| 【発明の名称】 |
制動トルク制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】牟田 浩一郎 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】車輪に液圧制動トルクと回生制動トルクとが加えられる場合において、車輪に加えられる制動トルクに対する回生制動トルクの比率を大きくする。
【解決手段】ブレーキスイッチがOFF状態からON状態に切り換えられると、回生制動トルクが設定制動トルクだけ増加させられる。その後、液圧制動トルクと回生制動トルクとの協調制御が行われるのであるが、予め、回生制動トルクが大きくされるため、ブレーキ操作初期において、エネルギ回収効率を向上させることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】制動操作部材の操作に関連する操作関連量が予め定められた第1設定操作関連量を越えた状態で車両の複数の車輪に第1制動トルクを加えるとともに、それら同じ車輪に第2制動トルクを加える制動装置において、それら第1および第2の両制動トルクを制御する制動トルク制御装置であって、前記制動操作部材の前記操作関連量が前記第1設定操作関連量より小さい第2設定操作関連量を超えた場合に、前記第2制動トルクを、前記操作関連量とは関係なく決まる設定制動トルクだけ増加させる制動トルク増加部を含むことを特徴とする制動トルク制御装置。 【請求項2】前記制動操作部材の前記操作関連量が前記第2設定操作関連量より小さい状態と第2設定操作関連量を超えた状態とで状態が切り換わるブレーキスイッチと、前記制動操作部材の前記操作関連量を検出する操作関連量センサとの少なくとも一方を含む請求項1に記載の制動トルク制御装置。 【請求項3】少なくとも、前記制動操作部材の前記操作関連量が前記第1設定操作関連量に達するまで、前記制動トルクを前記制動トルク増加部によって増加させられた大きさに保持する制動トルク保持部を含む請求項1または2に記載の制動トルク制御装置。 【請求項4】前記車輪に加えられる前記第1,第2の両方の制動トルクの和を前記制動操作部材の前記操作関連量に基づいて決まる大きさに制御する協調制御部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の制動トルク制御装置。 【請求項5】前記制動装置が、車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦係合部材を、前記制動操作部材の操作力に基づいて押し付けることにより、前記車輪に摩擦制動トルクを前記第1制動トルクとして加える摩擦制動装置と、前記車輪に、電動モータの回生制動により回生制動トルクを前記第2制動トルクとして加える回生制動装置とを含み、前記協調制御部が、前記回生制動装置と前記摩擦制動装置との少なくとも一方を制御することにより、前記車輪に加えられる回生制動トルクと摩擦制動トルクとの和を前記制動操作部材の前記操作関連量に基づいて決まる大きさに制御する回生協調制御部を含む請求項4に記載の制動トルク制御装置。 【請求項6】前記回生制動装置が、前記電動モータの回生制動により得られた電気エネルギを蓄える蓄電装置を含み、前記制動トルク増加部が、前記車両の走行速度と前記蓄電装置の蓄電余裕量との少なくとも一方に基づいて前記設定制動トルクを決定する設定制動トルク決定部を含む請求項5に記載の制動トルク制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、車輪に加えられる制動トルクを制御する制動トルク制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】特開平5−199606号公報には、車輪に回生制動トルクと液圧制動トルクとが加わる制動装置において、制動トルクを制御する制動トルク制御装置が記載されている。この制動トルク制御装置によれば、ブレーキスイッチがOFF状態からON状態に切り換わると、回生制動トルクが、ブレーキ操作部材の操作力に応じた大きさになるように制御される。上記公報に記載の制動トルク制御装置においては、ブレーキスイッチがON状態に切り換えられるとブレーキ操作部材の操作力に応じた回生制動トルクが加えられるため、車輪に加えられる制動トルクに対する回生制動トルクの比率を高くすることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果】本発明の課題は、車輪に第1制動トルクと第2制動トルクとが加えられる場合において、第2制動トルクを、操作力とは関係なく増加させることによって、第2制動トルクの車輪に加えられる総制動トルクに対する比率を高くすることである。上記課題は、制動トルク制御装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。 【0004】以下の各項のうち、(2)項が請求項1に対応し、(3)項が請求項2に対応し、(6)項が請求項3に対応する。また、(7)項、(8)項、(10)項がそれぞれ請求項4,5,6に対応する。 【0005】(1)制動操作部材の操作関連量が予め定められた第1設定操作関連量を越えた状態で第1制動トルクを車両の複数の車輪に加えるとともに、それら同じ車輪に第2制動トルクを加える制動装置において、それら第1および第2の両制動トルクを制御する制動トルク制御装置。本項に記載の制動トルク制御装置は、車両の複数の車輪に第1制動トルクと第2制動トルクとの両方を加え得る制動装置においてそれら両制動トルクを制御する。複数の車輪には、常に第1制動トルクと第2制動トルクとの両方が加えられるとは限らず、第1制動トルクのみが加えられる場合や、第2制動トルクのみが加えられる場合もある。第1制動トルクは、制動操作部材が運転者によって操作されると直ちに加えられるわけではなく、制動操作部材の操作関連量が第1設定操作関連量を越えると加えられる。例えば、第1制動トルクと第2制動トルクとを、それぞれ摩擦制動トルクと回生制動トルクとの少なくとも一方とすることができる。具体的には、第1制動トルクを摩擦制動トルクとするとともに第2制動トルクを回生制動トルクとしたり、第1制動トルクを回生制動トルクとするとともに第2制動トルクを摩擦制動トルクとしたり、両方とも摩擦制動トルクとしたり、両方とも回生制動トルクとしたりすることができるのである。また、摩擦制動トルクには、摩擦係合部材がブレーキシリンダの液圧によりブレーキ回転体に摩擦係合させられる液圧制動トルク、電動モータの押圧力により摩擦係合させられる電動制動トルク等が該当し、第1制動トルクと第2制動トルクとを、それぞれ液圧制動トルクと電動制動トルクとの少なくとも一方とすることができる。さらに、液圧制動トルクには、制動操作部材の操作に起因して発生させられる液圧(例えば、マスタシリンダの液圧がブレーキシリンダに供給される等)により加えられる操作依拠液圧制動トルク、動力により発生させられる液圧(例えば、ポンプ装置等の動力式液圧源の液圧がブレーキシリンダに供給される等)によって加えられる動力依拠液圧制動トルク等が該当し、前記第1制動トルクを操作依拠液圧制動トルクとするとともに第2制動トルクを動力依拠液圧制動トルクとしたり、両方とも動力依拠液圧制動トルクとしたりすることができる。以上のように、第1制動トルクと第2制動トルクとは、同じトルク(例えば、同じ種類のトルク、同じ制動装置によって加えられるトルク等とすることができる。同じ種類のトルクには、例えば、制動トルクの発生原理が同じトルク等が該当する)としたり、異なるトルクとしたりすることができる。制動操作部材の操作に関連する操作関連量には、制動操作部材の操作ストローク、操作力等が該当する。操作ストロークが設定ストロークを越えた場合、あるいは操作力が設定操作力を越えた場合に、第1制動トルクが加えられるのである。 【0006】(2)前記制動操作部材の操作関連量が前記第1設定操作関連量より小さい第2設定操作関連量を超えた場合に、前記第2制動トルクを、前記操作関連量とは関係なく決まる設定制動トルクだけ増加させる制動トルク増加部を含む(1)項に記載の制動トルク制御装置。本項に記載の制動トルク制御装置においては、制動操作部材の操作関連量が第2設定操作関連量を越えた場合に、第2制動トルクが設定制動トルクだけ増加させられる。第2設定操作関連量以下の状態においては、既に加えられている場合と、加えられていない場合とがある。既に第2制動トルクが加えられている場合には、第2制動トルクが設定制動トルクだけ大きくされ、加えられていない場合には、設定制動トルクの第2制動トルクが新たに加えられることになる。また、第2制動トルクや第1制動トルクとは別の第3の制動トルクが既に加えられている場合もあり、この場合には、第3の制動トルクが加えられている状態において第2制動トルクが加えられることになる。いずれにしても、第1制動トルクが加えられる以前に第2制動トルクが増加させられるのであり、それによって、第2制動トルクの車輪に加えられる制動トルクに対する比率を大きくすることができる。例えば、第1制動トルクが摩擦制動トルクで第2制動トルクが回生制動トルクである場合に、回生制動トルクの比率を高くすることによって、無駄なエネルギの損失を抑制することができる。また、第1制動トルクが、ブレーキ操作部材に連携させられた加圧ピストンを含むマスタシリンダの液圧により加えられる操作依拠液圧制動トルクで、第2制動トルクが、電動モータにより加えられる電動制動トルクである場合には、電動制動トルクの比率を高めることによって、運転者の負担を軽減することができる。設定制動トルクは、制動操作部材の操作関連量とは関係ない大きさとされる。例えば、車両の走行状態や走行条件に基づいて決められるようにすることができる。車両の旋回状態が限界状態を越えている場合や限界状態を越える可能性が高い場合には、小さめにすることが望ましい。また、走行条件としての走行路面の摩擦係数が小さい場合も同様に小さめにすることが望ましい。これらの場合に、第2制動トルクが急激に大きくされることは望ましくないからである。さらに、車両の走行状態としての走行速度が大きい場合は走行速度が小さい場合より設定制動トルクを小さくすることができる。走行速度が大きい場合は小さい場合より走行抵抗が小さいからである。それに対して、走行速度とは関係なく、設定制動トルクを決められた大きさにすることもできる。制動トルクが同じであれば、減速度を同じ大きさにすることができる。また、第2制動トルクが回生制動トルクの場合には、蓄電装置の蓄電余裕量と電動モータの回転速度との少なくとも一方に基づいて決められるようにすることができる。さらに、制動操作部材が第2設定操作状態量を越えた時点において、既に制動トルクが加えられている場合には、その既に加えられている制動トルクの大きさに基づいて設定制動トルクの大きさが決められるようにすることができる。例えば、すでに加えられている制動トルクBに係数αを掛けた大きさ(α・B)とすることができるのであり、係数αは、1より小さい値としても、1以上の値としてもよい。また、設定制動トルクは、その時点の状況とは関係なく、予め定められた大きさとされるようにすることもできる。第2制動トルクを設定制動トルクだけ増加させる場合の増加勾配は制御されるようにしても、制御されないようにしてもよい。増加勾配が制御される場合には、制動操作部材の通常の操作状態において、第2制動トルクが操作関連量に応じて決まる大きさに制御される場合より急勾配で増加させられるようにすることが望ましい。特に、第2制動トルクが回生制動トルクの場合に、回生制動トルクが速やかに増加させられるようにすれば、エネルギの無駄な損失を抑制することができる。 (3)前記制動操作部材の操作関連量が前記第2設定操作関連量より小さい状態と第2設定操作関連量を超えた状態とで状態が切り換わるブレーキスイッチと、前記制動操作部材の前記操作関連量を検出する操作関連量センサとの少なくとも一方を含む(1)項または(2)項に記載の制動トルク制御装置。制動操作部材の操作関連量が第2設定操作関連量を超えたことが、ブレーキスイッチあるいは操作関連量センサによって検出される。ブレーキスイッチの状態は、制動操作部材の操作関連量が0より大きくなると直ちに切り換わるのではなく、ある程度大きくなってから切り換わる。ブレーキスイッチによる場合には、状態が切り換わる第2設定操作関連量は、構造(スプリングのセット荷重等)によって決まるが、操作関連量センサによる場合には、その第2設定操作関連量の大きさを適宜決めることができる。操作関連量センサは、制動操作部材の操作ストロークを検出するストロークセンサとしたり、操作力を検出する操作力センサとしたりすることができる。 (4)前記制動装置が、前記制動操作部材の前記操作関連量が前記第1設定操作関連量を越えた状態で前記第1制動トルクを加える第1制動装置と、前記第2制動トルクを加える第2制動装置とを含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の制動トルク制御装置。本項に記載の制動トルク制御装置においては、第1制動装置と第2制動装置とは異なるものであり、第1制動トルクは第1制動装置によって加えられ、第2制動トルクは第2制動装置によって加えられる。第1制動装置は、運転者による制動操作部材の操作中に第1制動トルクを加え、操作中でない場合に加えることはない。また、第1制動装置は、制動操作部材の操作に基づいて第1制動トルクを加えるものであり、制動操作部材の操作が第1制動トルクの発生の直接の原因である場合と直接の原因でない場合とがある。例えば、制動操作部材に連携させられた加圧ピストンを含むマスタシリンダとブレーキシリンダとを含み、制動操作部材の操作によってマスタシリンダの加圧室に液圧が発生させられ、その液圧がブレーキシリンダに伝達されて、第1制動トルクが加えられる場合が制動操作部材の操作が第1制動トルクの発生の直接の原因である場合の一例である。また、制動操作部材の操作関連量が操作関連量センサによって検出され、その検出された操作関連量に基づいて決まる制動トルク目標値が得られるように、第1制動トルクが制御される場合が直接の原因でない場合の一例である。第2制動装置は、制動操作部材の操作とは関係なく第2制動トルクを加え得るものである。端的には、制動操作部材が操作されなくても第2制動トルクを加え得るものであり、第2制動トルクの大きさを操作関連量とは関係ない大きさに制御可能なものである。 【0007】(5)前記第2制動トルクを、加速操作部材の操作の解除状態において、前記車両の変速装置のシフト位置と前記車両の走行速度との少なくとも一方に基づいて決まる大きさに制御する第2制動トルク制御部を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の制動トルク制御装置。本項に記載の制動トルク制御装置においては、加速操作部材の操作の解除状態において第2制動トルクが加えられるため、制動操作部材の操作関連量が第2設定操作関連量を超えた時点においては既に第2制動トルクが加えられており、その加えられている第2制動トルクが設定制動トルクだけ増加させられることになる。加速操作部材の操作が解除された状態において車輪に加えられる制動トルクとしては、いわゆる、エンジンブレーキによる制動トルクが知られている。車両が駆動源としてエンジンを備えた車両である場合には、加速操作部材の操作が解除されると、エンジンブレーキによる制動トルクが車輪に加えられる。このエンジンブレーキによる制動トルクは、シフト位置等に基づいて決まる大きさとなる。また、車両が駆動源にエンジンを含まないで電動モータを含む電動車両の場合には、エンジンブレーキが作動させられることはない。しかし、電動モータの制御により、エンジンブレーキ相当の回生制動トルクが加えられるようにすることができる。あたかも、エンジンブレーキが作動しているのと同様の状態とすることもできるのである。回生制動トルクは、シフト位置に基づいた大きさに制御されるようにしたり、車両の走行速度に基づいた大きさに制御されるようにしたり、これらの両方に基づいた大きさに制御されるようにしたりすることができる。さらに、車両が駆動源にエンジンと電動モータとの両方を含むハイブリッド車両である場合には、エンジンや駆動分配機構の制御によりエンジンブレーキが作用させられるようにしたり、電動モータの制御によりエンジンブレーキ相当の回生制動トルクが加えられるようにしたりすることができる。エンジンブレーキ相当の回生制動トルクが加えられるようにすれば、エネルギの無駄な損失を抑制することができる。なお、エンジンブレーキによる制動トルクを(2)項に記載の第3の制動トルクと考えることができる。この場合には、エンジンブレーキによる第3の制動トルクが加えられている状態において、第2の制動トルクが加えられることになる。 (6)少なくとも、前記制動操作部材の操作関連量が前記第1設定操作関連量に達するまで、前記制動トルクを前記増加させられた大きさに保持する制動トルク保持部を含む(2)項ないし(5)項のいずれか1に記載の制動トルク制御装置。制動操作部材の操作関連量が第2設定操作関連量を超えた場合に第2制動トルクが設定制動トルクだけ増加させられ、その第2制動トルクが、少なくとも、制動操作部材の操作関連量が第1設定操作関連量に達するまで保持される。制動操作関連量が第1設定操作関連量に達すると第1制動トルクが加えられるのであるが、第1制動トルクが加えられた以降においては、第2制動トルクが保持されても、後述するように、協調制御によって制御されるようにしてもよい。なお、上述のように、第2制動トルクがほぼ一定の大きさに保持されることは不可欠ではない。制動操作部材の操作関連量が第2設定操作関連量を超えてから第1設定操作関連量に達するまでの間、前述のように、蓄電装置の状態、電動モータの状態、その他、車両の状態等に基づいて決まる大きさに制御されるようにすることもできる。 【0008】(7)前記車輪に加えられる前記第1,第2の両方の制動トルクの和を前記制動操作部材の前記操作関連量に基づいて決まる大きさに制御する協調制御部を含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の制動トルク制御装置。本項に記載の制動トルク制御装置においては、第1制動トルクと第2制動トルクとの和が制動操作部材の操作関連量に基づいて決まる大きさに制御される。第1制動トルクと第2制動トルクとの両方が制御されるようにしても、いずれか一方が制御されるようにしてもよい。例えば、いずれか一方が制動操作部材の操作によって決まる場合において、他方が制御されることによって、これらの和が操作関連量に基づいて決まる大きさに制御されるようにしたり、いずれか一方が電動モータの回転数や蓄電余裕量等で決まる場合において、他方が制御されるようにしたりすることができる。操作関連量に基づいて決まる大きさとしては、操作ストロークと操作力との少なくとも一方に基づいて決めることができる。制動操作部材の操作力は、操作力センサによって直接検出された値としても、操作力と等価的な物理量としてもよい。 【0009】(8)前記制動装置が、車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦係合部材を、前記制動操作部材の操作力に基づいて押し付けることにより、前記車輪に摩擦制動トルクを前記第1制動トルクとして加える摩擦制動装置と、前記車輪に、電動モータの回生制動により回生制動トルクを前記第2制動トルクとして加える回生制動装置とを含み、前記協調制御部が、前記回生制動装置と前記摩擦制動装置との少なくとも一方を制御することにより、前記車輪に加えられる回生制動トルクと摩擦制動トルクとの和を前記制動操作部材の前記操作関連量に基づいて決まる大きさに制御する回生協調制御部を含む(7)項に記載の制動トルク制御装置。 (9)前記回生協調制御部が、前記摩擦係合部材をブレーキ回転体に押し付ける押付力が設定押付力に達した後に、摩擦制動トルクと回生制動トルクとの和を前記制動操作部材の操作状態関連量に基づいて決まる大きさに制御するものである(8)項に記載の制動トルク制御装置。設定押付力は、例えば、ファーストフィルが終了した場合の押付力とすることができる。予め、摩擦制動装置におけるクリアランスを小さくしておけば、その後、摩擦制動トルクを大きくする際の遅れを小さくすることができる。 (10)前記回生制動装置が、前記電動モータの回生制動により得られた電気エネルギを蓄える蓄電装置を含み、前記制動トルク増加部が、前記車両の走行速度と前記蓄電装置の蓄電余裕量との少なくとも一方に基づいて前記設定制動トルクを決定する設定制動トルク決定部を含む(8)項または(9)項に記載の制動トルク制御装置。設定制動トルクは、例えば、蓄電装置における蓄電余裕量と車両の走行速度との少なくとも一方に基づいて決めることができる。蓄電余裕量や走行速度が大きいほど大きくすることができる。車両の走行速度の代わりに電動モータの回転速度とすることができる。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である制動トルク制御装置を含む車両制動システムについて図面に基づいて説明する。本車両制動システムは、ハイブリッド車に搭載される。図1において、駆動源10が、内燃駆動装置12と電気的駆動装置14とを含む。内燃駆動装置12は、エンジン22とエンジンECU24とを含み、電気的駆動装置14は、フロント、リヤの2つの電動モータ26,28、フロント、リヤの2つの電力変換装置としてのインバータ30,32、蓄電装置34、フロント、リヤの2つのモータECU36,38、駆動切替装置40等を含む。前輪42には、エンジン22の出力トルクとフロント電動モータ26の出力トルクとの少なくとも一方が伝達され、後輪44には、リヤ電動モータ28の出力トルクが伝達される。本実施形態においては、前輪42と後輪44とにそれぞれ電動モータ26,28の駆動力が伝達されるが、エンジン22の駆動力は前輪42に伝達されて後輪44に伝達されない形式の4輪駆動車である。 【0011】前輪側において、フロント電動モータ26とエンジン22との間に駆動切替装置40が設けられ、駆動切替装置40の出力軸52が、変速機54,ディファレンシャルギア56を介してドライブシャフト58に連結される。駆動切替装置40は、出力軸52にエンジン22からの出力トルクを伝達したり、フロント電動モータ26からの出力トルクを伝達したり、両方の出力トルクを伝達したりする。駆動切替装置40は、例えば、遊星歯車装置を含むものとしたり、遊星歯車装置とクラッチとを含むものとしたりすることができる。フロント電動モータ26と蓄電装置34との間にはインバータ30が設けられており、インバータ30の制御により、フロント電動モータ26が蓄電装置34から電気エネルギが供給されて回転させられる回転駆動状態と、フロント電動モータ26から蓄電装置34に電気エネルギを充電する充電状態と、自由回転を許容する無負荷状態とに切り換えられる。インバータ30は、フロント用モータECU36からの指令に基づいて制御される。充電状態には、フロント電動モータ26の回生制動により電気エネルギが充電される状態が含まれる。この状態においては、前輪42にはフロント電動モータ26の回生制動による回生制動トルクが加えられるのであり、この意味において、電気的駆動装置14は、回生制動装置であるとすることができる。 【0012】後輪側において、リヤ電動モータ28の出力軸62がディファレンシャルギヤ64を介してドライブシャフト66に連結される。後輪44には、リヤ電動モータ28の出力トルクが伝達される。リヤ電動モータ28は、蓄電装置34との間のインバータ32の制御により、回転駆動状態と充電状態と無負荷状態とに切り換えられる。後輪44にはリヤ電動モータ28の回生制動により回生制動トルクが加えられる。このように、本実施形態においては、フロント用の電動モータ26とリヤ用の電動モータ28とが別個に制御可能とされている。そのため、前輪42と後輪44とにそれぞれ加えられる回生制動トルクを別個独立に制御することができる。 【0013】前輪42,後輪44には、回生制動トルクのみならず摩擦制動トルクとしての液圧制動トルクも加えられる。液圧制動トルクは液圧制動装置70の液圧制御アクチュエータ78の制御により制御される。液圧制動装置70は、図2に示すように、前記液圧制御アクチュエータ78と、マスタシリンダ80等を含む。マスタシリンダ80は互いに直列に配設された2つの加圧ピストン81a,bを含み、加圧ピストン81aにはブレーキペダル82が連携させられる。2つの加圧ピストン81a,bの前方がそれぞれ加圧室83,84とされる。また、2つの加圧ピストン81a,bの間、加圧ピストン81bとシリンダハウジングとの間には、それぞれリターンスプリング85,86が設けられる。 【0014】加圧室83には、液通路90を介して左前輪42のブレーキシリンダ92が接続され、加圧室84には、液通路94を介して左後輪44のブレーキシリンダ96が接続される。液通路90,94には、それぞれ、マスタ遮断弁97,98が設けられている。また、左右前輪の2つのブレーキシリンダ92は連通路100によって接続され、左右後輪の2つのブレーキシリンダ96は連通路102によって接続されている。連通路100,102には、それぞれ、連通制御弁104,105が設けられる。マスタ遮断弁97,98は、コイルに電流が供給されない間、開状態にある常開弁であり、回生協調制御が行われる場合等には、閉状態にされて、これらブレーキシリンダ92,96を加圧室83,84から遮断する。 【0015】液圧制御アクチュエータ78は、動力式液圧源としてのポンプ装置120と、各ブレーキシリンダ毎に設けられたリニアバルブ装置122,124とを含む。ポンプ装置120は、ポンプ126,ポンプ126を駆動するポンプモータ128,ポンプ126から吐出された作動液を蓄えるアキュムレータ130,アキュムレータ130に蓄えられた作動液の液圧を検出するアキュムレータ圧センサ132等を含む。ポンプモータ128は、アキュムレータ130に蓄えられた作動液が設定範囲内に保たれるように制御される。ポンプ126から吐出された作動液の液圧が過大になるとリリーフ弁134を経て低圧側へ戻される。 【0016】リニアバルブ装置122は、ポンプ装置120と前輪のブレーキシリンダ92とマスタリザーバ136との間に設けられ、リニアバルブ装置124は、ポンプ装置120と後輪のブレーキシリンダ96とマスタリザーバ136との間に設けられる。リニアバルブ装置122,124は、図3に示すように、それぞれ、増圧リニアバルブ150、減圧リニアバルブ152を含むものである。増圧リニアバルブ150は、ポンプ装置120とブレーキシリンダ92,96とを接続する液通路160に設けられ、減圧リニアバルブ152は、ブレーキシリンダ92,96とリザーバ136とを接続する液通路162に設けられる。 【0017】増圧リニアバルブ150、減圧リニアバルブ152は、常閉弁であり、弁子164と弁座165とを含むシーティング弁と、コイル166を含むソレノイド167とを含むものである。増圧リニアバルブ150においては、コイル166に電流が供給されない間は、スプリング168の弾性力F1 により弁子164が弁座165に着座させられる閉状態にあるが、コイル166に電流が供給されると、その供給電流に応じた電磁駆動力F2 が、弁子164を弁座165から離間させる方向に作用する。また、弁子164を弁座165から離間させる方向には、増圧リニアバルブ150の前後の液圧差ΔPに対応する差圧作用力F3 も作用する。 【0018】したがって、コイル166に電流が供給された状態においては、弁子164の弁座165に対する相対位置が、これらスプリング168の弾性力F1 ,電磁駆動力F2 ,差圧作用力F3 の関係によって決まる。この場合においてスプリング168の弾性力F1 がほぼ一定であると見なせば、電磁駆動力(コイル166への供給電流)の制御により、差圧作用力を制御することができるのであり、増圧リニアバルブ150におけるブレーキシリンダ側の液圧と調圧部側の液圧との差を制御することができる。本実施形態においては、ブレーキシリンダ側の液圧が、後述する要求液圧制動トルクに対応する目標液圧と同じ大きさになるように、コイル166への供給電流が制御される。 【0019】減圧リニアバルブ152についても構造は同じであるが、減圧リニアバルブ152は、ブレーキシリンダ92,96とリザーバ136とを接続する液通路162の途中に設けられている。また、減圧リニアバルブ152においては、ブレーキシリンダ側の液圧とリザーバ側の液圧との差に応じた差圧作用力F3 が作用するが、減圧用リザーバ側の液圧はほぼ大気圧であるため、これらの液圧差ΔPはブレーキシリンダ側の液圧と同じ大きさになる。 【0020】液通路94には、シミュレータ装置170が設けられる。シミュレータ装置170は、ストロークシミュレータ172とシミュレータ制御弁174とを含む。シミュレータ制御弁174は、電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁であり、電気系統の異常時等に、液通路94からストロークシミュレータ172を遮断する。 【0021】また、本実施形態においては、ブレーキシリンダの液圧を検出するブレーキシリンダ圧センサ220がブレーキシリンダ毎に設けられ、液通路160のポンプ装置120と増圧リニアバルブ150との間に出力液圧センサ222が設けられる。出力液圧センサ222による検出液圧とアキュムレータ圧センサ132による検出液圧とでは、液通路160のこれらの間の部分における圧力損失の分だけ異なることになり、増圧リニアバルブ150の前後の差圧は出力液圧センサ222による検出液圧とブレーキシリンダ圧センサ220による検出液圧との差として求められる。アキュムレータ圧センサ132による検出液圧を利用するより、増圧リニアバルブ150の制御精度を向上させることができる。減圧リニアバルブ152の前後の差圧は、ブレーキシリンダ液圧と同じになるため、ブレーキシリンダ圧センサ220による検出液圧とされる。 【0022】さらに、ストロークセンサ224、ブレーキスイッチ225が設けられ、ブレーキペダル82の操作関連量が検出される。ストロークセンサ224は、ブレーキペダル82の操作ストロークを検出するものであり、ブレーキスイッチ225は、ブレーキペダル82が非操作状態にある場合と操作状態ある場合とで状態が切り換わるものである。ブレーキペダルには遊びがあるのが普通であり、ブレーキペダル82が運転者によって操作されると直ちにブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換わるのではなく、ブレーキペダル82の操作力が設定操作力(第2設定操作関連量の一例である)を越えると切り換わる。すなわち、ブレーキペダル82にはリターンスプリングが設けられているのが普通であり、ブレーキペダル82に加えられる操作力がそのリターンスプリングのセット荷重を越えると、操作力の増加に伴ってストロークが増加させられる。操作力が設定操作力に達し、操作ストロークが設定ストロークに達すると、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換わるのである。 【0023】また、液通路90,94のマスタ遮断弁97,98よりマスタシリンダ側には、マスタ圧センサ226,228が設けられる。マスタ圧センサ226,228によって加圧室82,84の液圧がそれぞれ検出される。さらに、各車輪42,44の回転速度は、車輪速度センサ230によって検出される。 【0024】液圧制動装置70は、ブレーキECU250の指令に基づいて制御される。ブレーキECU250は、図示しないが、CPU,ROM,RAM,入・出力インタフェイス等を含むコンピュータを含むものである。ブレーキECU250の入・出力部には、前述のアキュムレータ圧センサ132、ブレーキシリンダ圧センサ220、出力液圧センサ222、ストロークセンサ224、ブレーキスイッチ225、マスタ圧センサ226,228、各車輪42,44の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速センサ230等が接続されるとともに、リニアバルブ装置122,124のコイル166、ポンプモータ126、各電磁開閉弁97,98,104,105のコイル等が図示しない駆動回路を介して接続されている。運転者の意図する要求総制動トルクは、マスタ圧センサ226,228,ストロークセンサ224の少なくとも一方の検出値に基づいて取得することができる。本実施形態においては、要求総制動トルクが、ブレーキペダル82の操作ストロークと操作力に対応するマスタ圧との両方に基づいて取得される。なお、要求総制動トルクは、ブレーキペダル82の操作力を検出する操作力センサを設け、操作力センサによる検出値に基づいて求められるようにすることができる。 【0025】また、当該車両制動システムには、ブレーキECU250に加えて、フロント、リヤのモータECU36,38、エンジンECU24、ハイブリッドECU260等の複数のコンピュータを主体とするECUが設けられている。ハイブリッドECU260の入力部には、蓄電装置34の状態を検出する電源状態検出装置262、図示しないアクセルペダルの操作状態を検出するアクセルスイッチ264、駆動伝達装置の状態を表すシフト位置を検出するシフト位置センサ266等が接続されている。電源状態検出装置262は、蓄電装置34の充電状態を検出する検出部と、蓄電装置34の電圧や温度を検出する検出部とを含む。これら検出部によって検出された蓄電装置34における充電状態、電圧、温度等によって、蓄電装置34に蓄電可能な蓄電余裕量が求められる。この蓄電余裕量に基づけば、蓄電装置34の状態で決まる出力可能な回生制動トルクの上限値(蓄電側上限値)を求めることができる。アクセルペダルの操作状態は、スロットル開度に基づいて検出することができるため、アクセルスイッチはスロットルスイッチとすることができる。また、アクセルスイッチの代わりに、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ等とすることもできる。前述のハイブリッドECU260、フロント,リヤのモータECU36,38、エンジンECU24、ブレーキECU250の間においては互いに情報が供給される。これら各ECUの間において、情報を要求する情報要求信号が出力されると、それに応じてその情報の内容を表す情報が供給されることによって情報の通信が行われる場合や、これら情報がそれぞれのECUの入出力部におけるメモリに格納され、適宜、読み取り可能な状態にされる場合がある。 【0026】以上のように構成された車両制動システムにおける作動について説明する。通常制動時においては回生協調制御が行われる。ブレーキECU250において、運転者が所望する要求総制動トルク(運転者の意図に応じて決まる操作側上限値あるいは運転者側上限値)Bref が演算により求められ、予め定められた目標前後制動力配分に従って、前輪側の要求制動トルクBFref、後輪側の要求制動トルクBRrefが求められる。そして、これら前輪側、後輪側の要求制動トルクBFref,BRref を表す情報がハイブリッドECU260に供給される。ハイブリットECU260においては、フロント、リヤのモータECU36,38からそれぞれ供給されたフロント、リヤの電動モータ26,28の作動状態を表す情報に基づいて電動モータの状態によって決まる出力可能な回生制動トルクの上限値であるモータ側上限値が求められ、蓄電装置34の充電状態、電圧、温度等に基づいて前述の蓄電側上限値が求められる。これらモータ側上限値、蓄電側上限値および操作側上限値のうちの最小値を前輪、後輪要求回生制動トルクとする。そして、これら前輪、後輪要求回生制動トルクを表す情報をフロント,リヤのモータECU36,38にそれぞれ出力する。 【0027】モータECU36,38は、ハイブリッドECU260から供給された情報が表す前輪、後輪要求回生制動トルクの回生制動トルクが得られるように、インバータ30,32をそれぞれ制御する。フロント、リヤの電動モータ26,28は、インバータ30,32の制御によりそれぞれ制御される。前輪42,後輪44にはそれぞれ回生制動トルクが加えられる。また、電動モータ26,28の実際の回転数等の作動状態がモータ作動状態検出装置270,272によって検出される。モータECU36,38において、電動モータ26,28の作動状態に基づいて前輪42,後輪44にそれぞれ加えられる実際の回生制動トルクBFm,BRm が求められ、これら実回生制動トルクBFm,BRm を表す情報がハイブリッドECU260に供給される。ハイブリッドECU260は、実回生制動トルクBFm,BRm を表す情報をブレーキECU250に出力する。 【0028】ブレーキECU250においては、フロント、リヤの要求制動トルクBFref,BRref から実回生制動トルクBFm,BRm をそれぞれ引いた値(BFref −BFm),(BRref −BRm)に基づいて要求液圧制動トルクBHFref,BHRrefが求められ、要求液圧制動トルクBHFref,BHRrefに対応する目標液圧PFref PRrefが実現されるように、リニアバルブ装置122,124への供給電流が決定される。液圧制動装置70においては、マスタ遮断弁97,98が閉状態にされた状態で、リニアバルブ装置122,124への供給電流が制御されることによって、ブレーキシリンダ92,96の液圧が制御される。ブレーキシリンダ92,96の液圧に応じた押付力によって、車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦係合部材が押し付けられ、摩擦制動トルクとしての液圧制動トルクが左右前輪42、左右後輪44に加えられる。要求液圧制動トルクBHFref,BHRrefが正の場合には、実回生制動トルクでは不足であるため、液圧制動トルクが加えられるのであるが、0以下の場合には、運転者の要求が満たされるため、液圧制動トルクが加えられることはないのであり、リニアバルブ装置122,124の制御が行われることはない。車輪42,44には、液圧制動トルクと回生制動トルクとの少なくとも一方が加えられるのであり、これらの和がブレーキペダル82の操作状態に応じて決まる大きさに制御される。この制御が回生協調制御である。また、回生制動機構や電気系統の異常時には、電流が供給されなくなることにより各電磁制御弁は図示する原位置に戻される。マスタ遮断弁97,98および連通制御弁104,105が開状態に切り換えられる。ブレーキペダル82が踏み込まれると、マスタシリンダ14に液圧が発生させられ、その液圧がブレーキブレーキシリンダ92,96に伝達され、車輪42,44の回転が抑制される。 【0029】なお、上述の要求回生制動トルクはブレーキECU250において決定されるようにすることもできる。この場合には、モータ側上限値、蓄電側上限値を表す情報が、ハイブリッドECU260からブレーキECU250に供給され、その情報に基づいて要求回生制動トルクが決定され、要求回生制動トルクを表す情報がハイブリッドECU260に供給されて、モータECU36,38に供給されることになる。 【0030】ブレーキECU250の記憶部(例えば、ROM)には、図4のフローチャートで表される回生協調制御プログラム等が格納され、ハイブリッドECU260の記憶部(例えば、ROM)には、図5のフローチャートで表される回生制動トルク制御プログラム等が格納される。 【0031】ハイブリッドECU260においては、回生制動トルク制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、単に、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、アクセルスイッチ264がON状態にあるかOFF状態にあるかが判定される。ON状態にある場合には駆動トルクの制御が行われる。アクセルスイッチ264がOFF状態にある場合には、シフト位置、車両の走行速度等に基づいて回生制動トルクの目標値BEが求められる。この目標値BEは、いわゆる、エンジンブレーキに相当する大きさとされる。S3において、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換わったか否かが検出される。前述のように、ハイブリッドECU260からブレーキECU250にブレーキスイッチ225の状態を表す情報を要求する情報要求信号が供給され、その情報要求信号に応じてブレーキECU250からハイブリッドECU260に、ブレーキスイッチ225の状態を表す情報が供給される場合、ブレーキECU250とハイブリッドECU260との少なくとも一方の入出力部のメモリにブレーキスイッチ225の状態を表す情報がハイブリッドECU260によって読みとり可能な状態で書き込まれる場合等がある。 【0032】いずれにしても、S3における判定がNOの場合には、S4において、さらに、ブレーキスイッチ225がOFF状態にあるかどうかが検出される。OFF状態にある場合には、前述のS2において求められた目標値BEが回生制動トルクの目標値BFrefとされて、その目標値BFrefを表す情報がフロントモータECU36に出力される。フロントモータECU36はインバータ30の制御により、前輪42に加えられる実際の回生制動トルクが目標回生制動トルクBFrefとなるように制御される。アクセルペダルの操作が解除された状態においては、回生制動トルクがエンジンブレーキ相当の大きさに制御されるのであり、あたかも、エンジンブレーキが作動させられるようなフィーリングが得られる。また、回生制動トルクが加えられることによって、エネルギ回収効率を向上させることができる。 【0033】ブレーキペダル82が操作されて、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換えられると、S3の判定がYESとなって、S7、8が実行される。回生制動トルクの増加量である設定制動トルクΔBEが蓄電装置34の蓄電余裕量や車両の走行速度等に基づいて決定され、前述のエンジンブレーキ相当の大きさに設定制動トルクを加えた値(BE+ΔBE)が回生制動トルクの目標値BErefとされる。そして、前述の場合と同様に、S6において、目標値を表す情報がフロントモータECU36に出力される。車両の走行速度は、例えば、各車輪42,44の回転速度に基づいて取得することができる。なお、ブレーキスイッチ225がON状態に切り換わった時点において、回生制動トルクは、目標値に達するまで漸増させても、急増させてもよい。また、増加勾配の制御が行われるようにしても増加勾配の制御自体が行われないようにしてもよい。漸増させれば、運転者の違和感を小さくすることができる。逆に、急増(例えば、通常の運転者のブレーキペダル82の操作状態に基づいて増加させるより大きな勾配で増加)させれば、回生制動トルクをより早期に増加させることができる。ブレーキスイッチ225のON状態においては、S4における判定がNOとなって、S9において、ブレーキシリンダの液圧が設定圧P0以下であるか否かが判定される。設定圧P0以下である場合には、S6において、回生制動トルクの目標値BEref(BE+ΔBE)を表す情報がフロントモータECU36に出力される。ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換わってからブレーキシリンダの液圧が設定圧P0に達するまでは、回生制動トルクが一定の大きさ(BE+ΔBE)に保持されるのである。ブレーキシリンダの液圧が設定圧P0を越えると、S9における判定がYESとなって、S10以降において回生協調制御が行われる。回生協調制御については、ブレーキECU250における制御と合わせて説明する。 【0034】なお、本実施形態においては、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換えられてからブレーキシリンダの液圧が設定圧に達するまでは、回生制動トルクが一定の大きさに保持されるようにされていたが、それに限らない。ブレーキシリンダの液圧が設定圧P0とは異なる大きさの設定圧を越えるまで保持されるようにしてもよい。また、一定の大きさに保持されることも不可欠ではない。この間においても、蓄電装置34の状態とフロント電動モータ26の状態との少なくとも一方に基づいて決まる大きさに制御されるようにしてもよい。この場合には、ブレーキスイッチ225がON状態にあって、かつ、ブレーキシリンダの液圧が設定圧P0より小さい場合に、S7,8,6が実行され、ブレーキシリンダの液圧が設定圧P0を越えた場合に、S10以降が実行されるようにする。 【0035】ブレーキECU250において、回生協調制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。S51において、ブレーキスイッチ225がON状態にあるかOFF状態にあるかが検出される。OFF状態にある場合には、S52以降が実行されることはない。ON状態にある場合には、S52において、ブレーキシリンダの液圧が設定ブレーキ液圧以上であるかどうかが判定される。本実施形態においては、ブレーキシリンダの液圧が設定ブレーキ液圧に達する以前においては、液圧制動装置70において、各電磁制御弁が図示する原位置にある。ブレーキペダル82の操作に伴ってマスタシリンダ80の加圧室83,84に液圧が発生させられ、その液圧がブレーキシリンダ92,96に供給される。ブレーキシリンダ92,96に作動液が供給されることにより、ブレーキ回転体と摩擦係合部材との間のクリアランスが小さくされる。それによって、後に摩擦制動トルクが加えられる場合の、効き遅れを小さくすることができる。設定ブレーキ液圧は、例えば、ファーストフィルが終了した場合の大きさとすることができる。 【0036】ブレーキシリンダ92,96の液圧が設定ブレーキ液圧に達すると、S52における判定がNOとなって、S53以降が実行される。S53、54において、マスタ圧とブレーキペダル82の操作ストロークとに基づいて運転者の要求総制動トルクBrefが求められ、前後制動力配分線に従って、フロント要求制動トルクBFref、リヤ要求制動トルクBRrefが求められる。S55において、これらフロント要求制動トルクBFref、リヤ要求制動トルクBRrefを表す情報がハイブリッドECU260に出力される。ハイブリッドECU260において、S10において、これらフロント要求制動トルクBFref、リヤ要求制動トルクBRrefが読み込まれ、S11において、蓄電装置34の蓄電余裕量、フロント、リヤのモータ26,28の回転数等の作動状態が検出され、S12において、これらに基づいて回生制動トルクの目標値BFmref、BRmrefが求められる。この回生制動トルクの目標値BFmref、BRmrefを表す情報は、S13、14において、それぞれフロントモータECU36,リヤモータECU38に出力される。また、S15において、インバータ30,32の状態に基づいてフロント、リヤのモータ26,28の作動状態を検出し、それに基づいて実際に加えられた実回生制動トルクBFm、BRmが求められて、これらを表す情報がブレーキECU250に出力される。 【0037】ブレーキECU250においては、S56において、実回生制動トルクBFm、BRmが読み込まれ、S57において、要求制動トルクBFref、BRrefから実回生制動トルクBFm、BRmを引いた値に基づいて要求液圧制動トルクBHFref、BHRrefが求められ、S58において、要求液圧制御トルクBHFref、BHRrefが得られるためのブレーキシリンダの目標値PFref、PRrefが求められる。そして、S59において、マスタ遮断弁97,98が遮断状態に切り換えられた状態において、リニアバルブ装置122,124が制御されて、ブレーキシリンダの液圧が目標値にされる。前輪42,後輪44には、それぞれ、回生制動トルクと液圧制動トルクとが加えられるのであり、これらの和が運転者の要求する要求制動トルクに対応する大きさに制御される。 【0038】図6に示すように、アクセルペダルの操作が解除されると、エンジンブレーキ相当の回生制動トルクが前輪42に加えられる。そして、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換えられると、回生制動トルクが設定制動トルクだけ大きくされる。そして、この大きさが保持される。ブレーキスイッチ225は、前述のように、ブレーキペダル82の操作が行われると、直ちにOFF状態からON状態に切りかわるわけではなく、操作力が第2設定操作力(リターンスプリングのセット荷重と越えて、ストロークが設定ストロークに達した場合の操作力)に達すると切り換わる。また、ブレーキスイッチ225がON状態に切り換わると、マスタシリンダ80の加圧室83,84に直ちに液圧が発生させられるのではなく、さらに第1設定操作力以上になると発生させられる。ブレーキペダル82に加えられる操作力がリターンスプリング85,86のセット荷重より小さい領域においては、操作力が増加しても操作ストロークが増加することはないのであり、加圧室83,84に液圧が発生させられることがない。ブレーキペダル82に加えられる操作力が、ブレーキペダルに設けられたリターンスプリングのセット荷重とリターンスプリング85,86のセット荷重との和を越えると、操作力の増加に伴って加圧ピストン81a,bが前進させられて、加圧室83,84に液圧が発生させられるのである。 【0039】この状態においては、マスタ遮断弁97,98が開状態にある。マスタシリンダ80の加圧室83,84の液圧がブレーキシリンダ92,96に供給される。ブレーキシリンダ92,96に液圧が供給されると、摩擦係合部材がブレーキ回転体に近づけられ、クリアランスが小さくされる。本実施形態においては、ブレーキシリンダ92,96の液圧がファーストフィルが終了した場合の押付力に対応する液圧が設定ブレーキ液圧P0に達するまで増加させられる。ブレーキシリンダ92,96の液圧が設定ブレーキ液圧P0に達すると、マスタ遮断弁97,98が閉状態に切り換えられる。車輪に加えられる液圧制動トルクと回生制動トルクとの和が運転者の要求する制動トルクになるように、可及的に回生制動トルクが増加させられる。本実施形態においては、ブレーキスイッチ225がON状態になってから回生制動トルクがエンジンブレーキに相当する制動トルクと設定制動トルクとの和の大きさに保持されている。そして、その大きさから、原則として、運転者の要求制動トルクを満たし得る大きさに制御される。このように、回生制動トルクがブレーキスイッチ225がON状態に切り換わった場合に予め増加させられているため、制動トルクが比較的小さい領域における回生制動トルクの比率を高くすることができ、エネルギ回収効率を向上させることができる。 【0040】以上のように、本実施形態においては、液圧制動装置70が第1制動装置であり、回生制動装置14が第2制動装置である。また、ハイブリッドECU260、ブレーキECU250、フロント、リヤのモータECU36,38,インバータ30,32、液圧制御アクチュエータ78等により制動トルク制御装置が構成され、制動トルク制御装置のうちの、回生制動トルク制御プログラムのS3、6〜8を記憶する部分、実行する部分等により制動トルク増加部が構成される。また、S9,6を記憶する部分、実行する部分等により、制動トルク保持部が構成される。さらに、S7を記憶する部分、実行する部分等により設定制動トルク決定部が構成される。 【0041】なお、上記実施形態においては、アクセルペダルの操作が解除された場合に、エンジンブレーキ相当の回生制動トルクが加えられるようにされていたが、エンジン22の作動によって加えられるようにすることもできる。その場合には、回生制動トルクが、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換えられた場合に加えられることになる。また、エンジンブレーキ相当の回生制動トルクは、前輪42と後輪44との両方に加えられるようにすることもできる。同様に、ブレーキスイッチ225がOFF状態からON状態に切り換えられた場合にも、前輪42,後輪44にそれぞれ回生制動トルクが設定制動トルクだけ増加させられるようにすることができる。 【0042】さらに、ブレーキ操作開始当初に摩擦制動トルクが加えられることは不可欠ではない。ブレーキ操作開始時またはマスタシリンダ80に液圧が発生させられた時から、運転者による要求制動トルクを満たし得るように回生制動トルクが加えられるようにすることもできる。このようにすれば、車輪に加えられる制動トルクのうちの回生制動トルクの比率を高くすることができ、エネルギ回収効率を向上させることができる。また、前後制動力配分制御が行われることは不可欠ではない。さらに、4輪駆動車に適用されることも不可欠ではなく、駆動輪が前輪または後輪のいずれかである車両に適用することもできる。すなわち、前輪に回生制動トルクと摩擦制動トルクとの両方が加えられて後輪に摩擦制動トルクのみが加えられる場合、後輪に回生制動トルクと摩擦制動トルクとの両方が加えられて前輪に摩擦制動トルクのみが加えられる場合等にも適用することができる。さらに、ハイブリッド車に限らず、駆動源として電動モータを含み、内燃機関を含まない車両に適用したり、駆動源として内燃機関を含み電動モータを含まない車両に適用したりすることができる。 【0043】また、液圧制動装置は、上記実施形態におけるそれに限らない。例えば、図2の液圧制動装置70においてマスタシリンダをハイドロブースタ付きマスタシリンダとしたり、バキュームブースタ等を別個設けたりすることができる。さらに、液圧制動装置の代わりに、電動モータの押圧力により摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられる電動制動装置とすることもできる。また、回生制動トルクが加えられない車両制動システムに適用することもできる。本実施形態における液圧制動装置70においては、ポンプ装置120の作動により、運転者によってブレーキペダル82が操作されない状態において、液圧制動トルクを加えることもできる。エンジンブレーキが加えられる状態において、さらに、ポンプ装置120の制御により、動力式の制動トルクを加えることができるのであり、その分、運転者によるブレーキ操作に起因する制動力の比率を小さくすることができ、運転者の操作負担を軽減することができる。その他、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項について記載した態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を施した態様で実施することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
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| 【出願日】 |
平成14年3月25日(2002.3.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100079669 【弁理士】 【氏名又は名称】神戸 典和
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| 【公開番号】 |
特開2003−284202(P2003−284202A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月3日(2003.10.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−83411(P2002−83411) |
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