| 【発明の名称】 |
制動制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐々木 博樹 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
【氏名】中村 英夫 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
【氏名】堤 淳二 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
【氏名】田添 和彦 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】電動発電機の回生制動力が変速機を介して車輪に付与されるとき、車輪への回生制動力が過大にならないようにして適正化を図る。
【解決手段】車輪10FL、10FRとモータジェネレータ12、13との間に介装される変速機が無段変速機14であるとき、無段変速機14の変速比Cが大きいほど、小さい回生制動トルク制限値Tm-ltd を設定する。モータジェネレータ12、13の回生制動トルクが同等であるとき、車輪10FL、10FRに付与される回生制動トルクは変速比Cが大きいほど、大きいので、回生制動トルク制限値Tm-ltd は、変速比Cが大きいほど、小さく設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動発電機による回生制動力を、変速機を介して車輪に付与可能とし、当該変速機に入力される前記電動発電機の回生制動力の最大値を、当該変速機の変速比に応じて制限することを特徴とする制動制御装置。 【請求項2】 車輪に駆動力と回生制動力とを付与可能な電動発電機と、前記電動発電機と車輪との間に介装された変速機と、前記変速機の変速比を検出する変速比検出手段と、車両の運転状態に応じて前記電動発電機の駆動力及び回生制動力を制御する電動発電機制御手段と、前記変速比検出手段で検出された変速機の変速比に応じて前記電動発電機の回生制動力の最大値を設定する回生制動力最大値設定手段とを備えたことを特徴とする制動制御装置。 【請求項3】 前記回生制動力最大値設定手段は、前記変速比検出手段で検出された変速機の変速比が大きいほど、前記電動発電機の回生制動力の最大値を小さく設定することを特徴とする請求項2に記載の制動制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、車輪に駆動力と回生制動力との双方を付与可能な電動発電機を備えた車両の制動制御装置に関し、特に電動発電機による回生制動力の制御に好適なものである。 【0002】 【従来の技術】このような制動制御装置としては例えば特開平10−264793号公報や特開2001−8306号公報に記載されるものがある。これらの制動制御装置では、運転者によるブレーキペダル踏力に応じた要求制動力に対し、その時点で発生可能な回生制動力を主とし、不足分を摩擦制動、例えば流体圧制動等で補うようにすることで、エネルギの回収効率を向上させている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の制動制御装置では、常時、発生可能な最大回生制動力で制動を行うため、電動発電機と車輪との間に変速機が介装されているような場合には、電動発電機で発生する回生制動力が一定であっても、車輪に付与される回生制動力は変速機の変速比に応じて変化するため、要求制動力に対して、実際の車輪に作用する制動力が大きすぎる場合がある。 【0004】本発明は、これらの諸問題を解決すべく開発されたものであり、適正な制動力を車輪に付与できる制動制御装置を提供することを目的とするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係る制動制御装置は、電動発電機による回生制動力を、変速機を介して車輪に付与可能とし、当該変速機に入力される前記電動発電機の回生制動力の最大値を、当該変速機の変速比に応じて制限することを特徴とするものである。 【0006】また、本発明のうち請求項2に係る制動制御装置は、車輪に駆動力と回生制動力とを付与可能な電動発電機と、前記電動発電機と車輪との間に介装された変速機と、前記変速機の変速比を検出する変速比検出手段と、車両の運転状態に応じて前記電動発電機の駆動力及び回生制動力を制御する電動発電機制御手段と、前記変速比検出手段で検出された変速機の変速比に応じて前記電動発電機の回生制動力の最大値を設定する回生制動力最大値設定手段とを備えたことを特徴とするものである。 【0007】また、本発明のうち請求項3に係る制動制御装置は、前記請求項2の発明において、前記回生制動力最大値設定手段は、前記変速比検出手段で検出された変速機の変速比が大きいほど、前記電動発電機の回生制動力の最大値を小さく設定することを特徴とするものである。 【0008】 【発明の効果】而して、本発明のうち請求項1に係る制動制御装置によれば、電動発電機による回生制動力を、変速機を介して車輪に付与可能とし、当該変速機に入力される前記電動発電機の回生制動力の最大値を、当該変速機の変速比に応じて制限することとしたため、変速比が大きいほど、回生制動力の最大値を小さく設定すれば、車輪に付与される回生制動力が大きくなりすぎるのを防止することができ、もって適正な回生制動力を車輪に付与することができる。 【0009】また、本発明のうち請求項2に係る制動制御装置によれば、変速機の変速比に応じて前記電動発電機の回生制動力の最大値を設定する構成としたため、変速比が大きいほど、回生制動力の最大値を小さく設定すれば、車輪に付与される回生制動力が大きくなりすぎるのを防止することができ、もって適正な回生制動力を車輪に付与することができる。 【0010】また、本発明のうち請求項3に係る制動制御装置によれば、変速機の変速比が大きいほど、電動発電機の回生制動力の最大値を小さく設定する構成としたため、車輪に付与される回生制動力が大きくなりすぎるのを防止することができる。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示すシステム概略構成図であり、交流同期モータにより回生ブレーキトルクを制御する間、制動流体圧を減圧制御することにより、回生エネルギーを効率的に回収する回生協調ブレーキ制御システムに本発明の制動制御装置を適用したものである。 【0012】図1において、運転者によって制動操作されるブレーキペダル1は、ブースタ2を介してマスタシリンダ3に連結されている。前記ブースタ2は、ポンプ21によって昇圧され、アキュームレータ22に蓄圧された高圧の制動流体圧を用いて、ペダル踏力を倍力してマスタシリンダに供給する。なお、前記ポンプ21は、圧力スイッチ23によってシーケンス制御されている。また、図中の符号4は制動流体のリザーバである。 【0013】前記マスタシリンダ3は、各車輪10のホイールシリンダ5FL〜5RRに接続されているが、その制動流体路の途中には、各ホイールシリンダ5FL〜5RRの制動流体圧を個別に制御する制動流体圧回路6が介装されている。この制動流体圧回路6は、前記各ホイールシリンダ5FL〜5RRと同等の流体付加を備えたストロークシミュレータに前記マスタシリンダ3を接続し、代わりに前記ポンプ21の出力圧若しくは前記アキュームレータ22の蓄圧を各ホイールシリンダ5FL〜5RRに供給して増圧したり、各ホイールシリンダ5FL〜5RRの制動流体圧をリザーバ4に還元して減圧したりすることにより、各ホイールシリンダ5FL〜5RRの制動流体圧を個別に制御することを可能とする。また、この制動流体圧回路には、マスタシリンダ3の出力圧を検出するマスタシリンダ圧センサやマスタシリンダ3から切り離された状態の各ホイールシリンダ5の制動流体圧を検出するホイールシリンダ圧センサが設けられ、それらの検出信号が制動流体圧コントロールユニット7に出力される。 【0014】一方、この車両の駆動輪である前輪10FL、10FRは、エンジン8のほかに、二つの交流動機モータ、所謂モータジェネレータ(電動発電機)12、13でも駆動される。このうち、一方のモータジェネレータ12は無段変速機、所謂CVT14を介して前輪10FL、10FRに接続され、このモータジェネレータ12とエンジン8との間にクラッチ15が介装されている。つまり、この一方のモータジェネレータ12とエンジン8とはパラレルハイブリッドに構成されている。これに対し、他方のモータジェネレータ13は、エンジン8と直結されており、所謂シリアルハイブリッドを構成している。これらのモータジェネレータ12、13は、バッテリからの供給電力によって電動機として前輪10FL、10FRを駆動すると共に、前輪10FL、10FRからの路面駆動トルクによって発電機としてバッテリに蓄電することができる。このバッテリへの電力の回収時には、モータジェネレータ12、13を回転するために路面駆動トルクが消費され、結果的に駆動輪に制動力が付与される。この制動が回生制動であり、この実施形態では、非駆動輪である後輪10RL、10RRとの理想制動力配分相当の制動力以上の制動力を回生制動力として駆動輪である前輪10FL、10FRに付与できるように構成されている。 【0015】前記モータジェネレータ12、13は、モータコントロールユニット9からの指令によって制御される。具体的には、モータジェネレータ12、13の駆動状態や回生制動状態を制御する。例えば、車両の発進時にはモータジェネレータ12、13を電動機として左動して駆動輪である前輪10FL、10FRを駆動する。また、車両惰性走行時や減速時には、モータジェネレータ12、13を発電機として作動して回生制動力を付与する。そのため、このモータコントロールユニット9には、モータジェネレータ12、13の運転状態やバッテリ状態が入力される。 【0016】前記制動流体圧コントロールユニット6及びモータコントロールユニット9は、通信回線を介して回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11に接続している。前記制動流体圧コントロールユニット6やモータコントロールユニット9は、勿論、夫々、単体でホイールシリンダ5FL〜5RRの制動流体圧やモータジェネレータ12、13の運転状態を制御することが可能であるが、回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11からの指令に応じて、それらを制御することにより、より効率よく、車両運動エネルギーの回収を行って燃費を向上することが可能となる。 【0017】具体的には、モータコントロールユニット9は、回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11から受信した回生ブレーキトルク指令値に基づいて、回生ブレーキトルクを制御すると共に、バッテリの充電状態や温度等で求められる最大許容回生制動トルクを算出し、それを回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11に送信する。また、制動流体圧コントロールユニット7は、回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11から受信した制動流体圧指令値に応じて各ホイールシリンダ5FL〜5RRの制動流体圧を制御すると共に、前記マスタシリンダ圧センサ、ホイールシリンダ圧センサで検出したマスタシリンダ圧及びホイールシリンダ圧、或いは車輪速度を回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11に送信する。また、この回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11は、前記無段変速機14を制御する無段変速機コントロールユニット16とも相互通信を行っており、当該無段変速機コントロールユニット16からは前記無段変速機14の現在の変速比が回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11に送信される。 【0018】前記回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11を始めとする、制動流体圧コントロールユニット7やモータコントロールユニット9等の各コントロールユニットは、マイクロコンピュータ等の演算処理装置を備え、そのうち、制動流体圧コントロールユニット7やモータコントロールユニット9は、各指令値に応じた駆動信号や制御信号を創成し、前述した各アクチュエータに向けて出力する。これに対し、前記回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11は、運転者の意図に合致した減速度が得られると共に、最も車両運動エネルギーの回収効率のよい制動流体圧指令値及び回生トルク指令値を算出し、夫々、制動流体圧コントロールユニット7及びモータコントロールユニット9に出力する。 【0019】次に、前記回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11内で行われる制動流体圧指令値及び回生トルク指令値の算出のために、目標減速度αdem から制動トルク指令値Td-com を算出する手法を図2のブロック図に基づいて説明する。例えば、目標減速度αdem を、運転者のブレーキペダル踏込み量(制動操作量)、即ちマスタシリンダ圧Pmcに比例した値であるとしたとき、その目標減速度αdem のみに応じたフィードフォワード項と、実際に車両に発生している減速度をフィードバックしたフィードバック項とを求め、それらの合算値を制動トルク指令値Td-com とする。 【0020】この図2では、ブロックB4(応答特性P(s))が自車両に相当する。図中のαV は、自車両で達成される、或いは発生する減速度である。ここで、制動開始直前の減速度、例えばエンジンブレーキ力による減速度や登坂路の減速度、或いは降坂路の加速度等を基準減速度αB としたとき、前記自車両で発生する減速度αV から前記基準減速度αB を減じた値(αV −αB )が、制動制御系で達成すべき減速度になる。 【0021】この図2のブロック図では、まずブロックB1において、制御対象である自車両モデル(時定数Tp の一次遅れ系)の応答特性Pm (s) を規範モデル(時定数Tr の一次遅れ系)の応答特性Fref (s) に一致させるために、前記目標減速度αdem に対し、下記1式で示すフィードフォワード補償器(位相補償器)CFF(s) 処理を施して制動トルク指令値のフィードフォワード項Td-FFを算出する。なお、式中のK2 は、目標減速度αdem を制動トルクに換算するための車両諸元定数である。 【0022】 【数1】
【0023】一方、制動トルク指令値のフィードバック項Td-FBを算出するため、まずブロックB2で、前記目標減速度αdem に対し、下記2式で示す規範モデル特性Fref (s) 処理を施して規範減速度αref を算出する。 【0024】 【数2】
【0025】このようにして算出された規範減速度αref から、前記自車両で発生する減速度αV と基準減速度αB との差(αV −αB )を加減算器で減じて減速度のフィードバック差分値Δαを算出する。そして、この減速度のフィードバック差分値Δαに対し、ブロックB3で、下記3式で示すフィードバック補償器CFB(s) 処理を施して制動トルク指令値のフィードバック項Td-FBを算出する。なお、前記フィードバック補償器CFB(s) は、基本的なPI(比例ー積分)制御器であり、式中の制御定数KP 、KI はゲイン余裕や位相余裕を考慮して設定する。 【0026】 【数3】
【0027】従って、前記制動トルク指令値のフィードフォワード項Td-FFと制動トルク指令値のフィードバック項Td-FBとを加算器で加算して制動トルク指令値Td-comを算出することができる。次に、前記回生協調ブレーキ制御コントロールユニット11内で行われる制動流体圧指令値及び回生トルク指令値算出のための演算処理を図3のフローチャートに従って説明する。 【0028】この演算処理は、所定時間ΔT(例えば10msec. )毎のタイマ割込処理として実行される。なお、このフローチャートでは、特に通信のためのステップを設けていないが、演算によって得られた情報は随時記憶され、記憶されている情報は、必要に応じて、随時読込まれる。この演算処理は、まずステップS1で、前記マスタシリンダ圧センサで検出されたマスタシリンダ圧Pmc及びホイールシリンダ圧センサで検出された各ホイールシリンダ圧Pwcを前記制動流体圧コントロールユニット7から読込む。 【0029】次にステップS2に移行して、前記制動流体圧コントロールユニット7から読込んだ車輪速度から車両の走行速度を求め、更に下記4式の伝達関数Fbpf (s)で示されるバンドパスフィルタ処理を施して駆動輪減速度を求め、それを前記実際の車両に発生している車両減速度αV とする。但し、式中のωは固有角周波数、ζは減衰定数である。 【0030】 【数4】
【0031】次にステップS3に移行して、前記モータコントロールユニット9から利用可能な最大回生トルクTmmaxを読込む。次にステップS4に移行して、前記ステップS1で読込んだマスタシリンダ圧Pmcに所定の定数K1 を乗じ、その負値を前記目標減速度αdem として算出する。 【0032】次にステップS5に移行して、エンジンブレーキ力による減速度の推定値、エンジンブレーキ減速度推定値αeng を算出する。具体的には、まず前記ステップS2で読込んだ駆動輪速度を車両の走行速度とし、この走行速度とシフトポジションとから図4aの制御マップに従ってエンジンブレーキ力(図ではエンブレ力)推定値又は目標値Teng を求める。また、同時に、自車両の走行速度から図4bの制御マップに従って平坦路における走行抵抗Treg を求める。そして、それらの和を平均的な車両重量MV で除してエンジンブレーキ減速度推定値αeng を算出する。 【0033】次にステップS6に移行して、前記ステップS4で算出した目標減速度αdemに対し、前記1式のフィードフォワード補償器(位相補償器)CFF(s) 処理を施して制動トルク指令値のフィードフォワード項Td-FFを算出する。次にステップS7に移行して、例えば前記ステップS1で読込んだマスタシリンダ圧Pmcが比較的小さな所定値以上であるか否か等を利用することによってブレーキペダルが踏込まれているブレーキペダルオン(制動操作)状態であるか否かを判定し、ブレーキペダルオン状態である場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS8に移行する。 【0034】前記ステップS8では、ブレーキ操作直線減速度α0 及びエンジンブレーキ減速度基準値αeng0を更新してからステップS11に移行する。具体的には、アクセルペダル解除操作、即ちアクセルオフからブレーキ操作、即ちブレーキオンまでの制動開始時間TJ を求め、その制動開始時間TJ が、例えばエンジンブレーキ力が収束する時間相当の所定値TJ0以上であるときには、前記ステップS2で算出した車両減速度αV をブレーキ操作直前減速度α0 とすると共に、前記ステップS5で算出したエンジンブレーキ減速度推定値αeng をエンジンブレーキ減速度基準値αeng0とする。また、前記制動開始時間TJ が前記所定値TJ0未満であるときには、前記ステップS5で算出したエンジンブレーキ減速度推定値αeng をブレーキ操作直前減速度α0 とすると共に、当該エンジンブレーキ減速度推定値αeng をエンジンブレーキ減速度基準値αeng0とする。即ち、制動開始時間TJ がエンジンブレーキ収束所要時間相当の所定値TJ0以上であるときには、実際の車両減速度αV をブレーキ操作直前減速度α0 とし、所定値TJ0未満であるときには、その後に発生するであろうエンジンブレーキ減速度推定値αeng をブレーキ操作直前減速度α0 とする。 【0035】一方、前記ステップS9では、前記ステップS5で算出したエンジンブレーキ減速度推定値αeng から前記エンジンブレーキ減速度基準値αeng0を減じた値を前記ブレーキ操作直前減速度α0 に和して、前記基準減速度αB を算出してからステップS10に移行する。前記ステップS10では、前記ステップS9で算出した基準減速度αB を用い、前述のように目標減速度αdem に対して前記2式で示す規範モデル特性Fref(s) 処理を施して規範減速度αref を算出し、この規範減速度αref から車両減速度αV と基準減速度αB との差(αV −αB )を減じて減速度のフィードバック差分値Δαを算出し、この減速度のフィードバック差分値Δαに対し、前記3式で示すフィードバック補償器CFB(s) 処理を施して制動トルク指令値のフィードバック項Td-FBを算出してから前記ステップS11に移行する。 【0036】前記ステップS11では、前記ステップS6で算出した制動トルク指令値のフィードフォワード項Td-FFと前記ステップS10で算出した制動トルクの指令値のフィードバック項Td-FBとの和から制動トルク指令値Td-com を求め、それを制動流体圧制動トルク指令値Tb-com と回生制動トルク指令値Tm-com とに配分する。ここでは、可及的に燃費を向上するため、前記ステップS3で読込んだ最大回生トルクTmmaxをできるだけ使い切るように配分する。本実施形態の前記モータジェネレータ12、13は前輪だけを駆動し、前輪からの路面駆動トルクによって回生制動するものであるから、以下のようにして場合分けを行う。まず、図5に示す前後輪制動力配分制御マップ(例えば理想制動力配分マップ)に従って、前記制動トルク指令値Td-com を前輪制動トルク指令値Td-com-F と後輪制動トルク指令値Td-com-R とに分配する。そして、この前輪制動トルク指令値Td-com-F と後輪制動トルク指令値Td-com-R との和、即ち前記制動トルク指令値Td-com が前記最大回生トルクTmmax未満であるときには回生制動のみとし、前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F 及び後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R を共に“0”とし、回生制動トルク指令値Tm-com を前記制動トルク指令値Td-com に設定する。また、前記前輪制動トルク指令値Td-com-F が前記最大回生トルクTmmax以上であるときには回生制動と後輪制動流体圧制動とし、前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F を“0”とし、後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R を、前記制動トルク指令値Td-com から最大回生トルクTmmaxを減じた値とし、回生制動トルク指令値Tm-com を最大回生トルクTmmaxに設定する。また、前記最大回生トルクTmmaxが“0”近傍の所定値以下であり且つ前記前輪制動トルク指令値Td-com-F が当該最大回生トルクTmmax未満であるときには回生制動と前後輪制動流体圧制動とし、前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F を、前輪制動トルク指令値Td-com-F から最大回生トルクTmmaxを減じた値とし、後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R を後輪制動トルク指令値Td-com-R とし、回生制動トルク指令値Tm-com を最大回生トルクTmmaxに設定する。また、前記最大回生トルクTmmaxが“0”近傍の所定値以下であり且つ前記前輪制動トルク指令値Td-com-F と後輪制動トルク指令値Td-com-R との和、即ち前記制動トルク指令値Td-com が当該記最大回生トルクTmmax以上であるときには制動流体圧制動のみとし、前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F を前輪制動トルク指令値Td-com-F とし、後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R を後輪制動トルク指令値Td-com-R とし、回生制動トルク指令値Tm-com を“0”に設定する。 【0037】次にステップS12に移行して、前記無段変速機コントロールユニット16から無段変速機14の現在の変速比Cを読込む。次にステップS13に移行して、図6に示す制御マップに従って、前記ステップS12で読込んだ無段変速機14の現在に変速比Cに応じた回生制動トルク制限値Tm-ltd を設定する。この図6の制御マップは、横軸を変速比Cとし、縦軸を回生制動トルク制限値Tm-ltd とし、変速比C、即ち減速比が大きいほど、回生制動トルク制限値Tm-ltd が小さくなるように、下に凸の曲線で設定されている。これは、本実施形態のようにモータジェネレータ12、13の回生制動トルクが無段変速機14を介して前輪10FL、10FRに付与されるときには、モータジェネレータ12、13の回生制動トルクが同等でも、前輪10FL、10FRに付与される回生制動トルクは、変速比Cが大きいほど、大きくなるため、実際に前輪10FL、10FRに付与される回生制動トルクが大きくなりすぎないように、変速比Cが大きいときには回生制動トルク制限値Tm-ltd を小さく設定するためのものである。 【0038】次にステップS14に移行して、前記ステップS11で配分設定された回生制動トルク指令値Tm-com が前記ステップ13で設定された回生制動トルク制限値Tm-ltd 以上であるか否かを判定し、当該回生制動トルク指令値Tm-com が回生制動トルク制限値Tm-ltd 以上である場合にはステップS15に移行し、そうでない場合にはステップS16に移行する。 【0039】前記ステップS15では、前記回生制動トルク制限値Tm-ltd を回生制動トルク指令値Tm-com に設定し直すと共に、前記制動トルク指令値Td-com から前記回生制動トルク制限値Tm-ltd を減じた値を流体圧制動トルク指令値Tb-com に設定し直し、更に前記ステップS11と同様にして、それを前後輪の制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F 、Tb-com-R に配分してからステップS17に移行する。つまり、前記図5に示す前後輪制動力配分制御マップに従って分配された前輪制動トルク指令値Td-com-F から前記回生制動トルク制限値Tm-ltd を減じた値を前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F とし、同じく分配された後輪制動トルク指令値Td-com-R を後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R とする。 【0040】一方、前記ステップS16では、前記ステップS11で設定された回生制動トルク指令値Tm-com をそのまま回生制動トルク指令値Tm-com とすると共に、流体圧制動トルク指令値Tb-com もそのまま流体圧制動トルク指令値Tb-com としてから前記ステップS17に移行する。即ち、前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F はそのまま前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F となり、後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R もそのまま後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R となる。 【0041】前記ステップS17では、前記ステップS15或いはステップS16で設定された前後輪の制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F 、Tb-com-R に所定の車両諸元定数K3 を乗じて前後輪の制動流体圧指令値Pb-com-F 、Pb-com-R を算出する。次にステップS18に移行して、前記ステップS15或いはステップS16で設定された回生制動トルク指令値Tm-com を前記モータコントロールユニット9に向けて出力すると共に、前記ステップS17で算出した前後輪の制動流体圧指令値Pb-com-F 、Pb-com-R を前記制動流体圧コントロールユニット7に向けて出力してからメインプログラムに復帰する。 【0042】この演算処理によれば、前記アクセルオフからブレーキオンまでの間には、そのときの車両減速度αV 又はエンジンブレーキ減速度推定値αeng をブレーキ操作直前減速度α0 として、またそのときのエンジンブレーキ減速度推定値αengをエンジンブレーキ減速度基準値αengOとして随時更新しながら、目標減速度αdem に対する制動トルク指令値フィードフォワード項Td-FFが算出される。この状態での制動トルク指令値Td-com は、この制動トルク指令値フィードフォワード項Td-FFのみであるから、本来、エンジンブレーキ力によって車両減速度αVに反映されており、またシフトダウン操作等を行わない限り、ブレーキペダルを踏込んだときの値よりも小さいから、当該制動トルク指令値フィードフォワード項Td-FFのみからなる制動トルク指令値Td-com が前記最大回生トルクTmmax未満であるときには、前述のように前輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-F 及び後輪制動流体圧制動トルク指令値Tb-com-R を共に“0”とし、回生制動トルク指令値Tm-com を前記制動トルク指令値Td-com に設定する。 【0043】これに対し、ブレーキペダルの踏込みが行われると、そのときの車両減速度αV 又はエンジンブレーキ減速度推定値αeng がブレーキ操作直前減速度α0 として、またそのときのエンジンブレーキ減速度推定値αeng がエンジンブレーキ減速度基準値αengOとして記憶され、このブレーキ操作直前減速度α0 及びエンジンブレーキ減速度基準値αeng0を用いて、そのときのエンジンブレーキ減速度推定値αeng に応じた基準減速度αB が算出され、この基準減速度αB と実際の車両減速度αV と前記規範減速度αref とから制動トルク指令値フィードバック項Td-FBが算出され、これに前記制動トルク指令値フィードフォワード項Td-FFを和した値が制動トルク指令値Td-com となる。このとき、アクセルオフからブレーキオンまでの時間TJ が前記エンジンブレーキ力が収束する時間相当の所定値TJ0以上であれば、そのときの車両減速度αV が前記ブレーキ操作直前減速度α0 に設定されている。従って、ブレーキ操作時に、エンジンブレーキ力や登坂路での減速度や、降坂路での加速度が作用していれば、それは車両減速度αV に表れてブレーキ操作直前減速度α0 に反映しているので、その後の基準減速度αBはそれらの加減速度の影響を反映した値となり、この基準減速度αB と車両減速度αV との差に応じた制動トルク指令値フィードバック項Td-FBは、エンジンブレーキトルクの変動のみを反映した値となり、ブレーキペダルの操作量が一定で前記制動トルク指令値フィードフォワード項Td-FFが同等か又はほぼ同等である限り、運転者の意図した減速度を達成することができる。 【0044】また、この途中にダウンシフトなどによってエンジンブレーキ力が変化したときにも、そのときのエンジンブレーキ減速度推定値αeng と前記エンジンブレーキ減速度基準値αeng0との差を基準減速度αB に反映することができるので、その後も、基準減速度αB と車両減速度αV との差に応じた制動トルク指令値フィードバック項Td-FBに基づいて、運転者の意図した減速度を達成し続けることができる。 【0045】また、アクセルオフからブレーキオンまでの時間TJ が前記エンジンブレーキ力が収束する時間相当の所定値TJ0未満であるときには、エンジンブレーキ減速度推定値αeng を前記ブレーキ操作直前減速度α0 に設定するので、エンジンブレーキ力が収束してから、運転者の意図した減速度を達成することが可能となる。 【0046】図7は、前記図3の演算処理による車両加減速度の経時変化を示したものである。このタイミングチャートでは、平坦路を定速走行中に、時刻t01でアクセルオフ、時刻t02でブレーキオン、時刻t03でダウンシフトを行っており、ブレーキオンからのブレーキペダルの踏込み量、即ちマスタシリンダ圧Pmcは一定である。なお、走行速度の低下に伴う無段変速機内のダウンシフトは考慮していない。時刻t01でアクセルオフとなると、エンジンブレーキ力によって車両に減速度が発生するが、自車両走行速度の減少に伴って、その減速度も次第に小さくなる。 【0047】そして、時刻t02でブレーキオンとなると、そのときの車両減速度αV がブレーキ操作直前減速度α0 に設定され、そのときのエンジンブレーキ減速度推定値αeng がエンジンブレーキ減速度基準値αeng0に設定される。従って、この時刻t02以後、ブレーキペダルの踏込み量に応じた減速度(αV −αB )が、それまでの減速度αB (=α0 )に付加されるが、その後の自車両走行速度の減少に伴ってエンジンブレーキ減速度推定値αeng が小さくなると、このエンジンブレーキ減速度推定値αeng と前記エンジンブレーキ減速度基準値αeng0との差の分だけ減速度基準値αB が小さくなり、これに伴って前記制動流体圧制御又は回生ブレーキ制御によって発生する車両減速度αV はエンジンブレーキトルクの減少分ずつ小さくなってゆく。 【0048】更に、時刻t03でダウンシフトを行うと、その分だけ、エンジンブレーキ減速度推定値αeng が大きくなり、このエンジンブレーキ減速度推定値αeng と前記エンジンブレーキ減速度基準値αeng0との差の分だけ減速度基準値αB が大きくなり、これに伴って前記制動流体圧制御又は回生ブレーキ制御によって発生する車両減速度αV はエンジンブレーキトルクの増加分だけ大きくなる。しかし、その後も、走行速度の減少に伴ってエンジンブレーキ力が減少するので、車両減速度αV は次第に小さくなってゆく。 【0049】図8は、前記図3の演算処理によって制動力制御を行っているときに、回生制動トルクが急速に減少したときの車両減速度の変化をシミュレートしたものである。この実施形態では、車両に発生する減速度αV をフィードバックしながら、回生制動トルクと制動流体圧制動トルクとを制御しているため、例えばこのように回生制動トルクが急速に減少し、車両減速度αV が減少しようとすると、制動流体圧制動トルクを速やかに増大することにより車両減速度αV が減少するのを抑制防止され、例えば回生制動トルクが急速に減少している過渡期の減速度も、その後の定常的な減速度も、それ以前の値とさほど変化しておらず、このようなときにも運転者の意図した減速度を達成し続けることができる。 【0050】これに対して、図9は、単にブレーキペダルの操作量から目標減速度を設定し、自車両の減速度が目標減速度に一致するようにのみ制動流体圧制動トルクを制御したものである。この場合には、実際の車両減速度が減少し始めて、初めて制動流体圧制動トルクが一様に増大されるので、結果的に回生制動トルクが急速に減少している過渡期の減速度も、その後の定常的な減速度も、大きく変化してしまい、運転者の意図した減速度を達成し続けることが困難になっている。 【0051】また、本実施形態では、前記無段変速機14の現在の変速比Cに応じて回生制動トルク制限値Tm-ltd を設定し、最大回生トルクTmmaxのみに従って設定された回生制動トルク指令値Tm-com が当該回生制動トルク制限値Tm-ltd 以上である場合には、当該回生制動トルク制限値Tm-ltd を回生制動トルク指令値Tm-com に設定すると共に、前記流体圧制動トルク指令値Tb-com を、当該回生制動トルク制限値Tm-ltd に応じて設定する。この回生制動トルク制限値Tm-ltd は、前述のように無段変速機14の現在の変速比Cが大きいほど、小さく設定されるので、変速比Cが大きいときでも、駆動輪である前輪10FL、10FRに過大な回生制動トルクが作用することがなく、常時、適正な回生制動トルクが付与される。 【0052】なお、前記実施形態では、変速機が無段変速機であるために、回生制動トルク制限値Tm-ltd を連続的に変化させているが、変速機が、通常の有段変速機である場合には、回生制動トルク制限値Tm-ltd を段階的に変化させてもよい。以上より、前記モータコントロールユニット9が本発明の電動発電機制御手段を構成し、以下同様に、前記図3の演算処理のステップS14〜ステップS18が回生制動力最大値設定手段を構成している。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
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| 【出願日】 |
平成14年3月6日(2002.3.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066980 【弁理士】 【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−259504(P2003−259504A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月12日(2003.9.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−60982(P2002−60982) |
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