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【発明の名称】 β−アミノケトンの製造方法とその触媒
【発明者】 【氏名】小林 修

【氏名】杉浦 正晴

【要約】 【課題】β−アミノケトンをAza-Michael反応によって高収率、高効率で合成することのできる新しい方法と触媒を提供する。

【解決手段】α、β−不飽和ケトン化合物と、カルバメート化合物とを共役付加反応させてβ−アミノケトンを合成するに際し、反応系に元素周期表の7族から11族に属する遷移金属の塩または含水塩を触媒として存在させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 α、β−不飽和ケトン化合物と、カルバメート化合物とを共役付加反応させてβ−アミノケトンを合成するに際し、反応系に元素周期表の7族から11族に属する遷移金属の塩または含水塩を触媒として存在させることを特徴とするβ−アミノケトンの製造方法。
【請求項2】 遷移金属の塩または含水塩が遷移金属のハロゲン化物または過ハロゲン酸塩もしくはその水和物であることを特徴とする請求項1のβ−アミノケトンの製造方法。
【請求項3】 α、β−不飽和化合物への窒素求核剤の共役付加反応用の触媒であって、元素周期表の7族から11族に属する遷移金属の塩または含水塩であることを特徴とする触媒。
【請求項4】 遷移金属の塩または含水塩が遷移金属のハロゲン化物または過ハロゲン酸塩もしくはその水和物であることを特徴とする請求項3の触媒。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明はβ−アミノケトンの製造方法とその触媒に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、医薬品、香料、農薬、ポリマー等の原料もしくは合成中間体として有用なβ−アミノケトンをAza-Michael反応によって高効率で合成することのできる新しい方法と、この方法に有用な、Aza-Michael反応用の新しい触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】従来より、1位に窒素、3位に酸素官能基を持つ構造は、医薬品等に多く見られる最も重要なユニットの一つであることが周知であって、β−アミノケトンはそのような重要なユニットを提供する重要な中間体である。
【0003】このような中間体としてのβ−アミノケトンの合成のための一般的な手法としては、α、β−不飽和化合物への窒素求核剤の共役付加反応、すなわちAza-Michael反応が知られている。
【0004】しかしながら、これまでのAza-Michael反応によるβ−アミノケトンの合成法では、その反応の選択性、収率は必ずしも満足できるものでなく、効率的な反応操作ではないという問題があった。このような状況において、最近、Spencerらにより、PdCl2(CH3CN)2錯体触媒の存在下に、窒素求核剤としてカルバメートを用いる例が報告されている(Org. Lett.,2001,3,25)。
【0005】だが、このPdCl2(CH3CN)2錯体触媒による反応の場合にも、適用されるα、β−不飽和ケトン化合物やカルバメート化合物の種類や反応条件には制約があり、また、反応の収率、そして効率等の点において実用的に充分なものとは言い難いのが実情である。
【0006】そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、各種のβ−アミノケトンをAza-Michael反応によって高収率、高効率で合成することのできる新しい技術方策を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、α、β−不飽和ケトン化合物と、カルバメート化合物とを共役付加反応させてβ−アミノケトンを合成するに際し、反応系に元素周期表の7族から11族に属する遷移金属の塩または含水塩を触媒として存在させることを特徴とするβ−アミノケトンの製造方法を提供する。
【0008】また、この出願の発明は、第2には、遷移金属の塩または含水塩が遷移金属のハロゲン化物または過ハロゲン酸塩もしくはその水和物であることを特徴とする上記のβ−アミノケトンの製造方法を提供する。
【0009】そして、この出願の発明は、第3には、α、β−不飽和化合物への窒素求核剤の共役付加反応用の触媒であって、元素周期表の7族から11族に属する遷移金属の塩または含水塩であることを特徴とする触媒を提供し、第4には、遷移金属の塩または含水塩が遷移金属のハロゲン化物または過ハロゲン酸塩もしくはその水和物であることを特徴とする上記の触媒を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】この出願の発明においては、Aza-Michael反応により、α、β−不飽和ケトン化合物とカルバメート化合物とからβ−アミノケトンを合成するが、この場合のα、β−不飽和ケトン化合物としては、たとえば次式【0012】
【化1】

【0013】(式中のR1およびR2は、各々、同一または別異に、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R2およびR3は、各々、同一または別異に、水素原子または置換基を有してもよい炭化水素基を示し、また、R1、R2、R3およびR4は、そのいずれかが炭素鎖として結合して環を形成していてもよいことを示す)で表わすことができ、また、カルバメート化合物としては、たとえば次式【0014】
【化2】

【0015】(式中のR5は、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R6は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、また、R5とR6は炭素鎖として結合して環を形成していてもよいことを示す)で表わすことのできるものが例示される。
【0016】上記の炭化水素基としては、脂肪族、脂環式の飽和または不飽和の炭化水素基をはじめ、芳香族基、さらには複素環基でもよく、これらは、複素環基である場合と同様に、反応を阻害しない限り、炭化水素基、アルコキシ基をはじめとする各種の置換基を有していてもよい。
【0017】Aza-Michael反応によって、たとえば次式【0018】
【化3】

【0019】で表わされるβ−アミノケトンが得られることになる。
【0020】このAza-Michael反応によるβ−アミノケトンの合成において、この出願の発明では、反応触媒として、元素周期表の7族から11族までの遷移金属の塩または含水塩を用いることを特徴としている。ここで、含水塩とは遷移金属の塩の水和物を意味している。
【0021】7族から11族までの遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、Au等があるが、この出願の発明においては、これら遷移金属の無機酸塩やそれらの水和物、あるいは有機酸塩が用いられることになる。より好適には、これら遷移金属のハロゲン化物または過ハロゲン酸塩やこれら塩の水和物が考慮される。たとえば、具体的には、ReCl5、Fe(ClO43・9H2O、RuCl3・nH2O、OsCl3・3H2O、RhCl3・3H2O、IrCl4・nH2O、PtCl4・5H2O、AuCl、AuCl3・2H2Oが好適なものとして例示される。
【0022】反応に際しては、α、β−不飽和ケトン化合物とカルバメート化合物との使用量の比は、モル比として、一般的には1:10〜10:1の範囲を目安とすることができ、また、上記の触媒については、α、β−不飽和ケトン化合物を基準として、0.01〜0.5倍モル程度の割合とすることが考慮される。
【0023】また、反応には溶媒を用いてもよく、たとえば、ジクロロメタンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素が好適なものとして例示される。
【0024】反応は、通常は、−10℃〜50℃程度の温度範囲において、たとえば18℃〜25℃程度において行うことができ、大気中あるいは不活性ガス雰囲気としてよい。常圧でもよいし、加圧あるいは減圧条件も適宜に採用される。
【0025】そして、以上のとおりのβ−アミノケトンの合成反応において効果的に使用される遷移金属塩の触媒は、β−アミノケトンの合成をはじめとして、これに限られることなしに、α、β−不飽和化合物への窒素求核剤による共役付加反応の触媒として有効である。
【0026】この触媒によって、α、β−不飽和化合物のα位に置換基のあるエノン等についても有効に上記の共役付加反応が進行することになる。
【0027】そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0028】
【実施例】<実施例1>次の反応式:【0029】
【化4】

【0030】に従って、PtCl4・5H2O(0.025mmol、0.1当量)のジクロロメタン(1ml)溶液に、α、β−不飽和ケトン化合物(エノン)(1a)(0.250mmol、1当量)とカルバメート化合物(2a)(0.375mmol、1.5当量)を添加し、室温(約20℃)で2時間攪拌した。
【0031】その後、反応混合物に飽和NaHCO3を添加し、水性相をジクロロメタンによって抽出した。全ての有機相をNa2SO4により乾燥処理し、濾別後に蒸発処理した。
【0032】このようにして得た粗生成物を薄層TLCにより精製し、目的とするβ−アミノケトン(3a)を得た。収率は82%であった。
<実施例2>実施例1のβ−アミノケトン(3a)の合成反応を、白金ハロゲン化物・水和物に代えて各種の金属塩を用いて行った。
【0033】その結果を次表に示した。
【0034】
【表1】

【0035】この表1から明らかなように、従来からよく知られているルイス酸であるBF3−OEt2、AlCl3、TiCl4はほとんど反応活性化作用を示さなかったが、この出願の発明の7族〜11族の遷移金属のハロゲン化物と過塩素酸塩もしくはその含水塩は顕著な作用を示し、高い反応収率でのβ−アミノケトン(3a)の合成を可能とした。
<実施例3>実施例1と同様の手段によって、各種のα、β−不飽和ケトン化合物(エノン)とカルバメート化合物とを反応させた。触媒としてこの発明の各種の遷移金属の塩と含水塩を用いた。
【0036】また比較のために、公知のPdCl2(CH3CN)2錯体も用いた。その結果を表2に示した。なお、表中の注意書き(b)は、エノンとカルバメート化合物とが2:1の割合で用いられた場合を示している。
【0037】
【表2】

【0038】この表2からも、この出願の発明の方法が高い反応収率で、各種の構造のβ−アミノケトンの合成を可能としていることが確認された。
【0039】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、各種のβ−アミノケトンをAza-Michael反応によって高収率、高効率で合成することのできる新しい方法と触媒が提供される。
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【出願日】 平成14年3月8日(2002.3.8)
【代理人】 【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
【公開番号】 特開2003−261528(P2003−261528A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−64480(P2002−64480)