| 【発明の名称】 |
車両の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】松永 康郎 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
【氏名】松井 大和 【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2520 株式会社日立製作所内
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| 【要約】 |
【課題】トルク制御を用いて、極低速域でモータが回転駆動するときにもコギングトルクによる振動を抑制する。
【解決手段】トルク指令に基づいて電力変換装置5を制御することによりバッテリ7から供給される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータ2に印加するようにした車両の制御装置において、トルク指令に基づいて、モータ2のトルクに対する車両1の動作を模擬して車両モデル速度を演算する車両モデル15と、車両モデル速度とモータ2のモータ速度と振動抑制ゲインとを用いて振動抑制補償トルクを演算する補償トルク回路16と、モータ2の回転数に応じて振動抑制ゲインの値を変える振動抑制ゲイン演算回路16とを備える |
【特許請求の範囲】
【請求項1】トルク指令に基づいて電力変換装置を制御することによりバッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータに印加するようにした車両の制御装置において、前記トルク指令に基づいて、前記モータのトルクに対する前記車両の動作を模擬して車両モデル速度を演算する車両モデルと、前記車両モデル速度と前記モータのモータ速度と振動抑制ゲインとを用いて振動抑制補償トルクを演算する補償トルク回路と、前記モータの回転数に応じて前記振動抑制ゲインの値を変える振動抑制ゲイン演算回路とを備えることを特徴とする車両の制御装置。 【請求項2】請求項1に記載の車両の制御装置において、前記振動抑制ゲイン演算回路は、前記モータの回転数が所定の回転数以下のときの振動抑制ゲインを、前記モータの回転数が所定の回転数より大きいときの振動抑制ゲインより大きくすることを特徴とする車両の制御装置。 【請求項3】請求項2に記載の車両の制御装置において、前記振動抑制ゲイン演算回路は、前記振動抑制ゲインを徐々に大きくしていくことを特徴とする車両の制御装置。 【請求項4】請求項3に記載の車両の制御装置において、前記振動抑制ゲインを徐々に大きくしていく時間は、前記車両の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であることを特徴とする車両の制御装置。 【請求項5】請求項1に記載の車両の制御装置において、前記振動抑制ゲイン演算回路は、前記モータの回転数が所定の回転数より大きくなったときに、前記振動抑制ゲインを徐々に小さくしていくことを特徴とする車両の制御装置。 【請求項6】請求項5に記載の車両の制御装置において、前記振動抑制ゲインを徐々に小さくしていく時間は、前記車両の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であることを特徴とする車両の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両の制御装置、特に電気自動車やハイブリッド車の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】磁石を用いた同期モータを電気自動車の走行用モータとして用いる場合、極低速域でモータが回転駆動するときにコギングトルクにより振動が発生するので、乗員は、車両の発進時や極低速走行時に不快感を感ずることがあった。この振動を抑制する方法として、特開平7−336808号公報に開示されている電気自動車の駆動制御装置がある。この電気自動車の駆動制御装置では、コギングトルクの影響を避けるために、微低速走行時に速度フィードバック制御を行っている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の電気自動車の駆動制御装置では、微低速走行時において速度フィードバック制御を行うため、微低速走行時にトルク制御を行うことができず、運転者のアクセル操作に対する加速フィーリングが悪化する可能性があった。 【0004】本発明の目的は、トルク制御を用いて、極低速域でモータが回転駆動するときにもコギングトルクによる振動を抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】一実施の形態を示す図2,図3を参照して本発明を説明する。 (1)請求項1の発明は、トルク指令に基づいて電力変換装置5を制御することによりバッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータ2に印加するようにした車両の制御装置において、トルク指令に基づいて、モータ2のトルクに対する車両1の動作を模擬して車両モデル速度を演算する車両モデル15と、車両モデル速度とモータ2のモータ速度と振動抑制ゲインとを用いて振動抑制補償トルクを演算する補償トルク回路16と、モータ2の回転数に応じて振動抑制ゲインの値を変える振動抑制ゲイン演算回路20とを備えることにより、上記目的を達成する。 (2)請求項2の発明は、請求項1の車両の制御装置において、振動抑制ゲイン演算回路20は、モータ2の回転数が所定の回転数以下のときの振動抑制ゲインを、モータ2の回転数が所定の回転数より大きいときの振動抑制ゲインより大きくすることを特徴とする。 (3)請求項3の発明は、請求項2の車両の制御装置において、振動抑制ゲイン演算回路20は、振動抑制ゲインを徐々に大きくしていくことを特徴とする。 (4)請求項4の発明は、請求項3の車両の制御装置において、振動抑制ゲインを徐々に大きくしていく時間は、車両1の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であることを特徴とする。 (5)請求項5の発明は、請求項1の車両の制御装置において、振動抑制ゲイン演算回路20は、モータ2の回転数が所定の回転数より大きくなったときに、振動抑制ゲインを徐々に小さくしていくことを特徴とする。 (6)請求項6の発明は、請求項5の車両の制御装置において、振動抑制ゲインを徐々に小さくしていく時間は、車両1の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であることを特徴とする。 【0006】なお、上記課題を解決するための手段の項では、本発明をわかりやすく説明するために実施の形態の図2,図3と対応づけたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。 【0007】 【発明の効果】本発明によれば、次のような効果を奏する。 (1)請求項1〜6の発明によれば、振動抑制補償トルクを演算する際に用いる振動抑制ゲインを、モータの回転数に応じて変えるので、モータの状態に応じた振動抑制補償トルクを発生させることができ、車両に発生する振動を効果的に抑制することができる。 (2)請求項2の発明によれば、モータの回転数が所定の回転数以下のときの振動抑制ゲインを、モータの回転数が所定の回転数より大きいときの振動抑制ゲインより大きくするので、モータが所定の回転数以下で駆動するときに影響を受けやすいコギングトルク等に起因する振動を効果的に抑制することができる。 (3)請求項3の発明によれば、振動抑制ゲインは徐々に大きくしていくので、急激に振動抑制補償トルクが変化することによる車両への影響を防ぐことができる。 (4)請求項4の発明によれば、振動抑制ゲインを徐々に大きくしていく時間は、車両の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であるので、車両共振に対する影響を防ぐことができる。ゲインの値が急激に切り替わることによる振動の増長を防ぐことができる。 (5)請求項5の発明によれば、モータの回転数が所定の回転数より大きくなったときに、振動抑制ゲインを徐々に小さくしていくので、コギングトルク以外の要因により車両に振動が発生しても、過大な補償トルクを生じさせず、かつ、急激に振動抑制補償トルクが変化することによる車両への影響を防ぐことができる。 (6)請求項6の発明によれば、振動抑制ゲインを徐々に小さくしていく時間は、車両の駆動系の共振周波数の周期に対して2倍以上の時間であるので、車両共振に対する影響を防ぐことができる。 【0008】 【発明の実施の形態】以下では、制御装置を搭載する車両を電気自動車とした場合について説明する。まず、本発明の基本的な考え方を図1により説明する。 【0009】図1(a)は本発明が適用される電気自動車1の概略構成を示す図である。同期モータ2を駆動することにより、車軸3を介して前輪4a,4bが回転し、電気自動車1が前進あるいは後進する。 【0010】図1(b)はこのような電気自動車1の駆動系の制御モデルである。この制御モデルは、同期モータ2のモータ慣性JM,車両慣性JV(車両重量を同期モータ2から見た回転方向の慣性に等価変換したもの)、および、これらを接続する車軸3のねじり剛性KLで構成される。図1(b)において、モータトルクτMが同期モータ2に入力されると、軸トルクτSとの差によりモータ慣性JMが発生し、モータ速度ωMが増加する。モータ速度ωMと車両速度ωV(前後方向の車速vを回転方向のモータ速度ωMに等価変換したもの)との速度差Δωを積分すると、車軸3のねじり角度に相当する値が得られる。このねじり角度に相当する値にねじり剛性KLを乗じたものが軸トルクτSである。この軸トルクτSに負荷トルクτLを加算したトルクにより、車両慣性JVが発生し、車両速度ωVが増加する。このとき、ねじり剛性KLの大きさにより、モータ慣性JMと車両慣性JVとの間で固有の共振周波数が存在することになる。ねじり剛性KLが小さいと、車軸3が大きくねじれたとき、軸トルクτSはモータ慣性JMと車両慣性JVに対してそれぞれ反対方向に回転させるトルクとなる。このトルクが自動車の発進時における前後方向の振動の原因となっている。 【0011】図2は、本発明による制御装置を搭載した電気自動車1の一実施の形態の構成を示す図である。インバータ5は、電流制御回路8から出力される3相のPWMパルスPU,PV,PW により制御され、バッテリー7の直流電圧を3相交流電圧に変換する。インバータ5で交流に変換された電圧は、同期モータ2に印加されて同期モータ2が駆動することにより、車軸3を介して前輪4a,4bが回転し、電気自動車1が前進あるいは後進する。 【0012】電流制御回路8は、制御装置6から出力される3相(U相,V相,W相)の電流指令iUR,iVR,iWRに対して、同期モータ2に流れる各相の電流iU,iV,iWを電流センサ18で検出してフィードバックする電流フィードバック制御を行う。電流フィードバック制御が行われた後の3相のPWMパルスPU,PV,PWは、インバータ5に出力される。以上の制御により、モータ2を流れる各相の電流iU,iV,iWはそれぞれ電流指令値と一致するようになり、同期モータ2は所定のトルクを発生する。 【0013】制御装置6は、基準トルク演算回路13,モータ制御回路14,車両モデル15、トルク補償回路16、およびトルク補償制限回路17を備える。基準トルク演算回路13は、アクセルペダル検出器9,ブレーキペダル検出器10,シフトレバー検出器11,位置検出器(例えばレゾルバ)12からそれぞれ出力される加速信号Xa,減速信号Xb,シフト信号SDR,同期モータのモータ位置ωθに基づいて、電気自動車1の加減速を行うための基準トルクτ*を決定する。基準トルクτ*は、加速信号Xaにより増加し、減速信号Xbにより減少する。なお、シフト信号SDRは車両の前進と後進を切替えるための信号であり、後進するときは、基準トルクτ*の符号を変更する処理を行う。また、モータ位置ωθが増加するに従い、基準トルクτ* の絶対量を低減する制御を行う。これにより、一般的な自動車の運転感覚に適した基準トルク演算が行われる。 【0014】基準トルク演算回路13から出力される基準トルクτ*と、後述する補償トルクτVNとの差に基づいて、トルク指令τRが算出される。算出されたトルク指令τRは、モータ制御回路14に入力される。モータ制御回路14は、トルク指令τRとモータ位置ωθを用いて、ベクトル制御演算を行う。ベクトル制御とは、同期モータ等の交流モータに対して、トルク制御性を線形化して制御性を向上する手法である。ベクトル制御演算方法について、詳しく説明する。 【0015】まず、トルク指令τRとモータ位置ωθから、同期モータ2の界磁を発生させるための界磁電流指令iDとそれに直交するトルク電流指令iQを演算する。次に、界磁電流指令iDとトルク電流指令iQを座標変換(2相/3相変換)することにより、電流指令iUR,iVR,iWRを算出する。なお、ベクトル制御演算では、同期モータ2の界磁と界磁電流指令iDとの回転座標系の角度を一致させることが重要である。ベクトル制御を行うことにより、同期モータ2で発生するモータトルクτMを、過渡時においてもトルク指令τRと一致させることができる。 【0016】車両モデル15は、モータトルクτMに対する車両の動作を模擬したものである。本実施の形態では、モータトルクτMの代わりに、トルク指令τRを用いて車両速度ωVを模擬した車両モデル速度ωVMを算出している。トルク補償回路16は、モータ速度ωMと車両モデル15から入力された車両モデル速度ωVMとに基づいて、車両の振動を抑制するための補償トルクτVを演算する。なお、モータ速度ωMは、モータ位置ωθの時間変換により求めるものであり、車両モデル速度ωVMは回転方向のモータ速度ωMに等価変換したものである。補償トルクτVの詳しい演算方法については、後述する。演算した補償トルクτVは、トルク補償制限回路17に出力する。また、トルク補償回路16は、負荷トルクτLを推定したモデル負荷トルクτLMを演算し、車両モデル15に出力する。 【0017】トルク補償制限回路17は、トルク補償回路16から入力された補償トルクτVを所定の制限値と比較する。補償トルクτVが所定の制限値より大きければ、後述する方法にて新たに補償トルクτVNを演算する。所定の制限値以下であれば、τVをそのまま補償トルクτVNとして出力する。すなわち、トルク補償制限回路17は、補償トルクのリミッタの役割を果たしている。 【0018】図3は、車両モデル15、トルク補償回路16、トルク補償制限回路17の演算内容をブロック図で示したものである。車両モデル15は、トルク指令τRとトルク補償回路16で算出したモデル負荷トルクτLMとのトルク和τKを算出する。算出したトルク和τKを車両駆動の実質的なトルクとみなして、車両モデル特性GVM(s)に応じて車両モデル速度ωVMを算出する。車両モデル特性GVM(s)の選択方法としては様々なものが考えられるが、本実施の形態では、次式(1)により算出している。 GVM(s)=1/{(JM+JV)s} …(1) 【0019】式(1)にて算出される車両モデル特性GVM(s)は、ねじり剛性KLが非常に大きい場合の特性と一致する。なお、車両モデル15は本来、車両の動作を模擬するための処理を行うものであり、図1(b)に示す共振系の動作まで模擬することもできる。しかし、本実施の形態では、車両慣性JVがモータ慣性JMと比べて大きいことを考慮して、車両速度ωVを式(1)の特性を用いて模擬することにした。車両モデル15で算出された車両モデル速度ωVMは、トルク補償回路16に入力される。 【0020】トルク補償回路16は、実際のモータ速度ωMと車両モデル15で算出した車両モデル速度ωVMとの差から、モデル速度差ΔωMを算出する。モデル速度差ΔωMは図1(b)の速度差Δωを模擬したものに相当する。このとき、算出したモデル速度差ΔωMと速度差リミッタ値ωlimとの大きさを比較して、速度差リミッタ値ωlimの方が大きければ、速度差リミッタ値ωlimをモデル速度差ΔωMに置き換える。このモデル速度差ΔωMを用いて振動補償演算Gω(s)を行い、補償トルクτVを算出する。振動補償演算Gω(s)は、比例,積分、および微分制御演算を組み合わせて算出することができるが、比例制御演算だけを用いて算出してもよい。比例制御演算だけを用いて振動補償演算Gω(s)を算出しても、以下の理由により、ほぼ振動を抑制することができる。 【0021】車両モデル速度ωVMが車両速度ωVに一致していれば、トルク補償回路16で算出されるモデル速度差ΔωMと速度差Δωは一致する。すなわち、モデル速度差ΔωMを算出することにより、速度差Δωを検出したことになる。振動を抑制するためには、図1(b)において、振動の原因となる軸トルクτSを減少することが重要である。軸トルクτSによる振動は、その微分要素となる速度差Δωを積分したものであるので、速度差Δωに比例演算を行ってフィードバックすることにより、振動の成分を初期段階で抑えることができる。 【0022】従って、本実施の形態では、振動補償演算Gω(s)は比例制御演算とし、補償トルクτVと速度差Δωとの関係を次式(2)により表す。 τV=G×Δω …(2) ただし、Gは振動抑制ゲイン(以下、単にゲインと呼ぶ)であり、同期モータ2の回転速度により異なる値を用いることにする。すなわち、同期モータ2の回転速度が遅い領域(極低速域)では、車両に与えるコギングトルクによる振動の影響が大きいので、補償トルクτVを大きい値にするため、ゲインGも大きくする。ゲインGの算出は、振動抑制ゲイン演算回路20で行われる。本実施の形態では、同期モータ2が中高速で回転駆動するときの、通常制御時のゲインGsに対して、極低速域でのゲインGをG=10Gsとした。 【0023】なお、極低速域でのゲインGは実験等により求めることができる。極低速域ではコギングトルクの影響が大きいので、式(2)において補償トルクτVをコギングトルクτCに置き換えると、ゲインGは次式(3)にて表すことができる。 G=τC/Δω …(3) 従って、コギングトルクτCによりどれだけ同期モータ2の回転数が変動するかを測定すれば、式(3)によりゲインGを算出することができる。このような算出手法により極低速域でのゲインGを算出すれば、通常制御時のゲインGsに対して、何倍のゲインを用いればよいかを定めることができる。 【0024】一方、同期モータ2の回転速度が速い領域でゲインGが大きいと、コギングトルク以外の要因により車両の駆動系に振動が発生したときに、補償トルクτVNが過大となる。従って、同期モータ2の回転数Nが上昇したときには、通常制御時のゲインGsを用いる。ゲインGを切り替えるときの同期モータ2の回転数は、予め実験等により求めておく。ゲインGを切り替える際のしきい値となる回転数の算出方法の一例について説明する。 【0025】同期モータ2のスロット数をNs、極数をPとすると、コギングトルクは、一回転につきNs/(P/2)回発生する。従って、48スロット16極モータの場合、48/(16/2)=6 …(4) より、一回転につき6回発生することになる。ゲインGの切り替えは、コギングトルクの影響の大きさを考慮して決めればよく、本実施の形態では、1秒間に60回以上コギングトルクが発生し、また、車両の捻れ系の共振周波数に対しても5倍以上の周波数となるように、しきい値となる回転数を求めている。すなわち、60/6×60=600 …(5) より、1分間当たりの回転数が600rpm以上であれば、1秒間に60回以上コギングトルクが発生するという条件を満たし、かつ、車両の捻れ系の共振周波数(本実施の形態では10Hz)に対する条件をも満たす。 【0026】このように、しきい値となる回転数以下のときにゲインGの値を大きく(G=10Gs)し、しきい値となる回転数以上のときにゲインGの値を小さく(G=Gs)とすることにより、同期モータ2の低回転時には、コギングトルクによる振動が発生せず、乗員は、車両の発進時、減速時、極低速走行時に従来のような振動による不快感を感じることがなくなる。また、しきい値となる回転数以上で同期モータ2を駆動するときは、駆動周波数の増大に伴いコギングトルクの影響を受けることはなくなり、コギングトルク以外の要因により車両の駆動系に振動が発生しても、通常制御時のゲインGsを用いるので、過大な補償トルクが発生することもない。 【0027】また、ゲインGの切り替えに際しては、急激に切り替えるのではなく、徐々に値を変えていくようにする。すなわち、車両の共振に対して十分長い時間をかけてゲインGを切り替えるようにする。本実施の形態では、車両の共振周波数が10Hzであり、その周期は100msであることから、共振周波数の周期の2倍の200msの時間をかけて、ゲインG=10GsからG=Gs、またはゲインG=GsからG=10Gsに切り替えるようにしている。これにより、ゲインGの値を急激に切り替えることによる振動の増長を防ぎ、車両挙動が不安定になるのを回避することができる。 【0028】また、トルク補償回路16は、補償トルクτVを算出するとともに、モデル速度差ΔωMを用いて、負荷トルク補償演算Gτ(s)を行い、演算結果をモデル負荷トルクτLMとしている。モデル速度差ΔωMは、振動成分を除くと負荷トルクτLの影響を反映している。従って、モデル速度差ΔωMを用いて、負荷トルクτLを模擬したモデル負荷トルクτLMを算出することができる。なお、負荷トルク補償演算Gτ(s)は、比例演算によりモデル負荷トルクτLMを算出することができるが、積分,微分演算を用いてもよい。算出したモデル負荷トルクτLMは、所定のリミッタ値と比較して、リミッタ値以下であればそのまま算出した値を用い、リミッタ値よりも大きければ所定のリミッタ値をモデル負荷トルクτLMに置き換えて、車両モデル速度ωVMの演算のために車両モデル15にフィードバックする。これにより、実際の車両をよりよく制御することが可能になる。 【0029】図4は、本発明による車両の制御装置による制御手順を示す一実施の形態のフローチャートである。ステップS10から始まる制御は、所定の周期(本実施の形態では、10ms)ごとに行われる。ステップS10では、車両モデル15に入力されるトルク指令τRを、図示しないメモリから読み出す。このトルク指令τRは、後述するステップS170で算出され、図示しないメモリに記憶されているものである。トルク指令τRを読み出すと、ステップS20に進む。ステップS20では、モデル負荷トルクτLMを算出してステップS30に進む。なお、モデル負荷トルクτLMの算出方法については、すでに述べたので省略する。 【0030】ステップS30では、ステップS10で読み出したトルク指令τRと、ステップS20で算出したモデル負荷トルクτLMとの和を求めることにより、トルク和τK(=τR+τLM)を算出する。次のステップS40では、ステップS30で算出したトルク和τKを用いて車両モデル速度ωVMを算出する。これらのステップS20〜ステップS40の処理は、車両モデル15で行われる。ステップS40で算出された車両モデル速度ωVMは、トルク補償回路16に入力される。 【0031】ステップS50では、実際のモータ速度ωMと、ステップS50で算出した車両モデル速度ωVMとの差を求めることにより、モデル速度差ΔωM(=ωM−ωVM)を算出する。モデル速度差ΔωMを算出するとステップS60に進む。ステップS60では、ステップS50で算出したモデル速度差ΔωMが速度差リミッタ値ωlimより大きいか否かを判定する。モデル速度差ΔωMがリミッタ値ωlimより大きいときは、ステップS70においてリミッタ値ωlimをモデル速度差ΔωMに置き換えてステップS80に進む。モデル速度差ΔωMがリミッタ値ωlim以下であるときは、そのままステップS80に進む。 【0032】ステップS80では、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より大きいか否かを判定する。本実施の形態では、上述したように、この所定の回転数を600rpmとしている。同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より大きいときは、ステップS90に進む。ステップS90,S100では、ゲインGを、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より大きいときに用いるゲインGsとするための制御を行う。ステップS90では、現在のゲインGがゲインGsと一致しないか判定する。一致しないと判定するとステップS100に進み、一致すると判定するとステップS130に進む。 【0033】ステップS100では、現在のゲインGを少しずつ小さくしてゲインGsとするための制御を行う。上述したように、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数以下のときは、所定の回転数より大きいときに用いるゲインGsの10倍のゲインを用いる。従って、ゲインG=10Gsから徐々に値を小さくしてゲインG=Gsとする制御を行う。ゲインGの切り替えの時間は、上述したように、200msとし、本フローチャートの演算は10msごとに行うことから、本フローチャートの演算を20(200/10)回行う間にゲインGの切り替えを行う必要がある。従って、式(6)で示すように、現在のゲインGから、9Gsの20分の1の大きさの値を引いたものを新たなゲインGとする。 G=G−9/20×Gs …(6) 【0034】10msごとに本フローチャートの演算を繰り返し行われると、式(6)による演算により、ゲインGが10GsからGsに切り替わる。ゲインGがGsになると、ステップS90での判定は否定されるので、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より大きい領域では、ゲインG=Gsの状態が維持される。 【0035】一方、ステップS80で、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数以下であると判定されたときは、ステップS110に進む。ステップS110,S120では、ゲインGを、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数以下のときに用いるゲイン10Gsとするための制御を行う。ステップS110では、現在のゲインGがゲイン10Gsと一致しないか判定する。一致しないと判定するとステップS120に進み、一致すると判定するとステップS130に進む。ステップS120では、ステップS100で行う制御と逆の制御、すなわちゲインG=Gsから徐々に値を大きくしてゲインG=10Gsとする制御を行う。新たなゲインGは、次式(7)で算出される。 G=G+9/20×Gs …(7) ステップS100およびステップS120で新たなゲインGを算出するとステップS130に進む。 【0036】ステップS130では、次式(8)により補償トルクτVを算出する。 τV=ΔωM×G …(8) 補償トルクτVを算出するとステップ140に進む。上述したステップS50〜ステップS130の処理は、トルク補償回路16により行われる。特に、ステップS80〜ステップS120で行うゲインGの演算処理は、振動抑制ゲイン演算回路20で行われる。また、後述するステップS140〜ステップS160の処理は、トルク補償制限回路17にて行われる。ステップS140では、ステップS130で算出した補償トルクτVが、補償トルク制限値τlimより大きいか否かを判定する。補償トルク制限値τlimより大きいと判定すると、ステップS160に進み、補償トルク制限値τlimを新たな補償トルク制限値τVNとして、ステップS170に進む。一方、補償トルクτVが補償トルク制限値τlim以下であると判定すると、ステップS130で算出した補償トルクτVを新たな補償トルクτVNとしてステップS170に進む。 【0037】ステップS170では、トルク指令τRを算出して、図示しないメモリに記憶する。トルク指令τRの算出は、上述したように、基準トルクτ*と、ステップS150またはステップS160で算出した補償トルクτVNとの差を求めることにより行われ、車両モデル15で行われる。図示しないメモリに記憶されたトルク指令τRは、次回行われる制御のステップS10で読み出される。 【0038】本発明による車両の制御装置によれば、車両の振動抑制のための補償トルクτV(リミッタ制御後は補償トルクτVN)を算出するために用いるゲインGを、同期モータ2の回転数Nに応じて異なる値とした。すなわち、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より小さい領域では、コギングトルクの影響が大きいので、補償トルクτVNを大きい値とするために、ゲインGを通常制御時のゲインGsより大きくしている(ステップS110,120)。これにより、従来、車両の発進時、減速時、極低速走行時等で発生していたコギングトルクによる振動が発生せず、乗員が不快感を感じることはなくなる。また、同期モータ2の回転数Nが所定の回転数より大きい領域では、ゲインの値を通常制御時のゲインGsとしている(ステップS90,S100)。この領域では、駆動周波数の増大に伴いコギングトルクの影響を受けることはなく、コギングトルク以外の要因により車両の駆動系に振動が発生しても、過大な補償トルクτVNが発生することはない。 【0039】また、ゲインGの切り替えは、車両の共振周波数の周期の2倍以上の時間をかけて、少しずつ値を変えることにより行う(ステップS100,S120)ので、ゲインGの値を急激に切り替えることによる振動の増長や車両共振に対する影響を防ぐことができる。 【0040】本発明は上述した実施の形態に限定されることはない。例えば、同期モータ2が極低回転で駆動するときのゲインGを、通常時のゲインGsの10倍としたが、コギングトルクによる振動を防ぐことができれば、10倍以外でもよい。また、ゲインGを切り替える際の同期モータ2の回転数Nも、上述したように、コギングトルクの影響、および車両の捻れ系の共振周波数を考慮して定めればよく、600rpmに限定されることはない。 【0041】また、車両を駆動させるモータとして同期モータを用いたが、磁石式の直流モータを用いても良い。さらに、車両モデル15が行う制御模擬には、モータ慣性および車両慣性等の慣性と、負荷トルクとを用いたが、これ以外に車両の走行抵抗、モータ等の損失、機械系の共振特性などを用いてもよい。 【0042】また、上述した説明では、本発明による制御装置を搭載する車両を電気自動車に適用した例について説明したが、電気自動車以外にハイブリッド車などのモータを用いて駆動するものに適用することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所 【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地 【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社 【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
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| 【出願日】 |
平成14年1月21日(2002.1.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100084412 【弁理士】 【氏名又は名称】永井 冬紀
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| 【公開番号】 |
特開2003−219508(P2003−219508A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月31日(2003.7.31) |
| 【出願番号】 |
特願2002−11303(P2002−11303) |
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