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【発明の名称】 動力分散方式列車におけるノッチ制御方法及びシステム
【発明者】 【氏名】上野 雅之
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】佐藤 賢司
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】河合 竜太
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】古屋 政嗣
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】福島 隆文
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【要約】 【課題】動力分散方式列車において電力消費量が低減するような適切なノッチ制御を実現する。

【解決手段】例えば230km/hにおいて「等速走行」する場合、編成全体の必要な引張力が7.5トン程度であるため、従来であれば全12車両について6ノッチ程度を選択使用していた。なお、230km/hの走行速度の場合の6ノッチでの引張力は1両あたり0.71トンである。そして、その時の効率は87.1%である。一方、最適ノッチ制御の場合には、12両ある動力車のうち5両のみを例えば9ノッチで走行させ、残り7両を休止する。230km/hの走行速度の場合の9ノッチでの引張力は1両あたり1.5トンである。したがって、5両のみ運転しても5両×1.5トン=7.5トンとなる。このようにした場合の効率は、89.5%(9ノッチで230km/hの場合)に向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】動力分散方式列車における複数の動力車の一部のみを運転すると共に、その運転する動力車については電力消費量が相対的に高効率のノッチを選択することによって、編成全体として要求される動力を実現するよう制御することを特徴とする動力分散方式列車におけるノッチ制御方法。
【請求項2】動力分散方式列車における複数の動力車にそれぞれ設けられた動力車単位制御装置と、編成内に設けられ前記複数の動力車単位制御装置それぞれに運転状態を指示する中央制御装置とを備え、前記中央制御装置は、前記複数の動力車の一部のみを運転すると共に、その運転する動力車については電力消費量が相対的に高効率のノッチを選択することによって編成全体として要求される動力を実現するよう、前記複数の動力車単位制御装置それぞれに運転状態を指示するノッチ制御を実行することを特徴とする動力分散方式列車におけるノッチ制御システム。
【請求項3】請求項2に記載のノッチ制御システムにおいて、前記中央制御装置は、編成車両数と要求される走行速度に対応して、電力消費量が相対的に小さくなる運転車両数及びノッチが定められた制御マップを記憶しており、その制御マップに基づいて前記ノッチ制御を実行することを特徴とする動力分散方式列車におけるノッチ制御システム。
【請求項4】請求項2に記載のノッチ制御システムにおいて、さらに、前記全動力車を同じノッチで運転することで所望の走行速度を実現する際に選択すべきノッチ及び編成車両数を指示する上位制御装置を備え、前記中央制御装置は、編成車両数と前記全動力車を同じノッチで運転する場合のノッチに対応して、電力消費量が相対的に小さくなる運転車両数及びノッチが定められた制御マップか、又は編成車両数と前記全動力車を同じノッチで運転する場合のノッチに基づいて電力消費量が相対的に小さくなる運転車両数及びノッチを得るための演算式の少なくともいずれかを記憶しており、前記上位制御装置からノッチ及び編成車両数を指示された場合、前記制御マップ又は前記演算式を用いて前記ノッチ制御を実行することを特徴とする動力分散方式列車におけるノッチ制御システム。
【請求項5】請求項2〜4のいずれかに記載のノッチ制御システムにおいて、前記中央制御装置は、勾配やトンネルの有無等の走行する軌道に関する情報を記憶しており、その軌道に関する情報を加味して前記ノッチ制御を実行することを特徴とする動力分散方式列車におけるノッチ制御システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力分散方式列車において電力消費量が低減する適切なノッチ制御を実行するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】鉄道車両における動力方式には、例えば日本の新幹線に代表されるような動力分散方式と例えばフランスのTGVのような動力集中方式がある。動力分散方式の新幹線は編成内の各車両にモータが搭載されているのに対して、動力集中方式のTGVでは編成の両端車両のみに動力車があり、それらによって他の客車を牽引する方式である。
【0003】ここで、動力分散方式の新幹線における電力消費量の効率はノッチ毎に異なり、高速においては加速性能を優先して高いノッチ(例えば11〜13ノッチ)の方が高いように設計されているため、低いノッチ(例えば4〜6ノッチ)では減少する。この場合、高速での等速走行において均衡速度を保つためには効率の劣るノッチ(5ノッチなど)を使用することとなる。これは、動力部に用いられる誘導電動機の効率がすべりによって決まり、すべりがゼロに近づくと効率は低下することに起因する。つまり、一般に高速で低出力運転を行うとすべりが小さく効率が悪くなる。高速で均衡速度を保つには、編成全体として走行抵抗と均衡する出力があればいいため、全ての電動機を駆動した場合は個々の電動機はすべりが小さくなり、効率が劣る領域での運転を余儀なくされるからである。
【0004】そこで本発明は、動力分散方式列車において電力消費量が低減するような適切なノッチ制御を実現することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的を達成するためになされた請求項1記載のノッチ制御方法は、動力分散方式列車における複数の動力車の一部のみを運転すると共に、その運転する動力車については電力消費量が相対的に高効率のノッチを選択することによって、編成全体として要求される動力を実現するよう制御する。そのため、例えば各車両が動力車である10両編成列車にて高速の等速運転を行う際、従来は10両全てを相対的に低ノッチで運転するのに対して、本発明方法によれば、例えば半分は運転休止させ残り半分の5両のみを相対的に高ノッチで運転することで対応することも可能となり、電力消費量を低減することができる。もちろん編成数や走行速度によって異なるが、運転を休止する動力車を作ることで、運転する動力車については相対的に高ノッチを選択することが可能となるため、電力消費量の低減効果は得られる。
【0006】一方、請求項2に示す発明は、請求項1に示したノッチ制御方法を実現するためのシステムとしての一例であり、このシステムでは、複数の動力車に動力車単位制御装置がそれぞれ設けられ、編成内に設けられた中央制御装置がそれら複数の動力車単位制御装置それぞれに運転状態を指示する。ここで中央制御装置は請求項1に示すようなノッチ制御を実行する。この制御システムにおいても上述と同様の効果を発揮できる。
【0007】このようなノッチ制御は、例えば請求項3に示すように、編成車両数と要求される走行速度に対応して、電力消費量が最も小さくなる運転車両数及びノッチが定められた制御マップを記憶しておき、その制御マップに基づいて実行することが考えられる。
【0008】また、請求項4に示すようにすれば、従来の制御システムの一部改変で対応できる。つまり、上位制御装置は、全動力車を同じノッチで運転することで所望の走行速度を実現する際に選択すべきノッチ及び編成車両数を指示する。このままでは従来通りになるが、本発明では、中央制御装置が、編成車両数と全動力車を同じノッチで運転する場合のノッチに対応して、電力消費量が最も小さくなる運転車両数及びノッチが定められた制御マップか、又は編成車両数と全動力車を同じノッチで運転する場合のノッチに基づいて電力消費量が相対的に小さくなる運転車両数及びノッチを得るための演算式の少なくともいずれかを記憶しておく。そして、上位制御装置からノッチ及び編成車両数を指示された中央制御装置が、制御マップ又は前記演算式を用いてノッチ制御を実行するのである。
【0009】また、請求項5に示すように、中央制御装置は、勾配やトンネルの有無等の走行する軌道に関する情報を記憶しておき、その軌道に関する情報を加味してノッチ制御を実行するようにしてもよい。このようにすれば、無駄なノッチアップやブレーキがなくなり、時分短縮や効率向上が期待できる。また、自動列車運転(ATO)システム又は等速運転装置と組合せた場合は、運転時分の精度と効率の向上が期待できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明が適用された実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0011】図1は、本実施例の制御システムの概略構成を示す説明図である。本制御システムは、例えば12両編成列車の先頭である1号車に設けられた制御伝送中央装置11と、各号車に設けられた制御伝送端末装置12及びコンバータ・インバータ制御装置13とを備えている。
【0012】制御伝送中央装置11は特許請求の範囲における「中央制御装置」に相当するものであり、ATC(自動列車制御)車上装置21及び運転台各機器22が接続されている。一方、制御伝送端末装置12及びコンバータ・インバータ制御装置13は特許請求の範囲における「動力車単位制御装置」に相当するものである。コンバータ・インバータ制御装置13は、図2に示すように主変換装置を構成するコンバータ14及びインバータ15に接続されており、架線17からパンタグラフ18、主変圧器19、コンバータ14及びインバータ15を介して主電動機16へ供給される電力を制御している。また、各号車の制御伝送端末装置12同士は制御伝送線の引き通しによって相互に通信可能に接続されている。
【0013】そして、制御伝送中央装置11は、マイコンや信号入出力部等で構成されており、ATC車上装置21からは走行速度等、運転台各機器22からはノッチ情報等を入力し、それら入力された情報を基にして、どの号車の主電動機16を運転休止し、また運転する号車についてはどのノッチを選択するかを決定する。この決定した制御指令の伝送データを作成し、1号車の制御伝送端末装置12に出力する。上述のように各号車の制御伝送端末装置12同士は相互に通信可能に接続されているため、この制御伝送中央装置11からの制御指令伝送データは、各号車の制御伝送端末装置12にそれぞれ送られる。各号車の制御伝送端末装置12では、自身への制御指令に基づき、運転休止指令であれば主電動機16への電力供給を停止し、ノッチが指令されている場合はそのノッチに従った電力供給制御を行う。
【0014】この、制御伝送中央装置11による「走行速度やノッチ情報に基づきどの号車の主電動機16を運転休止し、また運転する号車についてはどのノッチを選択するかを決定する」処理を、ここでは最適ノッチ制御を呼ぶこととし、その最適ノッチ制御について説明する。
【0015】まず、従来制御と最適ノッチ制御の比較をする。図3(a)では、いわゆる700系新幹線車両におけるノッチ毎の速度効率として、5〜13N(ノッチ)のそれぞれについて230、255,270km/hの場合の速度効率を示している。ここからも分かるように、230、255,270km/hといった相対的に高速度域においては、概略的に低ノッチほど速度効率が低く、高ノッチほど速度効率が高い。但し、細かく見ると12,13ノッチよりも9〜11ノッチの場合の方がこれらの速度域での効率は高い。
【0016】ここで、例えば230km/hにおいて「等速走行」する場合、編成全体の必要な引張力が7.5トン程度であるため、従来であれば全12車両について6ノッチ程度を選択使用していた。なお、ノッチと速度及び引張力の対応関係を示す図3(c)に示すように、230km/hの走行速度の場合の6ノッチでの引張力は1両あたり0.71トンである。そして、その時の速度効率は、図3(a)に示すように、87.1%(6ノッチで230km/hの場合)である。
【0017】一方、最適ノッチ制御の場合には、12両ある動力車のうち5両のみを例えば9ノッチで走行させ、残り7両を休止する(図3(b)参照)。図3(c)に示すように、230km/hの走行速度の場合の9ノッチでの引張力は1両あたり1.5トンである。したがって、5両のみ運転しても5両×1.5トン=7.5トンとなる。このようにした場合の速度効率は、図3(a)に示すように、89.5%(9ノッチで230km/hの場合)に向上する。
【0018】本実施例では、このような最適ノッチ制御を行うため、編成車両数と従来制御の場合のノッチに対応して、運転車両数及び最適ノッチを予め実験あるいは計算によって求めておく。そして、その対応関係を示す制御マップを制御伝送中央装置11内部のメモリに予め記憶しておく。そして、制御伝送中央装置11は、ATC車上装置21や運転台各機器22から入力した編成車両数、走行速度、(従来制御の場合であれば選択する)ノッチ情報等に基づき、上記制御マップを参照して、運転車両数及び最適ノッチを決定する。
【0019】一方、決定された運転車両数に基づいてどの号車の主電動機16を運転し、どの号車の主電動機16を運転休止にするかは、例えば予め設定されたパターンに従って行う。例えばここで例示している12両編成中の5両を運転する場合、図4(b)に示すように、先頭から5両分、つまり1〜5号車を11ノッチで運転し、6〜12号車を休止することが考えられる。また、図4(c)に示すように、先頭から1両置きに5両分、つまり1、3,5,7,9号車を11ノッチで運転し、それ以外を休止しても良い。また、図4(d)に示すように、先頭から3両分、つまり1〜3号車と、後尾の2両分、つまり11,12号車を運転し、それ以外を休止しても良い。もちろん、これ以外にも適宜設定したパターンに従って運転/休止する号車の決定をすればよい。但し、雨天時は、先頭車両の車輪が滑り易い(空転し易い)ので、先頭車両をなるべく休ませる方が好ましいと考えられる。
【0020】このような構成を持ち、上述の動作を行う本実施例の制御システムによれば、230km/hの等速運転を、従来は12両全て6ノッチで実現していたのに対して本実施例の場合は7両は休止させ5両のみを9ノッチで運転しているため、速度効率が6ノッチの場合の87.1%から9ノッチの場合の89.5%に向上する。そのため、電力消費量を低減することができる。
【0021】また、制御伝送中央装置11は、ATC車上装置21や運転台各機器22から編成車両数と従来制御の場合であれば選択するノッチ情報を入力し、制御マップに基づいて運転車両数及び最適ノッチを決定した。このようにすると、従来の制御システムの一部改変で対応できる。
【0022】[その他]
(a)上記実施例では、新幹線の例を挙げて説明した。しかし、在来線のように最高速度が110km/h、120km/hとなっているものであっても、やはり最高速度に合わせて最高速度付近では高ノッチでは効率が良いように設計されている。そのため、動力分散方式の編成列車であれば、どのようなタイプのものであっても同様に適用できる。
【0023】(b)上記実施例では230km/hの等速運転の場合に、5両のみを9ノッチで運転する例を挙げた。これは230km/hにおける最高効率が9ノッチの89.5%であったためであるが、例えば10ノッチの場合も89.3%であるため、10ノッチを選択しても十分に従来に比較して電力消費量を低減することができる。
【0024】(c)上記実施例では、編成車両数と従来制御の場合であれば選択するノッチ情報に基づき、運転車両数及び最適ノッチを決定した。しかし、編成車両数と実現したい等速走行速度を入力し、それらに基づいて運転車両数及び最適ノッチを決定してもよい。この場合は、編成車両数と実現したい等速走行速度に対応する運転車両数及び最適ノッチの関係を予め定めておき、制御マップとして準備しておけばよい。また、上記実施例のような制御マップとして準備しておくのではなく、編成車両数と従来制御の場合であれば選択するノッチ情報に基づいて電力消費量が相対的に小さくなる運転車両数及びノッチを得るための演算式を記憶しておき、その演算式を用いて運転車両数及び最適ノッチを決定してもよい。
【0025】(d)また、制御伝送中央装置11は、勾配やトンネルの有無等の走行する軌道に関する情報を記憶しておき、その軌道に関する情報を加味して最適ノッチ制御を実行するようにしてもよい。例えば、いわゆる新ATCは、正確な速度及び地点情報を持っているので、速度及び地点を中央制御装置に送ることができる。一方、中央制御装置では、線路データ(勾配、トンネル等)を持っているので、それを用いて無駄なノッチアップやブレーキのない引張力を演算し、それに対応した、ノッチを選び、制御マップ又は演算式を用いて最適なノッチ及び駆動車両を決定することができる。これは、ATO(自動列車運転)又は等速運転装置と組合せることによって、運転時分と精度と効率の向上が期待できることを意味する。
【出願人】 【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1番4号
【出願日】 平成13年11月27日(2001.11.27)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉
【公開番号】 特開2003−164004(P2003−164004A)
【公開日】 平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願番号】 特願2001−360819(P2001−360819)