイド、例えばPVAまたはヒドロキシエチルセルロース(HEC)で安定化されている分散液は製造が困難である。それというのも該分散液は非常に粘性が高いからである(米国特許4670505第号明細書)。それゆえ、上記コポリマーは通常有効なイオン性の乳化剤および有効な非イオン性の乳化剤により安定化され、それにより粘性率は処理中に低下する。保護コロイドは分散液に乳化剤とは別のレオロジー特性および粘着特性を付与し、この場合この乳化剤はさらに分散液の耐水性を劣化させる。
【0004】保護コロイドで安定化された分散液は、噴霧乾燥により乾燥され、水硬性系中での良好な加工性および機械的性質の改善を生じる、再分散可能な粉末へと処理されることができる。そのような再分散可能な粉末は、多量に建築の用途へ使用される。従来、極性モノマー、例えばビニルアセテート、塩化ビニルをベースとする粉末、またはビニルアセテート−エチレンコポリマー、ビニルアセテート−ベオバ(Veova)コポリマーが殆ど専ら製造されている。より高い極性に基づき、極性保護コロイドを用いた重合には問題がなく、かつ疎水性モノマー、例えばスチロールまたは1,3−ブタジエンとは比較できない。
【0005】疎水性モノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された分散液の重要な性質、および該分散液を再分散可能な粉末にまで噴霧乾燥する方法に基づき、ビニル芳香族化合物および1,3−ジエンをベースとする、保護コロイドで安定化された分散液の製造方法は経済的に非常に重要である。
【0006】ビニル芳香族化合物および1,3−ジエンをベースとする、乳化剤で安定化された分散液を、水蒸気蒸留により残留モノマーおよび易揮発性の随伴物質から分離することは公知技術水準である。この場合、残留モノマー含量は重合の終わりには1%を下回る。疎水性モノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された分散液のための本発明による製造方法は、低い処理粘性率を有するだけでなく、99%を上回る最終変換率の目的を達成する。このことは経済的に非常に重要であり、それというのも残留モノマーの量が多ければ多いほど、この場合に生じる、環境的に負荷でありかつ廃棄物処理の際のコストの要因となる廃水の量も増加するからである。
【0007】疎水性コポリマー、例えばスチロール−アクリレートまたはスチロール−ブタジエンをベースとする、保護コロイドで安定化された分散液のための多数の製造方法は公知であり、上記の公知方法では粘性率を処理中に制御することができるが、しかし方法の点で欠点を有している。
【0008】ビニルアセテート含量を50%未満含有するビニルアセテート−(メタ)アクリレート分散液の粘性率は、PVAまたはHECを保護コロイドとして使用しながら、安定化助剤、例えばアリルアルコール(米国特許第4670505号明細書)、プロパノールまたはエチレングリコール(英国特許第1278813号明細書)により軽減されることができる。欧州特許出願公開第013478号明細書においては、粘性率は水に混合可能な有機化合物、例えばメタノールおよびエタノールにより軽減される。揮発性有機化合物は、重合の後に除去されねばならない。
【0009】欧州特許出願公開第538571号明細書においては、50質量%を上回るスチロール含分および/またはC〜Cアルキル(メタ)アクリレートを含有する分散液の粘性率を調節するために全保護コロイド量が装入され、かつ酸性過酸化物およびレドックス系からなる混合された開始剤系が使用されるか、もしくは酸性過酸化物かまたはレドックス系が単独で使用される。さらに、粘性率はトリエタノールアミンを粘性率調節化合物として使用することにより低下されることができる。
【0010】欧州特許出願公開第821016号明細書および欧州特許出願公開第723975号明細書には、既に重合の間に架橋することができる極性コモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートが、スチロールアクリレートと部分的に鹸化されたポリビニルアセテートとの重合の際に、保護コロイドとして粘性率を調節する作用を有することが指摘されている。スチロール−ブタジエンコポリマーの重合は成功しない。
【0011】国際特許出願公表第99/16794号明細書には、表面張力が相互に異なる保護コロイドの混合物を使用することにより、立体的に安定化されたスチロール−ブタジエンコポリマーの分散液が製造可能であることが記載されており、該分散液は噴霧乾燥されてセメント安定性の再分散可能な粉末に処理されることができる。2%水溶液として40mN/mを上回る表面張力を有する保護コロイドもあれば、2%水溶液として40mN/mを下回る表面張力を有する保護コロイドもある。上記のように製造されたスチロール−ブタジエン分散液は、単に47.0%の固体含量を有するに過ぎず、これは93.6%の変換率に相応する。基礎となる例の配合によれば、100%の変換率の場合には理論的な固体含量は50.2%であるべきであった。上記方法の場合はさらに、2種の異なる保護コロイドからの混合物が使用されねばならないことが欠点である。
【0012】噴霧乾燥されて再分散可能な粉末に処理されることができる、スチロール−ブタジエンコポリマーの立体的に安定化された分散液の製造は、国際特許出願公表第99/28360号明細書においては、保護コロイドが部分的に装入され、かつ部分的に計量供給されることにより、1種類の保護コロイドを使用するだけで成功している。上記の方法の場合の欠点は、分散液の約2.5μm〜4.5μmの非常に大きい粒径にある。経験によれば、上記の(明らかに1μmを上回る)粒径を有する分散液は貯蔵安定性でない。モノマーの一部は装入され、かつ部分的に計量供給されなければならない。全モノマーが重合の間に添加された場合、重合の変換率は完全ではない。
【0013】国際特許出願公表第97/15603号明細書においては、メルカプトシランを用い、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールを用いて、ブタジエンを含有し、保護コロイドで安定化された分散液が製造される。上記方法の欠点は、メルカプトシランへの限定およびシランのための高いコストにある。
【0014】
【特許文献1】米国特許4670505第号明細書【特許文献2】英国特許第1278813号明細書【特許文献3】欧州特許出願公開第013478号明細書【特許文献4】欧州特許出願公開第538571号明細書【特許文献5】欧州特許出願公開第821016号明細書【特許文献6】欧州特許出願公開第723975号明細書【特許文献7】国際特許出願公表第99/16794号明細書【特許文献8】国際特許出願公表第99/28360号明細書【特許文献9】国際特許出願公表第97/15603号明細書【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、保護コロイドで安定化された、スチロール/ブタジエンコポリマーの乳化剤不含の水性分散液の製造方法を提供することであった。この場合、該製造方法は公知技術水準の記載された欠点、殊に有機溶剤を使用しながらの粘性率の調節を克服し、コストの高い製造すべき保護コロイドまたはメルカプトシランを必要とせず、かつ1000nmの安定なコロイドの寸法を下回る平均粒径の調節を可能にし、かつ変換率が99%を上回るまでの重合を可能にし、かつ良好に再分散可能なプラスチック粉末を分散液の乾燥により製造する方法である。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の対象は、ビニル芳香族化合物および1,3−ジエンから選択された少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された乳化剤不含の水性分散液を、助剤の存在で、場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の他のコモノマーの存在で製造する方法であり、該製造方法はモノマー100%に対して変換率が60〜80%である場合、油溶性調節剤0.01〜0.4質量%が反応容器中に添加され、かつモノマー100%に対して変換率が80〜95%である場合、再度油溶性調節剤0.01〜0.4質量%が添加されることにより特徴付けられる。
【0017】適当なビニル芳香族化合物はスチロールおよびメチルスチロールであり、その際スチロールが好ましい。
【0018】1,3−ジエンのための例は、1,3−ブタジエンおよびイソプレンであり、その際1,3−ブタジエンが好ましい。
【0019】該当するコモノマーは、ヒドロキシ(C〜Cアルキル)(メタ)アクリル酸エステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ(2−エチルヘキシル)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート;エチレン系不飽和モノカルボン酸およびエチレン系不飽和ジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸;エチレン系不飽和カルボン酸アミドおよびエチレン系不飽和カルボン酸ニトリル、好ましくはアクリルアミドおよびアクリロニトリル;フマル酸のモノエステルおよびフマル酸のジエステル、およびマレイン酸のモノエステルおよびマレイン酸のジエステル、例えばジエチルエステルおよびジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸、エチレン系不飽和スルホン酸またはエチレン系不飽和スルホン酸塩、好ましくはビニルスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。他の例は、前架橋するコモノマー、例えば多重エチレン系不飽和コモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレートまたは後架橋するコモノマー、例えばN−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)またはN−メチロールアクリルアミドのエステルまたはN−メチロールメタクリルアミドのエステルである。エポキシ官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートも適当である。他の例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シランおよびメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシランおよびビニルメチルジアルコキシシランであり、その際アルコキシ基は、例えばエトキシ基およびエトキシプロピレングリコールエーテル基であってよい。好ましい実施態様においては、供給管中の全モノマーは重合の間に反応装置中に入れられるが、しかし部分的に装入され、計量供給されてもよい。
【0020】一般に、保護コロイド、開始剤、活性剤、pH値調節剤、分子量調節剤から選択された助剤が使用される。
【0021】使用可能な保護コロイドのための例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、改質された澱粉およびデキストリン、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチロール−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはポリメタクリレート−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーおよびカゼインである。有利に、200〜2000の重合度および74〜99.5%の加水分解度を有するポリビニルアルコールが、モノマー100部に対して1〜20部の量で使用される。保護コロイドまたは保護コロイド混合物が装入されるが、しかし受け器と供給管との間で分配されてもよいし、または重合の間だけ供給管中に添加されてもよい。
【0022】ラジカル開始剤は、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ナトリウムペルオキソジスルフェート、カリウムペルオキソジスルフェートまたはアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾ化合物の個々のものかまたは組み合わせたものである。本発明の好ましい実施態様においては、水溶性ナトリウムペルオキソジスルフェートはt−ブチルヒドロペルオキシドと組み合わされて、全モノマーに対して0.01〜2質量%の全量で装入される。活性剤としては、水溶性還元剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムまたは亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートまたはアスコルビン酸が作用する。有利に、活性剤は全モノマーに対して0.01〜2質量%の量で、重合の間に計量供給される。
【0023】pH値を重合の間に調節するために、1つまたは複数の緩衝液、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリカリウムホスフェート、エチレンジアミンテトラアセテートまたはニトリロトリ酢酸が使用される。第3級アミンは補助のために使用されてよい。
【0024】分子量を制御するために、重合の間に調節剤が使用されてもよい。該調節剤は、全モノマーに対して0.1〜3質量%の量で使用される。分子量調節剤は装入されて添加されるかまたは部分的に装入されて部分的に添加されることができる。例えば上記のような物質は、メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステルまたはt−アミン、例えばトリエタノールアミンである。
【0025】モノマー100%に対して変換率が60%〜80%および80%〜95%である場合、添加のために適当な油溶性調節剤は、メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸またはメルカプトプロピオン酸メチルエステルである。調節剤は1回で添加されてもよいし、またはある期間に連続的に行われてもよく、この場合変換率はモノマー100%に対して60%〜80%または80%〜95%である。
【0026】重合温度は30℃〜90℃、好ましくは60℃〜85℃である。
【0027】重合は有利に、全保護コロイド量が装入され、モノマーおよび別の成分が重合の間に添加される、というように実施される。しかし、保護コロイドおよびモノマーが部分的に装入されて部分的に添加されてもよいし、または保護コロイドおよびモノマーが完全に装入されてもよい。
【0028】完成分散液の固体含量は30〜70%、有利に40〜60%である。
【0029】モノマーの添加が終了した後、公知方法で後開始により、重合は残留モノマー含量が低くなるまで更に進行されることができる。
【0030】該ポリマーは、−40〜+100℃、有利に−20〜+50℃のガラス転移温度を有する。コポリマーの組成は、前記のガラス遷移温度が達成されるように選択される。この場合、コモノマーの含量が考慮されるべきである。TgはFOX式を用いて近似値的に予め算出されることができる。FOX T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)によれば、1/Tg=x1/Tg1+X2/Tg2+・・・xn/Tgnが当てはまり、ここでxnはモノマーnの質量分数(質量%/100)を表し、かつTgnはモノマーnのホモポリマーのケルビン度におけるガラス転移温度である。ホモポリマーのためのTg値は、Polymer Handbook 2end Edition,J.Wiley&Sons,New York(1975)に記載されている。ポリマーのガラス転移温度Tgは、公知方法で示差走査熱量法(DSC)により確認されることができる。
【0031】本発明による分散液及びそれから製造された粉末は、接着剤組成物、例えば流動接着剤、パテ、モルタル、例えばセメントモルタル、石灰モルタル、乾燥モルタル、プラスターおよび石膏建材並びに分散塗料を製造するために適当である。
【0032】以下の例により、本発明をさらに詳説する。
【0033】
【実施例】変換率の測定実験室の反応器からプローブを1時間ごとに採取し、該プローブから固体含量を重量的に測定した。エクセル(EXCEL)を用いて、使用されたモノマーの全量に対する変換率を算出した。
【0034】分散液の噴霧乾燥分散液を、分散固体100部に対して(約20%水溶液として)PVA10部と混合し、固体含量を35%に調節した。ラテックスを噴霧乾燥装置中で空気並流で乾燥させた。抗ブロック剤としてタルク−ドロマイト混合物(1:1)を(固体含量に対して)10%使用し、この混合物を乾燥の間にフィードに並行して供給した。
【0035】超音波処理を行うかまたは行うことなく水中で再分散した後の粒径粉末を水中に分散させ、かつ0.1%の濃度に希釈した。粒径分布を、マルベルン社(Fa.Malvern)のミクロトラック(Microtrac)X−100を用いて900秒の超音波処理の前および後に測定した。
【0036】例1:翼型攪拌機およびジャケット温度調節装置を備えた5リットルの圧力オートクレーブ中に、水398.7g、18.7%PVA水溶液(加水分解度約87%)361g、EDTA1.35g、t−ドデシルメルカプタン2.7gおよびトリエタノールアミン2.7gを装入し、75℃に加熱した。反応器内部温度が一定に保たれた後、ナトリウムペルオキソジスルフェート1.35gおよびt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)11.57gを1回で添加する。それと並行して、3.6質量%PVA溶液379.8gを1時間以内に添加する。ナトリウムペルオキソジスルフェートおよびt−ブチルヒドロペルオキシドを添加した5分後に、スチロール796.5g、ブタジエン459g、ヒドロキシエチルメタクリレート94.5gおよびt−ドデシルメルカプタン5.4gを5時間で反応器中に供給する。モノマーおよびt−ドデシルメルカプタンを添加し始めてから4時間後に、3.6質量%PVA溶液379.8gを1時間以内に反応器中に供給する。それと並行して、2.24質量%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液369.1gを6時間以内に添加する。モノマーの計量供給が終了した後、t−ブチルヒドロペルオキシド(70質量%)2.7gおよびt−ドデシルメルカプタン2.7gを1回で添加する。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液の添加が終了した後、温度を5分以内に75℃から70℃に低下させる。モノマーの添加が終了した2時間後に、再度t−ドデシルメルカプタン2.7gを1回で添加する。変換率はこの時点でモノマー100%に対して82%である。11時間の全所用時間の後に、バッチを室温に冷却し、ジエチルアミンを用いて反応を停止させる。
【0037】変換率100%の場合には、固体含量は45%であるはずであった。しかしながらプローブを1時間ごとに変換率の測定のために採取したため、該固体はモノマーの系から取り出され、それにより固体含量はわずか44.3%である。分散液の残留スチロール含量は0.175%(GC−ヘッドスペース測定)であり、これは99%を上回る変換率に相応する。残留スチロールおよび別の随伴物質を除去するため、バッチを24時間開放した容器中で65℃で攪拌した。引き続きバッチは49.9%の固体含量で、1050mPas(剪断速度99 1/s)のレオメート(Rheomat)粘性率、261nmの粒径および7.0のpH値を有していた。
【0038】分散液を噴霧乾燥により乾燥し、良好な再分散性を有する粉末にまで処理した。該粉末は水中で即座にD50が32.01μmの平均粒径で溶解し、かつ超音波処理の900秒後にはD50が10.45μmの平均粒径で溶解する。
【0039】比較例1バッチを例1と同様に製造したが、モノマーの添加が終了した2時間後の、t−ドデシルメルカプタンの2回目の添加は、モノマー100%に対して変換率が80%を上回る場合には行わなかった。バッチは固体含量が44.7%である場合に0.31%の残留スチロール含量を有しており、これは固体含量が理論上の45%である場合、99.3%の変換率に相応する。本試験の場合、変換率の測定のためのプローブの採取は行わなかった。バッチを上記記載のように残留スチロールおよび揮発性の随伴物質から分離し、かつ50.4%の固体含量に濃縮した。粘性率は非常に高かったため、測定不可能であった。
【0040】比較例2バッチを比較例1と同様に製造したが、モノマーの添加が終了した後のt−ドデシルの添加は、モノマー100%に対して変換率が60%を上回る場合には行わなかった。開始剤であるt−ブチルヒドロペルオキシドおよびナトリウムペルオキソジスルフェートを添加することにより重合を開始した8時間後に、バッチは凝集している。これを8時間での急激な攪拌機の停止により確認した。
【0041】例1からの本発明による製造方法は、疎水性モノマー、例えばビニル芳香族化合物および1,3−ジエンの保護コロイドで安定化された重合を、最終変換率が99%を上回るまで可能にする。モノマーのほぼ完全な変換は、経済的な利点を有する。1質量%を下回る残留スチロール含量は、乳化剤で安定化されたカルボキシル化されたスチロール−ブタジエン分散液の場合には公知技術水準である値である。比較例2および3は、疎水性モノマーの保護コロイドで安定化された重合の際のより高い最終変換率は、粘性率の危機的な上昇を招くことを示す。油溶性調節剤を重合の最終時に添加して初めて、高い最終変換率および低い処理粘性率が可能になる。本発明による分散液から製造された粉末は、良好な再分散可能性を有しており、かつ水硬性系中で加工性および機械的性質を改善するために使用するのに適当である。
【出願人】 【識別番号】398054443
【氏名又は名称】ポリマー ラテックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Polymer Lafex GmbH & Co.KG
【出願日】 平成15年2月18日(2003.2.18)
【代理人】 【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄 (外4名)
【公開番号】 特開2003−306505(P2003−306505A)
【公開日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願番号】 特願2003−39853(P2003−39853)