| 【発明の名称】 |
電気自動車の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】長井 正明 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号 富士重工業株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】急発進時や急加速時に発生する車体振動を効果的に抑制するとともに、高い加速性能を発揮することのできる電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】アクセル操作量Aに応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段31と、トルク指令値に応じた電流を電動機に出力して電動機を制御する制御手段33とを備える電気自動車の制御装置において、入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する振動判定手段34を有するとともに、トルク指令値演算手段31が、アクセル操作量Aの変位に対するトルク指令値の基本経時変位を演算する基本経時変位演算手段31aと、入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かに基づいて、基本経時変位を補正する補正手段とを有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アクセル操作量に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段と、前記トルク指令値に応じた電流を前記電動機に出力することにより駆動手段を介して前記電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備える電気自動車の制御装置において、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する振動判定手段を有するとともに、前記トルク指令値演算手段が、アクセル操作量の変位に対するトルク指令値の基本経時変位を演算する基本経時変位演算手段と、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かに基づいて、前記基本経時変位を補正する補正手段とを有することを特徴とする電気自動車の制御装置。 【請求項2】前記補正手段は、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあると判定された場合には補正量を小さくし、所定の振動状態にないと判定された場合には補正量を大きくするように補正することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制御装置。 【請求項3】前記補正手段は、前記基本経時変位の内の始期に係る第1補正係数α(0<α≦1)と、終期に係る第2補正係数β(1≦β)とを決定する補正係数決定手段を有し、時間経過に応じて前記基本経時変位に前記第1補正係数αまたは前記第2補正係数βを乗じて補正することを特徴とする請求項1または2記載の電気自動車の制御装置。 【請求項4】前記補正手段は、前記入力電流の振動が所定の振動状態にないと判定された場合に前記第1補正係数αおよび前記第2補正係数βの最適化を行う最適化手段を有することを特徴とする請求項3記載の電気自動車の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車の制御装置に関し、特に、車体振動を抑制しつつ高い加速性能を発揮することのできる電気自動車の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、環境汚染や騒音の防止・抑制のために、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関で走行する自動車に代えて、電動機で走行する電気自動車(ハイブリッド車を含む)の開発が進んでいる。このような電気自動車の駆動源である電動機としては、直流モータや交流モータが採用されており、中でも回転子に永久磁石を使用した三相交流同期モータ(以下、「同期モータ」という)は高効率であるため、電気自動車用の電動機の主流とされている。 【0003】前記した同期モータを搭載した電気自動車においては、車両に搭載したバッテリからの直流電流をインバータで所定の交流電流に変換し、この交流電流によって同期モータを駆動して車両を走行させている。 【0004】この際には、アクセルペダルの操作量(以下、「アクセル操作量」という)に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行い、このトルク指令値に応じて所定の電流指令値の演算および出力を行い、この電流指令値に応じた電流を所定の制御手段によって制御しつつインバータを介して同期モータに供給して同期モータを駆動制御しており、同期モータの出力トルクは、所定のトルク指令値に応じて追従するようにオープンループ制御される。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、前記したような電気自動車では、同期モータの出力軸からディファレンシャルギアおよびドライブシャフトを介して駆動輪へと至るトルクの伝達系が、ドライブシャフトをバネ要素とした「ねじれ共振系」を構成している。このため、急発進時や急加速時のようにアクセルペダルを急激に踏み込むと、制御手段によって同期モータの出力トルクがこれに追従するように制御されるが、この急激な出力トルクの増加によって前記した「ねじれ共振系」が共振し、車体振動が発生することがあった。このような車体振動の発生により、運転者や同乗者の乗り心地はきわめて悪くなっていた。 【0006】前記したような電気自動車の車体振動を抑制する方法としては、急発進時または急加速時におけるアクセル操作量の変位に対して、トルク指令値の立ち上がりに所定の遅れを生じさせることによって、前記した同期モータから駆動輪へといたるトルクの伝達系(ねじれ共振系)の共振の発生を防止するという方法が挙げられる。しかし、この振動抑制方法によると、トルク指令値の立ち上がりを遅れさせて車体振動を抑制した後においては、運転者や同乗者の要求する加速感が得られない場合があった。 【0007】本発明の課題は、急発進時や急加速時に発生する車体振動を効果的に抑制するとともに、高い加速性能を発揮することのできる電気自動車の制御装置を提供することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、例えば図2および図4に示したように、アクセル操作量に応じて所定のトルク指令値の演算および出力を行うトルク指令値演算手段と、前記トルク指令値に応じた電流を前記電動機に出力することにより駆動手段を介して前記電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備える電気自動車の制御装置において、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する振動判定手段を有するとともに、前記トルク指令値演算手段が、アクセル操作量の変位に対するトルク指令値の基本経時変位を演算する基本経時変位演算手段と、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かに基づいて、前記基本経時変位を補正する補正手段とを有することを特徴とする。 【0009】請求項1記載の発明によれば、電動機へ入力される入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する振動判定手段を備えており、この入力電流の振動状態の変化と車体振動とは、後述するように一定の対応関係があるため、入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かを判定することによって、車体振動を効果的に検出することができる。 【0010】すなわち、電動機の駆動制御システムにおいては、モータの回転に同期させてステータコイルに回転磁界を形成してモータを駆動させており、急発進時や急加速時における「ねじれ共振系」の共振などによって車体振動が生じると、電動機への入力電流の振動状態が変化する。従って、電動機への入力電流の振動状態が所定レベルに達したか否かを判定することによって、車体振動を効果的に検出することができる。 【0011】また、請求項1記載の発明によれば、トルク指令値演算手段が、アクセル操作量の変位に対するトルク指令値の基本経時変位を演算する基本経時変位演算手段と、入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かに基づいて、基本経時変位を補正する補正手段とを有するため、入力電流の振動が所定の振動状態にある場合、すなわち、車体振動が発生した場合には、例えばトルク指令値に所定の遅れを生じさせるようにトルク指令値の基本経時変位を補正して、電気自動車の車体振動を抑制することができる。 【0012】さらに、請求項1記載の発明によれば、トルク指令値演算手段が、アクセル操作量の変位に対するトルク指令値の基本経時変位を演算する基本経時変位演算手段と、入力電流の振動が所定の振動状態にあるか否かに基づいて、基本経時変位を補正する補正手段とを有するため、入力電流の振動が所定の振動状態を脱した場合、すなわち、車体振動が無視できる程度のレベルに達した場合には、例えばトルク指令値の遅れを回復させるようにトルク指令値の基本経時変位を補正して、速やかに電動機の出力トルクを増加させ、充分に電気自動車を加速させることができる。 【0013】請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気自動車の制御装置において、前記補正手段は、前記入力電流の振動が所定の振動状態にあると判定された場合には補正量を小さくし、所定の振動状態にないと判定された場合には補正量を大きくするように補正することを特徴とする。 【0014】請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の奏する作用効果に加え、入力電流の振動が所定の振動状態にあると判定された場合には、車体振動の抑制を優先的に行うことができ、所定の振動状態にないと判定された場合には、車体の加速を優先的に行うことができる。 【0015】請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の電気自動車の制御装置において、例えば図4ないし図6に示すように、前記補正手段は、前記基本経時変位の内の始期に係る第1補正係数α(0<α≦1)と、終期に係る第2補正係数β(1≦β)とを決定する補正係数決定手段を有し、時間経過に応じて前記基本経時変位に前記第1補正係数αまたは前記第2補正係数βを乗じて補正することを特徴とする。 【0016】請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の奏する作用効果に加え、基本経時変位の内の始期に係る第1補正係数α(0<α≦1)と、終期に係る第2補正係数β(1≦β)とを決定する補正係数決定手段を有し、時間経過に応じて基本経時変位に前記第1補正係数αまたは前記第2補正係数βを乗じて補正するため、急発進時または急加速時におけるトルク指令値の基本経時変位を、始期および終期に分けて効果的に補正することができる。 【0017】すなわち、アクセル操作量を急激に増加させてほぼ全開走行状態(アクセル操作量がほぼ100%での走行状態)に移行させるまでの期間の始期においては、第1補正係数α(0<α≦1)を基本経時変位に乗じて補正するため、トルク指令値の基本経時変位を適切に遅れさせることができるとともに、アクセル操作量を急激に増加させてほぼ全開走行状態に移行させるまでの期間の終期においては、第2補正係数β(1≦β)を基本経時変位に乗じて補正するため、トルク指令値の基本経時変位の遅れを速やかに回復させることができる。 【0018】請求項4記載の発明は、請求項3記載の電気自動車の制御装置において、例えば、図10に示すように、前記補正手段は、前記入力電流の振動が所定の振動状態にないと判定された場合に前記第1補正係数αおよび前記第2補正係数βの最適化を行う最適化手段を有することを特徴とする。 【0019】請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の奏する作用効果に加え、補正手段は、第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化を行う最適化手段を有するため、車体振動が発生しない条件下において、電気自動車の車種、電動機の規格、走行状態などに応じて、より高い加速性能を発揮するようにトルク指令値の補正を行うことができる。また、車体振動が発生しない条件下において、経時的に変化する電気自動車のシステム特性に対応させて、より高い加速性能を発揮するようにトルク指令値の補正を行うことができる。従って、種々の状況において、車体振動を効果的に抑制しつつ、良好な加速性能を得ることができる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態では、電動機である三相交流同期モータ(同期モータ)10で走行する電気自動車の制御装置について説明することとする。 【0021】本実施の形態に係る電気自動車は、図1に示すように、電力源としてのバッテリ20、同期モータ10をベクトル制御する制御装置30、制御装置30で制御されバッテリ20の出力を交流電力に変換する電力変換機であるインバータ40、同期モータ10の回転速度を検出する回転速度検出手段であるレゾルバ50、同期モータ10への入力電流を検出する電流検出手段60、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出器70、同期モータ10の回転運動をドライブシャフト90に伝達するディファレンシャルギア80、および、ドライブシャフト90の両端に設けられた駆動輪100を備えている。 【0022】同期モータ10は、ディファレンシャルギア80およびドライブシャフト90を介して駆動輪100と連結され、同期モータ10の回転運動により駆動輪100が回転し車両に推進力を与えるようにされている。バッテリ20からインバータ40に供給された直流電力は、制御装置30の制御のもとに三相交流電力に変換されて同期モータ10に供給される。 【0023】制御装置30は、図2に示すように、トルク指令値演算手段31、電流指令値演算手段32、電流制御手段33および振動判定手段34を備える。トルク指令値演算手段31は、アクセル操作量検出器70で検出されたアクセル操作量Aおよびレゾルバ50で検出された同期モータ10の回転速度Nに応じて所定のトルク指令値T*の演算および出力を行い、電流指令値演算手段32は、トルク指令値T*に応じて所定の電流指令値Id*およびIq*の演算および出力を行う。ここでId*およびIq*は、それぞれベクトル制御に用いられる電流指令値のd軸成分およびq軸成分である。 【0024】電流制御手段33は、図3に示すように、dq軸電流制御手段33a、2/3相変換手段33b、PWM信号発生手段33cおよび3/2相変換手段33dを備える。dq軸電流制御手段33aは、電流指令値Id*およびIq*と、同期モータ10の回転速度Nと、電流検出手段60で検出された同期モータ10への入力電流Iu、Iv、Iwを3/2相変換手段33dで変換して得たId、Iqとに基づいて、電圧指令値Vd*、Vq*の演算及び出力を行う。 【0025】PWM信号発生手段33cは、電圧指令値Vd*、Vq*を2/3相変換手段33bで2/3相変換して得たVu*、Vv*、Vw*に基づいてPWM信号Pu、Pv、Pwを発生させてインバータ40に出力し、このPWM信号によってインバータ40のスイッチング素子を所定のタイミングでオン/オフ操作することによって、同期モータ10を制御するように機能する。 【0026】振動判定手段34は、電流検出手段60で検出された同期モータ10への入力電流Iu、Iv、Iwを3/2相変換手段33dで3/2相変換して得たd軸入力電流Idおよびq軸入力電流Iqのうち、q軸入力電流Iqの振動状態が所定レベルにあるか否かを判定する。なお、本実施の形態では、Iqの振動状態のみが所定レベルにあるか否かを判定しているが、Idの振動状態が所定レベルにあるか否かを判定してもよく、Id、Iq双方の振動状態が所定レベルにあるか否かを判定することとしてもよい。 【0027】トルク指令値演算手段31は、図4に示すように、基本トルク指令値演算手段31a、補正係数決定手段31b、切替手段31c、経時フィルタ31dおよび乗算器31eを備える。基本トルク指令値演算手段31aは、アクセル操作量Aおよび回転速度Nに基づいて基本トルク指令値T0*の演算を行う。また、補正係数決定手段31b、切替手段31c、経時フィルタ31dおよび乗算器31eは、急発進時または急加速時における基本トルク指令値T0*を、始期および終期に分けて補正する補正手段である。 【0028】補正係数決定手段31bは、振動判定手段34から出力された信号Sに含まれるIqの振幅情報に応じて、第1補正係数α(0<α≦1)および第2補正係数β(1≦β)の決定および出力を行う。第1補正係数αおよび第2補正係数βは、図5(a)および(b)に示した第1補正マップおよび第2補正マップによって決定される。第1(第2)補正マップは、複数のIvの値に対応するα(β)の値を実験によって求め、これをIvを横軸、α(β)を縦軸としたグラフ上にプロットし、プロットした各点を近似曲線でつないだものである。 【0029】切替手段31cは、補正係数決定手段31bから出力された第1補正係数αおよび第2補正係数βを、所定の時間を境に切り替えて出力するものである。すなわち、停止状態から全開走行状態にいたるまでの所要時間(te)のほぼ1/2に相当する時間(tm)算出し、停止状態からtmに達するまでの期間(以下、「始期」という)においては第1補正係数αを出力し、tmからteまでの期間(以下、「終期」という)においては第2補正係数βを出力するように機能する。 【0030】経時フィルタ31dは、切替手段31cを経由して送られた第1補正係数αまたは第2補正係数βを経時的に変化させるように機能する。乗算器31eは、切替手段31cおよび経時フィルタ31dを経由して送られた第1補正係数αまたは第2補正係数βを基本トルク指令値T0*に乗じて、補正したトルク指令値T*を算出するものである。 【0031】次いで、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置を用いた車体振動抑制制御動作を、図7を用いて説明する。 【0032】まず、停止状態にある電気自動車のアクセルペダルを急激に踏み込んで急発進させ、全開走行状態へと移行させる(以下、この停止状態から全開走行状態にいたるまでの移行段階を「急加速フェーズ」と称する)。この急加速フェーズにおいては、アクセル操作量Aおよび同期モータ10の回転速度Nに応じてトルク指令値T*が随時演算されて出力される(トルク指令値算出工程、S1参照)。 【0033】本実施の形態において、急加速フェーズにおける補正されないトルク指令値T*(すなわち、基本トルク指令値T0*)の時間履歴は、図8に示すように、T*=TMAX*(1−e-2t) なる時間関数で近似している。このトルク指令値T*に応じて電流指令値I*が随時演算されて出力され、この電流指令値I*に応じたPWM信号をインバータ40を介して同期モータ10に出力することにより同期モータ10が駆動制御されている。 【0034】この際には、電流検出手段60によって同期モータ10への入力電流Iu、Iv、Iwが検出され、これらは3/2相変換手段33dでIdとIqに変換される。振動判定手段34には、これら入力電流のうちIqのみが出力される。 【0035】このような急加速フェーズにおいては、同期モータ10の出力軸からディファレンシャルギア80およびドライブシャフト90を介して駆動輪100へと至るトルクの伝達系(ねじれ共振系)が共振して車体振動が発生する。この場合、同期モータ10への入力電流Iu、Iv、Iwに振動状態が発生し、これに伴ってId、Iqの振動状態も変化する。振動判定手段34は、このIqの振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する(振動判定工程、S2参照)。 【0036】Iqの振動状態が所定レベルにあるか否かの判定は、以下のような手順で行う。まず、図9に示すようにIqの振幅IVを検出し、この振幅が所定値IV0を超えたか否かを判定し、この所定値IV0を連続的に超えた回数をカウントし、この回数が所定回数N0を超えた場合に、Iqの振動状態が所定レベルにあると判定する。Iqの振幅IVの検出や、Iqの振幅IVと所定値IV0との比較判定や、所定値IV0を連続的に超えた回数のカウントや、この回数と所定回数N0との比較判定などは、全てマイクロコンピュータで行うことができる。 【0037】Iqの振動が所定の振動状態にあると判定した場合には、振動判定手段34は、トルク指令値演算手段31にトルク指令値補正信号Sを出力する。このトルク指令値補正信号Sを受けた補正係数決定手段31bは、このトルク指令値補正信号Sに含まれるIqの振幅情報に基づいて、図5に示した第1補正マップおよび第2補正マップによって第1補正係数αおよび第2補正係数βを決定する(補正係数決定工程、S3参照)。 【0038】本実施の形態においては、図5(a)に示すように第1補正係数αの下限値をαMINと定めており、Iqの振幅IVが一定の値より大きくなった場合でも第1補正係数αはこの下限値αMINより小さくならないようにしている。この下限値αMINは、車体振動の抑制に効果的な値の最小値であり、電気自動車の車種、同期モータ10の仕様などによって適宜決めることができる。 【0039】補正係数決定手段31bによって決定された第1補正係数αおよび第2補正係数βは切替手段31cに送られ、この切替手段31cによって、急加速フェーズの始期においては第1補正係数αが出力され、終期においては第2補正係数βが出力される。切替手段31cを経由して送られた第1補正係数αまたは第2補正係数βは、経時フィルタ31dを通過する際に経時変化させられて乗算器31eに送られ、この乗算器31eで基本トルク指令値T0*に乗じられ、補正されたトルク指令値T*が出力される(トルク指令値補正工程、S4参照)。 【0040】一方、振動判定工程S2において、Iqの振動が所定の振動状態にないと判定された場合には、振動判定手段34は、トルク指令値演算手段31に補正係数最適化信号S’を出力する。補正係数決定手段31bは、第1補正係数αおよび第2補正係数βを最適化する最適化手段31b’を備えており、この補正係数最適化信号S’を受けた最適化手段31b’は、第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化を行う(補正係数最適化工程、S5参照)。 【0041】第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化は、例えば、図10に示した最適化マップで決定される学習係数Lを用いて行うことができる。この最適化マップにおいて、横軸は急加速フェーズを経た回数N、縦軸は学習係数Lを示しており、学習係数Lの最大値(LMAX)は、第1補正係数αおよび第2補正係数βの1/20に設定されている。学習係数Lは、急加速フェーズを経た回数Nが多くなるに従って0に収束していくものとする。 【0042】第1補正係数αの最適化は、例えば以下のように行うことができる。まず、補正係数最適化信号S’に含まれるIqの振幅に応じて第1補正マップによって第1補正係数αを決定する。次いで、図10の最適化マップによって学習係数Lを決定する。例えば、急加速フェーズを経た回数Nが「0回」であれば、LMAX=0.05αとなる。次いで、第1補正係数αから学習係数Lを減じた値(以下、「更新値」という)を算出する。例えばLMAX=0.05αであればこの更新値は0.95αとなる。この更新値を用いて、トルク指令値補正工程S4において急加速フェーズの始期におけるトルク指令値T*の補正を行う。 【0043】この場合の第2補正係数βの最適化は、例えば以下のように行うことができる。まず、補正係数最適化信号S’に含まれるIqの振幅に応じて第2補正マップによって第2補正係数βを決定する。次いで、前記したように図10の最適化マップによって学習係数Lを決定する。例えば、急加速フェーズを経た回数Nが「0回」であれば、LMAX=0.05βとなる。次いで、第2補正係数βから学習係数Lを加算した値(以下、「更新値」という)を算出する。例えばLMAX=0.05βであればこの更新値は1.05βとなる。この更新値を用いて、トルク指令値補正工程S4において急加速フェーズの終期におけるトルク指令値T*の補正を行う。 【0044】前記した例における第1補正係数αの更新値0.95αは、第1補正マップによって決定した第1補正係数αよりも若干小さい値であるため、急加速フェーズの始期においてトルク指令値T*は若干の遅れを生じることとなる。また、前記した例における第2補正係数βの更新値1.05βは、第2補正マップによって決定した第2補正係数βよりも若干大きい値であるため、急加速フェーズの終期においてトルク指令値T*は比較的急に立ち上がることとなる。すなわち、電気自動車は、より高い加速性能を発揮することとなる。このような第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化は、電気自動車の加速性能の向上を目的としている。 【0045】一方、第1補正係数αの最適化を以下のように行うこともできる。まず、前記と同様に第1補正マップによって第1補正係数αを決定し、図10の最適化マップによって学習係数Lを決定する。次いで、第1補正係数αから学習係数Lを加算した値(以下、「更新値」という)を算出する。例えばLMAX=0.05αであればこの更新値は1.05αとなる。この更新値を用いて、トルク指令値補正工程S4において急加速フェーズの始期におけるトルク指令値T*の補正を行う。 【0046】この場合の第2補正係数βの最適化は以下のように行うことができる。まず、前記と同様に第2補正マップによって第2補正係数βを決定し、図10の最適化マップによって学習係数Lを決定する。次いで、第2補正係数βから学習係数Lを減じた値(以下、「更新値」という)を算出する。例えばLMAX=0.05βであればこの更新値は0.95βとなる。この更新値を用いて、トルク指令値補正工程S4において急加速フェーズの終期におけるトルク指令値T*の補正を行う。 【0047】前記した例における第1補正係数αの更新値1.05αは、第1補正マップによって決定した第1補正係数αよりも若干大きい値であるため、急加速フェーズの始期においてトルク指令値T*は基本トルク指令値T0*に近づくこととなる。また、前記した例における第2補正係数βの更新値0.95βは、第2補正マップによって決定した第2補正係数βよりも若干小さい値であるため、急加速フェーズの終期においてもトルク指令値T*は基本トルク指令値T0*に近づく。すなわち、電気自動車は、より基本トルク指令値T0*に近い加速特性を示すこととなる。このような第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化は、急激な加速を伴わない乗り心地の向上を目的としている。 【0048】なお、このような乗り心地の向上を目的として第1補正係数αおよび第2補正係数βの最適化を行った場合には、再び車体振動が発生する場合がある。この場合には、通常の補正係数決定工程S3を経てトルク指令値の補正を行う。この結果車体振動が抑制された場合には、再び補正係数最適化工程S5で学習係数Lを再度算出して最適化を行う。急加速フェーズを経る回数Nが多くなると、学習係数Lは0に収束するため、結果的に、第1補正係数αおよび第2補正係数βの更新値は、あらかじめ第1補正マップおよび第2補正マップで設定した第1補正係数αおよび第2補正係数βの値に近づくこととなる。 【0049】図11に、補正されたトルク指令値T*の時間履歴を示した。このグラフから明らかなように、急加速フェーズの始期(0≦t≦tm)においては、第1補正係数αによってトルク指令値T*の立ち上がりに若干の遅れが生じている。この結果、車体振動が効果的に抑制される。一方、急加速フェーズの終期(tm≦t≦te)においては、第2補正係数βによってトルク指令値T*に比較的急に立ち上がっている。この結果、運転者または同乗者は、高い加速感を得ることができる。 【0050】本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、同期モータ10へ入力される入力電流に対応するIqの振動が所定の振動状態にあるか否かを判定する振動判定手段34を備えており、このIqの振動が所定の振動状態にあるか否かを判定することによって、車体振動を効果的に検出することができる。 【0051】また、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、第1補正係数αおよび第2補正係数βを決定する補正係数決定手段31bを備え、時間経過に応じて基本トルク指令値T0*に第1補正係数αまたは前記第2補正係数βを乗じて補正するため、急加速フェーズにおける基本トルク指令値T0*を、始期および終期に分けて効果的に補正することができる。 【0052】すなわち、急加速フェーズの始期においては、第1補正係数αを基本トルク指令値T0*に乗じて補正するため、トルク指令値T*を適切に遅れさせることができるとともに、急加速フェーズの終期においては、第2補正係数βを基本トルク指令値T0*に乗じて補正するため、トルク指令値T*の遅れを速やかに回復させることができる。この結果、車体振動を抑制しつつ高い加速感を得ることができる。 【0053】さらに、本実施の形態に係る電気自動車の制御装置によれば、第補正係数αおよび第2補正係数βを最適化する最適化手段31b’を備えるため、急加速フェーズにおいて車体振動が発生しない場合には、より高い加速感を発揮するようにトルク指令値T*を補正することができる。 【0054】 【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、電動機へ入力される入力電流の振動状態の変化を検出することによって、車体振動を効果的に検出することができる。また、入力電流の振動状態に応じて、トルク指令値の基本経時変位を適切に補正することができる。従って、電気自動車の車体振動の抑制や、電気自動車の充分な加速を自在に行うことができる。 【0055】請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果を奏するのは勿論のこと、入力電流の振動が所定の振動状態にあると判定された場合には、車体振動の抑制を優先的に行うことができ、所定の振動状態にないと判定された場合には、車体の加速を優先的に行うことができる。 【0056】請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果を奏するのは勿論のこと、急発進時または急加速時におけるトルク指令値の基本経時変位を、始期および終期に分けて効果的に補正することができる。 【0057】請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果を奏するのは勿論のこと、電気自動車の車種、電動機の規格、走行条件、経時変化するシステム特性に対応させて、車体振動の効果的な抑制と良好な加速感との双方を得ることができるように、トルク指令値を補正することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005348 【氏名又は名称】富士重工業株式会社 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号
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| 【出願日】 |
平成13年10月1日(2001.10.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090033 【弁理士】 【氏名又は名称】荒船 博司 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−111213(P2003−111213A) |
| 【公開日】 |
平成15年4月11日(2003.4.11) |
| 【出願番号】 |
特願2001−305343(P2001−305343) |
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