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【発明の名称】 車両の制動力の制御装置
【発明者】 【氏名】河合 高志
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】辻井 啓
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】呉竹 健
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】杉浦 雅宣
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】花田 秀人
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】車両の速度変化によるショックを抑制する際に、機関に供給する燃料の量が増加することを抑制できる車両の制動力の制御装置を提供する。

【解決手段】車両の惰力走行中に機関に対する燃料の供給を停止し、かつ、機関と車輪との間に設けられているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以上に制御することにより、機関の回転抵抗により車両に制動力を作用させるとともに、所定の条件が成立した場合に、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる機能と、車輪に動力伝達可能に連結されている発電機の機能により、車両に制動力を作用させる機能とを備えた車両制動力の制御装置において、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる場合に、発電機の機能により発生する制動力を増加させる制動力制御手段(ステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS6、ステップS7)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の惰力走行中に機関に対する燃料の供給を停止し、かつ、前記機関と車輪との間に設けられているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以上に制御することにより、前記機関の回転抵抗により前記車両に制動力を作用させるとともに、所定の条件が成立した場合に、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる機能と、前記車輪に動力伝達可能に連結されている発電機の機能により、前記車両に制動力を作用させる機能とを備えた車両の制動力の制御装置において、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる場合に、前記発電機の機能により発生する制動力を増加させる制動力制御手段を備えていることを特徴とする車両の制動力の制御装置。
【請求項2】 前記制動力制御手段は、時間の経過と共に前記発電機により発生する制動力を低下させる機能を、更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両の制動力の制御装置。
【請求項3】 前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させ、かつ、前記発電機による制動力を増加させる場合の総合制動力を推定する推定手段と、この推定手段の推定結果に基づいて、前記機関に燃料を供給する時期を判断する燃料供給手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制動力の制御装置。
【請求項4】 前記推定手段により推定された総合制動力と、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前の総合制動力とを比較する比較手段を更に備え、前記トルク容量制御装置のトルク容量が低下される前に、前記燃料供給手段は、前記推定手段により推定された総合制動力と、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前の総合制動力との比較結果に基づいて、前記機関に燃料を供給する機能を、更に備えていることを特徴とする請求項3に記載の車両の制動力の制御装置。
【請求項5】 前記発電機の機能により発生する制動力には、回生制動力が含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の制動力の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の惰力走行中に発生させる制動力を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、車両の惰力走行時、具体的には減速時に、所定のエンジン回転数以上の領域で燃料の供給を停止して、燃費の向上を図る技術が知られており、その一例が特開2000−255284号公報に記載されている。この公報に記載されている車両の制御装置は、エンジンの動力が、前後進切り換え機構および無段変速機を経由してデファレンシャルに伝達されるように、動力伝達経路が構成されている。また、エンジンと前後進切り換え機構との間には、トルクコンバータとロックアップクラッチとが並列に配置されている。
【0003】そして、車両の減速走行時には、ロックアップクラッチが接続され、かつ、所定の車両走行状態までエンジンに対する燃料の遮断がおこなわれる。ついで、所定の車両走行状態に達した場合は、ロックアップクラッチが切断され、かつ、燃料の供給が開始される。ここで、燃料の供給開始時において、エンジン出力が、アイドリング維持出力よりも所定量増加するように、燃料供給量が制御される。このような制御をおこなうことにより、ロックアップクラッチの切断前後におけるトルク段差を軽減し、かつ、車両の速度変化によるショックを低減できるものとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報に記載されている車両の制御装置においては、ロックアップクラッチの切断時に供給する燃料が、エンジンのアイドリング時に供給される燃料よりも多くなるため、燃費が悪化するという問題があった。
【0005】この発明は上記課題を解決するためのもので、車両の速度変化によるショックを抑制する際に、機関に供給する燃料の量が増加することを抑制できる車両の制動力の制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両の惰力走行中に機関に対する燃料の供給を停止し、かつ、前記機関と車輪との間に設けられているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以上に制御することにより、前記機関の回転抵抗により前記車両に制動力を作用させるとともに、所定の条件が成立した場合に、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる機能と、前記車輪に動力伝達可能に連結されている発電機の機能により、前記車両に制動力を作用させる機能とを備えた車両の制動力の制御装置において、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる場合に、前記発電機の機能により発生する制動力を増加させる制動力制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】この発明において、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる場合に、発電機の機能により制動力を増加させる例としては、トルク容量を低下させる前に、発電機の機能により発生する制動力を増加させること、トルク容量を低下させている途中で、発電機の機能により発生する制動力を増加させること、トルク容量の低下を開始させると同時に、発電機の機能により発生する制動力を増加させること、などが挙げられる。また、発電機の機能により制動力を発生させる原理としては、回生制動、発電制動、逆相制動、渦電流制動などが挙げられる。
【0008】請求項1の発明によれば、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させると、機関の回転抵抗に対応する制動力が低下するが、発電機の機能により発生する制動力が増加される。したがって、機関の機能により発生する制動力と、発電機の機能により発生する制動力との和である総合制動力の低下が、可及的に抑制される。
【0009】請求項2の発明は請求項1の構成に加えて、前記制動力制御手段は、時間の経過と共に前記発電機により発生する制動力を低下させる機能を、更に備えていることを特徴とするものである。
【0010】請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、時間の経過と共に発電機により発生する制動力が低下される。
【0011】請求項3の発明は、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させ、かつ、前記発電機による制動力を増加させる場合の総合制動力を推定する推定手段と、この推定手段の推定結果に基づいて、前記機関に燃料を供給する時期を判断する燃料供給手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の作用が生じる他に、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前後の総合制動力に大きな変化が生じることが抑制される。
【0013】請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記推定手段により推定された総合制動力と、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前の総合制動力とを比較する比較手段を更に備え、前記トルク容量制御装置のトルク容量が低下される前に、前記燃料供給手段は、前記推定手段により推定された総合制動力と、前記トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前の総合制動力との比較結果に基づいて、前記機関に燃料を供給する機能を、更に備えていることを特徴とするものである。
【0014】請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の作用が生じる他に、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前後の総合制動力に大きな変化が生じることが、一層確実に抑制される。
【0015】請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記発電機の機能により発生する制動力には、回生制動力が含まれていることを特徴とするものである。
【0016】請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明の作用と同様の作用が生じる他に、発電機の回生制動時に得られた電力が蓄電装置に蓄電される。
【0017】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の実施例を説明する。図2は、この発明を適用した車両1のパワートレーン、電気系統、制御系統の構成を示す概念図である。まず、車両1のパワートレーンの構成を説明する。車両1は、駆動力源としてエンジン2およびモータ・ジェネレータ3を有している。エンジン2は、燃料の燃焼により動力を出力する動力装置である。このエンジン2としては、例えば、内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。エンジン2の出力側にはトランスミッション4が設けられており、トランスミッション4の回転部材5と車輪6とが動力伝達可能に連結されている。また、前記モータ・ジェネレータ3と回転部材5とが動力伝達可能に連結されている。モータ・ジェネレータ3は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有している。
【0018】さらに、トランスミッション4とエンジン2との間の動力伝達経路には、流体伝動装置7とロックアップクラッチ(L/U)8とが並列に配置されている。また、ロックアップクラッチ8のトルク容量、言い換えれば係合圧を制御するアクチュエータとして、例えば、油圧制御装置(図示せず)が設けられている。
【0019】つぎに、車両1の電気系統について説明する。エンジン2のクランクシャフト(図示せず)には、伝動装置9を介してオルタネータ10が接続されている。また、前記モータ・ジェネレータ3はキャパシタ11に接続されており、モータ・ジェネレータ3により発電された電力を、キャパシタ11に充電することができる。
【0020】さらに、車両1の全体を制御する制御系統について説明する。電子制御装置(ECU)12が設けられており、電子制御装置12により、加速要求および制動要求、車速、キャパシタ11の電圧などが判断される。また、電子制御装置12により、エンジン1に供給する燃料の噴射量および噴射時期、ロックアップクラッチ8のトルク容量などが制御される。このため、電子制御装置12には、ロックアップクラッチ8のトルク容量、具体的には、係合、解放、スリップを制御するマップが記憶されている。このマップは、車両の走行状態、例えば加速要求および車速などのパラメータに基づいて、ロックアップクラッチ8を制御するものである。
【0021】つぎに、車両1の制御について説明する。まず、エンジン2に燃料が供給され、かつ、燃料の燃焼によりトルクが出力された場合は、そのエンジントルクがトランスミッション4を経由して車輪6に伝達されて、駆動力が発生する。また、キャパシタ11の電力がモータ・ジェネレータ3に供給されて、モータ・ジェネレータ3が電動機として駆動された場合は、モータ・ジェネレータ3のトルクが車輪6に伝達される。このように、車両1は、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3のうちの少なくとも一方を駆動力源とすることができる、いわゆるハイブリッド車である。なお、エンジントルクの一部をモータ・ジェネレータ3に供給して、そのトルクによりモータ・ジェネレータ3を発電機として機能させることもできる。
【0022】さらに、車両1の惰力走行時には、車輪6の運動エネルギがトランスミッション4を経由してエンジン1に伝達され、エンジン1の回転抵抗による制動力、いわゆるエンジンブレーキ力が、車両1に対して作用する。また、車両1の惰力走行時において、エンジン回転数が所定回転数以上である場合は、エンジン2に対する燃料の供給を停止する制御、いわゆるフューエルカット制御をおこなうことができる。なお、フューエルカット制御の実行中に、エンジン回転数が所定回転数未満になった場合は、エンジン2に対する燃料の供給が開始される。
【0023】また、車両1の惰力走行時には、車輪6の運動エネルギをモータ・ジェネレータ3に伝達してモータ・ジェネレータ3を発電機として機能させることができる。このように、車輪6の運動エネルギによりモータ・ジェネレータ3を発電機として機能させた場合は、発電能力に対応する制動力、すなわち回生制動力が車両1に対して作用する。さらに、ロックアップクラッチ8が係合されている場合は、エンジン2とトランスミッション4との間で摩擦力により動力伝達がおこなわれ、ロックアップクラッチ8が解放されている場合は、流体の運動エネルギにより動力伝達がおこなわれる。
【0024】つぎに、車両1の惰力走行時におこなわれる制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。この制御例は、ロックアップクラッチ8の制御と、モータ・ジェネレータ3の制御と、エンジン2に対する燃料の供給制御とを協調させるものである。まず、ステップS1では、車両1が惰力走行中であり、かつ、ロックアップクラッチ8が係合され、かつ、フューエルカット制御が実行されている。このステップS1では、加速要求がなくなった場合、例えばアクセル開度が全閉となった場合に、車両1が惰力走行していると判断される。また、惰力走行時の車速は道路勾配により影響されるものであり、減速、定速、加速が挙げられるが、以下の説明では、減速を例として説明する。
【0025】前記ステップS1についで、現在の車速が、ロックアップクラッチ8が解放される車速よりも若干高い所定車速であるか否かが判断される(ステップS2)。ステップS2で否定的に判断された場合は、ステップS2の判断が繰り返される。このステップS2で肯定的に判断された場合は、キャパシタ11の電圧および車速に基づいて、モータ・ジェネレータ3を発電機として機能させる場合の回生制動力、言い換えれば、回生制動トルクが算出される(ステップS4)。
【0026】すなわち、モータ・ジェネレータ3の発電量は、キャパシタ11の充電状態に依存するため、キャパシタ11の電圧を、回生制動トルクを算出するパラメータの1つとして用いている。また、モータ・ジェネレータ3の発電量は、モータ・ジェネレータ3の回転数に依存するため、モータ・ジェネレータ3の回転数を、回生制動トルクの算出パラメータの1つとして用いている。なお、ここでは、車速からモータ・ジェネレータ3の回転数を間接的に求めているが、モータ・ジェネレータ3の回転数を直接検知するレゾルバなどが設けられている場合は、その検知信号から回転数を算出すればよい。
【0027】前記ステップS4に続くステップS5では、以下のような制御をおこなう。まず、ステップS4の算出結果に基づいて、ロックアップクラッチ8の解放前に発生している車両1の総合制動力と、ロックアップクラッチ8を解放した後における車両1の総合制動力(推定値)とを比較する。総合制動力とは、エンジンブレーキ力に対応する制動力と、モータ・ジェネレータ3の機能により発生する制動力との和である。また、この比較の結果、ロックアップクラッチ8の解放前に発生している車両1の総合制動力よりも、ロックアップクラッチ8を解放した後における車両1の総合制動力の方が低いと推定された場合は、ロックアップクラッチ8が解放される前に、エンジン2に対する燃料供給を開始する。
【0028】上記のステップS5についで、ロックアップクラッチ8が解放されるとともに(ステップS6)、モータ・ジェネレータ3による回生制動がおこなわれ(ステップS7)、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS5で燃料の噴射が開始されなかった場合は、ステップS7で燃料噴射を開始する。さらに、ステップS7よりも前、具体的にはロックアップクラッチ8の解放前に、モータ・ジェネレータ3の回生制動力が発生している場合は、ステップS7では、その回生制動力を増加する制御をおこなえばよい。
【0029】図3は、車両1に作用する総合制動力および燃料噴射量および回生制動力と、車速との対応関係を示す線図である。図3では、車速V3でロックアップクラッチ8が解放される。この図3では、モータ・ジェネレータ3の機能により発生可能な回生制動力毎に、燃料噴射量および総合制動力を説明する。
【0030】まず、前記ステップS4において、モータ・ジェネレータ3で発生可能な回生制動力が高いと算出された第1の場合について説明する。この第1の場合は、現在車速が車速V3よりも高速の状態では、燃料噴射が停止されている。また、回生制動力は発生していない。つまり、総合制動力はエンジンブレーキ力により略一定に維持されている。そして、現在車速が車速V3以下になると、燃料噴射が開始され、かつ、モータ・ジェネレータ3による回生制動力が、実線で示すように発生する。この回生制動力は、車速の低下にともない低下し、車速V1で回生制動力が零となっている。このような制御により、車速V3以下の場合は、車速の低下にともない、総合制動力が実線で示すように低下し、車速V1で所定の総合制動力に制御されている。なお、車速V3以下における燃料噴射量は、エンジン回転数をアイドル回転数に維持するための燃料噴射量に相当する。
【0031】つぎに、前記ステップS4において、モータ・ジェネレータ3で発生可能な回生制動力が、第1の場合よりも低いと算出された第2の場合について説明する。この第2の場合は、現在車速が車速V4に低下した時点から、燃料噴射が開始される。また、回生制動力は発生していない。そして、燃料噴射を開始した車速V4から車速が低下することにともない、総合制動力が破線で示すように低下する。そして、現在車速が車速V3以下になると、燃料噴射量がアイドリング回転数に相当する値に制御されるとともに、モータ・ジェネレータ3による回生制動力が、破線で示すように発生する。この回生制動力は、車速の低下にともない低下し、車速V2で零となっている。なお、同じ車速に対応する回生制動力は、実線で示す回生制動力よりも、破線で示す回生制動力の方が低い(弱い)。このような制御により、車速V4以下では、車速の低下にともない、総合制動力が破線で示すように低下する。
【0032】さらに、ステップS4において、モータ・ジェネレータ3により回生制動力を発生させることができないと算出された場合について説明する。この場合は、現在車速が車速V5に低下した時点から、燃料噴射が二点差線に示すように開始される。ここで、車速V5は車速V4よりも高車速である。そして、燃料噴射を開始した車速V5から車速が低下することにともない、総合制動力が二点鎖線で示すように低下する。そして、現在車速が車速V3以下になると、燃料噴射量がアイドリング回転数に相当する値に制御されるとともに、総合制動力が略一定の所定値に維持される。なお、図3およびその説明において、車速V5>車速V4>車速V3>車速V2>車速V1の関係にある。また、前記ステップS2で述べた所定車速は、図3に示す車速V5以上の車速である。
【0033】このように、図1、図2の制御によれば、ロックアップクラッチ8を解放すると、エンジン2とトランスミッション4との間で、流体の運動エネルギにより動力が伝達される状態となり、エンジンブレーキ力が弱められるが、モータ・ジェネレータ3の回生制動力が増加される。したがって、車両1に作用する総合制動力の低下が可及的に抑制され、車速の急激な変化によるショックの発生を抑制できる。また、ステップS4において、モータ・ジェネレータ3により発生する回生制動力が高いと予測される第1の場合には、ロックアップクラッチ8の解放前に燃料噴射を開始する必要はない。したがって、燃費を向上できる。
【0034】また、モータ・ジェネレータ3により回生制動力を発生させ、かつ、その電力をキャパシタ11に蓄電している。したがって、キャパシタ11の電力量を増加するために、エンジン2の動力の一部をモータ・ジェネレータ3またはオルタネータ10に伝達し、発電された電力をキャパシタ11に蓄電する機会を可及的に減少させることができ、燃費が一層向上する。
【0035】さらに、ステップS5において、ロックアップクラッチ8の解放前に発生における車両1の総合制動力よりも、ロックアップクラッチ8を解放した後における車両1の総合制動力の方が低いと推定された場合は、ロックアップクラッチ8が解放される前に、エンジン2に対する燃料供給を開始する。したがって、ロックアップクラッチ8を解放させる前後の総合制動力に大きな変化が生じることを抑制でき、ショック抑制機能が一層向上する。
【0036】ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS6、ステップS7が、この発明の制動力制御手段に相当し、ステップS4が、この発明の推定手段にし、ステップS5が、この発明の燃料供給手段および比較手段に相当する。
【0037】なお、図2に示す車両1は、エンジン2およびモータ・ジェネレータ3が、共に同じ車輪6に対して動力伝達可能に構成されているパワートレーンを有しているが、エンジンが動力伝達可能に連結される車輪と、モータ・ジェネレータが連結される車輪とが異なるように、パワートレーンが構成されている車両(図示せず)に対しても、図1の制御例を適用できる。また、トランスミッションと車輪との間の動力伝達経路に、モータ・ジェネレータが設けられている構成のパワートレーンに対しても、ステップS1の制御例を適用できる。
【0038】さらに、図2に示すパワートレーンにおいては、流体伝動装置と並列に配置されているロックアップクラッチのトルク容量を低下させるように構成されているが、エンジンとトランスミッションとの間に流体伝動装置が設けられていない構成のパワートレーンであってもよい。すなわち、ロックアップクラッチではなく、発進クラッチまたは自動クラッチと呼ばれるクラッチが設けられているパワートレーンであってもよい。
【0039】さらにまた、トランスミッションの入力部材と出力部材との間の回転速度の比、すなわち変速比を制御するために、トルク容量が調整されるトルク伝達部材が設けられているパワートレーンにおいては、そのトルク伝達部材のトルク容量が低下される場合に、モータ・ジェネレータの機能により車両の総合制動力を制御してもよい。このようなトルク伝達部材としては、有段変速機の摩擦係合装置、ベルト式無段変速機のプーリおよび巻き掛け伝動部材、トロイダル式無段変速機の出力ディスクおよびパワーローラなどが挙げられる。
【0040】また、この実施例において、モータ・ジェネレータ3の電力がキャパシタ11に蓄電されるされるように構成されているが、キャパシタ11以外の蓄電装置、例えば、バッテリに蓄電されるように構成してもよい。さらに、図1および図3に示す制御例は、モータ・ジェネレータ3の回生制動により総合制動力を調整する場合を説明しているが、モータ・ジェネレータ3を他の原理、例えば、発電制動、逆相制動、渦電流制動などにより制動させて、総合制動力を調整することもできる。
【0041】この実施例で説明した事項と、各請求項に記載された事項との対応関係を説明すれば、エンジン2がこの発明の機関に相当し、ロックアップクラッチ8、自動クラッチ、発進クラッチ、トランスミッションのトルク伝達部材などが、この発明のトルク容量制御装置に相当し、ロックアップクラッチ8の係合状態が、この発明の“トルク容量制御装置のトルク容量を所定値以上に制御”に相当し、係合されているロックアップクラッチ8を解放させることが、この発明の“トルク容量制御装置のトルク容量を低下”に相当し、マップに定められている所定のアクセル開度および車速V3が、この発明の所定の条件に相当し、モータ・ジェネレータ3がこの発明の発電機に相当し、回生制動、発電制動、逆相制動、渦電流制動などにより発生する制動力が、この発明の“発電機の機能により発生する制動力”に相当し、エンジン1の回転抵抗により発生する制動力と、モータ・ジェネレータ3の機能により発生する制動力との和が、この発明の総合制動力に相当する。
【0042】なお、特許請求の範囲に記載された“制動力制御手段”を“制動力制御器”または“制動力制御用コントローラ”と読み替え、“推定手段”を“推定器”または“推定用コントローラ”と読み替え、“燃料供給手段”を“燃料供給器”または“燃料供給制用コントローラ”と読み替えることもできる。この場合、電子制御装置12が、制動力制御器、制動力制御用コントローラ、推定器、推定用コントローラ、燃料供給器、燃料供給制用コントローラに相当する。また、特許請求の範囲に記載された“制動力制御手段”を“制動力制御ステップ”と読み替え、“推定手段”を“推定ステップ”と読み替え、“燃料供給手段”を“燃料供給ステップ”と読み替え、“車両の制動力の制御装置”を“車両の制動力の制御方法”と読み替えることもできる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によれば、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる場合に、車両に作用する総合制動力の低下分を、発電機の機能により発生する制動力により補うことができる。したがって、車速の急激な変化によるショックを抑制できる。
【0044】請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、時間の経過と共に、発電機により発生する制動力を低下させることができる。
【0045】請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前後の総合制動力に大きな変化が生じることを抑制できる。
【0046】請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させる前後の総合制動力に大きな変化が生じることを、一層確実に抑制できる。
【0047】請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明の作用と同様の効果を得られる他に、発電機の回生制動時に得られた電力を蓄電装置に蓄電でき、その電力を有効に活用できる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成14年4月9日(2002.4.9)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2003−304602(P2003−304602A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−107070(P2002−107070)