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【発明の名称】 (メタ)アクリル酸エステルの製造方法
【発明者】 【氏名】徳田 正徳
【住所又は居所】広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨン株式会社中央技術研究所内

【氏名】福井 友基
【住所又は居所】広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨン株式会社中央技術研究所内

【要約】 【課題】本発明は、(メタ)アクリル酸エステルとアルコール類とをエステル交換反応させて目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、触媒として新規に使用するアルコキシチタン化合物の量を減らすことが可能で経済的かつ環境負荷の小さな製造方法を提供することを目的とする。

【解決手段】チタン化合物触媒の存在下、原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルと原料アルコール類とをエステル交換反応させて目的(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、反応液から未反応の原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル、原料アルコール類および目的(メタ)アクリル酸エステルを蒸留して回収した後の触媒含む残渣液を再生用アルコールと接触させ、アルコール交換反応によりアルコキシチタン化合物を再生回収し、これをエステル交換反応触媒の少なくとも一部として再使用することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エステル交換反応触媒として、チタン化合物触媒の存在下、原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルと原料アルコール類とをエステル交換反応させて目的(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、反応液から未反応の原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル、原料アルコール類および目的(メタ)アクリル酸エステルを蒸留して回収した後の触媒を含む残渣液を再生用アルコールと接触させ、アルコール交換反応によりアルコキシチタン化合物を再生回収し、これをエステル交換反応触媒の少なくとも一部として再使用することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】 前記残渣液をろ過したろ液と前記再生用アルコールを接触させてアルコール交換反応させ、アルコキシチタン化合物を固体として析出させて再生回収することを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】 アルコール交換反応に用いる前記再生用アルコールがメタノールであることを特徴とする請求項1または2記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項4】 アルコール交換反応に用いる前記再生用アルコール中の水分が500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項5】 再生回収されたアルコキシチタン化合物が、テトラアルコキシチタンを含む請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関し、詳しくは、反応触媒を経済的かつ工業的に容易に再生回収して、再使用する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】テトラアルコキシチタンは反応活性や選択性が極めて高く、エステル交換反応または直接エステル化反応の触媒として広く用いられている。例えば、英国特許第962928号明細書には触媒としてテトラアルコキシチタンを用い、重合防止剤としてヒドロキノンまたはメチレンブルーを用いる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が開示されている。また、特開昭49−26223号公報には触媒としてテトライソプロポキシチタンを用い、重合防止剤としてベンゼン核またはナフタレン核を含有したアミノ化合物を用いる不飽和エステルのエステル交換方法が開示されている。
【0003】テトラアルコキシチタン触媒はエステル交換反応終了後の反応液から、原料または目的物を蒸留して取り出し後、高沸点物として濃縮された後、通常廃棄物として処理されている。しかし、触媒を使い捨てにすることで、生産コストが増大するばかりでなく、環境に対する負荷が大きいという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この問題に対応するため、触媒分を含む高沸点濃縮物をそのまま反応系にリサイクルする方法が行われる。しかしこの場合、一部触媒が失活し、新規触媒と比較し活性が低下する場合がある。さらに、本発明のように目的の生成物が不飽和カルボン酸エステルの場合、リサイクルすることによって重合が起こりやすくなる恐れがある。
【0005】本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコール類とをエステル交換反応させて目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、触媒として新規に使用するアルコキシチタン化合物の量を減らすことが可能で経済的かつ環境負荷の小さな製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、エステル交換反応触媒としてアルコキシチタン化合物の存在下、原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルと原料アルコール類とをエステル交換反応させて目的(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、反応液から未反応の原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル、原料アルコール類および目的(メタ)アクリル酸エステルを蒸留して回収した後の触媒を含む残渣液を再生用アルコールと接触させ、アルコール交換反応によりアルコキシチタン化合物を再生回収し、これをエステル交換反応触媒の少なくとも一部として再使用することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【0007】本発明では、触媒含む残渣液を再生用アルコールと接触させたときに、触媒活性のあるアルコキシチタン化合物の形で、触媒チタン化合物を回収できるので、これをエステル交換反応触媒に再使用することができる。その結果、新規に使用するアルコキシチタン化合物の量を減らすことが可能で経済的であると共に、環境に与える負荷を小さくすることができるのである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で用いる原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよびメタクリル酸ブチルなどが好ましい。ここで「(メタ)アクリル」とは、常用されるように「アクリル」および「メタクリル」を意味する。
【0009】また本発明で用いる原料アルコール類としては、例えばアルカノール類、アルコキシアルカノール類、アルケノキシアルカノール類、アルケノール類、フェノキシアルカノール類、シクロアルカノール類、アルキルシクロアルカノール類、シクロアルキルアルカノール類、フェニルアルカノール類、アルキルフェニルアルカノール類、ハロアルカノール類、シアノアルカノール類、アミノアルカノール類などが挙げられる。特に、炭素数が2以上で20以下のものが好ましい。
【0010】このようなアルコール類の中でも、アルカノール類、アルケノール類、アミノアルケノール類が好ましく、アルカノール類が特に好ましい。
【0011】具体的には、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、トリデカノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、シクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、4−ターシャリーブチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、アリルアルコール、メタリルアルコールなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0012】原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルと原料アルコール類との仕込み混合比率は、任意に設定することができるが、目的とする化合物の生産性の観点から原料アルコール類1モルに対して、通常、原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.1〜10モルであり、好ましくは0.3〜4モルである。
【0013】本発明でエステル交換反応触媒として用いるチタン化合物触媒は、テトラアルコキシチタンに代表される一般にエステル交換触媒として用いられるものであり、例えばTiR1234で表したとき、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水酸基(OH)、炭素数18までのアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルもしくはアルコキシアミノ基である。また、アセチルアセトナート基のようなキレートを形成する基であってもよい。このときアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、ハロゲン、シアノ基、アルキルアミノ基で置換されていてもよいし、アリール基は水素原子がアルキル基で置換されたものでもよい。中でも、Tiにアルコキシ基が少なくとも1つ以上結合したアルコキシチタン化合物が好ましく、アルコキシ基が4つ結合したテトラアルコキシチタンが特に好ましい。
【0014】チタン化合物触媒としては、具体的には、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、トリn−ブトキシチタンステアレート、イソプロポキシチタントリステアレート等が挙げられる。
【0015】チタン化合物触媒はいずれか一種類を用いても良いが、2種以上任意の混合物であっても良い。エステル交換反応に用いるチタン化合物触媒の使用量は、使用される原料アルコールのモルに対して、0.01〜30モル%、好ましくは0.03〜10モル%である。触媒使用量は少なすぎると、目的(メタ)アクリル酸エステルの収率が低下したり、未反応物の回収量が増えたり、反応時間が長くなって生産性が低下するなどの欠点がある。また、多すぎても、目的(メタ)アクリル酸エステルの収率や、反応時間などが大きく変化することはなく、ただ単に触媒使用量の増大をもたらすだけである。
【0016】触媒の反応液への添加方法はこれら触媒を原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル、原料アルコール類および重合防止剤と共に反応容器に添加しても良いが、チタン化合物触媒は原料中の水分により活性が低下してしまうため、あらかじめ脱水操作を行って水分を低減させた原料に触媒を添加することが好ましい。また、必要に応じて、反応中に分割添加しても良い。
【0017】エステル交換反応の圧力は減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。反応温度は特に制限はなく、設定圧力における反応溶液の沸点温度で自由に設定することができるが、反応速度論の面からは高温の方が望ましい。ただし、重合防止の観点から150℃以下が好ましい。
【0018】反応の進行と共に、原料(メタ)アクリル酸アルキルエステルから副生するアルコールは原料(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は適当な溶媒との共沸混合物として反応系外に取り出すことも可能である。
【0019】エステル交換反応で用いる重合防止剤は特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンおよびN−オキシル化合物等を用いることができる。
【0020】チタン化合物触媒は、エステル交換反応以降、一部または全部が元の触媒とは別の化合物に変化していると推定される。具体的にどのように変化するかは明らかでないが、例えば元の触媒がTiR1234の場合、R1、R2、R3、R4の一部または全部が原料のアルコール由来のアルコキシ基、または水酸基やエステル基に置換した化合物が含まれていると推定される。
【0021】エステル交換反応の反応形式はバッチ式でも連続式でも可能であるが、バッチ式の方が好ましい。本発明ではどちらの反応形式の場合でも、エステル交換反応後の反応液より、原料および目的の生成物を蒸留した後の残渣液からチタン化合物を回収する。通常、残渣液にはチタン原子として1〜30重量%のチタン化合物を含む。残渣液が、ポリマー等の固形分を含んでいる場合、固形分をろ別することが好ましい。
【0022】本発明では、エステル交換反応に使用されたチタン化合物触媒を、アルコール交換反応にて、再度触媒として使用可能なアルコキシチタン化合物として回収するものである。アルコール交換反応は、例えばBradley, d.c, Wardlaw, W., J.Chem. Soc. 1952, 2773〜2778 およびEmelyanova, I. Suvorov, A. L., Pozdeev, A. A. ,Ir. Inst. Khi., Akad. Nauk SSSR, Ural. Filial 1968, No. 15, 53〜7に記載されており、本発明では、このようなアルコール交換反応を用いてアルコキシチタン化合物を回収することができる。適当な装置を用いて残渣液と再生用アルコールとを適当な反応温度にて液相にて混合接触させることで、アルコール交換反応させる。反応温度は、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は適宜選ぶことができるが通常1〜3時間程度である。
【0023】再生回収のために用いる再生用アルコールは回収されるアルコキシチタン化合物が固体として得られるものが好ましく、このような再生用アルコールとしては、具体的には、メタノール、ターシャリーブタノール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。中でも、メタノールが好適である。
【0024】前述のようにテトラアルコキシチタンは水分と速やかに反応し、不活性体である酸化物となるため、これらアルコール交換反応に用いる再生用アルコールはできるだけ低水分品を用い、さらには再生回収工程では水分をできるだけ減らした上で扱うことが好ましい。再生用アルコールの水分濃度は好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。
【0025】用いる再生用アルコールのモル比は処理液中に含まれるチタン1モルに対して好ましくは8〜60モルである。
【0026】アルコール交換反応後の反応液は30℃以下とすることで、アルコキシチタン化合物が析出する。反応液中のアルコキシチタン化合物は、ろ過、遠心分離等の固液分離手段により分離回収する。再生回収されたアルコキシチタン化合物は、再生用アルコールに由来するアルコキシ基を有している。アルコキシチタン化合物はテトラアルコキシチタンを高い割合で含有していること、即ち、触媒の大部分がテトラアルコキシチタンの形で回収されることが好ましい。さらに必要に応じて用いた再生用アルコールで固形物を洗浄、さらに乾燥することにより高純度品を得ることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例をあげて説明する。反応液中の成分は、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。なお、本明細書で用いる転化率および選択率の定義は以下の通りである。
転化率(%)=(反応した原料アルコールモル数/供給した原料アルコールモル数)×100選択率(%)=(生成した(メタ)アクリル酸エステル/反応した原料アルコールモル数)×100[実施例1]20段オルダーショウ蒸留塔を備えた200L容の反応器にメタクリル酸メチル103.1kg(1030モル)、n−ブタノール44.5kg(600モル)、テトラn−ブトキシチタン102.0g(0.3モル)および17.1gのフェノチアジンを仕込み、空気気流下に攪拌して3.5時間還流下にエステル交換反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、n−ブタノールの転化率は98.2%、メタクリル酸n−ブチルの選択率は100%であった。この間、反応で生成するメタノールはメタクリル酸メチルとの共沸で系外に除去した。このとき反応液の温度は102℃から133℃まで上昇した。その後、減圧下で未反応のメタクリル酸メチル、n−ブタノール、および生成したメタクリル酸n−ブチルを留去し、260gの濃縮残渣液を得た。さらに、濃縮残渣液を加圧ろ過器(ろ紙はTOYO製No.2)にて200kPaの窒素加圧下でろ過して固形分をろ別した。固形分をろ別した濃縮残渣液の量は258g、組成は、有機チタン化合物 43%(Tiとして0.3モル)、n−ブチルメタクリレート 55%、重合防止剤 2%であった。
【0028】攪拌機、冷却器、温度計、滴下ロートを備えた反応器にメタノール192.2g(6モル)を仕込み、メタノールを還流させた。窒素雰囲気下にて固形分をろ別した有機チタン化合物を含む濃縮残渣液258gを1時間かけて滴下した。滴下終了後メタノール還流下にて2時間熟成した後30℃まで冷却した。この液を100kPaの窒素加圧下でろ過し、ろ過残として固体状のテトラメトキシチタン(純度70%)65.3gを得た。
【0029】20段オルダーショウ蒸留塔を備えた2L容の側管付き四つ口フラスコにメタクリル酸メチル1031g(10.3モル)、n−ブタノール445g(6モル)、上記方法にて得られたテトラメトキシチタン0.74g(0.003モル)およびフェノチアジン0.17gを仕込み2.5時間還流下にエステル交換反応を行った。n−ブタノールの転化率は97.4%、メタクリル酸n−ブチルの選択率は100%であった。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、エステル交換反応によって目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、エステル交換触媒を再生回収して、再使用することができるので、触媒として新規に使用するアルコキシチタン化合物の量を減らすことが可能で経済的かつ環境負荷の小さな製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南一丁目6番41号
【出願日】 平成14年3月6日(2002.3.6)
【代理人】 【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
【公開番号】 特開2003−261504(P2003−261504A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−60462(P2002−60462)