| 【発明の名称】 |
菊酸アルキルエステルの光学分割法 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡本 佳男
【氏名】顕谷 忠俊
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| 【要約】 |
【課題】菊酸アルキルエステルの光学分割法を提供すること。
【解決手段】置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルの存在下、セルローストリス(4−メチルベンゾエート)をシリカゲルに担持させた後、当該安息香酸アルキルエステルを除去することにより得られるキラル充填剤を用いることを特徴とする菊酸アルキルエステルのクロマトグラフィーによる光学分割法。本発明の分割法によって、目的とする光学活性菊酸アルキルエステルを光学純度よくかつ効率よく得ることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルの存在下、セルローストリス(4−メチルベンゾエート)をシリカゲルに担持させた後、当該安息香酸アルキルエステルを除去することにより得られるキラル充填剤を用いることを特徴とする菊酸アルキルエステルのクロマトグラフィーによる光学分割法。 【請求項2】菊酸アルキルエステルのアルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルのいずれかである請求項1記載の光学分割法。 【請求項3】置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルのアルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルのいずれかである請求項1または2記載の光学分割法。 【請求項4】置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルにおける置換基が、4−メチル、3,4−ジメチル、3,5−ジメチル、4−イソプロピル、または4−クロロである請求項1または2記載の光学分割法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、菊酸アルキルエステルの光学分割法に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする課題】菊酸はピレスリン、アレスリン、フタルスリンなどの所謂ピレスロイドと称される低毒速効性殺虫剤の原料として有用である。ところで菊酸には不斉炭素が2個あり、4種類の異性体が存在する。幾何異性体であるシス体およびトランス体は、それぞれ光学異性体である(+)体ならびに(−)体として存在することから4種類の異性体が存在する。一般にピレスロイドの殺虫効力に関しては、(+)トランス菊酸より誘導されるものが最強であることが知られている。また、天然の除虫菊から抽出される菊酸も(+)トランス構造を有している。一方、ある種のピレスロイドにおいては(+)シス菊酸も有効である。光学活性菊酸の工業的により有利な取得法が望まれる所以である。 【0003】 【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、菊酸アルキルエステルを、多糖誘導体を用いるクロマトグラフィーに付すことにより、効率よく目的とする光学活性体を得ることができることを見出し、以下の発明を完成している(特願2001−41392号)。すなわち、キラル固定相として多糖誘導体を用いるクロマトグラフィー法により、菊酸アルキルエステルを光学分割し、光学活性体を分取することを特徴とする光学活性菊酸アルキルエステルの製造法である。より好ましいキラル固定相としては、シリカゲルなどの担体に担持させたセルローストリス(4−メチルベンゾエート)が好適であった。ところで、セルローストリス(アセテート)やセルローストリス(ベンゾエート)などの多糖誘導体を、担体(例えばシリカゲル)に担持する場合、その担持条件(特に用いる溶媒系中に含まれる第二成分)により、キラル固定相としての光学分割能が変化することが以前から報告されていた。 T. Shibata, T. Sei, H.Nishimura, and K. Deguchi, Chromatographia, 24, 552 (1987)。主たる溶媒が塩化メチレンである場合、問題となる第二成分としては、トリフルオロ酢酸、フェノール、ベンゼン、ニトロベンゼンなどが例示されている。 【0004】そこで本発明者らは、セルローストリス(4−メチルベンゾエート)をシリカゲルに担持させる場合の担持条件について詳細に検討した結果、置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルを第二成分として含有する溶媒系を用いて担持すれば、菊酸アルキルエステルに対して高い光学分割能を呈するキラル充填剤が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルの存在下、セルローストリス(4−メチルベンゾエート)をシリカゲルに担持させた後、当該安息香酸アルキルエステルを除去することにより得られるキラル充填剤を用いることを特徴とする菊酸アルキルエステルのクロマトグラフィーによる光学分割法を提供するものである。 【0005】 【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳しく説明する。多糖誘導体であるセルローストリス(4−メチルベンゾエート)は結晶セルロースを4−メチルベンゾイルハライドでエステル化することによって得られる。ハライドとして通常はクロリドが用いられる。キラル固定相として用いる場合には、グルコース残基に含まれる3個の水酸基をすべてアシル化しておくことが望ましい。少なくとも94%以上がアシル化されていることが望ましい。 【0006】多孔性無機担体として用いられるシリカゲルは、粒状で多孔性のものが用いられる。粒径は、通常1μm 〜10mmであるが、なかでも1〜300 μm が好ましい。平均細孔径は通常10オングストローム〜100 μm であるが、なかでも50オングストローム〜10000 オングストロームが好ましい。シリカゲルの多糖誘導体に対する担体の親和性を改善するために、表面処理を行ってもよい。そのような表面処理方法としては、アミノプロピルトリエトキシシランなどの有機シランを用いるシラン処理法等が採用できる。 【0007】次に多糖誘導体であるセルローストリス(メチルベンゾエート)を無機担体シリカゲルに担持する方法について述べる。まず、セルローストリス(メチルベンゾエート)をジクロルメタン、ジクロルエタン、テトラハイドロフランなどのセルローストリス(メチルベンゾエート)を溶解させる能力のある溶媒に溶解させ、ここへ置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルを第二成分として溶解させる。生成した溶媒系を以下、担持溶液と称する。 【0008】置換されていてもよい安息香酸アルキルエステルのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチル等が挙げられるが、安息香酸アルキルエステルとしては、例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸イソプロピルなどが好適である。置換基を有する安息香酸アルキルエステルにおける置換基は、4−メチル、3,4−ジメチル、3,5−ジメチル、4−イソプロピル、4−クロロ等が挙げられるが、置換基を有する安息香酸アルキルエステルとしては、(4−メチル安息香酸)メチル、(3,4−ジメチル安息香酸)メチル、(3,5−ジメチル安息香酸)メチル、(4−イソプロピル安息香酸)メチル、(4−クロロ安息香酸)メチルなどが好適である。 【0009】担持溶液における第二成分の使用量は、グルコース単位に含まれる3個のエステル基に対して等量以上、通常は3〜12倍量である。担持法は、この担持液をシリカゲルと共に十分に混合し、ついで常圧下ないし減圧下に加熱によって溶媒を留去するか、もしくは空気流または窒素気流によって溶媒を留去する方法がとられる。 【0010】以上の方法で得られたセルローストリス(メチルベンゾエート)が担持されたシリカゲルは、例えば以下の方法で液体クロマトに供することができる。担持処理で得られたシリカゲルを分級分別した後、適当な大きさのステンレススチ−ル製のカラムに充填し、まずヘキサン−イソプロパノール(9/1)溶液、次いで純ヘキサンで充分に置換洗浄することにより、担持処理に用いた当該安息香酸アルキルエステルを除去することができる。最終的には、シリカゲル担体に担持されるセルローストリス(4−メチルベンゾエート)の量は、シリカゲルに対して、通常、1〜100重量%であり、好ましくは5〜50重量%である。 【0011】本発明方法により光学分割される菊酸アルキルエステルのアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等の低級アルキル基が挙げられる。通常は菊酸エチルが好適に用いられる。本発明方法におけるクロマトグラフィーの具体的な手段としては、カラムを用いる液体クロマトグラフィーの他に、擬似移動床吸着システムによるクロマトグラフィー法も挙げることができる。 【0012】 【発明の効果】本発明の分割法によって、目的とする光学活性菊酸アルキルエステルを光学純度よくかつ効率よく得ることができる。 【0013】 【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 [参考例1] セルローストリス(4 -メチルベンゾエート)の製法結晶セルロース(アビセルTM)(2.0g、グルコース残基に換算して12.3mmolに相当)をナスフラスコに採り、これを80℃のオイルバスにつけ、5mmTorrの減圧下、2時間加熱することにより乾燥させた。冷却後、ここへ乾燥ピリジン(40ml)および、4−メチルベンゾイルクロリド(7.2g、46.6mmol)を加え、混合物を窒素雰囲気下、24時間、加熱還流させた。少量をサンプリングし、そのIR測定により酸クロリドが残存することを確認した。得られた均一の反応混合物をメタノール(200ml)中に注ぎ、生じた固体を遠心分離した。固体を、ピリジンの匂いがなくなるまでメタノールで洗い、常圧乾燥後、減圧乾燥(10mmTorr,60℃、12時間)させた。収量(5.8g、91%)。元素分析値は、炭素、69.60%、水素、5.47%を示し、エステル化率は98%と計算できた。 【0014】[参考例2] シリカゲルのシリル化処理平均細孔径が1000 オングストローム, 粒経が7μmのシリカゲル(25g)をナスフラスコに採り、これを浴温200℃のオイルバスにつけ、5mmTorrの減圧下、3時間加熱することにより乾燥させた。冷却後、ここへ乾燥ベンゼン(250ml)、乾燥ピリジン(1.5ml)、およびアミノプロピルトリエトキシシラン(10ml、42.8mol)を加え、混合物を撹拌しながら12時間、加熱還流させた。冷却後、得られた反応混合物をメタノール(500ml)中に注いで反応を停止した。吸引ろ過により回収したシリカゲルを、メタノール、アセトン、ヘキサンの順で洗浄した。常圧乾燥後、さらに減圧乾燥(10mmTorr,60℃、12時間)した。収量(24g)。熱天秤による測定の結果、シリカゲルに対するシラン化合物の重量は0.98%と判明した。 【0015】[実施例1][参考例1]で得られたセルローストリス(4−メチルベンゾエート)(0.25g、グルコース残基に換算して0.48mmolに相当)、安息香酸メチル(0.66g, 4.8mmol)および、塩化メチレン(1.3ml)よりなる溶液を調製した(以下、これを担持溶液と称す)。担持溶液の半量を、[参考例2]で得られたシリカゲル1.0gに加え、室温で1時間、密閉放置した。その後、減圧下(55mmTorr)室温で15分間撹拌しながら溶媒を留去した。得られたシリカゲルに、残り半量の担持溶液を加え、同様の室温放置と減圧下での溶媒留去を繰り返した。以上の担持処理で得られたシリカゲルを分級分別した後、長さ25cm、内径0.20cmのステンレススチ−ル製のカラムにスラリー法で充填し、ヘキサン−イソプロパノール(9/1)溶液で12時間、純ヘキサンで12時間、置換洗浄した。得られたカラムを用い、ラセミ体のトランス菊酸エチルを以下の条件で分析した。移動相:ヘキサン、流量:0.1 ml/分、温度:24℃、注入量:0.5μl (50%ヘキサン溶液)。トランス菊酸エチルの(−)体、(+)体ならびに標準物質としての1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼンの保持時間(t1、t2、t0)はそれぞれ、9.79、20.71および7.79分であった。これより、保持比k1'= (t1−t0)/t0, k2' =(t2−t0)/t0, および分離係数α=k2'/k1'=(t2−t0)/(t1−t0)はそれぞれ、0.26,1.66、および6.38と計算できた。 【0016】[比較例1]実施例1における諸操作を、安息香酸メチル(0.66g)に代えて塩化メチレン(1.3ml)を用いて、すなわち安息香酸メチルを全く使用する事無く、すべて全く同様に実施した。ラセミートランス菊酸エチルを分析した結果、(−)体と(+)体との分離は、全然観測できなかった。 【0017】[実施例2]実施例1における安息香酸メチルに代えて安息香酸エチルを用いて、シリカゲルへの担持、および当該物質の除去を、同様に操作した。ラセミートランス菊酸エチルを同様に分析した結果、保持比(k1, k2')はそれぞれ0.34、1.15であり、分離係数(α)は3.38と計算できた。 【0018】[実施例3]実施例1における安息香酸メチルに代えて4−メチル安息香酸メチルを用いて、シリカゲルへの担持、および当該物質の除去を、同様に実施した。得られたカラムを用い、ラセミ体のトランス菊酸エチルを分析した結果、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.21、0.90であり、分離係数(α)は4.29と計算できた。 【0019】[実施例4]実施例1における安息香酸メチルに代えて3,4−ジメチル安息香酸メチルを用いて、シリカゲルへの担持、および当該物質の除去を、同様に実施した。ラセミートランス菊酸エチルを同様に分析した結果、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.23、1.15であり、分離係数(α)は5.00と計算できた。 【0020】[実施例5]実施例1における安息香酸メチルに代えて4−クロロ安息香酸メチルを用いて、シリカゲルへの担持、および当該物質の除去を、同様に実施した。ラセミートランス菊酸エチルを同様に分析した結果、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.22、0.90であり、分離係数(α)は4.09と計算できた。 【0021】[実施例6][実施例1]で得られた担持溶液の半量を、[参考例2]で得られたシリカゲル1.0gに加え、室温で1時間、密閉放置した。その後、室温で3時間、開放放置し塩化メチレンを蒸発させた。得られたシリカゲルに、残り半量の担持溶液を加え、前回と同様の密閉放置と開放放置による塩化メチレンの蒸発を繰り返した。以上の担持処理で得られたシリカゲルを分級分別した後、[実施例1]と同様に、カラムに充填し、充填剤を置換洗浄した。また、同様の条件で、ラセミ体のトランス菊酸エチルを分析した。結果は保持比(k1', k2')はそれぞれ0.30、1.70であり、分離係数(α)は5.67と計算できた。 【0022】[実施例7]実施例1における「溶媒の留去工程における減圧度と時間」を「55mmTorr、室温で15分間撹拌しながら」から「76mmTorr、室温で9時間撹拌しながら」に代えて担持工程を実施した。得られたカラムを用いてラセミ体のトランス菊酸エチルを分析した結果は、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.18、1.06であり、分離係数(α)は5.89と計算できた。 【0023】[実施例8]実施例1における「保持溶液の調製工程」における「安息香酸メチル(0.66g, 4.8mmol)」から「安息香酸メチル(0.44g, 3.2mmol)」に代えて、全く同様の担持操作を実施した。得られたカラムを用いてラセミ体のトランス菊酸エチルを分析した結果は、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.32、1.05であり、分離係数(α)は3.28と計算できた。 【0024】[実施例9]実施例1における「溶媒の留去工程における加熱条件」を「55mmTorr、常温で15分間撹拌しながら」から「55mmTorr、45℃で15分間撹拌しながら」に代えて担持工程を実施した。得られたカラムを用いてラセミ体のトランス菊酸エチルを分析した結果は、保持比(k1', k2')はそれぞれ0.20、0.73であり、分離係数(α)は3.65と計算できた。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002093 【氏名又は名称】住友化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年3月11日(2002.3.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100093285 【弁理士】 【氏名又は名称】久保山 隆 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−261510(P2003−261510A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月19日(2003.9.19) |
| 【出願番号】 |
特願2002−64943(P2002−64943) |
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