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【発明の名称】 電気自動車のパーキング抜き振動防止装置
【発明者】 【氏名】加藤 真吾
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】太田 隆史
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】吉井 欣也
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】パーキングロックが解除される際に電動モータのロータがはずみ車として作用し電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを防止する。

【解決手段】電動モータ12及び電動モータを駆動輪68、74と常時駆動接続する駆動系14を備えた電動駆動装置10と、シフトレバー84により設定されたシフトレンジに応じて電動駆動装置のシフトレンジを制御する制御装置88とを有する電気自動車に於いて、シフトレバー84が運転者によって操作されることによりパーキングロック装置78が解除されたときには(S30)、電動駆動装置が他のシフトレンジに設定されるまでの間に電動モータの回転が検出されると(S40、50)、電動モータが回転しなくなるまで電動モータを制御して逆回転方向の駆動トルクを発生させ(S60〜80、90、100)、これによりパーキング抜き時に発生する振動を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電動モータ及び前記電動モータを駆動輪と常時駆動接続する駆動系を備えた電動駆動装置と、運転者により操作されるシフトレンジ設定手段により設定されたシフトレンジに応じて前記電動駆動装置のシフトレンジを制御する制御装置とを有する電気自動車に於いて、パーキング抜き時に発生する振動を防止する電気自動車のパーキング抜き振動防止装置にして、前記電動モータの回転を検出する回転検出手段と、前記シフトレンジ設定手段のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、前記シフトレンジ設定手段のシフトレンジがパーキングレンジより離脱せしめられた後前記電動駆動装置が他のシフトレンジに設定されるまでの間に前記電動モータの回転が検出されると、前記電動モータを制御して逆回転方向の駆動トルクを発生させるパーキング抜き時制御手段とを有することを特徴とする電気自動車のパーキング抜き振動防止装置。
【請求項2】前記パーキング抜き時制御手段は前記電動モータの実質的な回転が検出されなくなるまで前記電動駆動装置が前記制御装置により他のシフトレンジに制御されることを禁止することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のパーキング抜き振動防止装置。
【請求項3】電動モータ及び前記電動モータを駆動輪と駆動接続する駆動系を備えた電動駆動装置と、運転者により操作されるシフトレンジ設定手段により設定されたシフトレンジに応じて前記電動駆動装置のシフトレンジを制御する制御装置とを有する電気自動車に於いて、パーキング抜き時に発生する振動を防止する電気自動車のパーキング抜き振動防止装置にして、前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されているときには前記電動モータと前記駆動輪との間の駆動力伝達経路を遮断する遮断手段を有することを特徴とする電気自動車のパーキング抜き振動防止装置。
【請求項4】前記遮断手段は前記シフトレンジ設定手段と連動し、前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると前記駆動力伝達経路を遮断することを特徴とする請求項3に記載の電気自動車のパーキング抜き振動防止装置。
【請求項5】前記駆動系は前記電動モータのロータと共に回転する第一の回転部材と、前記駆動輪と共に回転する第二の回転部材とを有し、前記遮断手段は前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると前記第一の回転部材と前記第二の回転部材との間の連結を解除すると共に前記第二の回転部材を非回転部材に連結し、前記シフトレンジ設定手段が他のシフトレンジに設定されると前記第一の回転部材と前記第二の回転部材とを連結すると共に前記第二の回転部材と前記非回転部材との連結を解除することを特徴とする請求項3又は4に記載の電気自動車のパーキング抜き振動防止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動モータを走行用駆動源とする電気自動車に係り、更に詳細にはパーキング抜き時に発生する振動を防止する電気自動車のパーキング抜き振動防止装置に係る。
【0002】
【従来の技術】電気自動車は、一般に、走行用駆動源としての電動モータ及び電動モータを駆動輪と常時駆動接続する駆動系を備え、電動モータは運転者により操作されるシフトレバーにより設定されるシフトレンジ及び運転者により操作されるアクセルペダルの設定に応じて制御され、シフトレバーがパーキングレンジに設定されると、駆動系に設けられたパーキングロックギヤに対し駆動装置によってパーキングポールが係合せしめられ、これにより駆動系及び駆動輪がパーキングロック状態にされる。そして電気自動車の走行開始時にはシフトレバーがパーキングレンジより解除(パーキング抜き)され、例えばドライブレンジの如き他のシフトレンジへ切り換え設定される。
【0003】電気自動車が坂道等の傾斜路面に於いて停車した状態にてパーキングロックが行われると、自動車に作用する重力の傾斜路面に沿う成分によりパーキングロックギヤにモーメントが作用し、パーキングロックギヤによりパーキングポールが駆動装置に押し付けられるため、パーキング抜き時のシフトレバー操作に強い力が必要とされるという問題がある。
【0004】この問題を解消する装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる特開平9−286312号公報に記載されている如く、運転者によりパーキング抜きのシフトレバー操作が行われたときには、パーキングロックギヤとパーキングポールとの間の噛み合い荷重が減少するよう電動モータのトルクを制御するよう構成されたメカニカルパーキングロック装置が従来より知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述の先の提案にかかるメカニカルパーキングロック装置によれば、駆動装置によってパーキングポールを容易に駆動しパーキングロックギヤとの係合を容易に解除することができるので、強い力を要することなくシフトレバーを操作しパーキングロックの解除を容易に行うことができるが、例えば電気自動車が坂道にて停車した状況に於いてパーキングロックが解除される際に電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを防止することはできない。
【0006】本願発明者は、パーキングロックが解除される際に電動モータ及び駆動系に生じる振動や音に着目しそれらの発生要因について調査研究を行った結果、後に詳細に説明する如く、電気自動車が坂道にて停車した状況に於いてパーキングロックが解除される際には電動モータのロータがはずみ車として作用し、そのため電動モータが回転振動することに起因して電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを究明した。
【0007】本発明は、電気自動車に於いてパーキングロックが解除される際に電動モータ及び駆動系に振動や音が発生するという問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、本願発明者が行った調査研究の結果得られた知見に基づき、パーキングロックが解除される際に電動モータのロータがはずみ車として作用し電動モータが回転振動することを防止することにより、電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを防止することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の主要な課題は、本発明によれば、電動モータ及び前記電動モータを駆動輪と常時駆動接続する駆動系を備えた電動駆動装置と、運転者により操作されるシフトレンジ設定手段により設定されたシフトレンジに応じて前記電動駆動装置のシフトレンジを制御する制御装置とを有する電気自動車に於いて、パーキング抜き時に発生する振動を防止する電気自動車のパーキング抜き振動防止装置にして、前記電動モータの回転を検出する回転検出手段と、前記シフトレンジ設定手段のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、前記シフトレンジ設定手段のシフトレンジがパーキングレンジより離脱せしめられた後前記電動駆動装置が他のシフトレンジに設定されるまでの間に前記電動モータの回転が検出されると、前記電動モータを制御して逆回転方向の駆動トルクを発生させるパーキング抜き時制御手段とを有することを特徴とする電気自動車のパーキング抜き振動防止装置(請求項1の構成)、又は電動モータ及び前記電動モータを駆動輪と駆動接続する駆動系を備えた電動駆動装置と、運転者により操作されるシフトレンジ設定手段により設定されたシフトレンジに応じて前記電動駆動装置のシフトレンジを制御する制御装置とを有する電気自動車に於いて、パーキング抜き時に発生する振動を防止する電気自動車のパーキング抜き振動防止装置にして、前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されているときには前記電動モータと前記駆動輪との間の駆動力伝達経路を遮断する遮断手段を有することを特徴とする電気自動車のパーキング抜き振動防止装置(請求項3の構成)によって達成される。
【0009】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記パーキング抜き時制御手段は前記電動モータの実質的な回転が検出されなくなるまで前記電動駆動装置が前記制御装置により他のシフトレンジに制御されることを禁止するよう構成される(請求項2の構成)。
【0010】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3の構成に於いて、前記遮断手段は前記シフトレンジ設定手段と連動し、前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると前記駆動力伝達経路を遮断するよう構成される(請求項4の構成)。
【0011】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3又は4の構成に於いて、前記駆動系は前記電動モータのロータと共に回転する第一の回転部材と、前記駆動輪と共に回転する第二の回転部材とを有し、前記遮断手段は前記シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると前記第一の回転部材と前記第二の回転部材との間の連結を解除すると共に前記第二の回転部材を非回転部材に連結し、前記シフトレンジ設定手段が他のシフトレンジに設定されると前記第一の回転部材と前記第二の回転部材とを連結すると共に前記第二の回転部材と前記非回転部材との連結を解除するよう構成される(請求項5の構成)。
【0012】
【発明の作用及び効果】図5はパーキングロックが解除される際に電動モータ及び駆動系に振動や音が発生する要因を説明するための図である。図5に示されている如く、電気自動車200が傾斜角φの坂道202を登る状態にて坂道に停車しパーキングロックが行われると、電気自動車200に作用する重力Fの一部Fsinφは坂道に沿って電気自動車を後退させる方向に作用する。従動輪と路面との間の摩擦力を無視すると、力Fsinφは左右の駆動輪と路面との間の摩擦力Fwにより担持され、そのため摩擦力Fwに起因して電気自動車が後退する場合と同一の回転方向のトルクTwが駆動輪204に作用する。
【0013】図5に示されている如く、走行用駆動源としての電動モータ206及び電動モータを駆動輪と駆動接続する駆動系208が電動駆動装置210として共通のハウジング212に収容され、ハウジング212がゴムブッシュの如き振動遮断用の弾性インシュレータを内蔵するマウント214を介して車体216に連結固定されている場合には、ハウジング212に取り付けられたパーキングロック装置218により駆動系208の回転部材の回転が拘束されることによりパーキングロックが達成される。
【0014】従って図5(A)に示されている如く、駆動輪204に作用する電気自動車を後退させる回転方向のトルクTwは電動モータ206へ伝達されることなく駆動系208及びパーキングロック装置218を介してハウジング212へ伝達され、そのため電動駆動装置210はマウント214の弾性インシュレータの弾性変形により発生するトルクがトルクTwと釣り合うまで駆動系208に対するトルクTwの入力軸線220の周りに傾動し、弾性インシュレータにはその弾性変形による位置のエネルギが保存される。
【0015】かかる状況にてパーキングロックが解除されると、ハウジング212によりパーキングロック装置218を介して行われていた駆動系208の回転部材の回転拘束が解除され、これによりハウジング212に対するトルクTwの伝達が解除されるので、図5(B)に示されている如く電動駆動装置210はマウント214の弾性インシュレータに保存されていた位置のエネルギにより軸線220に平行な軸線の周りにその傾斜がなくなる方向(復帰回転方向)へ車体216に対し相対的に回転駆動される。
【0016】一般に、パーキングロックが解除される状況は電気自動車が走行を再開する場合であり、電気自動車が坂道にて走行を再開する場合にはブレーキによって車輪に制動力が与えられ車輪は車体と実質的に一体の状態をなすので、パーキングロックが解除されても駆動輪204は坂道202の路面を転動しない。従って電動駆動装置210は車体216に対し相対的に復帰回転方向へ回転することにより、駆動輪204に対しても相対的に回転するので、電動モータ206のロータ206Aがステータ206Bに対し相対的に電動駆動装置210の復帰回転方向とは逆方向へ回転する。
【0017】電動駆動装置210の復帰回転方向への回転角度をαとすると、上記現象は電動駆動装置210より見ると駆動輪204が角度α電気自動車の後退方向へ回転することと等価であり、駆動系208の減速比をRとすると、電動モータ206のロータ206Aはステータ206Bに対し相対的にRαの角度回転し、ロータ206Aは回転振動の加振を受け、はずみ車として作用することにより電動駆動装置210を加振し、これにより電動駆動装置210の振動及びこれに伴う音が発生する。
【0018】よってパーキングロックが解除された直後に電動モータが回転しているか否か、即ちロータがステータに対し相対回転しているか否かを判定し、電動モータが回転している場合にはステータに対するロータの相対回転を抑制するトルクが発生するよう電動モータを制御することにより、或いはパーキングロックが行われる際に駆動系の駆動力伝達経路を遮断し、電動駆動装置が復帰回転方向へ回転する際に電動モータのロータが駆動輪により拘束されることなくステータと共に回転し得るようにすることにより、パーキングロックが解除された際に電動モータのロータがはずみ車として作用し電動モータが回転振動することを防止することができ、これにより電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを防止することができる。
【0019】上記請求項1の構成によれば、シフトレンジ設定手段のシフトレンジがパーキングレンジより離脱せしめられた後電動駆動装置が他のシフトレンジに設定されるまでの間に電動モータの回転が検出されると、パーキング抜き時制御手段により逆回転方向の駆動トルクが発生するよう電動モータが制御されるので、パーキングロックが解除された際に電動モータのロータがはずみ車として作用することを抑制し、これにより電動モータが回転振動することを防止して電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを効果的に防止することができる。
【0020】また上記請求項3の構成によれば、シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されているときには電動モータと駆動輪との間の駆動力伝達経路が遮断手段によって遮断されるので、シフトレンジ設定手段がパーキングレンジより他のレンジへ切り換えられる際に駆動輪より駆動系を経て電動モータのロータへ伝達されるトルクを低減することができ、従ってパーキングロックが解除された際にずみ車として作用する電動モータのロータの回転量を低減し、これにより電動モータの回転振動を低減して電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを効果的に防止することができる。
【0021】また上記請求項2の構成によれば、パーキング抜き時制御手段は電動モータの実質的な回転が検出されなくなるまで電動駆動装置が制御装置により他のシフトレンジに制御されることを禁止するので、電動モータ及び駆動系に過大な振動や音が発生することを防止することができると共に、電動モータ及び駆動系に振動や音が発生していない状況に於いて電動駆動装置を他のシフトレンジへ切り換えることができる。
【0022】また上記請求項4の構成によれば、遮断手段はシフトレンジ設定手段と連動し、シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると駆動力伝達経路を遮断するので、運転者はシフトレンジ設定手段をパーキングレンジに設定することにより、それと確実に同期して遮断手段を作動させ駆動力伝達経路を遮断することができる。
【0023】また上記請求項5の構成によれば、駆動系は電動モータのロータと共に回転する第一の回転部材と、駆動輪と共に回転する第二の回転部材とを有し、遮断手段はシフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると第一の回転部材と第二の回転部材との間の連結を解除すると共に第二の回転部材を非回転部材に連結し、シフトレンジ設定手段が他のシフトレンジに設定されると第一の回転部材と第二の回転部材とを連結すると共に第二の回転部材と非回転部材との連結を解除するので、シフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると電動モータのロータと駆動輪との間の駆動力伝達経路を遮断すると共に駆動輪の回転を拘束することができ、またシフトレンジ設定手段が他のシフトレンジに設定されると電動モータのロータと駆動輪とを駆動接続すると共に駆動輪の回転拘束を解除することができる。
【0024】
【課題解決手段の好ましい態様】本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、電動駆動装置は弾性変形可能な部材を介して車体より支持されるよう構成される(好ましい態様1)。
【0025】本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、駆動系は減速歯車装置を含むよう構成される(好ましい態様2)。
【0026】本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れかの構成に於いて、電気自動車はシフトレンジ設定手段がパーキングレンジに設定されると、電動モータのロータ若しくは駆動系の回転部材の回転を阻止するパーキングロック装置を有するよう構成される(好ましい態様3)。
【0027】本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、回転検出手段は電動モータのステータに対するロータの相対回転を検出するよう構成される(好ましい態様4)。
【0028】本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、パーキング抜き時制御手段は電動モータのステータに対するロータの相対回転加速度に基づき電動モータの駆動トルクを制御するよう構成される(好ましい態様5)。
【0029】本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3又は5の構成に於いて、遮断手段はドグクラッチであるよう構成される(好ましい態様6)。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0031】第一の実施形態図1は前輪駆動の電気自動車に適用された本発明によるパーキング抜き振動防止装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【0032】図1に於いて、10は電動駆動装置を示しており、電動駆動装置10は電動モータ12と駆動系14とを有している。電動モータ12は回転軸16と一体をなし回転軸16と共に回転するロータ18と、回転軸16及びロータ18を回転可能に支持するモータハウジング20と、モータハウジング20に固定されロータ18と共働して回転軸16を回転させるステータ22とを有し、モータハウジング20はモータマウント24にて電動駆動装置10のハウジング26に固定され収容されている。
【0033】図示の実施形態に於いては、ハウジング26は互いに他に対し回転軸16の両側に隔置されたマウント28及び30により車体Bに固定されている。マウント28及び30はそれぞれ回転軸16に平行な軸線32及び34を有する実質的に円筒状のゴムブッシュよりなるインシュレータ36及び38を有し、インシュレータ36及び38により電動駆動装置10の振動が車体Bへ伝達されることが抑制される。
【0034】また図示の実施形態に於いては、駆動系14は減速歯車装置40及び差動歯車装置42を含み、減速歯車装置40はカウンタギヤ対44とファイナルギヤ対46とを有している。カウンタギヤ対44は電動モータ12の回転軸16に固定された出力ギヤ48と中間軸50に固定された入力ギヤ52とよりなり、ファイナルギヤ対46は中間軸50に固定された出力ギヤ54と差動歯車装置42に設けられた入力ギヤ56とよりなっている。
【0035】差動歯車装置42は入力ギヤ56の回転平面に平行な軸線の周りに回転可能に支持された一対の入力ピニオンギヤ58と、入力ピニオンギヤ58の軸線に垂直な軸線の周りに回転可能に支持され入力ピニオンギヤ58と噛み合う一対の出力ピニオンギヤ60及び62とを有している。図示の実施形態に於いては、出力ピニオンギヤ60は電動モータ12の回転軸16と平行な軸線の周りに回転可能に支持された出力軸64の内端に固定され、出力軸64の外端は一対の等速ジョイント66を介して左駆動輪68に接続されている。同様に、出力ピニオンギヤ62は出力軸64の軸線に整合する軸線の周りに回転可能に支持された出力軸70の内端に固定され、出力軸70の外端は一対の等速ジョイント72を介して右駆動輪74に接続されている。
【0036】図示の実施形態に於いては、中間軸50にはパーキングロックギヤ76が固定されており、電動駆動装置10のハウジング26にはパーキングロックギヤ76に近接してパーキングロック装置78が設けられている。パーキングロック装置78はパーキングポール80とパーキングポール80を駆動する駆動装置82とを有している。
【0037】駆動装置82はケーブル82Aによって運転者により操作されるシフトレバー84に接続されており、シフトレバー84に連動して駆動されるようになっている。シフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、パーキングポール80が駆動装置82によってパーキングロックギヤ76に係合せしめられ、これにより電動駆動装置10がパーキングロック状態にされる。また電気自動車の走行開始時にシフトレバー84がパーキングレンジより解除(パーキング抜き)されると、パーキングポール80が駆動装置82によってパーキングロックギヤ76より離脱せしめられ、これにより電動駆動装置10のパーキングロック状態が解除される。
【0038】電動モータ12はシフトレバー84により設定されるシフトレンジ及び運転者により操作されるアクセルペダル86により設定されるアクセル設定量に応じて図2に示された制御ルーチンに従って電子制御装置88により制御され、これにより電気自動車の走行時に於ける電動モータ12の駆動トルクが制御される。また電動モータ12は運転者によりパーキング抜き操作が行われた際に於ける電動モータ12の回転状況に応じて図2に示された制御ルーチンに従って電子制御装置88により制御され、これによりパーキングロック解除時に於ける電動駆動装置10の振動が抑制される。
【0039】電子制御装置88にはシフトレバー84により設定されるシフトレンジを検出するシフトポジションセンサ90よりシフトレンジSRを示す信号が入力され、またアクセルペダル86により設定されるアクセル設定量を検出するアクセルセンサ92よりアクセル設定量ASを示す信号が入力される。また電子制御装置88には電動モータ12の回転軸16に設けられた回転位置センサ94より電動モータ12の回転位置(ステータ22に対するロータ18の相対回転位置)θを示す信号が入力される。
【0040】尚電子制御装置88は、CPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有しこれらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータと、電動モータ12へ駆動電流を出力する駆動回路とよりなっていてよい。また回転位置センサ94は電動モータ12の駆動トルクを制御するためのレゾルバであってよい。
【0041】次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於ける電動モータの制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0042】まずステップ10に於いてはシフトレンジSRを示す信号の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはシフトレンジSRがパーキングレンジであるか否かの判別が行われる。ステップ20に於いて肯定判別が行われると、ステップ30に於いて運転者によりパーキング抜きの操作が行われたか否かが判別され、否定判別が行われたときにはステップ30が繰り返し実行される。
【0043】ステップ30に於いてパーキング抜きの操作が行われたと判別されると、ステップ40に於いて回転位置センサ94より回転位置θを示す信号の読み込みが行われ、ステップ50に於いて例えば現サイクルの回転位置θnと前サイクルの回転位置θn-1との偏差Δθの絶対値が基準値Δθc(正の定数)以上であるか否かの判別により、電動モータ12が回転しているか否か、即ちステータ22に対し相対的にロータ18が回転していかる否かが判別される。
【0044】ステップ50に於いて電動モータ12が回転していると判別されると、ステップ60に於いて電動モータ12が正回転、即ち自動車の前進方向に対応する回転方向に回転しているか否かが判別され、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いて電動モータ12に逆回転のトルクが発生するよう電動モータ12が制御され、否定判別、即ち電動モータ12が逆回転している旨の判別が行われたときには、ステップ80に於いて電動モータ12に正回転のトルクが発生するよう電動モータ12が制御され、ステップ70又は80が完了するとステップ40へ戻る。
【0045】この場合電動モータ12に逆回転又は正回転のトルクを発生させるための制御電圧は、上記回転位置の偏差Δθに基づいて制御されてもよいが、例えば回転位置θの二階微分値としてロータ18の回転角加速度が演算され、その回転角加速度に基づいて電動モータ12に対する制御電圧が制御されてもよい。
【0046】ステップ50に於いて電動モータ12が回転していないと判別されると、ステップ90に於いてカウンタのカウント値Nが1インクリメントされ、ステップ100に於いてカウント値NがNc(例えば3程度の正の一定の整数)であるか否かが判別され、否定判別が行われたときにはステップ40へ戻る。ステップ100に於いてカウント値NがNcであると判別されると、電動モータ12は静止していると考えられるので、ステップ110へ進む。
【0047】ステップ110に於いてはアクセルセンサ92よりアクセル設定量ASを示す信号の読み込みが行われ、ステップ120に於いてアクセル設定量ASに応じた電圧の駆動電流がシフトレンジSRに応じた通電方向にて電動モータ12へ供給され、これにより電動モータ12の駆動トルクがシフトレンジSRに応じた方向及びアクセル設定量ASに応じた大きさに制御される。尚ステップ20に於いてシフトレンジSRがパーキングレンジ以外のレンジ、例えばドライブレンジであると判別されると、既にパーキング抜き時の処理(ステップ30〜100)は完了しているので、そのままステップ110へ進む。またステップ120に於ける電動モータ12の通常の駆動トルクの制御は本発明の要旨をなすものではないので、当技術分野に於いて公知の任意の態様にて実行されてよい。
【0048】かくして図示の第一の実施形態によれば、例えば電気自動車が坂道にて停車することにより、マウント28及び30のインシュレータ36及び38に弾性変形による位置のエネルギが保存され、パーキング抜き時に電動駆動装置10が車体Bに対し相対的に回転し、電動モータ12のロータ18がステータ22に対し相対的に回転しても、その回転を抑制するトルクが発生するよう電動モータ12が制御され、ロータ18がはずみ車として作用することが防止されるので、電動モータ12の回転振動に起因して電動駆動装置10が振動し音が発生することを効果的に防止することができる。
【0049】特に図示の実施形態によれば、パーキング抜き後に上記電動モータ12のトルク制御によってロータ18の回転振動が減衰され電動モータ12が回転していないか否かの判別が連続してNc回行われるので、ロータ18がその回転振動のピークにある状況に於いて誤って電動モータ12が回転していないと判定されることを防止し、これにより電動モータ12の回転振動が十分に減衰し実質的に静止状になったことを確実に判定することができる。
【0050】また図示の実施形態によれば、ステップ50、90、100に於いて電動モータ12が回転していない旨の判別が連続してNc回行われない限りステップ110及び120による通常の電動モータ12のトルク制御は開始されないので、電動モータ12の回転振動が十分に減衰していない段階で電動モータ12の通常のトルク制御が開始されることを確実に防止することができる。
【0051】更に図示の実施形態によれば、電気自動車の走行時に於ける通常のトルク制御のルーチンに上記ステップ20〜100を追加するだけでよく、また電動モータ12の回転の検出は電気自動車に通常組み込まれている回転位置センサを使用して行われるので、電動駆動装置10に特別の装置を組み込んだり電動駆動装置10の構造を改変したりすることは不要であり、従って実質的なコストアップを招来することなくパーキング抜き時の電動駆動装置10の振動や音の発生を防止することができる。
【0052】第二の実施形態図3は前輪駆動の電気自動車に適用された本発明によるパーキング抜き振動防止装置の第二の実施形態を示す図1と同様の概略構成図である。尚図3に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
【0053】この第二の実施形態に於いては、電動モータ12の出力軸16に整合し且つこれより隔置された位置に於いてハウジング26により回転可能に支持された分離軸100が設けられており、出力軸16及び分離軸100の互いに対向する端部にはそれぞれドグクラッチ用の第一のギヤ102及び第二のギヤ104が固定されており、カウンタ対44の出力ギヤ48は分離軸100の他端に固定されている。ギヤ102及び104に近接した位置にはドグクラッチ106が設けられている。
【0054】ドグクラッチ106はギヤ102及び104と噛み合い可能な内周歯を有するリングギヤ108と、リングギヤ108の径方向外側に配置された往復動ロッド110とを有し、往復動ロッド110はギヤ102及び104の軸線に沿って往復動可能にハウジング26により支持されている。往復動ロッド110のヘッド部110Aはリングギヤ108がギヤ102及び104と共に回転することを許容すると共にリングギヤ108がヘッド部110Aに対し相対的に軸線方向へ移動することがないようリングギヤ108の外周面に設けられた周溝に係合している。
【0055】往復動ロッド110はケーブル112によりシフトレバー84に接続されており、シフトレバー84に連動して駆動されるようになっている。特にシフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、往復動ロッド110はハウジング26のスプリングシート114とヘッド部110Aとの間に弾装された圧縮コイルスプリング116のばね力に抗して図3で見て左方(パーキング位置)へ駆動され、これによりリングギヤ108はギヤ102とのみ噛み合うが、シフトレバー84がパーキングレンジ以外のシフトレンジに設定されると、往復動ロッド110は圧縮コイルスプリング116のばね力により図3で見て右方(通常位置)へ駆動され、これによりリングギヤ108はギヤ102及び104の両者と噛み合う。
【0056】尚この第二の実施形態に於いては、パーキングロック装置78は上述の第一の実施形態の場合と同様にシフトレバー84と連動して駆動され、従ってパーキングロック装置78はドグクラッチ106と連動して駆動される。即ちシフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、パーキングロック装置78がパーキングロック状態にもたらされると共にドグクラッチ106がパーキング位置へ移動され、シフトレバー84がパーキングレンジ以外のレンジに設定されると、パーキングロック装置78がパーキングロック解除状態にもたらされると共にドグクラッチ106が通常位置へ移動される。
【0057】かくして図示の第二の実施形態によれば、シフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、パーキングロック装置78がパーキングロック状態にもたらされると共にドククラッチ106がパーキング位置へ移動され、第一のギヤ102及び第二のギヤ104のリングギヤ108との噛み合いが解除されることによって駆動系の14の減速歯車装置40の駆動力伝達経路が遮断されるので、マウント28及び30のインシュレータ36及び38に弾性変形によって保存されていた位置のエネルギーにより電動駆動装置10が車体Bに対し復帰方向へ回転されても、電動モータ12のロータ18はステータ22に対し相対的に回転駆動されず、従ってロータ18が弾み車として作用することが防止され、これにより電動モータ12の回転振動に起因して電動駆動装置10が振動し音が発生することを効果的に防止することができる。
【0058】特に図示の実施形態によれば、ドグクラッチ106はパーキングロック装置78と共に機械的連結手段によってシフトレバー84に接続されシフトレバー84と連動して駆動されるようになっているので、ドグクラッチ106をシフトレバー84及びパーキングロック装置78と連動して駆動するための特別の同期駆動装置は不要であり、またドグクラッチ106を確実にパーキングロック装置78と同期して駆動することができる。
【0059】第三の実施形態図4は前輪駆動の電気自動車に適用された本発明によるパーキング抜き振動防止装置の第三の実施形態を示す図1及び図3と同様の概略構成図である。尚図4に於いて図1又は図3に示された部材と同一の部材には図1又は図3に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
【0060】この第三の実施形態に於いては、上述の第二の実施形態の場合と同様、出力軸16より隔置された分離軸100の互いに対向する端部にはそれぞれドグクラッチ用の第一のギヤ102及び第二のギヤ104が固定されており、第二のギヤ104に近接した位置にはセクタギヤ120が配置されている。セクタギヤ120はリングギヤ108と噛み合い得るようハウジング26により固定的に支持されている。往復動ロッド110は油圧シリンダ装置122により往復動され、油圧シリンダ装置122は油圧回路124により制御される。
【0061】油圧回路124はシフトレバー84により設定されるシフトレンジに応じて電子制御装置88により制御される。図示の実施形態に於いては、シフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、ドグクラッチ106のリングギヤ108が第二のギヤ104及びセクタギヤ120と噛み合うパーキング位置へ移動され、シフトレバー84がパーキングレンジ以外のレンジに設定されると、リングギヤ108が第一のギヤ102及び第二のギヤ104と噛み合う通常位置へ移動される。
【0062】尚図3と図4との比較より解る如く、上述の第一及び第二の実施形態に於けるパーキングロックギヤ76及びパーキングロック装置78は設けられていない。また図には示されていないが、第二のギヤ104とセクタギヤ120との間にはシンクロメッシュの如き同期装置が設けられており、電子制御装置88はシフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、電動モータ12の回転速度が予め設定された基準値以下になった時点に於いて油圧回路124を介して油圧シリンダ装置122を制御し、リングギヤ108を通常位置よりパーキング位置へ移動させる。
【0063】かくして図示の第三の実施形態によれば、シフトレバー84がパーキングレンジに設定されると、上述の第二の実施形態の場合と同様、第一のギヤ102及び第二のギヤ104とリングギヤ108との噛み合いを解除して駆動系14の駆動力伝達経路を遮断し、これによりパーキングロックが解除される際に電動モータ12のロータ18がステータ22に対し相対的に弾み車として回転することを防止し、これにより電動モータ12の回転振動に起因して電動駆動装置10が振動し音が発生することを効果的に防止することができる。
【0064】特に図示の実施形態によれば、ドグクラッチ106はシャフトレバー84がパーキングレンジに設定されるとリングギヤ108を第二のギヤ104及びセクタギヤ120と噛み合うパーキング位置へ移動し、シフトレバーがパーキングレンジ以外のレンジに設定されると、リングギヤ108を第一のギヤ102及び第二のギヤ104と噛み合う通常位置へ移動するので、上述の第一及び第二の実施形態に於けるパーキングロック装置78は不要であり、またパーキングロック装置78と同期してドグクラッチ106を駆動する装置も不要である。
【0065】以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0066】例えば上述の第一の実施形態に於いては、電動モータ12の回転の検出は電動モータに取り付けられた回転位置センサ94により行われるようになっているが、電動モータの回転の検出は任意の手段により行われてよく、また駆動系14に於いて行われてもよい。
【0067】また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、リングギヤ108に対する第一のギヤ102及び第二のギヤ104の噛み合いが制御されることにより、駆動系14の一部を構成する減速歯車装置40に於ける駆動力伝達経路が選択的に遮断されるようになっているが、電動モータ12と駆動輪68及び74との間の駆動力伝達経路の遮断は当技術分野に於いて任意の手段により達成されてよい。
【0068】また上述の第二の実施形態に於いては、ドグクラッチ106の往復動ロッド110はケーブル112によりシフトレバー84に機械的に接続されることによりシフトレバー84と連動して駆動されるようになっているが、往復動ロッド110はパーキングロック装置78と同期して駆動される限り、例えば上述の第三の実施形態の場合と同様油圧シリンダ装置等により駆動されるよう修正されてもよい。
【0069】更に上述の各実施形態に於いては、電気自動車は前輪駆動の電気自動車であり、差動歯車装置42はハウジング26内に収容されているが、本発明が適用される電気自動車は後輪駆動の電気自動車であってもよく、また差動歯車装置はハウジング26外に配置されてもよい。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成14年3月7日(2002.3.7)
【代理人】 【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
【公開番号】 特開2003−264908(P2003−264908A)
【公開日】 平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願番号】 特願2002−61807(P2002−61807)