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【発明の名称】 電気動力装置付き車輌の制御装置
【発明者】 【氏名】中田 広之
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】過充電の防止を実現できるようにした過充電防止機能を持つ安価な電気動力装置付き車輌の制御装置を提供する。

【解決手段】過充電の場合には、モータ内で回生電力が消費されるようにスイッチングパターンを制御することにより、電源(バッテリ)6への回生電流を減少させ、過充電を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】3相フルブリッジインバータを用いてモータの回転を制御し、減速時には回生制動によりバッテリを充電する機能を有する電気動力装置付き車輌の制御装置であって、過充電の場合、モータ内で電力が消費されるような還流電流が流れるようにスイッチングパターンを制御することを特徴とする電気動力装置付き車輌の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気動力装置による電気動力を駆動源のひとつとする電気動力装置付き車輌の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高齢化対策や環境対策、さらには利便性の観点から、電動アシスト自転車や電動車椅子、あるいは電動自動車などの、モータ(電動機)を駆動源のひとつとする電気動力装置付き車輌が盛んに開発されている。
【0003】このような電気動力装置付き車輌では、速度を減速させる場合、通常、機械的に車輪を拘束する方式が用いられている。このような方式では、エネルギが車輪拘束部分での発熱により消費されることになる。
【0004】一方、モータは、減速時(制動時)において発電機として動作させることができる。そこで、減速時においてモータを発電動作させ、回生制動を(ブレーキ)を用いて制動トルクを得ることが考えられる。
【0005】回生制動では、バッテリに回生電流が戻るため、バッテリが充電される。よって、省エネルギが実現され、同じバッテリ容量でも、回生制動を用いない場合に比べて走行距離を飛躍的に伸ばすことが可能となる。
【0006】しかし、バッテリが満充電状態となった後にも回生電流を流し続けると、バッテリが発熱し、バッテリの種類によっては爆発を伴う危険な状態となる。そこで、従来より電気動力装置付き車輌では、回生制動時の過充電防止の方法として、、回生抵抗に回生電流を流して回生電力を消費する方法や、特開平7−143611号公報や特開平8−154304号公報に開示されているように、誘導電動機のトルク電流と励磁電流を調整して駆動効率や回生効率を低下させる方法がある。
【0007】しかしながら、上述のような回生抵抗に回生電流を流し、回生電力を消費する方法を用いた場合、回生抵抗並びに回生抵抗を有効にするスイッチが必要となり、部品点数が増え、安価に製造することが困難となる。
【0008】また、誘導電動機のトルク電流と励磁電流を調整して駆動効率や回生効率を低下させる方法を用いた場合、モータに流す対称三相電流をトルク電流と励磁電流に分配するためにモータ回転の電気角を測定する必要がある。これは、回転子が永久磁石の三相同期モータ(以降、ブラシレスモータと称す)に適用する場合も同様である。つまり、回転角測定用のエンコーダが必要となる。
【0009】以下、ブラシレスモータの駆動制御方法について説明する。図5は、ブラシレスモータとその駆動制御回路(3相フルブリッジインバータによる駆動制御回路)の構成の概略を図示したものである。
【0010】モータは回転時において、図6に示すような、角速度ωに比例した三相対称逆起電力Vu、Vv、Vwを発生する。式で表すと式(1)のようになる。
【0011】
【数1】

但し、Aは定数、θは電気角である。
【0012】この逆起電力と同位相の三相対称正弦波の電流をモータに流すと、モータはその電流振幅に比例したトルクを発生し、加速する。但し、そのためには電気角θを正確に測定しなければならず、回転角測定用のエンコーダが必要となり、コストアップとなる。そこで、安価にモータを駆動する場合は、図5に示す装置によって、以下に説明するコミュテーション信号を用いた矩形波駆動を用いて駆動制御する。
【0013】図7に示すように、図6に示す逆起電力の位相を検出したものが、120°の位相差を持つコミュテーション信号CSU、CSV、CSWである。制御回路3は、このコミュテーション信号と電流指令(速度指令)1を基に、図7に示すような、それぞれの振幅が電流指令1に一致した矩形波の三相電流指令Iuc、Ivc、Iwcを生成する。これらの波形は、形状は矩形波であるが、位相は図6の逆起電力の位相と一致している。
【0014】この三相電流指令に基づき、モータ5を駆動すると、電流指令を正弦波にした場合と比べて、トルク脈動(トルクリップル)は多いものの、電流振幅に比例した加速トルクが発生し、電流指令1に応じた加速をすることになる。即ち、制御回路3は、電流指令(速度指令)1をコミュテーション信号の情報により三相の電流指令に分配するとともに、電流センサ2a、2bで検出されたモータ電流がこの三相電流指令に追従するように、制御回路3はトランジスタ駆動回路4にスイッチングパターンを与える。トランジスタ駆動回路4はこのスイッチングパターンに従ってトランジスタTr1〜6をオン/オフさせ、モータ5に対称三相電流を流す。
【0015】以上のように、電気角で120°の位相差を持つ三相の矩形波(コミュテーション信号)を基に、120°で区切られた矩形波の三相電流指令でブラシレスモータを電流駆動させる場合、回転検出器(コミュテーション信号発生器)の電気角分解能が60°で良く、コスト面で有利となる。
【0016】また、減速させたい場合は、図8に示すように、図7とは逆極性の三相電流指令Iuc、Ivc、Iwcを生成する。こうすることで、加速時とは回転方向が反対の電流振幅に比例した制動トルクが発生し、減速することになる。
【0017】しかしながら、上述のように、電気角で120°の位相差を持つ三相の矩形波(コミュテーション信号)を基に、120°で区切られた矩形波の三相電流指令でブラシレスモータを電流駆動させる場合、回転検出器(コミュテーション信号発生器)の電気角分解能が60°しかないため、減速時において、脱調させない範囲で、モータに流す対称三相電流をトルク電流と励磁電流に分配すること、つまり三相電流指令をトルク電流指令と励磁電流指令に分配することは困難であり、結果、従来の方法を用いて回生効率と駆動効率を低下させることも困難となる。
【0018】従って、三相電流指令をトルク電流指令と励磁電流指令に分配する従来の方法を用いるには、回転角測定用のエンコーダによって電気角を測定する必要があり、この場合、駆動効率と回生効率の低下を制御できるとともに、正弦波で電流駆動でき、トルク脈動の少ない駆動が可能となるが、コスト面では不利となり、安価な過充電防止機能を持つ制御装置の提供が困難となる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点を解決するために、過充電の場合は、モータ内で回生電力が消費されるようにスイッチングパターンを制御することにより、バッテリへの回生電流を減少させて過充電を防止する電気動力装置付き車輌の制御装置を安価に提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明における請求項1記載の電気動力装置付き車輌の制御装置は、3相フルブリッジインバータを用いてモータの回転を制御し、減速時には回生制動によりバッテリを充電する機能を有する電気動力装置付き車輌の制御装置であって、過充電の場合、モータ内で電力が消費されるような還流電流が流れるようにスイッチングパターンを制御することを特徴とする。
【0021】以上のような構成とすることにより、本発明の電気動力装置付き車輌の制御装置は、複雑な機構を追加することなく、簡便な構成をもってバッテリの過充電防止を実現することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の電気動力装置付き車輌の制御装置に係る実施の形態について図面を交えて説明する。なお、前述した従来例(図5)と同じ構成を有する部材には同一の番号を付記して、説明を省略する。
【0023】図1は、本実施の形態における電気動力装置付き車輌の制御装置(モータと3相フルブリッジインバータによる駆動制御回路)の構成の概略を図示したものである。但し、トランジスタTr1〜6は、説明を簡単にするためにスイッチとして図示する。図2から図4は、当該装置において、モータの通常回転方向(加速時の回転方向)とは逆方向にトルク(制動トルク)を発生させ、回生制動をかける場合であって、図6および図8の電気角210°〜270°の領域■における電流経路(スイッチングパターン)を説明するための図である。なお、説明のためにこの領域を選択したが、他の領域でも同様である。
【0024】領域■では、図8に示すように、u相からv相へ電流が流れるように、電流指令を生成する。このとき、電流センサ2aの検出値が電流指令1の値よりも小さい場合には、u相からv相へ流れる電流を増加させるようにスイッチング素子であるトランジスタを制御する。即ち、図2に示すように、トランジスタTr1とTr4をオンとし、u相からv相へ流れる電流を増加させる方向に電源電圧6を印加する。このときの電流経路を太線の矢印で記す。また、この場合、電源6がバッテリの場合には放電することになる。
【0025】逆に、電流センサ2aの検出値が電流指令1の値よりも大きい場合には、u相からv相へ流れる電流を減少させるように制御する。即ち、図3に示すように、トランジスタTr2とTr3をオンとし、u相からv相へ流れる電流を減少させる方向に電源電圧6を印加する。このときの電流の経路を太線の矢印で記す。
【0026】この場合、モータ5のインピーダンスZにインダクタンス成分があるので、u相からv相へ電流を流す向きとは逆方向に電圧を印加しても、電流は減少に転じるだけで、すぐには逆流しない。つまり、オンしたトランジスタTr2とTr3に電流が流れることはなく、フリーホイルダイオードD2およびD3を通して電流が流れる。なお、この図2と図3のスイッチングパターンを繰り返してモータ電流を電流指令1に追従させるため、電流が逆流することはない。
【0027】図3のスイッチングパターンでは、u相からv相へ流れる電流を減少させるとともに、電源6に回生電流が流れ込み、電源6がバッテリの場合には充電されることになる。
【0028】つまり、満充電時以外のときには、この図3のモード(スイッチングパターン)で電流を減少させれば、電源(バッテリ)6は充電されるので、エネルギ効率がよい。
【0029】しかし、満充電時には、電源6に流れ込む回生電流が充電に作用せず、電源6を温度上昇させるだけなので、電源6へ回生電流を極力流したくはない。そこで、領域■において満充電に近づいた場合に、電流を減少させたいときは、図4に示すように、トランジスタTr6のみをオンさせることにより、モータのu相とw相間で電流を還流させるためのループを形成する。このときの電流経路を太線の矢印で記す。なお、電源(バッテリ)6が満充電に近づいたか否かは、例えば、電源(バッテリ)6の電圧を測定するなど、従来より知られている方法にて行うものとする。
【0030】この電気角の領域■では、図6に示すように、Vu<0かつVu<Vwであるので、トランジスタTr6のみをオンさせると、常に図4に示した電流方向にw相電流Iwを流そうとする。
【0031】また、三相の星型結線されたモータでは以下の式が成り立つ。
Iu+Iv+Iw=0この式を変形させると以下のようになる。
【0032】−Iv=Iu−(−Iw)
つまり、還流電流(−Iw)を流すことにより、ダイオードD3を通して電源6に回生する電流(−Iv)は減少することになる。
【0033】よって、電源6への回生効率が低下し、回生電力はモータ内で消費されることになる。但し、還流電流(−Iw)の絶対値が大きくなり、対称三相電流Iu、Iv、Iwの位相が本来の位相より大きくずれると、脱調し、制動トルクが得られなくなる。そのため、還流電流(−Iw)の電流指令Iwcは、電流Iuの電流指令Iucによって、以下のように制限しておく必要がある。
【0034】Iwc=−k×Iuc但し、kは0<k<1を満たす定数である。また、領域■における満充電時のトランジスタTr6の制御は、以下の式に従う。
【0035】
Iw≦Iwcの場合 トランジスタTr6はオフIw>Iwcの場合 トランジスタTr6はオンつまり、満充電時には、図2と図4のスイッチングパターンを繰り返してモータ電流を電流指令1に追従させることになる。
【0036】以上のように、本実施の形態におけるモータの駆動制御装置は、複雑な機構を追加することなく、簡便な構成をもって電気動力装置付き車輌の制御装置を安価に実現するものである。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、過充電の場合には、スイッチングパターンを制御してモータ内で回生電力を消費させるようにすることにより、複雑な機構を追加することなく、簡便な構成をもって過充電の防止を実現できるようにした過充電防止機能を持つ安価な電気動力装置付き車輌の制御装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成13年11月28日(2001.11.28)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2003−164009(P2003−164009A)
【公開日】 平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願番号】 特願2001−361813(P2001−361813)