| 【発明の名称】 |
電気自動車の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】長井 正明 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号 富士重工業株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】急減速時に発生する車体振動を効果的に抑制して、より快適な乗り心地感を実現することができる電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】アクセル操作量Aおよびブレーキ操作量Bに応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段31と、このトルク指令値に応じて所定の電流指令値の演算および出力を行う電流指令値演算手段32とを備え、電流指令値に応じて電動機の力行制御または回生制御を行う電気自動車の制御装置において、アクセル操作量Aおよびブレーキ操作量Bに基づいて急減速状態にあるか否かを判定する急減速状態判定手段34と、急減速状態にあると判定された場合に電動機の回生作動時期を遅れさせる回生作動時期遅延手段とを備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アクセル操作量およびブレーキ操作量に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段と、前記トルク指令値に応じて所定の電流指令値の演算および出力を行う電流指令値演算手段とを備え、前記電流指令値に応じて電動機の力行制御または回生制御を行う電気自動車の制御装置において、アクセル操作量およびブレーキ操作量に基づいて急減速状態にあるか否かを判定する急減速状態判定手段と、急減速状態にあると判定された場合に前記電動機の回生作動時期を遅れさせる回生作動時期遅延手段とを備えることを特徴とする電気自動車の制御装置。 【請求項2】前記急減速状態判定手段は、アクセルオフ時からブレーキオン時までに要する時間が所定時間以下である場合に急減速状態にあると判定するものであり、前記回生作動時期遅延手段は、所定の低車速域においてのみ作動されるものであることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制御装置。 【請求項3】前記回生作動時期遅延手段は、前記トルク指令値または前記電流指令値を、アクセルオフ時から前記所定時間経過時までに力行域で漸次低減させるとともに前記所定時間経過直後に回生域へと移行させるものであることを特徴とする請求項2記載の電気自動車の制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車の制御装置に関し、特に、急減速時に発生する車体振動を効果的に抑制することのできる電気自動車の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、環境汚染や騒音の防止・抑制のために、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関で走行する自動車に代えて、電動機で走行する電気自動車(ハイブリッド車を含む)の開発が進んでいる。このような電気自動車の駆動源である電動機としては、直流モータや交流モータが採用されており、中でも回転子に永久磁石を使用した三相交流同期モータ(以下、「同期モータ」という)は高効率であるため、電気自動車用の電動機の主流とされている。 【0003】この同期モータを搭載した電気自動車においては、車両に搭載したバッテリからの直流電流をインバータで所定の交流電流に変換し、この交流電流によって同期モータを駆動して車両を走行させている。 【0004】この際には、アクセルペダルの操作量(以下、「アクセル操作量」という)やブレーキペダルの操作量(以下、「ブレーキ操作量」という)に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行い、このトルク指令値に応じて所定の電流指令値の演算および出力を行い、この電流指令値に応じて制御手段によって同期モータを制御しており、同期モータの出力トルクは所定のトルク指令値に応じて追従するようにオープンループ制御される。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、前記したような電気自動車では、同期モータの出力軸からディファレンシャルギアおよびドライブシャフトを介して駆動輪へと至るトルクの伝達系が、ドライブシャフトをバネ要素とした「ねじれ共振系」を構成している。 【0006】このため、例えば、加速している状態から急激にブレーキペダルを踏み込んで減速する際(以下、「急減速時」という)においては、制御手段によって同期モータの出力トルクがこれに追従するように制御されて力行作動から回生作動に急激に移行することとなるが、この出力トルクの急激な変動によって、前記した「ねじれ共振系」が共振して車体振動が発生することがあった。このような車体振動は、運転者または同乗者に不快感を与えていた。 【0007】電気自動車の車体振動を抑制するための従来の技術としては、特開2000−125410号公報に記載されているように、同期モータの回転速度の振動を検知し、この検知した回転速度情報をフィードバックしてトルク指令値を補正することによって、同期モータの回転速度の振動を打ち消し、ひいては車体振動を抑制するという方法が提案されている。 【0008】この車体振動抑制方法においては、まず同期モータの回転速度の振動を検知し、次いでその検知した回転速度情報をフィードバックしてトルク指令値を補正するという工程を経るため、回転速度検知時からトルク指令値補正時まで、さらにトルク指令値補正時から同期モータ制御時までにタイムラグが生じることとなる。急減速時に発生する振動を抑制するためには、急減速状態を検出してからきわめて迅速に同期モータを制御する必要があるため、前記したようなタイムラグが生じると充分な車体振動の抑制がなされない可能性がある。 【0009】また、前記した車体振動抑制方法においては、急減速状態を検出するのではなく回転速度の振動を検知しているため、急減速状態に移行してから回転速度の振動が発生するまでにタイムラグがある場合には、やはり充分な車体振動の抑制がなされない可能性がある。 【0010】本発明の課題は、急減速時に発生する車体振動を効果的に抑制して、より快適な乗り心地感を実現することができる電気自動車の制御装置を提供することである。 【0011】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、例えば図2に示したように、アクセル操作量およびブレーキ操作量に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段と、前記トルク指令値に応じて所定の電流指令値の演算および出力を行う電流指令値演算手段とを備え、前記電流指令値に応じて電動機の力行制御または回生制御を行う電気自動車の制御装置において、アクセル操作量およびブレーキ操作量に基づいて急減速状態にあるか否かを判定する急減速状態判定手段と、急減速状態にあると判定された場合に前記電動機の回生作動時期を遅れさせる回生作動時期遅延手段とを備えることを特徴とする。 【0012】請求項1記載の発明によれば、アクセル操作量およびブレーキ操作量に基づいて急減速状態にあるか否かを判定する急減速状態判定手段を備えるため、前記した「ねじれ共振系」の共振が発生し易い急減速状態の判定を、きわめて迅速に行うことができる。従って、電動機の制御を迅速に行うことができる。 【0013】また、請求項1記載の発明によれば、急減速状態にあると判定された場合に電動機の回生作動時期を遅れさせる回生作動時期遅延手段を備えるため、急減速時において電動機の出力トルクが力行作動から回生作動に切り替わる時期を遅れさせることができ、急激な出力トルクの変動を緩和することができる。従って、急減速時に発生する「ねじれ共振系」の共振を抑制することができ、車体振動を効果的に抑制することができる。この結果、より快適な乗り心地感を実現することができる。 【0014】請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気自動車の制御装置において、前記急減速状態判定手段は、アクセルオフ時からブレーキオン時までに要する時間が所定時間以下である場合に急減速状態にあると判定するものであり、前記回生作動時期遅延手段は、所定の低車速域においてのみ作動されるものであることを特徴とする。 【0015】請求項2記載の発明によれば、急減速状態判定手段は、アクセルオフ時からブレーキオン時までに要する時間が所定時間以下である場合に急減速状態にあると判定するものであるため、急減速状態の判定をきわめて簡易に行うことができる。 【0016】また、請求項2記載の発明によれば、回生作動時期遅延手段は、所定の低車速域においてのみ作動されるものであるため、高速走行中において急減速状態と判定した場合には電動機の回生作動時期遅延制御を行わないので、通常の回生作動による車体制動効果を得ることができる。すなわち、高速走行中においては、急減速操作に応じて速やかに車体制動を行うことができる。 【0017】請求項3記載の発明は、請求項2記載の電気自動車の制御装置において、例えば、図4に示すように、前記回生作動時期遅延手段は、前記トルク指令値または前記電流指令値を、アクセルオフ時から前記所定時間経過時までに力行域で漸次低減させるとともに前記所定時間経過直後に回生域へと移行させるように制御するものであることを特徴とする。 【0018】請求項3記載の発明によれば、回生作動時期遅延手段は、トルク指令値または電流指令値を、アクセルオフ時から所定時間経過時までに力行域で漸次低減させるとともに所定時間経過直後に回生域へと移行させるものであるため、アクセルオフによってトルク指令値または電流指令値を急激にゼロとするのではなく、所定時間内において力行域で徐々に低減させ、所定時間経過後にはじめて回生域に切り替えるため、電動機の回生作動を適切に遅れさせることができる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態では、電動機である三相交流同期モータ(同期モータ)10で走行する電気自動車の制御装置について説明することとする。 【0020】本実施の形態に係る電気自動車は、図1に示すように、電力源としてのバッテリ20、同期モータ10をベクトル制御する制御装置30、制御装置30で制御されバッテリ20の出力を交流電力に変換する電力変換機であるインバータ40、同期モータ10の回転子の磁極位置を検出するレゾルバ50、同期モータ10への入力電流を検出する電流検出手段60、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出器70、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出器80、同期モータ10の回転運動をドライブシャフト100に伝達するディファレンシャルギア90、および、ドライブシャフト100の両端に設けられた駆動輪110を備えている。 【0021】同期モータ10は、ディファレンシャルギア90およびドライブシャフト100を介して駆動輪110と連結され、同期モータ10の回転運動により駆動輪110が回転し車両に推進力を与えるようにされている。バッテリ20からインバータ40に供給された直流電力は、制御装置30の制御のもとに三相交流電力に変換されて同期モータ10に供給される。 【0022】制御装置30は、図2に示すように、トルク指令値演算手段31、電流指令値演算手段32、電流制御手段33、急減速状態判定手段34、車速判定手段35および微分器36を備える。 【0023】トルク指令値演算手段31は、アクセル操作量検出器70で検出されたアクセル操作量A、ブレーキ操作量検出器80で検出されたブレーキ操作量Bおよびレゾルバ50で検出された同期モータ10の回転子の磁極位置を微分器36で時間微分して得た回転速度ωに応じて、所定のトルク指令値T*の演算および出力を行うものである。このトルク指令値演算手段31によって出力されるトルク指令値T*の値は、後述するように、急減速状態判定手段34および車速判定手段35からの信号に応じて制御される。なお、トルク指令値演算手段31の構成については後に詳細に説明する。 【0024】電流指令値演算手段32は、トルク指令値T*に応じて所定の電流指令値Id*およびIq*の演算および出力を行うものである。ここでId*およびIq*は、それぞれベクトル制御に用いられる電流指令値のd軸成分およびq軸成分である。 【0025】電流制御手段33は、図3に示すように、dq軸電流制御手段33a、3/2相変換手段33b、PWM信号発生手段33cおよび2/3相変換手段33dを備える。dq軸電流制御手段33aは、電流指令値Id*およびIq*と、同期モータ10の回転速度ωと、電流検出手段60で検出された同期モータ10への入力電流Iu、Ivを3/2相変換手段33bで変換して得たId、Iqとに基づいて、電圧指令値Vd*およびVq*の演算及び出力を行う。 【0026】PWM信号発生手段33cは、電圧指令値Vd*、Vq*を2/3相変換手段33dで2/3相変換して得たVu*、Vv*、Vw*に基づいてPWM信号Pu、Pv、Pwを発生させてインバータ40に出力し、このPWM信号によってインバータ40のスイッチング素子を所定のタイミングでオン/オフ操作することによって、同期モータ10を制御するように機能する。 【0027】急減速状態判定手段34は、アクセル操作量検出器70で検出されたアクセル操作量A、および、ブレーキ操作量検出器80で検出されたブレーキ操作量Bに基づいて、電気自動車が急減速状態にあるか否かを判定する。電気自動車が急減速状態にあると判定した場合には、信号SCをトルク指令値演算手段31に出力する。 【0028】本実施の形態においては、アクセルオフ時(すなわちアクセル操作量Aが検出されなくなった時点)から、ブレーキオン時(すなわちブレーキ操作量Bが検出された時点)までに要する時間が所定時間Δt以下である場合に、「急減速状態にある」と判定するようにしている。この所定時間は、電気自動車の車種、同期モータ10の規格、走行条件などに基づいて適宜設定することができ、本実施の形態ではΔt=500(ms)と設定している。 【0029】車速判定手段35は、レゾルバ50で検出された同期モータ10の回転子の磁極位置を微分器36で時間微分して得た回転速度ωに基づいて、電気自動車の走行状態が所定の低速域にあるか否かを判定する。電気自動車の走行状態が所定の低速域にあると判定した場合には、信号SVをトルク指令値演算手段31に出力する。所定の低速域の範囲は、電気自動車の車種や走行条件などに応じて適宜設定することができ、本実施の形態では20km/s〜50km/sと設定している。 【0030】微分器36は、レゾルバ50で検出された同期モータ10の回転子の磁極位置を微分器36で時間微分することによって、同期モータ10の回転子の回転速度ωを算出するものである。 【0031】次に、トルク指令値演算手段31の構成を、図4を用いて詳細に説明する。トルク指令値演算手段31は、図4に示すように、力行指令値発生手段31aと、回生指令値発生手段31bと、力行/回生切替手段31cとを備える。力行指令値発生手段31aは、アクセル操作量Aに応じて力行域トルク指令値T+*の演算および出力を行う。回生指令値発生手段31bは、ブレーキ操作量Bに応じて回生域トルク指令値T-*の演算および出力を行う。 【0032】力行/回生切替手段31cは、急減速状態判定手段34からの信号SCおよび車速判定手段35からの信号SVに基づいて回生作動時期遅延制御を行うことによって、力行域トルク指令値T+*または回生域トルク指令値T-*を所定のタイミングで切り替え、適切なトルク指令値T*を出力するものである。すなわち、力行/回生切替手段31cは回生作動時期遅延手段である。 【0033】車速判定手段35において電気自動車の走行状態が「所定の低速域にある」と判定された場合には、車速判定手段35から力行/回生切替手段31cへと信号SVが送られ、この信号SVを受けた力行/回生切替手段31cは、回生作動時期遅延制御モードに切り替えられる。この状態において、急減速状態判定手段34において電気自動車が「急減速状態にある」と判定された場合には、急減速状態判定手段34から力行/回生切替手段31cに信号SCが送られ、この信号SCを受けた力行/回生切替手段31cは、回生作動時期遅延制御を行うことによって力行域トルク指令値T+*または回生域トルク指令値T-*を所定のタイミングで切り替え、適切なトルク指令値T*を出力する。なお、具体的な回生作動時期遅延制御の例については、後に詳細に説明する。 【0034】また、車速判定手段35において電気自動車の走行状態が「所定の低速域にない」と判定された場合には、車速判定手段35は信号SVを発生させない。力行/回生切替手段31cは、この信号SVを受けない場合には回生作動時期遅延制御を行わず、入力された力行域トルク指令値T+*または回生域トルク指令値T-*をそのままトルク指令値T+*として出力する。この場合には、同期モータ10は通常の回生作動を行うこととなる。 【0035】また、力行/回生切替手段31cは、回生作動時期遅延制御モードにおいてのみ作動する漸減手段31dを備えている。この漸減手段31dは、入力された力行域トルク指令値T+*を、アクセルオフ時から所定時間t0経過時まで徐々に低減させるものである。 【0036】次いで、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置を用いることによって急減速時に発生する車体振動を抑制するプロセスを、図5のフローチャート等を用いて説明する。 【0037】まず、アクセルペダルを踏み込んで電気自動車を走行させる。この走行状態においては、アクセル操作量Aおよび同期モータ10の回転速度ωに応じてトルク指令値T*が随時演算されて出力され、このトルク指令値T*に応じて電流指令値Id*およびIq*が随時演算されて出力され、この電流指令値Id*およびIq*に応じたPWM信号Pu、Pv、Pwをインバータ40を介して同期モータ10に出力することにより同期モータ10が駆動制御されている。 【0038】この走行状態において、アクセル操作量検出器70で検出したアクセル操作量A、および、ブレーキ操作量検出器80で検出したブレーキ操作量Bを急減速状態判定手段34に入力するとともに、レゾルバ50で検出した同期モータ10の回転子の磁極位置を微分器36で時間微分して得た回転速度ωを車速判定手段35に入力する(所定信号入力工程:S1)。車速判定手段35では、入力された回転速度ωに基づいて、電気自動車の走行状態が所定の低速域にあるか否かを判定する(低速域判定工程:S2)。 【0039】低速域判定工程S2で電気自動車の走行状態が「所定の低速域にある」と判定されている間は、車速判定手段35からトルク指令値演算手段31に信号SVが送られて、トルク指令値演算手段31の力行/回生切替手段31cは回生作動時期遅延制御モードに切り替えられる。 【0040】一方、車速判定手段35で電気自動車の走行状態が「所定の低速域にない」と判定された場合には、次の急減速判定工程S3および回生作動時期遅延工程S4を経ずに、回生工程S5へスキップする。この場合、車速判定手段35は信号SVを発生させないため、トルク指令値演算手段31は回生作動時期遅延制御を行わないので、同期モータ10は通常の回生作動を行う。 【0041】低速域判定工程S2で電気自動車の走行状態が「所定の低速域にある」と判定され、車速判定手段35からトルク指令値演算手段31に信号SVが送られて、トルク指令値演算手段31の力行/回生切替手段31cが回生作動時期遅延制御モードに切り替えられている間は、急減速状態判定手段34では、入力されたアクセル操作量Aおよびブレーキ操作量Bに基づいて、電気自動車が急減速状態にあるか否かを判定する(急減速状態判定工程:S3)。 【0042】ここで、運転者がアクセルペダルを踏んで加速している状態から急にブレーキペダルを踏んで減速した場合には、この急減速状態判定手段34が「急減速状態にある」と判定し、トルク指令値演算手段31に信号SCを送る。本実施の形態においては、前記したとおり、アクセルオフ時からブレーキオン時までに要する時間が所定時間Δt以下である場合に「急減速状態にある」と判定することとしている。 【0043】急減速状態判定工程S3で、電気自動車が「急減速状態ある」と判定された場合には、急減速状態判定手段34からトルク指令値演算手段31の力行/回生切替手段31cに信号SCが送られる。車速判定手段35から信号SVを受けて回生作動時期遅延制御モードに切り替えられている力行/回生切替手段31cは、急減速状態判定手段34から信号SCを受けると、回生作動時期遅延制御を行うことによって力行域トルク指令値T+*または回生域トルク指令値T-*を所定のタイミングで切り替える(回生作動時期遅延工程:S4)。 【0044】この回生作動時期遅延制御の一例を、アクセル操作量Aとブレーキ操作量Bとトルク指令値T*との時間履歴を表した図6のタイムチャートを用いて説明する。 【0045】運転者が急減速操作を行う場合には、アクセルペダルから足を外すためアクセル操作量Aが検出されなくなり、力行指令値発生手段31aによって力行域トルク指令値T+*が出力されなくなるが、力行/回生切替手段31cは、アクセル操作量Aが検出されなくなった時点(アクセルオフ時)t1のアクセル操作量Aに基づく力行域トルク指令値T+*を記憶しておき、この記憶させた力行域トルク指令値T+*を漸減手段31dによって徐々に低減させ、アクセルオフ時t1から所定時間Δtを経過した時点(所定時間経過時)t2で、力行域トルク指令値T+*をゼロにする(図6参照)。 【0046】アクセルオフ時t1から所定時間経過時t2までに運転者がブレーキペダルを踏み込むとブレーキ操作量Bが検出され、このブレーキ操作量Bが検出された時点(ブレーキオン時)t3で回生指令値発生手段31bによって回生域トルク指令値T-*が出力されるが、力行/回生切替手段31cは、ブレーキオン時t3で回生域トルク指令値T-*を受けても、すぐには回生域トルク指令値T-*に切り替えず、前記したように所定時間経過時t2までは力行域トルク指令値T+*を徐々に低減させる制御を行う。そして、所定時間経過時t2後にはじめて回生域トルク指令値T-*に切り替える(図6参照)。 【0047】すなわち、力行/回生切替手段31cは、力行域トルク指令値T+*から回生域トルク指令値T-*に切り替える時期を、ブレーキオン時t3ではなく、所定時間経過時t2まで遅れさせていることがわかる。電気自動車の同期モータ10は、以上の回生作動時期遅延工程S4によって制御されたトルク指令値T*に応じて、回生作動される(回生工程:S5)。 【0048】一方、急減速状態判定工程S3で、電気自動車が「急減速状態ない」と判定された場合には、回生作動時期遅延工程S4を経ずに回生工程S5へスキップする。この場合、急減速状態判定手段34は信号SCを発生させないため、トルク指令値演算手段31は回生作動時期遅延制御を行わず、同期モータ10は通常の回生作動を行う。 【0049】図7は、急減速状態判定工程S3で電気自動車が「急減速状態ない」と判定された場合におけるアクセル操作量Aとブレーキ操作量Bとトルク指令値T*との時間履歴を表したタイムチャートを示している。この場合には、所定時間経過時t2の後にブレーキ操作量Bが検出されており、このブレーキオン時t4から回生域トルク指令値T-*を出力している(図7参照)。なお、この場合においても、力行/回生切替手段31cはアクセルオフ時t1のアクセル操作量Aに基づく力行域トルク指令値T+*を記憶しておき、この記憶させた力行域トルク指令値T+*を漸減手段31dによって徐々に低減させ、所定時間経過時t2で力行域トルク指令値T+*をゼロにしている(図7参照)。 【0050】なお、車速判定手段35で電気自動車の走行状態が「所定の低速域にない」と判定された場合には、急減速判定工程S3および回生作動時期遅延工程S4を経ることなく回生工程S5へスキップし、回生作動時期遅延制御を行わないのは前記したとおりであるが、この走行状態で運転者が急減速操作を行った場合のトルク指令値T*の時間履歴を、図6のタイムチャートに点線で示した。この図6から明らかなように、回生作動時期遅延制御を行った場合と異なり、ブレーキオン時t3ですぐに回生域トルク指令値T-*に切り替えていることがわかる。 【0051】本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、アクセル操作量Aおよびブレーキ操作量Bに基づいて急減速状態にあるか否かを判定する急減速状態判定手段34を備えるため、「ねじれ共振系」の共振が発生し易い急減速状態の判定をきわめて迅速に行うことができる。従って、同期モータ10の制御を迅速に行うことができる。 【0052】また、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、急減速状態にあると判定された場合に同期モータ10の回生作動時期を遅れさせる回生作動時期遅延手段である力行/回生切替手段31cを備えるため、急減速時において同期モータ10の出力トルクが力行作動から回生作動に切り替わる時期を遅れさせることができ、急激な出力トルクの変動を緩和することができる。従って、急減速時に発生する「ねじれ共振系」の共振を抑制することができ、車体振動を効果的に抑制することができる。この結果、より快適な乗り心地感を実現することができる。 【0053】さらに、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、回生作動時期遅延手段である力行/回生切替手段31cは、所定の低車速域においてのみ作動されるものであるため、高速走行中において急減速状態と判定した場合には同期モータ10の回生作動時期遅延制御を行わないため、通常の回生作動による車体制動効果を得ることができる。すなわち、高速走行中においては、急減速操作に応じて速やかに車体制動を行うことができる(図6のトルク指令値T*の時間履歴の点線部分参照)。 【0054】さらにまた、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、回生作動時期遅延手段である力行/回生切替手段31cは、アクセルオフによってトルク指令値T*を急激にゼロとするのではなく、所定時間内において力行域で徐々に低減させ、所定時間経過後にはじめて回生域に切り替えるため、同期モータ10の回生作動を適切に遅れさせることができる。 【0055】なお、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置においては、車速相当信号を同期モータ10の回転速度ωとしたが、これに限定されるものではなく、車速として等価的に扱うことができる信号であればいかなるものでもよい。他の車速相当信号としては、駆動輪90の回転速度などを挙げることができる。また、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置においては、回生作動時期遅延手段(力行/回生切替手段31c)をトルク指令値演算手段31内に設けた例を示したが、これに代えて、電流指令値演算手段32内に回生作動時期遅延手段を設けることもできる。 【0056】 【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、急減速時において電動機の出力トルクが力行作動から回生作動に切り替わる時期を遅れさせることができ、急激な出力トルクの変動を緩和することができる。従って、急減速時に発生する「ねじれ共振系」の共振を抑制することができ、車体振動を効果的に抑制することができる。この結果、より快適な乗り心地感を実現することができる。 【0057】請求項2記載の発明によれば、高速走行中において急減速状態と判定した場合には電動機の回生作動時期遅延制御を行わないので、通常の回生作動による車体制動効果を得ることができる。すなわち、高速走行中においては、急減速操作に応じて速やかに車体制動を行うことができる。 【0058】請求項3記載の発明によれば、アクセルオフによってトルク指令値または電流指令値を急激にゼロとするのではなく、所定時間内において力行域で徐々に低減させ、所定時間経過後にはじめて回生域に切り替えるため、電動機の回生作動を適切に遅れさせることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005348 【氏名又は名称】富士重工業株式会社 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号
|
| 【出願日】 |
平成13年12月4日(2001.12.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090033 【弁理士】 【氏名又は名称】荒船 博司 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−174702(P2003−174702A) |
| 【公開日】 |
平成15年6月20日(2003.6.20) |
| 【出願番号】 |
特願2001−370307(P2001−370307) |
|