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【発明の名称】 電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラム
【発明者】 【氏名】久田 秀樹
【住所又は居所】愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社内

【氏名】青木 一男
【住所又は居所】愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社内

【要約】 【課題】第1の制御モードと第2の制御モードとで制御の切換えを行う際に、車両駆動装置にショックが発生するのを防止することができるようにする。

【解決手段】電動機械と、該電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段91と、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段92と、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段93と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段94とを有する。制御変量が初期値として設定され、第2の制御モードのための制御変量の変化率が維持されるので、電動機械のトルクに急激な変動が発生することがなくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動機械と、該電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有することを特徴とする電動車両駆動制御装置。
【請求項2】 前記第1の制御モードの制御変量は、切換タイミングにおける検出値である請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
【請求項3】 前記第1の制御モードの制御変量は、切換タイミングにおける指令値である請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
【請求項4】 前記変化率に上限値が設定される請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
【請求項5】 電動機械と、該電動機械の制御をトルク制御から回転速度制御に切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおけるトルク制御のための指令値をPI制御の初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴う回転速度制御のための指令値の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて回転速度制御で電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有することを特徴とする電動車両駆動制御装置。
【請求項6】 電動機械と、該電動機械の制御を回転速度制御からトルク制御に切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおける回転速度制御のためのPI制御の値を初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴うトルク制御のための指令値の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいてトルク制御で電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有することを特徴とする電動車両駆動制御装置。
【請求項7】 電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換え、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定し、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持し、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行うことを特徴とする電動車両駆動制御方法。
【請求項8】 コンピュータを、電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段、並びに前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段として機能させることを特徴とする電動車両駆動制御方法のプログラム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電動車両、例えば、電気自動車には車両駆動装置が配設され、該車両駆動装置が備える電動機械としての駆動モータを駆動することによって発生させられた回転を駆動輪に伝達し、電気自動車を走行させるようになっている。そして、前記駆動モータを駆動するために駆動モータ制御装置が配設され、該駆動モータ制御装置において、駆動モータのトルク、すなわち、駆動モータトルクを制御するための第1の制御モードとしてのトルク制御、及び駆動モータの回転速度、すなわち、駆動モータ回転速度を制御するための第2の制御モードとしての回転速度制御が行われる。
【0003】ところで、駆動モータ制御装置において、駆動モータの制御をトルク制御から回転速度制御に切り換える場合、駆動モータトルクに急激な変動が発生し、ショックが発生するのを防止するために制御切換装置が提供されている(特開2001−78873号公報参照)。
【0004】この場合、前記制御切換装置には、比例器及び積分器が配設され、回転速度制御がPI(比例積分)制御で行われ、検出された駆動モータ回転速度をNとし、駆動モータ回転速度の指令値を表す駆動モータ速度指令値をN* としたとき、該駆動モータ速度指令値N* と駆動モータ回転速度Nとの偏差δNδN=N* −Nを前記比例器及び積分器に入力するようになっている。
【0005】そして、トルク制御が行われる場合、前記偏差δNが零(0)になるように、駆動モータ速度指令値N* に代えて駆動モータ回転速度Nが使用されるとともに、積分器の初期値が駆動モータトルクTの指令値を表す駆動モータトルク指令値T* にされる。
【0006】また、トルク制御から回転速度制御への制御の切換えが行われて回転速度制御が行われる場合、前記本来の偏差δNが比例器及び積分器に入力され、フィードバック制御が行われる。そして、前記切換えの直前の前記駆動モータトルク指令値T* が回転速度制御の初期値として積分器に設定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の制御切換装置において、駆動モータトルクTについては、切換えの直前の前記駆動モータトルク指令値T* が回転速度制御の初期値としてPI制御の積分項に設定されるので、トルク制御から回転速度制御への切換えに伴って駆動モータトルクTに急激な変動が発生することはないが、トルク制御から回転速度制御への制御の切換えに伴って前記駆動モータ回転速度Nの変化率が急激に変動する可能性があり、その場合、駆動モータ回転速度Nの変化率の変動に伴って駆動モータトルクTの変化率が変動し、車両駆動装置にショックが発生してしまう。
【0008】本発明は、前記従来の制御切換装置の問題点を解決して、第1の制御モードと第2の制御モードとで制御の切換えを行う際に、車両駆動装置にショックが発生するのを防止することができる電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、該電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有する。
【0010】本発明の他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記第1の制御モードの制御変量は、切換タイミングにおける検出値である。
【0011】本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記第1の制御モードの制御変量は、切換タイミングにおける指令値である。
【0012】本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記変化率に上限値が設定される。
【0013】本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、該電動機械の制御をトルク制御から回転速度制御に切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおけるトルク制御のための指令値をPI制御の初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴う回転速度制御のための指令値の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて回転速度制御で電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有する。
【0014】本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、該電動機械の制御を回転速度制御からトルク制御に切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおける回転速度制御のためのPI制御の値を初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴うトルク制御のための指令値の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいてトルク制御で電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有する。
【0015】本発明の電動車両駆動制御方法においては、さらに、電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換え、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定し、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持し、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う。
【0016】本発明の電動車両駆動制御方法のプログラムにおいては、コンピュータを、電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段、並びに前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段として機能させる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、エンジンを備えず、電動機械としての駆動モータだけを備えた電動車両としての電気自動車について説明する。なお、電動車両として、エンジン及び駆動モータを備えたハイブリッド型車両、エンジン、発電機及び駆動モータを備えたハイブリッド型車両等に本発明を適用することもできる。
【0018】図1は本発明の第1の実施の形態における電動車両駆動制御装置の機能ブロック図である。
【0019】図において、25は電動機械としての駆動モータ、91は該駆動モータ25の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段、92は前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段、93は前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段、94は前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで駆動モータ25の制御を行う電動機械制御処理手段である。
【0020】次に、電気自動車を駆動するための電動車両駆動制御装置としての電気自動車駆動制御装置について説明する。
【0021】図2は本発明の第1の実施の形態における電気自動車駆動制御装置の要部を示す概略図、図3は本発明の第1の実施の形態における電気自動車駆動制御装置の動作を示すフローチャート、図4は本発明の第1の実施の形態における回転速度指令値決定部の動作を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における電気自動車駆動制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【0022】図において、25は電動機械としての駆動モータであり、該駆動モータ25は、図示されないステータ、及び該ステータより径方向内方において、回転自在に配設された図示されないロータを備え、前記ステータは、ステータコア及び該ステータコアに巻装されたコイルを備え、前記ロータは、ロータコア及び該ロータコアの円周方向における複数箇所に配設された永久磁石を備える。前記ロータに連結された出力軸14には磁極位置検出部としてのレゾルバ15が配設され、該レゾルバ15によって前記ロータの磁極位置θmが検出される。
【0023】また、29は駆動モータ制御装置としてのインバータ、43は電気自動車を走行させるための電源となるバッテリ、49は前記駆動モータ25の制御を行うための駆動モータ制御装置であり、該駆動モータ制御装置49は、図示されないCPU、記録装置等から成り、所定のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。そして、前記インバータ29は、直流ケーブルCB1、CB2を介してバッテリ43と接続され、該バッテリ43から直流の電流が供給される。また、前記インバータ29の入口側に、インバータ29に印加される直流の電圧、すなわち、駆動モータインバータ電圧VMを検出するために直流電圧検出部としての駆動モータインバータ電圧センサ(V)76が配設され、該駆動モータインバータ電圧センサ76によって検出された前記駆動モータインバータ電圧VMは駆動モータ制御装置49に送られる。
【0024】そして、該駆動モータ制御装置49は前記駆動モータ25を駆動するために、駆動信号SG1をインバータ29に送る。また、駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータ回転速度算出処理手段は、駆動モータ回転速度算出処理を行い、前記磁極位置θmを読み込み、該磁極位置θmの変化率Δθmを算出することによって駆動モータ25の回転速度、すなわち、駆動モータ回転速度NMを算出する。
【0025】そして、51は前記駆動モータ制御装置49に接続され、電気自動車の全体の制御を行う車両制御装置であり、該車両制御装置51は、図示されないCPU、記録装置等から成り、所定のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。
【0026】前記インバータ29は、前記駆動信号SG1に従って駆動され、力行時にバッテリ43から直流の電流を受けて、各相の電流IMU、IMV、IMWを発生させ、各相の電流IMU、IMV、IMWを駆動モータ25に供給し、回生時に駆動モータ25から各相の電流IMU、IMV、IMWを受けて、直流の電流を発生させ、バッテリ43に供給する。
【0027】そして、53は変速操作部としてのシフトレバー16の位置、すなわち、シフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ、55はアクセルペダル17の位置(踏込量)、すなわち、アクセルペダル位置APを検出するエンジン負荷検出部及びアクセル操作検出部としてのアクセルスイッチ、62はブレーキペダル18の位置(踏込量)、すなわち、ブレーキペダル位置BPを検出するブレーキ操作検出部としてのブレーキスイッチ、68、69はそれぞれ各相の電流IMU、IMVを検出する交流電流検出部としての電流センサである。なお、電流IMU、IMVは駆動モータ制御装置49に供給される。
【0028】前記車両制御装置51は、運転モード決定部21、制御切換部22、駆動モータ25の、第1の電動機械制御としてのトルク制御を行うための制御変量である指令値、本実施の形態においては、駆動モータトルク指令値TML* を決定するトルク指令値決定部24、駆動モータ25の、第2の電動機械制御としての回転速度制御を行うための制御変量である指令値、本実施の形態においては、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定する回転速度指令値決定部23、フィードバック制御を行うフィードバック制御部としてのPI制御部26、加算器33等を備える。
【0029】前記運転モード決定部21は、前記シフトポジションセンサ53によって検出されたシフトポジションSP、アクセルスイッチ55によって検出されたアクセルペダル位置AP、及びブレーキスイッチ62によって検出されたブレーキペダル位置BPを読み込み、トルク制御を行う第1の制御モード、又は回転速度制御を行う第2の制御モードを決定し、第1、第2の制御モード間でモードの切換えを行うための切換信号SG2を発生させ、前記制御切換部22に送る。
【0030】また、前記運転モード決定部21の図示されない駆動モータトルク指令値設定処理手段は、駆動モータトルク指令値設定処理を行い、前記トルク制御を行う際の、駆動モータトルクTMのトルク指令値を表す駆動モータトルク指令値TMF* を設定し、運転モード決定部21の図示されない駆動モータ回転速度指令値設定処理手段は、駆動モータ回転速度指令値設定処理を行い、回転速度制御を行う際の、駆動モータ回転速度NMの回転速度指令値を表す駆動モータ回転速度指令値NMF* を設定する。そして、前記運転モード決定部21は、第1の制御モードを決定する切換信号SG2が発生させられた場合に、駆動モータトルク指令値TMF* を、第2の制御モードを決定する切換信号SG2が発生させられた場合に、駆動モータ回転速度指令値NMF* を制御切換部22に送る。
【0031】前記制御切換部22の制御切換処理手段91は、制御切換処理を行い、切換信号SG2を受けると、該切換信号SG2に基づいてトルク制御と回転速度制御とを切り換え、第1の制御モードを決定する切換信号SG2を受けた場合、駆動モータトルク指令値TMF* をトルク指令値決定部24に、第2の制御モードを決定する切換信号SG2を受けた場合、駆動モータ回転速度指令値NMF* を回転速度指令値決定部23に送る。
【0032】また、前記回転速度指令値決定部23は、前記駆動モータ回転速度指令値NMF* を受けると、該駆動モータ回転速度指令値NMF* に基づいて駆動モータ回転速度指令値NML* を発生させ、該駆動モータ回転速度指令値NML* をPI制御部26に送る。
【0033】そして、該PI制御部26は、比例器31、積分器32及び加算器33を備える。前記PI制御部26の図示されない偏差算出処理手段は、偏差算出処理を行い、回転速度指令値決定部23から駆動モータ回転速度指令値NML* を、駆動モータ制御装置49から前記駆動モータ回転速度算出処理手段によって算出された駆動モータ回転速度NMを受け、駆動モータ回転速度指令値NML* と駆動モータ回転速度NMとの偏差ΔNMを算出する。そして、前記比例器31は、前記偏差ΔNMを所定の定数で比例倍し、積分器32は、前記偏差ΔNMを時間で積分し、前記加算器33は、前記比例器31及び積分器32の出力を加算し、加算値を駆動モータ目標トルクTM* として駆動モータ制御装置49に送る。
【0034】ところで、駆動モータ25のトルク制御を行う場合、第1の制御モードを決定する切換信号SG2が制御切換部22に送られ、これに伴って、駆動モータトルク指令値TMF* がトルク指令値決定部24に送られるが、駆動モータ回転速度指令値NMF* は回転速度指令値決定部23に送られない。
【0035】また、駆動モータトルク指令値TMF* がトルク指令値決定部24に送られるのに伴って、駆動モータトルク指令値TMF* が駆動モータトルク指令値TML* として決定され、該駆動モータトルク指令値TML* を駆動モータ目標トルクTM* として駆動モータ制御装置49に送る。
【0036】このようにしてトルク制御が行われているときに、回転速度制御に切り換わり、第2の制御モードを決定する切換信号SG2が制御切換部22に送られると、これに伴って、駆動モータ回転速度指令値NMF* が回転速度指令値決定部23に送られるようになるが、駆動モータトルク指令値TMF* はトルク指令値決定部24に送られなくなる。
【0037】そして、前記電動機械制御処理手段94の図示されない回転速度制御処理手段は、回転速度制御処理を行い、PI制御部26によって、回転速度指令値決定部23から受けた駆動モータ回転速度指令値NML* と駆動モータ制御装置49から受けた駆動モータ回転速度NMとの偏差δNMを算出し、該偏差δNMを比例器31及び積分器32に送る。その結果、PI制御部26においてPI制御としてフィードバック制御による回転速度制御が行われ、前記加算器33においては、前記比例器31及び積分器32の出力が加算され、加算値が駆動モータ目標トルクTM* として駆動モータ制御装置49に送られる。
【0038】ところで、駆動モータ25の制御をトルク制御から回転速度制御に切り換える場合、駆動モータトルクTMに急激な変動が発生すると、車両駆動装置にショックが発生してしまう。そこで、PI制御部26の初期値設定処理手段92は、初期値設定処理を行い、前記切換信号SG2が制御切換部22に送られて駆動モータ25の制御がトルク制御から回転速度制御に切り換えられる直前のタイミング(以下「第1の切換タイミング」という。)における駆動モータトルク指令値TML* を読み込み、該駆動モータトルク指令値TML* を切換時駆動モータトルク指令値TMLC* とし、該切換時駆動モータトルク指令値TMLC* を回転速度制御の初期値として積分器32に設定する。なお、所定の方法で、前記第1の切換タイミングにおける制御変量である検出値、例えば、駆動モータトルクTMを算出したり、検出したりすることができる場合には、算出された、又は検出された駆動モータトルクTM(以下「実駆動モータトルクTMx」という。)を積分器32に回転速度制御の初期値として設定することもできる。また、駆動モータ25の制御がトルク制御から回転速度制御に切り換えられた直後のタイミングを前記第1の切換タイミングとすることもできる。
【0039】そして、前記初期値設定処理手段92は、前記第1の切換タイミングにおいて読み込まれた制御変量である検出値、本実施の形態においては、駆動モータ回転速度NM(以下「実駆動モータ回転速度NMx」という。)を駆動モータ回転速度指令値NML* とし、偏差δNM(=0)を設定する。なお、実駆動モータ回転速度NMxに代えて、第1の切換タイミングにおける回転速度制御のための制御変量である指令値、例えば、駆動モータ回転速度指令値NML* を前記回転速度制御の初期値とすることもできる。
【0040】このようにして、制御がトルク制御から回転速度制御に切り換えられる直前の前記切換時駆動モータトルク指令値TML* が積分器32の初期値にされるので、制御がトルク制御から回転速度制御に切り換わるのに伴って駆動モータトルクTMに急激な変動が発生することがなくなる。
【0041】ところで、前記トルク制御から回転速度制御への制御の切換えに伴って駆動モータ回転速度NMの変化率ΔNMが急激に変動すると、該変化率ΔNMの変動に伴って駆動モータトルクTMの変化率ΔTMが変動し、車両駆動装置にショックが発生してしまう。
【0042】そこで、前記回転速度指令値決定部23の変化率維持処理手段93としての図示されない第1の変化率維持処理手段は、第1の変化率維持処理を行い、制御切換部22から送られた、回転速度制御のための制御変量である指令値、本実施の形態においては、駆動モータ回転速度指令値NMF* の変化率ΔNMF* を維持して、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定し、該駆動モータ回転速度指令値NML* をPI制御部26に送る。
【0043】そのために、前記第1の変化率維持処理手段の図示されない変化率制限処理手段は、変化率制限処理を行い、所定のタイミングごとの前記駆動モータ回転速度指令値NMF* に基づいて変化率ΔNMF* を算出し、前記第1の切換タイミングにおける現在の変化率ΔNMF* が、あらかじめ設定された上限値ΔNMFmaxより小さいかどうかを判断する。そして、現在の変化率ΔNMF* が上限値ΔNMFmaxより小さい場合、前記第1の変化率維持処理手段は、図4に示されるように、時間(t)の経過と共に変化率ΔNMF* を微小値αずつ加えて徐々に高くしながら制限し、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定する。なお、前記現在の変化率ΔNMF* は、制御がトルク制御から回転速度制御に切り換えられる直前のものであるが、直後のものであってもよい。
【0044】そして、前記変化率ΔNMF* と上限値ΔNMFmaxとが等しくなると、その後、第1の変化率制限処理手段は、変化率ΔNMF* を上限値ΔNMFmaxで制限し、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定する。
【0045】このようにして、駆動モータ回転速度指令値NML* が決定されると、該駆動モータ回転速度指令値NML* がPI制御部26に送られ、前述されたように、前記回転速度制御処理手段は、前記初期値及び変化率ΔNMF* に基づく駆動モータ目標トルクTM* を算出し、該駆動モータ目標トルクTM* を駆動モータ制御装置49に送って回転速度制御を行う。
【0046】このように、前記トルク制御から回転速度制御への制御の切換えに伴って、切換時駆動モータトルク指令値TMLC* を回転速度制御の初期値として設定するとともに、駆動モータ回転速度指令値NMF* の変化率ΔNMF* を維持するようになっているので、図5に示されるように、タイミングt1で制御がトルク制御から回転速度制御に切り換わるのに伴って駆動モータトルクTMに急激な変動が発生することがなくなる。また、駆動モータ回転速度NMが急激に変化したり、駆動モータ回転速度NMの変化率ΔNMが急激に変化したりすることがなくなるだけでなく、駆動モータトルクTMの変化率ΔTMが急激に変化することがなくなる。したがって、車両駆動装置にショックが発生するのを防止することができる。なお、図5において、破線は従来の電気自動車駆動制御装置の動作を示す。
【0047】次に、前記駆動モータ制御装置49の動作について説明する。この場合、駆動モータ制御装置49は、駆動モータ25のロータの磁極対の方向にd軸を、該d軸と直角の方向にq軸をそれぞれ採ったd−q軸モデル上でベクトル制御演算によるフィードバック制御を行う。
【0048】まず、駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ制御処理を行い、前記駆動モータ回転速度NM、前記駆動モータ目標回転速度NM* 及びバッテリ電圧検出部としての図示されないバッテリ電圧センサによって検出されたバッテリ電圧VBを読み込み、前記駆動モータ制御装置49の記録装置に記録された駆動モータ制御用の電流指令値マップを参照し、d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* を算出し、決定する。
【0049】また、前記駆動モータ制御処理手段は、電流センサ68、69から電流IMU、IMVを読み込むとともに、該電流IMU、IMVに基づいて電流IMWIMW=IMU−IMVを算出する。なお、電流IMWを電流IMU、IMVと同様に電流センサによって検出することもできる。
【0050】続いて、前記駆動モータ制御処理手段の交流電流算出処理手段は、交流電流算出処理を行い、交流の電流であるd軸電流IMd及びq軸電流IMqを算出する。そのために、前記交流電流算出処理手段は、3相/2相変換を行い、電流IMU、IMV、IMWをd軸電流IMd及びq軸電流IMqに変換する。そして、前記駆動モータ制御処理手段の交流電圧指令値算出処理手段は、交流電圧指令値算出処理を行い、前記d軸電流IMd及びq軸電流IMq、並びに前記d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* に基づいて、電圧指令値VMd* 、VMq* を算出する。また、前記駆動モータ制御処理手段は、2相/3相変換を行い、電圧指令値VMd* 、VMq* を電圧指令値VMU* 、VMV* 、VMW* に変換し、該電圧指令値VMU* 、VMV* 、VMW* に基づいてパルス幅変調信号SU、SV、SWを算出し、該パルス幅変調信号SU、SV、SWを前記駆動モータ制御装置49の図示されないドライブ処理手段に対して出力する。該ドライブ処理手段は、ドライブ処理を行い、パルス幅変調信号SU、SV、SWに基づいて駆動信号を前記インバータ29に送る。
【0051】次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 切換時駆動モータトルク指令値TMLC* を初期値として積分項に設定し、実駆動モータ回転速度NMxを駆動モータ回転速度指令値NML* として設定する。
ステップS2 現在の変化率ΔNMF* が上限値ΔNMFmaxより小さいかどうかを判断する。現在の変化率ΔNMF* が上限値ΔNMFmaxより小さい場合はステップS3に、現在の変化率ΔNMF* が上限値ΔNMFmax以上である場合はステップS5に進む。
ステップS3 変化率ΔNMF* を微小値αだけ高くしながら制限し、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定する。
ステップS4 回転速度制御を行い、ステップS2に戻る。
ステップS5 変化率ΔNMF* を上限値ΔNMFmaxで制限し、駆動モータ回転速度指令値NML* を決定する。
ステップS6 回転速度制御を行い、リターンする。
【0052】次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0053】図6は本発明の第2の実施の形態における電気自動車駆動制御装置の動作を示すフローチャート、図7は本発明の第2の実施の形態におけるトルク指令値決定部の動作を示す図、図8は本発明の第2の実施の形態における電気自動車駆動制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【0054】本実施の形態においては、第1の電動機械制御としての回転速度制御を行う第1の制御モードと、第2の電動機械制御としてのトルク制御を行う第2の制御モードとで制御が切り換えられる。
【0055】回転速度制御が行われているときに、トルク制御に切り換わり、第2の制御モードを決定する切換信号SG2(図2)が制御切換部22に送られると、これに伴って、駆動モータトルク指令値TMF* がトルク指令値決定部24に送られるようになるが、駆動モータ回転速度指令値NMF* は回転速度指令値決定部23に送られなくなる。
【0056】そして、トルク指令値決定部24から受けた駆動モータトルク指令値TML*に基づいてトルク制御を行い、駆動モータ目標トルクTM* を発生させて駆動モータ制御装置49に送る。
【0057】ところで、駆動モータ25の制御を回転速度制御からトルク制御に切り換える場合、駆動モータトルクTMに急激な変動が発生すると、車両駆動装置にショックが発生してしまう。そこで、図示されない初期値設定処理手段は、初期値設定処理を行い、前記切換信号SG2が制御切換部22に送られて駆動モータ25の制御が回転速度制御からトルク制御に切り換えられる直前のタイミング(以下「第2の切換タイミング」という。)における積分項の値をトルク制御の初期値として設定する。また、駆動モータ25の制御が回転速度制御からトルク制御に切り換えられた直後のタイミングを前記第2の切換タイミングとすることもできる。
【0058】このようにして、制御が回転速度制御からトルク制御に切り換えられる直前の積分項の値をトルク制御の初期値にされるので、制御が回転速度制御からトルク制御に切り換わるのに伴って駆動モータトルクTMに急激な変動が発生することがなくなる。
【0059】ところで、前記回転速度制御からトルク制御への制御の切換えに伴って駆動モータトルクTMの変化率ΔTMが大きく変動すると、車両駆動装置にショックが発生してしまう。
【0060】そこで、前記回転速度指令値決定部23の変化率維持処理手段93としての図示されない第2の変化率維持処理手段は、第2の変化率維持処理を行い、制御切換部22から送られた、トルク制御のための制御変量である指令値、本実施の形態においては、駆動モータトルク指令値TMF* の変化率ΔTMF* を維持して、駆動モータトルク指令値TML* を決定し、該駆動モータトルク指令値TML* をPI制御部26に送る。
【0061】そのために、前記第2の変化率維持処理手段の図示されない変化率制限処理手段は、変化率制限処理を行い、所定のタイミングごとの前記駆動モータトルク指令値TMF* に基づいて変化率ΔTMF* を算出し、前記第2の切換タイミングにおける現在の変化率ΔTMF* が、あらかじめ設定された上限値ΔTMFmaxより小さいかどうかを判断する。そして、現在の変化率ΔTMF* が上限値ΔTMFmaxより小さい場合、前記第2の変化率制限処理手段は、図7に示されるように、時間(t)の経過と共に変化率ΔTMF* を微小値βずつ加えて徐々に高くしながら制限し、駆動モータトルク指令値TML* を決定する。なお、前記現在の変化率ΔTMF* は、制御が回転速度制御からトルク制御に切り換えられる直前のものであるが、直後のものであってもよい。
【0062】そして、前記変化率ΔTMF* と上限値ΔTMFmaxとが等しくなると、その後、第2の変化率制限処理手段は、変化率ΔTMF* を上限値ΔTMFmaxで制限し、駆動モータトルク指令値TML* を決定する。
【0063】このようにして、駆動モータトルク指令値TML* が決定されると、該駆動モータトルク指令値TML* がPI制御部26に送られ、前述されたように、前記トルク制御処理手段は前記初期値及び変化率ΔTMF* に基づく駆動モータ目標トルクTM* を算出し、該駆動モータ目標トルクTM* を駆動モータ制御装置49に送ってトルク制御を行う。
【0064】このように、前記回転速度制御からトルク制御への制御の切換えに伴って、切換時の積分項の値をトルク制御の初期値として設定するとともに、駆動モータトルク指令値TMF* の変化率ΔTMF* を維持するようになっているので、図8に示されるように、タイミングt11で制御が回転速度制御からトルク制御に切り換えられるのに伴って駆動モータトルクTMに急激な変動が発生することがなくなる。また、駆動モータ回転速度NMが急激に変化したり、駆動モータトルクTMの変化率ΔTMが急激に変化したりすることがなくなる。したがって、車両駆動装置にショックが発生するのを防止することができる。なお、図8において、破線は従来の電気自動車駆動制御装置の動作を示す。
【0065】次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 切換時の積分項の値を初期値として設定する。
ステップS12 現在の変化率ΔTMF* が上限値ΔTMFmaxより小さいかどうかを判断する。現在の変化率ΔTMF* が上限値ΔTMFmaxより小さい場合はステップS13に、現在の変化率ΔTMF* が上限値ΔTMFmax以上である場合はステップS15に進む。
ステップS13 変化率ΔTMF* を微小値βだけ高くしながら制限し、駆動モータトルク指令値TML* を決定する。
ステップS14 トルク制御を行い、ステップS12に戻る。
ステップS15 変化率ΔTMF* を上限値ΔTMFmaxで制限し、駆動モータトルク指令値TML* を決定する。
ステップS16 トルク制御を行い、リターンする。
【0066】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0067】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、該電動機械の制御を第1の制御モードから第2の制御モードに切り換える制御切換処理手段と、前記制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量を初期値として設定する初期値設定処理手段と、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率を維持する変化率維持処理手段と、前記初期値及び維持された変化率に基づいて第2の制御モードで電動機械の制御を行う電動機械制御処理手段とを有する。
【0068】この場合、制御の切換タイミングにおける第1の制御モードのための制御変量が初期値として設定され、前記制御の切換えに伴う第2の制御モードのための制御変量の変化率が維持されるので、制御が第1の制御モードから第2の制御モードに切り換わるのに伴って電動機械のトルクに急激な変動が発生することがなくなる。また、電動機械の回転速度が急激に変化したり、電動機械の回転速度の変化率が急激に変化したりすることがなくなるだけでなく、電動機械のトルクの変化率が急激に変化することがなくなる。したがって、車両駆動装置にショックが発生するのを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【住所又は居所】愛知県安城市藤井町高根10番地
【出願日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【代理人】 【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠 (外2名)
【公開番号】 特開2003−199214(P2003−199214A)
【公開日】 平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願番号】 特願2001−394954(P2001−394954)