| 【発明の名称】 |
析出強化型銅合金トロリ線およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】本田 照一 【住所又は居所】兵庫県尼崎市東向島西之町8番地 三菱電線工業株式会社内
【氏名】細川 浩一 【住所又は居所】兵庫県伊丹市池尻4丁目3番地 三菱電線工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】鈴木 清司 【住所又は居所】兵庫県尼崎市東向島西之町8番地 三菱電線工業株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】析出強化型銅合金トロリ線の製造における冷間加工工程時の異形伸線加工の引抜抵抗が小さくなるような方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、(A)溶体化処理工程、(B)冷間加工工程、(C)時効熱処理工程を有しており、該冷間加工工程において、少なくとも、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工がこの順序で行われ、好ましくは、前記皮剥ぎ工程の前にさらに円形伸線加工を行うことを特徴とする、析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。当該製造方法によれば、引抜抵抗が比較的小さい円形伸線加工により荒引線を伸線加工に適した表面状態にした後で、異形伸線加工を行うので該異形伸線加工における引抜抵抗を比較的小さくすることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、溶体化処理工程、冷間加工工程、時効熱処理工程を有しており、該冷間加工工程において、少なくとも、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工がこの順序で行われることを特徴とする、析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 【請求項2】 上記皮剥ぎ加工の後の円形伸線加工において、室温で固体の潤滑剤を用いることを特徴とする、請求項1に記載の析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 【請求項3】 上記皮剥ぎ加工の前に、さらに円形伸線加工が行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造される析出強化型銅合金トロリ線。 【請求項5】 Crを0.1〜0.5wt%、Zrを0.01〜0.2wt%、Siを0.01〜0.05wt%含有し、残部が銅および不可避不純物からなる、請求項4に記載の析出強化型銅合金トロリ線。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は析出強化型銅合金トロリ線およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】トロリ線は、電車の架線の最下部に設置され、パンタグラフと接触して電車に電力を送る電線である。近年の新幹線の高速化や、トロリ線の耐摩耗性向上による長寿命化の要求に対応するために、トロリ線はさらに高強度で導電率が高いことが要求されている。そのような要求を満たすトロリ線として、時効性銅合金(析出強化型の銅合金)からなるトロリ線(以下、「析出強化型銅合金トロリ線」または単に「トロリ線」という)が提案されている(特開平7−266939号公報参照)。 【0003】析出強化型銅合金トロリ線は、原料(銅母材と添加元素等)から溶融、鍛造、圧延、押出し等によって得た荒引線を、少なくとも(A)溶体化処理工程、(B)冷間加工工程、(C)時効熱処理工程の3工程を経て得られるトロリ線である(図1参照)。(A)工程は、銅母材中に添加した元素(Zr、Cr、Si等)を均一に固溶させるために、高温(800〜1050℃程度)で熱処理した後、水などへ投入して急冷する工程である。(B)工程は、室温程度にまで冷却した荒引線にダイス伸線やロール圧延等の加工を施す工程である。(C)工程は、(B)工程の後、再び熱処理により(A)工程で銅母材中に固溶させた添加元素を析出させて、引張り強さや導電率を向上させる工程である。 【0004】析出強化型銅合金トロリ線は、上記(C)工程において、(A)工程で固溶させた合金元素(添加元素)を析出させることによって強度と導電性とを向上させることを意図したトロリ線である。しかし、該トロリ線の製造における上記(B)工程には以下のような問題がある。 【0005】(B)冷間加工工程においては、トロリ線に要求される表面の平滑さ得るために、上記荒引線の表面から0.1〜0.5mm程度の表面層を切除する、所謂「皮剥ぎ」加工を行う必要がある。さらに、(B)工程においては、トロリ線の形状に仕上げるために、ダイス等を用いた異形伸線加工を行う必要がある。従来技術における問題は当該異形伸線加工における引抜抵抗が大きい点である。引抜抵抗が大きいと、加工に用いるダイスの摩耗が激しく、交換頻度が増すために作業効率が悪化する。また、最悪の場合には、荒引線が断線してしまうこともあるので、異形伸線加工における引抜抵抗を低減することが望まれる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記(B)工程において異形伸線加工の引抜抵抗が小さくなるような析出強化型銅合金トロリ線の製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、(B)冷間加工工程における様々な加工の順序を検討することにより、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工の順序で加工を施すことを特徴とする本発明を完成した。 【0008】すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。 (1)少なくとも、溶体化処理工程、冷間加工工程、時効熱処理工程を有しており、該冷間加工工程において、少なくとも、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工がこの順序で行われることを特徴とする、析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 (2)上記皮剥ぎ加工の後の円形伸線加工において、室温で固体の潤滑剤を用いることを特徴とする、(1)に記載の析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 (3)上記皮剥ぎ加工の前に、さらに円形伸線加工が行われることを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の析出強化型銅合金トロリ線の製造方法。 (4)(1)〜(3)のいずれかに記載の方法により製造される析出強化型銅合金トロリ線。 (5) Crを0.1〜0.5wt%、Zrを0.01〜0.2wt%、Siを0.01〜0.05wt%含有し、残部が銅および不可避不純物からなる、(4)に記載の析出強化型銅合金トロリ線。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明のトロリ線の製造方法を説明する(図2参照)。本発明は、(B)冷間加工工程において皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工をこの順序で行うことが特徴である。 【0010】本発明において、析出強化型銅合金トロリ線(または、単に「トロリ線」)とは、銅母材にCrやZrやSiなどの析出型添加元素を加え、少なくとも上述の(A)〜(C)の工程を経たトロリ線を意味する。当該トロリ線の製造方法は、上記(B)工程のみを経る、従来の純銅や固溶強化型銅合金(Sn入り銅合金等)に対し、(A)、(C)工程をさらに加えるといった工程の複雑さがあるが、より高強度で高い導電率を保持したトロリ線を得ることができる方法である。 【0011】本発明に係るトロリ線は、少なくともCuに、Cr、Zr、Siを含む銅合金からなるトロリ線である。強度と導電性のバランスの観点から、Crの含有量は好ましくは0.1〜0.5wt%、より好ましくは0.25〜0.45wt%であり、Zrの含有量は好ましくは0.01〜0.2wt%、より好ましくは0.05〜0.15wt%であり、Siの含有量は好ましくは0.01〜0.05wt%である。これら添加物以外の残部は全て銅であることが好ましいが、酸素、As、Pb、Sb等の不可避不純物を含有していてもよい。当該不可避不純物の合計の含有量は、導電率の低下を防ぐ観点から、好ましくは0.01wt%以下、より好ましくは0.005wt%以下である。但し、酸素原子の存在は引張り強さを著しく低下させるので、酸素原子は0.001wt%以下であることが好ましい。 【0012】本発明の製造方法に用いる原料としては、従来公知の銅合金の原料を任意に用いることができ、例えば、電気銅を原料として、上述の添加元素を加えることができる。 【0013】これらの原料を好ましくは非酸化性雰囲気で加熱して溶解・攪拌し、次いで、得られた銅合金溶湯を金型に鋳込んでビレットやケークを得る。次いで、公知の熱間圧延、例えば、300〜700℃で圧延ロール等を用いた圧延で荒引線を得る方法が挙げられる。熱間圧延の代わりに押出し機を用いた熱間押出しによって荒引線を得る方法もある。また、溶融・鋳造・熱間圧延を連続して行う連続鋳造圧延方式によって荒引線を製造してもよい。 【0014】その後、この荒引線を(A)工程、すなわち溶体化処理工程に供するが、当該工程においても従来公知の方法によればよい。例えば、得られた荒引線を800〜1050℃、好ましくは900〜1000℃に加熱することにより上記添加元素を固溶させた後、水槽などに投入するなどの方法で室温(JIS K 0050によれば5〜35℃)まで急冷する。 【0015】室温にまで温度が下がった荒引線に対して、(B)工程として、表面平滑のための皮剥ぎ加工、所望のトロリ線の形状に加工する異形伸線加工を行う必要がある。本発明の特徴は、(B)工程において、少なくとも、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工をこの順序で行うことである。また、後述する理由により、上記皮剥ぎ加工の前に、さらに円形伸線加工を施すことが好ましい。 【0016】ここで、皮剥ぎ加工とは、荒引線の表面から0.1〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.2mmの表面層を切除する加工を意味する。また、円形伸線加工とは、長手方向に垂直な切断面が略円形になるように伸線を行う加工を意味する。また、異形伸線加工とは、トロリ線特有の形状(例えば、円形に2本の溝1の付いた断面形状、図3参照)に仕上げるための伸線加工(同一断面において加工度が異なる箇所が存在する)を意味する。円形伸線加工および異形伸線加工時には、通常、潤滑剤を用いる。これらの加工によって所望の形状のトロリ線に加工することができる。トロリ線の断面形状の一例として、図3のような構造を示すが、特に限定はない。 【0017】従来技術においては、皮剥ぎ加工の後に異形伸線加工が行われていたため、平滑な表面を持つ荒引線とダイス等との接触面積が大きくなって引抜抵抗が大きくなっていた。一方、本発明の方法では、引抜抵抗が比較的小さい円形伸線加工により、荒引線を伸線加工に適した表面状態、具体的には伸線方向に沿った細かい凹凸を有する状態にすることができるので、その後の異形伸線加工における引抜抵抗を比較的小さくすることができる。 【0018】また、上記皮剥ぎ加工の前に、好ましくはさらに円形伸線加工を施す、すなわち、円形伸線加工、皮剥ぎ加工、円形伸線加工、異形伸線加工の順序で行うことが好ましい。これは、皮剥ぎ加工時のトロリ線(荒引線)の材料のロスを少なくし、製造コストを下げるためである。つまり、皮剥ぎ工程は、荒引線の表面から一定厚みを除去するので、当該荒引線の太さは細いほど、除去される量が少なくなるためである。そこで、(B)冷間加工工程の初期の荒引線が太い状態でなく、まず、円形伸線加工を施して、荒引き線をある程度細くした後(直径12〜25mm、好ましくは直径15〜20mm)で、皮剥ぎ工程を実施するのが好ましいのである。 【0019】さらに、本発明の方法は、伸線加工における潤滑剤の残留においても以下の理由により有利である。通常、円形伸線加工、異形伸線加工のいずれの伸線加工においても液体や固体の潤滑剤を用いる。したがって、伸線加工を行った後の荒引線には、多少なりとも使用した潤滑剤が残留する。この潤滑剤の残留は、次の伸線加工時の引抜抵抗を低減する役割がある。本発明においては、円形伸線加工により潤滑剤が荒引線の表面を覆った状態で異形伸線加工が行われることになるので、従来技術のような皮剥ぎ加工により潤滑剤が無くなった後で異形伸線加工を行うよりも、引抜抵抗は低減されることが期待される。 【0020】上記潤滑剤としては、当業界において公知の潤滑剤を任意に用いることができる。そのような潤滑剤の例には、水溶性の潤滑剤としてメタライト(日東化工社製)、メタルシン(日本油脂社製)、油性潤滑剤としてコーレックス(コーキ油業社製)、シンドール(日本ホートン社製)、室温(上述のとおり、5〜35℃)で固体(例えば粉末)の潤滑剤としてコーシン(共栄社化学社製)等が挙げられる。円形伸線加工の後の残留量が多くなる点から、潤滑剤としては、室温で固体の潤滑剤が好ましく、コーシンがより好ましい。 【0021】(B)工程に次いで、(C)時効熱処理工程が行われる。時効熱処理工程とは、後述するような熱処理により、合金成分を析出させ、強度および導電性の向上を図る処理である。(C)工程においては、350〜550℃、好ましくは400〜550℃、より好ましくは450〜500℃に加熱する。加熱温度が350℃より低い温度では合金成分が十分に析出せず、強度、導電率の向上が期待できず、逆に、550℃より高い温度では、強度の向上が望めないという懸念がある。 【0022】次いで、当該温度において、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間保持する。保持時間が0.5時間より短いと合金成分が十分に析出せず、強度、導電率の向上が期待できず、逆に、5時間より長いと製造時のエネルギー消費量が大であり製造コストが増加するという懸念がある。 【0023】上記保持時間経過後は、好ましくは30〜100℃/時間の冷却速度、より好ましくは30〜80℃/時間、の冷却速度で冷却することで、本発明に係るトロリ線を得ることができる。このような速度で冷却することにより、冷却条件がトロリ線全体にわたり均一になり、かつ、作業時間の短縮が図られる。 【0024】 【実施例】以下、各実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。 【0025】(実施例1)最終的な組成として、Crが0.3wt%、Zrが0.1wt%、Siが0.04wt%、残りがCuおよび不可避不純物(50ppm以下)からなるトロリ線を製造するために、以下の加工を施した。 【0026】まず、電気銅を還元性雰囲気下(Arガス)で1500℃に加熱して溶融させ、金属Cr、金属Zr、金属Siを加えた後に、ビレットの形に鋳造した。次いで、500℃で圧延ロールを用いて荒引線(断面の直径30mm)を得た。(A)工程として、該荒引線を950℃にまで加熱して1.5時間保持した後、水冷によって急冷した。 【0027】(B)工程として、まず油性潤滑剤としてコーレックス(コーキ油社製)を用い、伸線機により円形伸線加工を行い、断面の直径20mmの荒引線を得た。次いで、皮剥ぎダイスにより、表面から0.1mm程度の表面層を切除する皮剥ぎ加工を行った。その後、再び上記と同様の円形伸線加工により断面の直径を17mmとした。さらに、異形ダイス(トロリ線の断面形状にするためのダイス)を用いて、異形伸線加工を施し、断面が図3の如きトロリ線(時効熱処理前)を得た。 【0028】次に、(C)工程として、時効熱処理前のトロリ線を500℃にて2時間加熱した(時効熱処理)。加熱および、冷却の速度は50℃/時間であった。 【0029】(実施例2)上記(B)工程の皮剥ぎ加工後の(異形伸線加工前の)円形伸線加工において、油性潤滑剤の代わりに固体潤滑剤コーシン(共栄社化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によってトロリ線を得た。 【0030】(比較例1)上記(B)工程の皮剥ぎ加工後の円形伸線加工を省略して、皮剥ぎ加工の後、直ちに異形伸線加工を施したこと以外は、実施例1と同様の方法によってトロリ線を得た。 【0031】上記各例の(B)工程の加工を表1にまとめる。 【0032】 【表1】
【0033】(評価)異形伸線加工における状況を表2にまとめる。表2における、引抜抵抗、ダイス摩耗の大中小の意味は以下の通りである。 引抜抵抗:大、加工時の引抜抵抗が、使用した荒引き線の破断荷重の50%以上である、中、加工時の引抜抵抗が、上記荷重の20〜50%である、小、加工時の引抜抵抗が、上記荷重の20%以下である。ダイス摩耗:大、ダイスの交換までに処理できる荒引線量が10トン以下である、中、上記荒引線量が10〜100トンである、小、上記荒引線量が100トン以上である。 【0034】 【表2】
【0035】 【発明の効果】本発明に係る製造方法においては、(B)冷間加工工程において、引抜抵抗が比較的小さい円形伸線加工により荒引線を伸線加工に適した表面状態にした後で、異形伸線加工を行うので該異形伸線加工における引抜抵抗を比較的小さくすることができる。また、伸線加工における潤滑剤の残留という点においても、円形伸線加工で使用した潤滑剤が残ったまま、異形伸線加工を施すことになるので、従来技術のような皮剥ぎ加工により潤滑剤が無くなった後で異形伸線加工を行うよりも、引抜抵抗は低減される。それにより、加工に用いるダイスの摩耗を抑制することによって該ダイスの長寿命化が図られ、かつ、ダイスの交換頻度も下がるので、製造コストを引き下げることが期待される。また、上記異形伸線加工時に荒引線が断線してしまうことを抑制することも期待される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003263 【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社 【住所又は居所】兵庫県尼崎市東向島西之町8番地
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| 【出願日】 |
平成14年2月21日(2002.2.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080791 【弁理士】 【氏名又は名称】高島 一
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| 【公開番号】 |
特開2003−237426(P2003−237426A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月27日(2003.8.27) |
| 【出願番号】 |
特願2002−44785(P2002−44785) |
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