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【発明の名称】 乗員判別方法及び乗員判別装置
【発明者】 【氏名】小林 武
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株式会社内

【要約】 【課題】乗員の姿勢の変化により生じる車体との間の静電容量の影響を受けることなく正確に乗員が大人か子供かを判別する。

【解決手段】シート上に配置され静電容量を測定するための電極であって、信号を印加する送信状態(交流電圧印加)と受信(状態直流電圧印加もしくは接地GND)との間で切り替えることができる2つ以上の電極1、2を備え、各電極側からみた電極間容量を測定する。送信状態時と受信状態時のそれぞれの電極間の静電容量から2つの電極1、2と乗員間の容量C1、C2(電極を覆う乗員の面積S1、S2に比例)を、乗員の姿勢によって変化する乗員とGND間の静電容量Cgを含めずに算出し、その大きさから乗員が大人か子供かを判別する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極の静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別方法において、前記複数の電極に対し、順次、信号を印加し、信号を印加した電極及び信号を印加しない電極の全ての電極の電流に基づく静電容量を測定し、各静電容量の測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、該容量値から乗員の大きさを判別することを特徴とする乗員判別方法。
【請求項2】 シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極の静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別方法において、前記複数の電極に対し、順次、前記信号を印加するとともに、他の電極には前記信号と異なる信号レベルの信号を印加し、それぞれ全ての電極の電流に基づく静電容量を測定し、各静電容量の測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、該容量値から乗員の大きさを判別することを特徴とする乗員判別方法。
【請求項3】 前記信号はパルス信号であることを特徴とする請求項1又は2記載の乗員判別方法。
【請求項4】 前記容量値を合計した全容量値を所定の閾値と比較することにより、乗員の大小を判別することを特徴とする請求項1、2又は3記載の乗員判別方法。
【請求項5】 前記閾値として2つの閾値を用い、乗員が存在しないことをも判別することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1つの請求項記載の乗員判別方法。
【請求項6】 前記複数の電極はシート上面部及び/又はシート背もたれ部に配置することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つの請求項記載の乗員判別方法。
【請求項7】 シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極に形成される静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別装置において、前記信号を出力する信号源と、各電極に流れる電流により静電容量を測定する複数の容量値測定回路と、前記複数の電極に対する前記信号源の接続を順次切り替える切替回路と、前記信号源のそれぞれの切り替え状態における前記容量値測定回路のそれぞれの測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、前記各電極の容量値により乗員の大きさを判別する演算回路と、を有することを特徴とする乗員判別装置。
【請求項8】 シートに配置した複数の電極に対し、前記電極に容量値測定用の信号を印加して前記電極に形成される静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別装置において、前記信号を出力する第1の信号源と、前記信号の信号レベルと異なる信号を出力する複数の第2の信号源と、各電極に流れる電流により静電容量を測定する複数の容量値測定回路と、前記複数の電極に対し前記第1の信号源及び第2の信号源の接続を順次切り替える切替回路と、前記第1及び第2の信号源のそれぞれの切り替え状態における前記容量値測定回路のそれぞれの測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、前記各電極の容量値により乗員の大きさを判別する演算回路と、を有することを特徴とする乗員判別装置。
【請求項9】 前記信号はパルス信号であることを特徴とする請求項7又は8記載の乗員判別装置。
【請求項10】 前記演算回路は、前記各電極の容量値を合計した容量値を所定の閾値と比較する比較回路を備えることを特徴とする請求項7、8又は9記載の乗員判別装置。
【請求項11】 前記比較回路は、閾値として2つの閾値を有し、乗員が存在しないことをも判別することを特徴とする請求項10記載の乗員判別装置。
【請求項12】 前記複数の電極はシート上面部及び/又はシート背もたれ部に配置されることを特徴とする請求項1ないし11の何れか1つの請求項記載の乗員判別装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、乗員判別技術に関し、特に、座席シートに着座した乗員の大きさ、特に、大人か子供かを正確に判別する乗員判別方法及び乗員判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より2つの電極間の静電容量が人員の有無により変化することを利用して、自動車等のシート上の人員の有無を電気的に判別する判別技術が知られている(特開平3−233391号公報、特開平7−270541号公報、特開2000−249773号公報)。また、ハンドル中央部に配置した複数の導電性電極間の静電容量の変化により乗員の身体、姿勢等の判別を行い衝撃時のエアーバックの制御に利用可能な判別技術も知られている(特開平11−337427号公報、特開平11−337427号公報)。
【0003】ところで、従来より車両のエアーバック装置にあっては、助手席側の乗員が大人であるか子供であるかに拘わらず衝撃を受ければエアーバックが展開するシステムが使用されてきているが、近年、座高の低い子供の場合は、エアーバックが展開しないほうが却って安全であることが分かってきた。このことにより、座席シートに乗員判別装置を装備し、衝撃時に大人の場合はエアーバックが展開するが子供の場合はエアーバックが展開しないように制御するものが考えだされてきた。このため乗員判別装置として大人か子供かの判定を可能とする必要があり、かかる乗員判別装置が特開平11−258354号公報、特開平11−271463号公報に記載されている。
【0004】図10は、前記公報記載の従来の乗員判別装置の構造を示す図である。この乗員判別装置では、複数のアンテナ電極1A、2Aと、前記複数のアンテナ電極を送信側と受信側に接続を切り替えるスイッチ3Aと、発信器5Aと、電極に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路4Aと、前記電流電圧変換回路4Aの出力により前記発信器5Aと前記送信側のアンテナ電極間に存在する送信側からみた電極間容量を検出する電極間容量検出回路6Aと、乗員判別回路7Aとから構成されている。この乗員判別装置では、前記電極間容量検出回路6Aから得られるアンテナ電極間の容量値の変化により大人か子供かを判別するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の複数の電極間の静電容量の変化等により単に人員の有無、姿勢等を判別する判別技術では、乗員の大小によりエアーバック等の制御を精緻に行うことは不可能である。これに対し図10に示す従来の乗員判別装置では、アンテナ電極を覆っている乗員の面積の違いによりアンテナ電極間の容量値に変化が生じることを利用し、この容量値の変化を測定して大人か子供かを判別できるようにしている。
【0006】しかし、図10に示すような乗員判別装置においては、乗員とアンテナ電極以外の周囲の車体金属(GND)との間にも静電容量が形成されており、また、通常シート上の乗員は常に同じ姿勢でいることはあり得ないことであり種々の姿勢をとるものであるから、乗員の姿勢に応じて乗員と前記車体金属(GND)等との間の静電容量値(Cg)も変化するため、前記静電容量値(Cg)を含む乗員とアンテナ電極間の容量の合成値であるアンテナ電極間容量値の測定値に、乗員の姿勢により変化する容量成分による誤差が生じる。特に、静電容量Cgは、乗員が車のシャーシ等の金属部分に接近又は接触することで大きい値に変化するため、かかる場合に電極間容量の検出値が大きく変化し、その大きさにより乗員の大小を判断することは極めて困難となる。従って、単にアンテナ電極間容量値の大きさから乗員が大人か子供かを判別する判別方法では、正しい乗員の大小判別を実現することは困難であるという難点がある。
【0007】(目的)本発明の目的は、大人か子供かを正確に判別することが可能な乗員判別方法及び乗員判別装置を提供することにある。本発明の他の目的は、大人か子供かの判別に影響する乗員と周囲の車体金属部等との間の容量を排除し、誤判別を防止することを可能とする乗員判別方法及び乗員判別装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の乗員判別方法は、シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極の静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別方法において、前記複数の電極に対し、順次、信号を印加し、信号を印加した電極及び信号を印加しない電極の全ての電極の電流に基づく静電容量を測定し、各静電容量の測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、該容量値から乗員の大きさを判別することを特徴とする。
【0009】本発明の乗員判別方法は、シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極の静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別方法において、前記複数の電極に対し、順次、前記信号を印加するとともに、他の電極には前記信号と異なる信号レベルの信号を印加し、それぞれ全ての電極の電流に基づく静電容量を測定し、各静電容量の測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、該容量値から乗員の大きさを判別することを特徴とする。本発明の乗員判別装置は、シートに配置した複数の電極に対し、容量値測定用の信号を印加して前記電極に形成される静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別装置において、前記信号を出力する信号源(例えば図2の信号源10)と、各電極に流れる電流により静電容量を測定する複数の容量値測定回路(例えば図2の電流電圧変換回路5、6、電極間容量検出回路7、8)と、前記複数の電極に対する前記信号源の接続を順次切り替える切替回路(例えば図2のスイッチ回路11)と、前記信号源のそれぞれの切り替え状態における前記容量値測定回路のそれぞれの測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、前記各電極の容量値により乗員の大きさを判別する演算回路(例えば図2の演算回路9)とを有することを特徴とする。
【0010】本発明の乗員判別装置は、シートに配置した複数の電極に対し、前記電極に容量値測定用の信号を印加して前記電極に形成される静電容量を計測することにより、前記電極を覆う乗員の大きさを判別する乗員判別装置において、前記信号を出力する第1の信号源(例えば図9の101)と、前記信号の信号レベルと異なる信号を出力する複数の第2の信号源(例えば図9の102、103、104)と、各電極に流れる電流により静電容量を測定する複数の容量値測定回路と、前記複数の電極に対し前記第1の信号源及び第2の信号源の接続を順次切り替える切替回路と、前記第1及び第2の信号源のそれぞれの切り替え状態における前記容量値測定回路のそれぞれの測定値に基づいて乗員と周囲の導体間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出し、前記各電極の容量値により乗員の大きさを判別する演算回路とを有することを特徴とする。
【0011】(作用)シートに配置された2つ以上の電極に順次選択的に静電容量の測定用の信号を印加し、各電極を送信状態と受信状態とに切り替え、それぞれの状態での各電極からみた静電容量を測定することにより電極上の乗員の有無、大小を判別する構成を備える。それぞれの電極で検出した送信状態時と受信状態時の静電容量から各電極と乗員間の静電容量(電極を覆う乗員の面積に比例)を乗員の姿勢によって変化する乗員とGND間の静電容量を含めずに算出することにより、その大きさに基づいて乗員の姿勢の変化により誤判断することなく乗員の大小、特に、大人か子供かを正確に判別することを可能とする。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、2つの電極を使用した本発明の乗員判別方法及び装置に係る一実施の形態について説明する。図1は、本発明を適用する車両等のシート上に設けた2つの電極の配置例を示し、図1(a)はシート上に配置した例、図1(b)は背もたれに配置した例をそれぞれ示す図である。図1(a)はシート上に配置した例を上部からみた電極配置を示し、図1(b)は背もたれに配置した例をシート前部方向からみた電極配置を示している。何れもシートの左右方向に分離(絶縁)した2枚の電極1、2として配置した例である。同図から分かるようにシート上の乗員が大人か子供かにより、2つの電極を覆う面積が異なり、この面積の差異を判定することができれば、大人か子供かを判定することが可能である。
【0013】図2は、本実施の形態の構成を示す図である。シートに設けた2つの電極1、2と、2つの電流電圧変換回路5、6と、前記2つの電極1、2と前記2つの電流電圧変換回路5、6のそれぞれ入力端子51、61との間の接続を交互切り替える切り替えスイッチ11と、前記電流電圧変換回路の一方(同図では電流電圧変換回路5)に設けた容量値の測定用の交流信号源10と、前記電流電圧変換回路5、6の出力にそれぞれ接続され、それぞれ電極間容量を検出する2つの電極間容量検出回路7、8と、前記電極間容量検出回路7、8の出力に接続され、電極と乗員間の容量及び算出した容量に基づき乗員の大小を判定する演算回路9とから構成される。
【0014】また、電流電圧変換回路5、6は、基本構成として例えば出力端子から反転入力端子(入力端子51、61)間に負帰還抵抗を接続し、非反転入力端子は基準電位点(直流電位点)に接続された差動増幅器で構成しており、一方の差動増幅器の非反転端子と基準電位点との間に前述の容量値の測定用の交流信号源10を備える。各部の機能は以下のとおりである。
【0015】切り替えスイッチ11は、電流電圧変換回路5、6の端子51、61間と電極1、2間との接続を切り替える機能を有し、図2に示すスイッチ状態では、交流信号源10からの交流信号は電流電圧変換回路5−電極1−電極2−電流電圧変換回路6及び電流電圧変換回路5−電極1−静電容量Cgを介して流れ、電極間容量検出回路7には当該電流に対応する電圧信号が入力され、電極間容量検出回路8には電流電圧変換回路6を流れる電流に相当する電圧信号が出力される。
【0016】電極間容量検出回路7は、同期検波回路や位相差検出回路等を備え、電流電圧変換回路5に流れる電流と前記交流信号と同期する信号から、電流電圧変換回路5に流れる電流に相当する電圧信号の振幅や位相の変化を検出して、前記電圧や位相差により電流電圧変換回路5側からみた電極間の静電容量を算出する機能を有する。また、電極間容量検出回路8は、電極間容量検出回路7と同様の構成でなり電流電圧変換回路6側からみた電極間の静電容量を算出する機能を有する。つまり、図2に示す状態では、電極1側を交流信号の送信側(印加側)、電極2側を受信側とした場合のそれぞれの電極1、2からみた電極間容量を算出する機能を有する。前述の電極間容量検出回路7、8の機能は、切り替えスイッチ11が反対側に切り替わった場合にも同様であり、この場合は、電極間容量検出回路7、8は、それぞれ電極2側を送信側、電極1側を受信側とした場合のそれぞれの電極からみた電極間容量を算出する機能を有する。
【0017】演算回路9は、電極間容量検出回路7、8において電極1、2の一方を送信側、他方を受信側として算出した2つの電極間容量値の情報に基づいて、電極と乗員間の容量値C1、C2を、乗員と車体(GND)間の静電容量Cgの影響を排除してそれぞれ算出する機能を有する。更に、電極と乗員間の容量は、電極を覆う乗員の臀部の面積に比例しており、その大きさから大人か子供かを判断する機能をも有する。後者の機能は、例えば算出した容量値C1、C2の合計値(C1+C2)に対し比較回路を使用して、所定の比較閾値と比較することにより、前記閾値との大小関係に基づき乗員が大人か子供かを判断する。また、電圧レベルの低い第2の閾値を設定した比較回路を使用することにより乗員の有無を判別する機能を備えることができる。
【0018】(動作の説明)本発明の乗員判別方法及び装置においては、電極1、2と乗員間のそれぞれの静電容量のみを独立に求めることにより、電極1、2上を覆う面積から乗員の大きさを判断し、大人か子供かを判断可能とする。以下その動作原理を説明する。図3は、図2に示す乗員判別装置において電極1を送信側とし電極2を受信側とした場合の乗員と電極部分の等価回路を示す図であり、図4は、同乗員判別装置において電極2を送信側とし電極1を受信側とした場合の電極部分の等価回路を示す図である。図3に示す等価回路において、電極1側から見た静電容量をC11とし、電極2側から見た静電容量をC12とすると、それぞれの静電容量C11、C12は、C11=C1×(C2+Cg)/(C1+C2+Cg)………(1)
C12=C1×C2/(C1+C2+Cg) ………(2)
という計算式で表せる。(【0023】、【0024】参照)
【0019】図4に示す等価回路において、電極2側からみた静電容量をC22とし、電極1側からみた静電容量をC21とすると、それぞれの静電容量C22、C21は、C22=C2×(C1+Cg)/(C1+C2+Cg)………(3)
C21=C1×C2/(C1+C2+Cg) ………(4)
という計算式で表せる。(【0023】、【0024】参照)
【0020】(1)式と(2)式のそれぞれの両辺、(3)式と(4)式のそれぞれの両辺をそれぞれ引き算すると、 C11−C12=C1×Cg/(C1+C2+Cg)………(5)
C22−C21=C2×Cg/(C1+C2+Cg)………(6)
が得られ、(5)式の両辺を(6)式の両辺でそれぞれ割り算すると、 (C11−C12)/(C22−C21)=C1/C2……(7)
が得られる。次に(2)式の両辺に(7)式の両辺をそれぞれ掛けると、 C12×(C11−C12)/(C22−C21)=C1/(C1+C2+Cg)
…………(8)
が得られ、(8)式の両辺を(1)式の両辺にそれぞれ加えると、 C11+C12×(C11−C12)/(C22−C21)
=C1×(C2+Cg)/(C1+C2+Cg)+C1/(C1+C2+Cg)……(9)
が得られる。この式の右辺は静電容量C1であるから、C1=C11+C12×(C11−C12)/(C22−C21)…(10)
と表すことができる。
【0021】同様にして、静電容量C2についても、C2=C22+C21×(C22−C21)/(C11−C12)…(11)
と表すことができる。
【0022】得られた(10)式及び(11)式から分かるように、この両式は電極1、2を交流信号の送信側と受信側に交互に切り替えることにより電極間容量検出回路7、8から得られる静電容量の容量値のみで成り立っており、乗員とGND間の静電容量の容量値Cgの成分は含んでいない。従って、(10)式及び(11)式により算出されるそれぞれの容量値は、乗員の姿勢の変化の影響を受けない。
【0023】本実施の形態では、前記(10)式及び(11)式で算出した静電容量C1、C2のそれぞれの容量値の測定結果から、例えばその合計値であるC1+C2を所定の閾値と比較する等の判定処理を行うことにより、乗員の臀部の大きさを判断することが可能であり、その大きさの判断により大人か子供かの判断を行うことができる。また、乗員が電極1、2上にいない場合は、(1)〜(4)式は全て同一値になり、その値もごく小さなものとなるため、C1=C11、C2=C22大人と子供の判定を行う前記閾値より充分低い第2の閾値を設けることにより、乗員無しを判断するように構成することができる。
【0024】(他の実施の形態)以上説明した実施の形態は、2つの電極を使用した例を示したが、本発明は3つ以上の電極により実現することが可能である。例えば、3つ以上の電極をシート上又はシートの背もたれに配置し、乗員がその内2つ以上の電極を覆うように着座した場合等、同様に送信電極と受信電極の測定データを取得し、同様な連立方程式をとくことにより、それぞれの電極と乗員の間の容量値を算出し、乗員の大きさを判別することが可能である。図5、6は、4つの電極を使用する場合の本発明の他の実施の形態を示す図である。図5に示すように4つの電極は、シート上又は背もたれ上に配置した例を示す図である。本実施の形態の乗員判別方法及び装置は、図6に示すように、4つの電極1、2、3、4と基準電位点間に、4つの電流電圧変換回路21、22、23、24を設けて構成される。同図では、その内の1つの電極1に接続した電流電圧変換回路21に交流信号を出力する交流信号源10を設け、電極1を送信側、電極2、3、4を受信側とした場合を示している。
【0025】図7は、乗員により形成される静電容量を含む図6の実施の形態の等価回路を示す図である。本実施の形態では、電極の1つを送信側とし、他の電極を受信側とする全ての組み合わせで送信状態と受信状態での電極間容量を測定すると、その値は図7に示す静電容量C1、C2、C3、C4、Cgを直並列接続したコンデンサ容量になる。つまり、C2、C3、C4の片側は直流電圧(基準電位)V0、Cgの片側はGNDに接続されているが、回路で取り扱うのは電流の交流成分なので、コンデンサの合成容量は並列つなぎの公式により計算することができ、C2、C3、C4、Cgの並列つなぎとC1の直列つなぎの容量となり、送信側で検出される容量値C(「C送1」とする)は、C送1=C1×(C2+C3+C4+Cg)/(C1+C2+C3+C4+Cg)
次に、受信側の電極2から見た容量値C(「C受2」とする)を電圧vとして式で表すと、1/C受2=v/i2(Cのみの計算なので複素数とωを省略)
図7の電流の関係から、i=i2+i3+i4+igであり、C2とC3とC4とCgの比(2つの並列インピーダンスの各インピーダンスに流れる電流の比はインピーダンス値の逆比になる)から、 i2=i1×[1/(C3+C4+Cg)/{1/C2+1/(C3+C4+Cg)}]
=i1×C2/(C2+C3+C4+Cg)
という関係が成り立つ。
【0026】前記式中のi1をi1=v/(1/C送1)と置き換えると(ここでC送1は先ほど算出した送信側からみた容量値)、 i2=vC送1C2/(C2+C3+C4+Cg)
これより、 C受2=i2/v =C送1C2/(C2+C3+C4+Cg)
=C1C2/(C2+C3+C4+Cg)
/(C2+C3+C4+Cg)(C1+C2+C3+C4+Cg)
C受2=C1C2/(C1+C2+C3+C4+Cg)
となる。同様に電極3、4についてそれぞれの容量値C(それぞれ「C受3」、「C受4」とする)を計算すると、C受3=C1C3/(C1+C2+C3+C4+Cg)
C受4=C1C4/(C1+C2+C3+C4+Cg)
となる。つまり、送信側及び受信側の容量値(容量検出値)の一般式は、送信側:C=Cs×(Cg+ΣCn−Cs)/(Cg+ΣCn)
受信側:C=Cs×Cj/(Cg+ΣCn)
ここで、Cs :送信側の電極と乗員間の容量Cj :各受信側の電極と乗員間の容量ΣCn:1からnまでの電極と乗員間の容量Cg :乗員とGNDの接近又は接触面で作られる容量である。
また、乗員がGNDに接触あるいは接近してCg>>ΣCnとなった場合は、送信側C≒Cs受信側C≒0となるので、乗員の車体等への接触は閾値による判別が可能である。
【0027】以上により図7の場合は、図8に示すような電極間容量値が検出される。次に、図8に示す容量値から電極と乗員間の静電容量値C1、C2、C3、C4を算出するために前述の電極が2つの場合と同様に4つの電極の検出値を使って計算式をつくる。
【0028】電極1、2の電極間容量検出値より、前述と同様に両辺同士の演算を以下のように行う。つまり、(12)式−(13)式−(14)式−(15)式を計算すると、 C11−C12−C13−C14=C1×Cg/(C1+C2+C3+C4+Cg)
………………(28)
(17)式−(16)式−(18)式−(19)式を計算すると、 C22−C21−C23−C24=C2×Cg/(C1+C2+C3+C4+Cg)
………………(29)
(28)式÷(29)式により、 (C11−C12−C13−C14)/(C22−C21−C23−C24)
=C1/C2………………(30)
(13)×(30)により、 C12×(C11−C12−C13−C14)/(C22−C21−C23−C24)
=C1/(C1+C2+C3+C4+Cg)……(31)
(31)式を(12)式の両辺に加えると、 C1=C11+C12(C11−C12−C13−C14)
/(C22−C21−C23−C24) ………(32)
が得られる。
【0029】同様の演算を行い、電極2、3の電極間容量検出値より、 C2=C22+C23(C22−C21−C23−C24)
/(C33−C31−C32−C34) ………(33)
電極3、4の電極間容量検出値より、C3=C33+C34(C33−C31−C32−C34)
/(C44−C41−C42−C43) ………(34)
電極4、1の電極間容量検出値より、C4=C44+C41(C44−C41−C42−C43)
/(C11−C12−C13−C14) ………(35)
となる。なお、上記の電極の組み合わせは1つの例であり、乗員が上に乗っている電極ならば上記の場合以外の組み合わせでも計算式の作成は可能である。
【0030】以上の式をまとめると、一般に、乗員が乗っている電極のうち2枚を電極n、電極mとした場合、電極nと乗員の間の容量Cnは、Cn=Cnn+Cnm×(Cnn−Cn受)/(Cmm−Cm受)
Cnn:電極nを送信にしたときの電極nでの検出容量Cnm:電極nを送信にしたときの電極mでの検出容量Cn受:電極nを送信にしたときに受信状態になっている電極の検出容量の合計値Cmm:電極mを送信にしたときの電極mでの検出容量Cm受:電極mを送信にしたときに受信状態になっている電極の検出容量の合計値と表すことができる。
【0031】また、電極が3つ以上あり、そのうちの少なくとも3つに乗員が乗っている場合なら、その3つの電極の検出値をつかって以下に示すような電極と乗員間の容量の検出式を作ることが可能である。
【0032】図8に示す電極間容量検出値のうち、電極1、2、3の電極間容量検出値より、C1=C11+C12×C13/C23電極2、3、4の電極間容量検出値より、C2=C22+C23×C24/C34電極3、4、1の電極間容量検出値より、C3=C33+C34×C31/C41電極4、1、2の電極間容量検出値より、C4=C44+C41×C42/C12となる。なお、上記の電極の組み合わせは1つの例であり、乗員が上に乗っている電極ならば、上記の場合以外の組み合わせでも計算式の作成は可能である。以上をまとめると、一般に乗員の乗っている電極のうちの3枚を電極n、電極m、電極pとした場合、電極nと乗員の間の容量Cnは、Cn=Cnn+Cnm×Cnp/CmpCnn:電極nを送信にしたときの電極nでの検出容量Cnm:電極nを送信にしたときの電極mでの検出容量Cnp:電極nを送信にしたときの受信電極pでの検出容量Cmp:電極mを送信にしたときの受信電極pでの検出容量となり、前述の電極2つの検出値を使った式より簡単な計算式で表すことができる。
【0033】これらの算出式を使い、乗員とGND間の静電容量Cgに影響されない電極と乗員の間の容量を算出することで、その大きさから大人か子供かを判別することが可能となる。
【0034】以上の実施の形態においては、信号源として、単一の電極に順次接続する単一の信号源を使用した例を説明したが、他の実施の形態として、複数の電極に対応する複数の信号源を使用し、出力する信号の信号レベルを1つの信号源のみを他の信号源の信号レベルと異ならせるように構成しても、乗員の大きさを測定するために必要な容量値が各電極間容量検出回路から取得することが可能である。
【0035】図9は、本実施の形態の構成を示す図である。1つのみ振幅が異なる複数の信号源101、102、103、104と、これらの信号源と電極1、2、3、4に接続された各電流電圧変換回路31、32、33、34との間を切り替えるスイッチ回路111とを備え、1つの電極に対して印加する交流信号vhの振幅Vhとは異なる振幅Vlの同一周波数の交流信号vlを他の全ての電極に同時に印加し、順次その印加状態を切り替えて容量値を測定するように構成したものである。このような構成を採用しても送信側及び受信側としての信号電流が形成されるので、同様にして各電極の静電容量を測定することが可能であり、乗員とGND間の静電容量の影響を排除した各電極の容量値を算出することが可能である。
【0036】また、以上の実施の形態では送信側の電極に対して印加する容量測定用の信号として交流信号(交流電圧)を使用する例により説明したが、印加する信号としてはパルス信号を使用することが可能である。この場合、パルス信号により電極に流れる交流成分を抽出して、前記実施の形態と同様の信号レベル又は位相差情報を取得することが可能であり、又はパルス信号の振幅を直接測定することが可能であり、この測定値から電極の静電容量の容量値を計測することができる。
【0037】なお、図2に示す実施の形態におけるスイッチ11では、信号源10と電流電圧変換回路と電極間容量検出回路を接続した回路を複数の電極に順次切り替えるように構成しているが、このスイッチ11は、信号源10のみを各電極(各電極間容量検出回路)に順次接続するように切り替えるように構成を変更しても所望の容量値の測定が可能であることは明らかである。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、乗員の大きさを判定するための複数の電極の容量値の測定において、その容量値から乗員とGND間の静電容量の容量値(Cg)をキャンセルできるように、容量値測定用の信号の送信側と受信側の両方の電極の静電容量を測定するように構成したことにより、乗員とGND間の静電容量の影響を排除することができ、乗員の大きさ、特に、大人か子供かの判断を誤ることなく行うことが可能である。
【0039】
【出願人】 【識別番号】300052246
【氏名又は名称】株式会社ホンダエレシス
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ケ谷区神戸町134番地横浜ビジネスパークハイテクセンター
【出願日】 平成14年2月15日(2002.2.15)
【代理人】 【識別番号】100105511
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康夫 (外1名)
【公開番号】 特開2003−237443(P2003−237443A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−39351(P2002−39351)