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【発明の名称】 電気自動車
【発明者】 【氏名】山中 章弘
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】澤田 博樹
【住所又は居所】愛知県豊田市豊栄町2丁目88番地 株式会社トヨタテクノサービス内

【氏名】岩瀬 教寛
【住所又は居所】愛知県豊田市豊栄町2丁目88番地 株式会社トヨタテクノサービス内

【要約】 【課題】変速機の変速状態や路面勾配に応じたクリープトルクを出力する。

【解決手段】車両の走行状態がクリープトルク出力許可領域内のときには、車速Vとブレーキ油圧Pbとに基づいてクリープ補正係数Kcrを算出すると共に(S106)、加速度αとCVT50の変速比γとに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを算出し(S108)、算出したクリープ補正係数下限値Kminでクリープ補正係数Kcrの下限を制限して(S110,S112)、ドライバ要求トルクTdrにクリープ補正係数Kcrを乗じてクリープトルクTcrを計算し(S114)、クリープトルクTcrが出力されるようモータ40を駆動制御する(S116)。この結果、加速度αに基づいて判断される登り勾配の大きさとCVT50の変速比γに応じたクリープトルクとすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動機からの動力により走行可能な電気自動車であって、電動機からの動力を機械的な機構による有段または無段に変速して車軸に伝達する機械的変速手段と、所定の走行状態のとき、走行方向にクリープトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御するクリープトルク出力手段と、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力を検出する踏力検出手段と、該検出された踏力が大きいほど小さくなる傾向で前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正すると共に前記機械的変速手段の変速状態に基づいて前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正するクリープトルク補正手段と、を備える電気自動車。
【請求項2】 前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速状態に基づいて下限トルクを設定すると共に該設定した下限トルク以上となるよう前記クリープトルクを補正する手段である請求項1記載の電気自動車。
【請求項3】 前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速比が小さくなるほど大きくなる傾向で前記下限トルクを設定する手段である請求項2記載の電気自動車。
【請求項4】 請求項1ないし3いずれか記載の電気自動車であって、路面勾配を検出する勾配検出手段を備え、前記クリープトルク補正手段は、前記勾配検出手段により検出された路面勾配に基づいて前記クリープトルクを補正する手段である電気自動車。
【請求項5】 前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が登り勾配として大きいほど大きくなる傾向の下限トルクを設定すると共に該設定した下限トルク以上となるよう前記クリープトルクを補正する手段である請求項4記載の電気自動車。
【請求項6】 前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段である請求項4記載の電気自動車。
【請求項7】 前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速比が所定の変速比未満のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段である請求項1記載の電気自動車。
【請求項8】 請求項7記載の電気自動車であって、路面勾配を検出する勾配検出手段を備え、前記クリープトルク補正手段は、前記勾配検出手段により検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段である電気自動車。
【請求項9】 電動機からの動力により走行可能な電気自動車であって、電動機からの動力を機械的な機構による有段または無段に変速して車軸に伝達する機械的変速手段と、所定の走行状態のとき、走行方向にクリープトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御するクリープトルク出力手段と、路面勾配を検出する勾配検出手段と、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力を検出する踏力検出手段と、該検出された踏力が大きいほど小さくなる傾向で前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正すると共に前記勾配検出手段により検出された路面勾配に基づいて前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正するクリープトルク補正手段と、を備える電気自動車。
【請求項10】 前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段である請求項9記載の電気自動車。
【請求項11】 前記所定の走行状態は、シフトポジションが車両の走行が可能なポジションであり、アクセルペダルが踏み込まれておらず、車速が所定車速以下となる状態である請求項1ないし10いずれか記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、電動機からの動力により走行可能な電気自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の電気自動車としては、無段変速機を介してモータからの動力で走行可能な電気自動車が提案されている(例えば、特開平11−285108号公報など)。この電気自動車では、車速が所定速未満の走行状態でアクセルペダルが開放されたときに、ブレーキ踏込力が大きいほどクリープトルクを弱めて出力することにより、アクセルペダルの踏み込みなしに車両の低速走行を可能とすると共に不要なクリープトルクの出力を回避している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした電気自動車では車軸に十分なクリープトルクが作用しない場合が生じる。走行停止する際に何らかの原因により無段変速機の変速比が最大変速比にならなかったときには、モータからブレーキ踏込力に応じたトルクが出力されていても、車軸には期待するクリープトルクが作用しない。また、車両が登り勾配の坂路で停車している際に強く踏み込まれていたブレーキペダルを開放するときには、弱めて出力されていたクリープトルクの回復に遅れが生じ、車両が後方にずり下がる場合がある。
【0004】本発明の電気自動車は、変速機の変速状態に応じたクリープトルクを出力することを目的の一つとする。また、本発明の電気自動車は、路面勾配に応じたクリープトルクを出力することを目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の電気自動車は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】本発明の第1の電気自動車は、電動機からの動力により走行可能な電気自動車であって、電動機からの動力を機械的な機構による有段または無段に変速して車軸に伝達する機械的変速手段と、所定の走行状態のとき、走行方向にクリープトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御するクリープトルク出力手段と、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力を検出する踏力検出手段と、該検出された踏力が大きいほど小さくなる傾向で前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正すると共に前記機械的変速手段の変速状態に基づいて前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正するクリープトルク補正手段と、を備えることを要旨とする。
【0007】この本発明の第1の電気自動車では、所定の走行状態のときに、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力が大きいほど小さくなる傾向で補正されると共に機械的変速手段の変速状態に基づいて補正された走行方向のクリープトルクが出力されるよう電動機を駆動制御する。したがって、機械的変速機の変速状態に応じたクリープトルクを出力することができる。
【0008】こうした本発明の第1の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速状態に基づいて下限トルクを設定すると共に該設定した下限トルク以上となるよう前記クリープトルクを補正する手段であるものとすることもできる。この態様の本発明の第1の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速比が小さくなるほど大きくなる傾向で前記下限トルクを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、機械的変速手段の変速比が大きいときには小さなクリープトルクとしてエネルギー効率の向上を図ることができると共に変速比が小さいときでも十分なクリープトルクを得ることができる。
【0009】本発明の第1の電気自動車において、路面勾配を検出する勾配検出手段を備え、前記クリープトルク補正手段は、前記勾配検出手段により検出された路面勾配に基づいて前記クリープトルクを補正する手段であるものとすることもできる。こうすれば、路面勾配に応じたクリープトルクを出力することができる。
【0010】この路面勾配に基づいてクリープトルクを補正する態様の本発明の第1の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が登り勾配として大きいほど大きくなる傾向の下限トルクを設定すると共に該設定した下限トルク以上となるよう前記クリープトルクを補正する手段であるものとすることもできる。こうすれば、路面勾配が登り勾配として小さいときには小さなクリープトルクとしてエネルギー効率の向上を図ることができると共に路面勾配が登り勾配として大きいときには十分なクリープトルクを得ることができる。
【0011】また、路面勾配に基づいてクリープトルクを補正する態様の本発明の第1の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段であるものとすることもできる。こうすれば、ブレーキ踏力に基づく補正が行なわれないから、十分なクリープトルクを出力することができる。
【0012】本発明の第1の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記機械的変速手段の変速比が所定の変速比未満のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段であるものとすることもできる。こうすれば、ブレーキ踏力に基づく補正が行なわれないから、十分なクリープトルクを出力することができる。この態様の本発明の第1の電気自動車において、路面勾配を検出する勾配検出手段を備え、前記クリープトルク補正手段は前記勾配検出手段により検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段であるものとすることもできる。こうすれば、路面勾配が所定の登り勾配以上のときにはブレーキ踏力に基づく補正は行なわれないから、十分なクリープトルクを出力することができる。
【0013】本発明の第2の電気自動車は、電動機からの動力により走行可能な電気自動車であって、電動機からの動力を機械的な機構による有段または無段に変速して車軸に伝達する機械的変速手段と、所定の走行状態のとき、走行方向にクリープトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御するクリープトルク出力手段と、路面勾配を検出する勾配検出手段と、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力を検出する踏力検出手段と、該検出された踏力が大きいほど小さくなる傾向で前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正すると共に前記勾配検出手段により検出された路面勾配に基づいて前記クリープトルク出力手段により駆動軸に出力されるクリープトルクを補正するクリープトルク補正手段と、を備えるものとすることもできる。
【0014】この本発明の第2の電気自動車では、所定の走行状態のときに、ブレーキペダルの踏み込み力としての踏力が大きいほど小さくなる傾向で補正されると共に路面勾配に基づいて補正された走行方向のクリープトルクが出力されるよう電動機を駆動制御する。したがって、路面勾配に応じたクリープトルクを出力することができる。
【0015】こうした本発明の電気自動車において、前記クリープトルク補正手段は、前記検出された路面勾配が所定の登り勾配以上のときには前記踏力に基づく補正を行なわない手段であるものとすることもできる。こうすれば、路面勾配が所定の登り勾配以上のときにはブレーキ踏力に基づく補正は行なわれないから、十分なクリープトルクを出力することができる。
【0016】上述のいずれかの態様の本発明の第1または第2の電気自動車において、前記所定の走行状態は、シフトポジションが車両の走行が可能なポジションであり、アクセルペダルが踏み込まれておらず、車速が所定車速以下となる状態であるものとすることもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト24に接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30に接続された発電可能なモータ40と、プラネタリギヤ30に接続されると共にディファレンシャルギヤ64を介して駆動輪66a,66bに接続された無段変速機としてのCVT50と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0018】エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22のクランクシャフト24には、図示しない補機に供給する電力を発電すると共にエンジン22を始動するスタータモータ26がベルト28により取り付けられている。エンジン22の運転制御、例えば燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御,バルブタイミング制御などは、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)29により行なわれている。エンジンECU29は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】プラネタリギヤ30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35とを回転要素として差動作用を行なう。プラネタリギヤ30のサンギヤ31にはエンジン22のクランクシャフト24が、キャリア35にはモータ40の回転軸41がそれぞれ連結されており、エンジン22の出力をサンギヤ31から入力すると共にキャリア35を介してモータ40と出力のやりとりを行なうことができる。キャリア35はクラッチC1により、リングギヤ32はクラッチC2によりCVT50のインプットシャフト51に接続できるようになっており、クラッチC1およびクラッチC2を接続状態とすることにより、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35の3つの回転要素による差動を禁止して一体の回転体、即ちエンジン22のクランクシャフト24とモータ40の回転軸41とCVT50のインプットシャフト51とを一体の回転体とする。また、プラネタリギヤ30には、リングギヤ32をケース39に固定してその回転を禁止するブレーキB1も設けられている。
【0020】モータ40は、例えば発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ43を介して二次電池44と電力のやりとりを行なう。モータ40は、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)49により駆動制御されており、モータECU49には、モータ40を駆動制御するために必要な信号や二次電池44を管理するのに必要な信号、例えばモータ40の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ45からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ40に印加される相電流,二次電池44の端子間に設置された電圧センサ46からの端子間電圧,二次電池44からの電力ラインに取り付けられた電流センサ47からの充放電電流,二次電池44に取り付けられた温度センサ48からの電池温度などが入力されており、モータECU49からはインバータ43へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU49では、二次電池44を管理するために電流センサ47により検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算している。なお、モータECU49は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータ40を駆動制御すると共に必要に応じてモータ40の運転状態や二次電池44の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】CVT50は、溝幅が変更可能でインプットシャフト51に接続されたプライマリープーリー53と、同じく溝幅が変更可能で駆動軸としてのアウトプットシャフト52に接続されたセカンダリープーリー54と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝に架けられたベルト55と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更する第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57とを備え、第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57によりプライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更することによりインプットシャフト51の動力を無段階に変速してアウトプットシャフト52に出力する。CVT50の変速比γの制御は、CVT用電子制御ユニット(以下、CVTECUという)59により行なわれている。このCVTECU59には、インプットシャフト51に取り付けられた回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数やアウトプットシャフト52に取り付けられた回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数が入力されており、CVTECU59からは第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57への駆動信号が出力されている。また、CVTECU59は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってCVT50の変速比γを制御すると共に必要に応じてCVT50の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0022】ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数Niや回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数No,シフトレバー80の操作位置を検出するシフトポジションセンサ81からのシフトポジションSP,アクセルペダル82の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ83からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル84の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ85からのブレーキペダルポジションBP,ブレーキマスターシリンダ86に取り付けられた油圧センサ87からのブレーキ油圧Pb,車速センサ88からの車速V,加速度センサ89からの加速度α,油圧調節装置92への制御信号などが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、クラッチC1やクラッチC2,ブレーキB1の油圧回路に設けられた図示しないアクチュエータへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】また、図1に示すように、ブレーキペダル84に接続されたブレーキマスターシリンダ86から駆動輪66a,66bの機械ブレーキ94a,94bに至る油圧回路90には、その油圧を調節して機械ブレーキによる制動力を調節する油圧調節装置92が設けられている。なお、機械ブレーキ94a,94bにより駆動輪66a,66bに作用する制動力は、ハイブリッド用電子制御ユニット70によりブレーキペダル84の踏み込み力と車両の走行状態に基づいて決定され、ハイブリッド用電子制御ユニット70から制御信号を入力した油圧調節装置92によって調節される。
【0024】こうして構成された実施例の動力出力装置20を備える電気自動車では、前進走行時、即ちシフトポジションSPがDレンジやBレンジのときには、クラッチC1を接続状態とすると共にクラッチC2を接続解除状態としてモータ40からの動力だけで走行するモータ走行モードやクラッチC1とクラッチC2とを共に接続状態としてエンジン22の動力に必要に応じてモータ40の動力を付加して走行するエンジンモータ走行モード、クラッチC1を接続解除状態とすると共にクラッチC2を接続状態としてエンジン22からのトルクの反力をモータ40でとることによりトルクを増幅して走行するトルク増幅走行モードにより走行する。なお、いずれの走行モードでもブレーキB1は接続解除状態である。また、後進走行時、即ちシフトポジションSPがRレンジのときには、クラッチC1を接続状態とすると共にクラッチC2およびブレーキB1を接続解除状態としてモータ40からの動力だけで走行するリバース走行モードにより走行したり、所定駆動力以上の駆動力が要求されたときや二次電池44のSOCが所定値以下となったときにはクラッチC1と共にブレーキB1を接続状態としてエンジン22の動力を駆動軸66a,66bに伝達する後進時トルク増幅モードにより走行する。こうした各走行モードでは、いずれもモータ40が駆動可能な状態であり、モータ40を駆動制御することによりプラネタリギヤ30に動力を入出力することができる。
【0025】次に、実施例の電気自動車20の動作、特に低速走行時や停車時において車両に作用させる走行方向のクリープトルクの制御について説明する。図2は、実施例の電気自動車20のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるクリープトルク制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
【0026】クリープトルク制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、シフトポジションセンサ81により検出されるシフトポジションSPやアクセルペダルポジションセンサ83により検出されるアクセル開度Acc,ブレーキペダルポジションセンサ85により検出されるブレーキペダルポジションBP,油圧センサ87により検出されるブレーキ油圧Pb,車速センサ88により検出される車速V,加速度センサ89により検出される加速度αを読み込むと共にCVTECU59からCVT50の変速比γを通信により読み込む処理を実行する(ステップS100)。そして、シフトポジションSPが走行可能なポジション、即ちDレンジ,Bレンジ,Rレンジのいずれかのレンジであるか否か、アクセル開度AccがアクセルOFFの状態であるか否か、ブレーキペダルポジションBPがブレーキONの状態であるか否かを判定する(ステップS102)。シフトポジションSPが走行可能なポジションにないと判定されたときやアクセルONの状態であると判定されたとき、あるいはブレーキOFFの状態であると判定されたときには、クリープトルク制御とは異なる他の制御(ステップS120)であると判断し、本ルーチンを終了する。
【0027】車両の走行状態がクリープトルク出力許可領域内のときには、車速Vとブレーキ油圧Pbとに基づいてクリープ補正係数Kcrを算出する(ステップS106)。実施例では、車速Vとブレーキ油圧Pbとクリープ補正係数Kcrとの関係を予め定めてクリープ補正係数設定用マップとしてROM74に記憶しておき、車速Vとブレーキ油圧Pbとが与えられると、記憶したクリープ補正係数設定用マップから対応するクリープ補正係数Kcrが導出されるものとした。図3にクリープ補正係数設定用マップの一例を示す。この例では、車速Vが負の値(後進時)ではクリープ補正係数Kcrを100%として固定し、車速Vが正の値(前進時)ではブレーキ油圧Pbが高くなるほどクリープ補正係数Kcrが小さくなる傾向、即ち、運転者によるブレーキペダル84の踏力が大きくなり運転者が要求する制動力が大きくなるほどクリープ補正係数Kcrを小さくして小さなクリープトルクを出力する傾向としている。なお、この場合、ブレーキ油圧Pbが高くなるに従って徐々にクリープ補正係数Kcrが小さくなるようにマップを作成してもよいし、ブレーキ油圧Pbが高くなるに従ってステップ的にクリープ補正係数Kcrが小さくなるようにマップを作成してもよい。ステップ的にクリープ補正係数Kcrを小さくする場合、ステップは1段階以上であれば何段でもよい。
【0028】こうしてクリープ補正係数Kcrを算出すると、加速度αとCVT50の変速比γとに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを算出する(ステップS108)。実施例では、加速度αと変速比γとクリープ補正係数下限値Kminとの関係を予め定めてクリープ補正係数下限値設定用マップとしてROM74に記憶しておき、加速度αと変速比γとが与えられると、記憶したクリープ補正係数下限値設定用マップから対応するクリープ補正係数下限値Kminが導出されるものとした。図4にクリープ補正係数下限値設定用マップの一例を示す。この例では、加速度αに基づいて判断される登り勾配、即ち路面勾配が大きくなるほどクリープ補正係数下限値Kminが大きくなる傾向で、CVT50の変速比γが小さくなるほどクリープ補正係数下限値Kminが大きくなる傾向としている。なお、この場合、加速度αに基づいて判断される登り勾配が大きくなるに従って徐々にクリープ補正係数下限値Kminが大きくなるようにマップを作成してもよいし、加速度αに基づいて判断される登り勾配が大きくなるに従ってステップ的にクリープ補正係数下限値Kminが大きくなるようにマップを作成してもよい。また、CVT50の変速比γが小さくなるに従って徐々にクリープ補正係数下限値Kminが大きくなるようにマップを作成してもよいし、変速比γが大きくなるに従ってステップ的にクリープ補正係数下限値Kminが大きくなるようにマップを作成してもよい。ステップ的にクリープ補正係数下限値Kminを大きくまたは小さくする場合、ステップは1段階以上であれば何段でもよい。
【0029】クリープ補正係数下限値Kminを算出すると、算出したクリープ補正係数下限値Kminでクリープ補正係数Kcrを制限、即ちクリープ補正係数Kcrがクリープ補正係数下限値Kmin未満のときにはクリープ補正係数Kcrにクリープ補正係数下限値Kminを代入して(ステップS110,S112)、ドライバ要求トルクTdrにクリープ補正係数Kcrを乗じてクリープトルクTcrを計算し(ステップS114)、クリープトルクTcrが出力されるようモータ40を駆動制御して(ステップS116)、本ルーチンを終了する。ここで、ドライバ要求トルクTdrは、シフトポジションSPが走行可能なポジションであると共にアクセル開度AccがアクセルOFFの状態であり、かつ、ブレーキペダルポジションBPがブレーキONの状態では、停車時にブレーキをOFFとしたときに車両を低速で走行させるのに必要なトルクとして設定される。
【0030】以上説明した実施例電気自動車20によれば、加速度αに基づいて判断される登り勾配、即ち路面勾配とCVT50の変速比γとに基づいて設定されたクリープ補正係数下限値Kminによりクリープ補正係数Kcrを制限するから、路面勾配や変速比γに応じたクリープトルクを出力することができる。クリープ補正係数下限値KminはCVT50の変速比γが小さくなるほど大きくなる傾向として設定されるから、変速比γが大きいときに小さなクリープトルクとしてエネルギー効率を向上させることができると共に変速比γが小さいときには十分なクリープトルクを出力することができる。しかも、クリープ補正係数下限値Kminは加速度αに基づいて判断される登り勾配が大きくなるほど大きくなる傾向として設定されるから、登り勾配が小さいときには小さなクリープトルクとしてエネルギー効率を向上させることができると共に登り勾配が大きいときには十分なクリープトルクを出力することができる。この結果、登り勾配で停車した状態でブレーキペダル84を開放しても、車両が後方にずり下がるのを防止することができる。
【0031】実施例の電気自動車20では、加速度αとCVT50の変速比γとに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを設定し、このクリープ補正係数下限値Kminによりクリープ補正係数Kcrを制限するものとしたが、加速度αを用いずにCVT50の変速比γだけに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを設定し、このクリープ補正係数下限値Kminに基づいてクリープ補正係数Kcrを制限するものとしてもよく、あるいは、CVT50の変速比γを用いずに加速度αだけに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを設定し、このクリープ補正係数下限値Kminに基づいてクリープ補正係数Kcrを制限するものとしてもよい。
【0032】実施例の電気自動車20では、加速度αとCVT50の変速比γとに基づいてクリープ補正係数下限値Kminを設定し、このクリープ補正係数下限値Kminによりクリープ補正係数Kcrを制限するものとしたが、図5に例示する変形例のクリープトルク制御ルーチンに例示するように、CVT50の変速比γが所定変速比γref未満のときや(ステップS206)、加速度αが所定加速度αref以上のときには(ステップS208)、車速Vとブレーキ油圧Pbに基づいてクリープ補正係数Kcrを算出せずにクリープ補正係数Kcrを100%に固定(ステップS212)するものとしてもよい。この変形例でもCVT50の変速比γが所定変速比γref未満の小さなときや、加速度αに基づいて判断される登り勾配が所定の登り勾配以上のときでも、十分なクリープトルクを出力することができる。
【0033】実施例の電気自動車20では、クリープ補正係数下限値KminをCVT50の変速比γが小さくなるほど大きくなる傾向として、かつ、加速度αに基づいて判断される登り勾配が大きくなるほど大きくなる傾向として設定し、車速Vとブレーキ油圧Pbとに基づいて算出されるクリープ補正係数Kcrの下限値を制限するものとしたが、図6に例示する変形例のクリープトルク制御ルーチンに示すように、加速度αとCVT50の変速比γとにより設定された補正許可領域のときには(ステップS306)、車速Vとブレーキ油圧Pbとに基づいてクリープ補正係数Kcrを算出し(ステップS308)、加速度αとCVT50の変速比γとにより設定された補正不許可領域のときには(ステップS306)、クリープ補正係数Kcrを100%に固定(ステップS312)するものとしてもよい。この変形例でもCVT50の変速比γが所定変速比γref未満の小さなときや、加速度αに基づいて判断される登り勾配が所定の登り勾配以上のときでも、十分なクリープトルクを出力することができる。なお、加速度αとCVT50の変速比γとにより設定される補正許可領域および補正不許可領域の一例を図7に示す。
【0034】実施例では、モータ40の動力をプラネタリギヤ30と無段に変速するCVT50とを介して車軸に出力する電気自動車20に適用するものとしたが、モータ40の動力を機械的な機構により有段または無段に変速して車軸に出力する如何なる構成の電気自動車に適用するものとしてもよい。
【0035】以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成13年12月19日(2001.12.19)
【代理人】 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
【公開番号】 特開2003−189420(P2003−189420A)
【公開日】 平成15年7月4日(2003.7.4)
【出願番号】 特願2001−385506(P2001−385506)