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【発明の名称】 ジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法
【発明者】 【氏名】古本 勝三
【住所又は居所】千葉県市原市五井南海岸12−54 日本曹達株式会社機能製品研究所内

【要約】 【課題】所定量のチオ炭酸塩を含有するジチオカルバミン酸塩水溶液を得ることができ、反応生成物を重金属固定剤として使用したとき、二硫化炭素ガスの発生を防止すると共に、重金属固定処理時においても、アミン臭の発生を抑制することができるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液を得る。

【解決手段】ジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液を製造するにあたり、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物、金属水酸化物、二硫化炭素を、水溶媒中で、水溶液反応させる際に、水溶液の吸光度を指標として反応水溶液中のチオ炭酸塩の生成量を制御下に反応させ、例えば、波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトルの吸光度が0.05〜0.40の範囲で進行するように反応させ、反応生成物からの二硫化炭素及びアミノ基を有する化合物の発生を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第一級又は第二級アミノ基を有する化合物、金属水酸化物及び二硫化炭素を、水溶媒中で反応させる際に、水溶液の吸光度を指標として反応水溶液中のチオ炭酸塩の生成量を制御下に反応させ、得られたジチオカルバミン酸塩の使用時における二硫化炭素及びアミンの臭気を抑制することを特徴とするジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法。
【請求項2】 チオ炭酸塩の生成量が0.03〜0.20重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法。
【請求項3】 波長500nmにおける水溶液の紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を0.05〜0.40の範囲とすることを特徴とする請求項1又は2記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法。
【請求項4】 第一級又は第二級アミノ基を有する化合物に対して、二硫化炭素を0.02〜0.20モル%過剰に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法。
【請求項5】 第一級又は第二級アミノ基を有する化合物が、ジエチルアミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか記載の製造方法により得られるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液。
【請求項7】 請求項6記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液を主成分とすることを特徴とする重金属固定剤。
【請求項8】 チオ炭酸塩を0.03〜0.20重量%含有することを特徴とするジチオカルバミン酸塩含有水溶液。
【請求項9】 波長500nmにおける水溶液の紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を0.05〜0.40の範囲とすることを特徴とするジチオカルバミン酸塩含有水溶液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶液からのアミンの発生が抑制されたジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液やその製造方法、その水溶液を用いた重金属固定剤に関し、特に、得られた水溶液の保存中のみならず、重金属の固定処理時にも、二硫化炭素及びアミンの発生を抑制し、アミンの発生に伴うアミン臭の発生を抑制でき、作業性を向上させることができる水溶液やその製造方法、重金属固定剤に関する。
【0002】
【従来の技術】工場排水や、都市ゴミや産業廃棄物等の焼却プラントから排出される焼却灰や、排煙中から電気集塵機等で捕集された飛灰や、重金属汚染土壌等を処理するに際し、焼却灰や、飛灰等に含有される鉛、クロム、カドミウム、砒素、セレン等の有害な重金属の環境への放出を阻止・抑制するため、焼却灰、飛灰等をセメント固化する方法や、焼却灰、飛灰等を酸で処理し重金属を抽出する方法が知られているが、廃棄物の体積の増加や、酸により抽出した重金属の処理等の問題があった。このため、特殊な装置を必要とせず、後処理が不要である重金属固定剤による処理方法が採用されており、かかる重金属固定剤としての、ジチオカルボキシ基を官能基として有するアミン誘導体の液体キレート剤は、重金属の捕集効果も高く、雨水等に対して重金属を固定し不溶出化することができるため多用されており、ジチオカルボキシ基を官能基として有するアミン誘導体の液体キレート剤として、ジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を含有する水溶液等が好適に用いられていた(特開平8−332475号公報等)。
【0003】このような重金属固定剤として使用されるジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を含有する水溶液は、水酸化カリウムと二硫化炭素との混合水溶液に、ジエチルアミンを滴下して反応させること等により、30重量%以上のジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩が含有される水溶液として製造されているが、かかる製造方法によって得られる重金属固定剤は、一方において、飛灰等を処理したとき二硫化炭素を発生し、環境汚染源となるという問題があり、また、ジエチルジチオカルバミン酸塩の水溶液の保存期間中においても、水溶液から二硫化炭素が分離、放出され、安全性の点で問題があった。このため、水溶液の保存期間中や、重金属固定処理時に水溶液からの二硫化炭素の発生を防止するため、種々の研究がなされた結果、水溶液からの二硫化炭素の発生は、水溶液中に残存する未反応の二硫化炭素や、水溶液に空気中の二酸化炭素が溶け込みpHが変動することにより水溶液中に存在する反応副生成物のチオ炭酸塩が変化して生じる二硫化炭素が、揮発するためであることが明らかにされた。このため、二硫化炭素とジエチルアミンの反応において、副生成物のチオ炭酸塩の発生を抑制することに主眼がおかれた研究がなされていた。他方において、上記水酸化カリウムと二硫化炭素との混合水溶液に、ジエチルアミンを滴下してジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を生成させ、得られた反応生成物を含有する水溶液を重金属固定剤として飛灰等を処理したとき、水溶液中に残存する未反応ジエチルアミン等の気化によりアミン臭が発生し、重金属固定処理作業に支障をきたすという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物と金属水酸化物の混合溶液に、二硫化炭素を反応させることにより得られるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の保存期間中や、重金属固定処理時における二硫化炭素の発生の抑制を図り、安全性の向上を図ると共に、水溶液の保存期間中や、かかる水溶液と焼却灰や飛灰等を混合してこれらの焼却灰や飛灰等に含有される重金属を固定する処理時におけるアミンの発生を抑制することにより、アミンの発生に伴うアミン臭の発生を抑制し、作業性を向上させることができるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液や、その製造方法や、得られた水溶液を用いた重金属固定剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、少なくとも1つの第一級アミノ基を有する化合物を、二硫化炭素及び金属水酸化物と反応させて得られる第一級アミンのジチオカルバミン酸金属塩を主成分として含有する水溶液から、その保存期間中に二硫化炭素が発生するのは、水溶液中に存在するチオ炭酸塩、又は、13C−NMRのスペクトルにおいて、260〜280ppmの領域に主成分以外に由来するピーク成分に起因することを見い出し、少なくとも1つの第一級アミノ基を有する化合物を、二硫化炭素と金属水酸化物の反応中のpHを10から14の範囲に調整しながら反応させることにより、このような不純物を生じさせない水溶液の製造方法を既に提案している(特開平9−183763号公報)。本発明者らは、ジチオカルバミン酸塩を含有する重金属固定剤について、更に研究する過程で、第一級アミノ基、又は第二級アミノ基を有する化合物と、金属水酸化物及び二硫化炭素から水溶媒中で反応させて得られるジチオカルバミン酸塩を含有する反応生成物の水溶液中に、副生成物であるチオ炭酸塩が一定量生成されている場合、水溶液中のチオ炭酸塩の存在により保存期間中や、焼却灰等の処理時にアミン臭の発生が抑制されることに着目した。そして、水溶液の保存期間中や、焼却灰等の処理時に、水溶液から二硫化炭素を発生させず安全性を維持することができ、且つ、アミンの発生や、これに伴うアミン臭を発生させないためには、副生成物としてチオ炭酸塩が一定量生成されるように反応を制御し、かかる反応の制御は吸光度を指標とし、水溶液が一定の範囲の吸光度を有するように反応を進行させることによって達成することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち本発明は、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物、金属水酸化物及び二硫化炭素を、水溶媒中で反応させる際に、水溶液の吸光度を指標として反応水溶液中のチオ炭酸塩の生成量を制御下に反応させ、得られたジチオカルバミン酸塩の使用時における二硫化炭素及びアミンの臭気を抑制することを特徴とするジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法(請求項1)に関し、好ましくは、チオ炭酸塩の生成量が0.03〜0.20重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法(請求項2)や、波長500nmにおける水溶液の紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を0.05〜0.40の範囲とすることを特徴とする請求項1又は2記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法(請求項3)や、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物に対して、二硫化炭素を0.02〜0.20モル%過剰に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法(請求項4)や、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物が、ジエチルアミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法(請求項5)に関する。また、本発明は、請求項1〜5のいずれか記載の製造方法により得られるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液(請求項6)に関する。また、本発明は、請求項6記載のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液を主成分とすることを特徴とする重金属固定剤(請求項7)に関する。更に、本発明は、チオ炭酸塩を0.03〜0.20重量%含有することを特徴とするジチオカルバミン酸塩含有水溶液(請求項8)に関する。また、本発明は、波長500nmにおける水溶液の紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を0.05〜0.40の範囲とすることを特徴とするジチオカルバミン酸塩含有水溶液(請求項9)に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のジチオカルバミン酸塩含有水溶液の製造方法としては、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物、金属水酸化物及び二硫化炭素を、水溶媒中で反応させる際に、水溶液の吸光度を指標として反応水溶液中のチオ炭酸の生成量を制御下に反応させ、反応生成物からの二硫化炭素及びアミンの発生を抑制することを特徴とするジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法であれば、特に限定されるものではないが、チオ炭酸の生成量が0.03〜0.20重量%の範囲であることが好ましく、この範囲を維持するために水溶液の波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を0.05〜0.40の範囲として反応水溶液中のチオ炭酸の生成量を制御する製造方法であることが好ましい。
【0008】本発明のジチオカルバミン酸塩含有水溶液の製造方法に用いられるアミノ基を有する化合物としては、第一級又は第二級アミノ基を有するものであればいずれの化合物であってもよく、このような化合物としては、モノアミンに限らずジアミン、トリアミン、テトラミン等複数のアミノ基を有するポリアミンを挙げることができ、これらは脂肪族アミンや、芳香族アミンであってもよく、脂肪族アミンとしては、脂肪族不飽和アミンや、脂環式アミンを挙げることができる。そして、これらの化合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0009】かかるアミノ基を有する化合物のうち、第一級モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、iso−ブチルアミン、n−アミルアミン、iso−アミルアミン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、ネオペンチルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、n−ヘキシルアミン、1,3−ジメチル−n−ブチルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、アリルアミン等の脂肪族アミンや、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン等の芳香族アミンを具体的に挙げることができ、また、第二級モノアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−アミルアミン、ジアリルアミン、メチルアニリン、エチルアニリン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン等を具体的に挙げることができる。
【0010】上記アミノ基を有する化合物のうち、ポリアミンとしては、第一級及び又は第二級アミノ基を有するものとして、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)−メチルアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−プロピル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、4−(2−アミノエチル)ピペリジン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール等を、それぞれ具体的に挙げることができる。
【0011】本発明に使用される二硫化炭素は、上記アミノ基を有する化合物と反応して、ジチオカルバミン酸を形成すると共に、チオ炭酸を形成するものである。二硫化炭素と上記アミノ基を含有する化合物との反応は、反応温度、水溶媒のpH等に影響を受けやすく、二硫化炭素の温度、水溶媒の温度及びpH等によっても影響を受け、ジチオカルバミン酸の生成量が変化すると共に、チオ炭酸が金属水酸化物と反応して赤褐色のチオ炭酸塩の生成量が変化する。チオ炭酸塩の生成量は、0.03〜0.20の重量%の範囲であることが好ましく、反応生成物の水溶液中にチオ炭酸塩がこの範囲で生成されるように、反応水溶液の吸光度を指標として反応を制御することができる。例えば、水溶液の波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトルの吸光度が0.05〜0.40の範囲で反応を制御することができ、このように反応が制御されることにより上記範囲の量のチオ炭酸塩が生成される。
【0012】かかる二硫化炭素は、上記アミノ基を有する化合物に対して、0.02〜0.20モル%過剰に使用することが好ましい。二硫化炭素の使用量が、アミノ基を有する化合物の使用量に対してこの範囲であると、一定量のチオ炭酸塩が水溶媒中に生成されることが可能となる。二硫化炭素の使用量が、アミノ基を有する化合物に対して0.02モル%以上であれば、水溶液からアミンが発生するのを抑制することができ、0.20モル%以下であれば、一定量を超えた余剰のチオ炭酸塩が生成されないため、余剰のチオ炭酸塩に起因する二硫化炭素が水溶液から発生するのを抑制することができる。このため、得られた反応生成物をそのまま重金属固定剤として使用した場合であっても、保存期間中又は重金属固定処理時において、溶液中からアミンの発生を抑制し、アミン臭の発生を抑制することができ、作業に支障をきたすことがない。
【0013】本発明の製造方法に使用される金属水酸化物は、ジチオカルバミン酸の金属塩や、チオ炭酸の金属塩を形成するものであり、本発明の反応生成物であるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液がそのまま重金属固定剤として適用できるように、重金属の固定を容易とするために使用されるものである。金属水酸化物として、具体的には、カリウム、ナトリウム、リチウム等を挙げることができる。これらのアルカリ金属は、重金属と容易に置換してジチオカルバミン酸と重金属のキレート錯体を容易に形成し、重金属固定剤としての効果が顕著となるため、好ましい。尚、これら金属水酸化物は、水溶液の他、粉末、粒状、塊状等いずれの形態のものも使用できる。金属水酸化物の水溶液を使用する場合の金属水酸化物の濃度は、使用する溶媒としての水の使用量にもよるが、高濃度のジチオカルバミン酸塩を製造するために、例えば、金属水酸化物が11〜52重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲であるものが好ましい。
【0014】本発明において使用される水溶媒は、反応生成物を重金属固定剤として使用できるように、ジチオカルバミン酸塩を含有する反応系が水溶液であることが好ましく、得られる反応生成物をそのまま重金属固定剤として使用できるように、水が使用される。得られたジチオカルバミン酸塩を含有する反応系が水溶液であれば、被処理体に含有される重金属が無機化合物、有機化合物いずれの形態であっても、重金属固定剤に含有されるジチオカルバミン酸と容易に結合しキレート錯体を形成し、重金属の固定・不溶出化を行なうことができる。また、溶媒としての水の使用は、溶媒水として添加するものの他、金属水酸化物を水溶液として用いる場合は、その水溶液を、溶媒として適用することができる。溶媒としての水の使用量は、得られる水溶液を重金属固定剤として使用する場合、加熱により分解しやすい生成物であるジチオカルバミン酸塩が、濃縮等の操作をすることなく、重金属の十分な固定効果が得られるような高濃度に水溶液に含有されるように、例えば、ジチオカルバミン酸塩が30重量%以上含有されるような濃度となるような量が好ましい。
【0015】本発明のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法は、上記のアミノ基を有する化合物と、金属水酸化物と、二硫化炭素とを、水溶媒中で反応させることにより得られるものであるが、アミノ基を有する化合物と金属水酸化物との混合水溶液中に、二硫化炭素を添加して反応を行なうことにより得ることができる。
【0016】本発明の二硫化炭素の添加方法として、アミノ基を有する化合物と金属水酸化物との水溶液に、二硫化炭素を攪拌下、滴下等により添加して行なうこともできるが、アミノ基を有する化合物と水溶媒との混合溶液に、反応に用いる二硫化炭素の一部を添加した後、金属水酸化物又はその水溶液を添加し、攪拌するか、あるいは、アミノ基を有する化合物と水溶媒との混合溶液に、反応に用いる二硫化炭素の一部と金属水酸化物とを同時に添加し、攪拌してもよい。このようにアミノ基を有する化合物と、金属水酸化物及び水溶媒とを混合する際、反応に用いる二硫化炭素の一部を、アミノ基を有する化合物を含有する水溶液への金属水酸化物の添加に先だって予め添加し、あるいは、金属水酸化物と同時に二硫化炭素の一部を添加することにより、アミノ基を有する化合物が含有される混合溶液が強アルカリ性となることを回避し、アミノ基を有する化合物の金属塩等の結晶の析出、また、反応溶液が高粘度になることを防止することができ、攪拌を容易に行なうことができる。
【0017】本発明のアミノ基を有する化合物と、金属水酸化物と、水溶媒の混合は、それぞれ全量を反応容器に仕込み、攪拌により混合することができる。混合の際の温度は特に限定されるものではなく、20℃〜60℃の範囲で適宜行なうことができ、加熱によりアミノ基を有する化合物の金属塩の析出を防止することができるが、上記の金属水酸化物と同時にあるいは、先立って二硫化炭素をアミノ基を有する化合物に添加する場合は、アミノ基を有する化合物の析出を防止することができるため、40℃以下で混合することができる。
【0018】本発明のアミノ基を有する化合物と金属水酸化物との混合溶液に、二硫化炭素を添加する反応は、アミノ基を有する化合物と金属水酸化物との混合直後に二硫化炭素を添加して反応させてもよく、また、アミノ基を有する化合物と金属水酸化物との反応を十分に進行させ熟成させてから、二硫化炭素との反応を行なうようにしてもよい。二硫化炭素は窒素雰囲気下、開放系において添加してもよいが、密閉系において添加するのが好ましい。反応温度としては、二硫化炭素の沸点が46℃であることろから二硫化炭素が気化しない温度範囲であって、40℃の温度範囲下、特に5〜35℃の範囲であることが好ましく、反応溶媒のpHとしては、10〜14であることが好ましい。反応温度、及びpHがこの範囲であると、二硫化炭素はアミノ基含有化合物と反応すると共に、その一部が金属水酸化物と反応し、反応水溶液中に上記範囲の量のチオ炭酸が生成され、チオ炭酸塩の過剰生成を抑制することができる。二硫化炭素の添加時間は、特に限定されるものではないが、例えば、3〜24時間程度で行なうことができ、また、添加後の熟成も、特に限定されるものではないが、2〜24時間、25〜50℃の温度範囲で行なうのが好ましい。
【0019】上記二硫化炭素を、アミノ基を有する化合物と、金属水酸化物との混合溶液に添加する際、混合溶液の吸光度を指標として反応を制御する。表1に示すように、水溶液に含まれるチオ炭酸と、波長500nmにおける紫外可視光吸光度には相関が認められる。波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトルの吸光度が0.05〜0.40の範囲、好ましくは、0.30付近で反応が進行するようにする。混合溶液の波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトル吸光度が、0.05〜0.40の範囲であれば、ジチオカルバミン酸塩の生成反応が進行されると共に、チオ炭酸塩の生成反応が進行し、前述の所定量のチオ炭酸塩が混合溶液中に生成され、得られる水溶液は、ジチオカルバミン酸塩と共にチオ炭酸塩が所定量含有され、黄赤色から赤褐色となる。得られた水溶液を重金属固定剤として用いた場合、保存期間中や、重金属固定処理時に、チオ炭酸塩の存在によりアミンの気体の発生が抑制され、これに伴うアミン臭の発生が抑制される。
【0020】
【表1】

【0021】反応溶液の吸光度を指標としてチオ炭酸塩の生成量を制御するために、反応溶液の吸光度の測定はサンプリングによって行なってもよく、また、紫外可視光吸収スペクトルの吸光度測定装置によって、測定するようにしてもよい。紫外可視光吸収スペクトルの吸光度測定装置は、波長500nmの紫外可視光を発光する発光装置と、溶液を透過した光を受光する受光装置と、受光装置に受光された光からの電気信号を処理する処理装置とを備え、溶液の紫外可視光吸収スペクトルの吸光度を検出して反応を制御できるものであり、例えば、図1に示すように、紫外可視光吸収スペクトルの吸光度測定装置1は、攪拌装置2と、二硫化炭素供給管3とを備えた反応槽4に設けられる循環路5に設置されるものである。このような吸光度測定装置1においては、アミノ基を有する化合物、金属水酸化物、溶媒水を反応槽4に仕込み、攪拌装置2により攪拌すると共に、二硫化炭素供給管3から二硫化炭素を滴下する。混合溶液が攪拌により循環路5を流通し、反応槽4に再度供給されるように循環する際、循環路5において混合溶液の吸光度が測定される。混合溶液の紫外可視光スペクトルの吸光度が0.05〜0.40の範囲でチオ炭酸塩の生成量が制御されることにより、黄緑色のジチオカルバミン酸塩の生成と共に、所定量の赤褐色のチオ炭酸塩が生成される。
【0022】反応の終点は、水溶液中に分散されている二硫化炭素の粒が消失した時点を目安としてNMR等で確認して決定されるが、反応終了後、未反応の二硫化炭素又は過剰のアミノ基を含有する化合物を水溶液から除去するため、窒素によるバブリングを行なうことが望ましい。未反応の二硫化炭素等は、重金属固定剤の加熱や、水素イオン濃度の変動等により水溶液中から分離されるため、当初から除去しておくことが望ましい。また、反応終了後、水溶液をpH10以上にして保存すると、保存期間中に二硫化炭素の発生が抑制できるため好ましい。反応生成物の水溶液をpH10以上として保存するには、金属水酸化物又は金属水酸化物の水溶液等をビスジチオカルバミン酸塩の0.01から200モル添加することができる。
【0023】本発明により得られるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液は、チオ炭酸塩を所定量含み、保存期間中や、重金属と混合して処理する際も、二硫化炭素の発生が抑制されると共に、アミノ基を有する化合物の揮発に伴って生じるアミン臭気の発生が抑制される。反応生成物であるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液は、重金属固定剤として反応系をそのまま使用することができ、特に、ジチオカルバミン酸塩30重量%以上含有したものは、重金属固定効果が高く、保存期間中、重金属固定時にアミン臭の発生が抑制され、重金属固定剤として好適に使用することができる。
【0024】本発明により得られるジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液を主成分として含有する重金属固定剤は、重金属を含有する被処理体と混合し、該被処理体に混合・含浸させることにより、重金属固定剤に含まれるジチオカルバミン酸が鉛、水銀、クロム、カドミウム、砒素、セレン等の重金属と結合し、これらの重金属のキレート錯体が形成され、重金属を効率よく固定・不溶化することができる。特に、水溶液中のチオ炭酸塩の存在により、重金属固定剤の保存期間中のみならず、重金属固定処理時においても、アミン臭の発生が抑制され、作業性を著しく向上させることができる。
【0025】
【実施例】以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1攪拌、コンデンサー、温度計を備えたフラスコに、ジエチルアミン(純正化学(株)社製、特級試薬:純度100.0%)219g(3.00mol)を加え(表中、CS2過剰率と表示する。)、48%水酸化カリウム(日本曹達(株)社製:純度48.7%)366g(3.18mol)を仕込み、攪拌下、二硫化炭素(純正化学(株)社製、特級試薬:純度100.0%)228g(3.01〜3.02mol)を水溶液の温度を30℃に保持して滴下した。この間、波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトル吸光度0.20、0.30、において反応を行なった。30℃で1時間、熟成を行なった後、チオ炭酸カリウムを含有するジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液(表中、DEBDCと表示する。)を得た。反応液450gをガス洗浄瓶に入れ、窒素を2L/分で30℃、10分間吹き込み、窒素バブリングし、ジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液を得た。得られたジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液中のチオ炭酸カリウムの含有量を表2に示す。得られたチオ炭酸カリウム含有ジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液を用いて、アルカリ性飛灰と混合し、飛灰中の重金属と反応させた。混合直後及び混合後1日の、二硫化炭素ガス、アンモニアガスの発生量を測定し、臭気について評価を行なった。臭気の評価は、「臭気を感じる」を△、「不快を感じる」を×、「気分が悪くなる」を××で表示した。結果を表2に示す。
【0026】比較例二硫化炭素の仕込み量を3.00molとし、波長500nmにおける紫外可視光吸収スペクトル吸光度0.01以下において反応を行なった以外は実施例と同様に熟成を行ない、ジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液を得た。得られたジエチルビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液を実施例と同様に窒素バブリングを行ない、チオ炭酸カリウムの含有率を測定し、実施例と同様に、アルカリ性飛灰と混合し、飛灰中の重金属と反応させた。混合直後及び混合後1日の、二硫化炭素ガス、アンモニアガスの発生量を測定し、臭気について評価を行なった。臭気の評価は、「臭気を感じる」を△、「不快を感じる」を×、「気分が悪くなる」を××で表示した。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
【発明の効果】本発明のジチオカルバミン酸塩を含有する水溶液の製造方法によれば、溶液の吸光度を指標として反応溶液中のチオ炭酸塩の生成量を制御下に反応を進行させため、ジチオカルバミン酸塩の生成反応を進行させると共に、チオ炭酸塩の生成反応を進行させ、水溶液中に所定量のチオ炭酸塩を含有させることができ、得られる水溶液を重金属固定剤として使用した場合、保存時、重金属固定処理時に二硫化炭素ガスの発生を抑制すると共に、重金属固定処理時のアミンの発生を抑制することができ、アミン臭の発生を抑制し、作業性を著しく向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目2番1号
【出願日】 平成14年3月6日(2002.3.6)
【代理人】 【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀 (外2名)
【公開番号】 特開2003−261530(P2003−261530A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−61221(P2002−61221)