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【発明の名称】 シクロドデカトリエンの蒸留精製方法
【発明者】 【氏名】二宮 康平
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部興産株式会社宇部ケミカル工場内

【氏名】杉本 常実
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【氏名】山中 光男
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部興産株式会社宇部ケミカル工場内

【氏名】釘本 純一
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部興産株式会社宇部ケミカル工場内

【氏名】藤田 敏行
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部興産株式会社宇部ケミカル工場内

【氏名】船津 城司
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部興産株式会社宇部ケミカル工場内

【要約】 【課題】シクロドデカトリエン粗製物を効率よく、かつ少ない残さ生成量で蒸留する方法を提供するものである。

【解決手段】シクロドデカトリエン粗製物を蒸留精製する方法において、シクロドデカトリエン粗製物中に含まれる過酸化物の含有量を0.002mmol/g以下にコントロールして蒸留する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シクロドデカトリエン粗製物を蒸留してシクロドデカトリエンを精製する際に、シクロドデカトリエン粗製物中に含まれる過酸化物の含有量を0.002mmol/g以下にコントロールすることを特徴とするシクロドデカトリエンの蒸留精製方法。
【請求項2】 前記過酸化物の含有量をコントロールするために、前記シクロドデカトリエン粗製物に酸化防止剤を添加する請求項1記載のシクロドデカトリエンの蒸留方法。
【請求項3】 前記過酸化物の含有量をコントロールするために、前記シクロドデカトリエン粗製物に、塩基性化合物含有水溶液による過酸化物分解除去処理を施す、請求項1記載のシクロドデカトリエンの蒸留方法。
【請求項4】 前記過酸化物の含有量をコントロールするために、前記シクロドデカトリエン粗製物を酸素含有量が100ppm 以下の不活性ガス中に保存する、請求項1記載のシクロドデカトリエンの蒸留方法。
【請求項5】 蒸留が、蒸留圧力533.3〜53328.8Pa(4〜400torr)、蒸留温度90〜230℃の条件下で施される請求項1記載のシクロドデカトリエンの蒸留方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シクロドデカトリエン粗製物の蒸留精製方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、シクロドデカトリエン粗製物を効率よく蒸留精製し、かつ蒸留残渣量の少ない蒸留精製方法に関するものである。シクロドデカトリエンは、還元工程および/または酸化工程を経てシクロドデカノンを製造する原料として有用なものであり、このシクロドデカノンは、ラウロラクタムの原料として有用なものである。
【0002】
【従来技術】シクロドデカトリエンは二重結合を3個含む環状炭化水素化合物であり、これを従来法により蒸留精製すると、蒸留残渣が生成し、その蒸留精製効率は不満足なものであった。その原因を検討したところ、下記の現象が認められた。すなわちシクロドデカトリエン粗製物を通常の酸素雰囲気下に放置しておくと容易に酸化されて、シクロドデカトリエンの過酸化物を生成する。このような過酸化物を不純物として含むシクロドデカトリエン粗製物をそのまま蒸留すると、蒸留時に、例えばシクロドデカトリエンの重合により、蒸留残渣が生成し、このため蒸留精製効率が低下することが判明した。このようなシクロドデカトリエン粗製物に含まれる過酸化物の、蒸留結果に及ぼす影響、及びその発生機構については、これまでまったく知られていなかったのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、シクロドデカトリエン粗製物を、蒸留残渣の生成量を少なくして効率よく蒸留精製する方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は本発明の方法により達成される。本発明のシクロドデカトリエンの蒸留精製方法はシクロドデカトリエン含有粗製物を蒸留してシクロドデカトリエンを精製する方法において、シクロドデカトリエン粗製物中に含まれる過酸化物の含有量を0.002mmol/g以下にコントロールすることを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の蒸留精製方法に供されるシクロドデカトリエン粗製物は、公知の1,3−ブタジエンの三量化反応により得ることができる。例えば、適当な溶媒の存在下、触媒としてチタンハロゲニドおよびアルキルアルミニウムハロゲニドの混合触媒(通称、チーグラー・ナッタ触媒)を用いて、1,3−ブタジエンを三量化することによりシクロドデカトリエンを製造し、シクロドデカトリエン含有粗製物を得ることができる。シクロドデカトリエンには、異性体としてシス体およびトランス体が存在するが、本発明方法に係るシクロドデカジエンは上記異性体のいずれであってもよく、或はこれらの混合物であってもよい。
【0006】本発明方法に供されるシクロドデカトリエン粗製物には、それに含まれる過酸化物の含有量を0.002mmol/g以下好ましくは0.001mmol/g、更に好ましくは0.0005mmol/gにコントロールする手段が施される。蒸留に供されるシクロドデカトリエン粗製物中の過酸化物の含有量が0.002mmol/gより多くなると、蒸留効率が低下し、蒸留残渣の生成量が増大する。
【0007】なお、本発明方法において、前記過酸化物は特定の化学物質に限定されるものではなく、各種有機過酸化物の単独体であってもよく、または、複数の化合物混合物であってもよい。また、本発明方法において、過酸化物の含有量は、供試シクロドデカトリエン含有試料1gについて、ヨウ素滴定法によりそれに含有されている活性酸素量を分析し、得られた分析結果について、活性酸素1ミリ当量を過酸化物の1ミリモル(mmol)として計算して定量する。
【0008】本発明の蒸留方法に供されるシクロドデカトリエン粗製物中に不純物として含まれる過酸化物の含有量を0.002mmol/g以下にコントロールするためには、シクロドデカトリエン粗製物に酸化防止剤を添加して、シクロドデカトリエン粗製物中の過酸化物含有量をコントロールする方法、シクロドデカトリエン粗製物を塩基性化合物含有水溶液に接触させて過酸化物を分解除去する処理法、或いはシクロドデカトリエン粗製物を酸素含有量が100ppm 以下の不活性ガス(例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等)中に常温又は低温(例えば−15〜10℃)に保存して、シクロドデカトリエン粗製物中の過酸化物含有量をコントロールする方法などがある。
【0009】シクロドデカトリエン粗製物に酸化防止剤を添加する処理法に用いられる酸化防止剤としては、例えば、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)の1種以上を使用することができるが、これらに限定されるものではなくシクロドデカトリエンと反応せず、有機過酸化物の生成を抑止する作用を有するものであれば、いかなる化合物も使用することができる。シクロドデカトリエン粗製物に添加する酸化防止剤の使用量としては、シクロドデカトリエン粗製物の1重量部に対し、1〜100ppm であることが好ましい。さらに好ましくは3〜50ppm である。この添加量が1ppm 未満であれば、有機過酸化物生成を抑止する効果が低く、有機過酸化物の濃度を0.002mmol/g以下に保つことができないことがある。また、この添加量が100ppm を超えると、有機過酸化物の濃度を0.002mmol/g以下にコントロールする効果は十分であるが、シクロドデカトリエンの製造コストが高くなりすぎることがある。
【0010】過酸化物を含むシクロドデカトリエン粗製物の接触分解処理に供する塩基性化合物含有水溶液は、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を含む塩基性無機化合物、又はアンモニアを含有する水溶液であり、この水溶液のpHが7より大きく、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上のものが用いられる。これらの水溶性無機化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属亜硫酸塩から選ぶことができる。好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、及びアルカリ金属亜硫酸塩が用いられ、より好ましくはアルカリ金属水酸化物が用いられる。
【0011】アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。アルカリ金属重炭酸塩の具体例としては、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ亜硫酸塩の具体例としては、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。これらのアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の添加は、単独もしくは複数混合した状態で使用しても良い。
【0012】これらの塩基性無機化合物水溶液による処理方法には、特に制限はなく、固体形状のままシクロドデカトリエン溶液に添加し、これに水を加える方法、もしくは塩基性化合物の水溶液を調整し、これをもってシクロドデカトリエン粗製物の溶液を処理する方法等があるが、取扱いの容易さから、予め塩基性化合物含有水溶液を調製し、これをもって、シクロドデカトリエン粗製物溶液を処理する方法が好ましい。
【0013】塩基性化合物水溶液の濃度としては、通常0.01〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。塩基性化合物水溶液の使用量は、シクロドデカトリエン粗製物重量に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは1.0〜5重量%である。その使用量が余りに多いと、使用ずみ塩基性化合物水溶液水の後処理が新たに必要となる。
【0014】塩基性化合物水溶液を用いる処理装置としては、シクロドデカトリエンと塩基性化合物水溶液を十分に混合できる撹拌装置を備えたものであれば特に制限はないが、例えば、槽型装置あるいはスタティックミキサー装置を用いることが好ましい。
【0015】塩基性化合物水溶液による処理温度は、シクロドデカトリエンの融点以上である限り特に制限はなく、好ましくは35〜120℃、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃の範囲内にある。それが余りに高いとシクロドデカトリエンの副反応を生ずる場合がある。
【0016】塩基性化合物水溶液による処理時間は、処理装置の形式により異なる。槽型装置を用いる場合の処理時間は、1〜90分の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは2〜60分であり、更に好ましくは5〜40分である。スタティックミキサー装置を用いる場合の処理時間は、0.01〜5秒であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3秒であり、更に好ましくは0.1〜2秒である。
【0017】本発明方法において、前記塩基性化合物水溶液による処理は、通常、常圧で行われるが、必要ならば加圧または減圧下で行っても差し支えない。
【0018】シクロドデカトリエン粗製物に対する蒸留の条件は、通常、窒素などの不活性ガスにより、蒸留塔内の空気をパージしながら減圧下で実施する。好ましくは圧力533.3〜53328.8Pa(4〜400torr)で、蒸留温度は90〜230℃、更に好ましくは圧力3999.7〜27330.2Pa(30〜280torr)、蒸留温度130〜200℃でシクロドデカトリエン粗製物の蒸留が行われる。圧力が余りに低いと蒸留温度は下げられるが、蒸留装置が過度に大型化し蒸留時間も長くなりすぎることがあり、常圧下での実施も可能であるが、この場合は、蒸留温度はシクロドデカトリエンの沸点となるから、シクロドデカトリエンが、反応し、その収量が低下する傾向が大きくなることがある。また、場合によっては、シクロドデカトリエン粗製物にトリフェニルホスフィンなどの還元剤を加えて蒸留することも可能である。蒸留装置としては、通常のスニダー型単蒸留装置や、規則充填塔型蒸留装置、多孔板塔型蒸留装置、及び泡鐘塔型蒸留装置等を用いることができる。
【0019】
【実施例】本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。
【0020】実施例1容量1000mlのナシ型フラスコに、有機過酸化物の含有量が0.0002mmol/gにコントロールされたシクロドデカトリエン粗製物650gを仕込み、フラスコ内の空気を窒素ガスにより十分に置換した。その後、窒素ガスを少量パージしながら、170℃、真空度17331.9Pa(130torr)において、シクロドデカトリエン粗製物を単蒸留した。蒸留後の釜残留物の重量を測定し、釜残留物中に含まれているシクロドデカトリエンの量をガスクロマトグラフィーで定量分析し、釜残留物量から除外した。その結果、実質の蒸留残さ量は、仕込量に対して0.031wt%であった。
(計算式)
蒸留残さ=[釜残留物量(g)−CDT(g)]/仕込CDT(g)×100単位(wt%),CDT:シクロドデカトリエン【0021】実施例2および3実施例1において、表1に示した蒸留条件に代えた以外は実施例1と同様にして蒸留を行った。その結果を表1に示す。
【0022】実施例4実施例1において、過酸化物含有量が0.0007mmol/gのシクロドデカトリエン粗製物を蒸留に使用し、表1で示した蒸留条件において、実施例1と同様にして蒸留を行った。その結果を表1に示す。
【0023】実施例5実施例1において、過酸化物含有量が0.0006mmol/gのシクロドデカトリエン粗製物を蒸留に使用し、蒸留温度190℃、蒸留圧力26664.4Pa(200torr)において蒸留を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0024】実施例6実施例1と同様にして蒸留を行った。但し、シクロドデカトリエン粗製物に、酸化防止剤として4−t−ブチルカテコール5ppm を添加し、室温下、空気雰囲気下にて1ヶ月半放置したところ、その過酸化物含有量が0.0003mmol/gとなった。このシクロドデカトリエン粗製物を蒸留に使用した。その結果、実質の蒸留残さ量は、仕込量に対して0.048wt%であった。この結果を表1に示す。
【0025】実施例7実施例1と同様の蒸留を行った。但し、シクロドデカリエン粗製物と、酸化防止剤4−t−ブチルカテコール5ppm を添加し、室温下空気雰囲気下にて2ヶ月放置したところ、過酸化物含有量が0.0014mmol/gになった。このシクロドデカトリエン粗製物を蒸留に使用した。その結果、実質の蒸留残さ量は、仕込量に対して0.078wt%であった。この結果を表1に示す。
【0026】実施例8室温下、空気雰囲気下に放置したシクロドデカトリエン粗製物の過酸化物含有量が0.0034mmol/gであった。このシクロドデカトリエン粗製物750重量部に、2wt%の水酸化ナトリウム水溶液20重量部を仕込み、45℃の温度で20分間撹拌混合した。この混合処理液を常温まで冷却し、分液ロートを用いて、処理ずみシクロドデカトリエン粗製物を分別した。分別されたシクロドデカトリエン粗製物中の過酸化物の濃度をヨードメトリー滴定法で定量したところ、その過酸化物濃度は0.0011mmol/gであった。このシクロドデカトリエン粗製物を実施例1と同様な操作により、蒸留温度150℃、蒸留圧力11999Pa(90torr)で蒸留を行った。その結果、蒸留残さ量は仕込量の0.042wt%であった。この結果を表1に示す。
【0027】比較例1および2比較例1及び2の各々において、実施例1と同様の蒸留を行った。但し、室温下、空気中に長期保存しておいたシクロドデカトリエン粗製物の有機過酸化物の含有量は0.0027mmol/g(比較例1)、及び0.0081mmol/g(比較例2)であった。その結果を表1に示す。
【0028】比較例3有機過酸化物含有量が0.0034mmol/gのシクロドデカトリエン粗製物を実施例8と同様の蒸留に供した。蒸留は、蒸留温度150℃、圧力11999Pa(90torr)で実施した。その結果を表1に示す。
【0029】比較例4実施例1と同様にして蒸留を行った。但し、酸化防止剤4−t−ブチルカテコール5ppm を添加し、室温下、空気雰囲気下にて3ヶ月放置し、過酸化物含有量が0.0477mmol/gのシクロドデカトリエン粗製物を用いた。その結果、実質の蒸留残さ量は、仕込量に対して1.72wt%であった。この結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【発明の効果】本発明方法により、シクロドデカトリエン粗製物を効率よくかつ、残さの生成量を少なくして蒸留することができる。
【出願人】 【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の96
【出願日】 平成13年9月19日(2001.9.19)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2003−89662(P2003−89662A)
【公開日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願番号】 特願2001−285573(P2001−285573)