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【発明の名称】 吊り作業用水中カプラー
【発明者】 【氏名】下倉 政志
【氏名】小林 力
【課題】電気や油圧系の装置を使用することなく、吊り作業によって水中に設置した作業対象物からのクレーンフックの自動的解除を可能とする。

【解決手段】クレーンフック1に係合させるカプラー本体11と、前記埋設アンカー6に係合させるカプラーフック22を備えた回動部材21とから構成し、この回動部材21を、吊り方向に対して略垂直の軸材31を介してカプラー本体11の下端部近傍に軸着固定する一方、この回動部材21に、吊り方向に対して略垂直の軸材28を介して浮子連結部材24を回動可能に配設し、浮子連絡部材24に上向きの引張力が働いたときに、回動部材21に従動して回動するカプラーフック22の先端部が埋設アンカー6の係合孔を離脱するよう、浮子連絡部材24とカプラーフック先端部22Fの位置を設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】吊り作業の対象物に固定した埋設アンカーとクレーンフックとを連結する水中土木用のカプラーであって、当該カプラーは、クレーンフックに係合させるカプラー本体と、前記埋設アンカーに係合させるカプラーフックを備えた回動部材とから構成し、この回動部材を、吊り方向に対して略垂直の軸材を介してカプラー本体の下端部近傍に軸着固定する一方、この回動部材に、吊り方向に対して略垂直の軸材を介して浮子連結部材を回動可能に配設し、浮子連絡部材に上向きの引張力が働いたときに、回動部材に従動して回動するカプラーフックの先端部が埋設アンカーの係合孔を離脱するよう、浮子連絡部材とカプラーフック先端部の位置を設定したことを特徴とする吊り作業用水中カプラー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吊り作業におけるクレーンフックの解除、とくに水中土木におけるクレーンフックの自動解除を実現するカプラー(吊り作業用連結金具)の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】吊り作業におけるクレーンフックの解除は、陸上であれば特別の困難を伴わないケースが多い。しかし水中に、例えば魚礁等の重量のあるコンクリート成型品を配設する吊り作業では、設置後、クレーンフックを解除するために潜水夫が潜って作業を行う必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、潜水作業によるクレーンフックの解除は、吊り作業のスピーディな進行を妨げるだけでなく、作業コストを確実に上昇させる。また作業の安全性確保の点でも管理スタッフの負担が増大する等の問題がある。土木工事における潜水作業は、通常のレジャー潜水よりも作業時間が短く限定されるなど、作業上の制約が多いことも作業性や効率性の向上を妨げる要因となっている。
【0004】勿論、水中土木を行う以上は、潜水による作業進行はどうしても必要な場合がある。しかしながら、魚礁のようなコンクリート成型品を水中に吊り下ろす作業のように、厳密な位置決めを必要としない作業であれば、クレーンフックを海上(または陸上)から自動的に解除できる限り、潜水作業の必要性を大きく削減することが可能となる。
【0005】考慮すべきは、クレーンフックの自動解除を実現するための装置コストと信頼性である。原理的に云えば、クレーン船(クレーン車)からの遠隔操作によって開閉動制御できる電動(または油圧式)クレーンフックや電動(油圧式)カプラー(吊り作業用の連結金具)を用いれば、潜水作業を行わずに土木を行うことが出来る。しかしながら、水中、とくに金属の発錆劣化の原因となる塩分を多量に含む海水中で、クレーンフック等に繰り返しの開閉動作を行わせることを想定すれば、装置コスト、メンテナンスの煩雑、信頼性の確保などの点で、むしろ潜水作業の方が有利になる可能性が高い。
【0006】そこで本発明の目的は、電気や油圧等の複雑な駆動系を用いることなく、吊り作業によって水中に設置した対象物からのクレーンフックの自動解除を可能とする点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係る吊り作業用水中カプラーは、吊り作業の対象物に固定した埋設アンカーとクレーンフックとを連結するものを技術的前提として、カプラーは、クレーンフックに係合させるカプラー本体と、前記埋設アンカーに係合させるカプラーフックを備えた回動部材とから構成し、この回動部材を、吊り方向に対して略垂直の軸材を介してカプラー本体の下端部近傍に軸着固定する一方、この回動部材に、吊り方向に対して略垂直の軸材を介して浮子連結部材を回動可能に配設し、浮子連絡部材に上向きの引張力が働いたときに、回動部材に従動して回動するカプラーフックの先端部が埋設アンカーの係合孔を離脱するよう、浮子連絡部材とカプラーフック先端部の位置を設定する。
【0008】
【作用】本発明に係るカプラーは、対象物に固定した埋設アンカーとクレーンフックとを連結させるもので、回動可能に設けたカプラーフックを埋設アンカーに係合させて吊り作業を行った後、このカプラーフックを浮子の引っ張りによって回動させて埋設アンカーから離脱させる。
【0009】カプラーフックが埋設アンカーから外れれば、カプラー本体に係合しているクレーンフックも自由になり、カプラーと一緒に引き上げることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】図1〜図6は、本発明に係る吊り作業用水中カプラーの実施形態を例示する図である。まず、図1、図3に基づいて全体の構造を説明する。尚、図1は、カプラー10の構成例を拡大して示したものであり、図3は、このカプラー10にクレーンフック1を連結した状態を示してある。2は吊り作業用のワイヤ、4は浮子、5は浮子連結用のワイヤ、6は埋設アンカー、Kは作業対象物である。
【0011】カプラー10は、カプラー本体11と、カプラー本体11の下端部近傍に回動可能に軸着した回動部材21とからなる。
【0012】カプラー本体11は、クレーンフック1を係合させる係合孔12をもち、側面形状は略直線状である。14は、カプラー本体11の下端部近傍に配した回動部材21の動き、すなわち所定角度範囲内における回動部材21の運動(動作)の自由を確保するための孔部である。16は、係合孔12の下辺を画成する部分であり、回動部材21の動きを一定角度範囲内に制限するストッパとしても機能する。但し、原理的には、回動部材21の動き(回動範囲)は限定する必要がないので、回動部材21の近傍に、このようなストッパ壁部(16)が存在する必要はない。
【0013】回動部材21は、カプラー本体11の下端部近傍に軸着する。31は、回動部材21を回動可能に支持する軸部材である。この軸部材31は、作業時の吊り方向(鉛直方向およびそれに近い上下方向の角度)に対して、略垂直の方向に配設する。原理的には、鉛直の吊り方向に垂直であることが望ましい。但し、吊り方向は必ずしも鉛直とは限らないので、軸部材31の角度は、吊り作業時に略水平となる角度であれば良い。回動部材21は、この軸部材31に対して直角となる仮想的平面上で回動する。時計回り、反時計回りといった回動の方向性は限定されない。自由な運動(回動または回転)を保証するためである。
【0014】回動部材21を回動可能に軸着固定する場所は、、カプラー本体11の下端部近傍である。ここで云う下端部近傍とは、吊り作業時における上下の位置関係に基づき、カプラー本体11の下方部分であって、カプラー本体11の下端面を除外するという程度の意味である。実際のところ、カプラー本体11を例えば上下方向に四分割して、下1/4より上の部分に軸部材31を設けても、特別の構造原理(回動部材21の運動の有利)にはならない。
【0015】回動部材21は、少なくとも、カプラーフック22と、回動自在に軸着された浮子連絡部材24を備える。本実施形態では、、作業把手29を備える。この作業把手29は、回動部材21を人力によって簡単に回動させるものであり、そのため、例えば略円形を呈する回動部材21の一般面よりも外方に一定寸法だけ突出させ、力のモーメントを稼ぐようになっている。作業把手29の突出量は、略円形を呈する回動部材21の半径程度、例えば3〜7cmとすることが望ましい。作業把手29は、埋設アンカー6上部の係合孔(図示せず)にカプラーフック22を差し込むときに、回動部材21を軽い操作で動かせるようにする部材である。
【0016】カプラーフック22は、略円形を呈する回動部材21の外周面よりも内側の位置に配する略円弧状のフックである。カプラーフック22は、その曲率を、回動部材21の外周面より小さく設定おくことが望ましい。軸部材31を中心とする回動部材21の回動に応じ、内側の同心円上で進退運動(回動)ができるようにするためである。尚、カプラーフック22の先端部22Fは、軸部材31とは反対方向に湾曲(カーブ)させても良い。先端部を細くすると同時にその内周面の曲率を大きくすることによって、装着時に、埋設アンカー6の係合孔への導入が容易となるからである。
【0017】浮子連絡部材24は、クレーンフック1を最終的に解除するときに、浮子4の浮力を利用して、回動部材21に対して鉛直上方への引張力、つまり回動部材21に対する回転力(回動力)を与えるための手段である。
【0018】従って、作用する力のモーメントを大きくするため、浮子連絡部材24は、ある程度の長さをもったアーム状の部材とすることが望ましい。本実施形態に係る浮子連絡部材24は、基端から先端までの長さを例えば10cm程度とし、先端近傍において折曲部25を設け、全体の形状を略く字状とした上で、先端にリング26を設けている。リング26に、浮子連結用のワイヤ5を結び、このワイヤ5を介して浮子4と接続する。
【0019】尚、浮子連絡部材24を略く字状とするのは、吊り作業時に、リング26を対象物の表面から離隔させ、摩擦によるワイヤ5の劣化や破損を防止するためである。
【0020】28は、浮子連絡部材24の基端部を回動可能に支持する軸部材である。この軸部材28は、前記軸部材31と同一方向となるよう設けることが望ましい。浮子4の浮力によって回動部材21を動かすため、回動方向を同一に揃えることが好ましいからである。但し、浮子4の浮力によって回動部材21に適当な回動力を与えることが出来る限り、軸部材28の方向は限定されない。
【0021】浮子連絡部材24は、先端のリング26に浮子4による引張力が働いたときに回動部材21に回動力を与える。そして、回動部材21の回動角度は、本実施形態においては専ら浮子連絡部材24の軸部材28の配設位置による。何故なら、浮子4の浮力によって回動部材21が動くときは、必ず最終の状態、つまりリング26に対して鉛直上方の引っ張りが働いたときに、軸部材28が最上位置に移動した状態となっているからである。
【0022】従って、この状態で、カプラーフック22の先端部22Fが埋設アンカー6の係合孔を離脱するには、カプラーフック22の先端部22Fと軸部材28とが、回動部材21の回動中心(軸部材31)を挟んで略対向する位置にあれば良い。より厳密には、カプラーフック22がやや短寸で、その先端部22Fが、軸部材31を挟んで軸部材28と対向し、なおかつ回動方向に対して引っ込んでいる位置にあることが望まれる。尚、先端部22Fを、先端に向かって下降湾曲させてあるのは装着時の容易に限らず、スムースな離脱を可能とするためでもある。
【0023】次に、この実施形態に係るカプラ−10の作動を説明する。図2に示すように、まず作業開始に際して、カプラー10を作業対象物Kの埋設アンカー6に固定するため、カプラーフック22を埋設アンカー6の係合孔に挿入し、回動部材21の作業把手29を動かしてカプラーフック22の装着状態を確実にさせる。またこれに前後して、浮子連絡部材24のリング26に浮子4のワイヤ5を締結する。
【0024】次いで、図3に示すように、カプラー本体11の係合孔12に、クレーンフック1を係合させ、作業対象物Kを吊り上げる。この図3に示す状態は、陸上における吊り作業であり、吊り作業用のワイヤ2は展張しているが、浮子4のワイヤ5は緩んでいる。またこの段階ではカプラーフック22は、その根元(基端部)まで、しっかりと埋設アンカー6の係合孔に装着されていることが望ましい。その結果として、カプラーフック22の先端部22Fは作業対象物Kの上面より上方に位置し、その略対向位置にある軸部材28は必然的に、作業対象物Kの上面より下方に位置する。勿論、この位置関係はフックの長さや軸部材31の配設位置によって変わる場合もある。
【0025】次に、図4に示すように、作業対象物Kが水中にはいると、浮子4の浮力によってワイヤ5が展張する。しかし、その他の部分に動きは生じない。浮子連絡部材24には浮子4の浮力が働くが、作業対象物Kの重量によってカプラーフック22には下方への強い外力が作用し、その結果として回動部材21は自由な動きを制限された状態にあるからである。
【0026】次に、図5に示すように、作業対象物Kが目的の場所(例えば海底)に達して吊り作業用のワイヤ2をゆるめると、クレーンフック1とカプラー本体11との係合もゆるみ、カプラーフック22に作用していた下方への強い力もなくなる。この結果、回動部材21は自由に動き得る状態となり、浮子連絡部材24に作用する浮子4の浮力によって回動を始め、浮力作用の最終段階では、カプラーフック22が埋設アンカー6から離脱する。
【0027】図6に示すように、この状態で、クレーンフック1を引き揚げれば、それに接続するカプラー10および浮子4も同時に引き揚げることが出来、そのまま次段の吊り作業を行うことが出来る。
【0028】このように、かかるカプラー10によれば、水中に設置した作業対象物Kからクレーンフック1を自動的に解除することが出来る。
【0029】尚、本発明に係るカプラー(10)は、浮子連絡部材(24)に上向きの引張力が働いたときに、回動部材(21)に従動して回動するカプラーフック(22)の先端部(22F)を埋設アンカー(6)の係合孔を離脱させることが出来れば良いから、浮子連絡部材(24)とカプラーフック先端部(22F)の位置関係は、前記説明のものに限定されない。カプラーフック(22)の長さや、軸部材(28、31)の配設位置は、回動部材(21)の大きさや作業対象物(K)の大きさによっても変わり得る条件だからである。
【0030】また、作業対象物Kに埋設ボルト6を配するときには、回動部材21が動くための作動用凹部を設けておくことが望まれる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る吊り作業用水中カプラーによれば、比較的簡単な構造によって、吊り作業によって水中に設置した作業対象物からのクレーンフックの自動解除を可能とすることが出来る。
【出願人】 【識別番号】502119956
【氏名又は名称】株式会社加賀谷産業
【出願日】 平成14年4月4日(2002.4.4)
【代理人】 【識別番号】100099014
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 滿茂
【公開番号】 特開2003−292283(P2003−292283A)
【公開日】 平成15年10月15日(2003.10.15)
【出願番号】 特願2002−103071(P2002−103071)