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【発明の名称】 パンタグラフの騒音低減方法とパンタグラフカバー装置
【発明者】 【氏名】鳥居 昭彦
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】成瀬 功
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】南 智之
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】堀江 冨士雄
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【氏名】広沢 賢
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【氏名】岡本 育志
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【要約】 【課題】簡単なパンタグラフカバーにてパンタグラフの空力抵抗および空力音を低減することができるようにする。

【解決手段】パンタグラフ2に対向する気流10を、メッシュよりなり、平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がるメッシュカバー103、104で受けて、対向気流10をメッシュカバーの前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させることにより、パンタグラフ2に向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微小化を図ることを少なくとも含んで、パンタグラフ2からの騒音を低減し、上記の目的を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制してパンタグラフからの騒音を低減するパンタグラフの騒音低減方法において、パンタグラフに対向する気流を、メッシュよりなり、平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がるメッシュカバーで受けて、対向気流をメッシュカバーの前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させることにより、パンタグラフに向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微小化を図ることを少なくとも含んで、パンタグラフからの騒音を低減することを特徴とするパンタグラフの騒音低減方法。
【請求項2】 車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制するパンタグラフカバー装置において、メッシュよりなり、平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がったメッシュカバーを設けたことを特徴とするパンタグラフカバー装置。
【請求項3】 前記メッシュカバーの立ち上がりは、前傾、ほぼ垂直、後傾、のいずれかである請求項2に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項4】 前記メッシュカバーは、前記形状を有した前面メッシュと、この前面メッシュの後に今1つ配置した後面メッシュと、を備えている請求項2、3のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項5】 後面メッシュは、前面メッシュと同じ形状、前面メッシュよりも凸形状または傾斜が小さいか大きい、平坦、のいずれかである請求項4に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項6】 車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフが気流と対向する側で、パンタグラフに向けて斜め上に立ち上がる前面メッシュとこれに続く後面メッシュとで山形をなしたメッシュカバーを設けたことを特徴とするパンタグラフカバー装置。
【請求項7】 後面メッシュは垂直である請求項6に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項8】 後面メッシュはパンタグラフ側に斜め下方に立ち下っている請求項6に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項9】 メッシュカバーは二等辺三角形をなしている請求項8に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項10】 メッシュカバーは正三角形をなしている請求項9に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項11】 メッシュカバーは支持枠に支持されている請求項1〜10のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項12】 支持枠の枠材は中空である請求項11に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項13】 メッシュカバーは支持枠の枠材の外面を覆っている請求項11、12のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項14】 メッシュカバーの対向気流の剥離部となる稜部は丸みを持っている請求項11〜13のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項15】 前面メッシュと後面メッシュとはメッシュサイズが異なっている請求項4〜10のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置。
【請求項16】 車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフが気流と対向する側で、反パンタグラフ側に向けて斜め上に立ち上がる平坦なメッシュより、平坦なメッシュは平面より見て対向気流に直角か、または傾斜して配置されたことを特徴とするパンタグラフカバー装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道車両のパンタグラフカバー装置に関し、特に新幹線車両のような高速鉄道車両のパンタグラフから発生する騒音を低減するのに好適なパンタグラフカバー装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、騒音の発生源であるパンタグラフに当たる気流の流速を低減して騒音を下げるために、実開昭52−159507号公報等で知られているようなパンタグラフの周囲を囲うパンタグラフカバー、図30に示すようなパンタグラフaの前後に配置されるパンタグラフカバーbなど種々に工夫され採用されている。
【0003】図30に示す例のパンタグラフカバーbは、パンタグラフaに向かって緩やかに立ち上がる斜面cを持ち、パンタグラフaに当たる空気流を半減させるとともに、斜面cに緩やかに続く水平面dを設けてパンタグラフカバーbに対する空気の剥離を緩和することにより、パンタグラフaおよびパンタグラフカバーbによる空力騒音、空力抵抗を軽減している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図30に示すようなパンタグラフカバーbでは前後のパンタグラフカバーbの間にできる空間の上を気流が通過するときにキャビティ音が発生する。
【0005】本出願人が先に提案したパンタグラフを囲うカバーの前後に斜め立ち上がりメッシュを単独で設けたもの(特開平06−217405号公報)、および斜め立ち上がりメッシュと整流板および、整流板の前後に亘る天井メッシュを併設したもの(特開平07−312803号公報)は、いずれも前記のようなキャビティ音を低減することはできるが、いずれもパンタグラフを囲う大型なものであるし、斜め立ち上がりメッシュ単独のものではさらなる高速化が進む中パンタグラフの空力抵抗、空力音の低減効果がまだ十分でない。斜め立ち上がりメッシュ、天井メッシュ、および整流板を併設したものでは、パンタグラフの空力抵抗、空力音を低減する効果は高いが、構造が複雑でコスト高になる上、パンタグラフカバー自体の空力抵抗、空力音が高く、全体としては空力抵抗および空力音の低減効果がまだ十分でない。
【0006】本発明の目的は、簡単なパンタグラフカバーにてパンタグラフでの空力抵抗および空力音を低減することができるパンタグラフの騒音低減方法と、パンタグラフカバー装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記のような課題を達成するために、本発明のパンタグラフの騒音低減方法は、車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制してパンタグラフからの騒音を低減するパンタグラフの騒音低減方法において、パンタグラフに対向する気流を、メッシュよりなり、平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がるメッシュカバーで受けて、対向気流をメッシュカバーの前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させることにより、パンタグラフに向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微小化を図ることを少なくとも含んで、パンタグラフからの騒音を低減することを特徴とするものである。
【0008】このような構成では、メッシュカバーの面機能、通気機能を巧みに生かして、その平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がる形状により、対向気流をメッシュカバーの前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわせるので、このような作用を少なくとも営む簡単なカバー構造にてパンタグラフの所望部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフの所望部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。パンタグラフの所望部分はその全域でもよいが、対向気流によって問題になる程度の騒音を発生する部分に限っても実用性は損なわれず有効である。この意味でメッシュカバーの縦横の設置域はパンタグラフの騒音を低減したい所望部分によって決めればよい。また、場合によっては対向気流を上またはおよび下に勢力移行させる向きの面特性を持ったメッシュカバーの立ち上がり形状を含んで、メッシュカバー自体の対向気流に対する通過抵抗を低減したり、メッシュカバーの立ち上がり方向における対向気流の勢力分布を調節したりすることができる。
【0009】同時に、車両の双方向走行に対応するのにメッシュカバーをパンタグラフの前後で働かせても、前のメッシュカバーを通過した低速渦流はパンタグラフと接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバーを抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0010】上記のようなパンタグラフの騒音低減方法を達成する、本発明のパンタグラフカバー装置としては、車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制するパンタグラフカバー装置において、メッシュよりなり、平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がったメッシュカバーを設けたことを特徴とするもので足り、メッシュカバーの全設置域において、上記した方法の作用を営みこれに対応するパンタグラフ部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。
【0011】前記メッシュカバーの立ち上がりは、前傾、ほぼ垂直、後傾、のいずれでもよい。また、複合してもよい。
【0012】前記メッシュカバーは、前記形状を有した前面メッシュと、この前面メッシュの後に今1つ配置した後面メッシュと、を備えている構成では、前面メッシュによって前記した騒音低減機能を発揮するのに加え、後面メッシュによってもその通気性を少なくとも生かし、また形状に応じた面機能を活かしてパンタグラフの所望部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。
【0013】したがって、後面メッシュは、前面メッシュと同じ形状、前面メッシュよりも凸形状または傾斜が小さいか大きい、平坦、のいずれかであれば有効である。
【0014】さらに、上記のような目的を達成するために、本発明のパンタグラフカバー装置は、車両の屋根上に支持されたパンタグラフが車両走行時に気流と対向する側に配置されたカバーによりパンタグラフに流れる気流を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフが気流と対向する側で、パンタグラフに向けて斜め上に立ち上がる前面メッシュとこれに続く後面メッシュとで山形をなしたメッシュカバーを設けたことを別の特徴としている。
【0015】このような構成では、前面メッシュが後方斜め上向きに傾斜していることにより、対向気流をその面特性によって上側へ勢力移行されながらも分散通過させて、上側への勢力移行度に応じたメッシュカバー全高を通過する勢力減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った中速渦流とした後、さらに後面メッシュを分散通過させて、さらなる勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦のさらなる微細化を図った低速渦流としてからパンタグラフに向かわせるのに併せ、対向気流が上側に勢力移行しながらその上の対向気流とともに前後面メッシュの周縁、特にそれらがなす山形の頂部に達して通過するときの剥離および剥離により大きなカルマン渦が生じるのを、前記前後面メッシュを通過する中速渦流および低速渦流にてバックアップすることにより抑制しパンタグラフに向かわせるので、メッシュカバーでの空力抵抗および空力音の問題なく、パンタグラフにおいてはメッシュカバーの全高に見合うパンタグラフの所望部分につき、前記低速渦流が通過することによって空力抵抗および空力音を低減することができ、メッシュカバーをパンタグラフの騒音を低減したい所望部分に対応して設ければ有効である。
【0016】同時に、メッシュカバーがパンタグラフの前後に設けられても、前のメッシュカバーを通過した低速渦流はパンタグラフと接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバーを抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0017】後面メッシュの立ち上がり形状は自由に設定してよく、垂直、前傾、後傾、湾曲など種々ある。後面メッシュはパンタグラフ側に斜め下方に立ち下っていると前面メッシュを通過した中速渦流の下側への勢力移行を伴って通過させることにより、後面メッシュを通過してパンタグラフに向かう低速渦流の上部域勢力を低減できるので、車両の屋根に沿った部分に複雑なまたはおよび大きな機器がない場合の騒音低減によく、特に、メッシュカバーは二等辺三角形をなしているのが好適であり、正三角形をなしているとさらに好適である。
【0018】メッシュカバーが支持枠に支持されていると、メッシュカバーの通気性を損なわずに十分な支持強度および面剛性が得られる。
【0019】支持枠の枠材が中空であると、軽量なままで、支持枠の配置向きに対応した空気抵抗の少ない形状を持ちやすく、メッシュカバー自体の空力抵抗および空力音を低減することができる。
【0020】メッシュカバーが支持枠の枠材の外面を覆っていると、この部分でも対向気流を細かくし減速する作用を営むので性能がさらに向上する。
【0021】メッシュカバーの対向気流の剥離部となる稜部、特に三角形の頂部に丸みを持っていることにより、ここでの空気の剥離をより軽減し剥離音の発生を抑制することができる。
【0022】上記各種のパンタグラフカバを構成する前面メッシュと後面メッシュとはメッシュサイズが異なったものとすることができる。これにより、比較的粗いメッシュサイズの前面メッシュによって上方への勢力移行とカルマン渦のあらかたの微細化を図り、前面メッシュよりもメッシュサイズの小さい後面メッシュによってさらなる上方への勢力移行とカルマン渦の微細化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を小さくしながら十分な勢力移行とカルマン渦の細分化ができるようにしたり、あるいは、前面メッシュでほぼ十分な勢力移行とカルマン渦の細分化を図った上で、前面メッシュよりもメッシュサイズの大きな後面メッシュにて補助的に勢力移行とさらなるカルマン渦の微小化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を余り大きくしないで、より十分な勢力移行およびカルマン渦の細分化を実現するようにしたりできる。
【0023】本発明のパンタグラフカバー装置は、また、パンタグラフが気流と対向する側で、反パンタグラフ側に向けて斜め上に立ち上がる平坦なメッシュよりなり、平坦なメッシュは平面より見て対向気流に直角か、または傾斜して配置されたことを特徴とするものを含む。
【0024】このような構成では、平坦なメッシュが前傾していることにより、対向気流を下方に勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、下方への勢力移行度に応じ屋根から離れて位置するパンタグラフ装置の大きくまたはおよび複雑な形態域への勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわせるので、このような作用を少なくとも営む極く簡単なカバー構造にてパンタグラフの屋根から離れた大きくまたはおよび複雑な形態部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフのこの部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。また、傾斜した配置では左右方向の傾斜している側への勢力移行を図ってパンタフラフに向かう気流をさらに少なくすることができる。特に、下側への勢力移行によってパンタグラフの集電舟部分に乱気流が及んでそれに揚力変動をもたらすのを確実に防止することができ、安定した集電状態が得られるので好適である。
【0025】本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限りにおいて種々な組合せで複合して用いることができる。
【0026】
【実施例】本発明の実施例は、図1〜図9に示す例、および図10〜図15に示す例、図16〜図25に示す例のいずれも、図2に示すような新幹線の車両1の屋根に設けられるパンタグラフ2に適用した場合を示している。しかし、本発明はこれに限られず各種のパンタグラフ2を持った鉄道車両全般に適用して有効である。
【0027】本実施例のパンタグラフカバー装置は、図1、図2に示すように車両1の屋根上に支持されたパンタグラフ2の少なくとも前後の一方に設けられるもので、パンタグラフ2に対向する気流に対してメッシュカバーが斜め配置されたときの面特性と通気性とが協働してパンタグラフ2での空力抵抗および空力音を好適に低減できる特異な構成を有するとともに、パンタグラフ2の前後双方に設けられてもキャビティ音の発生を見ない特性をも発揮する。
【0028】図1〜図9の実施例、および図10〜図15に示す実施例はパンタグラフ2に対向する気流を主として上側に勢力移行させながら通過させるタイプを示し、図16〜図21に示す例はパンタグラフ2に対向する気流を主として左右に勢力移行させながら通過させるタイプを示し、図22〜図25はパンタグラフ2に対向する気流を上側および左右に勢力移行させながら通過させる複合タイプを示している。
【0029】まず、図1〜図15に示す例から説明する。パンタグラフ2に向けて斜め上に立ち上がった前面メッシュ3a、4aとこれに続く後面メッシュ3b、4bとが山形をなしたメッシュカバー3、4を図1、図2に示すようにパンタグラフ2の前後に設けて、パンタグラフ2に流れる気流を規制するようにしている。メッシュカバー3、4は前記条件にて山形をなすように設置されれば、図1〜図9に示す例のように前面メッシュ3a、4aが斜めに立ち上がった頂点5から後面メッシュ3b、4bが垂直に立ち下った山形であっても、図10〜図15に示す例のように前面メッシュ3a、4aが斜めに立ち上がった頂点5から後面メッシュ3b、4bがパンタグラフ2側に斜め下方に下った山形であってもよく、この場合の山形は二等辺三角形や図示するような正三角形のものとすることもできる。
【0030】メッシュカバー3、4は、図1〜図9に示す例のような支持枠6や図10〜図15に示す例のような支持枠6で支持して設けると、メッシュカバー3、4の通気性を損なわずに十分な支持強度および面剛性が得られる。
【0031】パンタグラフ2前後の山形をした前記したようなメッシュカバー3、4が、車両1の走行により前側となって図1に示す気流10と対向するとき、左側のメッシュカバー3で代表して説明すると、前面メッシュ3aが後方斜め上向きに傾斜していることにより、対向気流10は前面メッシュ3aの傾斜した面特性によって上側への案内作用を若干受けて上側へ勢力移行されながらも分散通過する。これによって、対向気流10の前面メッシュ3aを通過した通過気流は、上側への勢力移行度に応じたメッシュカバー3の全高Bを通過する勢力減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った中速渦流11となる。この中速渦流11はさらに後面メッシュ3bを分散通過することにより、さらなる勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦のさらなる微細化を図った低速渦流12となってパンタグラフ2に向かわせるのに併せ、対向気流10が前面メッシュ3aの面特性によって上側に勢力移行して前後面メッシュ3a、3bの周縁、特にそれらがなす山形の頂部に達して通過するときの剥離および剥離により大きなカルマン渦が生じるのを、前記前後面メッシュ3a、3bを通過する中速渦流11および低速渦流12がバックアップして抑制し、パンタグラフ2に向かわせるので、メッシュカバー3での空力抵抗および空力音の問題なく、パンタグラフ2においてはメッシュカバー3の全高Bに見合う領域、つまりパンタグラフ2の騒音の低減が必要な所望部分につき、前記低速渦流12が通過することによって空力抵抗および空力音を十分に低減することができる。図示するパンタグラフ2の空気抵抗の少ないスリムな形状をした上部域Aには対向気流10におけるメッシュカバー3の全高Bから外れた上層部が層流状態の主流10aをなして大きなカルマン渦の発生なく通過し、空力抵抗および空力音の問題は生じない。同時に、メッシュカバー3、4がパンタグラフ2の前後に設けられているが、前のメッシュカバー3を通過した低速渦流12はパンタグラフ2の主要部分と前記のように接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー3、4間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバー4を抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0032】なお、前面メッシュ3a、4aは傾斜角度が小さいほど対向気流10との馴染みがよく、対向気流10の単位流束に対する通過面積の割合が高くなるが、対向気流10を傾斜側に勢力移行させる面特性の働きが増大する。好適な設計例として図1〜図9に示す例では、前面メッシュ3a、4aの傾斜角が30°であり、メッシュカバー3、4の全高Bは一例として700mm程度としてある。これによって、メッシュカバー3、4の前後方向の長さが1180mm程度になる。図10〜図15に示す例では、前メッシュ3a、4aの傾斜角が60°であり、メッシュカバー3、4の全高Bは一例として670mm程度としてある。また、後面メッシュ3b、4bも傾斜角60°で前傾しており、メッシュカバー3、4は正三角形な山形をなしている。前後方向の長さは787mm程度と小さい。
【0033】図10〜図15に示す例のように後面メッシュ3b、4bが前傾していると、後面メッシュ3b、4bを通過してパンタグラフ2に向かう低速渦流12の上部域勢力を低減できるので、車両1の屋根に沿った部分に複雑なまたはおよび大きな機器がない場合の騒音低減によく、支持枠6を構成する枠材7が図示するように中空であると、軽量なままで、枠材7の配置向きに対応した空気抵抗の少ない形状を持ちやすく、メッシュカバー3、4自体の空力抵抗および空力音を低減することができる。また、図示するようにメッシュカバー3、4が支持枠6の枠材7の外面まで覆っていると、この枠材7によって通気性のない部分でも対向気流を細かな渦とし減速する作用を営むので空力抵抗および空力音を低減する性能がさらに向上する。もっとも、コストの関係から一部扁平な矩形断面の枠材7を用いるようにすることもできる。また、図示するようにメッシュカバー3、4の頂点5が丸みを持っていることにより、この頂点5での空気の剥離を軽減し剥離音の発生を抑制することができる。
【0034】支持枠6は振動防止などの面から枠材7相互を溶接などして一体に結合しておくのが好適であり、車両1の屋根への取り付けは、図3〜図5、図7〜図9、図11、図12に示すように屋根に溶接などして固定した取り付け座21に対しボルト・ナット22などにより取付けると、着脱できるが比較的確固に取り付けることができ、修理および振動防止に好適である。場合によっては支持枠6の取付部間などに図9に示すようなステー23を渡して補強することもできる。
【0035】メッシュカバー3、4は耐久性上金属線によるものが好適であり、ステンレス鋼製にすると十分な面剛性および耐久性を得るのに有利である。メッシュカバー3、4が金属製であると、枠材7に溶接などして確固に張り付けられるし、縁金を有したものであると、この縁金を支持枠6にねじ止めしたり溶接したりして張りつけられる。図10〜図15に示す例では、図14、図15に示すようにメッシュカバー3、4の縁部を帯金24に巻き付けてねじ25によりめじ止めし、途中部分は内側に帯金24を当てがってねじ止めしている。
【0036】本発明者等がメッシュカバー3、4につき、それ自体の空力抵抗および空力音について実験した。実験は下記表1■〜■に示す線径d、線の配列ピッチp、開口率Bの5通りの組合せによるメッシュを用い、前面メッシュ3a、4aの傾斜角度が30°、45°、60°の各場合で、後面メッシュ3b、4b無しと、有りとでの違い、および後面メッシュ3b、4b有りでの後面メッシュ3b、4bの傾斜角が90°、60°での違い、についてそれぞれ行った。
【0037】
【表1】

実験結果から、キャビティ音の発生がなく、後面メッシュ3b、4bの無いものよりも有るものの方が騒音が低減したし、騒音低減にはメッシュカバー3、4の幅をパンタグラフ2の設置域幅に対応して極力小さなものとするのが好適である。また、前面メッシュ3a、4aと後面メッシュ3b、4bとの組合せ構造の採用により、支持枠6における枠材7、特に途中の補強骨となる枠材7の使用本数の影響を無くすことができ、十分な補強と振動防止が図れる。また、メッシュ自体から発生する騒音も上記した先の提案のものに比し、1.1〜2.8dB程度低減した。
【0038】なお、前面メッシュと後面メッシュとを有したいずれの実施例、または実施例外のパンタグラフカバー装置であっても、 上記各種のパンタグラフカバを構成する前面メッシュと後面メッシュとはメッシュサイズが異なったものとすることができる。これにより、比較的粗いメッシュサイズの前面メッシュによって上方への勢力移行とカルマン渦のあらかたの微細化を図り、前面メッシュよりもメッシュサイズの小さい後面メッシュによってさらなる上方への勢力移行とカルマン渦の微細化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を小さくしながら十分な勢力移行とカルマン渦の細分化ができるようにしたり、あるいは、前面メッシュでほぼ十分な勢力移行とカルマン渦の細分化を図った上で、前面メッシュよりもメッシュサイズの大きな後面メッシュにて補助的に勢力移行とさらなるカルマン渦の微小化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を余り大きくしないで、より十分な勢力移行およびカルマン渦の細分化を実現するようにしたりできる。
【0039】次いで、図16〜図25に示す例の場合について説明する。これらの例では、パンタグラフ2に対向気流10を、先の例と同様なメッシュ材料よりなり、平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がるメッシュカバー103、104で受けて、対向気流10をメッシュカバー103、104の前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させることにより、パンタグラフ2に向かう対向気流10につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微小化を図ることを少なくとも含んで、パンタグラフ2からの騒音を低減することを基本的な特徴としている。
【0040】これにより、メッシュカバー103、104の面機能、通気機能を巧みに生かしてパンタグラフの騒音を十分に低減することができる。前側のメッシュカバー103により代表して説明すると、その平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がる形状により、対向気流10をメッシュカバー103、104の前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフ2に向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流10bとするとともに、メッシュカバー103の周縁を通過する対向気流10についてはメッシュカバー103を通過する低速渦流10bのバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフ2に向かわるので、このような作用を少なくとも営む簡単なカバー構造にてパンタグラフ2の所望部分、本例では碍子13および基台14の部分に向かう対向気流10を低速渦流10bとなるように規制し、パンタグラフ2の所望部分での空力抵抗および空力音を十分に低減することができる。
【0041】この場合も、図16〜図21に示すように、車両1の双方向走行に対応するのにメッシュカバー103、104をパンタグラフ2の前後で働かせても、前のメッシュカバー103を通過した低速渦流10bはパンタグラフ2と接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー103、104間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバー104を抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両1のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0042】パンタグラフ2の所望部分はその全域でもよいが、本例および先の例のように対向気流10によって問題になる程度の騒音を発生する部分に限っても実用性は損なわれず有効である。この意味で本例および先の例を含め、メッシュカバー103の縦横の設置域はパンタグラフ2の騒音を低減したい所望部分によって決めればよい。従って、メッシュカバー103などを車両1の屋根から浮かせて設置する場合もある。
【0043】また、本例において、対向気流10を上またはおよび下に勢力移行させる向きの面特性を持ったメッシュカバー103の立ち上がり形状を含んで、メッシュカバー103自体の対向気流10に対する通過抵抗を低減したり、メッシュカバー103の立ち上がり方向における対向気流10の勢力分布を調節したりすることもできる。
【0044】このようなパンタグラフの騒音低減方法を達成するパンタグラフカバー装置としては、図16〜図25に示すように、メッシュよりなり、平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がったメッシュカバー103、104をパンタグラフ2の前後の少なくとも一方に設ければ足り、メッシュカバー103の全設置域において、上記した方法の作用を営み、パンタグラフ2の対応部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。車両1の双方向の走行には前後にメッシュカバー103、104を配置して対応すればよい。
【0045】図16〜図21に示す例はメッシュカバー103、104とも垂直に立ち上がる例を示し、図16、図17は平面より見て山形に屈曲した形状例、図18、図19に示す例は台形に屈曲した形状例、図20、図21は円弧状、ドーム状、楕円状などに湾曲した形状例をそれぞれ示している。これら以外の屈曲形状または湾曲形状でもよいし、各種の形状を複合して採用することもできる。
【0046】なお、メッシュカバー103、104の立ち上がり形状としては、前傾、ほぼ垂直、後傾のいずれかでよい。図16に仮想線、一点鎖線、破線で示すような庇メッシュ111、112、113などを設ければ、これらを設けたメッシュカバー103の周縁部での対向気流10の剥離およびこの剥離により大きなカルマン渦が生じるのを抑制しやすくなる。
【0047】図17、図19、図21に示す例では、特に、メッシュカバー103、104を前記のような形状をした前面メッシュ103a、104aの背部に後面メッシュ103b、104bを設けてある。これによって、前面メッシュ103a、104aによって前記した騒音低減機能を発揮する低速渦流10bを得るのに加え、後面メッシュ103b、104bによってもその通気性を少なくとも生かし、また形状に応じた面機能を活かして、より低速で渦をより微細化した低速渦流10cとしてパンタグラフ2に向かわせて、その所望部分での空力抵抗および空力音をさらに低減することができる。
【0048】このような後面メッシュ103b、104bは、図17、図19、図21に実線で示すように平坦形状にしてもよいが、それらと対向する前面メッシュ103a、104aと同じ形状、前面メッシュ103a、104aよりも凸形状または傾斜が小さいか大きい、平坦、のいずれかであれば有効である。図17に仮想線で示す例は湾曲形状とし、図19に仮想線で示す例は山形の屈曲形状とし、図21に仮想線で示す例は台形の屈曲形状としてあり、それぞれ前面メッシュ103a、104aよりも小さく、かつ形状が異なった凸形状としてある。
【0049】図22、図23に模式的に示す例は、前面メッシュ103a、104aが後傾して対向気流10を上側にも勢力移行させる面特性を持つようにしてあり、対向気流10に対する空気抵抗をより低減できるとともに、対向気流10に対する左右および上側への勢力移行作用によって、メッシュカバー103、104における通過気流の中央域勢力をさらに低減して、パンタグラフ2の所望部分での空力抵抗および空力音をさらに低減することができる。また、図22に示す例は後面メッシュ103b、104bは平坦な形状でほぼ垂直に設けられ、図23に示す例では後面メッシュ103b、104bは平坦な状態で前面メッシュ103a、104aと平行に後傾し、上側への勢力移行が図れるようにしている。図24に示す例では前面メッシュ103a、104a、および後面メッシュ103b、104bともに平面より見て山形をなして後傾し、前後いずれにても左右および上側への勢力移行が図れる構成であることにより、パンタグラフ2の騒音をさらに効果的に低減することができる。
【0050】図25に示す例では、平面より見て山形に屈曲した前面メッシュ103aが後傾し、平面より見て山形をした後面メッシュ103bが前傾して、図10〜図15に示す例のような三角形をなしており、図10〜図15に示す三角形メッシュカバー構造による騒音低減特性をも複合して発揮し、さらに有利な騒音低減ができる構成としている。もっとも、この三角形メッシュカバー構造は、前後面メッシュ103a、103bが平面より見て他の屈曲またはおよび湾曲形状をしたメッシュカバー構造と複合して採用しても同様な作用効果が得られる。
【0051】本発明者等は、このような高性能なメッシュカバー3、4自体から発生する空力騒音をさらに低減するため、図2、図26〜図29に示すような金属製やFRP等の合成樹脂製である板状の側板31、32を設けて、その内面に吸音部33を設けた。吸音部33は図2、図26、図27に示すように吸音材としてグラスウール34などの繊維を不織層化したもの、図28に示すように焼結アルミニウム系金属や木工屑や木粉を適度に凝集または圧縮してバインダで結合するなどした各種の多孔質ボード35を用いたもの、図29に示すようにパンチング板36を用いたもの、などを採用することができ、これのメッシュカバー3、4に対する吸音作用によって騒音はさらに低減した。このためには前後のメッシュカバー3、4の前後方向の設置域をカバーする長さで吸音部33を設けるのが好適である。また、これら吸音材の内側には空気層37を設けて吸音部33を共鳴箱タイプとするのが好適である。中でも、グラスウール34は騒音低減効果が最も高い。また、吸音部33は図1、図26に示すように側板31、32の内面のほぼ全域に形成するのが好適である。しかし、図27〜図29に示すように下部などの一部を省略することができる。側板31、32自体による空力抵抗、空力音を低減するには吸音部33と合わせた厚みが小さいほどよい。一例として20mm程度の層厚として有効であり目標の3kHz附近の吸音率が最大となった。
【0052】なお、図2、図26に示すグラスウール34は表面をグラスクロスなどの保護材でくるんで繊維の飛散を防止した上、枠材39により抑えてねじ41によりねじ止めし、空気層37はスペーサ38をねじ止め部に介装することによって確保している。しかし、スペーサ38は側板31、32の突出部とすることもできる。保護材は吸音作用の若干邪魔をする。多孔質ボード35およびパンチング板36は枠材なしに直接ねじ止めしている。スペーサ38の使用はグラスウール34の場合と同じである。
【0053】図31は前記パンタグラフカバーを前傾するように、すなわち、反パンタグラフ側に垂直線からθ傾斜するように設けた例を図示しており、前面メッシュ103a、104aは平面より見て対向気流側に山形形状の凸をなして前傾し、後面メッシュ103b、104bが平坦な形状で前面メッシュ103a、104aと平行に前傾している。
【0054】なお、図31に示す例の平坦で前傾した後面メッシュ103b、104bは、これ単独でも有効であり、本発明の範疇に属する。この場合、図示するように平面より見て対向気流に直角な配置に限らず、対向気流に対し傾斜した配置とすることもできる。
【0055】このような後面メッシュ103b、104bなどによる単独の平坦なメッシュが前傾していることにより、対向気流を下方に勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、下方への勢力移行度に応じ屋根から離れて位置するパンタグラフ装置の大きくまたはおよび複雑な形態域への勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわせるので、このような作用を少なくとも営む簡極く単なカバー構造にてパンタグラフの屋根から離れた大きくまたはおよび複雑な形態部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフのこの部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。また、傾斜した配置では左右方向の傾斜している側への勢力移行を図ってパンタフラフに向かう気流をさらに少なくすることができる。特に、下側への勢力移行によってパンタグラフの集電舟部分に乱気流が及んでそれに揚力変動をもたらすのを確実に防止することができ、安定した集電状態が得られる。
【0056】
【発明の効果】本発明のパンタグラフの騒音低減方法およびこれを達成するパンタグラフカバー装置によれば、メッシュカバーの面機能、通気機能を巧みに生かして、その平面から見て気流との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がる形状により、対向気流をメッシュカバーの前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわるので、このような作用を少なくとも営む簡単なカバー構造にてパンタグラフの所望部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフの所望部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。パンタグラフの所望部分はその全域でもよいが、対向気流によって問題になる程度の騒音を発生する部分に限っても実用性は損なわれず有効である。この意味でメッシュカバーの縦横の設置域はパンタグラフの騒音を低減したい所望部分によって決めればよい。また、場合によっては対向気流を上またはおよび下に勢力移行させる向きの面特性を持ったメッシュカバーの立ち上がり形状を含んで、メッシュカバー自体の対向気流に対する通過抵抗を低減したり、メッシュカバーの立ち上がり方向における対向気流の勢力分布を調節したりすることができる。
【0057】同時に、車両の双方向走行に対応するのにメッシュカバーをパンタグラフの前後で働かせても、前のメッシュカバーを通過した低速渦流はパンタグラフと接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバーを抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0058】前記メッシュカバーは、前記形状を有した前面メッシュと、この前面メッシュの後に今1つ配置した後面メッシュと、を備えている構成では、前面メッシュによって前記した騒音低減機能を発揮するのに加え、後面メッシュによってもその通気性を少なくとも生かし、また形状に応じた面機能を活かしてパンタグラフの所望部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。
【0059】本発明の別のパンタグラフカバー装置によれば、前面メッシュが後方斜め上向きに傾斜していることにより、対向気流をその面特性によって上側へ勢力移行されながらも分散通過させて、上側への勢力移行度に応じたメッシュカバー全高を通過する勢力減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った中速渦流とした後、さらに後面メッシュを分散通過させて、さらなる勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦のさらなる微細化を図った低速渦流としてからパンタグラフに向かわせるのに併せ、対向気流が上側に勢力移行しながらその上の対向気流とともに前後面メッシュの周縁、特にそれらがなす山形の頂部に達して通過するときの剥離および剥離により大きなカルマン渦が生じるのを、前記前後面メッッシュを通過する中速渦流および低速渦流にてバックアップすることにより抑制しパンタグラフに向かわせるので、メッシュカバーでの空力抵抗および空力音の問題なく、パンタグラフにおいてはメッシュカバーの全高に見合うパンタグラフの所望部分につき、前記低速渦流が通過することによって空力抵抗および空力音を低減することができ、メッシュカバーをパンタグラフの騒音を低減したい所望部分に対応して設ければ有効である。
【0060】同時に、メッシュカバーがパンタグラフの前後に設けられても、前のメッシュカバーを通過した低速渦流はパンタグラフと接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバーを抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0061】後面メッシュはパンタグラフ側に斜め下方に立ち下っていると前面メッシュを通過した中速渦流の下側への勢力移行を伴って通過させることにより、後面メッシュを通過してパンタグラフに向かう低速渦流の上部域勢力を低減できるので、車両の屋根に沿った部分に複雑なまたはおよび大きな機器がない場合の騒音低減によく、特に、メッシュカバーは二等辺三角形をなしているのが好適であり、正三角形をなしているとさらに好適である。
【0062】メッシュカバーが支持枠に支持されていると、メッシュカバーの通気性を損なわずに十分な支持強度および面剛性が得られる。
【0063】支持枠の枠材が中空であると、軽量なままで、支持枠の配置向きに対応した空気抵抗の少ない形状を持ちやすく、メッシュカバー自体の空力抵抗および空力音を低減することができる。
【0064】メッシュカバーが支持枠の枠材の外面を覆っていると、この部分でも対向気流を細かくし減速する作用を営むので性能がさらに向上する。
【0065】メッシュカバーの対向気流の剥離部となる稜部、特に三角形の頂部に丸みを持っていることにより、ここでの空気の剥離をより軽減し剥離音の発生を抑制することができる。
【0066】上記各種のパンタグラフカバーを構成する前面メッシュと後面メッシュとのメッシュサイズが異なっていると、比較的粗いメッシュサイズの前面メッシュによって情報への勢力移行とカルマン渦のあらかたの微細化を図り、前面メッシュよりもメッシュサイズの小さい後面メッシュによってさらなる上方への勢力移行とカルマン渦の微細化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を小さくしながら十分な勢力移行とカルマン渦の細分化ができるようにしたり、あるいは、前面メッシュでほぼ十分な勢力移行とカルマン渦の細分化を図った上で、前面メッシュよりもメッシュサイズの大きな後面メッシュにて補助的に勢力移行とさらなるカルマン渦の微小化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を余り大きくしないで、より十分な勢力移行およびカルマン渦の細分化を実現するようにしたりできる。
【0067】また、パンタグラフが気流と対向する側で、反パンタグラフ側に向けて斜め上に立ち上がる平坦なメッシュよりなり、平坦なメッシュが平面より見て対向気流に直角か、または傾斜して配置されていると、平坦なメッシュが前傾していることにより、対向気流を下方に勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、下方への勢力移行度に応じ屋根から離れて位置するパンタグラフ装置の大きくまたはおよび複雑な形態域への勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわせるので、このような作用を少なくとも営む極く簡単なカバー構造にてパンタグラフの屋根から離れた大きくまたはおよび複雑な形態部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフのこの部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。また、傾斜した配置では左右方向の傾斜している側への勢力移行を図ってパンタフラフに向かう気流をさらに少なくすることができる。特に、下側への勢力移行によってパンタグラフの集電舟部分に乱気流が及んでそれに揚力変動をもたらすのを確実に防止することができ、安定した集電状態が得られる。
【出願人】 【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1番4号
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号
【出願日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【代理人】 【識別番号】100080827
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 勝
【公開番号】 特開2003−219506(P2003−219506A)
【公開日】 平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願番号】 特願2002−12372(P2002−12372)