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【発明の名称】 自動運転軌道車輌、及び、軌道車輌の自動運転方法
【発明者】 【氏名】丹羽 英臣
【住所又は居所】広島県三原市糸崎町5007番地 三菱重工業株式会社三原機械・交通システム工場内

【氏名】東 伸一
【住所又は居所】広島県三原市糸崎町5007番地 三菱重工業株式会社紙・印刷機械事業部内

【氏名】田中 豊
【住所又は居所】東京都渋谷区代々木二丁目二番二号 東日本旅客鉄道株式会社内

【氏名】佐々木 敦
【住所又は居所】東京都渋谷区代々木二丁目二番二号 東日本旅客鉄道株式会社内

【要約】 【課題】滑りの存否とその程度に係わらず自動運転を可能にすること、及び、マーカー数を削減して鉄道敷設コストを削減すること。

【解決手段】車輪3を備える車体5と、車体5に搭載され前記車輪の回転数を検出する回転数検出器1と、車体5に搭載され軌道側に配置される複数のマーカー6に対する物理的相互作用に基づいてマーカー6の存在を検出するマーカー存在検出器4と、車体5に搭載され車体5の速度情報V’(X’)を有する運行パターンを保持する保持ユニット7と、車体5に搭載され回転数に基づいて車体5の演算位置座標Xを計算する計算ユニット7と、車体5に搭載され演算位置座標Xと速度情報V’(X’)とに基づく演算速度V(X)を車体5に与える運転ユニット14とから構成されている。速度情報V’(X’)は、絶対位置座標X’の関数であり、運行パターンはマーカー6の絶対位置座標に基づいて規定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車輌本体と、前記車輌本体を軌道に支持する車輪と、前記車輌本体に搭載され、軌道側に配置される複数のマーカーの絶対位置を検出する検出ユニットと、前記車輌本体に搭載され、前記検出ユニットにより検出された絶対位置に対して前記車輌本体の走行距離を演算して演算位置を求める演算ユニットと、前記絶対位置と前記演算位置との差分に基づいて前記車輌本体の運転を制御する制御ユニットとを含む自動運転軌道車輌。
【請求項2】前記演算ユニットは、前記車輪の回転数に基づいて前記演算位置を演算する請求項1の自動運転軌道車輌。
【請求項3】前記制御ユニットは、前記差分が設定された許容範囲にあれば、前記差分を零にリセットする請求項1又は2の自動運転軌道車輌。
【請求項4】前記制御ユニットは、前記差分が設定された許容範囲になければ、異常信号を出力する請求項1〜3から選択される1請求項の自動運転軌道車輌。
【請求項5】前記演算ユニットは複数が前記車輌本体に搭載され、前記制御ユニットは、前記複数の前記演算ユニットによりそれぞれに求められる複数の演算位置に基づいて複数の差分が計算され、前記複数の差分のそれぞれの絶対値のうちの最小値が許容範囲に入っていなければ、異常信号を出力する請求項1又は2の自動運転軌道車輌。
【請求項6】前記車輪の回転数は、複数の回転数が検出され、前記複数の回転数に基づいて、前記差分は複数が求められ、前記制御ユニットは、前記複数の差分のそれぞれの絶対値のうちの最小値が許容範囲に入っていなければ、異常信号を出力する請求項2の自動運転軌道車輌。
【請求項7】前記複数の回転数は、それぞれに複数の車軸に対応する請求項6の自動運転軌道車輌。
【請求項8】軌道に沿って配置されるマーカーの絶対位置を検出するステップと、前記絶対位置と車輌の位置との間の走行距離を演算するステップと、前記走行距離に基づいて前記車輌の運動を制御するステップとを含む軌道車輌の自動運転方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動運転軌道車輌、及び、軌道車輌の自動運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】車輌は、その自動運転が望まれている。その自動運転の実現のためには、線長制御が不可欠である。図14は、公知の自動運転システムを示している。車輪101に支持される車体には、位置検出器102と、自動運転ユニット103と、出力ユニット104と、駆動・制動ユニット105とが配備されている。位置検出器102は、車輪101の車軸に同期的に軸結合しているパルスジェネレータが好適に用いられている。自動運転ユニット103の演算部分は、位置検出器102が出力する車輪の回転数に基づいて計算される車輌走行距離である車輌演算走行距離と、車輪の単位時間当たりの回転数に基づいて計算される車輌速度である車輌演算速度と、車輌演算走行距離に基づいて計算する車輌位置である車輌演算位置とを求める。自動運転ユニット103の記憶部分は、車輌絶対位置に対応した目標車輌速度を記憶している。自動運転ユニット103の制御部分は、求められた車輌演算位置に対応する目標車輌速度と車輌演算速度とを比較して、両速度の過不足に対応した加速走行、定速走行、制動の出力指令106を出力する。出力ユニット104は、出力指令106に基づいて駆動・制動ユニット105を介して、加速走行、定速走行、制動を実行する。
【0003】このような自動運転制御は、車輪101と走行路107の間に滑りが全くない場合、又は、それらの間にある滑りが無視され得る程度に小さい場合に限られて有効である。近年の車輌の輸送力のますますの増大は、正負の加速度の増大を必要化している。このような増大傾向によれば、車輪と走行路の間の滑りは無視され得ない。車輌演算位置と車輌が現実に存在する絶対位置との誤差が無視され得ない程度に滑りが発生すれば、自動運転制御を実行することができない。
【0004】滑りの存否とその程度に係わらず自動運転を可能にする技術の確立が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、滑りの存否とその程度に係わらず自動運転を可能にする技術を確立することができる自動運転軌道車輌、及び、軌道車輌の自動運転方法を提供することにある。本発明の他の課題は、更に、マーカー数を削減して鉄道敷設コストを削減することができる自動運転軌道車輌、及び、軌道車輌の自動運転方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中に現れる技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複数・形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現されている技術的事項に付せられている参照番号、参照記号等に一致している。このような参照番号、参照記号は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このような対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されることを意味しない。
【0007】本発明による自動運転軌道車輌は、車輌本体(5)と、車輌本体(5)を軌道(2)に支持する車輪(3)と、車輌本体(5)に搭載され、軌道側に配置される複数のマーカー(6)の絶対位置を検出する検出ユニット(1)と、車輌本体(5)に搭載され、検出ユニット(1)により検出された絶対位置に対して車輌本体(5)の走行距離を演算して演算位置を求める演算ユニット(7)と、絶対位置と演算位置との差分に基づいて車輌本体(5)の運転を制御する制御ユニット(14)とから構成されている。車輌側の演算精度とマーカーの位置検出による絶対精度とが調和し、マーカーを無数に設けることなく、車輌側の演算精度の範囲内、特に、滑りに起因する精度の劣化の範囲で、実用的に十分に高精度である自動運転が可能になる。
【0008】複数のマーカー(6)に対応して検出した複数の絶対位置は、それぞれに、運転制御のために厳密である運転制御情報になる。検出される複数の絶対位置のそれぞれの間の区間の任意の位置は、演算により求められる。その演算により得られる任意の演算位置は、滑りのような物理的要因により、その演算位置に対応する任意の絶対位置と厳密には一致しない。しかし、その任意の演算位置では、絶対位置は知られ得ない。検出される絶対位置でない任意の位置では、演算位置に基づいて運転制御が行われ得る。計算の起点は、過去に通り過ぎた複数のマーカーのうち任意のマーカーに対応する絶対位置であり、その絶対位置と演算位置との差分に基づいて、運転制御が実行される。計算の起点として、最近に通り過ぎたマーカーの絶対位置が採用されるとは限らない。検出される全ての絶対位置が計算起点であり得る。検出される複数の絶対位置のうちの少なくとも1つは、計算起点として採用されるので、仮に1つのマーカーについて仮に検出ミスがあっても、運転制御の安全性は確実に保存される。
【0009】演算ユニット(7)は、車輪(3)の回転数に基づいて演算位置を演算する。車輪(3)と軌道(2)の間には、滑りのような物理的原因により、演算位置が絶対位置に厳密に一致するとは限らないが、既述の通りに、運転の安全性は確保されている。
【0010】制御ユニット(14)は、既述の差分が設定された許容範囲にあれば、差分を零にリセットすることが重要である。この差分は、マーカーが存在しそのマーカーの絶対位置を検出したことを条件として計算される。検出ミスがあれば、次のマーカーの絶対位置とその絶対位置に対応する演算位置とに基づいて、その差分が計算される。このようなリセットが実行される基準になっているマーカーの絶対位置は、新たに計算起点として採用され得る。
【0011】制御ユニット(14)は、その差分が設定された許容範囲になければ、異常信号を出力する。ここで、異常信号は、車輌の停止信号、運転士に対する警報、中央制御室に対する通報のような信号であり、差分許容範囲外信号である。
【0012】演算ユニット(7)は、複数が車輌本体(5)に搭載されることが、制御の自由度をより高くすることができる点で好ましい。制御ユニット(14)は、複数の演算ユニット(7)によりそれぞれに求められる複数の演算位置に基づいて複数の差分がが計算される。その複数の差分のそれぞれの絶対値のうちの最小値が許容範囲に入っていなければ、既述の異常信号を出力する。このような異常性判断は、多数決原理によるのではなく、もともと高信頼性がある検出・計算の技術に基づいている。
【0013】車輪(3)の回転数は、複数の回転数が検出され、複数の回転数に基づいて、差分は複数が求められる。制御ユニット(14)は、複数の差分のそれぞれの絶対値のうちの最小値が許容範囲に入っていなければ、異常信号を出力する。複数の回転数は、それぞれに複数の車軸に対応することが好ましい。滑りの大小は、滑りが少ないことの方がより現実的である。
【0014】
【発明の実施の形態】図に対応して、本発明による自動運転軌道車輌の実施の形態は、絶対位置検知器が車輪回転数対応位置検知器ととも配備されている。その車輪回転数対応位置検知器1は、図1に示されるように、走行路2に摩擦接触する車輪3の回転角度位置を検出する機器であり、周知のパルスジェネレータが好適に例示される。パルスジェネレータの回転軸は、車輪3の車軸に同軸に又は同期連動的に軸結合している。
【0015】絶対位置検知器4が、車輌の車体5の適正部位に配置されている。走行路2の側で、特に、走行路面上にマーカー6が適正間隔で走行線上に配置されている。絶対位置検知器4は、マーカー6に電気的に、磁気的に、又は、電磁気的に感応してその位置を高精度に且つ高速に検出することができる周知の近接センサーである。その検知の内容は、マーカー6の存在とマーカー6に固有である固有番号のようなデータである。
【0016】車体5には、自動運転ユニット7と監視ユニット8とが配備されている。車輪回転数対応位置検知器1が出力する回転角度位置信号9と絶対位置検知器4が出力する絶対位置信号11とは、自動運転ユニット7と監視ユニット8とに入力される。自動運転ユニット7は、回転角度位置信号9に基づいて車輌演算走行距離Dを求める。更に、車輌走行演算距離Dに基づいて、車輌演算位置(座標)Xを演算により求める。基準位置座標がX0であれば、X=X0+D【0017】ここで、基準位置座標は、通過済みであり且つその存在とその絶対位置が検出されている複数のマーカーの全て、任意の複数のマーカー、その複数のマーカーのうちの1つの絶対位置が採択され得る。
【0018】監視ユニット8は、自動運転ユニット7と同じく、独自に車輌演算位置X−1を求める。車体5は、更に、位置照査ユニット13と出力ユニット14とを備えている。位置照査ユニット13は、出力ユニット14に接続している。自動運転ユニット7は、監視ユニット8とともに位置照査ユニット13に接続している。自動運転ユニット7は、車輌演算位置を位置照査ユニット13に対して出力し、監視ユニット8は車輌演算位置を位置照査ユニット13に対して出力する。位置照査ユニット13は、車輌演算位置Xと車輌演算位置X−1とを比較して、車輌演算位置Xと車輌演算位置X−1の差が許容範囲内にあれば、出力ユニット14に誤差範囲の情報を転送する。位置照査ユニット13は、車輌演算位置Xと車輌演算位置X−1の差が許容範囲内になければ、出力ユニット14に誤差範囲外の情報を転送する。出力ユニット14は、その差が誤差範囲内のときは、自動運転ユニット7から受信する運転制御指令12をそのまま駆動・制動ユニット22に出力する。出力ユニット14は、その差が誤差範囲外であれば、緊急停止指令のような異常信号を駆動・制動ユニット22に出力する。
【0019】マーカー6は、一定区間毎に配置されるだけでなく、図2に示されるように、出発点A又はその近辺の位置と、到着点B,C又はその近辺の位置で密に走行路面に配置され、又は、定速走行区間の開始点と定速走行区間の終了点に配置される。路線の始点付近とそれの終点付近のような細かい停止精度が必要である速度制御精細区間では、複数のマーカー6がより短い間隔で配置されることが好ましい。マーカー6の配置数と配置間隔は、路線条件(例示:路線長さ)と運転条件(例示:加速度・減速度の大きさに基づく滑りの多寡)に従って増減されて規定されればより好ましい。
【0020】図2に示されるように、加速度と一定速度とがそれぞれに規定された複数運転区間がプログラマブルに設定されている。適正加速度は、計算により求められ得るから、加速度の規定は必ずしも必要ではない。各運転設定区間で、車輌絶対位置X’に対応して目標車輌速度V’(X’)がプログラマブルに規定されている。加速区間17では、目標車輌速度V’(X’)まで車輌演算速度V(X)を上昇させるための加速指令12が出力ユニット14に送信される。加速指令12は、時々刻々の速度指令に等価である。車輌演算速度V(X)は、運行パターンであるV’(X)として求められ、V’(X’)に一致しない。加速により車輪3と走行路2との間に滑りが生じて、実車輌速度は、図3の破線曲線で示されるように、目標車輌速度V’(X’)に更に絡みつくように推移する。滑りは、電気モータ、ディーゼルエンジン発電機に付属するトルクコンバータのような原動機出力に基づく加速、減速により生じ、更に、下り坂、上り坂で重力作用により生じ、実車輌速度は車輌演算速度V(X)より大きく、又は、小さい。車輌演算速度V(X)は、時々刻々に計算され、車輌は時々刻々に加速され減速されるので、滑りは、定速走行区間18でも生じている。制動区間19では、図4に示されるように、加速区間の現象と逆の現象が生じて、実車輌速度は車輌演算速度V(X)を上回ることがある。
【0021】(実車輌速度−車輌演算速度)の積分である斜線図示部分の面積は、車輪回転数対応位置検知器1が出力する信号に基づいて演算された車輌演算距離と実際に車輌が走行した実走行距離との差(=車輌演算走行距離−実走行距離)としての誤差(積分線長誤差)に対応している。このような誤差は、マーカー6が存在する絶対位置点に到達するまでは、明らかではない。絶対位置検出器4がマーカー6が存在する絶対位置に到達したときに、自動運転ユニット7と監視ユニット8とでそれぞれに独立に計算されていた車輌演算位置Xと車輌演算位置X−1は、車輌絶対位置X’に補正される。その補正の後にも、車輌演算位置Xと車輌演算位置X−1は、位置照査ユニット13に出力され、誤差範囲内か、誤差範囲外であるかの判断結果が出力ユニット14に転送される。
【0022】自動運転ユニット7で計算される車輌演算位置Xと監視ユニット8で計算される車輌演算位置X−1との差が設定されている許容誤差範囲に入っていなければ、位置照査ユニット13から警報信号特に緊急停止信号が出力され、車輌5は停止又は異常状態の信号を出力する。自動運転ユニット7で計算される車輌演算位置Xと監視ユニット8で計算される車輌演算位置X−1との差が設定されている許容誤差範囲に入っていれば、車輌速度指令として車輌演算速度V(X)に対応する駆動力信号21が出力ユニット14から出力されて、駆動・制動ユニット22に入力され、車輪3は、車輌演算速度V(X)に対応する回転数に制御される。
【0023】図5は、本発明による自動運転軌道車輌の実施の他の形態を示している。実施の本形態は、監視装置8が複数化されていて、回転角度位置信号9と絶対位置信号11はそれぞれに自動運転ユニット7と複数の監視ユニット8に入力される。車輌演算走行距離Xは、自動運転ユニット7と2つの監視ユニット8とにより求められる。自動運転ユニット7は車輌演算走行距離Xを演算して位置照査ユニット13に出力し、1つ目の監視ユニット8は車輌演算走行距離X−1を演算して位置照査ユニット13に出力し、2つ目の監視ユニット8は、車輌演算位置X−2を出力する。車輌演算走行距離Xと車輌演算走行距離X−1との差と、車輌演算走行距離X−1と車輌演算走行距離X−2との差と、車輌演算走行距離X−2と車輌演算走行距離Xとの差の最も小さいもののうちの許容誤差範囲に入っている車輌演算走行距離のうちの1つが採用される。3つの差の最も小さいものが、許容誤差範囲に入っていなければ、全てのデータは捨てられる。このような原理により、車輌制御の確実性が一層に高められて自動運転の信頼性が高くなり、演算ミスによる非常停止が回避される。
【0024】図6は、本発明による自動運転軌道車輌の実施の更に他の形態を示している。実施の本形態は、車輪回転数対応位置検知器1が複数化されて設けられている。2つの車輪回転数対応位置検知器1から出力される回転角度位置信号9は、それぞれに、自動運転ユニット7と監視ユニット8とに入力される。2つの回転角度位置信号9は、自動運転ユニット7と監視ユニット8とでおのおの入力信号の差が一定値以上にならないかどうかのチェックをして信頼性を高める。
【0025】図7は、本発明による自動運転軌道車輌の実施の更に他の形態を示している。実施の本形態は、車輪回転数対応位置検知器1が複数化されて設けられている点で、実施の図6の形態に同じである。実施の本形態では、車輪回転数対応位置検知器1は、前輪側と後輪側に1つずつが配置されている。前輪側又は後輪側の単独のスリップにより演算走行位置Xと絶対位置座標X’の差が大きくなった場合には、2つの回転角度位置信号9が、自動運転ユニット7と監視ユニット8とで、それぞれの入力信号の差が一定値以上になり、異常検出を行うことにより、演算走行位置Xの信頼性を向上させることができる。
【0026】図8は、本発明による自動運転軌道車輌の実施の更に他の形態を示している。実施の本形態には、実施の既述の形態に、路線条件記憶ユニット31が追加されている。路線条件記憶ユニット31は、自動運転ユニット7と監視ユニット8とに双方向にそれぞれに接続している。路線条件記憶ユニット31は、図9に示される路線速度パターン(運行パターン)32を記憶している。路線速度パターン32は、全路線区間(例示:全長65km)で速度が規定されている。走行路2には、1km間隔で、マーカー6が規則正しく配置されている。どの車輌も路線速度パターン32を共有し、又は、車輌ごとに固有の路線速度パターン32を記憶している。
【0027】路線条件記憶ユニット31は、距離程X’(横軸)と、目標速度V’(X’)との情報をプログラマブルに有している。速度V(X’)は、正負の加速度の情報を必然的に含んでいる。従って、距離程X’は、結果的に時間を変数とする関数になり、目標速度V’は、V’(X’(t))で表される。
【0028】最初の始動時は、車輌の現在位置を手動入力で行い、自動運転ユニット7と監視ユニット8に設定される。路線条件と運転条件と停止位置は、自動運転ユニット7に付属する設定器を介して自動運転ユニット7と監視ユニット8に設定されている。その設定は、路線条件と運転条件と停止位置とが入力されているICカードを駅員又は運転士が自動運転ユニット7のカード差し込み口に差し込むことにより自動化される。
【0029】図10に示されるように、電車には、地点Aで出発し、地点Bで停止し、地点Bで出発し、地点Cで停止し、地点Cで出発し、地点Dで停止し、地点Dで出発する運転条件が自動運転ユニット7に入力ずみになっている。それらの出発時刻の設定は必要ではない。
【0030】路線速度パターン32は、複数の定速区間の速度を規定しているが、その定速度が変更される地点の近傍領域の加速度は規定されていない。自動運転ユニット7は、図10に示されるように、加速度条件に従って、1つの定速区間から次の定速区間に移行する間の加速度を計算して求める。図9に示される運転制御パターンは、最初の出発時刻に既に計算されテーブル化されることが可能であり、又は、リアルタイムに計算される。
【0031】抵抗を受けて負の加速度が生じれば、目標速度V(X)を維持する制御は時々刻々に実行される。1km間隔で配置されているマーカーの存在地点で、既述の積分線長誤差を零化する補正制御が実行される。マーカー数が多いので、頻繁に積分線長誤差が零化されて累積誤差は頻繁に零に解消される。
【0032】緊急停止の後は、不具合点の解消の後に、時刻設定がなされていれば、現時刻をプログラマブル時刻にシフトさせた瞬間に出発駆動を開始し、時刻設定がなされていなければ、図8に従って運転開始信号の投入のみで、運転士の判断又は中央指令制御室の運転士により自動運転が再開される。
【0033】図9に示される路線条件を設定すれば、その路線にある任意の車輌は、任意の時刻に自動運転を開始することができる。任意の車輌は、作業用車輌、路線点検車輌、信号待ち車輌、緊急停止車輌、事故発生に基づく強制停止車輌を含む。
【0034】実施の本形態には、実施の図1,5,6,7の形態に特有である個々の技術的特徴がそのままに適用されることが可能である。
【0035】図11は、マーカー配置の変形例を示している。図11に示される複数のマーカー6は、配置位置に対応する固有位置情報を持ちその固有位置情報が絶対位置検知器4により検出される第1タイプのマーカー6−1と、配置位置に対応する固有位置情報を持たずその存在が絶対位置検知器4により検出される第2タイプのマーカー6−2とを含んでいる。第1タイプのマーカー6−1は、駅、勾配が大きい走行路の上り方向(進行方向)の前方領域、駅に近づいて適正な制動がかかる地点のような制御的に重要である要所に配置される。高額である第1タイプのマーカー6−1の配置数の削減により、路線建設単価を低減化することができる。
【0036】図12は、累積誤差の解消による補正制御方法を例示している。マーカーは1km間隔で配置されている。実線は、目標走行距離X又は実走行距離を示し、破線は演算走行距離を示している。出発点Aでは、実走行距離と演算走行距離は一致している。任意の実車輌位置で、実走行距離と演算走行距離は原則的に一致しない。マーカーが置かれている1kmごとに、演算走行距離は実走行距離(マーカーの存在位置)に強制的に一致させられる。
【0037】図13は、0km地点と1km地点の間の実走行距離と演算走行距離の累積誤差の変化を詳しく示している。任意の実地点位置Xの累積誤差ΔLは、時々刻々に(各位置ごとに)増減的に変化している。上り勾配領域と下り勾配領域では、正負の滑りが生じている。0kmと1kmの間の任意の位置点で累積誤差ΔLを解消することができる基準は存在しない。マーカーは、適正間隔でのみ存在する基準である。マーカー6が存在する地点で、累積誤差が零になるように、演算走行距離の値が実走行距離(マーカーの存在位置)に再設定される。1kmごとのような適正間隔で、このような強制的補正が行われるので、その適正間隔を越えて誤差が累積されることはない。
【0038】マーカー6は、有電源で機能し、設置場所に対応した位置情報を個別に有している。又は、マーカー6は、無電源で機能することができる。この場合は、車輌が無線式にマーカー6に電力を供給する電源を有する。マーカー6は、設置場所に対応した位置情報を個別に有することが好ましい。
【0039】本発明によれば、時間的制御は必要ではない。車輌の速度Vはマーカー存在点の位置座標X’とその後の演算座標の関数で定められ、X’は時間tとは独立であるから、マーカー存在位置で確実に線長の累積誤差が解消され、許容される線長誤差範囲で目的地に到達することができる。停止位置の直前の一定区間ではマーカー存在の線密度を十分に高くすることにより、十分な精度で目標停止地点に車輌を停止させることができる。時間長制御は、本発明による自動運転軌道車輌の線長制御とは独立に実行することが可能である。時刻長誤差は、演算速度V(X)を補正速度{V(X)+ΔV’(X’))に変更することにより解消される。
【0040】
【発明の効果】本発明による自動運転軌道車輌、及び、軌道車輌の自動運転方法は、絶対位置を検出するためのマーカーの数が少なく、鉄道建設のコストが削減される。
【0041】より具体的には、車輌側の演算精度とマーカーの位置検出による絶対精度とが調和し、マーカーを無数に設けることなく、車輌側の演算精度の範囲内、特に、滑りに起因する精度の劣化の範囲で、実用的に十分に高精度である自動運転が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南二丁目16番5号
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区代々木二丁目二番二号
【出願日】 平成14年3月7日(2002.3.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−264909(P2003−264909A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−62207(P2002−62207)