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【発明の名称】 電気車の制御装置および制御方法、並びにそれを用いた電気車
【発明者】 【氏名】▲高▼橋 信好
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会社日立カーエンジニアリング内

【氏名】山田 博之
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会社日立カーエンジニアリング内

【氏名】神長 実
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株式会社日立製作所自動車機器グループ内

【氏名】豊田 英雄
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株式会社日立製作所自動車機器グループ内

【要約】 【課題】チョッパ制御される電気車の制御装置に係り、電動機の電流・電圧等から駆動輪のスリップ発生を検出するシステムにおける、制御プログラムの設定負担を低減する。

【解決手段】電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定し、その電流制限値を超えない範囲で、チョッパ通流率を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】チョッパ制御される電動機を有する電気車の制御装置であって、前記電気車の加速時において、前記電動機に流れた電流のピーク値を超えない範囲で、前記チョッパの通流率を制御する電気車の制御装置。
【請求項2】チョッパ制御される電動機を有する電気車の制御方法であって、前記電気車の加速時における前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定し、前記設定した電流制限値を超えない範囲で前記チョッパの通流率を制御する電気車の制御方法。
【請求項3】チョッパ制御される電動機を有する電気車の制御装置であって、前記電気車の加速時における前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定し、前記設定した電流制限値を超えない範囲で前記チョッパの通流率を制御する電気車の制御装置。
【請求項4】チョッパ制御される電動機を有する電気車の制御装置であって、前記電気車の加速時において、前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定し、前記電流制限値が設定されてから所定の時間は前記電動機の電流が前記電流制限値を超えないように前記チョッパの通流率をフィードバック制御する電気車の制御装置。
【請求項5】チョッパ制御される電動機を有する電気車の制御装置であって、前記電気車の加速時において、前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて第1の電流値と第2の電流値を設定し、一旦は前記第1の電流値とした後に所定の時間で徐々に前記第2の電流値へ変化する電流制限値を設定すると共に、前記電動機の電流が前記電流制限値を超えないように前記チョッパの通流率をフィードバック制御する電気車の制御装置。
【請求項6】請求項5において、前記電流制限値によるフィードバック制御中に前記チョッパの通流率が所定の値に達した時点で、前記電流制限値が解除される電気車の制御装置。
【請求項7】チョッパ制御される電動機と、前記電動機の電流を検出する電流検出器と、運転者の加速指示を検出するアクセルと、少なくとも前記アクセルの操作信号および前記電流検出器の信号を入力として前記電動機を制御する制御装置とを有する電気車であって、前記制御装置は、前記アクセルからの加速指示を検出した場合において、前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定すると共に、前記電流制限値を超えない範囲で前記チョッパの通流率を制御するものである電気車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チョッパ制御される電気車の制御装置に係り、特に、駆動輪のスリップ低減に好適な電気車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の装置として、駆動輪と従動輪の回転差や、車両速度変化率から駆動輪のスリップ発生を検出するものがある。この技術に関する記載例としては、特開平3−60302号公報や、特開平8−116606号公報がある。
【0003】しかしこれらの装置においては、駆動輪または従動輪の回転数を検出するセンサ等を設ける必要があるため、センサ及び、その配線と入力回路の増設によるコストアップが問題となる。そこで電動機の電流と電動機の電圧との比率や、電動機の電流と電動機の電圧との比率の変化量等、制御装置内部で検出できるデータを基に、駆動輪のスリップ発生を検出する。これにより、回転数を検出するためのセンサ等を車両に増設せずに済む。この技術に関する記載例としては、特開平11−355916号公報がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】スリップ発生の検出に際しては、路面状況,車両重量,車両の違いを考慮することにより、より効果的に運転操作性を向上することが可能である。しかし、上記従来例でこれらの要因に対応するのは、以下の理由により困難であった。
【0005】すなわち、電動機の電流と電動機の電圧との比率等から駆動輪のスリップ発生を検出するためには、予め想定した路面状況や車両重量等に応じて、適切な判定レベルを設定しておく必要があり、また、想定する条件が多岐にわたる場合は、判定レベルの設定が困難であり、然も、車両が変わる度に再設定する必要がある等実験や計算に多大な時間と労力を要していた。
【0006】本発明の目的は、上記判定レベル設定に要する時間や労力を低減し、効果的に駆動輪のスリップ低減が可能な電気車制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、チョッパ制御される電動機の加速時において、前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて電流制限値を設定し、その電流制限値を超えない範囲で、チョッパ通流率を制御することにより達成される。
【0008】前記電流制限値とは、好ましくは前記電動機に流れた電流のピーク値に基づいて第1の電流値と第2の電流値を設定し、一旦は前記第1の電流値とした後に所定の時間で徐々に前記第2の電流値へ変化する値である。
【0009】また通流率の制御は、好ましくは前記電流制限値が設定されてから加速が完了するまでの期間、前記チョッパの通流率をフィードバック制御することである。
【0010】ここで加速の完了は、好ましくは前記電流制限値によるフィードバック制御中に前記チョッパの通流率が所定の値に達したことで判定する。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態をなす回路構成図である。図1において、1はバッテリ、2,3はヒューズ、4はキースイッチ、5は定電圧回路、6はROM、7はマイコン(マイクロコンピュータ)、8はフライホイールダイオード、9はプラギングダイオード、10は電流センサ、11は駆動用電動機、11aは電機子巻線、11bは界磁巻線、12は前進コンタクタ、12aは前進コンタクタコイル、13は後進コンタクタ、13aは後進コンタクタコイル、14はチョッパ用トランジスタ、15はアクセル、16は前後進切換スイッチ、17,18,19,20は入力回路、21,22,23は出力回路、24は前進コンタクタ駆動トランジスタ、25は後進コンタクタ駆動トランジスタである。
【0012】次に、本実施形態の動作について説明する。
【0013】まず、キースイッチ4をONすると、定電圧回路5が動作し、マイコン7に電源が供給される。マイコン7は、予めROM6に記憶されているプログラムに従って処理を開始する。
【0014】以下、マイコン7による処理を図2に示すフローチャートにより説明する。
【0015】マイコン7が処理を開始すると、まず最初に初期設定処理101が実行され、マイコン7の動作に必要なデータの設定、後述の各処理で用いる変数のクリア等が行われる。
【0016】次に、入力処理102において、バッテリ1からヒューズ3,キースイッチ4,入力回路17を介して検出されるバッテリ電圧Vbと、電流センサ10から入力回路18を介して検出される電動機電流Imと、アクセル15から入力回路19を介して検出されるアクセル信号Accと、前後進切換スイッチ16から入力回路20を介して検出される前後進信号FRSWを入力する。
【0017】続いて、スリップ制御処理103,走行制御処理104が順次実行される。
【0018】最後に、キースイッチ検出処理105により、バッテリ電圧Vbからキースイッチ4のON,OFFをバッテリ電圧Vbより判定し、キースイッチ4がONの間は、上記入力処理102以降を繰り返し実行し、キースイッチ4がOFFになると処理を終了する。
【0019】スリップ制御処理103における動作を図3に示すフローチャートにより説明する。
【0020】まず、処理201にて、駆動用電動機11に流れたピーク電流値Im0が検出されたか否かを判定する。未検出の場合はピーク電流検出処理202が実行され、検出済みの場合は電流制限値設定処理203が実行される。
【0021】次に、ピーク電流検出処理202における動作を図4に示すフローチャートにより説明する。
【0022】まず、処理301にて、チョッパ用トランジスタ14の通流率Dchと、後述の処理307で記憶された前回の通流率Doldとの比較を行い、DchがDoldより大きい場合に駆動用電動機11が加速中であると判定する。加速中と判定した場合は処理302により、電動機電流Imと、後述の処理308で記憶された前回の電動機電流Ioldとの比較を行い、ImがIold以下の場合は電動機電流がピークに達したと判定し、処理303,304,305,309を実行する。
【0023】処理303では、電動機電流Imをピーク電流値Im0として設定する。
【0024】処理304では、関数f1によりピーク電流値Im0から係数K1を求め、Im0とK1から第1の電流値Im1を設定する。Im1は後述の処理403で用いる。関数f1の特性を図6に示す。
【0025】処理305では、関数f2によりピーク電流値Im0から係数K2を求め、Im0とK2から第2の電流値Im2を設定する。Im2は後述の処理405,406で用いる。関数f2の特性を図7に示す。
【0026】処理306では、関数f3によりピーク電流値Im0から電流勾配ΔIを設定する。ΔIは後述の処理404で用いる。関数f3の特性を図8に示す。
【0027】上記各処理により、加速中に検出されたピーク電流値Im0から、電流制限値Isを設定するためのIm1,Im2,ΔIが設定される。これらの設定処理は、スリップ発生の有無に関わらず、上記の条件が成立する度に実行される。
【0028】また、上記処理301,302により、加速中でない、または電流がピークに達していないと判定した場合は、処理307,308,309,310を実行する。
【0029】処理307では、次回の処理301のために、通流率DchをDoldとして記憶しておく。
【0030】処理308では、次回の処理302のために、電動機電流ImをIoldとして記憶しておく。
【0031】処理309では、電流制限値設定処理203で使用するタイマーTMRをクリアしておく。
【0032】処理310では、チョッパ用トランジスタ14の許容電流から決まる最大制御電流Imaxを電流制限値Isとして設定する。
【0033】次に、電流制限値設定処理203における動作を図5に示すフローチャートにより説明する。
【0034】まず、処理401にて、タイマーTMR2が時間100msと比較される。TMRが100msより小さい場合、処理402にてTMRに1が加算され、処理403により、前記処理304で設定された第1の電流値Im1が電流制限値Isとして設定される。TMRが100msになると、処理404が実行され、前記処理306で設定された電流勾配ΔIを電流制限値Isに加算した値がIsに設定される。Isは、処理405,406により前記処理305で設定された第2の電流値Im2以下に制限される。
【0035】通流率Dchが後述の処理506で設定される通流率指令Dsに達し、加速が完了すると、処理407の判定により処理408が実行され、Im0がクリアされる。これにより、再度Im0が設定されるまでの間は、処理201の判定により、電流制限値設定処理203は実行されない。
【0036】上記各処理により、電流制限値Isは、ピーク電流値Im0が検出された時点から100ms間は第1の電流値Im1に保持され、その後は、電流勾配ΔIにより徐々に増加し、加速が完了するまでは第2の電流値Im2に設定される動作となる。
【0037】ここで、タイマーTMRによる100msという時間は、特に限定するものではなく、Is=Im1の設定によりスリップが終了するまでの大凡の時間を設定すれば良い。実際には、スリップが終了する前にΔI,Im2による加速制御を開始した方がフィーリングが良くなる場合もあるため、実験等により決定することが望ましい。
【0038】尚、上記の100msは、後述の図13における時間Tに相当する。
【0039】図8において、電流勾配ΔIは、毎秒当たりの増加量が最大制御電流Imaxと等しい値を100%としている。つまり、10〜30%は、約3.3〜10sでImaxに達する程度の緩やかな電流勾配である。
【0040】尚、ΔIとIm2による電流制限値Isの増加は、本来の目的であるスリップ低減に直接は関係しないが、スリップが止まった後の加速フィーリングを良くするために、極めて有効な制御方法である。
【0041】次に、走行制御処理104における動作を図9に示すフローチャートにより説明する。
【0042】まず、処理501により、前後進信号FRSWの判定が行われる。FRSWが前進の場合は、処理504により前進コンタクタ駆動ポートFCへON信号を出力し、後進コンタクタ駆動ポートRCへOFF信号を出力する。FCへ出力されたON信号により、出力回路22を介して前進コンタクタ駆動トランジスタ24がONし、前進コンタクタコイル12aが通電され、前進コンタクタ12がONする。FRSWが後進の場合は、処理503によりFCへOFF信号を出力し、RCへON信号を出力する。RCへ出力されたON信号により、出力回路23を介して後進コンタクタ駆動トランジスタ25がONし、後進コンタクタコイル13aが通電され、後進コンタクタ13がONする。FRSWが中立の場合は、処理502によりFC、及びRCへOFF信号を出力し、前後進コンタクタ12,13をOFFする。更に、処理505により、電流制限値Isと通流率指令Dsを0に設定すると共に、ピーク電流値Im0をクリアする。
【0043】前後進コンタクタ12,13を切り換えることにより、駆動用電動機11の界磁巻線11bに流れる電流の向きを変え、回転方向(車両の前後進)を切り換える。
【0044】FRSWが前進、または後進の場合は、処理506が実行され、関数f4によりアクセル信号Accから通流率指令Dsが設定される。Dsは、アクセル操作に応じたチョッパ制御を行うための指令値である。関数f4の特性を図10に示す。
【0045】次に、フィードバック処理507において、図11のフローチャートに示すように、電動機電流Imが電流制限値Isより小さい場合は、通流率Dchが通流率指令Dsに達するまでDchを増加させる。ImがIsに達した場合は、DchがDsに達していなくても、Dchの増加を止め、ImがIsを超えないようにDchの増減を行う。
【0046】次に、チョッパ信号出力処理509において、通流率Dchに応じたON,OFF信号をチョッパ信号出力ポートCHへ出力する。出力されたチョッパ信号により、出力回路21を介してチョッパ用トランジスタ14が駆動される。これにより、バッテリ1の正極,ヒューズ2,電流センサ10,駆動用電動機11,チョッパ用トランジスタ14,バッテリ1の負極の経路で電流が流れ、駆動用電動機11が回転することにより車両が走行する。
【0047】車両を駆動するための電動機をチョッパ制御する手段と、該電動機の電流を検出する手段とを有する一般的な電気車制御装置において、加速時における電動機の電流Imと、チョッパ制御手段の通流率Dchは、図12に示すように変化する。
【0048】図12において、スリップが発生しない通常の加速時は、Imが制御装置の最大制御電流Imaxに達するまでは、予め設定された勾配でDchが増加する。そして、ImがImaxに制限されている間は、電動機の回転数(車速)増加に伴って徐々にDchが増加し、やがて最大通流率Dmaxに達する。その後は、電動機の回転数増加に伴いImは減少する。
【0049】これに対し、加速時に点Aにおいてスリップが発生した場合、電動機の負荷が小さくなるため、Imの上昇は止まり(Imaxに到達せず)、Dchは予め設定された勾配でDmaxまで増加する。電動機の回転数は既に増加しているため、Imは急激に減少し電動機の回転数とトルク(Imに比例)がつり合う点Bまで低下する。その後、実際の車速は徐々に増加し、電動機の回転数と車速が一致する点Cまでスリップが継続され、スリップが終了した時点からImは減少する。この点Aと点BにおけるIm(トルク)は、駆動輪と路面の間に生じる摩擦力に相関があり、スリップしやすい路面ほど、点Aと点BのImは小さくなる。
【0050】本実施形態において、電動機に流れた電流のピーク値Im0は上記の点AにおけるIm、第1の電流値Im1は点BにおけるImより少し小さい値、第2の電流値Im2は点AにおけるImより少し小さい値に相当する。つまり、Im1は、その路面において発生したスリップが減少する電流値(トルク)、Im2は、その路面における加速時にスリップが発生しない電流値(トルク)である。
【0051】図13に示すように、Im0を検出した時点(点A′)、すなわちスリップ発生直後のまだ電動機の回転数が大きく上昇する前に、Im1まで電流制限値を低下させることにより、発生したスリップを瞬時(所要時間T)に止めることができ、その後はIm2を電流制限値に設定し、Imが電流制限値を超えない範囲でDchを制御することにより、スリップを再発させずに加速制御を行うことができる。
【0052】スリップが発生しない通常の加速時においては、図12に示す点Dの時点でIm0を検出するが、Im0=Imaxの場合は、Im1=Im2=Imaxとした電流制限値を設定してあるため、特別な応答を行うことはない。
【0053】従って、スリップ発生時と通常の加速時とで、同じ動作による制御が可能であるため、スリップ発生の検出が不要になり、上記判定レベル設定に要する時間や労力を削減できる。
【0054】路面状況や車両重量が変化した場合は、それに応じて上記点Aにおける電流値が変化するため、Im1,Im2による電流制限値は、自動的に適切な値に設定される。また、搭載される車両や組み合わせる電動機が異なる場合においても、Im0に対するIm1,Im2の割合K1,K2を必要に応じて変更するだけで、容易に対応が可能である。
【0055】更に、上記Im,Dch等のデータは、何れも制御装置内部で検出できるものであり、回転数を検出するためのセンサ等を車両に増設せずにスリップ低減が可能となるため、コストアップの問題もない。
【0056】本実施形態によれば、スリップ発生の検出が不要になるため、上記判定レベル設定に要する時間や労力を削減できると共に、通流率Dch,電動機電流Im等の何れも制御装置内部で検出できるデータを基に、路面状況,車両重量、及び車両の違いに応じた駆動輪のスリップ低減が可能となり、ひいては、駆動輪の磨耗低減、並びに運転操作性向上を実現できる。
【0057】車両を駆動するための電動機をチョッパ制御する手段と、該電動機の電流を検出する手段とを有する一般的な電気車制御装置において、加速時における電動機の電流Imと、チョッパ制御手段の通流率Dchは、図12に示すように変化する。
【0058】図12において、スリップが発生しない通常の加速時は、Imが制御装置の最大制御電流Imaxに達するまでは、予め設定された勾配でDchが増加する。そして、ImがImaxに制限されている間は、電動機の回転数(車速)増加に伴って徐々にDchが増加し、やがて最大通流率Dmaxに達する。その後は、電動機の回転数増加に伴いImは減少する。
【0059】これに対し、加速時に点Aにおいてスリップが発生した場合、電動機の負荷が小さくなるため、Imの上昇は止まり(Imaxに到達せず)、Dchは予め設定された勾配でDmaxまで増加する。電動機の回転数は既に増加しているため、Imは急激に減少し電動機の回転数とトルク(Imに比例)がつり合う点Bまで低下する。その後、実際の車速は徐々に増加し、電動機の回転数と車速が一致する点Cまでスリップが継続され、スリップが終了した時点からImは減少する。この点Aと点BにおけるIm(トルク)は、駆動輪と路面の間に生じる摩擦力に相関があり、スリップしやすい路面ほど、点Aと点BのImは小さくなる。
【0060】本発明において、電動機に流れた電流のピーク値(Im0とする)は上記の点AにおけるIm、第1の電流値(Im1とする)は点BにおけるImより少し小さい値、第2の電流値(Im2とする)は点AにおけるImより少し小さい値に相当する。つまり、Im1は、その路面において発生したスリップが減少する電流値(トルク)、Im2は、その路面における加速時にスリップが発生しない電流値(トルク)である。
【0061】図13に示すように、Im0を検出した時点、すなわちスリップ発生直後のまだ電動機の回転数が大きく上昇する前に、Im1まで電流制限値を低下させることにより、発生したスリップを瞬時に止めることができ、その後はIm2を電流制限値に設定し、Imが電流制限値を超えない範囲でDchを制御することにより、スリップを再発させずに加速制御を行うことができる。
【0062】スリップが発生しない通常の加速時においては、図12に示す点Dの時点でIm0を検出するが、Im0=Imaxの場合は、Im1=Im2=Imaxとした電流制限値を設定すれば、特別な応答を行うことはない。
【0063】従って、スリップ発生時と通常の加速時とで、同じ動作による制御が可能であるため、スリップ発生の検出が不要になり、上記判定レベル設定に要する時間や労力を削減できる。
【0064】路面状況や車両重量が変化した場合は、それに応じて上記点Aにおける電流値が変化するため、Im1,Im2による電流制限値は、自動的に適切な値に設定される。また、搭載される車両や組み合わせる電動機が異なる場合においても、Im0に対するIm1,Im2の割合を必要に応じて変更するだけで、容易に対応が可能である。
【0065】更に、上記Imは制御装置内部で検出できるものであり、回転数を検出するためのセンサ等を車両に増設せずにスリップ低減が可能となるため、コストアップの問題もない。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、スリップ発生の検出に当たり、判定レベル設定に要する時間や労力を削減でき、かつ効果的に駆動輪のスリップ低減が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【識別番号】000232999
【氏名又は名称】株式会社日立カーエンジニアリング
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2477番地
【出願日】 平成14年4月9日(2002.4.9)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2003−304603(P2003−304603A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−105917(P2002−105917)