| 【発明の名称】 |
生理食塩水に可溶な無機繊維とその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大沢 正人 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
【氏名】三須 安雄 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
【氏名】大宮 修史 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
【氏名】根本 孝司 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
【氏名】杉山 勝 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
【氏名】平田 公男 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町4番4号 糸重ビル 東芝モノフラックス株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】アルミナシリカ系のセラミックファイバーと同水準の耐熱性を有していながら、生理食塩水に可溶であること、さらに、熱履歴を持った後も生理学的塩類溶液に高い溶解性を維持する非晶質無機繊維を提供する。
【解決手段】MgO、SrO、CaOおよびSiO2を必須成分とした無機繊維であって、該繊維の真空成形プリフォームが1260℃で24時間加熱された前後で3.5%以下の線収縮率を示すことを特徴とする無機繊維。SiO2が70.0重量%以上であり、MgOが5.0〜20.0重量%であり、SrOが0.5〜15.0重量%であり、CaOが0.5〜15.0重量%である。生理食塩水溶解率が1%以上である。無機繊維が熱履歴を持った後も、生理食塩水溶解率が1%以上である。MgO、CaOおよびSiO2を必須成分とする原料を、溶融し、繊維化する方法において、原料としてSrOを加える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 MgO、SrO、CaOおよびSiO2を必須成分とした無機繊維であって、該繊維の真空成形プリフォームが1260℃で24時間加熱された前後で3.5%以下の線収縮率を示すことを特徴とする無機繊維。 【請求項2】 SiO2が70.0重量%以上であり、MgOが5.0〜20.0重量%であり、SrOが0.5〜15.0重量%であり、CaOが0.5〜15.0重量%であることを特徴とする無機繊維。 【請求項3】 生理食塩水溶解率が1%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機繊維。 【請求項4】 無機繊維が熱履歴を持った後も、生理食塩水溶解率が1%以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無機繊維。 【請求項5】 MgO、CaOおよびSiO2を必須成分とする原料を、溶融し、繊維化する方法において、原料としてSrOを加えることを特徴とする無機繊維の製造方法。 【請求項6】 SiO2を主成分とする原料を、溶融して、繊維化する場合における、SrOの粘度調整剤としての使用。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックファイバーと同水準の高い耐熱性を有し、生理食塩水への溶解性が高い無機繊維及びその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】無機繊維の使用は、工業材料として多岐にわたっている。例えば、バルク状、フェルト状、ブランケット状での断熱材や吸音材として、耐火断熱を目的としたボードやペーパーなどの真空成形体として、建材や車両のブレーキの補強材として、広く使用されている。 【0003】アスベストは天然の無機繊維であるが、その一形態は、石綿症などの呼吸器疾患、さらには、肺および周囲の組織の癌に深い関連があるとされている。一方、人工の無機繊維については、吸入による呼吸器疾患の明確な証拠はないものの、動物実験などの研究から、疾患発生の危険性が指摘されている。 【0004】ラットなどの動物を用いた、無機繊維の毒性に関する実験的研究を通して、無機繊維の吸入による疾患、特に、癌の発生に大きく関連する重要な3つの要因、すなわち、1)繊維の吸入量、2)吸入繊維の寸法、3)肺の中での繊維の持続性、が挙げられている。近年、特に、このうちの3)肺の中での繊維の持続性という点に関心が集まっている。肺の中での繊維の持続性を低くするための手段のひとつとして、体液中での繊維の溶解性を高くするという方法が挙げられる。すなわち、吸入した繊維が体液中で溶解しやすければ、その繊維の吸入による人体への毒性は低減すると考えることができる。このような背景から、体液すなわち生理食塩水に対する溶解性が高い無機繊維が望まれている。 【0005】ドイツの危険物規制では、繊維の溶解性として、その化学組成から計算されるKI値という指標値を、生体溶解性ひいては人体への安全性の判断基準として採用している。KI値は下記の式によって定義される。 【0006】KI値=Na2O+K2O+CaO+MgO+BaO+B2O3−2Al2O3(重量%) すなわち、無機繊維の化学組成のうち、Na2O、K2O、CaO、MgO、BaO、B2O3成分濃度(重量%)の総和から、2倍のAl2O3成分濃度を差し引いた値をKI値(発癌性指数)としている。 【0007】この分類によると、KI直が40より大きい場合、その繊維は健康に対する影響の警告を必要としない。KI値が30〜40である場合には、警告を必要とする。KI値が30未満である場合には、より厳重な警告を必要とする。しかしながら、アルミナシリカ繊維に代表されるセラミックファイバーと同水準の高い耐熱性を維持しながら、40より大きいKI値を持つ無機繊維を提供することが困難なことは明らかである。また、このような簡易的な計算方法により一律的に発癌性を規定することは困難であるとの指摘もある。 【0008】特開平10−324542号公報や特開2000−220037号公報に、上記発癌性指数KI値が40以上であり、体内での持続性が低い無機繊維が開示されている。しかしながら、この無機繊維の耐熱性は従来のロックウールの水準を越えているものの、アルミナシリカ系のセラミックファイバーに匹敵する耐熱性を有していない。 【0009】従来のアルミナシリカ系のセラミックファイバーに準ずる耐熱性を有し、生理食塩水中での持続性が小さい無機繊維が、例えば、CaO−MgO−SiO2を組成とする繊維が特表平8−506561号公報に、MgO−SiO2−ZrO2を組成とする繊維が特表平10−512232号公報に開示されている。しかしながら、無機繊維が作業環境中で粉塵化し、人体に吸入されたとき、肺内での繊維の持続性は少しでも短いことが要求されることは言うまでもない。すなわち、アルミナシリカ系のセラミックファイバーと同水準の耐熱性を有し、且つ、生理学的塩類溶液への溶解性が少しでも高い無機繊維が要求されている。 【0010】また、無機繊維の生体中での持続性の評価は、主として、その繊維が熱履歴を持っていない状態での、生理学的塩類溶液への溶解性という視点においてなされたものであった。しかしながら、無機繊維系の材料が耐火断熱材として使用された後、解体される場合の作業環境を想定すると、無機繊維が熱履歴を有した後も、生理食塩水に高い溶解性を発現することが要求されることは言うまでもないことである。特に、無機繊維が非晶質である場合には、熱履歴を持った後には結晶化し、熱履歴を持つ前とは、その溶解性が著しく変化することが予想される。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】従来の、特表平8−506561号公報に開示されているCaO−MgO−SiO2を組成とする繊維や、特表平10−512232号公報に開示されているMgO−SiO2−ZrO2を組成とする繊維は、耐熱性に劣る。 【0012】そこで、本発明は、アルミナシリカ系のセラミックファイバーと同水準の耐熱性を有していながら、生理食塩水に可溶であること、さらに、熱履歴を持った後も生理学的塩類溶液に高い溶解性を維持する非晶質無機繊維を提供することを目的としている。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明の解決手段を例示すると、請求項1〜6に記載の無機繊維とその製造方法である。 【0014】例えば、本発明の好ましい無機繊維は、SiO2が70.0重量%以上であり、且つMgOが5.0〜20.0重量%であり、SrOが0.5〜15.0重量%であり、CaOが0.5〜15.0重量%である組成を有することを特徴とするものである。 【0015】SiO2およびMgOを主成分とし、そこに必須成分としてSrOおよびCaOを導入することにより、アルミナシリカ系のセラミックファイバーと同水準の高い耐熱性を維持しながらも、生理食塩水への高い溶解性を有する。 【0016】さらに、本発明の好ましい無機繊維は、熱履歴を持った後も、生理食塩水への高い溶解性を有する。 【0017】この無機繊維を製造する方法の一例を説明する。MgO、CaOおよびSiO2を主成分とする原料を、溶融し、繊維化する繊維を製造する方法において、原料にSrOを添加して製造する。 【0018】本発明の他の態様は、SiO2を主成分とする原料を、溶融して、繊維化する場合における、SrOの粘度調整剤としての使用である。 【0019】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態に関して詳細に説明する。 【0020】本発明により提供される無機繊維は、例えば、所定の配合に基づいて原料を混合し、それを電気溶融した後、その溶融物を吹精して繊維化することによって得られる。 【0021】溶融物を吹精することによって繊維化をする場合、その溶融物の粘度が重要である。すなわち、繊維化において最適な溶融物の粘度範囲が存在する。溶融物の粘度は、温度の低下にしたがって高くなる傾向があるため、上記の方法で繊維を工業的に生産する場合には、その溶融物の、温度降下による粘度の変化が鈍感であることが望ましい。溶融物の、温度変化による粘度の変化が鈍感であれば、繊維化が可能となる温度範囲が大きくなる。溶融物の、温度降下による粘度の変化は、溶融物の化学組成に大きく依存する。 【0022】本発明者らは、MgO−CaO−SiO2系組成の溶融物の場合には、その系にSrOを導入することによって、溶融物の、温度変化による粘度の変化が鈍感になり、繊維化が可能となる温度範囲が大きくなることを見出した。すなわち、SrOは、MgO−CaO−SiO2系組成の溶融物において、繊維化の“粘度調節剤”として機能することを見出した。 【0023】SrOの濃度は、0.5〜15.0重量%が望ましい。SrO濃度が0.5重量%よりも小さくなると、上記の“粘度調節剤”としての効果が小さくなってしまうことがある。また、SrO成分の原料として、その炭酸塩を使用する場合には、溶融時にガスの発生を伴い、電気溶融時に電流の変動をもたらす。このような理由から、SrOは、15.0重量%以下であることが望ましい。 【0024】SiO2は70.0重量%以上が好ましい。SiO2は多いほど繊維の耐熱性が向上する。70.0重量%未満では、温度の上昇に伴って急激な収縮が起こることがある。 【0025】MgOは、生体溶解性を向上し、耐熱性を低下させる。MgOは、少ないと生体溶解性に劣り、多すぎると耐熱性に劣る。CaOは、MgOと同様の特性を持ち、MgOの一部をCaOに置き換えることができる。この理由により、MgOは5.0〜20.0重量%が望ましく、CaOは0.5〜15.0重量%が望ましい。 【0026】従来のCaO−MgO−SiO2系無機繊維は、1200℃よりも高温で耐熱性を維持できない。この原因として、本発明の無機繊維よりも、SiO2濃度が低いことが挙げられる。SiO2濃度を大きくすることができれば、CaO−MgO−SiO2系組成の繊維は耐熱性が向上するであろう。しかしながら、SiO2濃度を大きくすることは溶融物の粘度の増大をもたらし、結果として、繊維化を困難にする傾向にある。 【0027】本発明の無機繊維は、SiO2を増大させながらも、SrO成分を溶融物の粘度調節剤として添加し機能させることによって、この問題点を解決している。 【0028】つぎに、無機繊維の生体溶解性の評価を行った。体液の本質は、生理食塩水である。そこで、生体溶解性を評価する生理学的塩類溶液として、生理食塩水を用いた。 【0029】生体溶解性の評価方法は以下の通りである。まず、200メッシュ(目開き0.075mm)の篩いを通過するまで解砕した繊維試料1gを精秤する。それを300mlのコニカルビーカーにとり、生理食塩水150mlを加え、栓をする。それを、温度40℃の恒温水槽に設置して、毎分120回転の速度で50時間水平振とうを行う。その後、ガラス濾過器による濾過および乾燥を行い、不溶解繊維を精秤して、溶解による繊維の減量を求める。繊維の減量から算出した重量減少率を、その繊維の生理食塩水溶解率とする。 【0030】生体溶解性の評価を行った無機繊維の化学組成(モル%)と生理食塩水溶解率を表1に示す。また、無機繊維の(SrO+CaO)/MgOモル濃度比と生理食塩水溶解率との関係を図1に示す。 【0031】 【表1】
図1より、MgOに対する(SrO+CaO)の濃度比が大きくなるにつれて、生理食塩水溶解率が上昇する傾向があることがわかる。また、無機繊維に導入するアルカリ土類金属酸化物がMgOだけでは、生理食塩水への溶解率は低い値にとどまっている。 【0032】しかしながら、本発明者らは、無機繊維にMgO以外のアルカリ土類金属酸化物成分、すなわち、SrOおよびCaOを導入すると、生理食塩水への溶解率が増大し、無機繊維が優れた生体溶解性を示すようになることを見出した。 【0033】無機繊維の生体溶解性は、少しでも高いことが要求されている。少なくとも、生理食塩水溶解率が1%以上であることが望ましい。 【0034】また、後述するように、本発明の無機繊維は、熱履歴を有した後も、高い生理食塩水溶解率を示し、優れた生体溶解性を維持する。 【0035】さらに、本発明の無機繊維は、アルミナシリカ系セラミックファイバーと同水準の優れた耐熱性を有する。 【0036】このようにして、熱履歴を有する前後での優れた生体溶解性と、セラミックファイバーと同水準の高い耐熱性を併せもつ無機繊維が完成されたのである。 【0037】 【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明をさらに明確にする。 【0038】原料として、珪石、マグネシアクリンカー、炭酸ストロンチウムおよびウォラストナイトを使用した。上記原料を所定量混合する。それを電気溶融した後、溶融物を吹精することによって繊維化を行い、集綿して、表2に示す化学組成の繊維を得た。 【0039】得られた繊維について、下記の方法で耐熱性および生理食塩水溶解性の評価を行った。 【0040】[耐熱性]得られた各無機繊維200gを0.04%澱粉溶液10リットル中で攪拌して分散させた後、脱水成型器により成形する。これを110℃で十分乾燥させた後、所定の寸法に切断し耐熱性評価用のプリフォームを作成する。これを、所定の温度で24時間加熱し、加熱前後での線収縮率を求めた。耐熱性の評価温度は1200℃および1260℃とした。 【0041】[生理食塩水溶解性]得られた繊維を、前述の生体溶解性の評価方法と同様にして、繊維の重量減少率を求め、その繊維の生理食塩水溶解率とする。溶解性の評価は、未加熱の繊維の他に、1100℃で24時間加熱した繊維について行った。 【0042】この加熱温度1100℃は、耐熱性の評価温度である1200℃または1260℃と比べて低い。 【0043】しかし、次の理由により、溶解性試験での加熱温度が低くても、溶解性の評価は価値のある評価である。 【0044】繊維を断熱材として使用する際に、例えば、通常炉材として、こういった無機繊維製の断熱材が使用される揚合は、断熱材はかなり大きな厚みを持ったものが使用される。このとき、炉内側すなわち断熱材の炉内表面が1200℃または1260℃の場合、その厚みは、通常250〜300mmの厚みであり、また、炉内側すなわち高温側から炉外側すなわち低温側には温度勾配があり、炉外側は100℃程度である。このことから、断熱材の大部分は1200℃または1260℃以下であり、1100℃以下の温度範囲は断熱材の厚み方向のほぼ2/3〜3/4を占める。従って、1100℃に加熱した繊維の生理食塩水溶解性の進歩は人体の健康面の改善にとって大きな評価となりうる。 【0045】実施例および比較例の、耐熱性および生体溶解性の評価結果を表2に示す。 【0046】 【表2】
実施例1ないし3は、本発明によるMgO−SrO−CaO−SiO2系の無機繊維である。実施例1ないし3は、1260℃での加熱線収縮率は3%以下であり、比較例1および2は、それぞれ4.5%および7.9%であり、これらを比較すると実施例1ないし3はいずれも加熱線収縮率において大きく改善されている。 【0047】すなわち、本発明は、比較例1および2のMgO−SiO2系繊維およびCaO−SiO2系繊維の耐熱性に対して大きな改善がなされており、この値すなわち加熱線収縮率が3%以下であることは、現在高温域で最も多く使用されているAl2O3−SiO2系繊維の耐熱性とほぼ同水準である。 【0048】特表平10−504272号公報に、CaO−MgO−SrO−SiO2系組成の繊維においては、MgOとSrOは調和しないとの記述がある。これは、耐熱性すなわち加熱線収縮率の値から記述されたものであるが、評価が行われた繊維は、SiO2濃度が50〜67モル%の範囲であり、これよりもSiO2濃度の大きい組成の繊維については記述されていない。本発明者らは、繊維のSiO2濃度を70重量%以上とすることによって、CaO−MgO−SrO−SiO2系組成の繊維の耐熱性が飛躍的に向上することを見出した(表2に示す実施例1および2は、重量%表記である。これらは、モル%表記の表1の#307および#306にそれぞれ相当しており、いずれも、SiO2成分濃度が70モル%以上である)。 【0049】また、繊維の生理食塩水への溶解率は、未加熱で4〜5%であり、優れた生体溶解性を示している。これはSrOおよびCaO成分を添加したことによる。図1からわかるように、MgO−SiO2系無機繊維においては、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物成分、すなわちSrOおよびCaOを添加することで繊維の生体溶解性を増大させることが可能となる。また、1100℃で24時間焼成後の状態でも1〜2%程度の溶解率を示し、繊維が熱履歴を持った後も優れた生体溶解性を持つことがわかる。 【0050】比較例1は、生体溶解性に優れているとして市販されているMgO−SiO2系無機繊維である。この無機繊維は、未加熱の状態では、生理食塩水への溶解率は2%程度の値を示すが、1100℃で24時間焼成後の状態では、生理食塩水への溶解率が1%以下になり、生体溶解性をほとんど失ってしまうことがわかる。 【0051】従って、この点から判断すると、比較例1は、1100℃に加熱された場合は、生理食塩水溶解性の改善があったとは思えなく、それゆえ健康への影響が改善されていない。また、耐熱性に関しては、比較例1は、本発明である実施例1ないし3に比較して収縮率が大きく、1260℃で24時間加熱後の収縮率は5%程度の値を示しており、この値は一般に実用的でないとされている。 【0052】比較例2は、生体溶解性に優れているとして市販されているCaO−MgO−SiO2系無機繊維である。この繊維は、未加熱の状態では、生理食塩水への溶解率が7%程度の値を示し、優れた生体溶解性を示していることがわかる。さらに、1100℃で24時間焼成後の状態でも、溶解率が1%程度の値を示す。しかしながら、耐熱性に関しては、1200℃では1%程度の小さい加熱線収縮率を示すものの、1260℃での加熱線収縮率は8%にまで達している。したがって、1200℃よりも高温になると、加熱収縮率が急激に大きくなり、耐熱性を維持することが困難であることがわかる。 【0053】繊維を製造する際に、溶融した原料を繊維化することが重要な操作となる。この際、繊維化するには好ましい溶融物の粘度範囲がある。繊維化は溶融物を空気で引き延ばしながら瞬時に冷却する過程を通る。引き延ばすには好ましい溶融物の粘度範囲がある。粘度範囲は溶融物の組成と温度により決まる。冷却されながら好ましい粘度範囲を長時間維持できる組成が好ましい。すなわち、温度変化に対して粘度の変化が鈍感な組成が望まれる。 【0054】一方では、組成は繊維の耐熱性を決める。耐熱性を維持した繊維を効率よく得ることができる組成とするには、耐熱性を維持しながら粘度に対する鈍感さを得ることができる粘度調整剤を組成に加えることが効果的である。本発明では、この粘度調整剤としてSrOをみいだした。 【0055】粘度調整剤としてSrOの効果を確認するために、実施例1の組成を基本にして、SrOの量を変化させて、その効果を実験した。 【0056】その結果を表3に実験例1〜3として示す。 【0057】 【表3】
繊維化率は、原料を溶融し、吹精して繊維化した際に、得られた繊維の重量を吹精した溶融物の重量で除した数字を示す。 【0058】実験例1はSrOを全く含まない例であり、この繊維化率は0.4である。これに対し、本発明の範囲内である実験例2および3は、SrOをそれぞれ5.2重量%および9.8重量%含んでいる。この結果、繊維化率がそれぞれ0.7および0.8に増加した。すなわち、SrOを添加することにより、繊維化に良好な温度範囲が大きくなり、結果として、粘度調整剤としての効果を示す。 【0059】 【発明の効果】上述のように、本発明の無機繊維は、従来のセラミックファイバーと同水準の高い耐熱性と、従来のセラミックファイバーにはなかった優れた生体溶解性とを併せ持っている。さらに、本発明の無機繊維は、熱履歴を持った後も、優れた生体溶解性を維持する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000221236 【氏名又は名称】東芝モノフラックス株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋久松町四番四号 糸重ビル
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| 【出願日】 |
平成14年4月3日(2002.4.3) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074538 【弁理士】 【氏名又は名称】田辺 徹
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| 【公開番号】 |
特開2003−89547(P2003−89547A) |
| 【公開日】 |
平成15年3月28日(2003.3.28) |
| 【出願番号】 |
特願2002−101307(P2002−101307) |
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