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【発明の名称】 車両のハイブリッドシステム
【発明者】 【氏名】仁科 充広
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字壱丁目一番地 日産ディーゼル工業株式会社内

【氏名】鈴木 祐次
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字壱丁目一番地 日産ディーゼル工業株式会社内

【氏名】宮田 達司
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字壱丁目一番地 日産ディーゼル工業株式会社内

【要約】 【課題】滑りやすい路面での制動時の安定性が確保される車両のハイブリッドシステムを提供する。

【解決手段】後輪7の回転が伝えられるモータ2と、前輪6と後輪7の制動を行う各ブレーキアクチュエータ57,67と、各ブレーキアクチュエータ57,67に導かれる制動圧を制御するプロポーショナルバルブ(制動圧調節機構)53,63と、各ブレーキアクチュエータ57,67の制動力が要求される主ブレーキ要求時を判定する主ブレーキ要求時判定手段と、主ブレーキ要求時に前輪6と後輪7にかかる制動力が所定比に配分されるようにモータ2と各ブレーキアクチュエータ57,67の作動を制御する制動力分配制御手段82とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】駆動輪の回転が伝えられるモータと、駆動輪と従動輪の制動を行う各ブレーキアクチュエータと、各ブレーキアクチュエータに導かれる制動圧を調節する制動圧調節機構プロポーショナルバルブと、各ブレーキアクチュエータの制動力が要求される主ブレーキ要求時を判定する主ブレーキ要求時判定手段と、主ブレーキ要求時に駆動輪と従動輪にかかる制動力が所定比に配分されるようにモータと各ブレーキアクチュエータの作動を制御する制動力分配制御手段とを備えたことを特徴とする車両のハイブリッドシステム。
【請求項2】前記主ブレーキ要求時に駆動輪と従動輪にかかる制動力が走行時に略7:3に配分され、停車時に略5:5に配分される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の車両のハイブリッドシステム。
【請求項3】前記モータの発電電力を蓄える蓄電要素と、この蓄電要素の満充電状態を判定する満充電状態判定手段と、主ブレーキ要求時にこの満充電状態と判定された場合にモータの回生発電を停止する構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のハイブリッドシステム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の動力源としてエンジンと電動モータを選択的に切り換えるハイブリッドシステムの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、パラレル式のハイブリッド車両として、エンジンの出力軸に連結したモータを備え、車両の加速時にモータに電力を供給してエンジンの出力を補助し、減速時および制動時にモータを発電機として作動させて回生制動を行い、発電した電力で蓄電装置を充電するものがあった(特開2000−332963号公報、参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の車両のハイブリッドシステムにあっては、ブレーキペダルが踏まれる主ブレーキ要求時に、モータの回生発電を優先して要求制動力のほとんどをモータの回生ブレーキで行った場合、駆動輪の制動力が強いため、凍結路面等の滑りやすい路面走行時に制動時の安定性が損なわれるという問題点があった。
【0004】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、滑りやすい路面での制動時の安定性が確保される車両のハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、駆動輪の回転が伝えられるモータと、駆動輪と従動輪の制動を行う各ブレーキアクチュエータと、各ブレーキアクチュエータに導かれる制動圧を調節する制動圧調節機構プロポーショナルバルブと、各ブレーキアクチュエータの制動力が要求される主ブレーキ要求時を判定する主ブレーキ要求時判定手段と、主ブレーキ要求時に駆動輪と従動輪にかかる制動力が所定比に配分されるようにモータと各ブレーキアクチュエータの作動を制御する制動力分配制御手段とを備えるものとした。
【0006】第2の発明は、第1の発明において、主ブレーキ要求時に駆動輪と従動輪にかかる制動力が走行時に略7:3に配分され、停車時に略5:5に配分される構成とした。
【0007】第3の発明は、第1または第2の発明において、モータの発電電力を蓄える蓄電要素と、この蓄電要素の満充電状態を判定する満充電状態判定手段と、主ブレーキ要求時にこの満充電状態と判定された場合にモータの回生発電を停止する構成とした。
【0008】
【発明の作用および効果】第1、第2の発明において、主ブレーキ要求時に制動力が駆動輪だけでなく従動輪にも所定比で配分されるため、凍結路面等の滑りやすい路面を走行する時にも制動時の安定性が確保され、スリップ発生時に制動圧を断続するABSモジュレータ等の作動頻度を少なくすることができる。
【0009】第3の発明において、充電状態に応じて車両の運動エネルギを有効に回収できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】図1に示すように、車両のパワートレインは、エンジン1、エンジンクラッチ3、トランスミッション4を備え、エンジン1の出力がエンジンクラッチ3を介してトランスミッション4の入力軸に伝えられ、トランスミッション4の出力軸の回転が図示しないプロペラシャフトからデファレンシャルギア5およびドライブシャフトを介して左右の後輪(駆動輪)7に伝達される。
【0012】エンジン1は供給される燃料がシリンダで燃焼し、シリンダで往復動するピストンを介してその出力軸を回転駆動する。エンジンコントロールユニット10はエンジン回転センサ13の検出信号や後述する車両コントロールユニット20からの要求情報信号に応じて燃料供給量を制御し、エンジン1の発生出力を調節する。
【0013】補助ブレーキとして設けられるエキゾーストブレーキ27は排気通路にエキブレシャッタが介装され、エキブレシャッタが閉弁することによってエンジン1の排気圧力を高めてエンジンブレーキ力を高める。
【0014】エンジンコントロールユニット10はエキゾーストブレーキスイッチ26が運転者によって操作されてONになると、車両コントロールユニット20からの要求情報信号に応じてエキブレシャッタが閉じてエキゾーストブレーキ27を作動させるようになっている。
【0015】なお、補助ブレーキとして、例えばエンジンの排気弁を吸入工程で開弁させる圧縮圧力開放式ブレーキや、エンジンブレーキ力を高めるもの以外の他の機構を設けても良い。
【0016】エンジンクラッチ3はクラッチブースタ8を介してエンジン出力軸とトランスミッション入力軸の接続と切り離しを行う。クラッチブースタ8はクラッチアクチュエータ18から導かれる加圧空気によってエンジンクラッチ3を切り離し、クラッチバルブ19から導かれる大気圧によってエンジンクラッチ3を接続する(図4参照)。
【0017】さらに、車両のパワートレインは、モータ2、モータクラッチ12、ギア装置13を備え、モータ2の回転がモータクラッチ12及びギア装置13を介してトランスミッション入力軸に伝達される。
【0018】モータ2は三相同期電動機または三相誘導電動機等の交流機であり、インバータ15によって駆動される。インバータ15は電気二重相キャパシタ(蓄電要素)16に接続され、キャパシタ16の直流充電電力を交流電力に変換してモータ2へ供給するとともに、モータ2の交流発電電力を直流電力に変換してキャパシタ16に充電する。
【0019】なお、蓄電要素としてキャパシタ16に限らず、化学反応を用いた各種蓄電池を用いても良い。また、モータ2は交流機に限らず直流電動機を用い、DC/DCコンバータによって駆動してもよい。
【0020】車両に備えられるエアオーバーブレーキシステムは、運転者に操作されて制動空気圧を調節するブレーキバルブ41と、このブレーキバルブ41の制動空気圧を前輪ブレーキブースタ51に導く前輪制動圧通路50と、同じくブレーキバルブ41の制動空気圧を後輪ブレーキブースタ61に導く後輪制動圧通路60とを備える。ブレーキバルブ41は運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に応じて前輪制動圧通路50の前輪側制動圧と後輪制動圧通路60の後輪側制動圧をそれぞれ調節する。
【0021】後輪制動圧通路60の途中にはブレーキバルブ41の制動空気圧を遮断するカットバルブ62と、車両コントロールユニット20から指令に基づいて制動空気圧を調節するプロポーショナルバルブ63とが介装される。そして、ブレーキバルブ41の制動空気圧をプロポーショナルバルブ63を迂回して後輪ブレーキブースタ61に導くバイパス通路64と、プロポーショナルバルブ63から導かれる圧力とバイパス通路64から導かれる圧力のうち高い方を選択して後輪ブレーキブースタ61に導くダブルチェックバルブ65とを備える。図1において、70はブレーキバルブ41及びプロポーショナルバルブ53,63の空気圧源となるリザーバタンクである。
【0022】前輪制動圧通路50の途中にはブレーキバルブ41の制動空気圧を遮断するカットバルブ52と、車両コントロールユニット20から指令に基づいて制動空気圧を調節するプロポーショナルバルブ53とが介装される。そして、ブレーキバルブ41の制動空気圧をプロポーショナルバルブ53を迂回して前輪ブレーキブースタ51に導くバイパス通路54と、プロポーショナルバルブ53から導かれる圧力とバイパス通路54から導かれる圧力のうち高い方を選択して前輪ブレーキブースタ51に導くダブルチェックバルブ55とを備える。
【0023】ブレーキブースタ51,61はブレーキバルブ41またはプロポーショナルバルブ53,63から導かれる制動空気圧を制動油圧に変換するものであり、図示しないABSモジュレータを介して前輪側ブレーキアクチュエータ57及び後輪側ブレーキアクチュエータ67を作動させ、前輪(従動輪)6及び後輪7に制動力を付与する。ABSモジュレータは車両の制動時に各車輪6,7のスリップ率が目標値に近づくように各ブレーキアクチュエータ57,67に導かれる制動油圧を断続するものである。
【0024】ブレーキバルブ41の制動空気圧によって各ブレーキブースタ51,61が作動する手動制動時、車両コントロールユニット20からの指令に基づいてカットバルブ52,62が開かれ、ブレーキバルブ41の制動空気圧が各ブレーキブースタ51,61に導かれる。
【0025】一方、プロポーショナルバルブ53,63の制動空気圧によって各ブレーキブースタ51,61が作動する自動制動時、車両コントロールユニット20からの指令に基づいてカットバルブ52,62が閉じられ、プロポーショナルバルブ53,63からの制動空気圧が各ブレーキブースタ51,61に導かれる。
【0026】プロポーショナルバルブ53,63は電磁比例流量制御弁で構成され、車両コントロールユニット20からのデューティ信号に応じてその開度がフィードバック制御される。一方、カットバルブ52,62は車両コントロールユニット20からの信号のON・OFFによって開閉する電磁開閉弁によって構成される。
【0027】車両コントロールユニット20は、エンジンコントロールユニット10及びインバータ15からの情報を入力するとともに、非常スイッチ28、エキゾーストブレーキスイッチ26、アクセル開度センサ22、エンジンクラッチ3のストロークセンサ24、トランスミッション4のギアポジションセンサ23、車速センサ25、制動圧通路50,60に設けられるストップランプスイッチ58,68及び制動圧力センサ59,69からの各検出信号を入力し、これらの信号に基づく運転条件に応じてエンジンクラッチ3の断接、モータクラッチ12の断接、エンジン1の出力とモータ2の出力及びブレーキ制動力を協調して制御する。
【0028】アクセル開度センサ22は運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出するものである。
【0029】非常スイッチ28は運転者の操作によってシステムの作動、停止を切り換えるもので、システムに何らかの異常が発生した場合に車両コントロールユニット20による制御システムを停止できる。
【0030】図2は車両の減速走行時に制御例を示している車速が例えば3km/hを超えて低下するまでの減速走行時に、プロポーショナルバルブ53,63によって制動空気圧が制御される。一方、車速が例えば3km/hを超えて低下すると、カットバルブ52,62が開弁し、ブレーキバルブ41による手動制動に切換られる。この状態から車速が例えば5km/hを超えて上昇すると、カットバルブ52,62が閉弁し、手動制動から自動制動に切り換えられる。こうして3〜5km/h以下の低速走行時に手動制動が行われることにより、制動力をきめ細かに調節することが可能となり、ブレーキフィーリングを損なわないで済む。
【0031】ブレーキバルブ41の制動空気圧をカットバルブ52及びプロポーショナルバルブ53を迂回して前輪ブレーキブースタ51に導くバックアップ通路71と、ブレーキバルブ41の制動空気圧が所定値を超えるのに伴ってバックアップ通路71を開通させるアダプタバルブ72と、プロポーショナルバルブ53から導かれる圧力とバックアップ通路71から導かれる圧力のうち高い方を選択して前輪ブレーキブースタ51に導くダブルチェックバルブ73とを備える。
【0032】アダプタバルブ72はブレーキバルブ41の制動空気圧が所定値を超えるのに伴ってバックアップ通路71を開通させるようになっている。アダプタバルブ72は運転者によってブレーキペダルが大きく踏み込まれない状態ではバックアップ通路71を絞ってブレーキバルブ41の制動空気圧を遮断する一方、ブレーキペダルが大きく踏み込まれるのに伴ってバックアップ通路71を開通させてブレーキバルブ41の制動空気圧を前輪ブレーキブースタ51に導く。万一車両コントロールユニット20等の制御系が失陥した場合には、ブレーキバルブ41の制動空気圧がアダプタバルブ72を介して前輪ブレーキブースタ51に導かれ、前輪6の制動が行われるフェイルセーフ機能が果たされる。
【0033】図3に示すように、車両の制動時はコースト時、エキゾーストブレーキ要求時、主ブレーキ要求時、エキゾーストブレーキ27と主ブレーキ両方要求時に分けて以下のように制御される。
【0034】1)コースト時は次の条件で判定される。
・アクセルペダルの踏み込み量が所定値以下のアクセルOFF時・エキゾーストブレーキスイッチ26がOFFとなるエキゾーストブレーキOFF時・ブレーキペダルの踏み込み量が所定値以下の主ブレーキOFF時このコースト時と判定された場合、エンジンクラッチ3を切断し、モータクラッチ12を接続して、エンジンブレーキの制動力(エンジン1のフリクション)の相当分を生じるようにモータ2の交流発電電力をインバータ15を介して制御する。
【0035】一方、キャパシタ16の充電圧が規定値を超えると、モータクラッチ12を切断し、エンジンクラッチ3を接続して、エンジン1のフリクションのみにより制動する。
【0036】2)エキゾーストブレーキ要求時は次の条件で判定される。
・アクセルペダルの踏み込み量が所定値以下のアクセルOFF時・エキゾーストブレーキスイッチ26がONとなるエキゾーストブレーキON時・主ブレーキOFF時このエキゾーストブレーキ要求時と判定された場合、エンジンクラッチ3を接続し、エキブレシャッタを開弁し、モータクラッチ12を接続して、エキゾーストブレーキ27の制動力の相当分を生じるようにモータ2の交流発電電力を制御する。
【0037】一方、キャパシタ16の充電圧が規定値を超えると、モータクラッチ12を切断し、エキブレシャッタを閉弁して、エンジンブレーキのみにより制動する。
【0038】3)主ブレーキ要求時は次の条件で判定される。
・アクセルOFF時・エキゾーストブレーキOFF時・ブレーキペダルの踏み込み量が所定値を超えた主ブレーキON時この主ブレーキ要求時と判定された場合、エンジンクラッチ3を切断し、エキブレシャッタを開弁し、モータクラッチ12を接続して、予め設定されたマップに基づき求められた制動力の相当分を生じるようにモータ2の交流発電電力を制御するとともに、残りの制動力を各プロポーショナルバルブ53,63を作動させて各ブレーキアクチュエータ57,67の制動力を制御する。
【0039】一方、キャパシタ16の充電圧が規定値を超えると、モータクラッチ12を切断し、各ブレーキアクチュエータ57,67のみにより制動する。
【0040】4)エキゾーストブレーキ27と主ブレーキの両方要求時は次の条件で判定される。
・アクセルOFF時・エキゾーストブレーキON時・主ブレーキON時このエキゾーストブレーキ27と主ブレーキの両方要求時と判定された場合、エンジンクラッチ3を接続し、エキブレシャッタを開弁し、モータクラッチ12を接続して、予め設定されたマップに基づき求められた制動力の相当分を生じるようにモータ2の交流発電電力を制御するとともに、残りの制動力を各プロポーショナルバルブ53,63を作動させて各ブレーキアクチュエータ57,67の制動力を制御する。
【0041】一方、キャパシタ16の充電圧が規定値を超えると、モータクラッチ12を切断し、エキブレシャッタを閉弁して、エンジンブレーキと各ブレーキアクチュエータ57,67により制動する。
【0042】図4は上記した制動を行うための制御ブロック図である。車両コントロールユニット20は、エキゾーストブレーキスイッチ26がONとなる回生エキゾーストブレーキ時(エキゾーストブレーキ要求時)を判定する手段31と、エキゾーストブレーキスイッチ26がOFFとなる回生エンジンブレーキ時を判定する手段32と、エンジンクラッチ3の断接を制御する手段33と、クラッチアクチュエータ18の作動を制御するエンジンクラッチカット手段35と、クラッチバルブ19の作動を制御するエンジンクラッチクローズ手段36と、エキゾーストブレーキの作動を制御する手段34とを備える。
【0043】図5のフローチャートは上記した制動を行うルーチンを示している。これについて説明すると、まずステップ1にてエキゾーストブレーキスイッチ26がONとなる回生エキゾーストブレーキ時と判定されると、ステップ2に進んでエンジンクラッチ3を接続し、ステップ3にてキャパシタ16の充電圧が規定値を超える満充電状態かどうかを判定する。ここで満充電状態と判定されると、ステップ4に進んでエンジンコントロールユニット10がエキゾーストブレーキ27を働かせる指令をする。一方、満充電状態でないと判定されると、ステップ8に進んでエンジンコントロールユニット10がモータ2に回生発電をさせる。
【0044】ステップ6にてエキゾーストブレーキスイッチ26がOFFとなる回生エンジンブレーキ時と判定されると、ステップ7に進んでキャパシタ16の充電圧が規定値を超える満充電状態かどうかを判定する。ここで満充電状態と判定されると、ステップ8に進んでエンジンコントロールユニット10がメインクラッチ3を接続させる指令をする。一方、満充電状態でないと判定されると、ステップ9に進んでモータ2に回生発電をさせる。
【0045】このようにして、エキゾーストブレーキスイッチ26がONとなるエキゾーストブレーキ要求時でも、エキゾーストブレーキ27を働かせないでモータ2に回生発電をさせることにより、エキゾーストブレーキ27の制動エネルギ相当分の電力が回生され、車両の運動エネルギを有効に回収できる。
【0046】モータ2がエキゾーストブレーキ27の制動エネルギ相当分の電力を回生しているとき、エンジンクラッチ3を接続してエンジンブレーキを働かせているため、エンジンブレーキと回生ブレーキによって十分な制動力が得られ、主ブレーキの負担を軽減でき、主ブレーキを含めた制動力に余裕が生じる。さらに、このエンジンブレーキ作動時にエンジン1の燃料供給を停止することが可能となり、エンジン1の燃費を低減できる。
【0047】図6は図3における3)、4)の主ブレーキ要求時に、制動力をモータ2の回生ブレーキ力と各ブレーキアクチュエータ57,67のメカブレーキ力に分配する制御システムの構成を示している。
【0048】これについて説明すると、実験データ46に基づいて予め設定されたマップ42を用いて制動圧力センサ59,69によって検出されるブレーキペダル圧に応じた要求減速エネルギが求められる。
【0049】この要求減速エネルギとギアポジションセンサ23によって検出されるトランスミッション4のシフト位置、車速センサ25によって検出される車速、モータ2のトルク特性、キャパシタ16の蓄電圧等に応じて、予め設定されたマップ43に基づきモータ2の回生ブレーキ力と各ブレーキアクチュエータ57,67のメカブレーキ力の分担率が求められる。
【0050】そして、各ブレーキアクチュエータ57,67が分担する減速エネルギが計算される。予め設定されたマップ44,45に基づき前輪制動圧、後輪制動圧が求められ、この制動圧が得られるように各プロポーショナルバルブ(制動圧調節機構)53,63の作動がフィードバック制御される。
【0051】一方、求められた回生ブレーキ力からモータ2の回生エネルギが計算され、この回生エネルギが得られるようにインバータ15に指令される。
【0052】図7は上記したブレーキ力を分配する制御例を示している。このように、ブレーキペダル圧、車速に応じて、モータ2の電力、制動圧(ブレーキエア圧)が連携して制御されている。
【0053】ところで、図8の(a)図に示すように、ブレーキペダルが踏まれる主ブレーキ要求時に、モータ2の回生発電を優先して要求制動力のほとんどをモータ2の回生ブレーキで行った場合、後輪7の制動力が強いため、凍結路面等の滑りやすい路面走行時に制動時の安定性が損なわれ、ABSモジュレータが作動する頻度が高まるという問題点があった。
【0054】これに対処して、図8の(b)図に示すように、ブレーキペダルが踏まれる主ブレーキ要求時に、前輪6と後輪7にかかる制動力の比が走行時に略3:7に配分されるように、制動力をモータ2の回生ブレーキ力と各ブレーキアクチュエータ57,67のメカブレーキ力に分配する制御が行われる。停車時に前輪6と後輪7にかかる制動力が略5:5に戻される。
【0055】前輪6と後輪7にかかる制動力の配分比3:7は、摩擦係数が0.1μの路面で0.4Gの減速度で制動が行われた場合にABSモジュレータが作動しない限界値として設定された値である。
【0056】こうして、主ブレーキ要求時に、前輪6と後輪7にかかる制動力の比が走行時に略3:7に配分されることにより、凍結路面等の滑りやすい路面を走行する時にも制動時の安定性が確保され、ABSモジュレータの作動頻度が少なくなる。
【0057】図9は上記した制動力を配分するための制御ブロック図である。車両コントロールユニット20は、制動圧力センサ59,69によって検出されるブレーキペダル圧に応じた要求減速エネルギを算出する要求制動力算出手段81と、算出された要求減速エネルギを前輪6と後輪7に略3:7の比で配分する要求制動力配分手段82と、モータ2の回転速度に応じてモータ制動力を算出する手段83と、エンジン1の回転速度に応じてエンジンブレーキ力を算出する手段84と、エンジン1の回転速度に応じてエキゾーストブレーキ力を算出する手段85と、エンジンブレーキ力とエキゾーストブレーキ力を加える加算器86と、モータ制動力からエンジンブレーキ力とエキゾーストブレーキ力の加算値を減算する減算器87と、この減算値をモータ制動トルクとして出力する手段89と、後輪7に配分された要求制動力からモータ制動トルクを減算する減算器88と、この減算値に応じて後輪プロポーショナルバルブ63にデューティ信号を出力する手段90と、前輪6に配分された要求制動力に応じて前輪プロポーショナルバルブ53にデューティ信号を出力する手段91とを備える。
【0058】図10のフローチャートは上記した制動力を配分するルーチンを示している。これについて説明すると、まずステップ11にて制動圧力センサ59,69によって検出されるブレーキペダル圧に応じた要求減速エネルギを算出する。続いてステップ12に進んで、算出された要求減速エネルギを前輪6と後輪7に略3:7の比で配分する。続いてステップ13に進んで、図11に示すサブルーチンにてステップ21〜26を実行することにより、前輪6に配分された要求制動力に応じた目標圧力が得られるように前輪プロポーショナルバルブ53の制御圧をPI制御する。
【0059】続いてステップ14に進んで、エンジンブレーキ力とエキゾーストブレーキ力を加えた制動力を算出する。続いてステップ15に進んで、モータ2の出力可能制動力を算出し、後輪7に配分された要求制動力からモータ制動力を減算する。続いてステップ16に進んで、モータ2の出力可能制動力を算出し、後輪7に配分された要求制動力からモータ制動トルクを減算する。続いてステップ17に進んで、モータ制動力をモータ2のトルク指令値ACSTに変換する。続いてステップ18に進んで、図12に示すサブルーチンにてステップ31〜36を実行することにより、後輪7に配分された要求制動力に応じた目標圧力が得られるように後輪プロポーショナルバルブ63の制御圧をPI制御する。続いてステップ19に進んで、モータ2、前輪プロポーショナルバルブ53、後輪プロポーショナルバルブ63の制御信号をそれぞれ出力する。
【0060】図13のフローチャートはエキゾーストブレーキ27の作動を制御するルーチンを示している。これについて説明すると、まずステップ51にて車速換算のエンジン回転から必要なエキゾーストブレーキトルク値EXBを算出する。続いてステップ52に進んで、エキゾーストブレーキトルク値EXBをモータ2のトルク指令値ACSTに変換する。続いてステップ53に進んで、エキゾーストブレーキスイッチ26がONとなる回生エキゾーストブレーキ時を判定する。続いてステップ54に進んで、エンジン回転数が800rpm以上であることを判定する。続いてステップ55に進んで、アクセルOFF時であることを判定する。続いてステップ56に進んで、トランスミッション4のギアポジションが確定していることを判定する。続いてステップ57に進んで、エンジンクラッチ3が接続されていることを判定する。続いてステップ58に進んで、キャパシタ16の充電圧が規定値を超える満充電状態であることを判定する。これらの条件が全て満たされた場合、ステップ59に進んでエンジンコントロールユニット10にエキゾーストブレーキ27を働かせる指令を出し、ステップ60にてエキゾーストブレーキトルク値EXBを0とする。
【0061】一方、満充電状態でないと判定されると、ステップ61に進んで非常スイッチ28がOFFとなっていることを判定する。続いてステップ62に進んで、ABSモジュレータが作動していないことを判定する。これらの条件が一つでも満たされない場合、ステップ59に進んでエンジンコントロールユニット10にエキゾーストブレーキ27を働かせる指令をする一方、これらの条件が全て満たされた場合、ステップ63に進んでエンジンコントロールユニット10にエキゾーストブレーキ27を停止させる指令を出し、ステップ64にてエキゾーストブレーキトルク値EXBを計算値とする。
【0062】また、ステップ53〜57の条件が一つでも満たされない場合はステップ65にてエキゾーストブレーキトルク値EXBを0とする。
【0063】図14のフローチャートはエンジンブレーキの作動を制御するルーチンを示している。これについて説明すると、まずステップ71にて車速換算のエンジン回転から必要なエンジンブレーキトルク値ENBを算出する。続いてステップ72に進んで、エンジンブレーキトルク値ENBをモータ2のトルク指令値ACSTに変換する。続いてステップ73に進んで、エンジンクラッチ3が切られていることを判定する。続いてステップ74に進んで、トランスミッション4のギアポジションが確定していることを判定する。続いてステップ75に進んで、ギアポジションがニュートラルにないことを判定する。続いてステップ76に進んで、キャパシタ16が満充電状態であることを判定する。これらの条件が全て満たされた場合、ステップ77に進んでエンジンブレーキトルク値ENBを0とする。
【0064】一方、満充電状態でないと判定されると、ステップ78に進んで、エンジンブレーキトルク値ENBを計算値とする。
【0065】また、ステップ73〜75の条件が一つでも満たされない場合はステップ79にてエンジンブレーキトルク値ENBを0とする。
【0066】図15のフローチャートはモータ2の回生発電を制御するルーチンを示している。これについて説明すると、まずステップ81にてモータ2の回転速度から出力可能な最大トルク指令値を算出する。続いてステップ82に進んで、モータ制動トルク値MTRを最大トルク指令値からエキゾーストブレーキトルク値EXB及びエンジンブレーキトルク値ENBを差し引いて算出する。
【0067】続いてステップ83に進んで、キャパシタ16が満充電状態であることを判定すると、ステップ84に進んでモータ制動トルク値MTRを0とする。
【0068】一方、満充電状態でないと判定されると、ステップ86に進んで非常スイッチ28がOFFとなっていることを判定する。続いてステップ87に進んで、ABSモジュレータが作動していないことを判定する。続いてステップ88に進んで、エンジンクラッチ3が接続されていることを判定する。これらの条件が一つでも満たされない場合、ステップ89に進んでエンジンコントロールユニット10にエキゾーストブレーキ27を働かせる指令をする一方、これらの条件が全て満たされた場合、ステップ63に進んでエンジンコントロールユニット10にエキゾーストブレーキ27を停止させる指令を出し、ステップ64にてモータ制動トルク値MTRを計算値とする。これらの条件が全て満たされた場合、ステップ89に進んでモータ制動トルク値MTRを計算値とする。
【0069】また、ステップ86〜88の条件が一つでも満たされない場合はステップ84にてモータ制動トルク値MTRを0とする。最後にステップ85に進んで制動トルク値MTRを制動力変換する。
【0070】本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【出願人】 【識別番号】000003908
【氏名又は名称】日産ディーゼル工業株式会社
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字壱丁目1番地
【出願日】 平成14年3月20日(2002.3.20)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2003−284203(P2003−284203A)
【公開日】 平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願番号】 特願2002−78564(P2002−78564)