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【発明の名称】 硬水の軟質化処理方法及びその装置
【発明者】 【氏名】波田 靖夫
【課題】硬水を軟質化するには蒸留法、膜分離、イオン交換法等があるがいずれも装置や処理方法にコストがかかり、手軽に利用できるものではない。

【解決手段】硬水の多価金属イオンをシリカ系化合物により捕獲し、残部を分離して軟質化水を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 硬水をシリカ系化合物に接触させて該硬水中に含有されている多価金属イオンを該シリカ系化合物に捕獲させて該硬水の残部と分離しその残部による軟質化水を得る軟水化処理工程を有する硬水の軟質化処理方法。
【請求項2】 軟水化処理工程は硬水及びシリカ系化合物を別々に一回的又は連続的又は断続的に導入して混合した後に濾過材により濾過し、その濾過水として軟質化水を得る混合接触処理工程を有する請求項1に記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項3】 軟水化処理工程はシリカ系化合物を含有する層状体を用いる処理であって、該層状体は硬水のその表面への接触及び内部の通過のうち少なくとも前者を可能とするように形成及び配置されて硬水が処理され軟質化される層状体接触処理工程を有する請求項1又は2に記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項4】 シリカ系化合物を含有する層状体はシリカ系化合物を含有する濾過材である請求項3に記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項5】 シリカ系化合物は層状体の内部を通過しない大きさである請求項2ないし4のいずれかに記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項6】 シリカ系化合物はコロイダルシリカである請求項1ないし5のいずれかに記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項7】 コロイダルシリカが鎖状コロイダルシリカである請求項6に記載の硬水の軟質化処理方法。
【請求項8】 層状体が含有するシリカ系化合物はゲル化されて存在している請求項3ないし7のいずれかに記載の軟質化処理方法。
【請求項9】 硬水を導入する導入部と、該導入部に導入された硬水とシリカ系化合物を接触させるシリカ系化合物接触手段と、該硬水と接触させたシリカ系化合物を処理された軟質化水に対して混入を阻止するシリカ系化合物の軟質化水混入阻止手段を有する硬水の軟質化処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、簡単かつ安価な硬水の軟質化処理方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水は飲料水や工業用水として利用されているが、水が関係する分野には、タンクや配管等の分野、ボイラー関係、風呂周り、プール等の配管、ポンプその他の分野があり、硬水を使用するとスケールが発生する等の問題があり、飲料にも適さないので、その軟質化が図られている。硬水は主にカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の多価金属イオンを含むことが多いが、その軟質化にはこれらのイオンを除く処理として、例えば蒸留、膜分離、イオン交換等が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、蒸留により硬水からカルシウム等の金属イオン成分を分離して蒸留水を得る方法は、水の蒸発潜熱が大きいため、その蒸留のための必要なエネルギーが大きくなり、コスト高になり易い。また、膜分離による方法は、水中の金属イオン成分を十分には分離し難く、その分離精度を向上させようとすると、コスト高につながる。また、イオン交換法はこれらの中では最も安価な方法として評価されているが、これも交換樹脂等のイオン交換体を使用し、そのイオン交換能力に限界があるため、装置の規模が大きくなり易く、操作も煩雑である上に、イオン交換体を多量に必要とし、使用済みのものを再生処理して再使用しようとしてもそのためのコストもかかり、結局、イオン交換法もコスト高になる。このように、いずれの方法も、簡単にしかも安価に硬水を軟質化する方法として問題があった。本発明の目的は、簡単、小型化可能かつ安価な装置を用いて簡単に操作でき、維持費もかからず、安価に硬水を軟質化できる硬水の軟質化処理方法及びその装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、(1)、硬水をシリカ系化合物に接触させて該硬水中に含有されている多価金属イオンを該シリカ系化合物に捕獲させて該硬水の残部と分離しその残部による軟質化水を得る軟水化処理工程を有する硬水の軟質化処理方法を提供するものである。また、本発明は、(2)、軟水化処理工程は硬水及びシリカ系化合物を別々に一回的又は連続的又は断続的に導入して混合した後に濾過材により濾過し、その濾過水として軟質化水を得る混合接触処理工程を有する上記(1)の硬水の軟質化処理方法、(3)、軟水化処理工程はシリカ系化合物を含有する層状体を用いる処理であって、該層状体は硬水のその表面への接触及び内部の通過のうち少なくとも前者を可能とするように形成及び配置されて硬水が処理され軟質化される層状体接触処理工程を有する上記(1)又は(2)の硬水の軟質化処理方法、(4)、シリカ系化合物を含有する層状体はシリカ系化合物を含有する濾過材である上記(3)の硬水の軟質化処理方法、(5)、シリカ系化合物は層状体の内部を通過しない大きさである上記(2)ないし(4)のいずれかの硬水の軟質化処理方法、(6)、シリカ系化合物はコロイダルシリカである上記(1)ないし(5)のいずれかの硬水の軟質化処理方法、(7)、コロイダルシリカが鎖状コロイダルシリカである上記(6)の硬水の軟質化処理方法、(8)、層状体が含有するシリカ系化合物はゲル化されて存在している上記(3)ないし(7)のいずれかに記載の軟質化処理方法、(9)、硬水を導入する導入部と、該導入部に導入された硬水とシリカ系化合物を接触させるシリカ系化合物接触手段と、該硬水と接触させたシリカ系化合物を処理された軟質化水に対して混入を阻止するシリカ系化合物の軟質化水混入阻止手段を有する硬水の軟質化処理装置を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明において対象となる硬水は、日本の水道水には少ないが、日本においても井戸水等を含め、問題になるケースは少なくない。特に、水道施設の完備していない地方、島、あるいは大量の水を使用する工業分野等では硬水を軟質化する必要性が高まる。また、海外では硬水がむしろ普通であり、硬水の軟質化が必要な分野は多い。本発明において、「シリカ系化合物」とは、シリカ、すなわち二酸化珪素を含有する化合物であり、基本的には粒子状体の表面が酸性のシリカ系化合物が使用できるが、これに限らない。具体的には、シリカゲル、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、カリウムシリケート等が挙げられる。また、シリカ−アルミナ焼結体(シリカ65%、アルミナ23%、その他カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄のそれぞれの酸化物を1.6〜3%、マンガン、燐の酸化物を0.05〜0.07%含有するもの)の粒状体、その他のこれに類するものも使用できる。
【0006】本発明において、硬水を軟質化、すなわち、多価金属イオンを減少ないし除去する処理方法としては、■ 硬水及びシリカ系化合物を1回的又は連続的又は断続的(1回処理はバッチ処理その他は継続処理ということもできる)に導入して両者を混合した後に濾過材により濾過し、その濾過水として軟質化水を得る混合接触処理工程、■ シリカ系化合物を含有する層状体を用いる処理であって、その層状体は硬水のその表面への接触及び内部の通過のうち少なくとも前者を可能とするように形成及び配置されて硬水が処理され軟質化される層状体接触処理工程を設け、少なくともこれら■及び■のいずれか一方又は両方を組み併せた処理が挙げられる。ここで、上記■において「シリカ系化合物を含有する層状体」は、シリカゲル等の固体状のものであってもよく、シリカの粒状体の集合体(例えば網や籠やその他の透水性容器に収容する)でもよく、シリカ系化合物を添加した成形材でもよく、その成形材は濾過材でもよく、その他の内部に通水できる材料のみならず通水できない材料の成形材でもよい。濾過材でもその他の成形材でも硬水を処理する上流側の表面及び内部の少なくともいずれか一方にシリカ系化合物を添加し、処理された軟質化水側はシリカ系化合物を添加せず、しかもこのシリカ系化合物が水とともに持ち去られないように、例えば多孔質材料の場合にはシリカ系化合物の粒径をその孔径より大きくする等の適宜手段を設けてもよいが、下流側に濾過材を設ける場合には、成形材の内部を含めた全体にシリカ系化合物を添加したものや、上記のシリカの粒状体の集合体その他のものでもよい。
【0007】濾過材やその他の成形材の表面及び内部の両方にシリカ系化合物を添加するには、濾過材やその他の成形材をコロイダルシリカ分散液等のシリカ系化合物の分散液に浸漬し、乾燥後、プリーツ加工してもよく、濾過材やその他の成形材をフィルタに加工後、コロイダルシリカ分散液に浸漬し、乾燥してもよい。浸漬処理の代わりに、刷毛による塗布、スプレー塗布、ロールコーティング等を用いてもよく、浸漬処理を含めてこれらは複数を併用してもよい。濾過材やその他の成形材の表面にシリカ系化合物を添加するには、これらのシリカ系化合物の添加方法のうち表面にのみ行うことができる方法、例えば浸漬処理以外の上記方法を加減して行う方法等を使用してもよいが、そのほかには例えば濾過材やその他の成形材で上記の表面及び内部の両方あるいは表面にシリカ系化合物を添加したものをその添加をしないものと重ね合わせればよく、シリカ系化合物の添加方法のうち内部にのみ行うことができる方法は、例えば濾過材やその他の成形材で上記の表面及び内部の両方あるいは表面にシリカ系化合物を添加したものをその添加をしないものでサンドウィッチする方法が挙げられる。これらは単に重ねる場合のみならず、貼り合わせてもよい。このようにすると、シリカ系化合物を処理する硬水や処理して得られる軟質化水に逃散させないようにすることができる。濾過材としては天然繊維、合成繊維あるいはこれらを混用した濾紙や、天然繊維、合成繊維あるいはガラス繊維等からなる織布、不織布等が挙げられ、これらは複数を併用してもよい。
【0008】上記■の方法では、一回的又は連続的又は継続的に導入されるシリカ系化合物で硬水を処理した後、その処理されて得られる軟質化水をフリーのシリカ系化合物や硬水中の多価金属イオンを捕獲(吸着及び化学結合の少なくとも1つ、「捕獲」はこの意味に用いる)したシリカ系化合物から分離するために濾過材を用いるが、この濾過材には、上記と同様の濾過材を用いてもよいが、シリカ系化合物はその濾過材の孔径よりも粒径の大きい粒子状体のものを用い、シリカ系化合物の粒子状体が濾過材により遮断され、濾過されて得られる軟質化水に混入することがないようにすることが好ましい。上記■の方法で、上記のシリカ系化合物を添加した濾過材を用いる場合も、その添加するシリカ系化合物はその濾過材の孔径より大きくし、通水したときに軟質化水とともに持ち去られないようにすることが好ましく、この点からはシリカ系化合物は濾過材の硬水を処理する側、すなわち上流側の表面にのみ添加し、その処理水の軟質化水側、すなわち下流側には添加しないことも好ましいが、別の濾過材を設ける場合には濾過材の全体に添加することが好ましい。また、シリカ系化合物を添加した濾過材を上記■の方法に用いるときも、硬水と混合して使用するシリカ系化合物の粒子の粒径をその添加後の濾過材の孔径よりもを大きくする。
【0009】
【実施例】本発明の実施例を説明する。
実施例1図1に示すように、塩化カルシウムを水道水に溶解した濃度200mg/lの水溶液(硬水に見立てた原水)1000mlを処理槽1(導入部)に入れ、攪拌機1aにより攪拌しながら、容器2に入れられておいたコロイダルシリカ(固形分20%、日産化学工業(株)製スノーテックスST−N)100mlを添加した。その添加により得られた混合液は直ちに白濁するが、10分間攪拌機1aにより攪拌を続けた後、配管に設けたコック3を開き、処理槽1中の混合液をフィルタ4(その孔径よりコロイダルシリカの粒径は大きい)を通して処理水の軟質化水を受容槽5に受容する。上記原水と処理水の軟質化水のカルシウムの濃度を簡易水道検査方法の1つであるパックテスト(全硬度用)を使用し、測定したところ以下の通りであった。
原水 200 mg/l処理水の軟質化水 10 mg/l【0010】実施例2図2に示すように、濾紙からなる上端のみに開口部6を有する有底円筒状フィルター(図示寸法の数値の単位は「mm」)7の内面にコロイダルシリカ(固形分20%、日産化学工業(株)製スノーテックスST−UP)300mlを少量づつスプレーにより塗布し、濾紙の表面に固体シリカを付着させた。ここで、固体シリカは濾紙の表面にゲル化した状態で付着し、濾紙を透過しない。次に、両端開口の円筒状であって周壁部に多数の通水孔を有する支持体8を上記有底円筒状フィルター7の内側に図示のように挿入し、接着剤等で固定する。この状態で、上記実施例1と同様に硬水に見立てた塩化カルシウム濃度200mg/lの水溶液1000mlを支持体8の内側から供給し、有底円筒状フィルター7内部を硬水の導入部とし、その壁面を媒介して通水し、処理水の軟質化水を得た。上記原水と処理水の軟質化水のカルシウムの濃度を上記実施例1と同様に測定した結果は以下のとおりであった。
原水 200 mg/l処理水の軟質化水 20 mg/l【0011】実施例3図2に示すように、上記実施例2で使用した濾紙の有底円筒状フィルター7(内面処理をしていないもの)と支持体8の間の空間9に粒子状無水シリカ(外径2〜3mmで濾紙の孔径より大きい)100gを一杯に充填し、図示省略したが粒子状無水シリカ層を設けた。この状態で、上記実施例1と同様に硬水に見立てた塩化カルシウム濃度200mg/lの水溶液1000mlを支持体3の内側から供給し、有底円筒状フィルター7の内部を硬水の導入部として、粒子状無水シリカ充填層、有底円筒状フィルター7の壁面を順次媒介して通水し、処理水の軟質化水を得た。なお、粒子状無水シリカは濾紙の孔径より大きい。上記原水と処理水の軟質化水のカルシウムの濃度を上記実施例1と同様に測定した結果は以下のとおりであった。
原水 200 mg/l処理水の軟質化水 20 mg/l【0012】比較例1実施例1において、コロイダルシリカを添加しなかったこと以外は同様の操作を行った。原水とフィルタ4を通過した処理水中のカルシウムの濃度を上記実施例1と同様に測定した結果は以下のとおりであった。
原水 200 mg/l処理水 200 mg/l【0013】比較例2実施例2及び3において、濾紙表面へのシリカの付着及び粒子状無水シリカ充填層の設置をしなかったこと以外は実施例2、3と同様の操作を行った。原水と有底円筒状フィルター7を通過した処理水中のカルシウムの濃度を上記実施例1と同様に測定した結果は以下のとおりであった。
原水 200 mg/l処理水 200 mg/l【0014】
【発明の効果】本発明によれば、シリカ系化合物を使用することにより、従来とは異なる機構で、簡単、小型化可能かつ安価な装置を用いて簡単に操作でき、維持費もかからず、安価に硬水を軟質化できる硬水の軟質化処理方法及びその装置を提供することができる。特に、シリカ系化合物を含有した濾過材を使用することにより、装置の構造が単純化され、かつ小型化をより一層図ることができる。このようにして、シリカ系化合物は容易に入手し易いので、いつ、どこでも、誰もが簡便に硬水を軟質化することができ、飲料用のみならず、工業用水としての便宜を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】395003637
【氏名又は名称】日東工業株式会社
【出願日】 平成13年6月20日(2001.6.20)
【代理人】 【識別番号】100081112
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 忠
【公開番号】 特開2003−1294(P2003−1294A)
【公開日】 平成15年1月7日(2003.1.7)
【出願番号】 特願2001−185785(P2001−185785)