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【発明の名称】 パンタグラフカバー装置の吸音側壁構造
【発明者】 【氏名】鳥居 昭彦
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】成瀬 功
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】南 智之
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】堀江 冨士雄
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【氏名】広沢 賢
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【氏名】岡本 育志
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号 近畿車輛株式会社内

【要約】 【課題】構造が特に複雑化することなく、パンタグラフカバー自体から発生する空力騒音を低減して、全体としての空力音の低減効果を高められるようにする。

【解決手段】車両1の屋根上に支持されたパンタグラフ2の前後に配置されてパンタグラフ2に向かう対向気流10を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフ2およびパンタグラフカバー装置20、20の左右に配されて内側面に吸音部33が設けられた側板31、32とを備えたものとすることにより、上記の目的を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の屋根上に支持されたパンタグラフの前後に配置されてパンタグラフに向かう対向気流を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフおよびパンタグラフカバー装置の左右に配されて内側面に吸音部が設けられた側板を備えたことを特徴とするパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造。
【請求項2】 吸音部は吸音材と吸音材の内側に設けた空気層とで構成された請求項1に記載のパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造。
【請求項3】 カバーは非通気性でパンタグラフに向かって立ち上がる前面カバーを持った山形をなしている請求項1、2のいずれか1項に記載のパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道車両のパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造に関し、特に新幹線車両のような高速鉄道車両のパンタグラフから発生する騒音を低減するのに好適なパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、騒音の発生源であるパンタグラフに当たる気流の流速を低減して騒音を下げるために、実開昭52−159507号公報等で知られているようなパンタグラフの周囲を囲うようなパンタグラフカバー、図32に示すようなパンタグラフaの前後に配置されるパンタグラフカバーbなど種々に工夫され採用されている。
【0003】図32に示す例のパンタグラフカバーbは、パンタグラフaに向かって緩やかに立ち上がる斜面cを持ち、パンタグラフaに当たる空気流を半減させるとともに、斜面cに緩やかに続く水平面dを設けてパンタグラフカバーbに対する空気の剥離を緩和することにより、パンタグラフaおよびパンタグラフカバーbによる空力騒音、空力抵抗を軽減している。
【0004】しかし、図32に示すようなパンタグラフカバーbでは前後のパンタグラフカバーbの間にできる空間の上を気流が通過するときにキャビティ音が発生する。
【0005】本出願人が先に提案したパンタグラフを囲うカバーの前後に斜め立ち上がりメッシュを単独で設けたもの(特開平06−217405号公報)、および斜め立ち上がりメッシュと整流板および、整流板の前後に亘る天井メッシュを併設したもの(特開平07−312803号公報)は、いずれも前記のようなキャビティ音を低減することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の各種パンタグラフカバーによって、パンタグラフなどの屋上機器からの空力騒音の低減効果は得られるが、緩やかに立ち上がる非通気性の斜面を持つパンタグラフカバーではキャビティ音が発生するし、メッシュを用いた通気性のタイプではメッシュ自体からの空力騒音が発生する。
【0007】本発明の目的は、構造が特に複雑化することなく、パンタグラフカバーに起因したキャビティ音や空力騒音を低減できるパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような課題を達成するために、本発明のパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造は、車両の屋根上に支持されたパンタグラフの前後に配置されてパンタグラフに向かう対向気流を規制するパンタグラフカバー装置において、パンタグラフおよびパンタグラフカバー装置の左右に配されて内側面に吸音部が設けられた側板とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】このような構成では、パンタグラフカバー装置が対向気流を上向きに案内したりメッシュを通過させるなどしてパンタグラフへの流れを規制しパンタグラフでの空力抵抗および空力音を低減するのに、パンタグラフカバーからキャビティ音やメッシュによる空力音が発生しても、これらの音を側板で受け止めるとともにその内側面の吸音部にて吸音してまわりへの騒音を低減する。また、パンタグラフの舟体とこれが摺接する架線との間で発生する摺動音をも側体が受け止めるとともにその内面の吸音部にて吸音してまわりへの騒音を低減する。従って、パンタグラフカバー装置とともにまわり全体において外部に発する空力音および舟体と架線との摺動音を低減することができ、更なる高速化に対応しやすいものとなる。しかも、構造が特に複雑化することはないし、コストが特に上昇することはない。
【0010】吸音部は吸音材と吸音材の内側に設けた空気層とで構成すると、パンタグラフカバー装置から発生する中心周波数帯域の音を吸音するのに好適である。吸音部の吸音材はグラスウールなどの繊維を不織層に形成したもの、アルミニウム系などの焼結金属や発泡樹脂、あるいは木工屑などの細片、木粉などの各種粒状物、硬質物の砕片などをバインダによりないしはバインダなしに適度に凝集または圧縮して固化した多孔質ボード、パンチング板、各種の通気構造を持った複合板により吸音構造を持ったものなど、吸音特性および実用性のある材料、形態であれば原則的にどれでもよい。
【0011】本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限りにおいて種々な組合せで複合して用いることができる。
【0012】
【実施例】本発明の実施例に係るパンタグラフカバー装置の吸音側壁構造は、図1、図2に示す例、図3、図9〜図15に示す例、および図16〜図21に示す例、図22〜図31に示す例のいずれも、図3などに示すような新幹線の車両1の屋根に設けられるパンタグラフ2に適用したパンタグラフ装置の場合を示し、これらのパンタグラフ装置に適用する場合を示している。しかし、本発明はこれに限られず各種のパンタグラフカバー装置を持った鉄道車両全般に適用して有効である。
【0013】本実施例の吸音側壁構造が適用されるパンタグラフカバー装置は、図1、図2の例に示すように車両1の屋根上に支持されたパンタグラフ2の前後に、配置されて対向気流10を上向きに案内してパンタグラフ2へ向かう流れを規制ないしは軽減させる非メッシュ構造のパンタグラフカバー20、20。および図3、図8〜図31に示す対向気流10をメッシュにて分散通過させてパンタグラフ2へ向かう流れを規制ないしは軽減させるメッシュカバー3、4ないしはメッシュカバー103、104のそれぞれに組合せ適用するもので、吸音側壁構造としては図1〜図3に示すように、パンタグラフ2およびパンタグラフカバー装置の左右に配されて内側面に吸音部33が設けられた側板31、32を設けている。側板31、32は軽量なほどよく、空力抵抗、空力音発生を抑えるのに薄く図3に示す例のような流線型とされるのが好適である。振動防止や耐久性の面では剛性の高いものがよく、金属製やFRP等の合成樹脂製が適当である。
【0014】このようにパンタグラフカバー20と側板31、32を備えていると、パンタグラフカバー20が対向気流10を図1、図8に示すように上向きに案内するなどしてパンタグラフ2への流れを、空気量およびまたは速度、あるいは渦の微細化などにて軽減して空力抵抗および空力音を低減するのに加え、舟体2aと架線との摺動音を吸音して周りへの騒音を低減することができる。また、パンタグラフカバー20、20やメッシュカバー3、4および103、104の具体的な形状や構造の如何にかかわらず、パンタグラフカバー20、20から発生するキャビティ音、メッシュカバー3、4および103、104自体から発生する空力音などを側板31、32で受け止めるとともにその内側面の吸音部33にて吸音しまわりへの騒音を低減することができる。また、パンタグラフ2の舟体2aとこれが摺接する架線との間で発生する摺動音をも側体が受け止めるとともにその内面の吸音部にて吸音してまわりへの騒音を低減する。これらによって、パンタグラフ2まわり全体において外部に発する空力音および舟体2aと架線との摺動音を低減することができ、更なる高速化に対応しやすいものとなる。しかも、構造が特に複雑化することはないし、コストが特に上昇することはない。
【0015】吸音部33は図4、図6、図7に示すように吸音材34〜36と吸音材34〜36の内側に設けた空気層37とで構成すると、空気層37の層厚によって吸音周波数をチューニングすることができる。これによって、パンタグラフカバー20、20、メッシュカバー3、4および103、104から発生する例えば3kHz前後の中心周波数帯域など特定の周波数域の音を吸音するのに好適である。従って、チューニングによってはこれらと周波数帯域の異なる例えば100Hz程度のキャビティ音を吸音して周りへの騒音を低減するのにも好適であり、周波数の異なる騒音を吸音するにはそれらに対応して側板31、32の内側面に複数種類のチューニング部分を周波数が異なる騒音発生源毎に対応した位置に配置するなど複合して配置すればよい。図4、図5に示す吸音材34はグラスウール、図6に示す吸音材35はアルミニウム系の焼結金属などの多孔質ボード、図7に示す吸音材36はパンチング板である。しかし、吸音特性と、耐水濡れ性、耐発散性、耐久性など実用性とがある材料、形態であれば原則的にどれでもよい。多孔質ボードは発泡樹脂、あるいは木工屑などの細片、木粉などの各種粒状物、硬質物の砕片などを適度に凝集または圧縮してバインダによりないしはバインダなしに固化したものなど種々なものを採用することができる。また、各種の通気構造を持った複合板により吸音構造を持ったものなども効果がある。要するに、既に知られ、またはこれ以降開発される吸音材の全てを用いて有効である。
【0016】側板31、32が上記のように前後のパンタグラフカバー20からのキャビティ音やメッシュカバー3、4および103、104から発する空力騒音を効果的に吸音するには、前後のパンタグラフカバー20、20、または前後のメッシュカバー3、4、または前後のメッシュカバー103、104の前後方向の設置域を少なくともカバーする長さで吸音部33を設けるのが好適である。
【0017】なお、グラスウールの吸音材34は騒音低減効果が最も高い。また、吸音部33は図2〜図4に示すように側板31、32の内側面のほぼ全域に形成するのが好適である。しかし、図5〜図7に示すように下部などの一部を省略することができる。側板31、32自体による空力抵抗、空力音を低減するには吸音部33と合わせた厚みが小さいほどよく、一例として20mm程度の層厚として有効であり目標の3kHz附近の吸音率が最大となった。
【0018】図3、図4に示すグラスウール製の吸音材34は表面をグラスクロスなどの保護材でくるんで繊維の飛散を防止した上、枠材39により抑えてねじ41によりねじ止めし、空気層37はスペーサ38をねじ止め部などに介装することによって確保している。しかし、スペーサ38は側板31、32の突出部とすることもできる。保護材は吸音作用の邪魔を若干する。多孔質ボード35およびパンチング板36は枠材なしに直接ねじ止めしている。スペーサ38の使用はグラスウール34の場合と同じである。
【0019】図1、図2に示す例のパンタグラフカバー20は非通気性でパンタグラフ2に向かって立ち上がる前面カバー20aを持った山形をなした図32に示した従来タイプのものとしてあり、キャビティ音は発生するが、吸音部33での吸音率が高く、空力音低減効果が大きい。なお、図1、図2に示すパンタグラフカバー20は前面カバー20aの頂点に滑らかに続く水平な剥離防止面20bを持ち、これによって前面カバー20aの頂点に達して剥離するのを抑制することができ、剥離音を低減することができる。
【0020】図3、図8〜図31に示すように、対向気流10を前後のメッシュカバー3、4、または103、104により規制してパンタグラフ2からの騒音を低減する場合について詳述する。
【0021】図3、図8〜図21に示す実施例ではパンタグラフ2に対向する気流を主として上側に勢力移行させながら通過させるタイプを示し、図22〜図27に示す例はパンタグラフ2に対向する気流を主として左右に勢力移行させながら通過させるタイプを示し、図28〜図31はパンタグラフ2に対向する気流を上側および左右に勢力移行させながら通過させる複合タイプを示している。
【0022】まず、図3、図8〜図21に示す例から説明する。パンタグラフ2に向けて斜め上に立ち上がった前面メッシュ3a、4aとこれに続く後面メッシュ3b、4bとが山形をなしたメッシュカバー3、4を図3、図8に示すようにパンタグラフ2の前後設けて、パンタグラフ2に流れる気流を規制するようにしている。メッシュカバー3、4は前記条件にて山形をなすように設置されれば、図3、図8〜図15に示す例のように前面メッシュ3a、4aが斜めに立ち上がった頂点5から後面メッシュ3b、4bが垂直に立ち下った山形であっても、図16〜図21に示す例のように前面メッシュ3a、4aが斜めに立ち上がった頂点5から後面メッシュ3b、4bがパンタグラフ2側に斜め下方に下った山形であってもよく、この場合の山形は二等辺三角形や図示するような正三角形のものとすることもできる。
【0023】メッシュカバー3、4は、図3、図8〜図15に示す例のような支持枠6や図16〜図21に示す例のような支持枠6で支持して設けると、メッシュカバー3、4の通気性を損なわずに十分な支持強度および面剛性が得られる。
【0024】パンタグラフ2前後の山形をした前記したようなメッシュカバー3、4が、車両1の走行により前側となって図8に示す気流10と対向するとき、左側のメッシュカバー3で代表して説明すると、前面メッシュ3aが後方斜め上向きに傾斜していることにより、対向気流10は前面メッシュ3aの傾斜した面特性によって上側への案内作用を若干受けて上側へ勢力移行されながらも分散通過する。これによって、対向気流10の前面メッシュ3aを通過した通過気流は、上側への勢力移行度に応じたメッシュカバー3の全高Bを通過する勢力減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った中速渦流11となる。この中速渦流11はさらに後面メッシュ3bを分散通過することにより、さらなる勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦のさらなる微細化を図った低速渦流12となってパンタグラフ2に向かわせるのに併せ、対向気流10が前面メッシュ3aの面特性によって上側に勢力移行して前後面メッシュ3a、3bの周縁、特にそれらがなす山形の頂部に達して通過するときの剥離および剥離により大きなカルマン渦が生じるのを、前記前後面メッシュ3a、3bを通過する中速渦流11および低速渦流12がバックアップして抑制し、パンタグラフ2に向かわせるので、メッシュカバー3での空力抵抗および空力音の問題なく、パンタグラフ2においてはメッシュカバー3の全高Bに見合う領域、つまりパンタグラフ2の騒音の低減が必要な所望部分につき、前記低速渦流12が通過することによって空力抵抗および空力音を十分に低減することができる。図示するパンタグラフ2の空気抵抗の少ないスリムな形状をした上部域Aには対向気流10におけるメッシュカバー3の全高Bから外れた上層部が層流状態の主流10aをなして大きなカルマン渦の発生なく通過し、空力抵抗および空力音の問題は生じない。同時に、メッシュカバー3、4がパンタグラフ2の前後に設けられているが、前のメッシュカバー3を通過した低速渦流12はパンタグラフ2の主要部分と前記のように接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー3、4間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバー4を抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0025】なお、前面メッシュ3a、4aは傾斜角度が小さいほど対向気流10との馴染みがよくメッシュ面に沿わせやすいし、対向気流10の単位流束に対する通過面積の割合が高くなるので通過抵抗は高くならない。好適な設計例として図3、図8〜図15に示す例では、前面メッシュ3a、4aの傾斜角が30°であり、メッシュカバー3、4の全高Bは一例として700mm程度としてある。これによって、メッシュカバー3、4の前後方向の長さが1180mm程度になる。図16〜図21に示す例では、前メッシュ3a、4aの傾斜角が60°であり、メッシュカバー3、4の全高Bは一例として670mm程度としてある。また、後面メッシュ3b、4bも傾斜角60°で前傾しており、メッシュカバー3、4は正三角形な山形をなしている。前後方向の長さは787mm程度と小さい。
【0026】図16〜図21に示す例のように後面メッシュ3b、4bが前傾していると、後面メッシュ3b、4bを通過してパンタグラフ2に向かう低速渦流12の上部域勢力を低減できるので、車両1の屋根に沿った部分に複雑なまたはおよび大きな機器がない場合の騒音低減によく、支持枠6を構成する枠材7が図示するように中空であると、軽量なままで、枠材7の配置向きに対応した空気抵抗の少ない形状を持ちやすく、メッシュカバー3、4自体の空力抵抗および空力音を低減することができる。また、図示するようにメッシュカバー3、4が支持枠6の枠材7の外面まで覆っていると、この枠材7によって通気性のない部分でも対向気流を細かな渦とし減速する作用を営むので空力抵抗および空力音を低減する性能がさらに向上する。もっとも、コストの関係から一部扁平な矩形断面の枠材7を用いるようにすることもできる。また、図示するようにメッシュカバー3、4の頂点5が丸みを持っていることにより、この頂点5での空気の剥離を軽減し剥離音の発生を抑制することができる。
【0027】支持枠6は振動防止などの面から枠材7相互を溶接などして一体に結合しておくのが好適であり、車両1の屋根への取り付けは、図9〜図11、図13〜図15、図17、図18に示すように屋根に溶接などして固定した取り付け座21に対しボルト・ナット22などにより取付けると、着脱できるが比較的確固に取り付けることができ、修理および振動防止に好適である。場合によっては支持枠6の取付部間などに図14に示すようなステー23を渡して補強することもできる。
【0028】メッシュカバー3、4は耐久性上金属線によるものが好適であり、ステンレス鋼製にすると十分な面剛性および耐久性を得るのに有利である。メッシュカバー3、4が金属製であると、枠材7に溶接などして確固に張り付けられるし、縁金を有したものであると、この縁金を支持枠6にねじ止めしたり溶接したりして張りつけられる。図16〜図21に示す例では、図20、図21に示すようにメッシュカバー3、4の縁部を帯金24に巻き付けてねじ25によりめじ止めし、途中部分は内側に帯金24を当てがってねじ止めしている。
【0029】本発明者等がメッシュカバー3、4につき、それ自体の空力抵抗および空力音について実験した。実験は下記表1■〜■に示す線径d、線の配列ピッチp、開口率Bの5通りの組合せによるメッシュを用い、前面メッシュ3a、4aの傾斜角度が30°、45°、60°の各場合で、後面メッシュ3b、4b無しと、有りとでの違い、および後面メッシュ3b、4b有りでの後面メッシュ3b、4bの傾斜角が90°、60°での違い、についてそれぞれ行った。
【0030】
【表1】

実験結果から、キャビティ音の発生がなく、後面メッシュ3b、4bの無いものよりも有るものの方が騒音が低減したし、騒音低減にはメッシュカバー3、4の幅をパンタグラフ2の設置域幅に対応して極力小さなものとするのが好適である。また、前面メッシュ3a、4aと後面メッシュ3b、4bとの組合せ構造の採用により、支持枠6における枠材7、特に途中の補強骨となる枠材7の使用本数の影響を無くすことができ、十分な補強と振動防止が図れる。また、メッシュ自体から発生する騒音も上記した先の提案のものに比し、1.1〜2.8dB程度低減した。
【0031】しかし、メッシュカバー3、4自体からの空力音が発生するが、この空力音は前記吸音側壁構造によって吸音されまわりへの騒音が低減された。従って、パンタグラフカバー装置および吸音側壁構造全体において車両1のさらなる高速化に十分に対応することができる。
【0032】次いで、図22〜図27に示す例の場合について説明する。これらの例では、パンタグラフ2に対向気流10を、先の例と同様なメッシュ材料よりなり、平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がるメッシュカバー103、104で受けて、対向気流10をメッシュカバー103、104の前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させることにより、パンタグラフ2に向かう対向気流10につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微小化を図ることを少なくとも含んで、パンタグラフ2からの騒音を低減することを基本的な特徴としている。
【0033】これにより、メッシュカバー103、104の面機能、通気機能を巧みに生かしてパンタグラフの騒音を十分に低減することができる。前側のメッシュカバー103により代表して説明すると、その平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がる形状により、対向気流10をメッシュカバー103、104の前記凸形状なメッシュ面にて左右へ勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフ2に向かう対向気流につき、左右への勢力移行度に応じた中央域勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流10bとするとともに、メッシュカバー103の周縁を通過する対向気流10についてはメッシュカバー103を通過する低速渦流10bのバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフ2に向かわるので、このような作用を少なくとも営む簡単なカバー構造にてパンタグラフ2の所望部分、本例では碍子13および基台14の部分に向かう対向気流10を低速渦流10bとなるように規制し、パンタグラフ2の所望部分での空力抵抗および空力音を十分に低減することができる。
【0034】この場合も、図22〜図27に示すように、車両1の双方向走行に対応するのにメッシュカバー103、104をパンタグラフ2の前後で働かせても、前のメッシュカバー103を通過した低速渦流10bはパンタグラフ2と接触し、渦をくずしながら前後のメッシュカバー103、104間を静かに流れ、後方となっているメッシュカバー104を抜けて行くので、キャビティ音は発生しない。よって、車両1のさらなる高速化にも十分に対応することができるし、構造が簡単で安価に実現する。
【0035】パンタグラフ2の所望部分はその全域でもよいが、本例および先の例のように対向気流10によって問題になる程度の騒音を発生する部分に限っても実用性は損なわれず有効である。この意味で本例および先の例を含め、メッシュカバー103の縦横の設置域はパンタグラフ2の騒音を低減したい所望部分によって決めればよい。従って、メッシュカバー103などを車両1の屋根から浮かせて設置する場合もある。
【0036】また、本例において、対向気流10を上またはおよび下に勢力移行させる向きの面特性を持ったメッシュカバー103の立ち上がり形状を含んで、メッシュカバー103自体の対向気流10に対する通過抵抗を低減したり、メッシュカバー103の立ち上がり方向における対向気流10の勢力分布を調節したりすることもできる。
【0037】このようなパンタグラフの騒音低減方法を達成するパンタグラフカバー装置としては、図22〜図31に示すように、メッシュよりなり、平面から見て対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲した凸形状を持って立ち上がったメッシュカバー103、104をパンタグラフ2の前後の少なくとも一方に設ければ足り、メッシュカバー103の全設置域において、上記した方法の作用を営み、パンタグラフ2の対応部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。車両1の双方向の走行には前後にメッシュカバー103、104を配置して対応すればよい。
【0038】図22〜図31に示す例はメッシュカバー103、104とも垂直に立ち上がる例を示し、図22、図23は平面より見て山形に屈曲した形状例、図24、図25に示す例は台形に屈曲した形状例、図26、図27は円弧状、ドーム状、楕円状などに湾曲した形状例をそれぞれ示している。これら以外の屈曲形状または湾曲形状でもよいし、各種の形状を複合して採用することもできる。
【0039】なお、メッシュカバー103、104の立ち上がり形状としては、前傾、ほぼ垂直、後傾、対向気流10との対向側に凸となるように湾曲またはおよび屈曲、のいずれでもよい。図22に仮想線、一点鎖線、破線で示すような庇メッシュ111、112、113などを設ければ、これらを設けたメッシュカバー103の周縁部での対向気流10の剥離およびこの剥離により大きなカルマン渦が生じるのを抑制しやすくなる。
【0040】図23、図25、図27に示す例では、特に、メッシュカバー103、104を前記のような形状をした前面メッシュ103a、104aの背部に後面メッシュ103b、104bを設けてある。これによって、前面メッシュ103a、104aによって前記した騒音低減機能を発揮する低速渦流10bを得るのに加え、後面メッシュ103b、104bによってもその通気性を少なくとも生かし、また形状に応じた面機能を活かして、より低速で渦をより微細化した低速渦流10cとしてパンタグラフ2に向かわせて、その所望部分での空力抵抗および空力音をさらに低減することができる。
【0041】このような後面メッシュ103b、104bは、図23、図25、図27に実線で示すように平坦形状にしてもよいが、それらと対向する前面メッシュ103a、104aと同じ形状、前面メッシュ103、104よりも凸形状または傾斜が小さいか大きい、平坦、のいずれかであれば有効である。図23に仮想線で示す例は湾曲形状とし、図25に仮想線で示す例は山形の屈曲形状とし、図27に仮想線で示す例は台形の屈曲形状としてあり、それぞれ前面メッシュ103a、104aよりも小さく、かつ形状が異なった凸形状としてある。
【0042】図28、図30に模式的に示す例は、前面メッシュ103a、104aが後傾して対向気流10を上側にも勢力移行させる面特性を持つようにしてあり、対向気流10に対する空気抵抗をより低減できるとともに、対向気流10に対する左右および上側への勢力移行作用によって、メッシュカバー103、104における通過気流の中央域勢力をさらに低減して、パンタグラフ2の所望部分での空力抵抗および空力音をさらに低減することができる。図30に示す例では前面メッシュ103a、104a、および後面メッシュ103b、104bともに平面より見て山形をなし後傾し、いずれにおいても左右および上側への勢力移行が図れる構成であることにより、パンタグラフ2の騒音をさらに効果的に低減することができる。
【0043】なお、前面メッシュと後面メッシュとを有したいずれの実施例、または実施例外のパンタグラフカバー装置であっても、上記各種のパンタグラフカバを構成する前面メッシュと後面メッシュとはメッシュサイズが異なったものとすることができる。これにより、比較的粗いメッシュサイズの前面メッシュによって情報への勢力移行とカルマン渦のあらかたの微細化を図り、前面メッシュよりもメッシュサイズの小さい後面メッシュによってさらなる上方への勢力移行とカルマン渦の微細化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を小さくしながら十分な勢力移行とカルマン渦の細分化ができるようにしたり、あるいは、前面メッシュでほぼ十分な勢力移行とカルマン渦の細分化を図った上で、前面メッシュよりもメッシュサイズの大きな後面メッシュにて補助的に勢力移行とさらなるカルマン渦の微小化を図って、前後面メッシュ双方による通過抵抗を余り大きくしないで、より十分な勢力移行およびカルマン渦の細分化を実現するようにしたりできる。
【0044】図31に示す例では、平面より見て山型に屈曲した前面メッシュ103aが後傾し、平面より見て山形をした後面メッシュ104aが前傾して、図10〜図15に示す例のような三角形のメッシュカバータイプをなしており、図16〜図21に示す三角形のメッシュカバー構造による騒音低減特性をも複合して発揮し、さらに有利な騒音低減ができる。もっとも、この三角形メッシュカバー構造は、前後面メッシュ103a、104aが平面より見て台形など他の屈曲またはおよび円弧状など各種の湾曲形状をしたメッシュカバー構造と複合して採用しても同様な作用効果が得られる。
【0045】これらの場合も、メッシュカバー103、104から空力音が発生するが、この空力音は前記吸音側壁構造によって吸音され、まわりへの騒音が低減された。従って、パンタグラフカバー装置および吸音側壁構造全体において車両1のさらなる高速化に十分に対応することができる。
【0046】図33は前記パンタグラフカバーを前傾するように、すなわち、反パンタグラフ側に垂直線からθ傾斜するように設けた例を図示しており、前面メッシュ103a、104aは平面より見て対向気流側に山形形状の凸をなして前傾し、後面メッシュ103b、104bが平坦な形状で前面メッシュ103a、104aと平行に前傾している。
【0047】なお、図33に示す例の平坦で前傾した後面メッシュ103b、104bは、これ単独でも有効であり、本発明の範疇に属する。この場合、図示するように平面より見て対向気流に直角な配置に限らず、対向気流に対し傾斜した配置とすることもできる。
【0048】このような後面メッシュ103b、104bなどによる単独の平坦なメッシュが前傾していることにより、対向気流を下方に勢力移行させながら分散通過させ、パンタグラフに向かう対向気流につき、下方への勢力移行度に応じ屋根から離れて位置するパンタグラフ装置の大きくまたはおよび複雑な形態域への勢力の減少と、分散通過による全体勢力の減衰、低速化、およびカルマン渦の微細化による接触機器に及ぼすベクトル成分の微小化、を図った低速渦流とするとともに、メッシュカバーの周縁を通過する対向気流についてはメッシュカバーを通過する低速渦流のバックアップによって剥離および剥離による大きなカルマン渦の発生を抑制してパンタグラフに向かわせるので、このような作用を少なくとも営む簡極く単なカバー構造にてパンタグラフの屋根から離れた大きくまたはおよび複雑な形態部分に向かう対向気流を低速渦流となるように規制し、パンタグラフのこの部分での空力抵抗および空力音を低減することができる。また、傾斜した配置では左右方向の傾斜している側への勢力移行を図ってパンタフラフに向かう気流をさらに少なくすることができる。特に、下側への勢力移行によってパンタグラフの舟体2a部分に乱気流が及んでそれに揚力変動をもたらすのを確実に防止することができ、安定した集電状態が得られる。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、パンタグラフカバー装置が対向気流を上向きに案内したりメッシュを通過させるなどしてパンタグラフへの流れを規制しパンタグラフでの空力抵抗および空力音を低減するのに、パンタグラフカバーからキャビティ音やメッシュによる空力音が発生しても、これらの音を側板で受け止めるとともにその内側面の吸音部にて吸音してまわりへの騒音を低減する。また、パンタグラフの舟体とこれが摺動する架線との間で摺動音が発生しても、この摺動音をも側板が受け止めるとともにその内側面の吸音部にて吸音してまわりへの騒音を低減する。これらによって、パンタグラフカバー装置とともにまわり全体において外部に発する空力音および舟体と架線との摺動音を低減することができ、更なる高速化に対応しやすいものとなる。しかも、構造が特に複雑化することはないし、コストが特に上昇することはない。
【出願人】 【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1番4号
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
【住所又は居所】大阪府東大阪市稲田新町3丁目9番60号
【出願日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【代理人】 【識別番号】100080827
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 勝
【公開番号】 特開2003−219505(P2003−219505A)
【公開日】 平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願番号】 特願2002−12373(P2002−12373)