トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 車両の駆動力制御装置
【発明者】 【氏名】門田 圭司
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【氏名】清水 弘一
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【要約】 【課題】クラッチ等の故障に伴う電動機の劣化を防止する。

【解決手段】前輪をエンジンで駆動し、後輪をモータで駆動する。エンジンを制御するエンジンコントローラは、モータ回転数が所定回転数以上と判定すると、目標車輪速と現在の車輪速度の偏差分に応じたエンジントルクのトルクダウン制御を行う。これによって、モータの回転数は、クラッチの異常の有無に関係なく、許容限界回転数未満となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後輪の一方を駆動する主駆動源と、前後輪の他方を駆動する電動機と、車両速度を制御可能な車両速度制御手段とを備える車両の駆動力制御装置において、電動機の回転数を検出するモータ回転数検出手段を有し、上記車両速度制御手段は、検出した電動機の回転数が当該電動機の許容限界回転数以下となるように車両速度を制限する車両速度制限手段を備えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】 上記車両速度制限手段は、検出した電動機の回転数が上記許容限界回転数よりも回転数が低い所定回転数以上の場合に、上記車両速度の制限を行うことを特徴とする請求項1に記載した車両の駆動力制御装置。
【請求項3】 上記車両速度制限手段は、電動機の出力トルク上限値を、電動機の回転数が許容限界回転数に近づくにつれて連続的若しくは段階的に小さくすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両の駆動力制御装置。
【請求項4】 車両速度制限手段は、運転者のアクセル操作とは無関係に主駆動源の出力トルクを低減することで車両速度を制限することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載した車両の駆動力制御装置。
【請求項5】 主駆動源と当該主駆動源で駆動される主駆動輪との間のトルク伝達経路に変速機が介挿されている車両において、上記車両速度制限手段は、上記変速機の変速比が小さくなる方向に変更することを禁止若しくは変速比が大きくなる方向に変更させることで、車両速度を制限することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載した車両の駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】車両の駆動力制御装置としては、例えば特開平11−243608号公報に記載のものがある。この装置では、エンジンの出力トルクを主駆動輪(前輪)に伝達すると共に、電動機の出力トルクをクラッチを介して従駆動輪(後輪)に伝達することで四輪駆動状態とする。そして、上記従来公報の車両にあっては、電動機を駆動する時のモータイナーシャによるショックを防止するために、クラッチをオン(接続状態)としてから電動機の出力トルクを徐々に上昇するように制御する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】電動機で従駆動輪を駆動可能な車両にあっては、一般に、従駆動輪を駆動する際にクラッチをオンにし、また、電動機で従駆動輪を駆動しない場合にはクラッチをOFFとして、電動機と従駆動輪とを切り離した状態としておく。しかし、クラッチが切れないというような故障等が発生した場合には、電動機は従駆動輪に連れ回される状態となるため、車両が所定の車両速度以上で走行するたびに電動機が過剰回転状態となる。この結果、電動機の寿命がその分短くなるおそれ、つまり電動機が劣化するおそれがある。
【0003】本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、クラッチ等の故障に伴う電動機の劣化を防止することを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、前後輪の一方を駆動する主駆動源と、前後輪の他方を駆動する電動機と、車両速度を制御可能な車両速度制御手段とを備える車両の駆動力制御装置において、電動機の回転数を検出するモータ回転数検出手段を有し、上記車両速度制御手段は、検出した電動機の回転数が当該電動機の許容限界回転数以下となるように車両速度を制限する車両速度制限手段を備えることを特徴とするものである。
【0005】次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記車両速度制限手段は、電動機の出力トルク上限値を、電動機の回転数が許容限界回転数に近づくにつれて連続的若しくは段階的に小さくすることを特徴とするものである。次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載した構成に対し、車両速度制限手段は、運転者のアクセル操作とは無関係に主駆動源の出力トルクを低減することで車両速度を制限することを特徴とするものである。
【0006】次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載した構成に対し、主駆動源と当該主駆動源で駆動される主駆動輪との間のトルク伝達経路に変速機が介挿されている車両において、上記車両速度制限手段は、上記変速機の変速比が小さくなる方向に変更することを禁止若しくは変速比が大きくなる方向に変更させることで、車両速度を制限することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の効果】請求項1に記載した発明によれば、電動機の回転数が許容限界回転数を越えないように、エンジン制御やブレーキ制御などの車両速度制限手段を通じて車両速度を制限する結果、電動機が過剰回転となることが防止されてクラッチの故障などによる当該電動機の劣化を防ぐことができる。ここで、許容限界回転数とは、例えば使用する電動機の規格などで設定されている使用限界の回転数である。勿論、安全性や耐久性などを考慮して、上記使用限界の回転数よりも低い回転数を許容限界回転数としても良い。
【0008】次に、請求項2に記載した発明によれば、電動機が所定回転数以上の場合にだけ車両速度の制限を行うので、通常走行状態への影響を小さく抑えられる。ここで、上記所定回転数は、上記許容限界回転数から、車両制御の応答遅れ分などを考慮した余裕回転数分だけ小さくした値である。さらに、上記所定回転数は、通常の車両制御で発生する電動機の回転数よりも大きな回転数に設定すると良い。
【0009】次に、請求項3に記載した発明によれば、電動機の回転数が所定回転数に近づくにつれて、電動機で駆動される従駆動輪の駆動トルクの上限値が抑えられる。したがって、電動機の回転数が高くなるほど車両の加速性が低下し、車両速度の上昇が抑えられるように当該車両速度が制限される結果、電動機の回転数が許容限界回転数未満となり過剰回転が抑えられ易くなる。なお、電動機の回転数が許容限界回転数となる前に、電動機の出力トルク上限値がゼロとなるように設定することが好ましい。
【0010】特に、低μ路の走行などによって、電動機に駆動される従駆動輪が加速スリップしても、電動機の回転数が高くなるほどその加速スリップが抑えられる。次に、請求項4に記載した発明によれば、主駆動源の出力トルクを低減することで確実に車両速度を制限することができる。次に、請求項5に記載した発明によれば、変速機のシフトアップを禁止若しくはシフトダウンさせることで、車両速度を制限することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、図1に示すように、左右前輪1L、1Rが内燃機関であるエンジン2によって駆動され、左右後輪3L、3Rが電動機であるモータ4によって駆動可能となっている四輪駆動可能な車両の場合の例である。まず、構成について説明すると、図1に示すように、エンジン2の出力トルクTeが、トランスミッション30及びディファレンシャル・ギヤ31を通じて左右前輪1L、1Rに伝達されるようになっている。
【0012】上記トランスミッション30は、シフト制御部32からのシフト指令を入力すると、入力したシフト指令に応じた変速比に設定変更される。シフト制御部32は、シフトレバー等の変速指示器33の変速指示に応じたシフト指令をトランスミッション30に出力する。シフト制御部32は、図2に示すような処理を行う。すなわち、ステップS100にて変速指示器33から変速指令が入力されるまで待機し、変速指令を入力するとステップS110に移行する。ステップS110では、後述のモータ用回転数センサ26からの信号に基づきモータ回転数Nmが所定回転数、例えば20000rpm以上か否かを判定し、20000rpm以上と判定すると、ステップS120に移行し、20000rpm未満と判定するとステップS130に移行する。
【0013】ステップS120では、新たに入力した変速指示の変速比が、現在の変速比よりも大きいか否か、つまりシフトダウンか否かを判定し、現在の変速比よりも大きいと判定した場合にはステップS130に移行する。一方、現在の変速比と等しいか小さい、つまりシフト変更無しかシフトアップと判定した場合には、変速変更を行うことなく復帰する。ステップS130では、変速指示に対応するシフト指令をトランスミッション30に出力して、復帰する。
【0014】ここで、トランスミッション30での変速比の変更は多段的である必要はなく、無断変速であっても構わない。また、変速比の変更指示は、運転者からの指示に限定されない。また、トランスミッション30及びシフト制御部32は、車両速度制御手段を構成し、また、ステップS110及びS120は車両速度制限手段を構成する。また、エンジン2の回転トルクTeの一部は、無端ベルト6を介して発電機7に伝達される。
【0015】上記発電機7は、エンジン2の回転数Neにプーリ比を乗じた回転数Nhで回転し、4WDコントローラ8によって調整される界磁電流Ifhに応じて、エンジン2に対し負荷となり、その発電負荷トルクに応じた電力を発電する。その発電機7が発電した電力は、電線9を介してモータ4に供給可能となっている。その電線9の途中にはジャンクションボックス10が設けられている。上記モータ4の駆動トルクは、減速機11及びクラッチ12を介して後輪3L、3Rに伝達可能となっている。図1中、符号13はデフを表す。
【0016】上記エンジン2の吸気管路14(例えばインテークマニホールド)には、スロットルバルブ15が介装されている。スロットルバルブ15は、アクセルペダル17の踏み込み量等に応じてスロットル開度が調整制御されるアクセルバイワイヤー方式である。すなわち、上記スロットルバルブ15は、ステップモータ19をアクチュエータとし、そのステップモータ19のステップ数に応じた回転角により開度が調整制御される。そのステップモータ19の回転角は、エンジンコントローラ18からの開度信号によって調整制御される。
【0017】アクセルペダル17の踏み込み量を検出するアクセルセンサ20を有し、該アクセルセンサ20は、検出した踏み込み量に応じた検出信号を、エンジンコントローラ18及び4WDコントローラ8に出力している。また、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数検出センサ21を備え、エンジン回転数検出センサ21は、検出した信号をエンジンコントローラ18及び4WDコントローラ8に出力する。
【0018】エンジンコントローラ18では、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づいて図3に示すような処理が行われる。すなわち、まずステップS200で、後述のモータ用回転数センサ26からの信号に基づきモータ回転数Nmが所定回転数例えば2000rp以上か否かを判定し、モータ回転数Nmが20000rpm未満と判定されればステップS210に移行する。一方、モータ回転数Nmが20000rpm以上と判定すれば、ステップS290に移行する。
【0019】ステップS210では、エンジン2で駆動される前輪1L、1Rに発生した加速スリップ量ΔVFが、目標加速スリップ量ΔSV以上か否かを判定し、目標加速スリップ量ΔSV以上の加速スリップが発生していないと判定したらステップS220に移行する。一方、目標加速スリップ量ΔSV以上の加速スリップが発生していると判定した場合には、ステップS270に移行する。ここで、上記加速スリップ量ΔVFは、後輪3L、3Rと前輪1L、1Rとの間の車輪速差に基づき判定することができる。
【0020】ステップS220では、アクセルセンサ20からの検出信号に基づいて、運転者の要求する目標出力トルクTeNを演算して、ステップS230に移行する。ステップS230では、スロットル開度やエンジン回転数Neなどに基づき、現在の出力トルクTeを算出してステップS240に移行する。ステップS240では、現在の出力トルクTeに対する目標出力トルクTeNの偏差分ΔTeを下記式に基づき出力して、ステップS250に移行する。
【0021】ΔTe =TeN − TeステップS250では、その偏差分ΔTeに応じたスロットル開度θの変化分Δθを演算し、その開度の変化分Δθに対応する開度信号を上記ステップモータ19に出力して、復帰する。一方、ステップS270では、通常のTCS制御を実施すべく、下記式に基づき加速スリップ抑制のためのトルクダウン量TDを演算し、ステップS280に移行する。
【0022】TD = K1・ΔVFK1は、ゲインである。ステップS280では、そのトルクダウン量TDに応じたスロットル開度θの変化分Δθを演算し、その開度の変化分Δθに対応する開度信号を上記ステップモータ19に出力して、復帰する。また、ステップS200にてモータ4が所定回転数以上(20000rpm以上)で回転していると判定すると、ステップS290に移行して、下記式に基づきトルクダウン量TDを演算し、ステップS280に移行する。
TD= K2・(VF − VS) − TFFここで、K2は、上記K1よりも大きなゲインである。
【0023】VFは、主駆動輪である前輪1L、1Rの車輪速である。VSは、例えば40km/hなど、前輪1L、1Rの目標制限車輪速度である。また、TFFは、車両速度を制限した際に登坂時であっても失速感の無い車速制御を可能とするための補正項であり、登坂に打ち勝つために必要なトルク分である。
【0024】ここで、車重をWとし、路面の勾配をθとすると、図4に示すように、登坂抵抗はW・sinθと表現できる。さらに、タイヤ半径をrとすると、タイヤ軸トルクはW・sinθ・rとなる。このタイヤ軸トルクをエンジントルクに換算することで、下記式のように登坂に必要なトルクTFFは表される。すなわち、下記式に基づきトルクTFFは算出すればよい。
【0025】

ここで、G1は、ディファレンシャル・ギヤのギア比G2は、トランスミッションの変速ギア比を表す。
【0026】なお、エンジン2やエンジンコントローラ18は、車両速度制御手段を構成し、ステップS200、S290,S280は車両速度制限手段を構成する。また、上記発電機7は、図5に示すように、出力電圧Vを調整するための電圧調整器22(レギュレータ)を備え、4WDコントローラ8によって界磁電流Ifhが調整されることで、エンジン2に対する発電負荷トルクTh及び発電する電圧Vが制御される。電圧調整器22は、4WDコントローラ8から発電機制御指令(界磁電流値)を入力し、その発電機制御指令に応じた値に発電機7の界磁電流Ifhを調整すると共に、発電機7の出力電圧Vを検出して4WDコントローラ8に出力可能となっている。なお、発電機7の回転数Nhは、エンジン2の回転数Neからプーリ比に基づき演算することができる。
【0027】また、上記ジャンクションボックス10内には電流センサ23が設けられ、該電流センサ23は、発電機7からモータ4に供給される電力の電流値Iaを検出し、当該検出した電機子電流信号を4WDコントローラ8に出力する。また、電線9を流れる電圧値(モータ4の電圧)が4WDコントローラ8で検出される。符号24は、リレーであり、4WDコントローラ8から指令によってモータ4に供給される電力(電流)の遮断及び接続が制御される。
【0028】また、モータ4は、4WDコントローラ8からの指令によって界磁電流Ifmが制御され、その界磁電流Ifmの調整によって駆動トルクTmが調整される。なお、符号25はモータ4の温度を測定するサーミスタである。上記モータ4の駆動軸の回転数Nmを検出するモータ用回転数センサ26を備え、該モータ用回転数センサ26は、検出したモータ4の回転数信号を4WDコントローラ8、エンジンコントローラ18、及びシフト制御部32にそれぞれ出力する。
【0029】また、上記クラッチ12は、油圧クラッチや電磁クラッチから構成され、4WDコントローラ8からのクラッチ制御指令に応じたトルク伝達率でトルクの伝達を行う。また、各車輪1L、1R、3L、3Rには、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRが設けられている。各車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRは、対応する車輪1L、1R、3L、3Rのエンジン回転数Neに応じたパルス信号を車輪速検出値として4WDコントローラ8に出力する。
【0030】ここで、図5中符号40は発電機20に電力を供給する線に設けられたリレーである。4WDコントローラ8は、図6に示すように、発電機制御部8A、リレー制御部8B、モータ制御部8C、クラッチ制御部8D、余剰トルク演算部8E、目標トルク制限部8F、余剰トルク変換部8Gを備える。この4WDコントローラ8は、車両速度制御手段を構成する。
【0031】上記発電機制御部8Aは、電圧調整器22を通じて、発電機7の発電電圧Vをモニターしながら、当該発電機7の界磁電流Ifhを調整することで、発電機7の発電電圧Vを所要の電圧に調整する。リレー制御部8Bは、発電機7からモータ4への電力供給の遮断・接続を制御する。モータ制御部8Cは、モータ4の界磁電流Ifmを調整することで、当該モータ4のトルクを所要の値に調整する。
【0032】また、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づき、図7に示すように、余剰トルク演算部8E→目標トルク制限部8F→余剰トルク変換部8Gの順に循環して処理が行われる。まず、余剰トルク演算部8Eは、発電機制御手段を構成して、図8に示すような処理を行う。すなわち、先ず、ステップS310において、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRからの信号に基づき演算した、前輪1L、1R(主駆動輪)の車速から後輪3L、3R(従駆動輪)の車速を減算することで、前輪1L、1Rの加速スリップ量であるスリップ速度ΔVFを求め、ステップS320に移行する。なお、加速スリップの有無、及びその加速スリップ量を路面反力トルク等から推定して求めても良い。
【0033】ステップS320では、上記求めたスリップ速度ΔVFが所定値例えばゼロより大きいか否かを判定する。スリップ速度ΔVFが0以下と判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていないと推定されるので、ステップS330に移行して、Thに0を代入した後に復帰する。一方、ステップS320において、スリップ速度ΔVFが0より大きいと判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていると推定されるので、ステップS340に移行する。
【0034】ステップS340では、前輪1L、1Rの加速スリップを抑えるために必要な吸収トルクTΔVFを下記式に基づき演算してステップS350に移行する。
TΔVF = K1×ΔVFここで、K1は実験などによって求めたゲインである。ステップS350では、現在の発電機7の発電負荷トルクTGを、下記式に基づき演算したのち、ステップS360に移行する。
【0035】

ここで、V :発電機7の電圧Ia:発電機7の電機子電流Nh:発電機7の回転数K3:効率K2:係数である。
【0036】ステップS360では、下記式に基づき、余剰トルクつまり発電機7で負荷すべき目標の発電負荷トルクThを求め、復帰する。
Th = TG + TΔVF次に、目標トルク制限部8Fの処理について、図9に基づいて説明する。すなわち、まず、ステップS410で、上記目標発電負荷トルクThが、発電機7の最大負荷容量HQより大きいか否かを判定する。目標発電負荷トルクThが当該発電機7の最大負荷容量HQ以下と判定した場合には、ステップS430に移行する。一方、目標発電負荷トルクThが発電機7の最大負荷容量HQよりも大きいと判定した場合には、ステップS420に移行する。
【0037】ステップS420では、下記式のように、目標の発電負荷トルクThを最大負荷容量HQに制限した後にステップS430に移行する。
Th = HQステップS430では、エンジン回転数検出センサ21及びスロットルセンサからの信号に基づいて、現在のエンジン出力トルクTeを演算してステップS440に移行する。
【0038】ステップS440では、現在のエンジン回転数Neなどからエンジン2が停止しない最低の許容トルクTkを求め、ステップS450に移行する。なお、許容トルクTkを求める代わりに所定値としても構わない。ステップS450で、下記式に基づき、偏差トルクΔTeを演算して、ステップS460に移行する。
ΔTe = Te −TkステップS460では、偏差トルクΔTeが目標の発電負荷トルクThよりも小さいか否かを判定する。ΔTe≧Thと判定した場合には、復帰する。一方、ΔTe<Thと判定した場合には、ステップS470に移行する。
【0039】ステップS470では、下記式によって目標の発電負荷トルクThを偏差トルクΔTeに低減した後に、復帰する。
Th = ΔTe −ααは余裕代である。もっとも、α=0としても良い。次に、余剰トルク変換部8Gの処理について、図10に基づいて説明する。まず、ステップS500で、Thが0より大きいか否かを判定する。Th>0と判定されれば、前輪1L、1Rが加速スリップしているので、ステップS510に移行する。また、Th=0と判定されれば、前輪1L、1Rは加速スリップしていないので、以降の処理をすることなく復帰する。
【0040】ステップS510では、モータ用回転数センサ26が検出したモータ4の回転数Nmを入力し、そのモータ4の回転数Nmに応じた目標モータ界磁電流Ifmを算出し、当該目標モータ界磁電流Ifmをモータ制御部8Cに出力した後、ステップS520に移行する。ここで、上記モータ4の回転数Nmに対する目標モータ界磁電流Ifmは、回転数Nmが所定回転数以下の場合には一定の所定電流値とし、モータ4が所定の回転数以上になった場合には、公知の弱め界磁制御方式でモータ4の界磁電流Ifmを小さくする(図11参照)。すなわち、モータ4が高速回転になるとモータ誘起電圧の上昇によりモータトルクが低下することから、上述のように、モータ4の回転数Nmが所定値以上になったらモータ4の界磁電流Ifmを小さくして誘起電圧Eを低下させることでモータ4に流れる電流を増加させて所要モータトルクTmを得るようにする。
【0041】ステップS520では、上記目標モータ界磁電流Ifm及びモータ4の回転数Nmからモータ4の誘起電圧Eを算出して、ステップS530に移行する。ステップS530では、上記余剰トルク演算部8Eが演算した発電負荷トルクThに基づき対応するモータトルクTmを算出して、ステップS540に移行する。ステップS540では、図12に基づき、現在のモータ回転数Nmに応じたトルク上限値Tmxを求めて、ステップS550に移行する。
【0042】本実施形態におけるトルク上限値Tmxは、図12のように、モータ回転数Nmが20000rpm以上となると、回転数が大きくなるほど連続的に小さくなるように設定されている。ステップS550では、ステップS530で算出したモータトルクTmがトルク上限値Tmxよりも大きいか否かを判定し、トルク上限値Tmx以下であれば、ステップS570に移行する。一方、トルク上限値Tmxよりも大きい場合には、ステップS560に移行する。
【0043】ステップS560では、モータトルクに現在のモータ回転数Nmに応じたトルク上限値Tmxを設定してステップS570に移行する。ステップS570では、上記目標モータトルクTm及び目標モータ界磁電流Ifmを変数として対応する目標電機子電流Iaを算出して、ステップS580に移行する。ステップS580では、下記式に基づき、上記目標電機子電流Ia、抵抗R、及び誘起電圧Eから発電機7の目標電圧Vを算出し、当該発電機7の目標電圧Vを発電機制御部8Aに出力したのち、復帰する。
【0044】V=Ia×R+Eなお、抵抗Rは、電線9の抵抗及びモータ4のコイルの抵抗であるここで、ステップS540〜S560は車両速度制限手段を構成する。次に、上記構成の装置における作用などについて説明する。路面μが小さいためや運転者によるアクセルペダル17の踏み込み量が大きいなどによって、エンジン2から前輪1L、1Rに伝達されたトルクが路面限界トルクよりも大きくなると、つまり、主駆動輪である前輪1L、1Rが加速スリップすると、その加速スリップ量に応じた発電負荷トルクThで発電機7が発電することで、前輪1L、1Rに伝達される駆動トルクが、当該前輪1L、1Rの路面反力限界トルクに近づくように調整される。この結果、主駆動輪である前輪1L、1Rでの加速スリップが抑えられる。さらに、加速スリップ量が目標加速スリップ量ΔSV以上である場合には、TCS制御によってエンジンの出力トルクも抑えられる結果、前輪1L、1Rの加速スリップの収束性が向上する。
【0045】また、発電機7で発電した余剰の電力によってモータ4が駆動され、従駆動輪である後輪3L、3Rも駆動されることで、四輪駆動状態となって車両の加速性が向上する。このとき、主駆動輪の路面反力限界トルクを越えた余剰のトルクでモータ4を駆動するため、エネルギー効率が向上し、燃費の向上に繋がる。すなわち、本実施形態では、滑り易い路面等では前輪1L、1Rに全てのエンジン2の出力トルクTeを伝達しても全てが駆動力として使用されないことに鑑みて、前輪1L、1Rで有効利用できない駆動力を後輪3L、3Rに出力して加速性を向上させるものである。
【0046】ここで、通常走行時のタイムチャートを図13に示す。この図13に示すように、前輪1L、1Rが加速スリップするとモータトルクが発生するが、モータ回転数Nmが所定回転数となると、クラッチ12がOFF(切断状態)となって、モータが後輪3L、3Rに連れ回されることが防止されて、モータ4の過回転が防止される。ここで、モータ回転数Nmは、後輪3L、3Rの車輪速に換算した値で図13に表示してある。図14においても同様である。
【0047】一方、クラッチ12の故障などでクラッチ12がオン(接続状態)となって、モータ4が後輪3L、3Rに常に連れ回される状態となった場合には、図14に示すタイムチャートのように、モータ4の回転数が所定回転数(本実施形態では20000rpm)以上となると、エンジントルクがトルクダウンして前輪1L、1Rの車輪速が所定速度である40km/hに収束するように制御されるように車両速度が制限される結果、モータ4の回転数が抑えられて許容限界回転数(例えば25000rpm)を越えることが防止、つまり過剰回転が防止される。このとき、トルクダウン分として補正項として登坂トルクTFF分を補償していることで、車両速度制限のために登坂時にトルクダウンを行っても、失速感を抑えることが可能となる。
【0048】また、モータ回転数Nmが所定回転数以上となってエンジントルクがダウンしても、トランスミッション30でのシフトアップが禁止されることで、エンジンブレーキによって車両速度がさらに制限される。さらに、モータ回転数Nmが所定回転数20000回転数を超えると、モータ回転数Nmが大きくなって許容上限値に近づくほど、上限値が小さくなることで、四輪駆動状態から二輪駆動状態に変更されて加速性が抑えられて、車両速度が制限される。
【0049】ここで、上記実施形態では、後輪3L、3Rに対し主駆動輪である前輪1L、1Rのスリップ量に基づいて発電負荷トルクを決定し、その発電負荷トルクとなるように発電機7で発電する電力、つまりモータ4に供給する電力を設定しているが、これに限定されない。例えば、後輪3L、3Rで必要な駆動トルクを別途計算し、前輪1L、1Rの加速スリップとは独立して、必要な駆動トルクに応じた電力となるように発電機7の発電を調整して、当該発電機7で所定の発電負荷トルクTGを生じるようにしても良い。
【0050】また、上記実施形態では、3つの車両速度制限手段を併用し、各車両速度の制限を開始するモータ回転数Nmを同じ20000rpmに設定しているが、それぞれ個別に設定しても構わない。また、3つの車両速度制限手段を全て実施する必要はなく、そのうちの1又は2以上の車両速度制限手段だけを備えて有れば良い。また、車両速度制御手段として、ブレーキ制御を採用し、ブレーキによって車両速度の制限を行うようにしても良い。
【0051】また、上記実施形態では、モータトルクの上限値を直接、低減させることで、車両速度の制限を実施しているが、目標トルク制限部において、モータトルクに影響のある目標発電負荷トルクThの上限値を、モータ4の回転数が許容回転数に近づくにつれて、連続的若しくは段階的に小さくするように設定することで、間接的に、モータトルクの上限値を、モータ4の回転数が許容回転数に近づくにつれて、連続的若しくは段階的に小さくするように制限しても良い。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
【出願日】 平成14年1月11日(2002.1.11)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2003−209902(P2003−209902A)
【公開日】 平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願番号】 特願2002−4984(P2002−4984)