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【発明の名称】 α−オキソカルボン酸エステルの製造方法
【発明者】 【氏名】森 徳春
【住所又は居所】大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社日本触媒内

【氏名】有吉 公男
【住所又は居所】大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社日本触媒内

【要約】 【課題】本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させα−オキソカルボン酸エステルを製造する際に、高転化率、高選択率でα−オキソカルボン酸エステルを製造する方法を提供する。

【解決手段】ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含む触媒の存在下でα−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させるα−オキソカルボン酸エステルの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させてα−オキソカルボン酸エステルを製造する方法において、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含む触媒の存在下で反応を行うことを特徴とするα−オキソカルボン酸エステルの製造方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、触媒を用いて、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させることにより、α−オキソカルボン酸エステルを製造する方法に関する。代表的なα−オキソカルボン酸エステルであるグリオキシル酸エステルは、医農薬の合成原料、有機薬品合成原料、香料の合成原料、高分子化合物の原料等として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】従来α−オキソカルボン酸エステルの製造方法としては、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを特定の触媒の存在下、気相酸化脱水素することにより製造する方法が知られている。例えば、代表的なα−オキソカルボン酸エステルであるグリオキシル酸エステルの製造方法にはリン酸第2鉄触媒を用いる方法(特開平2―91046号公報)が開示されている。しかし、この方法ではグリオキシル酸エステルを高選択率で得るには原料であるグリコール酸エステルの転化率を抑える必要があり、転化率と選択率の向上のために改善の余地がある。
【0003】また、特開平8―34762号公報では担持リン酸銅触媒を用いる方法が開示されているが、まだ十分なグリオキシル酸エステルの収率は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させα−オキソカルボン酸エステルを製造する際に、高転化率、高選択率が得られる工業的に有利なα−オキソカルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべくα−オキソカルボン酸エステルの製造方法を種々検討した結果、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含む触媒の存在下で、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させることで、高転化率、高選択率が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【発明の実施形態】本発明で使用されるα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、カルボニル基のα位にヒドロキシル基を有するカルボン酸エステル類であればよい。具体的には次の一般式(I)で示される化合物である。
【0007】
【化1】

【0008】(式中、R1は水素原子、又は、炭素数1〜6の脂肪族低級アルキル基、脂肪族低級アルキル基で置換されても良いフェニル基及びベンジル基、から選ばれる置換基を、R2は炭素数1〜6の脂肪族低級アルキル基を示す)
具体的には、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸n−プロピル、グリコール酸i−プロピル、グリコール酸n−ブチル、グリコール酸n−ペンチル、グリコール酸n−ヘキシル等のグリコール酸エステル:乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸n−ペンチル、乳酸n−ヘキシル等の乳酸エステル:マンデル酸メチル、マンデル酸エチル、マンデル酸n−プロピル、マンデル酸i−プロピル、マンデル酸n−ブチル、マンデル酸n−ペンチル、マンデル酸n−ヘキシル等のマンデル酸エステル:α−ヒドロキシ桂皮酸メチル、α−ヒドロキシ桂皮酸エチル、α−ヒドロキシ桂皮酸n−プロピル、α−ヒドロキシ桂皮酸i−プロピル、α−ヒドロキシ桂皮酸n−ブチル、α−ヒドロキシ桂皮酸n−ブチル、α−ヒドロキシ桂皮酸n−ペンチル、α−ヒドロキシ桂皮酸n−ヘキシル等のα−ヒドロキシ桂皮酸エステルなどを挙げることができる。
【0009】総炭素数が3〜8のグリコール酸エステル類、総炭素数が4〜9の乳酸エステル類が好ましい。
【0010】本発明で得られるα−オキソカルボン酸エステルは、原料であるα−ヒドロキシカルボン酸エステルのα位のヒドロキシル基が酸化されてカルボニル基に変換されたカルボン酸エステル類であればよい。具体的には、次の一般式(II)で示される化合物である。
【0011】
【化2】

【0012】(式中、R1は水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族低級アルキル基、脂肪族低級アルキル基で置換されても良いフェニル基及びベンジル基、から選ばれる置換基を、R2 は炭素数1〜6の脂肪族低級アルキル基を示す)
具体的には、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸n−プロピル、グリオキシル酸i−プロピル、グリオキシル酸n−ブチル、グリオキシル酸n−ペンチル、グリオキシル酸n−ヘキシル等のグリオキシル酸エステル:ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、ピルビン酸i−プロピル、ピルビン酸n−ブチル、ピルビン酸n−ペンチル、ピルビン酸n−ヘキシル等のピルビン酸エステル:フェニルグリオキシル酸メチル、フェニルグリオキシル酸エチル、フェニルグリオキシル酸n−プロピル、フェニルグリオキシル酸i−プロピル、フェニルグリオキシル酸n−ブチル、フェニルグリオキシル酸n−ペンチル、フェニルグリオキシル酸n−ヘキシル等のフェニルグリオキシル酸エステル:フェニルピルビン酸メチル、フェニルピルビン酸エチル、フェニルピルビン酸n−プロピル、フェニルピルビン酸i−プロピル、フェニルピルビン酸n−ブチル、フェニルピルビン酸n−ペンチル、フェニルピルビン酸n−ヘキシル等のフェニルピルビン酸エステルなどを挙げることができる。
【0013】本発明で使用される酸素は、分子状酸素、触媒中の格子酸素等の使用が挙げられるが、一般には分子状酸素含有ガスが用いられる。分子状酸素含有ガスとしては空気、酸素、それらを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈された混合ガスを使用することができるが、工業的には空気または空気と不活性ガスとの混合ガスを使用するのが好ましい。
【0014】本発明に使用される触媒はヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含有する触媒である。
【0015】ヘテロポリ酸とは、中心元素及び酸素が結合した周辺元素からなるものである。その中心(ヘテロ)原子としては、例えばリン、ケイ素、ヒ素、ホウ素、ゲルマニウム、及びベリリウム等が挙げられ、又、周辺(ポリ)原子としては、例えばモリブデン、バナジウム、タングステン、チタン、ニオブ、タンタル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、カドミウム、スズ、鉛等を挙げることが出来る。このようなヘテロポリ酸はまた「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」又は「酸化金属クラスター」として知られている。よく知られているヘテロポリアニオン類の幾つかの構造は、例えばケギン、ウエルス−ドーソン及びアンダーソン−エバンス−ペアロフ構造として知られている。中でも、ケギン構造を有する、モリブドリン酸、タングストリン酸、モリブドケイ酸、タングストケイ酸、モリブドバナドリン酸、モリブドバナドケイ酸、タングストバナドリン酸、タングストバナドケイ酸は入手が容易であり好ましい。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば700〜8500の範囲の分子量を有し、二量体錯体も含む。
【0016】ヘテロポリ酸の塩とは、上記ヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全てを置換した金属塩或いはオニウム塩である。ヘテロポリ酸の水素原子を置換できる金属は、周期律表における1族元素、2族元素、4族〜16族よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、又、ヘテロポリ酸のオニウム塩としては、アンモニウムやアミン類とのアンモニウム塩などが挙げられる。具体的にはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ランタン、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、金、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルルの金属塩又はオニウム塩である。
【0017】中でも触媒性能上好ましいヘテロポリ酸の塩としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、の塩であり、具体的には、リンモリブデン酸のナトリウム塩、リンモリブデン酸のカリウム塩、リンモリブデン酸セシウム塩、リンモリブデン酸のマグネシウム塩、リンモリブデン酸のカルシウム塩、リンモリブデン酸のバリウム塩、リンモリブデン酸のランタン塩、ケイモリブデン酸のナトリウム塩、ケイモリブデン酸のカリウム塩、ケイモリブデン酸のセシウム塩、ケイモリブデン酸のマグネシウム塩、ケイモリブデン酸のカルシウム塩、ケイモリブデン酸のバリウム塩及びケイモリブデン酸のランタン塩を挙げることができる。
【0018】本反応においてヘテロポリ酸よりもヘテロポリ酸塩の方が触媒のもつ酸点を制御することが出来るので、反応性能(転化率、選択率)を制御しやすくより好ましい。ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩はそのまま用いても、担体に担持して用いても良い。
【0019】ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を担体に担持して用いる場合の担持方法についての制限は特になく、公知の方法が可能である。具体的には、含浸法、スプレー法、蒸発乾固法、混練法等の手段が挙げられる。含浸の際に用いる溶媒としては、所望のヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を均一に溶解又は懸濁できるものであれば特に制限はなく、水、有機溶媒、又はそれらの混合物等が用いることが出来る。好ましくは、水、アルコール、カルボン酸類を例示することが出来る。
【0020】用いる担体としては特に限定されないが、反応に影響を与えず、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩と反応しない担体であれば良い。具体的にはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト、チタニア、炭化ケイ素等が挙げられる。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状、ハニカム状等が挙げられ、反応器の種類や反応形式等に応じて、適当な形に成形すればよい。
【0021】担持する場合のヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩の含有量は、担体の質量に対して、5質量%〜200質量%の範囲が好ましい。より好ましくは10質量%〜150質量%の範囲である。ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩の含有量が5質量%より少なくなると、触媒単位質量あたりの活性が低くなる恐れがあり好ましくない。また、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩の含有量が200質量%を超えると、有効表面積が減少し担持量を増やした効果が現れにくくなると同時にコーキングも発生しやすくなり、触媒寿命が著しく短くなる恐れがあり好ましくない。
【0022】上記触媒は、反応前に加熱オーブン内に数時間置いて乾燥することが適当であり、その後デシケータ内で周囲温度まで冷却する。乾燥温度に特に制限はないが、約400℃を超えるとヘテロポリ酸の骨格の破壊を招く恐れがあり好ましくない。好ましくは80℃〜350℃の範囲である。
【0023】ヘテロポリ酸及び/又はヘテロポリ酸塩の担持量は、調製触媒の乾燥質量から使用した担体の質量を差し引くことにより簡易的に計算できるし、より正確にはICP等の化学分析により測定することが出来る。
【0024】反応方法は気相、液相を特に限定しないが、例えば気相反応であれば、前記触媒の存在下、次のような反応条件で前記α−ヒドロキシカルボン酸エステルと前記酸素を気相接触反応させてα−オキソカルボン酸エステルを製造することができる。
【0025】反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃が好ましい。反応圧力に特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれの条件でも行うことが出来る。供給されるα−ヒドロキシカルボン酸エステルの濃度は0.1〜20vol%、好ましくは1.0〜15vol%。分子状酸素は0.03〜20vol%、好ましくは0.3〜15vol%の濃度が好ましい。このとき、α−ヒドロキシカルボン酸エステルに対する酸素のモル比(酸素/α−ヒドロキシカルボン酸エステル)は通常0.3〜5、好ましくは0.5〜2である。SV(空間速度:1時間当りの標準状態に換算した供給ガス量(L/hr)を、触媒量(L)で除した値)は500〜10000/hrが好ましい。なお、反応器は気相流通式の反応が行えるものであれば特に制限はなく、公知の固定床、流動床、移動床などいずれのものでもよいが、通常固定床が好適である。
【0026】使用するα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、どのような製法で得られたものでも良いが、例えばα−ヒドロキシカルボン酸とアルコールのエステル化で得られたものや、1,2ジオールを酸化してα−オキソアルデヒドおよび/又はα−ヒドロキシアルデヒドを経てアルコールと反応させ得られたものや、一酸化炭素とホルムアルデヒドから得られるポリグリコリドを加アルコール分解して得られたもの等が使用できる。
【0027】上記方法で得られたα−ヒドロキシカルボン酸エステルを含む反応後液はそのまま粗製品として使用しても良いし、精製工程を経て精製したものでも良いが、経済的には安価な粗製品を用いる方が有利である。
【0028】但し粗製のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを含む反応液は、副生物として水や、未反応原料のアルコールが混在する。混在する水は本反応において生成物であるα−オキソカルボン酸エステルの加水分解を促進するため、反応中にできるだけ共存しない方が好ましいが、精製のために脱水精製工程を入れることは経済的に好ましくない。
【0029】この水の悪影響を防ぐための対応策として共存のアルコール濃度を高めたり、アセトニトリル、トルエン、シクロヘキサン等の反応に不活性な溶媒で希釈する対応が好ましい。
【0030】アルコールや反応に不活性な溶媒を反応時に同伴することによりα−オキソカルボン酸エステルの収率が向上する原因は明らかではないが、反応の結果、化学量論上α−オキソカルボン酸エステル1モルに対し1モル生成する水により、生成したα−オキソカルボン酸エステルが加水分解してα−オキソカルボン酸となり、更には脱炭酸へと分解する反応を同伴したアルコールや不活性な溶媒が抑制するためであると推察される。
【0031】これらの溶媒の中でもα−オキソカルボン酸エステルのエステル部に相当するアルコールを同伴すると、α−オキソカルボン酸エステルの選択率を向上させることができるため好ましい。しかしながら、アルコールや反応に不活性な溶媒は反応後の精製において目的生成物であるα―オキソカルボン酸エステルとの分離が必要であり、経済的にはアルコールや不活性な溶媒を使用しなくとも、水存在下においてα−オキソカルボン酸エステルの収率が低下しないことが望ましい。これに対し本発明の触媒は、水の存在下でも高性能である。
【0032】アルコールと水の好ましい量範囲は、反応器入口での水濃度が1vol%以上の時、アルコール量は水1モルに対し10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましく、3モル以下が更に好ましい。
【0033】また、反応器入口の水濃度が1vol%未満の時、アルコールの濃度は供給するα−ヒドロキシカルボン酸エステル1モルに対し5モル以下が好ましく、4モル以下がより好ましく、3モル以下が更に好ましい。
【0034】以上のようにして、目的のα−オキソカルボン酸エステルが未反応のα−ヒドロキシカルボン酸エステルや副生する水などと共に得られるが、α−オキソカルボン酸エステルは蒸留等の公知の方法によって分離精製することが出来る。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する.但し、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0036】ここでα−ヒドロキシカルボン酸エステルの転化率、α−オキソカルボン酸エステルの選択率及びα−オキソカルボン酸エステルの収率は下記の式から導き出される。
【0037】α−ヒドロキシカルボン酸エステルの転化率(%)=反応したα−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル数/反応に供したα−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル数 × 100α−オキソカルボン酸エステルの選択率(%)=生成したα−オキソカルボン酸エステルのモル数/反応したα−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル数 ×100α−オキソカルボン酸エステルの収率(%)=α−ヒドロキシカルボン酸エステルの転化率(%)× α−オキソカルボン酸エステルの選択率(%)/100実施例1〔触媒の調製〕水21mlにリンモリブデン酸ナトリウム〔Na(PMo1240)・nHO:日本無機化学工業製〕15.0gを溶解した触媒調製液に、120℃で乾燥させた粒径2±1mmの炭化ケイ素(TSS−2S:東海高熱工業製)50.0gを加え1時間含浸を行った後、温浴上にて水分を除去した。次いで、この含浸物を空気中120℃で12時間乾燥し、更に空気中350℃で3時間焼成して触媒を調製した。得られた触媒を開口部0.85mmのふるいでふるった後120℃で12時間乾燥させ触媒重量を秤量した。リンモリブデン酸ナトリウムの担体重量に対する担持率は20.8質量%であった。
【0038】〔グリオキシル酸メチルの製造〕上記触媒18.0mlを内径10mmのSUS製のU時型反応管に充填後、反応管を230℃の溶融塩浴に浸した。触媒層内の温度が溶融塩浴と同じ温度に達した後、グリコール酸メチル(ARDRICH社製)が3.2vol%、酸素が3.4vol%(残りは窒素)である混合ガスを常圧下、SVは1350/hrとなるように供給した。生成物は氷温下アセトンで捕集した後、FIDを備えたガスクロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィーにより分析した。反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は97.7%、グリオキシル酸メチルの選択率は96.6%であり、グリオキシル酸メチル収率は94.4%であった。
【0039】実施例2〔触媒の調製〕リンモリブデン酸〔H(PMo1240)・nHO:日本無機化学工業製〕の結晶水を島津製熱分析装置DTG−50Hにて測定したところ、28.3水塩であった。水20mlにこのリンモリブデン酸20g(8.6mmol)と硝酸カルシウム四水塩〔Ca(NO3・4H2O〕(12.8mmol)〕30.3gを溶解した触媒調製液に、120℃で乾燥させたシリカアルミナ(SA5218:ノートン社製を粒径1〜2mmに破砕)50.0gを加え1時間含浸を行った後、温浴上にて水分を除去した。次いで、この含浸物を空気中120℃で12時間乾燥し、更に空気中350℃で3時間焼成して触媒を調製した。得られた触媒を開口部0.85mmのふるいでふるった後120℃で12時間乾燥させ触媒重量を秤量した。リンモリブデン酸カルシウムの担体重量に対する担持率は30.8質量%であった。
【0040】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を225℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は98.0%、グリオキシル酸メチルの選択率は95.1%であり、グリオキシル酸メチルの収率は93.2%であった。
【0041】実施例3〔触媒の調製〕実施例2において触媒調製液として水20mlにリンモリブデン酸20g(8.6mmol)と硝酸ランタン六水塩〔La(NO3・6H2O〕(8.6mmol)〕3.7gを用いた以外は、実施例2と同様に触媒を調製した。得られた触媒のリンモリブデン酸ランタンの担体重量に対する担持率は28.9質量%であった。
【0042】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を220℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は96.2%、グリオキシル酸メチルの選択率は94.3%であり、グリオキシル酸メチルの収率は90.7%であった。
【0043】実施例4〔触媒の調製〕実施例2において触媒調製液として水20mlにリンモリブデン酸20g(8.6mmol)と硝酸アルミニウム九水塩〔Al(NO3・9H2O〕(8.6mmol)〕3.2gを用いた以外は、実施例2と同様に触媒を調製した。得られた触媒のリンモリブデン酸アルミニウムの担体重量に対する担持率は20.9質量%であった。
【0044】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を215℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は97.1%、グリオキシル酸メチルの選択率は90.4%であり、グリオキシル酸メチルの収率は87.8%であった。
【0045】実施例5〔触媒の調製〕1Lの水に実施例2で使用したリンモリブデン酸100g(42.8mmol)を溶解させた溶液に、250mlの水に炭酸カリウム(KCO)8.88g(64.2mmol)を溶解させた溶液を、溶液のpHが2を超えないように、攪拌しながらゆっくりと常温で滴下した。この溶液をさらに一晩攪拌した後ろ過を行い、沈殿物を得た。得られた沈殿物を空気中120℃で12時間乾燥し、更に空気中350℃で3時間焼成してリンモリブデン酸カリウム(KPMo1240・nHO)を調製した。このリンモリブデン酸カリウムをプレス成形した後、粒径1−2mmの大きさに破砕し触媒とした。また、得られたリンモリブデン酸カリウムがケギン構造を保っていることはIR測定にて確認した。
【0046】〔グリオキシル酸メチルの製造〕上記触媒3.6mlを用い、グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を240℃とし、SVを6750/hrとした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は96.5%、グリオキシル酸メチルの選択率は94.0%であり、グリオキシル酸メチルの収率は90.7%であった。
【0047】実施例6〔触媒の調製〕実施例2において触媒調製液として水20mlにリンモリブデン酸20g(8.6mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に触媒を調製した。得られた触媒のリンモリブデン酸の担体重量に対する担持率は16.9質量%であった。
【0048】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を200℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は99.1%、グリオキシル酸メチルの選択率は89.7%であり、グリオキシル酸メチルの収率は88.9%であった。
【0049】実施例7〔触媒の調製〕実施例2において触媒調製液として水20mlにケイモリブデン酸〔H(SiMo1240)・nHO:日本無機化学工業製〕20gを用いた以外は、実施例2と同様に触媒を調製した。得られた触媒のケイモリブデン酸の担体重量に対する担持率は26.6質量%であった。
【0050】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は96.0%、グリオキシル酸メチルの選択率は90.5%であり、グリオキシル酸メチルの収率は86.9%であった。
【0051】比較例1特開平8‐34762号公報(実施例19)に記載の触媒調製方法に準じて調製を行った。
〔触媒の調製〕水13.4mlに硝酸第二銅三水塩〔Cu(NO・3HO〕10.78g(44.6mmol)、硝酸第二鉄九水塩〔Fe(NO・9HO〕18.04g(44.6mmol)及び85%リン酸8.69g(75.4mmol)を溶解した触媒調製液に、粒径2±1mmの炭化ケイ素(TSS−2S:東海高熱工業製)50.0gを加えて0.5時間含浸を行った後、真空下、40℃で水分を除去した。次いで、この含浸物を空気中110℃で12時間乾燥し、更に空気中400℃及び800℃でそれぞれ3時間焼成して触媒を調製した。得られた触媒のリン酸銅及びリン酸鉄の担持量は蛍光X線分析より銅及び鉄原子換算でそれぞれ4.7、1.0質量%であった。
【0052】〔グリオキシル酸メチルの製造〕グリコール酸メチルの転化率をそろえ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を240℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は95.8%、グリオキシル酸メチルの選択率は88.5%であり、グリオキシル酸メチルの収率は84.8%であった。本発明のヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含む触媒はより高収率であることが分った。
【0053】実施例8〔グリオキシル酸メチルの製造〕実施例1の触媒を用い、実施例1において触媒量を22.5ml、溶融塩の温度を270℃、混合ガスの組成をメタノールが16.7vol%、グリコール酸メチルが3.2vol%、水が10.3vol%、酸素が3.4vol%(窒素バランス)、SV=1100/hrに変えたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は97.3%、グリオキシル酸メチルの選択率は94.0%であり、グリオキシル酸メチル収率は91.5%であった。
【0054】比較例2〔グリオキシル酸メチルの製造〕比較例1の触媒を用い、グリコール酸メチルの転化率をあわせ、触媒性能の比較をしやすくするために、反応温度を240℃とした以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応6時間後のグリコール酸メチルの転化率は95.8%、グリオキシル酸メチルの選択率は88.5%であり、グリオキシル酸メチル収率は84.8%であった。本発明のヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含む触媒は水・メタノールが共存しても高収率であることが分った。
【0055】
【発明の効果】本発明により、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと酸素を反応させα−オキソカルボン酸エステルを高収率で製造することが出来る。また、水共存下でも従来よりも、高性能(転化率、選択率)であり、経時劣化も少なく、α−オキソカルボン酸エステルを製造することが出来る。
【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号
【出願日】 平成14年3月11日(2002.3.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−261507(P2003−261507A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−64656(P2002−64656)