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【発明の名称】 H形鋼製吊りピース
【発明者】 【氏名】奥井 隆徳
【住所又は居所】岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

【氏名】齎藤 晋三
【住所又は居所】岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

【氏名】折田 朝之
【住所又は居所】岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

【要約】 【課題】吊り力に効果的に対抗することができ、かつ加工工数を減らすことのできる吊りピースを提供する。

【解決手段】鋼製部材を吊り上げる際に使用する吊りピースであって、熱間圧延されたH形鋼を所定長に短尺切断し、短尺切断されたH形鋼のウエブに吊り孔を設け、かつ短尺切断されたH形鋼のウエブの一方側の切断面にスカラップ加工により切り欠き部を2つ形成してなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼製部材を吊り上げる際に使用する吊りピースであって、熱間圧延されたH形鋼を所定長に短尺切断し、短尺切断されたH形鋼のウエブに吊り孔を設け、かつ短尺切断されたH形鋼のウエブの一方側の切断面にスカラップ加工により切り欠き部を2つ形成してなることを特徴とするH形鋼製吊りピース。
【請求項2】 前記H形鋼のウエブ厚/フランジ厚を1.3 〜3.0 としてなることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼製吊りピース。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶用ユニットキャビンや水上浮揚構造物等の鋼製部材もしくはそれらの鋼製部材を載置する鋼製パレット定盤に取り付け、鋼製部材を吊り上げる際に使用する吊りピースに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の吊りピースは、3枚の厚鋼板を所定形状に形成し、断面がH状になるように組立後、溶接により一体化して製作していた。このようにして製作された組立吊りピースの一例を図4、図5に示す。図4で符号11は吊り孔を設けた吊り部である。図4に示す吊りピースは、吊り部11とその両側に断面がH状になるように立設されたリブ部12とからなり、吊り部11には、吊り具を挿入する吊り孔13が設けられているとともにスカラップ加工により切り欠き部14が形成されている。また吊り部11の両側に立設されるリブ部12は、幅が1Bの矩形板の左右両側をなだらかに切り欠いて中央部の高さが1Lとなるように形成されている。符号dは吊り孔13の直径、Rは吊り部11の上部半径であり、許容吊り力に応じて吊り部11の上部長さが決められている。符号cは切り欠き部の高さである。例えば、許容吊り力が196 〜490kN の組立吊りピースでは吊り部11の上部長さが80〜150mm とされ、吊り孔13の直径dは80〜110mm 、吊り部11の上部半径Rは120 〜205mm 、中央部のリブ部高さ1Lは200 〜300mm とされている。スカラップ加工により形成する。吊り部11とリブ部12とを一体化している溶接部15は、吊り力に対抗できるようにその長さが決められている。またt3は吊り部厚、t4 はリブ部厚である。
【0003】このような組立吊りピースは、許容吊り力毎に、図4(c)に示すリブ部幅1B、リブ部間の外法寸法IH及びリブ部厚t4 、吊り部厚t3 が吊り力に対抗できるように決めてある。さらに中央部のリブ部高さ1Lの寸法も許容吊り力に応じて上記のように設定されている。図5は、図4に示した吊りピースより許容吊り力が大きい組立吊りピースの構造を示す(a)は正面図、(b)は側面図であり、図4と同じものについては同じ符号を付してある。許容吊り力が大きい組立吊りピースでは、吊り部11に補強板16を取り付け、鋼製部材を吊り上げる際、吊り部11が吊り力に対抗できる構造にしている。図6は、図4に示した従来の吊りピースを船舶用ユニットキャビンである鋼製部材17に取り付けた概略正面図である。吊りピースはコーナー部のリブ部幅1Bに亘る溶接部15により鋼製部材17に取り付けられている。鋼製部材17は吊り具9と吊りピースを介して図示しないクレーン等により吊り上げられる。
【0004】なお、図6中想像線は吊り孔13に挿入された吊り具9であり、Fは吊り力である。従来の吊りピースの構造は上述したとおりであり、組立吊りピースの種類は、工場によって異なっているが10〜20種類と多い。例えば、許容吊り力が200kN の組立吊りピースでは、吊り部厚t3 をリブ部厚t4 より厚く、t3 =24〜28mmとするとともに、t3 /t4 =1.3 〜3.0 とし、また許容吊り力を大きくする場合、断面寸法を大きくし、吊り部11に補強板16を取り付けて吊り力に対抗できるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の吊りピースは、3枚の厚鋼板を所定形状に形成し、組立後、溶接により一体化して製作していたため、加工工数が多いという問題があった。このため、例え、船舶用ユニットキャビン等の鋼製部材を吊り上げて船舶を製造する造船工場等においては、吊りピースを大量に使用するため、吊りピース加工工数を削減し、製造コストを削減したいという要望が強い。
【0006】そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、吊り力に効果的に対抗することができ、かつ加工工数を減らすことのできる吊りピースを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下のとおりである。
1. 鋼製部材を吊り上げる際に使用する吊りピースであって、熱間圧延されたH形鋼を所定長に短尺切断し、短尺切断されたH形鋼のウエブに吊り孔を設け、かつ短尺切断されたH形鋼のウエブの一方側の切断面にスカラップ加工により切り欠き部を2つ形成してなることを特徴とするH形鋼製吊りピース。
2. 前記H形鋼のウエブ厚/フランジ厚を1.3 〜3.0 としてなることを特徴とする上記1.に記載のH形鋼製吊りピース。
【0008】
【発明の実施の形態】先ず、本発明に係るH形鋼製吊りピースについて図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るH形鋼製吊りピースの斜視図であり、図3は本発明に用いた熱間圧延されたH形鋼である。図1と図3において同じものについては同一符号を付してある。
【0009】本発明に係る吊りピースは、図3に示すような熱間圧延されたH形鋼を所定長Lとなるように短尺切断し、短尺切断されたH形鋼のウエブ1に吊り孔3を設けたH形鋼製吊りピースである。また、図1に示すように短尺切断されたH形鋼のウエブの一方側の切断面にスカラップ加工により溝状の切り欠き部を2つ形成してなる。このようなH形鋼製吊りピースは、その切断面がH状であるため、吊り力に効果的に対抗することができ、そのうえ図1に示すように溶接部がなく、吊りピース製作時の溶接作業がなくなったことにより、加工工数を少なくすることができる。
【0010】図1、図2中Lは、短尺切断する所定長さである。熱間圧延されたH形鋼を所定長Lに短尺切断するには、コールドソーまたはバンドソー等の冷間鋸断で簡単に行うことができ、また吊り孔3を設けるにはガス切断等によって容易に行うことができる。吊りピースに使用するH形鋼の断面寸法、すなわち高さA×辺B×ウエブ厚t1 ×フランジ厚t2 は、許容吊り力に応じて決めることができる。許容吊り力は、吊り上げる鋼製部材の重量に応じて適宜決めることができる。なお、吊りピースに使用するH形鋼の高さAおよび短尺切断する所定長さLは、吊り孔3をフランジ2内に設けることができる寸法とされる。なお、短尺切断する所定長Lは、図1でウエブ1上部の長さが所定値以上となるように決められる。このウエブ1の上面から吊り孔3の上端までの、ウエブ1上部の長さが所定値未満となると、当該吊りピースが吊り力にその部分が耐えられなくなってしまうからである。上記の吊り孔3を設ける位置は、L方向には切り欠き部4と重ならず、かつウエブ1の上部長さが所定値以上となる位置とし、またA方向にはその中心がウエブ1の中央に位置するようにする。
【0011】本発明に係るH形鋼製吊りピースには、従来と同様スカラップ加工により切り欠き部4を設けることが重要である。H形鋼の辺Bに沿う2つの溝状切り欠き部4は、図1に示すように、ウエブ1の一方側の切断面(図面で下側の面)に形成されている。2つの切り欠き部4は、ウエブ1の前面から後面に到達するようにスカラップ加工により形成される。例えば、切り欠き部4の形状は、従来と同様に正面からみてコーナー部にアールを有する矩形状とすることができる。H形鋼製吊りピースには、フランジ2の下部に図示しない開先を開先加工機によって形成するのが普通である。
【0012】次いで、H形鋼製吊りピースの使用方法について図2を用いて説明する。図2(a)は、本発明に係るH形鋼製吊りピースの鋼製部材6への取り付け状態を示す概略正面図であり、図2(b)は、鋼製部材6の吊り上げ方法の一例を示す概略正面図である。図2(b)は、鋼製部材6をウエブ1とフランジ2とを有するH形鋼製吊りピースを介して図示しないクレーン等により吊り上げている状態であり、図中符号7はフック、8は吊り天秤である。フック7にはワイヤロープ等の吊り具9が係止される。
【0013】H形鋼製吊りピースは、鋼製部材6に溶接部5により取り付けられるのが普通である。その際、スカラップ加工により切り欠き部4を形成してあるので、フランジ2の内外面の辺B全長に亘る溶接部5により鋼製部材6へH形鋼製吊りピースを確実に取り付けることができ、吊り上げ時、吊り力に対抗することができる。
【0014】ここで、H形鋼製吊りピースを吊り力に効果的に対抗することができる構造とするには、H形鋼のウエブ厚t1 /フランジ厚t2 を1.3 〜3.0 とすることが重要である。H形鋼のウエブ厚t1 /フランジ厚t2 を1.3 未満とした場合、ウエブ1の耐力がフランジ2の耐力に対して不十分となり、一方H形鋼のウエブ厚t1 /フランジ厚t2 が3.0 を超えた場合、上記と反対にウエブ1の耐力がフランジ2の耐力に対して過大となる。このため、H形鋼のウエブ厚t1 /フランジ厚t2 を1.3 〜3.0 とする。またこのようなH形鋼を用いることにより、許容吊り力が高いH形鋼製吊りピースとする場合には、従来の組立吊りピースのように補強板16(図5参照)を取り付けて対応する必要もないため、加工工数を減少できる。
【0015】H形鋼製造工場側では、上述した本発明に係る吊りピースに使用するH形鋼として、高さAが150 〜500 mm、辺Bが100 〜400 mm、ウエブ厚t1 が15〜60mm、フランジ厚t2 が10〜32mmで、かつウエブ厚t1 /フランジ厚t2 ≧1のサイズのものを熱間圧延して提供することが可能であり、このうちウエブ厚t1 /フランジ厚t2 =1.3 〜3.0 のH形鋼を吊りピース用として推奨している。鋼製部材を吊り上げ、構造物を組み立てる工場等においては、上記H形鋼から鋼製部材に応じて、適宜なサイズのH形鋼を決定することができる。例えば、許容吊り力を196 〜490kN の範囲で、98kN毎に4種類とし、かつ各許容吊り力に対して断面寸法の異なるもの2種類とすれば、H形鋼製吊りピースを8種類とすることができる。
【0016】表1にH形鋼製吊りピースの寸法の一例を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
【実施例】造船工場において、吊りピース用としてH形鋼を決定し、製鉄工場で製造されたH形鋼を用い、所定長に短尺切断し、短尺切断されたH形鋼のウエブに吊り孔を設けH形鋼製吊りピースとした。その際、短尺切断されたH形鋼のウエブの一方側切断面にスカラップ加工により切り欠き部を2つ形成し、また、同じ側のフランジに開先加工を施した。船舶用ユニットキャビン等の鋼製部材を吊り上げて船舶を製造するに当たり、従来の組立吊りピースに比べ加工工数を少なくすることができ、1船体当たり2000個使用する吊りピースの製造コストを削減できる。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、吊り力に効果的に対抗することができ、かつ吊りピースの加工工数を減らすことができる。この結果、鋼製部材に吊りピースを取り付け、吊りピースを介して鋼製部材を吊り上げ、船舶等の構造物を組み立てる工場等において製造コストを削減できる。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
【出願日】 平成14年3月11日(2002.3.11)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
【公開番号】 特開2003−261283(P2003−261283A)
【公開日】 平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願番号】 特願2002−65785(P2002−65785)