| 【発明の名称】 |
電気自動車の回生制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】大久保 孝仁 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】バッテリの充電状態が高いときでも回生エネルギーの吸収が可能であり、かつ低コストな電気自動車の回生制御装置を提供する。
【解決手段】車両駆動用の電動機109の回生運転時に発生した回生電気エネルギーをバッテリ装置120に蓄積し、その際、回生電気エネルギーをバッテリ装置が吸収できない充電状態(つまり満充電かそれに近い充電状態)の場合は、所望の回生トルクを発生するために必要な回生電気エネルギー量に相当する大きさのd軸電流を付加した電流を電動機に供給する。具体的には△id補正演算器103で回生トルク電流iqに等しい大きさの電流△id(つまり△id=1q*)をd軸電流指令値id*に付加した値を、補正後の電流指令値id*’として出力する。これによって電動機による発電電流と還流電流とを釣合わせることにより、回生電気エネルギーを電動機自体で吸収する電気自動車の回生制御装置。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両駆動用の電動機と、前記電動機を制御するモータ制御装置と、充放電可能な電気エネルギー供給手段と、前記電気エネルギー供給手段の充電状態監視手段と、それらの装置を統括して駆動および制動を含む制御を行う車両制御手段と、を備えた電気自動車における回生制御装置であって、前記電動機の回生運転動作時に発生した回生電気エネルギーを前記電気エネルギー供給手段に蓄積し、その際、前記充電状態監視手段の結果により前記回生電気エネルギーを前記電気エネルギー供給手段が吸収できない充電状態である場合は、所望の回生トルクを発生するために必要な回生電気エネルギー量に相当する大きさのd軸電流を付加した電流を前記電動機に供給し、前記電動機による発電電流と還流電流とを釣合わせることにより、前記回生電気エネルギーを前記電動機で吸収するように構成した電気自動車の回生制御装置。 【請求項2】車両駆動用の電動機と、前記電動機を制御するモータ制御装置と、充放電可能な電気エネルギー供給手段と、前記電気エネルギー供給手段の充電状態監視手段と、それらの装置を統括して駆動および制動を含む制御を行う車両制御手段と、を備えた電気自動車における回生制御装置であって、前記電動機の回生運転動作時に発生した回生電気エネルギーを前記電気エネルギー供給手段に蓄積し、その際、前記充電状態監視手段の結果により前記電動機の回生電気エネルギーの全部を前記電気エネルギー供給手段が吸収できない充電状態である場合は、所望の回生トルクを発生するために必要な回生電気エネルギー量と前記電気エネルギー供給手段に充電可能な電気エネルギー量との差分の大きさに相当するd軸電流を付加した電流を前記電動機に供給することにより、所望の回生トルクを保持しつつ前記電気エネルギー供給手段に吸収可能な分の電気エネルギーは前記電気エネルギー供給手段に充電するように構成した電気自動車の回生制御装置。 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の電気自動車の回生制御装置において、車両速度情報に基づいて車両速度のフィードバック制御を行う車両速度制御手段を備え、車両減速指示時に前記電動機の回生トルクを利用して車両を減速させ、この際、前記電気エネルギー供給手段で吸収可能な回生電気エネルギーが不足して、所望の減速度が得られない場合は、前記電気エネルギー供給手段が吸収しきれない前記電動機の回生電気エネルギーに相当する大きさのd軸電流を前記電動機に流すことにより、前記電気エネルギー供給手段が吸収しきれない回生電気エネルギーを前記電動機で吸収し、不足する減速度を補償して車両速度制御を行うように構成した電気自動車の回生制御装置。 【請求項4】請求項1または請求項2に記載の電気自動車の回生制御装置において、車両減速指示時に、制動装置を制御して車両を減速させる制動制御と、車両駆動用の電動機の回生トルクを制動力として利用する回生制動制御とを併用する回生協調制動を行う手段を備え、車両減速指示時に、前記電気エネルギー供給手段で吸収可能な回生電気エネルギーが不足して、所望の減速度が得られない場合は、前記電気エネルギー供給手段で吸収できない回生電気エネルギーと等しい大きさに相当するd軸電流、若しくは回生電気エネルギー量と前記電気エネルギー供給手段に充電可能な電気エネルギー量との差分の大きさに相当するd軸電流を付加した電流を前記電動機に供給することにより、前記電気エネルギー供給手段で吸収可能な回生電気エネルギーが不足する場合でも、回生動作を可能とし、かつ、所望の減速度が得られるように構成した電気自動車の回生制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は電気自動車の回生制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】電気自動車の回生制動制御に関する従来技術として、回生動作時にバッテリが満充電状態であった場合には、回生制動で生じた電力をバッテリで吸収できないため、モータの回生トルクを弱めて、その分を機械式ブレーキを制御して補うことで、一定の制動トルクを得るようにした技術が特開平10−271605号公報に開示されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来技術においては、バッテリが満充電状態の場合に、モータによる回生トルクを機械式ブレーキを制御して補うようにしているので、迅速に応答するためには応答性の良いブレーキアクチュエータが必要になり、高価になってしまうという問題があった。 【0004】本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、バッテリ等の電気エネルギー供給手段の充電状態が高いときでも回生エネルギーの吸収が可能であり、かつ、より低コストな電気自動車の回生制御装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、車両駆動用の電動機の回生運転動作時に発生した回生電気エネルギーを充放電可能な電気エネルギー供給手段(バッテリや大容量のコンデンサ等)に蓄積し、その際、回生電気エネルギーを電気エネルギー供給手段が吸収できない充電状態(つまり満充電かそれに近い充電状態)である場合は、所望の回生トルクを発生するために必要な回生電気エネルギー量に相当する大きさのd軸電流を付加した電流を電動機に供給する。これによって電動機による発電電流と還流電流とを釣合わせることにより、回生電気エネルギーを電動機自体で吸収するように構成している。 【0006】 【発明の効果】本発明によれば、電気エネルギー供給手段(以下、バッテリと略記)の充電状態が高い(つまり満充電かそれに近い充電状態)ときには、バッテリが吸収しきれない電動機の回生電気エネルギー(以下、単に「回生エネルギー」と略記する)を、回生トルクに等しい大きさに相当するd軸電流を流すことで消費することにより、回生トルクを確保したまま電動機自体で回生エネルギーの吸収が可能となる。この構成によれば、回生エネルギー量の連続的な制御において、機械的アクチュエータの制御等によって機械的な損失として消費することなく、電気エネルギーとして直接消費させるため過渡応答特性に優れ、バッテリの充電状態が高いときであっても回生トルクの立ち上りを瞬時に制御可能になる。 【0007】 【発明の実施の形態】(第1の実施例)図1〜図5は本発明の第1の実施例を示す図であり、図1は構成を示すブロック図、図2は電流位相を示すベクトル図、図3は電動機のトルク−回転数曲線上の動作点の一例を示す図、図4は回生制御を行った場合の限界点を示すベクトル図、図5は△id補償演算器の演算例を示すフローチャートである。 【0008】まず、図1を用いて第1の実施例の構成を説明する。図1において、102〜106および111、112で構成される部分はモータ制御装置を形成している。電動機の回生制御を行う際には、上記モータ制御装置に外部の制御系から回生トルク指令101が与えられる。トルク電流Map102では、指令されたトルクに見合ったd軸電流指令値id*115およびq軸電流指令値iq*116を出力する。それらの電流指令値は後述する△id補正演算器103によって補正後の電流指令値id*’117およびiq*’118に変換された後、電流制御器104に入力される。 【0009】電流制御器104は、d軸電流指令値id*’l17とd軸現在電流値id113との偏差に基づいてd軸電圧指令値vd*を出力し、同様にq軸電流指令値iq*’118とq軸現在電流値iq114との偏差に基づいてq軸電圧指令値vq*を出力する。 【0010】上記のd軸電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq*は、必要に応じて非干渉制御器105により非干渉演算処理を施し、2相→3相変換器106により3相電圧指令値に変換された後、インバータ等の電力変換装置107へ指令信号として与えられる。 【0011】上記の指令信号に応じて電力変換装置107から出力された電力により電動機109に電流が流れる。この際に流れる相電流を電流センサ108で検出し、3相→2相変換器111によりd軸現在電流値113およびq軸現在電流値114に変換し、前記電流制御器104にフィードバックする。 【0012】回転角検出器110は、電動機109の現在回転角を検出する。この回転角は、前記2相→3相変換器106および3相→2相変換器111における座標変換演算に用いられる。 【0013】また、バッテリ装置120は、前記電力変換装置107に対して直流電流を供給し、かつ、回生動作時には回収する。バッテリ状態検出手段121は、バッテリ装置120の充電状態を検出して、充電状態情報122を前記△id補正演算器103に入力している。 【0014】以下、△id補正演算器103について説明する。バッテリ状態検出手段121で検出したバッテリ装置120の充電状態情報122により、満充電あるいは満充電に近い状態にあるときには、△id補正演算器103は回生トルク電流iqに等しい大きさの電流△id△id=1q* …(数1) をd軸電流指令値id*115に付加した値を、補正後の電流指令値id*’117として出力する。すなわち、△id補正演算器103の出力指令値は、id*’=id*+△id …(数2) iq*’=iq* …(数3) となり、2相電流の大きさiaは、 ia=√(2・iq2+2・id・iq+id2) …(数4) となる。 【0015】上記の動作における2相電流の状態を図2のベクトル図を用いて説明する。図2は、△id補正を行う前の電流ベクトル205と補正を行った後の電流ベクトル208を示すベクトル図である。補正前の電流ベクトル205は、トルク指令101からトルク−電流Map102により変換されたd軸電流指令値206*とq軸電流指令値207*を合成したベクトルである。 【0016】補正後の電流ベクトル208は、上記q軸電流指令値iq*207と同じ大きさのd軸電流ベクトル△id209を上記d軸電流指令値id*206に足し合わせたベクトル(d軸上)と、上記q軸電流指令値iq*207とを合成したベクトルである。そして動作点204で電流が流れることを示している。 【0017】これにより、回生トルクに寄与するq軸電流値を保持したまま、回生量に等しいd軸電流を流すため、電動機からバッテリに対するエネルギーの出入りがなく、かつ、回生トルクを保持することが可能となる。つまりバッテリに吸収出来ない回生エネルギーを電動機自体で吸収することが出来る。 【0018】図3は、トルク−回転数曲線上での電動機の動作点を示す説明図であり、図2のベクトル図上の動作点204で電流が流れたときは、トルク−回転数曲線上の動作点301に固定される。 【0019】この実施例による回生制御は、図4に示す様に、電力変換装置107などの能力により制限される電流リミット円403内で制御されなければならない。すなわち、同一の回生トルク指示においても、回転数の上昇等によりd軸電流指令値id*115が増えると、id*’l17も増加し、合成ベクトルia408が電圧リミット円に達したときが制御限界となる。このときの動作点を図3における動作点302とすると、本制御を用いることにより、バッテリが満充電状態であっても、最大回転数304までの回生トルクー定制御が可能となる。通常は、システムの最高回転数を当該制御限界内に設定すれば、システムの全動作回転数領域において、本発明による回生制御が可能となる。 【0020】次に、本実施例の△id補償演算の手順を図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップ501では、△id補償器103において、トルク電流Map102が出力するd軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*を読み込む。また、ステップ502では、バッテリが満充電状態であるか否かの情報を読み込む。この充電状態の情報は、バッテリ制御を行う処のバッテリ制御器内で、当該バッテリの電圧や充電電流等の情報により判定され、出力される。 【0021】ステップ503では、充電レベルの判定を行う。バッテリ状態信号が満充電状態でなければ、△id補償器103の演算結果id*’、iq*’をトルク−電流Mapが出力した値に一致させる。また、満充電状態であった場合は、△id補償器103の演算結果id*’、iq*’を、トルク−電流Mapが出力した値のうち、id*にiq*を加えた値をid*’として出力する。 【0022】ステップ506では、前記のように、電力変換装置107などの能力により制限される電流リミット円403内で制御されなければならないことから、合成ベクトルiaを算出する。ステップ507では、iaが電流リミット円の内側かどうかを判定し、リミット円を越えた場合は、ステップ509で回生限界フラグをセットする。リミット円を越えない場合は、ステップ508で回生限界フラグをクリアする。上記の回生限界フラグは、上位の制御器が回生可能か否かを判断するために用いることができる。なお、前述の如く、一般的にはシステムの最高動作回転数を制御限界内に設定することにより、ステップ506〜ステップ509の演算は省略可能である。最後に、ステップ510では、演算結果id*’、iq*’を出力する。 【0023】本第1の実施例のように、バッテリの充電状態が満充電かそれに近い状態であって、電動機の回生エネルギーをバッテリが吸収できない場合は、バッテリが吸収しきれない電動機の回生エネルギーを、回生トルクに等しい大きさに相当するd軸電流を流すことで消費することにより、回生トルクを確保したまま電動機自体で回生エネルギーの吸収が可能となる。この構成によれば、回生エネルギー量の連続的な制御において、機械的アクチュエータの制御等によって機械的な損失として消費することなく、電気エネルギーとして直接消費させるため過渡応答特性に優れ、バッテリの充電状態が高いときであっても回生トルクの立ち上りを瞬時に制御可能となる。さらに電動機の回生トルク電流に相当するd軸電流によりバッテリへのエネルギー入出力がなくなるため、バッテリの充電状態が高いときに連続的かつ高精度に回生エネルギー量を制御する場合でも、回生しきれないエネルギーを特別なブレーキアクチュエータ等により高精度に吸収する必要がなく、より低コストでのシステム構成が可能となる、という効果が得られる。 【0024】なお、本実施例においては、電気エネルギー供給手段としてバッテリ装置120のみを示しているが、その他に、例えば燃料電池や発電機(内燃機関で駆動)のような発電装置を備えている場合でも、充放電が可能で回生電気エネルギーを吸収可能なバッテリや大容量のコンデンサ等を備えていれば、本発明を適用することが出来る。以下の実施例でも同様である。 【0025】(第2の実施例)本発明の第2の実施例を、図6、図7を用いて説明する。図6は第2の実施例における電動機の電流位相を示すベクトル図、図7は第2の実施例の構成を示すブロック図である。まず、図7を用いて本実施例の構成を説明する。702〜706および711、712で構成される部分はモータ制御装置を形成している。電動機の回生制御を行う際には、上記モータ制御装置に外部の制御系から回生トルク指令701が与えられる。トルク電流Map702は、指令されたトルクに見合ったd軸電流指令値id*715およびq軸電流指令値iq*716を出力する。それらの電流指令値は後述する△id補正演算器703によって補正後の電流指令値id*’717およびiq*’718に変換された後、電流制御器704に入力される。電流制御器704は、d軸電流指令値id*’717とd軸現在電流値id713との偏差に基づきd軸電圧指令値vd*を出力し、同様にq軸電流指令値iq*’718とq軸現在電流値iq714との偏差に基づきq軸電圧指令値vq*を出力する。 【0026】上記のd軸電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq*は、必要に応じて非干渉制御器705により非干渉演算処理を施し、2相→3相変換器706により3相電圧指令値に変換される。これらの3相電圧指令値でインバータ等の電力変換装置707が制御され、電力変換装置707の出力により電動機709に電流が流れて駆動される。 【0027】この際、流れる相電流を電流センサ708で検出し、3相→2相変換器711によりd軸現在電流値713およびq軸現在電流値714に変換し、前記電流制御器704にフィードバックする。また、回転角検出器710は、電動機の現在回転角を検出する。この回転角は、前記2相→3相変換器706および3相→2相変換器711における座標変換演算に用いられる。 【0028】また、バッテリ装置720は、電力変換装置707に対して直流電流を供給し、あるいは回収する。バッテリ制御器721は、バッテリ装置720の電圧、充電電流の状態などの情報から、現在回生可能な電流値を決定し、回生可能電流722として△id補正演算器703に入力する。 【0029】△id補正演算器703は、入力された回生可能電流722をもとに、電力変換装置707の効率等を考慮して回生電流値idcxを算出し、全動作領域において、回生トルク電流iqに等しい大きさの電流△id△id=iq* …(数5) をd軸電流指令値id*715に付加した上で上記回生電流値idcxを差し引き、補正後の電流指令値id*’717として出力する。この際、△id補正演算器703の出力指令値は、id*’=id*+△id−idcx …(数6) ただし idcx<△idiq*’=iq* …(数7) となり、2相電流の大きさiaは、 ia=√{2・(iq2+id・iq−id・idcx−iq・idcx) +id2+idcx2} …(数8) となる。 【0030】上記の動作における2相電流の状態を図6のベクトル図を用いて説明する。図6は、△id補正を行う前の電流ベクトル605と補正を行った後の電流ベクトル608を示すベクトル図である。補正前の電流ベクトル605は、トルク指令701からトルク−電流Map702により変換されたd軸電流指令値606*とq軸電流指令値607*を合成したベクトルである。補正後の電流ベクトル608は、上記q軸電流指令値iq*607と同じ大きさのd軸電流ベクトル△id609を上記d軸電流指令値id*606に足し合わせた値から回生電流値idcx610を差引いたベクトル(d軸上)と、上記q軸電流指令値iq*607とを合成したベクトルである。そして動作点604で電流が流れることを示している。 【0031】上記のように、回生トルクに寄与するq軸電流値を保持したままで、q軸電流の回生を相殺するd軸電流△idからバッテリ制御器721の許可する回生可能電流722の分だけを差引いているので、回生可能電流722に等しい電流は常に回生可能となる。 【0032】本第2の実施例の制御限界は、合成電流ベクトルia608が電流リミット円603に達した点である。通常は、システムの最高回転数を当該制御限界内に設定することにより、システムの全動作回転数領域において、本発明による回生制御が可能となる。 【0033】本第2の実施例においては、前記第1の実施例の効果に加えて、所望の回生トルクを保持しつつバッテリに充電可能な充電電流を流すため、回生動作時には常に設定した理想的充電状態が実現可能となる。また、バッテリの充電状態の情報が過渡的に変化しても吸収できない分の充電エネルギーはd軸電流指示による電気エネルギー損失分によって保たれるため、回生トルクに変化がなく過渡的なトルク安定性が増すという効果を有する。 【0034】(第3の実施例)本発明の第3の実施例として、バッテリ装置に蓄積された電気エネルギーや燃料電池等により生成された電気エネルギーなどの電気エネルギー源を用いて電動機を駆動して車両制御を行う場合について説明する。図8は、第3の実施例の構成を示すブロック図である。図8において、破線で囲んだ部分841〜846の部分は車両制御装置840を構成し、また、破線で囲んだ部分801〜806および811〜818の部分はモータ制御装置800を構成している。また、830は車両の駆動輪、831は減速機+差動ギア、832は車輪速検出器、841はアクセル信号、846は切替器、847はトルク指令値、849は回生限界信号である。 【0035】まず、車両制御装置840が協調回生制御による減速を行う場合について説明する。図示しない協調回生制御器から回生制動トルク指令841が与えられると、それに応じて指令トルク演算器844はモータ制御装置800に対してトルク指令847を指令する。 【0036】モータ制御装置800では、与えられたトルク指令に対して、トルクフィルタ801(例えば1次遅れフィルタ等)でトルクフィルタ処理を施し、トルク−電流Map802により電流指示値id*815、iq*816に変換する。 【0037】モータ制御装置800は、先に述べた△id補正演算器803を有していることから、制動時に付加する電動機の回生トルクをバッテリ装置820の充電状態によらず、任意に制御可能となるため、常に要求値どおりの減速制御が可能となる。そして回生制動を行う際に、電動機の担う制動力がバッテリの充電状態により制約を受けないため、従来のようにバッテリの充電状態に応じてブレーキアクチュエータ等の制動装置を制御して総制動力を指令値どおりに保持するような複雑な制御の必要がなくなる。 【0038】つぎに、車両制御装置840が速度制御を行う場合について説明する。車両速度制御器845は、外部から与えられる車両速度設定値843と車輪速検出器832等の車両速度検出手段からの車速情報848との偏差に応じてトルク指令値847を出力し、モータ制御装置800は該トルク指令値847に従って電流制御を行う。この際、モータ制御装置800は先に述べた△id補正演算器803を有していることから、バッテリ装置820の充電状態が満充電またはそれに近い状態にあるときでも、バッテリ装置820が吸収できない電動機の回生する電気エネルギーと等しいか、あるいは回生電流と充電電流との差分のd軸電流によって消費することにより、充電状態が高い状態(満充電またはそれに近い状態)でも回生動作が可能となるので、常に指示どおりの減速度を得ることが可能となり、精度の高い車両速度制御が可能となる。 【0039】上記のように第3の実施例においては、バッテリの充電状態が高いときには、バッテリが吸収できない電動機の回生電気エネルギーと等しいか、あるいは回生電流と充電電流との差分のd軸電流によって消費することにより、充電状態が高いときでも回生動作が可能となるため、常に指示どおりの減速度を得ることが可能となり、精度の高い車両速度制御が可能となる。 【0040】また、ブレーキアクチュエータ等の機械的減速手段を利用することなく車両速度を制御することが可能であるため、車両速度制御の過渡応答特性にすぐれ、特に減速制御時のトルク立ち上り性能が極めて応答性良く制御可能となる。これにより、車両速度制御の制御安定性が増すとともに、より目標応答性のよい車両速度制御が可能となる。 【0041】また、当該減速トルクの過渡応答特性向上により、バッテリの充電状態が高い場合においても電動機の加減速トルクを高速で制御可能となる。そのため、車両駆動軸のねじり振動に起因した車両のガクガク振動に対して、車両速度制御のみを行なうことにより該振動を引き起こす捩りトルクを打ち消すための振動抑制トルクを生じせしめ、車両速度制御を行なうことでガクガク振動を抑制することが可能となる。 【0042】また、モータ制御装置からの電流指令のみで任意に回生トルクを制御可能であるため、連続的に制動力を制御するための特別なブレーキアクチュエータ等を必要としないので、制御構造が簡素化するとともに、システム構成が安価になる。 【0043】また、回生協調制動を行う際にも、制動時に付加する電動機の回生トルクをバッテリの充電状態によらず、任意に制御可能となるため、常に要求値どおりの減速制御が可能となる。 【0044】また、回生制動を行う際に、電動機の担う制動力がバッテリの充電状態により制約を受けないため、バッテリの充電状態に応じて制動制御装置によりブレーキアクチュエータ等の制動装置を制御して総制動力を指令値どおりに保持するような複雑な制御の必要がなくなる。 【0045】また、回生協調制動を行う際に、とりわけ制動時にブレーキ等の制動装置の制動力に加え、常に一定量の回生制動力を上乗せする制御方式をとる回生制動装置においては、バッテリの充電状態により制動力が変化することなく、常に安定したの制動力を得ることが可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
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| 【出願日】 |
平成14年3月5日(2002.3.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075753 【弁理士】 【氏名又は名称】和泉 良彦
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| 【公開番号】 |
特開2003−259505(P2003−259505A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月12日(2003.9.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−58286(P2002−58286) |
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