| 【発明の名称】 |
電気自動車のモータトルク制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉川 慎司 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】鷹觜 弘明 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】安達 悟 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】木村 顕一郎 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】上野臺 浅雄 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
|
| 【要約】 |
【課題】電気自動車におけるPDUの過熱防止とスムーズな坂道発進を図る。
【解決手段】電気自動車が登坂時に停止したのち発進するときに、アクセル開度から決定されるターゲットトルク2と、登坂可能最大勾配において停止保持可能なトルクから定まる最大勾配ホールド可能トルクと、登坂可能最大勾配において登坂開始可能なトルクから定まる最大勾配登坂開始トルク値と、ブレーキを踏みつつアクセルペダルを踏んでいる際に出力可能なトルクから定まるブレーキ時許容最大トルク値と、を比較し、ターゲットトルク2が最大勾配ホールド可能トルク値を越えてから最大勾配登坂開始トルク値に達するまでは、ターゲットトルク3を最大勾配ホールド可能トルク値に制限し、ターゲットトルク2がブレーキ時許容最大トルク値以上になってからブレーキが解除されるまではターゲットトルク3をブレーキ時許容最大トルク値に制限する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータによって駆動され走行する電気自動車に設けられ、該電気自動車が登坂時に停止したのち発進するときに、アクセル開度から決定される前記モータの目標トルクが所定値を越えた場合に、前記モータに対する指令トルクを前記所定値に制限する目標トルク補正手段を備えることを特徴とする電気自動車のモータトルク制御装置。 【請求項2】 前記モータの回転方向および回転数に基づいて、前記目標トルク補正手段によるトルク制限が行われることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のモータトルク制御装置。 【請求項3】 前記所定値は、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において停止保持可能なトルクから定まる第1のトルク値であり、前記目標トルクが、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において登坂開始可能なトルクから定まる第2のトルク値以上になった場合に、前記目標トルク補正手段によるトルク制限が解除されることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車のモータトルク制御装置。 【請求項4】 モータによって駆動され走行する電気自動車に設けられ、該電気自動車が登坂時に停止したのち発進するときに、アクセル開度から決定される前記モータの目標トルクと、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において停止保持可能なトルクから定まる第1のトルク値と、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において登坂開始可能なトルクから定まる第2のトルク値と、前記電気自動車のブレーキ作動時に発生可能なトルクから定まる第3のトルク値と、を比較し、前記目標トルクが前記第1のトルク値を越えてから第2のトルク値に達するまでは前記モータに対する指令トルクを前記第1のトルク値に制限し、前記目標トルクが前記第3のトルク値以上になってから前記ブレーキの作動が解除されるまでは前記モータに対する指令トルクを前記第3のトルク値に制限する目標トルク補正手段を備えることを特徴とする電気自動車のモータトルク制御装置。 【請求項5】 前記目標トルクが前記第3のトルク値以上になってから所定時間が経過した場合は、前記モータに対する指令トルクを前記第1のトルク値に制限することを特徴とする請求項4に記載の電気自動車のモータトルク制御装置。 【請求項6】 前記モータは燃料電池からの電力によって駆動されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電気自動車のモータトルク制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、電気自動車のモータトルク制御装置に関し、特に、ストール状態脱出時のモータトルク制御に関するものである。 【0002】 【従来の技術】電動モータを駆動源として走行する電気自動車は、エネルギーストレージ(バッテリーやキャパシタ等)やインバータ等からなるパワードライブユニット(以下、PDUと略す)によって走行用モータが制御される。この場合に、PDUの過熱保護を目的としてトルク制限を設けることがある。この電気自動車では、ストール時のモータトルク制御を最適化することによりPDUの小型化が可能となる。つまり、ストール時においてモータに高トルクで連続出力可能にすると、放熱性などの関係からPDUが大型化してしまうので、高トルクでの出力時間を制限する時間定格を設けるとともに、高トルクを有効に使用するトルク制御を行うようにすると、PDUの小型化が可能となる。ここで、電気自動車におけるストールとは、車両停止状態でモータに電力が供給されている状態を言い、例えば、ブレーキを作動させた車両停止状態でアクセルペダルを踏み込んでいる時や、登坂路において車両がずり下がる力とモータの駆動力により車両が登坂路を登ろうとする力が平衡している時などは、代表的なストール状態である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、登坂路においてパーキングブレーキ(あるいはブレーキ)とアクセルペダルを併用(両踏み)して坂道発進を行う場合、運転者は通常、アクセルペダルを踏み込んでからパーキングブレーキを開放する(または、ブレーキを離す)操作を行う。しかし、このブレーキ開放までの間に、モータは高トルクを連続して出力してしまうときがあり、その場合にPDUの小型化に伴い高トルク時の時間定格が設定されていると、この時間定格は極めて短いので、パーキングブレーキを解除した(あるいはブレーキを離した)時点では、PDUの過熱保護を目的とするトルク制限が働いてしまい、その結果、電気自動車は充分な駆動力を得られずに登坂できない場合がある。そこで、この発明は、PDUおよびモータの過熱防止を図りつつ、スムーズな坂道発進を可能とする電気自動車のモータトルク制御装置を提供するものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、モータ(例えば、後述する実施の形態におけるモータ1)によって駆動され走行する電気自動車に設けられ、該電気自動車が登坂時に停止したのち発進するときに、アクセル開度から決定される前記モータの目標トルク(例えば、後述する実施の形態におけるターゲットトルク2(QTMAP2))が所定値(例えば、後述する実施の形態における最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLL)を越えた場合に、前記モータに対する指令トルク(例えば、後述する実施の形態におけるターゲットトルク3(QTMAP3))を前記所定値に制限する目標トルク補正手段(例えば、後述する実施の形態における目標トルク補正手段23)を備えることを特徴とする電気自動車のモータトルク制御装置である。このように構成することにより、坂道発進時に、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止することが可能になる。 【0005】請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記モータの回転方向および回転数に基づいて、前記目標トルク補正手段によるトルク制限が行われることを特徴とする。このように構成することにより、ストール状態か否かの判別が確実にでき、ストール状態の時だけに限定してトルク制限を実行することが可能になる。 【0006】請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の発明において、前記所定値は、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において停止保持可能なトルクから定まる第1のトルク値(例えば、後述する実施の形態における最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLL)であり、前記目標トルクが、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において登坂開始可能なトルクから定まる第2のトルク値(例えば、後述する実施の形態における最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH)以上になった場合に、前記目標トルク補正手段によるトルク制限が解除されることを特徴とする。このように構成することにより、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止しつつ、スムーズに坂道発進を行うことが可能になる。 【0007】請求項4に記載した発明は、モータ(例えば、後述する実施の形態におけるモータ1)によって駆動され走行する電気自動車に設けられ、該電気自動車が登坂時に停止したのち発進するときに、アクセル開度から決定される前記モータの目標トルク(例えば、後述する実施の形態におけるターゲットトルク2(QTMAP2))と、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において停止保持可能なトルクから定まる第1のトルク値(例えば、後述する実施の形態における最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH)と、前記電気自動車が登坂可能な最大勾配において登坂開始可能なトルクから定まる第2のトルク値(例えば、後述する実施の形態における最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH)と、前記電気自動車のブレーキ作動時に発生可能なトルクから定まる第3のトルク値(例えば、後述する実施の形態におけるブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRK)と、を比較し、前記目標トルクが前記第1のトルク値を越えてから第2のトルク値に達するまでは前記モータに対する指令トルク(例えば、後述する実施の形態におけるターゲットトルク3(QTMAP3))を前記第1のトルク値に制限し、前記目標トルクが前記第3のトルク値以上になってから前記ブレーキの作動が解除されるまでは前記モータに対する指令トルクを前記第3のトルク値に制限する目標トルク補正手段(例えば、後述する実施の形態における目標トルク補正手段23)を備えることを特徴とする電気自動車のモータトルク制御装置である。このように構成することにより、目標トルクが第1のトルク値から第2のトルク値の間にある場合にはモータに対する指令トルクが第1のトルク値に制限され、目標トルクが第3のトルク値を越えてブレーキが解除されるまではモータに対する指令トルクが第3のトルク値に制限されるので、坂道発進時に、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止することが可能になり、また、ブレーキが解除された後、スムーズに坂道発進を行うことが可能になる。 【0008】請求項5に記載した発明は、請求項4に記載の発明において、前記目標トルクが前記第3のトルク値以上になってから所定時間が経過した場合は、前記モータに対する指令トルクを前記第1のトルク値に制限することを特徴とする。このように構成することにより、長時間に亘る第3のトルク値でのモータ駆動によるモータやパワードライブユニットの過熱を防止することが可能になる。 【0009】請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記モータは燃料電池からの電力によって駆動されることを特徴とする。このように構成することにより、パワードライブユニットの小型化により燃料電池自動車への搭載性が向上するとともに、坂道発進時における電力消費を抑えることが可能になる。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、この発明に係る電気自動車のモータトルク制御装置の一実施の形態を図1から図8の図面を参照して説明する。図1は、この発明に係るモータトルク制御装置を備えた電気自動車の概略構成図である。この電気自動車においては、交流の走行用モータ1が駆動輪2に接続されていて、モータ1の駆動力が駆動輪2に伝達され車両は走行する。燃料電池からなるエネルギーストレージ3の直流はインバータ4によって交流に変換されモータ1に供給され、モータ1の出力は、モータECU(以下、MOT−ECUと略す)6からの指令に基づき、インバータ4によって制御される。なお、この実施の形態において、エネルギーストレージ3、インバータ4、MOT−ECU6はパワードライブユニット(PDU)を構成する。 【0011】MOT−ECU6には、モータ1の回転数を検出する回転数検出手段11からの信号と、ブレーキ油圧を検出するブレーキ油圧検出手段12からの信号と、サイドブレーキの作動・非作動を検出するサイドブレーキ検出手段13からの信号と、アクセル開度(すなわち、車両に対する負荷要求)を検出するアクセル開度検出手段14からの信号と、車両のシフト位置を検出するシフト位置検出手段15からの信号と、モータ1の実回転方向を検出する実回転方向検出手段16からの信号と、モータ1の相電流を検出する相電流検出手段17からの信号と、インバータ4の出力電圧を検出するインバータ電圧検出手段18からの信号、が入力される。 【0012】図2のブロック図に示すように、MOT−ECU6は、モード判定手段21と、目標トルク算出手段22と、目標トルク補正手段23と、モータトルク制御手段24を備えている。モード判定手段21は、回転数検出手段11の検出信号と、シフト位置検出手段15の検出信号と、実回転方向検出手段16の検出信号から、現時点のモードを判定する。目標トルク算出手段22は、モード判定手段21の判定信号と、回転数検出手段11の検出信号と、アクセル開度検出手段14の検出信号から、モータ1の目標トルクを算出する。この目標トルクは、後述するターゲットトルク2(QTMAP2)に対応する。目標トルク補正手段23は、目標トルク算出手段22の目標トルク信号と、回転数検出手段11の検出信号と、ブレーキ油圧検出手段12の検出信号と、サイドブレーキ検出手段13の検出信号から、必要に応じて目標トルクの補正を行う。モータトルク制御手段24は、目標トルク補正手段23の補正後目標トルク信号と、相電流検出手段17の検出信号と、インバータ電圧検出手段18の検出信号に基づいて、インバータ4への指令値を算出する。 【0013】この電気自動車を坂道で停止させてストール状態にした後、車両を発進させる時に、目標トルク補正手段23によって以下に詳述するモータトルク制御が実行される。この実施の形態におけるストール時のモータトルク制御について、図3および図4のフローチャートと、図5および図6のタイムチャートに従って詳述する。図3および図4に示すフローチャートは、モータトルク制御ルーチンを示すものであり、このモータトルク制御ルーチンは、MOT−ECU6によって一定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。 【0014】ストール状態から坂道発進する場合、(1)踏み込んでいたブレーキペダル(あるいは、パーキングブレーキ)を開放した後に、アクセルペダルを踏み込んでいく操作方法(以下、「ブレーキ・アクセル踏み替え発進」と称す)と、(2)ブレーキペダルを踏み込んだまま(あるいは、パーキングブレーキを作動させたまま)アクセルペダルを踏み込んでいき、その後ブレーキペダル(あるいは、パーキングブレーキ)を開放していく操作方法(以下、「ブレーキ・アクセル両踏み発進」と称す)、の2つの操作方法が考えられる。図3および図4に示すフローチャートには、これら2つの操作方法による坂道発進時のモータトルク制御が記載されているが、説明の都合上、それぞれの操作方法の場合に分けて説明していく。なお、以下の説明では、パーキングブレーキを用いずにブレーキペダルを踏み込んで車両を登坂路に停止させたのち、発進させる場合を想定している。 【0015】また、以下の説明において、ターゲットトルク2(QTMAP2)は、アクセル開度から決定されるモータ1の目標トルクであり、ターゲットトルク3(QTMAP3)は、実際にMOT−ECU6からインバータ4を介してモータ1に指令される指令トルク(換言すれば、補正後目標トルク)である。図7は、トルク制限が行われない場合におけるストール時のアクセル開度とモータトルクの関係を示しており、アクセル開度が全閉でクリープトルクが発生し、所定開度に達するまでアクセル開度の増大にしたがってモータトルクが一次関数的に増大していき、前記所定開度に達した後は最大トルクで一定となる。 【0016】<ブレーキ・アクセル踏み替え発進の場合>初めに、ブレーキ・アクセル踏み替え発進の場合のモータトルク制御について説明する。ここでは、図5のタイムチャートに示すように、時刻t1でブレーキペダルを開放した後、時刻t2からアクセルペダルを一定速度で徐々に踏み込んでいく場合を想定する。この場合、時刻t1でブレーキを開放すると車両のずり下がりが発生し、その結果、モータ1の回転方向は後転方向となり、時刻t2においてアクセルペダルが踏み込まれるまでの間、後転方向のモータ回転数が増大していく。そして、時刻t2においてアクセルペダルが踏み込まれると、それ以後は徐々に後転方向のモータ回転数が減少していく。 【0017】まず、ステップS101において、モータ移動平均回転数NMAVEがストール補正回転数値#NMQSTL以上か否かを判定する。ここで、モータ移動平均回転数NMAVEとは、車両が一定距離移動する間のモータの平均回転数であり、モータ移動平均回転数NMAVEが、予め設定されたストール補正回転数値#NMQSTLよりも小さい場合にはストール状態であると判断することができ、ストール補正回転数値#NMQSTL以上の場合には車両が十分に前進しているのでストールではないと判断することができる。 【0018】ステップS101における判定結果が「NO」(NMAVE<#NMQSTL)である場合は、ストール状態であるとして、ステップS102に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH(第2のトルク値)以上か否かを判定する。ここで、最大勾配登坂開始トルク値#QSTLHとは、登坂可能な最大勾配において登坂開始可能なトルク値である。ステップS102における判定結果が「NO」(QTMAP2<#QSTLH)である場合は、ステップS103に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLL(第1のトルク値)より大きいか否かを判定する。ここで、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLとは、登坂可能な最大勾配において車両停止保持(ホールド)可能なトルク値であり、この最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLは、インバータ4を過熱させることなく連続出力可能なトルク値である。 【0019】ステップS103における判定結果が「NO」(QTMAP2≦#QSTLL)である場合は、ホールド前のずり下がり状態(時刻t1〜t3)であるので、ステップS104に進んで、ターゲットトルク2(QTMAP2)をターゲットトルク3(QTMAP3)とする。これにより、アクセルペダルの踏み込みを開始してから時刻t3に至るまで(t2〜t3)は、ターゲットトルク2(QTMAP2)を指令トルクとしてトルク制御が実行される。ステップS104の処理を実行した後、ステップS105に進み、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLがストールトルクLo時間値#CTQSTLBRKL以上か否かを判定する。ステップS105における判定結果が「NO」(ctQSTLBL<#CTQSTLBRKL)である場合は、ステップS106に進み、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLを加算して、本ルーチンの実行を一旦終了する。 【0020】一方、ステップS103における判定結果が「YES」である場合、すなわち、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLより大きい(QTMAP2>#QSTLL)場合は、図4のステップS107に進み、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLをターゲットトルク3(QTMAP3)として、ステップS105に進む。これにより、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLを越えた後は、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLを指令トルクとしてトルク制御が実行される。 【0021】そして、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH以上になると、ステップS102における判定結果が「YES」(QTMAP2≧#QSTLH)となるので、ステップS108に進み、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHがストールトルクHi経過時間#CTQSTLBRKH以上か否かを判定する。ステップS108における判定結果が「NO」(ctQSTLBH<#CTQSTLBRKH)である場合は、ステップS109に進んで、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHを加算する。さらに、ステップS110に進み、ブレーキ油圧PBRKがブレーキOFF範囲か否かを判定する。ブレーキ・アクセル踏み替え発進の場合には、時刻t1におおいて既にブレーキをOFFにしているので、ステップS110における判定結果は「YES」(ブレーキOFF)となり、その結果、ステップS111に進む。 【0022】ステップS111ではターゲットトルク2(QTMAP2)をターゲットトルク3(QTMAP3)とし、次に、ステップS112に進んで、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLをクリアして本ルーチンの実行を一旦終了する。この結果、時刻t4以後は、ターゲットトルク2(QTMAP2)を指令トルクとしてモータ1のトルク制御が実行される。その後、モータ移動平均回転数NMAVEがストール補正回転数値#NMQSTL以上になってストール状態から脱出すると、ステップS101における判定結果が「YES」となるので、ステップS113に進み、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHをクリアして、その後、ステップS111、ステップS112の処理を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。 【0023】以上のように、ブレーキ・アクセル踏み替え発進の場合には、ターゲットトルク2(QTMAP2)が、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLから最大勾配登坂開始トルク値#QSTLHにある間は、モータ1に対する指令トルクを最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLに制限しているので、この間にモータ1やインバータ4などが過熱するのを防止することができ、さらに、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH以上になった時にトルク制限を解除するので、その後、車両はスムーズに坂道発進することができる。 【0024】<ブレーキ・アクセル両踏み発進>次に、ブレーキ・アクセル両踏み発進の時のモータトルク制御について説明する。ここでは、図6のタイムチャートに示すように、時刻t11まではブレーキペダルを踏み込むと同時にアクセルペダルを開放状態にしており、時刻11からブレーキペダルを踏み込んだままアクセルペダルを一定速度で徐々に踏み込んでいき、時刻t15でアクセル開度が全開となり、時刻t16でブレーキペダルを開放する場合を想定する。 【0025】この場合には、時刻t16まではブレーキペダルが踏み込まれたままであるので、その間はアクセルペダルを踏み込んでいてもモータ1の回転数は「0」であり、すなわちモータ1は回転を停止している。この点を除いて、アクセル・ブレーキ両踏み発進における時刻t11〜t13は、アクセル・ブレーキ踏み替え発進におけるt2〜t4に対応し、その間の制御ステップは、アクセル・ブレーキ踏み替え発進の場合のステップS101〜S109と同じである。 【0026】まず、ステップS101において、モータ移動平均回転数NMAVEがストール補正回転数値#NMQSTL以上か否かを判定し、ステップS101における判定結果が「NO」(NMAVE<#NMQSTL)である場合は、ストール状態であるとして、ステップS102に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH以上か否かを判定する。ステップS102における判定結果が「NO」(QTMAP2<#QSTLH)である場合は、ステップS103に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLより大きいか否かを判定する。 【0027】ステップS103における判定結果が「NO」(QTMAP2≦#QSTLL)である場合は、ステップS104に進んで、ターゲットトルク2(QTMAP2)をターゲットトルク3(QTMAP3)とする。これにより、アクセルペダルの踏み込みを開始(時刻t11)してから時刻t12に至るまでは、ターゲットトルク2(QTMAP2)を指令トルクとしてトルク制御が実行される。ステップS104の処理を実行した後、ステップS105に進み、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLがストールトルクLo時間値#CTQSTLBRKL以上か否かを判定する。ステップS105における判定結果が「NO」(ctQSTLBL<#CTQSTLBRKL)である場合は、ステップS106に進み、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLを加算して、本ルーチンの実行を一旦終了する。 【0028】一方、ステップS103における判定結果が「YES」(QTMAP2>#QSTLL)である場合、ステップS107に進み、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLをターゲットトルク3(QTMAP3)として、ステップS105に進む。これにより、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLを越えた後は、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLを指令トルクとしてトルク制御が実行される。 【0029】そして、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH以上になると、ステップS102における判定結果が「YES」(QTMAP2≧#QSTLH)となるので、ステップS108に進み、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHがストールトルクHi経過時間#CTQSTLBRKH以上か否かを判定する。ステップS108における判定結果が「NO」(ctQSTLBH<#CTQSTLBRKH)である場合は、ステップS109に進んで、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHを加算する。ここまでは、アクセル・ブレーキ踏み替え発進の場合と同じであり、これ以降がアクセル・ブレーキ両踏み発進の場合に特有のステップとなる。 【0030】すなわち、ブレーキ・アクセル両踏み発進の場合には、時刻t13では未だブレーキペダルの踏み込みを継続しているのでブレーキはON状態にあり、ステップS110における判定結果は「NO」(ブレーキON)となる。したがって、ステップS110からステップS114に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)がブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRK(第3のトルク値)よりも小さいか否かを判定する。ここで、ブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKとは、ブレーキを踏みつつアクセルペダルを踏んでいる際に出力可能なモータトルクの最大値である。 【0031】ステップS114における判定結果が「YES」(QTMAP2<#QSTLBRK)である場合は、ステップS111に進み、ターゲットトルク2(QTMAP2)をターゲットトルク3(QTMAP3)とし、さらに、ステップS112に進んで、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLをクリアして、本ルーチンの実行を一旦終了する。したがって、時刻t14においてターゲットトルク2(QTMAP2)がブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKに達するまでの間(t13〜t14)は、ターゲットトルク2(QTMAP2)を指令トルクとしてトルク制御が実行される。 【0032】そして、ステップS114における判定結果が「NO」である場合、すなわち、ターゲットトルク2(QTMAP2)がブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRK以上である場合(QTMAP2≧#QSTLBRK)は、ステップS115に進み、ブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKをターゲットトルク3(QTMAP3)とし、さらにステップS112に進んでストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLをクリアして、本ルーチンの実行を一旦終了する。したがって、時刻t16においてブレーキペダルが開放されブレーキOFFとなるまでの間(t14〜t16)は、ブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKを指令トルクとしてトルク制御が実行される。 【0033】そして、ステップS110における判定結果が「YES」(ブレーキOFF)である場合は、ターゲットトルク2(QTMAP2)をターゲットトルク3(QTMAP3)とし、さらに、ステップS112に進んで、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLをクリアして、本ルーチンの実行を一旦終了する。但し、この場合、既に時刻t15においてアクセル開度が全開になっているので、時刻t16以降はモータ1はアクセル全開状態に対応するモータトルクを指令トルクとしてトルク制御される。 【0034】その後、モータ移動平均回転数NMAVEがストール補正回転数値#NMQSTL以上になってストール状態から脱出すると、ステップS101における判定結果が「YES」となるので、ステップS113に進み、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHをクリアして、その後、ステップS111、ステップS112の処理を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。 【0035】なお、ステップS102で「YES」判定され、ステップS108以降の処理を実行している時に、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHがストールトルクHi経過時間#CTQSTLBRKHに達したことで、ステップS108における判定結果が「YES」(ctQSTLBH≧#CTQSTLBRKH)となった場合には、ステップS107に進み、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLをターゲットトルク3(QTMAP3)とし、さらにステップS105以降の処理を実行する。 【0036】この場合、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLは既にクリアされているので、ステップS105からステップS106に進み、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLの加算が開始される。そして、次回このルーチンの実行時には、ステップS101で「NO」判定、ステップS102で「YES」判定、ステップS108で「YES」判定されて、ステップS107を経て、再びステップS105に進み、ステップS105で「NO」判定されて、ステップS106でストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLを加算する。 【0037】そして、S101→S102→S108→S107→S105→S106の処理を繰り返している間に、ストールトルクLo経過カウンタctQSTLBLがストールトルクLo時間値#CTQSTLBRKL以上になると、ステップS105における判定結果が「YES」となって、ステップS116に進む。ステップS116において、ストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHをクリアして、本ルーチンの実行を一旦終了する。その結果、次回このルーチンの実行時に、ステップS101で「NO」判定、ステップS102で「YES」判定されてステップS108に進むと、前回このルーチン実行時にステップS116でストールトルクHi経過カウンタctQSTLBHをクリアしているので、ステップS108で「NO」判定されて、再び、ステップS109以降の処理を実行することとなる。このようにすることで、ブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKでの長時間に亘るモータ駆動に起因して、モータ1やインバータ4が過熱するのを防止することができるとともに、坂道発進を自動的に再実行することができる。 【0038】以上のように、ブレーキ・アクセル両踏み発進の場合にも、ターゲットトルク2(QTMAP2)が、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLから最大勾配登坂開始トルク値#QSTLHにある間は、モータ1に対する指令トルクを最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLに制限しているので、この間にモータ1やインバータ4などが過熱するのを防止することができる。 【0039】さらに、ターゲットトルク2(QTMAP2)が最大勾配登坂開始トルク値#QSTLH以上になった時にトルク制限を一旦解除し、その後、ターゲットトルク2(QTMAP2)がブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRK以上になった時にはブレーキが解除されるまでの間、モータ1に対する指令トルクをブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKに制限しているので、この間もモータ1やインバータ4などが過熱するのを防止することができ、その後、ブレーキが解除された時にトルク制限が解除されるので、車両はスムーズに坂道発進することができる。 【0040】さらに、モータ1に対する指令トルクをブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKに制限している期間が所定時間(ストールトルクHi経過時間#CTQSTLBRKH)を越えた時には、モータに対する指令トルクを一旦、最大勾配ホールド可能トルク値#QSTLLに戻すようにしているので、ブレーキ時許容最大トルク値#QSTLBRKでの長時間に亘るモータ駆動に起因して、モータ1やインバータ4などが過熱するのを確実に防止することができる。 【0041】図8は、登坂可能最大勾配におけるストール時のモータトルクと、モータ1やインバータ4などを過熱させることなく連続出力が可能な時間(出力可能時間)と、該モータトルクでモータ駆動した場合の1秒後の車速の関係を示す図であり、出力可能時間については、モータトルクが小さい方がモータトルクが大きい場合よりも長くなるが、1秒後の車速については、モータトルクが大きい方がモータトルクが小さい場合よりも大きくなる。なお、車速の符号で「+」(プラス)は前進を意味し、「−」(マイナス)は後退を意味する。 【0042】 【発明の効果】以上説明するように、請求項1に記載した発明によれば、坂道発進時に、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止することが可能になり、パワードライブユニットを小型化することができるという優れた効果が奏される。請求項2に記載した発明によれば、ストール状態か否かの判別が確実にでき、ストール状態の時だけに限定してトルク制限を実行することが可能になるという効果がある。請求項3に記載した発明によれば、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止しつつ、スムーズに坂道発進を行うことができるという優れた効果が奏される。 【0043】請求項4に記載した発明によれば、パワードライブユニットの小型化を図ることができるとともに、モータやこれを駆動するパワードライブユニットが過熱するのを防止しつつ、スムーズに坂道発進を行うことができるという優れた効果が奏される。請求項5に記載した発明によれば、長時間に亘る第3のトルク値でのモータ駆動によるモータやパワードライブユニットの過熱を防止することが可能になるという効果がある。請求項6に記載した発明によれば、パワードライブユニットの小型化により燃料電池自動車への搭載性が向上し、また、坂道発進時における電力消費を抑制することができることから、燃料電池の燃料補給サイクルを長くすることができるという優れた効果が奏される。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社 【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
|
| 【出願日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064908 【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 正武 (外5名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−199205(P2003−199205A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月11日(2003.7.11) |
| 【出願番号】 |
特願2001−392983(P2001−392983) |
|