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【発明の名称】 車両のシート構造
【発明者】 【氏名】田岡 義文
【住所又は居所】大阪府池田市桃園2丁目1番1号 ダイハツ工業株式会社内

【要約】 【課題】シートの座部又は背もたれ部の表面に薄い袋状のマット体を備えた車両のシート構造において、流体供給装置を適切に配置する。

【解決手段】シートの背もたれ部2の下方におけるシートの座部1の部分の裏側部に、上方に入り込む凹部12を形成する。マット体21〜25に流体を供給する流体供給装置17を凹部12に備えて、マット体21〜25と流体供給装置17とを接続する流体通路30を、シートの座部1と背もたれ部2との間を通して配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シートの座部又は背もたれ部の表面に、薄い袋状のマット体を備えた車両のシート構造であって、前記シートの背もたれ部の下方における前記シートの座部の部分の裏側部に、上方に入り込む凹部を形成すると共に、前記マット体に流体を供給する流体供給装置を前記凹部に備えて、前記マット体と流体供給装置とを接続する流体通路を、前記シートの座部と背もたれ部との間を通して配置してある車両のシート構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用車や商用車、バス等の車両におけるシート構造に関する。
【0002】
【従来の技術】車両のシートにおいては、シートの座部又は背もたれ部の表面に薄い袋状のマット体を備えて、マット体に流体(例えば空気やガス、液体等)を供給したり、マット体から流体を排出したりするように構成したものがある。
【0003】これにより、体型の異なる乗員がシートに着座しても、マット体に供給する流体の圧力や量を調節することにより、乗員の体型に関係なく同じ乗り心地が得られるようにしたり、好みの乗り心地が得られるようにすることができる。又、乗員が長時間に亘って着座する場合、マット体に流体を供給したり、マット体から流体を排出したりすることを繰り返すことにより、乗員が長時間に亘って着座することによるシビレや痛みを緩和することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術に記載の構造においてマット体に流体を供給する為には、ポンプや制御弁、エアチャンバー等を備えた流体供給装置を、シートに設置する必要である。
【0005】この場合に、シートの座部の裏側部に流体供給装置を備えることが考えられるが、このように構成するとシートの座部の裏側部から下方に流体供給装置が突出することになる。これにより、例えばフロントシートの座部の裏側部に流体供給装置を備えると、リヤシートに着座する乗員が足をフロントシートの座部の下側に入れようとしても、流体供給装置が邪魔になることがある。本発明は、シートの座部又は背もたれ部の表面に薄い袋状のマット体を備えた車両のシート構造において、流体供給装置を適切に配置することができるように構成することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】[I]請求項1の特徴によると、シートの座部又は背もたれ部の表面に、薄い袋状のマット体を備えた車両のシート構造において、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分の裏側部に、上方に入り込む凹部を形成し、マット体に流体を供給する流体供給装置を凹部に備えて、マット体と流体供給装置とを接続する流体通路を、シートの座部と背もたれ部との間を通して配置している。
【0007】シートの座部の裏側部に流体供給装置を備える場合、請求項1の特徴のように上方に入り込む凹部をシートの座部の裏側部に形成して、凹部に流体供給装置を備えることにより、シートの座部の裏側部から下方に流体供給装置が突出する状態を避けることができる(シートの座部の裏側部から下方に流体供給装置が突出する状態となっても、流体供給装置の突出量を小さなものに抑えることができる)。
【0008】[II]前項[I]に記載のように、上方に入り込む凹部をシートの座部の裏側部に形成すると、凹部の付近のパッド部材の部分が凹部の分だけ薄くなり、乗り心地の低下を招くことがある。
【0009】請求項1の特徴によると、上方に入り込む凹部をシートの座部の裏側部に形成する場合、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分の裏側部に、上方に入り込む凹部を形成している。請求項1の特徴にように、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分は、乗員の体が当たるようなことはないので、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分が、凹部の分だけ薄くなったとしても、パッド部材が薄いことによる影響が乗員に及ぶようなことはない。
【0010】[III]シートの座部又は背もたれ部の表面に、薄い袋状のマット体を備えると、マット体と流体供給装置とに亘って、流体通路を接続する必要がある。請求項1の特徴によると、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分の裏側部に、流体供給装置(上方に入り込む凹部)を備え、マット体と流体供給装置とを接続する流体通路を、シートの座部と背もたれ部との間を通して配置しているので、シートの座部のマット体と流体供給装置とに亘る流体通路、及びシートの背もたれ部のマット体と流体供給装置とに亘る流体通路の両方が、あまり長いものにならない。
【0011】
【発明の実施の形態】図1及び図2は乗用車のシート(運転席及び助手席)を示しており、シートは座部1、背もたれ部2及びヘッドレスト3を備えて構成されている。フロア部4に左右一対のロアレール5が固定され、左右一対のアッパーレール6がロアレール5に沿って前後方向に移動自在に支持されており、背もたれ部2がリクライナ部7を介してアッパーレール6に取り付けられている。
【0012】図2及び図3に示すように、前フレーム8、後フレーム9、右及び左の横フレーム10により平面視で枠状のフレームが構成されて、右及び左の横フレーム10がアッパーレール6に固定されている。図2に示すように、フロア部4及びロアレール5に対して、前フレーム8よりも上方に後フレーム9が位置するように構成されている。
【0013】図2及び図3に示すように、直線部と半円状の円弧部とが交互に配置されるように線状のバネ材をS字状に何回も折り曲げてバネ部材11が構成されており、前及び後フレーム8,9に亘って、複数のバネ部材11が架設されている。前フレーム8に接続される前半部11a、上下向きの中間部11b及び後フレーム9に接続される後半部11cと言うように、バネ部材11は側面視(図2参照)でクランク状に折り曲げられている。これにより、シートの背もたれ部2の下方におけるシートの座部1の部分の裏側部において、上方に入り込む凹部12が、バネ部材11の中間部11b及び後半部11c、後フレーム9により形成されている。
【0014】図2及び図3に示すように、前フレーム8、後フレーム9、右及び左の横フレーム10、バネ部材11に、発泡ウレタン等のパッド部材13が乗せられ、パッド部材13に表皮15が被せられて、シートの座部1が構成されている。同様に発泡ウレタン等のパッド部材14に表皮16が被せられて、シートの背もたれ部2が構成されている。
【0015】図1及び図2に示すように、合成樹脂製で薄い袋状の第1マット体21、第2マット体22、第3マット体23、第4マット体24及び第5マット体25が備えられている。第1〜第4マット体21〜24が長方形状であるのに対し、第5マット体25は長方形のドーナツ状に構成されている。シートの座部1におけるパッド部材13と表皮15との間において、第1マット体21がシートに着座する乗員の臀部の右及び左側の位置、第4マット体24がシートに着座する乗員の右及び左の太股部の位置、第5マット体25がシートに着座する乗員の臀部の中央の位置に配置されている。シートの背もたれ部2におけるパッド部材14と表皮16との間において、第2マット体22がシートに着座する乗員の腰部の右及び左側の位置、第3マット体23がシートに着座する乗員の腰部の中央の位置に配置されている。
【0016】図2及び図3に示すように、空気供給装置17が凹部12が配置されて、空気供給装置17の上面部が、バネ部材11の後半部11cにボルト18及び固定金具37により固定されている。空気供給装置17の前面部はバネ部材11の中間部11bに固定されておらず、空気供給装置17の前面部とバネ部材11の中間部11bとの間に隙間が設けられている。この場合、シートの座部1において、パッド部材13及びバネ部材11が上下に変位した場合、空気供給装置17もバネ部材11の後半部11cと一緒に上下に変位するのであり、空気供給装置17の前面部とバネ部材11の中間部11bとの間に隙間が設けられていることにより、空気供給装置17の前面部とバネ部材11の中間部11bとの間で、擦れ合うことによる異音が発生するようなことはない。
【0017】図4に示すように、空気供給装置17は、モータ19、モータ19により駆動されるポンプ20、電磁操作式の供給弁26、ポンプ20の加圧空気が供給弁26を介して供給されるエアチャンバー27、電磁操作式の排気弁28、電磁操作式の給排弁31,32,33,34,35及び制御装置29等を備えてユニット状に構成されている。
【0018】図4に示すように、第1マット体21と給排弁31、第2マット体22と給排弁32、第3マット体23と給排弁33、第4マット体24と給排弁34、第5マット体25と給排弁35とが、細いチューブ30を介して接続されている。図1及び図2に示すように、チューブ30はパッド部材13,14と表皮15,16との間に配置されており、シートの座部1と背もたれ部2との間を通して空気供給装置17(給排弁31〜35)に接続されている。これにより、第1〜第5マット体21〜25の各々にエアチャンバー27の加圧空気を給排弁31〜35を介して独立に供給することができるのであり、第1〜第5マット体21〜25の各々から加圧空気を給排弁31〜35を介して独立に排出することができる。
【0019】次に、第1〜第5マット体21〜25及び空気供給装置17の機能について説明する。図4に示すように、空気供給装置17の制御装置29に操作信号を送る遠隔操作用のリモコン36が備えられている。リモコン36を操作することにより、第1〜第5マット体21〜25の各々に独立に加圧空気を供給して、第1〜第5マット体21〜25の内圧を所望の値に設定することができる。これにより、乗員の体型に関係なく同じ乗り心地が得られるようにしたり、好みの乗り心地が得られるようにすることができる。
【0020】この場合、リモコン36のメインスイッチを入り操作すると、前回の状態(リモコン36のメインスイッチが切り操作された際の第1〜第5マット体21〜25の内圧の状態)になるように、第1〜第5マット体21〜25に加圧空気が自動的に供給されるので、この後にリモコン36を操作することにより、第1〜第5マット体21〜25の内圧を所望の値に設定する。
【0021】前述のように第1〜第5マット体21〜25の内圧を所望の値に設定すると(リモコン36のメインスイッチが切り操作された際の第1〜第5マット体21〜25の内圧の状態になると)、その際の内圧の値を最高値として、第3,4,5マット体23,24,25の内圧が所定周期で上昇及び下降を繰り返すように、給排弁33,34,35が操作される。これにより、乗員が長時間に亘って着座することによるシビレや痛みを緩和することができる。
【0022】この場合、第1〜第5マット体21〜25の内圧を所望の値に設定した際(リモコン36のメインスイッチが切り操作された際の第1〜第5マット体21〜25の内圧の状態になった際)、前述のように第3,4,5マット体23,24,25の内圧が所定周期で上昇及び下降を繰り返す状態が行われない状態も、設定することが可能である。リモコン36のメインスイッチを入り操作しなければ、第1〜第5マット体21〜25に加圧空気が供給されないので、乗員の好みにより第1〜第5マット体21〜25に加圧空気が供給されない状態とすることもできる。
【0023】[発明の実施の別形態]前述の[発明の実施の形態]では、第1〜第5マット体21〜25に空気を供給するように構成しているが、空気以外のガスや液体を第1〜第5マット体21〜25に供給するように構成することも可能である。前述の[発明の実施の形態]では、シートの座部1及び背もたれ部2の両方に第1〜第5マット体21〜25を備えているが、シートの座部1にのみマット体(図示せず)を備えたり、シートの背もたれ部2にのみマット体(図示せず)を備えることも可能である。本発明は、シート(運転席及び助手席)ばかりではなく、後側のシートにも適用できる。
【0024】
【発明の効果】請求項1の特徴によると、シートの座部又は背もたれ部の表面に薄い袋状のマット体を備えた車両のシート構造において、シートの座部の裏側部から下方に流体供給装置が突出する状態を避けることができるようになり(シートの座部の裏側部から下方に流体供給装置が突出する状態となっても、流体供給装置の突出量を小さなものに抑えることができるようになり)、シートの座部をコンパクトに構成することができて、車両へのシートの搭載が行い易いものとなった。例えばフロントシートの座部に請求項1の特徴を適用すると、リヤシートに着座する乗員が足をフロントシートの座部の下側に入れようとした際、流体供給装置が邪魔になることが少ないので、リヤシートに着座する乗員の居住性を良いものにすることができる。
【0025】請求項1の特徴によると、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分の裏側部に、上方に入り込む凹部を形成することにより、シートの背もたれ部の下方におけるシートの座部の部分が、凹部の分だけ薄くなったとしても、パッド部材が薄いことによる影響が乗員に及ぶようなことはないので、乗り心地の低下を招くことがない。
【0026】請求項1の特徴によると、シートの座部のマット体と流体供給装置とに亘る流体通路、及びシートの背もたれ部のマット体と流体供給装置とに亘る流体通路の両方が、あまり長いものにならないので、構造の簡素化及び生産コストの低減と言う面で有利なものとなった。請求項1の特徴によると、流体通路があまり長いものにならないことにより、流体供給装置からマット体に流体が遅れることなく供給されたり、マット体から遅れることなく流体が排出されるようになるので、応答性を高めると言う面でも有利なものとなった。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【住所又は居所】大阪府池田市ダイハツ町1番1号
【出願日】 平成14年2月13日(2002.2.13)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2003−237441(P2003−237441A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−35361(P2002−35361)