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【発明の名称】 電動車両
【発明者】 【氏名】脇谷 勉
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】電動モータが過負荷状態になった場合に、過負荷状態を解消しつつ電動モータを運転できること。

【解決手段】電動車両は、走行輪等の走行部を駆動する電動モータ25L,25Rと、この電動モータをモータ駆動部52L,52Rを介して制御する制御部44とを備える。制御部は、電動モータの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発する停止ステッップと、この通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部に対して電動モータへの通電指令を発する再開ステップとを備える。制御部は、停止ステッップ並びに再開ステップを反復させるべく制御することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行輪等の走行部を駆動する電動モータと、この電動モータをモータ駆動部を介して制御する制御部と、を備える電動車両において、前記制御部は、前記電動モータの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、前記モータ駆動部に対して前記電動モータへの通電停止指令を発する停止ステッップと、この通電停止指令を発した後に前記電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、前記モータ駆動部に対して前記電動モータへの通電指令を発する再開ステップとを備え、これらの停止ステッップ並びに再開ステップを反復させるべく制御するように構成したことを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は走行輪等の走行部を駆動する電動モータを備えた電動車両に関する。
【0002】
【従来の技術】電動車両は、制御部にてモータ駆動部を介して電動モータを回転制御することにより、走行部の走行速度を制御するものであり、電動モータの過負荷防止対策を施す場合が多い。このような電動車両としては、例えば特開平9−284991号公報「自走式走行装置のモーター保護装置」(以下、「従来の技術■」と言う)や実開平5−70101号公報「無人搬送台車の過負荷防止装置」(以下、「従来の技術■」と言う)が知られている。
【0003】上記従来の技術■は、同公報の図4によれば、モーター電流検出回路Ca(符号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)にて検出された走行駆動モーターMの電流が設定値以上になると警報ランプ23や警報ブザー24で警報を発し、その状態が一定時間継続したときに走行駆動モーターMを停止させるというものである。
【0004】一方、上記従来の技術■は、同公報の図3によれば、走行指示部で設定された設定速度信号と走行速度検出器7,7で検出された走行用モータ3,3の走行速度検出信号とを比較し、短時間で走行速度検出信号が設定速度信号よりも大きくなった場合に、過負荷であると判断し、走行用モータ3,3を停止させるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術■によれば、過負荷時に走行駆動モーターM(電動モータに相当)を停止させることで、走行駆動モーターMや関連する電気部品を保護することができる。上記従来の技術■も同様である。ところで、特に上記従来の技術■,■のような作業用電動車両においては、電動モータが過負荷状態になっても完全に停止させずに、走行させた方が好ましい場合もある。作業用電動車両の走行状態を維持することで、作業性を高めることができるからである。
【0006】そこで本発明の目的は、電動モータが過負荷状態になった場合に、過負荷状態を解消しつつ電動モータを運転することができる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1は、走行輪等の走行部を駆動する電動モータと、この電動モータをモータ駆動部を介して制御する制御部と、を備える電動車両において、制御部が、電動モータの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発する停止ステッップと、この通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部に対して電動モータへの通電指令を発する再開ステップとを備え、これらの停止ステッップ並びに再開ステップを反復させるべく制御するように構成したことを特徴とする。
【0008】一般に、電動モータへの通電を停止したときに、電動モータのコイルのインダクタンスの影響により、電動モータの通電電流が0アンペアまで降下するのに若干の時間(1ミリ秒程度)がかかる。請求項1は、このような電動モータの特性を積極的に利用したものである。過負荷時にモータ駆動部へ通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部からの通電を再開させる。このように短いタイミングで、通電の停止と再開とを反復させる。電動モータの通電電流が上限しきい値から降下する途中で通電を再開させるので、過負荷後の電流変動を抑制することができる。この結果、電動モータの出力トルク変動を抑制することができる。従って、電動モータが過負荷状態になった場合に、過負荷状態を解消しつつ電動モータを運転することで、電動車両の走行状態を維持することができる。電動車両を作業用電動車両として採用した場合には、走行状態を維持することで、作業性を高めることができる。しかも、電動モータや関連する電気部品に過電流が流れないので、これらの電動モータや電気部品を過負荷から保護することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0010】図1は本発明に係る除雪機の平面図であり、電動車両としての除雪機10は、機体11にエンジン12を搭載し、機体11の前部に作業部としてのオーガ13及びブロア14を装備し、機体11の左右にクローラ15L,15Rを配置し、機体11の後部に操作盤16を配置した車両であり、作業者が操作盤16の後から連れ歩く歩行型作業機である。以下、要部を詳細に説明する。なお、操作盤16は図2で詳しく説明する。
【0011】エンジン12の出力の一部で、発電機17を回し、得た電力を操作盤16の下方に配置したバッテリ(図4の符号43参照)に供給すると共に、後述する左右の走行モータに供給する。エンジン12の出力の残部は、電磁クラッチ18及びベルト19を介して作業部としてのブロア14及びオーガ13の回転に充てる。オーガ13は地面に積もった雪を中央に集める作用をなし、この雪を受け取ったブロア14はシュータ21を介して雪を機体11の周囲の所望の位置へ投射する。22はオーガハウジングであり、オーガ13を囲うカバー部材である。
【0012】左のクローラ15Lは、駆動輪23Lと遊動輪24Lとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Lは左の走行モータ25Lで正逆転させる。右のクローラ15Rも、駆動輪23Rと遊動輪24Rとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Rは右の走行モータ25Rで正逆転させる。
【0013】従来の除雪機では1個のエンジン(ガソリンエンジン又はジーゼルエンジン)で作業部系(オーガ回転系)と走行系(クローラ駆動系)とを賄っていたが、本発明ではエンジン12で作業部系(オーガ回転系)を駆動し、電動モータ(走行モータ25L,25R)で走行系(クローラ駆動系)を駆動するようにしたことを特徴とする。細かな走行速度の制御、旋回制御及び前後進切替制御は電動モータが適当であり、一方、急激な負荷変動を受ける作業部系はパワーのある内燃機関が適当であるとの考えに基づいて、そのようにした。
【0014】図2は図1の2矢視図であり、操作盤16には、操作箱27の手前の側面にメインスイッチ28、エンジンチョーク29、クラッチ操作ボタン31などを備え、操作箱27の上面に、投雪方向調節レバー32、オーガハウジング姿勢調節レバー33、走行系に係る方向速度レバー34、作業部系に係るエンジンスロットルレバー35を備え、操作箱27の右にグリップ36R及び右旋回操作レバー37Rを備え、操作箱27の左にグリップ36L、左旋回操作レバー37L及び走行準備レバー38を備える。
【0015】左右旋回操作レバー37L,37Rはブレーキレバーに近似するが、後述するとおりに完全な制動効果は得られない。操作することで走行モータ25L,25Rの回転を落として機体をターンさせることに使用するため、ブレーキレバーと言わずに旋回操作レバーと呼ぶことにした。
【0016】メインスイッチ28はメインキーを差込み、回すことでエンジンを始動することのできる周知のスイッチである。エンジンチョーク29は引くことで混合気の濃度を高めることができる。投雪方向調節レバー32は、シュータ(図1の符号21)方向を変更するときに操作するレバーであり、オーガハウジング姿勢調節レバー33はオーガハウジング(図1の符号22)の姿勢を変更するときに操作するレバーである。その他の部材の作用は、図4で説明する。
【0017】図3は図2の3矢視図であり、左旋回操作レバー37Lを握ることにより、ポテンショメータ39Lのアーム39aの角度を想像線の位置まで回転することができる。ポテンショメータ39Lはアーム39aの回転位置に応じた電気情報を発する機器である。
【0018】また、走行準備レバー38はスイッチ手段42に作用する部材であり、スプリング41の引き作用により、図の状態(フリー状態)になればスイッチ手段42はオンになる。作業者の左手で走行準備レバー38を図時計回りに下げれば、スイッチ手段42はオフとなる。このように、走行準備レバー38が握られているか否かはスイッチ手段42で検出することができる。
【0019】図4は本発明に係る除雪機の制御系統図であり、操作盤に内蔵若しくは付設した制御部44内の機器及び情報伝達経路を示すが、概ね四角は機器、丸はドライバーを示す。そして、想像線枠で囲ったエンジン12、電磁クラッチ18、ブロア14及びオーガ13が作業部系45であり、その他は走行系となる。43はバッテリである。なお、制御部44内に破線で指令の流れを便宜上示したが、これはあくまでも参考的記載に過ぎない。
【0020】先ず、作業部系の作動を説明する。メインスイッチ28にキーを差込み、回してスタートポジションにすることにより、図示せぬセルモータの回転によりエンジン12を始動させる。エンジンスロットルレバー35は図示せぬスロットルワイヤでスロットルバルブ48に繋がっているので、エンジンスロットルレバー35を操作することでスロットルバルブ48の開度を制御することができる。これにより、エンジン12の回転数を制御することができる。
【0021】走行準備レバー38を握ると共に、クラッチ操作ボタン31を操作することにより、作業者の意志で電磁クラッチ18を接続し、ブロア14及びオーガ13を回すことができる。なお、走行準備レバー38をフリーにするかクラッチ操作ボタン31を操作するかの何れかにより、電磁クラッチ18を断状態にすることができる。
【0022】次に走行系の作動を説明をする。本発明の除雪機は、普通車両のパーキングブレーキに相当するブレーキとして、左右の電磁ブレーキ51L,51Rを備えており、これらの電磁ブレーキ51L,51Rは、駐車中は制御部44の制御により、ブレーキ状態にある。そこで、次の手順で電磁ブレーキ51L,51Rを開放する。
【0023】メインスイッチ28がスタートポジションにあること及び走行準備レバー38が握られていることの2つの条件が満たされ、方向速度レバー34を前進又は後進(図5で説明する。)に切換えると、電磁ブレーキ51L,51Rは開放(非ブレーキ)状態になる。
【0024】図5は本発明で採用した方向速度レバーの作用説明図であり、方向速度レバー34は、作業者の手で、矢印■,■の如く往復させることができ、「中立範囲」より「前進」側へ倒せば車両を前進させることができ、且つ「前進」領域においては、Lfが低速前進、Hfが高速前進となるように、速度制御も行える。同様に、「中立範囲」より「後進」側へ倒せば車両を後進させることができ、且つ「後進」領域においては、Lrが低速後進、Hrが高速後進となるように、速度制御も行える。この例では、図の左端に付記した通りに、後進の最高速が0V(ボルト)、前進の最高速が5V、中立範囲が2.3V〜2.7Vになるようにポテンショメータでポジションに応じた電圧を発生させる。1つのレバーで前後の方向と高低速の速度制御とを設定できるので、方向速度レバー34と名付けた。
【0025】図4に戻って、方向速度レバー34の位置情報をポテンショメータ49から得た制御部44は、左右のモータドライバー(モータ駆動部)52L,52Rを介して左右の走行モータ25L,25Rを回し、走行モータ25L,25Rの回転速度を回転センサ53L,53Rで検出して、その信号に基づいて回転速度を所定値になるようにフィードバック制御を実行する。この結果、左右の駆動輪23L,23Rが所望の方向に、所定の速度で回り、走行状態となる。
【0026】走行中の制動は次の手順で行う。本発明ではモータドライバー52L,52Rに回生ブレーキ回路54L,54Rを含む。
【0027】一般論としてバッテリから電動モータへ電気エネルギーを供給することで、電動モータは回転する。一方、発電機は回転を電気エネルギーに変換する手段である。そこで、本発明では電気的切換えにより、走行モータ25L,25Rを発電機に変え、発電させるようにした。発電電圧がバッテリ電圧より高ければ、電気エネルギーはバッテリ43へ蓄えることができる。これが回生ブレーキの作動原理である。
【0028】左旋回操作レバー37Lの握りの程度をポテンショメータ39Lで検出し、この検出信号に応じて制御部44は左の回生ブレーキ回路54Lを作動させて、左の走行モータ25Lの速度を下げる。右旋回操作レバー37Rの握りの程度をポテンショメータ39Rで検出し、この検出信号に応じて制御部44は右の回生ブレーキ回路54Rを作動させて、右の走行モータ25Rの速度を下げる。すなわち、左旋回操作レバー37Lを握ることで左旋回させることができ、右旋回操作レバー37Rを握ることで右旋回させることができる。
【0029】そして、次の何れかにより走行を停止することができる。方向速度レバー34を中立位置に戻す。走行準備レバー38を離す。メインスイッチ28をオフ位置に戻す。
【0030】停止後にメインスイッチ28をオフ位置に戻せば、電磁ブレーキ51L,51Rがブレーキ状態となり、パーキングブレーキを掛けたことと同じになる。
【0031】図6は本発明に係る除雪機の回路図であり、特に電動モータ25L,25R、メインスイッチ28、バッテリ43、制御部44及びモータ駆動部52L,52Rの関係について示したものである。
【0032】メインスイッチ28は、差込んだキーを回すことで可動接点28aを「オフ位置OFF」、「オン位置ON」、「スタート位置ST」に切換え操作するイグニッションスイッチである。このメインスイッチ28は、可動接点28aがオン位置ONで接触するオン用固定接点28bと、可動接点28aがスタート位置STで接触するスタート用固定接点28cとを備える。メインスイッチ28をスタート位置STに切換えたときに、エンジン12(図4参照)を始動させることができる。
【0033】本発明は、走行輪等の走行部を駆動する電動モータ25L,25Rを、モータ駆動部52L,52Rを介して制御部44にて制御するようにした電動車両における、電源装置80に特徴がある。
【0034】左のモータ駆動部52Lは、左の電動モータ25Lを正転駆動並びに逆転駆動するモータ駆動回路60と、モータ駆動回路60の各ゲートを制御するゲート駆動回路71と、電動モータ25Lへ供給する電力の電圧を安定化させるための2つのコンデンサ72,72と、電動モータ25Lの通電電流を検出する電流検出部73と、モータ駆動回路60の温度を検出する温度検出部74とを備える。
【0035】モータ駆動回路60は、4つの電界効果トランジスタ(以下「FET」と言う。)61〜64と、各FET61〜64のドレイン・ソース間に接続したダイオード65〜68と、を組合せた回路構成である。第1・第2のFET61,62間と第3・第4のFET63,64間とに電動モータ25Lを接続し、第1・第3のFET61,63をメインスイッチ28のオン用固定接点28bに接続し、第2・第4のFET62,64をアースする。
【0036】ゲート駆動回路71は、メインスイッチ28のオン用固定接点28bを介してバッテリ43に接続することで、給電を受けるとともに、制御部44の制御信号を受けて4つのFET61〜64をオン・オフ駆動する。なお、上記右のモータ駆動部52Rの構成並びにその配線についても、左のモータ駆動部52Lと同じであり、詳細な説明を省略する。
【0037】電動車両用電源装置80は、電源としてのバッテリ43、メインスイッチ28、モータ駆動部52L,52Rの経路で電動モータ25L,25Rへ電力を供給する給電回路81に、コンデンサ72,72を接続し、給電回路81のうちメインスイッチ28のオン用固定接点28bとコンデンサ72,72との間を、予備充電回路82並びに本充電回路83の並列回路としたものである。
【0038】詳しくは、給電回路81のうちの、オン用固定接点28bとモータ駆動回路60との間の途中のP1点に、2つのコンデンサ72,72の各一端を接続するとともに、コンデンサ72,72の各他端をアースする。
【0039】予備充電回路82並びに本充電回路83は、オン用固定接点28bとP1点との間を互いに並列に結ぶ並列回路である。予備充電回路82は、充電用抵抗84並びに逆流防止用ダイオード85だけが介在し、スイッチが介在しない回路である。一方、本充電回路83は、常閉接点86b並びに逆流防止用ダイオード87だけが介在した回路である。この常閉接点86bは本充電用リレー86の接点である。本充電用リレー86は、制御部44に制御されて励磁するコイル86aと、通常ではオンでありコイル86aが励磁したときにオフ作動する常閉接点86bとからなる。
【0040】制御部44は、オン用固定接点28bに接続することで、メインスイッチ28のオン操作信号を受けて左右のモータ駆動部52L,52Rのゲート駆動回路71や本充電用リレー86を制御する。この制御部44は、メインスイッチ28をオン操作したときから予備充電時間が経過するまで、常閉接点86bがオン作動せぬように本充電用リレー86を制御するように構成したことを特徴とする。
【0041】次に、上記構成の電動車両用電源装置80の作用を、図6に基づき説明する。メインスイッチ28をオン操作すると、可動接点28aはオン用固定接点28bに接触する。この結果、左右のモータ駆動部52L,52Rのゲート駆動回路71は給電状態になる。
【0042】同時に、制御部44はメインスイッチ28のオン操作信号を受け、メインスイッチ28をオン操作したときから予備充電時間が経過するまで、本充電用リレー86のコイル86aを励磁させる。コイル86aが励磁しているときには、常閉接点86bはオン状態からオフ作動に切り換る。この結果、本充電回路83は遮断される。このため、メインスイッチ28をオン操作したときからコンデンサ72,72が一定電圧に充電されるまでの予備充電時間では、バッテリ43→メインスイッチ28→予備充電回路82の経路でコンデンサ72,72に徐々に充電される。この予備充電の時定数は、充電用抵抗84の抵抗値とコンデンサ72,72の容量とによって決定される。
【0043】予備充電時間は、制御部44に内蔵されたタイマ(又はタイマ機能)によってカウントされる時間であり、例えば1secである。制御部44は、予備充電時間が経過した時点で、本充電用リレー86のコイル86aを非励磁にする。コイル86aが非励磁になるので、常閉接点86bはオフ状態からオン作動に切り換る。この結果、本充電回路83は通電可能になる。このため、バッテリ43→メインスイッチ28→本充電回路83の経路でコンデンサ72,72に急速に充電される。急速に充電できる理由は、本充電回路83に充電用抵抗を備えていないからである。なお、予備充電回路82を介しても充電可能である。
【0044】制御部44からゲート駆動回路71にパルス幅変調信号(PWM信号)を発することで、バッテリ43やコンデンサ72,72からモータ駆動部52L,52Rを介して電動モータ25L,25Rへ電力を供給して、正転又は逆転させることができる。さらには、電動モータ25L,25Rや他の何等かの原因によって発生するノイズや、電源電圧の一時的な変化を、コンデンサ72,72によって吸収することで、電動モータ25L,25Rへ供給する電力の電圧を安定化させることができる。
【0045】ここで、上記説明を整理する。メインスイッチ28をオン操作したときからコンデンサ72,72が一定電圧になるまでの予備充電時間においては、コンデンサ72,72を充電するために流れる突入電流が極めて大きい。
【0046】これに対して本発明は、予備充電回路82にスイッチが介在していないので、突入電流に対するスイッチの耐久性を考慮する必要がない。さらには、本充電回路83に常閉接点86bを介在させ、メインスイッチ28をオン操作したときから予備充電時間が経過するまで、常閉接点86bがオン作動せぬように本充電用リレー86を制御部44で制御するので、常閉接点86bに突入電流が流れることはない。このため、突入電流に対する常閉接点86bの耐久性を考慮する必要はない。
【0047】さらに本発明の制御部44は、(1)電流検出部73で検出した電動モータ25L又は25Rの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、モータ駆動部52L,52Rに対して電動モータ25L,25Rへの通電停止指令を発する停止ステッップと、(2)この通電停止指令を発した後に電動モータ25L又は25Rの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部52L,52Rに対して電動モータ25L,25Rへの通電指令を発する再開ステップとを備え、(3)これらの停止ステッップ並びに再開ステップを反復させるべく制御するように構成するとともに、(4)温度検出部74で検出したモータ駆動回路60の温度が温度上限しきい値を越えたとの温度異常高信号を検出したときに、モータ駆動部52L,52Rに対して電動モータ25L,25Rを完全に停止させるように停止指令を発する完全停止ステッップを備えたことを特徴とする。
【0048】より詳しくは、制御部44は次の(1)〜(4)の機能を有する。すなわち、(1)左のモータ駆動部52Lの電流検出部73で検出した通電電流、又は/及び、右のモータ駆動部52Rの電流検出部73で検出した通電電流が上限しきい値を越えたときに、停止ステッップで通電停止指令を発する。(2)その後に、左のモータ駆動部52Lの電流検出部73で検出した通電電流、又は/及び、右のモータ駆動部52Rの電流検出部73で検出した通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、再開ステップで通電指令を発する。(3)これらの停止ステッップ並びに再開ステップの反復回数(再実行回数)が一定の基準実行回数に達したときに、完全停止ステッップで停止指令を発する。(4)さらには、左のモータ駆動部52Lの温度検出部74で検出した温度、又は/及び、右のモータ駆動部52Rの温度検出部74で検出した温度が温度上限しきい値を越えたときに、完全停止ステッップで停止指令を発する。
【0049】図7は本発明に係る制御部による電動モータの電流異常高検出の概念を説明する説明図であり、横軸を時間Tc(ミリ秒)とし縦軸を電動モータの通電電流Ir(アンペア)として表す。ここで、電動モータの通電電流Irのうち、過負荷時の上限しきい値をIsとする。上限しきい値Isについては、電動モータに過負荷が作用したときに、電動モータの耐久性を維持できる上限電流が判断可能な値であればよい。
【0050】電動モータに過負荷が作用することで、電動モータの通電電流Irが上昇して上限しきい値Isを越えたとき(P1点に達したとき)に、制御部は通電停止指令を発して電動モータへの通電を停止させる。この結果、通電電流Irは0アンペアまで降下し得る。通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流Irが0アンペアになるまでの時間(電流下降時間)をTrとする。すなわち、電流下降時間TrはP2点からP3点になるまでの時間である。
【0051】一般に、電動モータへの通電を停止したときに、電動モータのコイルのインダクタンスの影響により、電動モータの通電電流Irが0アンペアまで降下するのに若干の時間(1ミリ秒程度)がかかる。この時間が電流下降時間Trである。本発明は、このような電動モータの特性を積極的に利用したものである。
【0052】すなわち、電流下降時間Trが経過するまでの間Ts(途中の時間Ts)に、制御部は通電指令を発して、電動モータへの通電を再開させる。途中の時間Tsは電流下降時間Trよりも小さい。電動モータの過負荷状態が続いているときには、通電電流Irは降下途中で再び上昇して上限しきい値Isを越える。このときに、制御部は再び通電停止指令を発して電動モータへの通電を停止させる。電動モータの過負荷状態が続いているときには、制御部はこの通電停止指令と通電指令とを反復する。
【0053】以上の説明から明らかなように、過負荷時に、通電停止指令を発した後に電流下降時間Trが経過するまでの間Tsに、通電指令を発して通電を再開させる。このように短いタイミングで、通電の停止と再開とを反復させる。電動モータの通電電流Irが上限しきい値Isから降下する途中で通電を再開させるので、過負荷後の電流変動を抑制することができる。この結果、電動モータの出力トルク変動を抑制することができる。従って、電動モータが過負荷状態になった場合に、過負荷状態を解消しつつ電動モータを運転することで、電動車両の走行状態を維持することができる。電動車両を作業用電動車両として採用した場合には、走行状態を維持することで、作業性を高めることができる。しかも、電動モータや関連する電気部品に過電流が流れないので、これらの電動モータや電気部品を過負荷から保護することができる。
【0054】次に、上記図6に示す制御部44をマイクロコンピュータとした場合に、電動モータの通電電流が異常高であると判定するときの制御フローについて、図8に基づき説明する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。
【0055】図8は本発明に係る制御部の制御フローチャートである。なお、この制御はメインスイッチ28(図6参照)をオン位置ONに切換えたという条件下で実行する。
ST01;初期設定をする。例えば再実行回数Rtをリセットする(Rt=0)。
ST02;モータ駆動部に制御用のPWM信号を発して、電動モータの回転制御を実行する。
【0056】ST03;電動モータの通電電流Irを読み込む。
ST04;電動モータの通電電流Irが過負荷時の上限しきい値をIsを越えたか否かを調べ、YESであれば電流異常高信号を検出したとしてST05に進み、NOであればST10に進む。
ST05;モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発して、過負荷状態を回避する。すなわち、PWM信号のデューティ率を零にする。ここで「デューティ率」とは、周期的パルス列の任意のパルスのパルス幅とパルス繰り返し周期との比のことであり、パルス専有率(pulse duty factor)とも言う。
【0057】ST06;制御部に内蔵したタイマをリセット(Tc=0)してスタートさせる。
ST07;タイマをスタートしてからのカウント時間(経過時間)Tcが所定の基準時間Tsに達したか否かを調べ、YESであればST08に進み、NOであればST07を繰り返す。この基準時間Tsは、上記図7で説明したように、通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの時間である。
ST08;モータ駆動部に対して電動モータへの通電指令を発する。すなわち、ST05で通電停止指令を発する直前におけるデューティ率のPWM信号を発する。
【0058】ST09;通電停止指令及び通電指令を1回ずつ繰り返したとして、再実行回数Rtを1回加算する。
ST10;モータ駆動回路の温度Tem1を読み込む。モータ駆動回路の温度は、温度検出部74(図6参照)で検出した温度である。
ST11;モータ駆動回路の温度Tem1が予め設定された温度上限しき値Tem2に達したか否かを調べ、YESであれば温度異常高信号を検出したとしてST13に進み、NOであればST12に進む。
【0059】ST12;再実行回数Rtが予め設定された基準実行回数Rsに達したか否かを調べ、YESであれば過負荷が解消されない時間が長いとしてST13に進み、NOであればST03に戻る。
ST13;電動モータの過負荷状態が解消されないか又はモータ駆動回路の温度異常高であるとして、モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発して、電動モータを完全に停止させる。
ST14;作業部を完全に停止させて、スタートにリターンさせる。
【0060】以上の説明から明らかなように、上記ST03〜ST05は、電流検出部で検出した電動モータの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発する停止ステッップである。
【0061】上記ST06〜ST08は、通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部に対して電動モータへの通電指令を発する再開ステップである。
【0062】上記ST09,ST12は、停止ステッップ並びに再開ステップを反復させるべく制御する反復ステップである。
【0063】上記ST09〜ST13は、(1)温度検出部で検出したモータ駆動回路の温度が温度上限しきい値を越えたとの温度異常高信号を検出したとき、又は、(2)停止ステッップ並びに再開ステップの反復回数(再実行回数Rt)が一定の基準実行回数Rsに達したときに、モータ駆動部に対して電動モータを完全に停止させるように停止指令を発する完全停止ステッップである。
【0064】なお、本発明を適用する作業機は除雪機10に限るものではなく、図9に示す芝刈機など種類は任意である。図9は本発明に係る電動車両の別実施例図であり、電動車両としての芝刈機100は、ハウジング101にエンジン102を搭載し、このエンジン102で駆動する回転軸103に作業部としてのカッタ104を取付ける。エンジン102の出力の一部で、ベルト105を介して発電機106を回し、得た電力をバッテリ107に供給するとともに左右の電動モータ(走行モータ)112L,112Rに供給する、作業者がハウジング101の後から連れ歩く歩行型作業機である。
【0065】ハウジング101から前方へ延びた機体111に、電動モータ112L,112R及び動力伝達機構113L,113Rを取付けるとともに、制御部115を取付ける。制御部115は、左右のモータ駆動部108L,108Rを介して左右の電動モータ112L,112Rを制御するものである。電動モータ112L,112Rの動力は、動力伝達機構113L,13Rを介して左右の走行輪(駆動輪)114L,114Rに伝わる。
【0066】さらに、ハウジング101の後部下部に左右の後輪116L,116Rを取付けるとともに、ハウジング101の後部上部から後方へ操作ハンドル117を延し、操作ハンドル117は、変速操作装置118及びカッタレバー119を備える。方向速度装置118は、方向速度レバー118aの位置情報を発するポテンショメータを備える。方向速度装置118の方向速度レバー118aを操作することで車両を前進・後進させるとともに速度調整をすることができる。カッタレバー119を起こすことでカッタ104を回転させることができる。さらにハウジング101は、後部に刈り芝を収納するグラスバッグ121を着脱自在に取付ける。
【0067】この芝刈機100においても、上記図6に示す除雪機の回路と同様の構成並びに作用、効果を有する。すなわち、左右のモータ駆動部108L,108Rはモータ駆動部52L,52Rと同等、左右の電動モータ112L,112Rは電動モータ25L,25Rと同等、制御部115は上記図4及び図6〜図8に示す制御部44と同等、方向速度レバー118aは上記図5に示す方向速度レバー34と同等、方向速度装置118のポテンショメータは上記図4に示すポテンショメータ49と同等、の各構成並びに各機能を有する。
【0068】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1は、電動モータの通電電流が上限しきい値を越えたとの電流異常高信号を検出したときに、モータ駆動部に対して電動モータへの通電停止指令を発し、この通電停止指令を発した後に電動モータの通電電流が零になるまでの時間が経過するまでの間に、モータ駆動部からの通電を再開させる。この通電の停止と再開とを短いタイミングで反復させるようにした。
【0069】このようにして、電動モータの通電電流が上限しきい値から降下する途中で再開させるので、過負荷後の電流変動を抑制することができる。この結果、電動モータの出力トルク変動を抑制することができる。従って、電動モータが過負荷状態になった場合に、過負荷状態を解消しつつ電動モータを運転することで、電動車両の走行状態を維持することができる。電動車両を作業用電動車両として採用した場合には、走行状態を維持することで、作業性を高めることができる。しかも、電動モータや関連する電気部品に過電流が流れないので、これらの電動モータや電気部品を過負荷から保護することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎 (外1名)
【公開番号】 特開2003−143704(P2003−143704A)
【公開日】 平成15年5月16日(2003.5.16)
【出願番号】 特願2001−337465(P2001−337465)