トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 電動車両
【発明者】 【氏名】脇谷 勉
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】乾 勉
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】菅家 博夫
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】電動車両において制動を短絡ブレーキ回路で実施する場合、急制動時に短絡ブレーキ回路に電気的な過負荷が作用する。

【解決手段】ST06で電動モータの制御信号出力を低減する。これにより電動モータの減速制御が実施できる。十分に減速できたら、ST04でブレーキ手段を作動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる電動モータと、中立時に制動を掛けることのできるブレーキ手段とを備える電動車両において、この電動車両は、車両の走行中に、前記走行準備部材がオフになるか又は前記方向速度制御部材が中立になったときに、前記電動モータの制御信号出力に所定の減算を繰り返し施すことで、前記ブレーキ手段の作動可能回転速度まで電動モータを減速する電動モータ減速制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電動車両の直進性維持技術に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、特開平3−98404号公報「小型電動車」に示される電動車は、同公報の第1図に示され通りに、モータ6とモータ駆動回路18(符号は公報記載のまま。)と電磁ブレーキ20と電磁ブレーキ駆動回路19とを備え、同公報の第2頁左下欄第11行〜第16行の記載「この電磁ブレーキ(20)は通電励磁によって制動を解除するととともに非通電で制動状態を得る無励磁作動型である。そして、前記アクセルレバー(11)が操作されるとブレーキ状態が解除され、前記アクセルレバー(11)が非操作状態になると、ブレーキ状態が現出される。」によれば、アクセルレバー(11)がニュートラルになると電磁ブレーキ(20)を制動状態にするというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のアクセルレバーがニュートラルになったとの情報に基づいて電磁ブレーキを作動させる手順には、次の2つが有力である。■即くブレーキを作動させる。■一定の時間を置いてからブレーキを作動させる。上記■では、車体の慣性力に打ち勝つ大きな容量の電磁ブレーキが当然必要となり、電磁ブレーキの大型化及びコストアップは避けられない。その点、上記■では、車体の慣性力を小さくしてからブレーキを作動させるため、電磁ブレーキの小型化及びコストダウンが図れる。
【0004】しかし、ブレーキを作動させる前に惰性である程度の距離車体が走行するため、制動距離が長くなる。
【0005】そこで、本発明の目的は制動距離の短縮化とブレーキ手段のコストダウンの双方を達成できる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1は、オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる電動モータと、中立時に制動を掛けることのできるブレーキ手段とを備える電動車両において、この電動車両は、車両の走行中に、走行準備部材がオフになるか又は方向速度制御部材が中立になったときに、電動モータの制御信号出力に所定の減算を繰り返し施すことで、ブレーキ手段の作動可能回転速度まで電動モータを減速する電動モータ減速制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0007】電動モータの制御信号出力に所定の減算を繰り返し施すことで、電動モータを電気的に減速制御する。この後にブレーキ手段を作動させる。上記電動モータの減速制御によれば、レシプロエンジンを搭載した車両で行うエンジンブレーキ操作に類似した減速性能が得られる。従って、停止距離は十分に短縮することができる。また、減速後にブレーキ手段を作動させるため、このブレーキ手段は小型化や低コスト化が図れる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0009】図1は本発明に係る除雪機の平面図であり、電動車両としての除雪機10は、機体11にエンジン12を搭載し、機体11の前部に作業部としてのオーガ13及びブロア14を装備し、機体11の左右にクローラ15L,15Rを配置し、機体11の後部に操作盤16を配置した車両であり、作業者が操作盤16の後から連れ歩く歩行型作業機である。以下、要部を詳細に説明する。なお、操作盤16は図2で詳しく説明する。
【0010】エンジン12の出力の一部で、発電機17を回し、得た電力を操作盤16の下方に配置したバッテリ(図4の符号43参照)に供給すると共に、後述する左右の走行モータに供給する。エンジン12の出力の残部は、電磁クラッチ18及びベルト19を介して作業部としてのブロア14及びオーガ13の回転に充てる。オーガ13は地面に積もった雪を中央に集める作用をなし、この雪を受け取ったブロア14はシュータ21を介して雪を機体11の周囲の所望の位置へ投射する。22はオーガハウジングであり、オーガ13を囲うカバー部材である。
【0011】左のクローラ15Lは、駆動輪23Lと遊動輪24Lとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Lは左の走行モータ25Lで正逆転させる。右のクローラ15Rも、駆動輪23Rと遊動輪24Rとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Rは右の走行モータ25Rで正逆転させる。
【0012】従来の除雪機では1個のエンジン(ガソリンエンジン又はジーゼルエンジン)で作業部系(オーガ回転系)と走行系(クローラ駆動系)とを賄っていたが、本発明ではエンジン12で作業部系(オーガ回転系)を駆動し、電動モータ(走行モータ25L,25R)で走行系(クローラ駆動系)を駆動するようにしたことを特徴とする。細かな走行速度の制御、旋回制御及び前後進切替制御は電動モータが適当であり、一方、急激な負荷変動を受ける作業部系はパワーのある内燃機関が適当であるとの考えに基づいて、そのようにした。
【0013】図2は図1の2矢視図であり、操作盤16には、操作箱27の手前の側面にメインスイッチ28、エンジンチョーク29、クラッチ操作ボタン31などを備え、操作箱27の上面に、投雪方向調節レバー32、オーガハウジング姿勢調節レバー33、走行系に係る方向速度制御部材としての方向速度レバー34、作業部系に係るエンジンスロットルレバー35を備え、操作箱27の右にグリップ36R及び右旋回操作レバー37Rを備え、操作箱27の左にグリップ36L、左旋回操作レバー37L及び走行準備部材としての走行準備レバー38を備える。
【0014】左右旋回操作レバー37L,37Rはブレーキレバーに近似するが、後述するとおりに完全な制動効果は得られない。操作することで走行モータ25L,25Rの回転を落として機体をターンさせることに使用するため、ブレーキレバーと言わずに旋回操作レバーと呼ぶことにした。
【0015】メインスイッチ28はメインキーを差込み、回すことでエンジンを始動することのできる周知のスイッチである。エンジンチョーク29は引くことで混合気の濃度を高めることができる。投雪方向調節レバー32は、シュータ(図1の符号21)方向を変更するときに操作するレバーであり、オーガハウジング姿勢調節レバー33はオーガハウジング(図1の符号22)の姿勢を変更するときに操作するレバーである。その他の部材の作用は、図4で説明する。
【0016】図3は図2の3矢視図であり、左旋回操作レバー37Lを握ることにより、ポテンショメータ39Lのアーム39aの角度を想像線の位置まで回転することができる。ポテンショメータ39Lはアーム39aの回転位置に応じた電気情報を発する機器である。
【0017】また、走行準備レバー38はスイッチ手段42に作用する部材であり、スプリング41の引き作用により、図の状態(フリー状態)になればスイッチ手段42はオンになる。作業者の左手で走行準備レバー38を図時計回りに下げれば、スイッチ手段42はオフとなる。このように、走行準備レバー38が握られているか否かはスイッチ手段42で検出することができる。
【0018】図4は本発明に係る除雪機の制御系統図であり、操作盤に内蔵若しくは付設した制御部44内の機器及びそこから延びる情報伝達経路を示すが、概ね四角は機器、丸はドライバーを示す。そして、想像線枠で囲ったエンジン12、電磁クラッチ18、ブロア14及びオーガ13が作業部系45であり、その他は走行系となる。43はバッテリである。なお、制御部44内に破線で指令の流れを便宜上示したが、これはあくまでも参考的記載に過ぎない。
【0019】先ず、作業部系の作動を説明する。メインスイッチ28にキーを差込み、回してスタートポジションにすることにより、図示せぬセルモータの回転によりエンジン12を始動させる。エンジンスロットルレバー35は図示せぬスロットルワイヤでスロットルバルブ48に繋がっているので、エンジンスロットルレバー35を操作することでスロットルバルブ48の開度を制御することができる。これにより、エンジン12の回転数を制御することができる。
【0020】走行準備レバー38を握ると共に、クラッチ操作ボタン31を操作することにより、作業者の意志で電磁クラッチ18を接続し、ブロア14及びオーガ13を回すことができる。なお、走行準備レバー38を離すかクラッチ操作ボタン31を操作するかの何れかにより、電磁クラッチ18を断状態にすることができる。
【0021】次に走行系の作動を説明をする。本発明の除雪機は、普通車両のパーキングブレーキに相当するブレーキとして、左右の電磁ブレーキ51L,51Rを備えており、これらの電磁ブレーキ51L,51Rは、駐車中は制御部44の制御により、ブレーキ状態にある。そこで、次の手順で電磁ブレーキ51L,51Rを開放する。
【0022】メインスイッチ28がスタートポジションにあること及び走行準備レバー38が握られていることの2つの条件が満たされ、方向速度レバー34を前進又は後進(図5で説明する。)に切換えると、電磁ブレーキ51L,51Rは開放(非ブレーキ)状態になる。
【0023】図5は本発明で採用した方向速度レバーの作用説明図であり、方向速度レバー34は、作業者の手で、矢印■,■の如く往復させることができ、「中立範囲」より「前進」側へ倒せば車両を前進させることができ、且つ「前進」領域においては、Lfが低速前進、Hfが高速前進となるように、速度制御も行える。同様に、「中立範囲」より「後進」側へ倒せば車両を後進させることができ、且つ「後進」領域においては、Lrが低速後進、Hrが高速後進となるように、速度制御も行える。この例では、図の左端に付記した通りに、後進の最高速が0V(ボルト)、前進の最高速が5V、中立範囲が2.3V〜2.7Vになるようにポテンショメータでポジションに応じた電圧を発生させる。1つのレバーで前後の方向と高低速の速度制御とを設定できるので、方向速度レバー34と名付けた。
【0024】図4に戻って、方向速度レバー34の位置情報をポテンショメータ49から得た制御部44は、左右のモータドライバー52L,52Rを介して左右の走行モータ25L,25Rを回し、走行モータ25L,25Rの回転速度を回転センサ53L,53Rで検出して、その信号に基づいて回転速度を所定値になるようにフィードバック制御を実行する。この結果、左右の駆動輪23L,23Rが所望の方向に、所定の速度で回り、走行状態となる。
【0025】走行中の制動は次の手順で行う。本発明ではモータドライバー52L,52Rに回生ブレーキ回路54L,54R及びブレーキ手段としての短絡ブレーキ回路55L,5Rを含む。
【0026】バッテリから電動モータへ電気エネルギーを供給することで、電動モータは回転する。一方、発電機は回転を電気エネルギーに変換する手段である。そこで、本発明では電気的切換えにより、走行モータ25L,25Rを発電機に変え、発電させるようにした。発電電圧がバッテリ電圧より高ければ、電気エネルギーはバッテリ43へ蓄えることができる。これが回生ブレーキの作動原理である。
【0027】左旋回操作レバー37Lの握りの程度をポテンショメータ39Lで検出し、この検出信号に応じて制御部44は左の回生ブレーキ回路54Lを作動させて、左の走行モータ25Lの速度を下げる。右旋回操作レバー37Rの握りの程度をポテンショメータ39Rで検出し、この検出信号に応じて制御部44は右の回生ブレーキ回路54Rを作動させて、右の走行モータ25Rの速度を下げる。すなわち、左旋回操作レバー37Lを握ることで左旋回させることができ、右旋回操作レバー37Rを握ることで右旋回させることができる。
【0028】そして、次の何れかにより走行を停止することができる。方向速度レバー34を中立位置に戻す。走行準備レバー38を離す。メインスイッチ28をオフ位置に戻す。
【0029】この停止は後述の電気的減速制御を施したのちに、短絡ブレーキ回路55L,55Rを用いて実行する。短絡ブレーキ回路55Lは、文字通り走行モータ25Lの両極を短絡させる回路であり、この短絡により走行モータは急制動状態になる。短絡ブレーキ回路55Rも同様であるから説明を省略する。
【0030】停止後にメインスイッチ28をオフ位置に戻せば、電磁ブレーキ51L,51Rがブレーキ状態となり、パーキングブレーキを掛けたことと同じになる。
【0031】次に、走行中の除雪機を停止させるときの制御方法を説明する。図6は本発明に係る停止制御フロー図であり、ST××はステップ番号を示す。
ST01:除雪機が走行中であるか否かを調べる。例えば、図4の回転センサ53L,53Rの出力によって判断することができる。NOであれば、リターンさせることで以降の制御は行わない。YESであれば、ST02に進む。
ST02:走行準備レバー(図4の符号38)がオフ(離すことでオフ)であるか否かを調べる。NOであればST03に進み、YESであればST04に進む。
【0032】ST03:方向速度レバー(図4の符号34)が中立であるか否かを調べる。NOであれば、リターンさせることで制御は行わない。YESであれば、ST04に進む。
ST04:以上の条件が満たされれば、制御部は走行モータを制御信号出力Dmで制御する。ただし、この制御信号出力Dmの初回値は直前の制御信号出力をそのまま使用する。また、信号出力DmはPI制御ならPI出力、PID制御ならPID出力に相当する。
【0033】ST05:走行モータ速度Mnがしきい値Nstdを超えているか否かを調べる。走行モータ速度Mnは図4の回転センサ53L,53Rで調べることができる。
【0034】また、しきい値はブレーキ手段の作動可能回転速度によって定めた値を使用する。本実施例ではブレーキ手段として図4の短絡ブレーキ回路55L,55Rを充てる。短絡ブレーキ回路55L,55Rには図示せぬスイッチング素子を使用するが、これらのスイッチング素子に短絡時に電気的に負担が掛るため、ブレーキ容量に対応した容量の素子を使用しなければならない。逆に、短絡ブレーキ回路55L,55Rに配置したスイッチング素子によって、ブレーキ手段の作動可能回転速度が決まることになり、これを基に前記しきい値を決める。
【0035】このしきい値は走行モータ25L,25Rの使用最高回転数の10%程度に定めると良い。そうすれば、スイッチング素子の小容量化が可能であり、短絡ブレーキ回路55L,55Rの小型化及びコストダウンが図れる。これを可能にしたのが、ST05及び次のST06である。
【0036】ST06:ST05でYESであれば、制御信号出力Dmからα(例えば1.0%)を減じた値を新たな制御信号出力Dmとする。以上のST04、ST05、ST06を繰り返すことで、制御信号出力Dmは徐々に小さくなり、これに対応して走行モータの回転速度が低下する。
【0037】ST07:ST05がNO、すなわち走行モータの回転速度がしきい値以下になったら、ブレーキ手段(図4の短絡ブレーキ回路55L,55R)を作動させて、制動を掛ける。
【0038】以上をまとめると本発明の電動車両は、車両の走行中に、走行準備部材がオフ(ST02で判断)になるか又は方向速度制御部材が中立(ST03で判断)になったときに、電動モータの制御信号出力に所定の減算(ST06)を繰り返し施すことで、ブレーキ手段の作動可能回転速度(ST05で判断)まで電動モータを減速する電動モータ減速制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0039】上記電動モータの減速制御によれば、レシプロエンジンを搭載した車両で行うエンジンブレーキ操作に類似した減速性能が得られる。従って、停止距離は十分に短縮することができる。また、減速後にブレーキ手段を作動させるため、このブレーキ手段は小型化や低コスト化が図れる。
【0040】尚、本発明を適用する電動車両は除雪機に限るものではなく、電動運搬車、電動ゴルフカートなどの電動車であれば種類は任意である。
【0041】また、実施例の除雪機は左右の走行モータを備えるが、1個の走行モータで左右の駆動輪を駆動する形式の電動車両に本発明を適用することは差支えない。さらには、方向速度レバーは、実施例では1本であったが、複数本でその役割を分担させてもよい。そして、方向速度制御部材はレバー、ダイヤル、スイッチ又は同等品であればよい。同様に、走行準備部材はレバー、ダイヤル、スイッチ又は同等品であればよい。
【0042】また、ブレーキ手段は短絡ブレーキに限らず、電磁ブレーキ、ディスクブレーキの何れであったもよい。
【0043】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1では、電動モータの制御信号出力に所定の減算を繰り返し施すことで、電動モータを電気的に減速制御する。この後にブレーキ手段を作動させる。上記電動モータの減速制御によれば、レシプロエンジンを搭載した車両で行うエンジンブレーキ操作に類似した減速性能が得られる。従って、停止距離は十分に短縮することができる。また、減速後にブレーキ手段を作動させるため、このブレーキ手段は小型化や低コスト化が図れる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年3月18日(2002.3.18)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎 (外1名)
【公開番号】 特開2003−209904(P2003−209904A)
【公開日】 平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願番号】 特願2002−74940(P2002−74940)