トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 装軌車輌における駆動方法及び装置
【発明者】 【氏名】宮本 徹也
【住所又は居所】神奈川県相模原市田名3000番地 三菱重工業株式会社汎用機・特車事業本部内

【氏名】桑原 康雄
【住所又は居所】神奈川県相模原市田名3000番地 三菱重工業株式会社汎用機・特車事業本部内

【要約】 【課題】エンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部などのシステムを大型にせず、簡単、安価な構成で高速運転時における高速旋回を可能にする装軌車輌における駆動方法及び装置の提供。

【解決手段】蓄電装置を回路から切り離すスイッチを設けると共に、履帯駆動用の永久磁石同期電動機に電力を供給するインバータに、旋回時に永久磁石同期電動機を回生運転させると共に慣性力で発生する回生電力を外部に供給する機能を持たせ、高速運転時における高速旋回時、内側の永久磁石同期電動機を回生運転させてブレーキとし、得られた電力を外側の永久磁石同期電動機に供給すると共に蓄電装置を破損しないよう回路から切り離すようにしたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンで発電機を駆動して得られた電力を二次電池等から成る蓄電装置に蓄え、前記発電機と蓄電装置から電力を供給して左右の履帯にそれぞれ対応して設けられたインバータを介して履帯駆動用永久磁石式同期電動機を駆動するようにした装軌車輌における駆動方法において、装軌車輌のステアリングが旋回を指示したとき、前記蓄電装置を回路から切り離すと共に旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに前記永久磁石同期電動機を回生運転させ、該永久磁石同期電動機より生じた回生電力を旋回時に外側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに給電するようにして駆動することを特徴とする装軌車輌における駆動方法。
【請求項2】 旋回時に内側永久磁石同期電動機の回生運転により主回路電圧を上昇させることにより、外側永久磁石同期電動機に対応するインバータに必要な電力を供給することを特徴とする請求項1に記載した装軌車輌における駆動方法。
【請求項3】 エンジンで駆動される発電機と、該発電機より得られた電力を蓄える二次電池等からなる蓄電装置と、左右の履帯にそれぞれ対応して設けられ、対応するインバータを介して前記発電機と蓄電装置から電力が供給される履帯駆動用永久磁石式同期電動機とからなる装軌車輌における駆動装置において、前記蓄電装置を回路から切り離すスイッチと、装軌車輌の旋回を指示するステアリングよりの旋回指示に基づき、旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに前記永久磁石同期電動機を回生運転させると共に該永久磁石同期電動機より生じた回生電力を旋回時に外側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに給電させ、かつ、前記スイッチにより蓄電装置を回路から切り離す制御をおこなう制御装置とを設け、旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に生じた回生電力を外側となる永久磁石同期電動機に給電するようにして旋回することを特徴とする装軌車輌における駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建設・運搬用装軌車輌、或いは、戦車、装甲車等の高速・重装軌車輌における駆動方法及び装置に関するもので、特に、エンジンで発電機を駆動し、得られた電力で電動機を駆動するようにした装軌車輌の高速運転時における高速旋回を可能とした駆動方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】走行時に大馬力を要する装軌車輌は、例えば本願出願人の出願になる特開平9−121597号公報などに開示されているように、エンジンで発電機を駆動して得られた電力で蓄電や左右独立した永久磁石同期電動機の駆動をおこない、装軌車輌の履帯を駆動して走行すると共に左右の電動機の駆動制御によって旋回を可能なようにしている。
【0003】これを図3に基づいて簡単に説明すると、装軌車輌のエンジン1に接続された発電機2による電力は、コンバータ3によって交流から直流に変換されて必要に応じて蓄電装置4に蓄電されると共に、左右の履帯10、11に対応して設けられた左走行用インバータ6、右走行用インバータ7で交流に変換されてさらに永久磁石同期電動機8、9に供給され、対応する左側履帯10、右側履帯11を駆動する。そして、例えば左側に旋回するときは、内側となる左側履帯10に対応する永久磁石同期電動機8の回転速度を小さくするか、または外側となる右側履帯に対応する永久磁石同期電動機9の回転速度を大きくすることにより、旋回するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こういった装軌式電気駆動車輌は通常大きな重量を有し、高速運転時における高速旋回は、直進しようとする大きな慣性力、及び履帯と地上との摩擦力とに抗する必要があるため、図4の旋回時における外側永久磁石同期電動機の出力特性に示したように、旋回時に外側となる履帯を駆動する電動機には直進または低速旋回時より大きな出力が必要となる。すなわちこの図4における40で示した線は直進、または低速旋回時に外側電動機に必要な出力で、41は高速旋回時における外側電動機に必要な出力であり、高速旋回時は前記したように直進しようとする慣性力、及び履帯と地上との摩擦力の双方が大きくなり、それだけ電動機に要求される出力が大きくなる。そのため、その出力に見合ったエンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部が必要となり、必然的にシステム全体が大型になって軽量化が難しくなると共に高価になる。
【0005】上述の事情に鑑み本発明は、エンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部などのシステムを大型にせず、簡単、安価な構成で高速運転時における高速旋回を可能にする装軌車輌における駆動方法及び装置を提供することが課題である。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明においては、請求項1に記載したように、エンジンで発電機を駆動して得られた電力を二次電池等から成る蓄電装置に蓄え、前記発電機と蓄電装置から電力を供給して左右の履帯にそれぞれ対応して設けられたインバータを介して履帯駆動用永久磁石式同期電動機を駆動するようにした装軌車輌における駆動方法において、装軌車輌のステアリングが旋回を指示したとき、前記蓄電装置を回路から切り離すと共に旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに前記永久磁石同期電動機を回生運転させ、該永久磁石同期電動機より生じた回生電力を旋回時に外側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに給電するようにして駆動することを特徴とするる。
【0007】そしてこの請求項1に記載した方法発明を実施するための装置発明である請求項3は、エンジンで駆動される発電機と、該発電機より得られた電力を蓄える二次電池等からなる蓄電装置と、左右の履帯にそれぞれ対応して設けられ、対応するインバータを介して前記発電機と蓄電装置から電力が供給される履帯駆動用永久磁石式同期電動機とからなる装軌車輌における駆動装置において、前記蓄電装置を回路から切り離すスイッチと、装軌車輌の旋回を指示するステアリングよりの旋回指示に基づき、旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに前記永久磁石同期電動機を回生運転させると共に該永久磁石同期電動機より生じた回生電力を旋回時に外側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータに給電させ、かつ、前記スイッチにより蓄電装置を回路から切り離す制御をおこなう制御装置とを設け、旋回時に内側となる永久磁石同期電動機に生じた回生電力を外側となる永久磁石同期電動機に給電するようにして旋回することを特徴とする。
【0008】このように高速旋回に際し、ステアリングが旋回指示をしたときに内側となる永久磁石同期電動機を対応するインバータにより回生運転させることにより、この永久磁石同期電動機の回転にブレーキが掛かると共に、この永久磁石同期電動機が大きな回生電力を発生する。そのためこの回生電力を、インバータを介して外側となる永久磁石同期電動機に給電することにより、この永久磁石同期電動機には高い電圧が供給されてそれに見合った出力を得ることができる。また、このようにして内側となる永久磁石同期電動機から発生された大きな電力は、そのまま蓄電装置に印加すると蓄電装置を壊す可能性があると共に蓄電装置が充電されて外側となる永久磁石同期電動機への給電がなされないことがあるが、蓄電装置をスイッチによって回路から切り離すことにより、蓄電装置が保護されると共に内側となる永久磁石同期電動機から発生された大きな電力は、そのまま外側の永久磁石同期電動機に印加することができる。従って、内側となる永久磁石同期電動機の回転にブレーキがかかることと相俟って高速な旋回が可能となり、エンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部を直進時の電力を供給するに足る大きさにすればよく、従来のように高速旋回に必要な出力に合わせて大容量化することなく、簡単、安価な構成で高速運転時における高速旋回を可能にすることができる。
【0009】そして請求項2に記載した発明は、旋回時に内側永久磁石同期電動機を回生運転させて主回路電圧を上昇させることにより、外側永久磁石同期電動機に対応するインバータに必要な電力を供給することを特徴とする。
【0010】一般にインバータにて電動機を回生運転すると、回生電力により直流主回路電圧が上昇する。本発明ではこの現象を利用し、上昇した主回路電圧を旋回時の外側永久磁石同期電動機に対応するインバータへの電圧源とすることで、旋回時外側永久磁石同期電動機駆動のための特別な電圧源を用意することなく旋回に必要な電力(主回路電圧)をインバータに供給することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0012】図1は本発明になる装軌車輌における駆動装置の実施の形態を示した概略ブロック図、図2は旋回時におけるタイムチャートである。図3中に示した従来例と同一の構成要素には同一番号を付した。1は装軌車輌のエンジン、2は発電機、3は発電機2によって発電された交流を直流に変換するコンバータ、4は蓄電装置、5は旋回時に必要に応じて蓄電装置4を主回路から切り離すためのスイッチ、6、7はコンバータ3から送られてくる直流を交流に変換するインバータで、6は左走行用、7は右走行用である。8、9は永久磁石同期電動機、10、11は装軌車輌の履帯、12は装軌車輌のステアリング、13は速度計、14は本発明の装軌車輌における駆動装置の制御装置である。
【0013】このように構成した本発明になる装軌車輌における駆動装置において、エンジン1によって駆動される発電機2によって発電された交流電力はコンバータ3で直流に変換される。そして、通常の直進走行時は閉じられているスイッチ5を通して必要に応じて蓄電されると共に、左走行用インバータ6、右走行用インバータ7によって交流に変換され、永久磁石同期電動機8、9が駆動されてこの永久磁石同期電動機8、9に接続されたスプロケットにより、左側履帯10、右側履帯11が駆動されて直進する。
【0014】すなわちこの直進時、図2に示したタイムチャートの(A)におけるステアリング指令の時間t1までのように、ステアリング12は左右の中間にあり、制御装置14は、図2(B)の電動機出力指令に示したように永久磁石同期電動機8、9に直進に必要な出力を出すよう指示する。そのため、図1におけるコンバータ3から左走行用インバータ6、右走行用インバータ7間の主回路電圧、すなわち図2(C)における主回路電圧は、発電機2、または蓄電装置4から給電される値となり、そして装軌車輌における左右の履帯10、11を駆動する永久磁石同期電動機8、9の回転速度は、図2(D)のように一定速度となる。
【0015】そして図2のタイムチャートにおける時間t1で、例えば図2(A)ステアリング指令のように左旋回のためにステアリング12が左に切られ、かつ、制御装置14が速度計13からの信号で高速直進中であることが検出すると、制御装置14はまず蓄電装置4を主回路から切り離すスイッチ5によって蓄電装置4を主回路から切り離し、次いで旋回時に内側となる左走行用インバータ6に指示して永久磁石同期電動機8を図2(B)の電動機出力指令に点線で示した旋回内側(回生)のように回生運転させる。
【0016】そのため装軌車輌が高速で走行している場合はその慣性力でこの永久磁石同期電動機8は回転させられて図2(C)の主回路電圧における時間t1のように回生電圧を生じる。主回路電圧が時間t2で高圧に達すると、制御装置14はさらに図2(B)の電動機出力指令に実線で示したように、旋回外側(力行)となる右走行用インバータ7によって永久磁石同期電動機9の出力が高くなるよう指示する。
【0017】そのためこの旋回時に外側となる永久磁石同期電動機9の回転速度は、図2(D)の旋回外側として示した実線のように一定時間後に高くなり、それだけ出力が増加すると共に、旋回内側になる永久磁石同期電動機8は、回生運転されているため旋回内側として示した破線のように徐々に低くなる。そのため装軌車輌は、内側となる左側の履帯の速度が遅くなると同時に外側となる右側の履帯に大きな力が加えられて加速されるから、左への旋回を開始する。
【0018】そしてこの状態は、ステアリング12が左旋回を指示している図2(A)における時間t3まで続き、この時間t3で左旋回を止めるようステアリング12が中央に戻されると制御装置14は、蓄電装置4のスイッチ5を閉じ、同時に永久磁石同期電動機8を回生運転させて回生電力を主回路に出力するよう動作していた左走行用インバータ6に永久磁石同期電動機8を力行運転させるよう指示し、図2(B)の電動機出力指令を直進時と同じ値とするよう指示する。そのため図2(C)に示した主回路電圧は最初の直進時の電圧に戻り、永久磁石同期電動機8は、図2(D)電動機回転速度に点線で示した旋回内側の時間t3のように回転速度が上昇し始め、また旋回外側として示した永久磁石同期電動機9の回転速度は低下し、両者が同速度となったときに再び直進が開始される。
【0019】以上が本発明になる装軌車輌の駆動方法及び装置であるが、以上の説明からわかるとおり、高速旋回に際して内側となる例えば永久磁石同期電動機8に対応するインバータ6により永久磁石同期電動機8を回生運転させてブレーキを掛け、かつ、直進しようとする装軌車輌の慣性力によって回転させられるこの永久磁石同期電動機8から生じる大きな回生電力を、インバータ7を介して外側となる永久磁石同期電動機9に供給することにより、この永久磁石同期電動機9には高い電圧が供給されてそれに見合った出力を得ることができる。また、このようにして内側となる永久磁石同期電動機8から発生された大きな電力は、そのまま蓄電装置4に印加すると蓄電装置4を壊す可能性があると共に蓄電装置4が充電されて外側となる永久磁石同期電動機9への給電がなされないことがあるが、蓄電装置4をスイッチ5によって主回路から切り離すことにより、蓄電装置4が保護されると共に内側となる永久磁石同期電動機8から発生された大きな電力は、そのまま外側の永久磁石同期電動機9に印加することができる。従って、内側となる永久磁石同期電動機8の回転にブレーキがかかることと相俟って高速な旋回が可能となり、エンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部を高速旋回に必要な出力に合わせて大容量化することなく、簡単、安価な構成で高速運転時における高速旋回を可能にすることができる。
【0020】
【発明の効果】以上記載の如く請求項1及び3に記載した本発明によれば、装軌車輌の高速旋回に際し、ステアリングが旋回指示をしたときに内側となる永久磁石同期電動機に対応するインバータにより内側永久磁石同期電動機を回生運転させることにより、この永久磁石同期電動機の回転にブレーキが掛かると共に、直進しようとする装軌車輌の慣性力によって永久磁石同期電動機が回転させられ、大きな回生電力を発生する。そのためこの回生電力を、インバータを介して外側となる永久磁石同期電動機に給電することにより、この永久磁石同期電動機には高い電圧が供給されてそれに見合った出力を得ることができる。また、このようにして内側となる永久磁石同期電動機から発生された大きな電力は、そのまま蓄電装置に印加すると蓄電装置を壊す可能性があると共に蓄電装置が充電されて外側となる永久磁石同期電動機への給電がなされないことがあるが、蓄電装置をスイッチによって回路から切り離すことにより、蓄電装置が保護されると共に内側となる永久磁石同期電動機から発生された大きな電力は、そのまま外側の永久磁石同期電動機に印加することができる。従って、内側となる永久磁石同期電動機の回転にブレーキがかかることと相俟って高速な旋回が可能となり、エンジン、発電機、及び蓄電装置やコンバータなどの発電装置部を直進時の電力を供給するに足る大きさにすればよく、従来のように高速旋回に必要な出力に合わせて大容量化することなく、簡単、安価な構成で高速運転時における高速旋回を可能にすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南二丁目16番5号
【出願日】 平成14年5月16日(2002.5.16)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久 (外1名)
【公開番号】 特開2003−333704(P2003−333704A)
【公開日】 平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願番号】 特願2002−141846(P2002−141846)