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【発明の名称】 車両の減速度制御装置
【発明者】 【氏名】田端 淳
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】一旦設定された所望の減速度で車両をより長い時間減速走行させることができる車両の減速度制御装置を提供する。

【解決手段】走行ポジション選択操作装置(減速度設定操作装置)86の操作により設定された減速度レベルが減速度レベル記憶手段116に車両走行条件毎に記憶され、減速度制御手段102により、その減速度レベル記憶手段116において車両走行条件毎に記憶された減速度レベルが得られるように車両の減速度が制御されるので、所望の減速度レベルが一旦設定されると、より長い時間、所望の減速度で減速走行させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の減速走行時における減速度を設定することが可能な減速度設定操作装置を備えた車両の減速度制御装置であって、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルを車両走行条件毎に記憶する減速度レベル記憶手段と、該減速度レベル記憶手段において車両走行条件毎に記憶された減速度レベルが得られるように車両の減速度を制御する減速度制御手段とを、含むことを特徴とする車両の減速度制御装置。
【請求項2】 前記車両走行条件は車速である請求項1の車両の減速度制御装置。
【請求項3】 前記車両走行条件は路面勾配である請求項1または2の車両の減速度制御装置。
【請求項4】 前記減速度レベルは重み付けされたものである請求項1乃至3のいずれかの車両の減速度制御装置。
【請求項5】 減速走行中において前方走行車両の有無を判定する前方走行車両判定手段を含み、前記減速度レベル記憶手段は、該前方走行車両判定手段によって前方走行車両が無いと判定されたときに、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルを車両走行条件毎に記憶するものである請求項1乃至4のいずれかの車両の減速度制御装置。
【請求項6】 前記減速度レベル記憶手段は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が変化する目標減速度と車両走行条件との関係を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、該関係から車両走行条件に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである請求項1の車両の減速度制御装置。
【請求項7】 前記減速度レベル記憶手段は、高車速ほど目標減速度が大きくなる目標減速度と車速との関係を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、該関係から車速に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである請求項2の車両の減速度制御装置。
【請求項8】 前記減速度レベル記憶手段は、路面勾配が大きくなるほど目標減速度が大きくなる目標減速度と路面勾配との関係を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、該関係から路面勾配に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである請求項3の車両の減速度制御装置。
【請求項9】 前記減速度レベル記憶手段は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が大きくなる基本目標減速度を示す基本目標減速度と車両走行条件との関係を記憶するものであり、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルに対応する該目標減速度は、該関係から決められる基本目標減速度に対して車両走行条件に応じて異なる重み付けがされたものである請求項4の車両の減速度制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の減速走行時における減速度レベルを設定することが可能な減速度設定操作装置を備えた車両の減速度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】たとえば電動機やモータジェネレータなどの駆動力源の回転抵抗を用いた減速走行可能な車両において、運転者による操作によって車両の減速度を設定することができる減速度設定操作装置を備えたものが提案されている。たとえば、特開平8−79907号公報に記載されたハイブリッド車両がそれである。このような車両によれば、アクセルペダルが操作されない車両の減速走行において、運転者による減速度設定操作装置の操作により設定された所望の減速度で減速走行が行われる利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような従来の車両において減速度設定操作装置の操作により設定された所望の減速度、すなわち減速度設定操作装置の操作により設定された減速度は、減速走行中の車両の走行状況が変化する場合が多いことから、車両の走行状況に関係なく一律な減速度を設定しても、車両状況が異なってくると所望の減速度が得られない可能性があった。このような場合には、頻繁に減速度を設定し直す操作が必要となる。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、一旦設定された所望の減速度で車両を減速走行させることができる車両の減速度制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、車両の減速走行時における減速度を設定することが可能な減速度設定操作装置を備えた車両の減速度制御装置であって、(a) 前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルを車両走行条件毎に記憶する減速度レベル記憶手段と、(b) その減速度レベル記憶手段において車両走行条件毎に記憶された減速度レベルが得られるように車両の減速度を制御する減速度制御手段とを、含むことにある。
【0006】
【発明の効果】このようにすれば、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルが減速度レベル記憶手段に車両走行条件毎に記憶され、減速度制御手段により、その減速度レベル記憶手段において車両走行条件毎に記憶された減速度レベルが得られるように車両の減速度が制御されるので、所望の減速度レベルが一旦設定されると、所望の減速度で減速走行させることができる。
【0007】
【発明の他の態様】ここで、好適には、前記車両走行条件は車速である。このようにすれば、車速毎に減速度が異なる減速度レベルが設定されるので、車速の変化に拘わらず所望の減速度で減速走行できる。所望の減速度は、車速が高くなるほど大きくなり車速が低下するほど小さくなる傾向にあるから、上記減速度レベルも、高車速ほど大きくなり低車速ほど小さくなるように設定される。
【0008】また、好適には、前記車両走行条件は路面勾配である。このようにすれば、路面勾配毎に減速度が異なる減速度レベルが設定されるので、路面勾配の変化に拘わらず所望の減速度で減速走行できる。所望の減速度は、路面勾配が大きくなるほど大きく路面勾配が小さくなるほど小さくなる傾向にあるから、上記減速度レベルも、路面勾配が大きくなるほど大きくなり路面勾配が小さくなるほど小さくなるように設定される。
【0009】また、好適には、前記減速度レベルは、車両走行条件に応じて重み付けされたものである。このようにすれば、運転者により減速度レベルが変更操作されると、車両走行条件に応じた重み付けに対応してずらされた目標減速度が設定されるので、所望の減速度を実現するための目標減速度の変化特性が容易に得られる。
【0010】また、好適には、減速走行中において前方走行車両の有無を判定する前方走行車両判定手段が備えられ、前記減速度レベル記憶手段は、該前方走行車両判定手段によって前方走行車両が無いと判定されたときに、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルを車両走行条件毎に記憶するものである。このようにすれば、前方走行車両判定手段により前方走行車両があると判定されたときに減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルは減速度レベル記憶手段に記憶されないことから、車間距離や前方車両の車速や減速度の影響を受けた減速度レベルの記憶が排除されるので、運転者の指向を反映した減速度レベルが記憶される利点がある。
【0011】また、好適には、前記減速度レベル記憶手段は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が変化する目標減速度と車両走行条件との関係(函数、或いは目標減速度マップ)を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、その関係から車両走行条件に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである。このようにすれば、予め記憶された目標減速度と車両走行条件との関係から実際の車両走行条件に基づいて運転者により設定された所望の減速度を得るための目標減速度が好適に決定され、その目標減速度が得られるように実際の車両の減速度が制御されることにより、車両走行条件の変化に拘わらず、所望の減速度が比較的長期間の減速走行中にわたって得られる。
【0012】また、好適には、前記減速度レベル記憶手段は、高車速ほど目標減速度が大きくなる目標減速度と車速との関係を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、その関係から車速に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである。このようにすれば、予め記憶された目標減速度と車速との関係から実際の車速に基づいて運転者により設定された所望の減速度を得るための目標減速度が好適に決定され、その目標減速度が得られるように実際の車両の減速度が制御されることにより、車速の変化に拘わらず、所望の減速度が比較的長期間の減速走行中にわたって得られる。
【0013】また、好適には、前記減速度レベル記憶手段は、路面勾配が大きくなるほど目標減速度が大きくなる目標減速度と路面勾配との関係を記憶するものであり、前記減速度制御手段は、その関係から実際の路面勾配に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものである。このようにすれば、予め記憶された目標減速度と路面勾配との関係から実際の路面勾配に基づいて運転者により設定された所望の減速度を得るための目標減速度が好適に決定され、その目標減速度が得られるように実際の車両の減速度が制御されることにより、路面勾配の変化に拘わらず、所望の減速度が得られる。
【0014】また、好適には、前記減速度レベル記憶手段は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が大きくなる基本目標減速度を示す基本目標減速度と車両走行条件との関係を記憶するものであり、前記減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルに対応する目標減速度は、上記関係から決められる基本目標減速度に対して車両走行条件に応じて異なる重み付けがされたものである。このようにすれば、運転者により減速度レベルが変更操作されると、基本目標減速度に対して一律にずらされた目標減速度が設定されるのではなく、車両走行条件に応じて異なる量だけずらされた目標減速度が設定される。たとえば高車速ほどずれ量が多く、低車速となるほどそのずれ量が小さくされた直線、折線或いは曲線となるので、所望の減速度を実現するための目標減速度の変化特性が容易に得られる。
【0015】
【発明の好適な実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例のエンジン制御装置が適用された車両用動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。図において、駆動力源としてのエンジン10の出力は、自動クラッチ12、トルクコンバータ14を介して自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して一対の駆動輪(後輪)へ伝達されるようになっている。上記自動クラッチ12は、モータ走行時においてエンジン10を切り離すためや急発進時のための摩擦係合装置としても機能するものであり、図示しない電磁式、油圧式などのクラッチアクチュエータによって湿式或いは乾式の摩擦板が係合作動させられる摩擦式自動クラッチである。上記自動クラッチ12とトルクコンバータ14との間には、駆動力源としての電動モータおよび発電機として機能する第1モータジェネレータMG1が配設されている。上記トルクコンバータ14は、自動クラッチ12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。
【0017】上記自動変速機16は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機32と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機34とを備えている。第1変速機32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0018】第2変速機34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
【0019】上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸48との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0020】キャリアK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0021】以上のように構成された自動変速機16では、例えば図2に示す作動表に従って後進ギヤ段と変速比γが順次小さくなる第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の前進5段のうちのいずれかの変速段に切り換えられる。図2において「○」は係合状態を表し、空欄は解放状態を表し、「◎」はエンジンブレーキのときの係合状態を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。この図2から明らかなように、第2変速段(2nd)から第3変速段(3rd)へのアップシフトでは、ブレーキB3を解放すると同時にブレーキB2を係合させるクラッチツークラッチ変速が行われ、ブレーキB3の解放過程で係合トルクを持たせる期間とブレーキB2の係合過程で係合トルクを持たせる期間とがオーバラップして設けられる。それ以外の変速は、1つのクラッチまたはブレーキの係合或いは解放作動だけで行われるようになっている。上記クラッチおよびブレーキは何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0022】図3および図4は、上記出力軸46の回転をロックするためのハイブリッド車両のパーキングロック装置60を説明するものであり、図3は出力軸46の軸心方向から見た図であり、図4はその軸心に直交する方向から見た図である。パーキングロック装置60は、出力軸46に固設されたロックギヤ62と、ロックギヤ62と噛み合ってその回転を阻止するための噛合歯64を有し、そのロックギヤ62に対して噛み合う噛合位置と非噛合位置との間で回動可能にそのハウジング38に設けられたロックポール66と、そのロックポール66の先端部に設けられたカム面68と、上記出力軸46の軸心方向に平行となるように長手方向に移動可能にハウジング38に支持されたパーキングロッド70と、そのパーキングロッド70の先端部に設けられて上記カム面68に係合してパーキングロッド70をロックギヤ62側へ移動させるためのテーパ面72と、そのパーキングロッド70の基端部に形成されたラック74に噛み合うピニオン76を有する電動モータ78と、上記のパーキングロッド70の先端部を嵌め入れてそれを案内する案内穴80を有し、ハウジング38に固定された案内部材82とを備え、その電動モータ78によりパーキングロッド70が先端側に移動させることによりロックポール66をロックギヤ62側へ駆動させてそれを噛合位置とするとともに、電動モータ78によりパーキングロッド70を基端部側へ移動させることによりロックポール66を非噛合位置へ移動させる。上記パーキングロッド70は、好適には、油圧回路に設けられたマニアル弁の弁子を兼ねており、走行ポジション毎に対応した位置に移動させられる。このようなシフト機構は、ワイヤ(電線)を介して油圧回路が走行ポジションに応じた切換作動させられるので、シフトバイワイヤと称されている。これにより、後述の電子制御装置98からの指令に従って自動的にパーキングロックが行われたり、そのパーキングロックが解放されたりするようになっている。
【0023】図5および図6は、走行ポジション選択操作装置86を説明するものであり、図5はその走行ポジション選択操作装置86の配置を概略示す車両の運転席88付近を示し、図6はその走行ポジション選択操作装置86の斜視図である。本実施例の走行ポジション選択操作装置86は、運転者の利き腕などにより左右のいずれであっても所望の手で操作可能となるように、ステアリングホイール84を操作するための運転席88の左右両側にそれぞれ設けられている。右側の走行ポジション選択操作装置86はドア90の内側に設けられ、左側の走行ポジション選択操作装置86は図示しない助手席と運転席88のとの間に設けられている。走行ポジション選択操作装置86は、前後および左右のいずれの方向にも傾動操作可能に設けられることにより、減速度を小さくするための「+」ポジション、減速度を大きくするための「−」ポジション、後進走行を選択するためのR(リバース)ポジション、前進走行を選択するためのD(ドライブ)ポジションの4位置へ択一的に選択操作される自動復帰型のシフト操作レバー92と、そのシフト操作レバー92の前方側位置に設けられ、P(パーキング)ポジションを選択するために操作される自動復帰型ボタンから成るPスイッチ94と、同様に上記シフト操作レバー92の前方側位置に設けられ、N(ニュートラル)ポジションを選択するために操作される自動復帰型ボタンから成るNスイッチ96とを備えている。上記シフト操作レバー92、Pスイッチ94、Nスイッチ96は、車両の走行ポジションを選択するために操作されるシフト操作部材、車両の設定減速度を設定変更するための減速度設定操作体として機能している。また、上記「+」ポジションおよび「−」ポジションは、車両の減速走行時においてその減速度を選択するために減速操作される減速走行ポジションであり、シフト操作レバー92が「−」ポジションへ操作される回数或いは保持時間に応じて目標減速度が順次大きくされ、「+」ポジションへ操作される回数或いは保持時間に応じて目標減速度が順次小さくされる。すなわち、シフト操作レバー92が「−」ポジションへ操作される回数或いは保持時間に応じて目標減速度が大きくされる毎に、減速度が大きい走行ポジションが選択され、「+」ポジションへ操作される回数或いは保持時間に応じて減速度が小さい走行ポジションが選択されるのである。したがって、上記走行ポジション選択操作装置86は、車両の設定減速度を選択する減速度設定操作装置としても機能している。ここで、減速度とは負の加速度の意味であり、その加速度の絶対値でその大小が表される。
【0024】図7は、電子制御装置98に入力される信号およびその電子制御装置98から出力される信号を例示している。たとえば、電子制御装置98には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θACC を表すアクセル開度信号、出力軸46の回転速度に対応する車速信号、加速度センサにより検出される車両の加速度Gを表す信号、シフト操作レバー92の操作位置であるシフトポジションを表す信号などが図示しないセンサから供給されている。また、電子制御装置98からは、燃料噴射弁からエンジン10の気筒内へ噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、エンジン10の起動のための点火信号およびモータジェネレータMG1の作動指令、モータ走行のためのモータジェネレータMG2の作動指令、回生のためのモータジェネレータMG1の作動指令、ダッシュボードに設けられた表示装置99にシフト操作レバー92の操作ポジションを表示させるための表示指令などが出力される。
【0025】上記電子制御装置98は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、予め記憶された関係から実際の車速および要求駆動力(=アクセル開度θACC )に基づいてモータ走行かエンジン走行かを判定し、判定された駆動力源(原動機)で車両を駆動させる駆動力源切換制御、アクセルペダルが操作されないすなわちアクセル開度θACC およびスロットル開度θTHが零である減速走行時における目標減速度が決定され、その目標減速度が得られるようにする回生制御、シフト操作レバー92が減速ポジションである「−」ポジション或いは「+」ポジションへ操作されることに応答して目標減速度を複数段階に切り換える減速度選択操作制御、シフト操作レバー92が減速走行ポジションである「−」ポジション或いは「+」ポジションから非減速ポジションであるDポジション或いはNポジションへ操作されたときの操作量に対する設定減速度の変化量を制御する設定減速度変更制御などを実行する。
【0026】図8は、上記電子制御装置98の制御機能の要部、すなわち走行ポジション選択操作装置86のシフト操作レバー92の操作に応じて目標減速度を記憶する目標減速度学習制御機能を説明する機能ブロック線図である。図8において、駆動源切換制御手段100は、燃費をよくするために最適な駆動力源すなわちエンジン10、モータジェネレータMG1のいずれかを、予め記憶された関係から実際の車速および要求負荷に基づいて選択し、選択された駆動力源に切り換える。これにより、たとえば低車速低負荷領域ではモータジェネレータMG1を用いたモータ走行が選択され、それ以外の領域では、エンジン10を用いたエンジン走行が選択される。さらに詳しくは、たとえばエンジン10の暖気後であり、エアコン用コンプレッサの駆動が不要であり、且つ図示しない二次電池の充電量が十分な状態における停車時には、エンジン10およびモータジェネレータMG1が停止させられる。しかし、停車時であっても、エンジン10の暖気が必要な場合、或いは二次電池の充電が必要な場合は、モータジェネレータMG1を回転駆動するために停車時においてもエンジン10が回転駆動される。通常の車両の発進時では、モータ走行のために、自動クラッチ12が解放された状態で専らモータジェネレータMG1が回転駆動されることにより駆動輪が回転させられる。所定車速以上となったりして低車速低負荷領域から外れると、モータとしても機能する図示しない第2のモータジェネレータMG2によりエンジン10が始動させられるとともに自動クラッチ12が係合させられることにより、エンジン10による走行が行われる。
【0027】減速度制御手段102は、シフト操作レバー92により減速走行ポジションが選択されているときには、エンジン10の回転状態に拘わらず出力軸46に自動変速機16を介して連結させられたモータジェネレータMG1が車両の運動エネルギにより回転駆動されてそのモータジェネレータMG1による発電電力はそのモータジェネレータMG1の回転抵抗に対応することを利用して、そのモータジェネレータMG1により発電された電気エネルギーを二次電池に充電させてエネルギ回収(回生)を行なうことにより、予め車両走行条件(路面勾配および車速V)毎に記憶された減速度レベルが得られるように減速度を制御する。すなわち、アクセルペダルが操作されない車両の非加速走行時すなわち減速走行時(所謂エンジンブレーキ走行時)であって、減速度変更制御手段112により路面勾配および車速Vに基づいて目標減速度が決定されると、その決定された目標減速度が得られるように、モータジェネレータMG1による発電量を制御する。また、減速走行中のブレーキペダル操作時では、上記目標減速度が得られるように、そのブレーキペダル操作量に基づく要求制動力が得られるようにたとえば油圧式の車輪ブレーキ装置104と上記モータジェネレータMG1による回生ブレーキとを協調制御するとともに、エネルギ効率が一層高められるように、その回生ブレーキが優先的に作動させられるようにする。なお、減速度制御手段102は、シフト操作レバー92によって非減速走行ポジションが選択されることにより上記目標減速度がキャンセルされると、目標減速度を得るように車両減速度を制御する減速制御を実行しない。
【0028】車両走行条件検出手段106は、車速V、路面勾配Kなどの車両走行条件(車両走行状態)を検出するために、出力軸46の回転速度に基づいて車速V(km/h)を算出する車速検出手段108と、たとえばアクセル操作量(スロットル開度)に対応する実際の車両加速度と平坦路加速度との比較に基づいて或いは傾斜センサの出力信号に基づいて路面勾配を検出する路面勾配検出手段110とを備えている。
【0029】減速度変更制御手段112は、たとえば図9に示すように予め記憶された複数種類の関係(目標減速度マップ或いは関係式など)から実際の車速V(km/h)に基づいて目標減速度すなわち設定減速度を決定し、その目標減速度を減速度制御手段102へ出力する。上記図9において、A線は、平坦路面において用いられる目標減速度の基本値(基本減速レベルのデフォルト値)を示す目標減速度マップであり、B線は路面勾配が所定値以上である登坂路或いは降坂路において用いられる目標減速度の基本値(基本目標減速度すなわち減速度レベルのデフォルト値)を示す目標減速度マップである。また、減速度変更制御手段112は、減速走行時において運転者のシフト操作レバー92による変更操作に基づいて所望の減速度レベルが得られるように上記目標減速度マップを修正する。図9において、Aa線或いはAb線は、平坦路面での減速走行時において運転者のシフト操作レバー92による変更操作に基づいて設定(決定)された上記A線からの変更値を示す修正線であり、Ba線は、傾斜路面での減速走行時において運転者のシフト操作レバー92による変更操作に基づいて設定(決定)された上記B線からの変更値を示す修正線である。そして、減速度変更制御手段112は、次回の減速走行においてそのような修正線を優先的に選択する。すなわち、減速走行における運転者の減速指向を反映させて減速度変更操作の煩雑さが低減されるように、運転者により設定された減速度レベルが次回の減速走行において自動的に選択されるようになっている。
【0030】このため、上記減速度変更制御手段112は、図9に示すような、路面勾配に応じて選択され且つシフト操作レバー92による変更操作に基づいて設定されることにより運転者の指向する減速度レベルに対応するように修正された最新の関係(目標減速度マップ)を学習により記憶する減速度レベル記憶手段116と、その減速度レベル記憶手段116に記憶されるとともに、路面勾配に応じて選択され且つ運転者の減速指向に応じて更新(修正)された最新の関係(目標減速度マップ)から実際の車速V(km/h)に基づいて目標減速度を決定する目標減速度決定手段114とを備え、たとえば平坦路面においてシフト操作レバー92による変更操作があると、その変更操作量が減速度を小さくするものであればそれに応じて前記A線から目標減速度を小さくする側へずらす(修正)ことによりAa線或いはAb線に示すように更新して減速度レベル記憶手段116にその修正後の目標減速度マップを記憶させる。この修正は、図9に示す車速Vを表す車速軸と目標減速度を表す目標減速度軸との二次元座標において車速に拘らず同じ修正量の平行移動であってもよいが、運転者の減速指向に可及的に近似させるために、破線に示す上記Aa線およびBa線では、低車速側ほど修正の重み付けが小さくされ、変更幅が低車速ほど小さくされている。反対に、2点鎖線に示す上記Ab線では、高車速側ほど修正の重み付けが小さくされ、変更幅が高車速ほど小さくされている。
【0031】前方走行車両判定手段118は、車両の前方において走行する前方走行車両があるか否かを、たとえば前方車両の後尾反射鏡から反射光と車速Vとに基づいて前方走行車両を検知する光学式レーダなどからの検知信号に基づいて判断する。前記減速度レベル記憶手段114は、その前方走行車両判定手段118によって前方走行車両があると判定された場合には上記修正によって更新された最新の目標減速度マップを記憶しないが、その前方走行車両判定手段118によって前方走行車両がないと判定された場合には上記の修正によって更新された最新の目標減速度マップを記憶して、減速度制御手段102による減速度制御に用いるようにする。
【0032】表示制御手段120は、上記目標減速度決定手段114においてシフト操作レバー92の操作に応答して修正された目標減速度マップから実際の車速Vに基づいて決定された目標減速度或いは減速度レベルを、数字などのデジタル値或いはバーグラフなどのアナログ値によって表示装置99に表示させる。
【0033】図10は、電子制御装置98による制御作動の要部すなわち走行ポジション選択操作装置86のシフト操作レバー92の操作に基づいて目標減速度を更新する制御を実行するための目標減速度変更制御作動を説明するフローチャートであり、数msec 乃至数十msec 程度の極めて短い周期で繰り返し実行される。
【0034】図10において、減速度走行選択操作判定手段および目標減速度変更操作判定手段に対応するS1では、シフト操作レバー92が「−」ポジション或いは「+」ポジションへ操作されたことにより減速走行が選択され且つ減速走行の目標減速度変更操作が行われたか否かが走行ポジション選択操作装置86からの信号に基づいて判断される。このS1の判断が否定される場合は、シフト操作レバー92の実際の操作ポジションである他のポジションすなわち非減速走行ポジションが表示装置99において表示され、且つ他の制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
【0035】しかし、上記S1の判断が肯定される場合は、前記車速検出手段108および路面勾配検出手段110に対応するS2において、実際の車速Vおよび路面勾配Kが読み込まれる。次いで、前記減速度変更制御手段112に対応するS3では、路面勾配Kに従って選択された目標減速度マップたとえば図9のA線が、運転者によるシフト操作レバー92の変更操作量たとえば「+」位置への回数或いは操作時間に基づいて大きくなる変更幅でたとえば図9の破線に示す如く修正される。次に、前記前方走行車両判定手段118に対応するS4において、車両の前方において走行する前方走行車両があるか否かが、たとえば前方車両の後尾反射鏡から反射光と車速Vとに基づいて前方走行車両を検知する光学式レーダなどからの検知信号に基づいて判断される。このS4の判断が否定される場合は、減速度レベル記憶手段116に対応するS5において、上記S3において修正された目標減速度マップが記憶された後にS6が実行されるが、上記S4の判断が肯定される場合は、そのS5が実行されないで次のS6が実行される。そして、前記目標減速度決定手段114に対応するS6では、上記修正によって更新された最新の目標減速度マップから路面勾配Kおよび車速Vに基づいて目標減速度が逐次決定され、前記減速度制御手段102では、その目標減速度と実際の車両の減速度とが一致するようにモータジェネレータMG1の回生制動量が制御される。
【0036】上述のように、本実施例によれば、走行ポジション選択操作装置(減速度設定操作装置)86の操作により設定された減速度レベルが減速度レベル記憶手段116(S5)に車両走行条件毎に学習により記憶され、減速度制御手段102により、その減速度レベル記憶手段116において車両走行条件毎に記憶された減速度レベルが得られるように車両の減速度が制御されるので、所望の減速度レベルが一旦設定されると、より長い時間、所望の減速度で減速走行させることができる。
【0037】また、本実施例によれば、図9に示すように、上記車両走行条件としては車速Vおよび路面勾配Kが用いられていることから、車速V毎に減速度が異なる減速度レベルが設定されるので、車速Vの変化に拘わらず所望の減速度で減速走行できるとともに、路面勾配K毎に減速度が異なる減速度レベルが設定されるので、路面勾配Kの変化に拘わらず所望の減速度で減速走行できる。図9では、目標減速度すなわち減速度レベルが、高車速ほど大きくなり低車速ほど小さくなるように設定されるとともに、路面勾配が大きくなるほど大きくなり路面勾配が小さくなるほど小さくなるように目標変速度マップが構成されている。所望の減速度は、感覚的なものであって、車速が高くなるほど大きくなり車速が低下するほど小さくなる傾向にあり、路面勾配が大きくなるほど大きく路面勾配が小さくなるほど小さくなる傾向にあるからである。
【0038】また、本実施例によれば、前記減速度レベルは、車両走行条件すなわち車速Vに応じて変化する修正の重み付けがされたものであることから、所望の減速度を実現するための目標減速度の変化特性が容易に得られて運転者の減速指向に可及的に近接させることができる。
【0039】また、本実施例によれば、減速走行中において前方走行車両の有無を判定する前方走行車両判定手段118が備えられ、減速度レベル記憶手段116は、その前方走行車両判定手段118によって前方走行車両が無いと判定されたときに、シフト操作レバー92の操作により設定された減速度レベルを車両走行条件毎に記憶するものであることから、前方走行車両判定手段118により前方走行車両があると判定されたときに減速度設定操作装置の操作により設定された減速度レベルは減速度レベル記憶手段116に記憶されないので、車間距離や前方車両の車速や減速度の影響を受けた減速度レベルの記憶が排除され、運転者の指向を反映した減速度レベルが記憶される利点がある。
【0040】また、本実施例によれば、減速度レベル記憶手段116は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が変化する目標減速度マップを記憶するものであり、減速度制御手段102は、その目標減速度マップから実際の車両走行条件に基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものであることから、車両走行条件の変化に拘わらず、所望の減速度が比較的長期間の減速走行中にわたって得られる。
【0041】また、本実施例によれば、減速度レベル記憶手段116は、高車速ほど目標減速度が大きくなる目標減速度マップを記憶するものであり、減速度制御手段102は、その目標減速度マップから実際の車速Vに基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものであることから、車速Vの変化に拘わらず、所望の減速度が比較的長期間の減速走行中にわたって得られる。
【0042】また、本実施例によれば、減速度レベル記憶手段116は、路面勾配Kが大きくなるほど目標減速度が大きくなる目標減速度マップを記憶するものであり、前記減速度制御手段102は、その目標減速度マップから実際の路面勾配Kに基づいて決定された目標減速度が得られるように車両の減速度を制御するものであることから、路面勾配Kの変化に拘わらず、所望の減速度が比較的長期間の減速走行中にわたって得られる。
【0043】また、本実施例によれば、減速度レベル記憶手段116は、車両走行条件の変化に応じて目標減速度が大きくなる基本目標減速度を示す目標減速度マップを記憶するものであり、シフト操作レバー92の操作により設定された減速度レベルに対応する目標減速度は、上記基本目標減速度に対して車両走行条件に応じて異なる修正の重み付けがされたものであることから、基本目標減速度に対して一律にずらされた目標減速度が設定されるのではなく、車両走行条件に応じて異なる量だけずらされた目標減速度が設定されるので、たとえば高車速ほどずれ量が多く且つ低車速となるほどそのずれ量が小さくされた直線、折線或いは曲線となるので、所望の減速度を実現するための目標減速度の変化特性が容易に得られる。
【0044】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0045】たとえば、前述の実施例において、目標減速度を算出するための関係(目標減速度マップ)は、図9に示すように、運転者の減速度要求操作量に従ってずらされていたが、予め複数種類の目標減速度マップを示す線が記憶され、その減速度要求操作量に従って上記複数種類の目標減速度マップから1つの目標減速度マップが選択されるようにしてもよい。
【0046】また、前述の実施例において、減速度制御手段102により用いられる目標減速度を決定するための図9の関係は、車速Vおよび路面勾配Kを変数とする関係であったが、いずれか一方の変数とする関係であってもよい。
【0047】また、前述の実施例において、減速度制御手段102は、変更された目標減速度を得るための車速が実車速より所定以上離(外)れる場合には、急減速を避けるために、目標減速度の重み付けを小さく、或いはその目標減速度の変化を小さくするようにしてもよい。
【0048】また、前述の実施例では、駆動力源としてエンジン10およびモータジェネレータMG1を備え、それらを選択的に用いるハイブリッド自動車について説明されていたが、自動変速機16を備えない車両や、駆動力源として電動機(回転電機)を備えた電機自動車などであってもよい。
【0049】また、前述の実施例では、シフト操作レバー92が「−」ポジションへ操作される回数や時間に応じて複数種類の目標減速度の減速走行ポジションが選択される形式の走行ポジション選択操作装置86が用いられていたが、たとえばシフト操作レバー92がDポジションに続いて設けられた複数種類のエンジンブレーキ走行ポジションである3ポジション、2ポジション、Lポジションへ操作される形式の走行ポジション選択操作装置が用いられてもよい。また、シフト操作レバー92とは独立した目標減速度設定のための操作装置が設けられてもよい。
【0050】また、前述の実施例において用いられる減速度や設定(目標)減速度は、車両の目標とする減速度を示す負の加速度であるが、その減速度の大きさを示す指標で表される減速度レベルや、それに対応する変数、たとえば回生量、回生制動量などであってもよい。
【0051】その他、一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成14年2月6日(2002.2.6)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
【公開番号】 特開2003−235104(P2003−235104A)
【公開日】 平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願番号】 特願2002−30137(P2002−30137)