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【発明の名称】 磁気浮上列車の緊急消磁装置
【発明者】 【氏名】千葉 知雄
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【氏名】五十嵐 基仁
【住所又は居所】名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【氏名】桑野 勝之
【住所又は居所】名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内

【要約】 【課題】左右の超電導コイルの一方側にクエンチを発生した時、左右に働く力を低減することにある。

【解決手段】超電導コイル21〜28に設けた複数の永久電流スイッチ31〜34で閉回路をなし、超電導コイル例えば21がクエンチしても、左右の超電導コイル21,22に流れる電流が同一のため、左右に働く力は発生しないと共に、永久電流スイッチが少なくなり、永久電流スイッチが原因のクエンチ確率を下げることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気浮上列車の台車の左右に複数個の超電導磁石をなす超電導コイルを配置し、これらの超電導コイルを直列に接続し、前記超電導コイルに永久電流スイッチを接続し、対向する前記超電導コイル及び永久電流スイッチの一方側が不能になった時、他方側の前記永久電流スイッチを動作させ、他方の前記超電導コイル側の磁力を消磁する緊急消磁装置において、対向する前記超電導コイルと前記永久電流スイッチとの間に閉回路を形成するように前記超電導コイルの各々と前記永久電流スイッチとを接続することを特徴とする磁気浮上列車の緊急消磁装置。
【請求項2】 前記閉回路は対向する前記超電導コイルの各々の端子間に並列に前記永久電流スイッチと保護抵抗とを接続することを特徴とする請求項1に記載した超電導磁石の緊急消磁装置。
【請求項3】 複数個の前記閉回路を直列に接続することを特徴とする請求項1に記載した磁気浮上列車の緊急消磁装置。
【請求項4】 磁気浮上列車の台車の左右に複数個の超電導磁石をなす超電導コイルを配置し、これらの前記超電導コイルを直列に接続し、前記超電導コイルに永久電流スイッチを接続し、対向する前記超電導コイル及び前記永久電流スイッチの一方側が不能になった時、他方側の前記永久電流スイッチを動作させ、他方の前記超電導コイル側の磁力を消磁する緊急消磁装置において、複数個の前記超電導コイルを直列に接続し、対向する前記超電導コイルと前記永久電流スイッチとの間に閉回路をなすように前記超電導コイルの各々の端子間に前記永久電流スイッチを接続することを特徴とする磁気浮上列車の緊急消磁装置。
【請求項5】 前記閉回路は前記永久電流スイッチに並列に保護抵抗を接続することを特徴とする請求項1に記載した磁気浮上列車の緊急消磁装置。
【請求項6】 磁気浮上列車の台車の左右に複数個の超電導磁石をなす超電導コイルを配置し、これらの超電導コイルを直列に接続し、前記超電導コイルに永久電流スイッチを接続し、対向する前記超電導コイル及び永久電流スイッチの一方側が不能になった時、他方側の前記永久電流スイッチを動作させ、他方の前記超電導コイル側の磁力を消磁する緊急消磁装置において、対向する前記超電導コイルと前記永久電流スイッチとの間に閉回路を形成するように前記超電導コイルの各々と前記永久電流スイッチとを接続し、前記台車を挟んで対向する複数の前記超電導コイルと前記超電導コイルとの間を超電導渡り線で接続し、複数の前記超電導渡り線を集合して前記台車に設けた配管に収納することを特徴とする磁気浮上列車の緊急消磁装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気浮上列車に用いられる超電導磁石の緊急消磁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】側面浮上式の超電導磁気浮上列車は推進、浮上及び案内を列車側面に設置した超電導磁石にて行っている。超電導磁石は磁力を発生させる超電導コイルと永久電流状態に保つ永久電流スイッチから構成されている。
【0003】走行中に一つの超電導コイルが何らかの原因で超電導状態が崩れる(以下、クエンチと称する)と、電流が急激に減衰し、数秒で磁力を失ってしまう。磁力が無くなると対向する超電導コイルに働く反発力を抑えることが出来なくなるため、超電導磁石に進行方向の左右に大きな力が働くこととなる。この左右に働く力を低減するためには、対向する超電導コイルに流れる電流を減衰させる必要がある。
【0004】従来はコイル中間部に設けた電圧端子とコイル両端に発生する電圧によりコイルクエンチを検出し、対向する超電導コイルの永久電流スイッチ(以下、PCSと称する)のヒータに通電し、片側の超電導コイルがクエンチすることにより発生する左右に働く力を低減させていた。
【0005】しかし、PCSによる消磁は時定数が数10秒であり、コイルクエンチの数秒と比較すると時定数が長く、左右に働く力が発生してしまう問題であった。その解決策として、特開平6−208922号公報に述べられているような放電管を採用し、循環電流を流すことにより強制消磁するシステムが提案されたが、系統の耐電圧が高くなるなどの問題があった。
【0006】また、クエンチにより液体ヘリウムが減少し、片側全ての超電導コイル(SCM)をクエンチさせなければならないという観点から、特開平6−253410号公報では対向するコイルの冷却系統を同一とすることを提案している。冷却系統を同一とすることで、真空リークを原因とするクエンチはほぼ同一時刻に発生させることが出来る可能性があるが、機械的な摩擦発熱を原因とするクエンチは同時に発生するとは限らないので、左右に働く力の低減には冷却系統を同一とするだけでは不十分であるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、超電導コイルの左右に働く力をまったく発生させることなく対向消磁が可能な磁気浮上列車用の緊急消磁装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明では左右に対向する超電導コイルを直列に接続した一系統を、永久電流状態に投入することを特徴とする。
【0009】即ち、対向する超電導コイルを直列に接続し、一系統の永久電流状態に投入することにより、片側の超電導コイルがクエンチした時に必ずもう一方の超電導コイルの電流も減衰するため、本質的に左右に働く力は発生しない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を下記に説明する。
(実施例1)本発明による実施例1を図1ないし図4に示す。磁気浮上列車100は、車体1の下部両側に超電導磁石5を装備した台車4が配置され、地上側ガイドウェイ2に設置された推進コイル3と外槽5A内の超電導磁石5をなす超電導コイル10の磁気相互作用により、同期して推進する構成となっている。従来は超電導コイル10と永久電流スイッチ9の各1個が電気的に永久電流状態となっていたが、本発明では対向する左右の超電導コイル例えば21,22が台車中に設置された超電導渡り線11により直列に接続され、一つの永久電流スイッチ9が永久電流状態になっている。永久電流スイッチ9の設置場所は片側の超電導磁石に設置するか若しくは台車中に設置する。この実施例1では台車中に設置している。尚、超電導磁石の上部液溜中に設置することも可能である。1Bは液体ヘリウムを貯える液体ヘリウムタンクである。
【0011】図2及び図3は同期側面浮上方式における超電導磁気浮上式列車の超電導磁石5の配置構成を示すものである。超電導磁石5は進行方向に4個の超電導コイル21,23,25,27が並び、対向する超電導コイル22,24,26,28を合わせて8個で構成されている回路図である。対向する超電導コイル21,22と永久電流スイッチ31と備えた閉電流ループ回路Aつまり閉回路を構成している。
【0012】閉電流ループ回路Aは永久電流スイッチ31を開くと永久電流状態が保持される。同様に超電導コイル23,24、永久電流スイッチ32及び超電導コイル25,26、永久電流スイッチ33及び超電導コイル27,28、永久電流スイッチ34は各々に閉電流ループ回路B,C,Dを構成し、前述と同様に閉電流ループ回路B,C,Dは永久電流状態に保持される。
【0013】この実施例1において、図2,3において超電導磁石5を起動時には、永久電流スイッチ31ないし34を閉じて、起動電流iは矢印方向に閉電流ループ回路A,B,C,Dを経由して流れる。超電導磁石5が定格電流に成ると、永久電流スイッチ31ないし34を開放して、閉電流ループ回路A,B,C,D内に永久電流i2を流して、各超電導コイル21ないし28により電磁力を発生させる。
【0014】この状態で例えば超電導コイル21にクエンチが発生した場合は、同一閉電流ループ回路A中の超電導コイル22に流れる電流も減衰し、自然に対向する超電導コイル22も消磁することとなる。磁力は左右同時に減衰するため左右に力は働かないので、磁気浮上列車100が左右に揺れるのを防止できる。尚、PCSクエンチ時はPCSに並列に設置された保護抵抗器29に電流が流れることにより電流が減衰する。
【0015】また閉電流ループ回路Aには一対の超電導コイル21,22に1個の永久電流スイッチ31しか使用していないので、従来技術では1個の超電導コイルに対して1個の永久電流スイッチを使用していたのに比べて、永久電流スイッチを少なくした分だけ閉電流ループ回路Aを小型化することができると同時に、コストを低減することができる。更に永久電流スイッチのクエンチになる可能性が低くなった。
【0016】一方、左右の超電導渡り線11は超電導コイルの磁場が減衰してはならないことから、超電導線を用いて行う。すると左右を接続する配管は液体ヘリウムの温度でなければならないため、両側を液体ヘリウムで満たされた配管で接続することとなる。超電導コイルを永久電流状態に保持する永久電流スイッチは接続配管の途中、つまり台車中に設置しても良く、若しくは片側の超電導コイルに設置し、接続線のみを接続することで対応できる。
【0017】図4に本実施例の超電導渡り線11の配置を示すものである。左右の超電導コイル例えば21.22及び23,24をつなぐ台車4中に超電導渡り線11を配置する必要がある。この場合、超電導コイル例えば21,22及び23,24の超電導渡り線11を台車4の枠梁4Aの1本に纏めて設置することで、渡り線用配管を減らし、熱侵入量を低減することが出来る。この点は超電導コイル例えば25,26及び27,28も超電導渡り線11を台車4の枠梁4Aの1本に纏めて設置し、前述と同様な効果を達成している。
【0018】前述において台車4に沿って超電導渡り線11を配線すれば、最短距離で対向する超電導コイル同志間を接続できるので、電流損失を低減できる。
【0019】また4対の超電導コイルの超電導渡り線を1箇所に集めて設置してもよいことは云までもない。尚、配管からのリークの際に全ての液体ヘリウムが無くなってしまう事を防ぐため、ヘリウム低温系統は2系統以上に分割する。具体的には対向する超電導コイルを一系統としてまとめる。
【0020】本発明による超電導磁石は台車と超電導磁石が一体となっており、配管等の施工が簡易的に出来ることを特徴とする。尚、台車上に永久電流スイッチを設置することにより振動・衝撃によるクエンチを避けることができる。
【0021】また、クエンチによる液体ヘリウムの減少により走行が不可能となるという問題に対しては、超電導磁石の循環系統を複数に分けることにより対応できる。具体的には進行方向に2系統に分け、対向する超電導コイルの冷却系統を同一とすることで、クエンチが発生しなかった健全なコイル部の液体ヘリウムの減少を避けることが出来る。
【0022】また、クエンチの原因として真空断熱層へのリークによる熱伝達率増加により液体ヘリウムが減少するというものが考えられる。これに対しては真空槽を対向する超電導コイルで同一とし、進行方向に関しては別にするという方策をとることにより、片側の超電導コイルが同時クエンチという最大の荷重条件をさけることが出来る。尚、本実施例では進行方向に4個の超電導コイルが並んだ超電導磁石を想定したが、当然その個数は何個でも本発明が適用できる。
【0023】また、本実施例は側面浮上方式鉄道を想定したが、本発明は案内方向に超電導磁石を使う全ての推進機関に適用できる。尚、案内を3個以上の複数個の超電導コイルで行う場合は、その案内に必要な分の超電導コイルを直列に接続して、一つの永久電流回路とすることにより左右に働く力を低減することが出来る。
【0024】このように本発明によると、永久電流スイッチの個数を減らすことが出来、永久電流スイッチが原因のクエンチの確率を下げる効果がある。
(実施例2)図5に本発明による実施例2を示す。超電導コイル21と22及び23と24及び25と26及び27と28が対向する超電導磁石において、超電導磁石間に永久電流スイッチ41,42,43,44及び保護抵抗器20を設置する。超電導コイルの通電時は永久電流スイッチ41,42,43,44をオフ状態つまり抵抗が発生している状態に保持し、超電導コイル21〜28に通電を行う。
【0025】通電終了後、永久電流スイッチ41〜44をオン状態つまり抵抗ゼロの状態とすることにより、循環電流が流れ、永久電流状態となる。ここで、各接続線は電流減衰をなくすため超電導線で接続されている。但し、通常の状態では超電導スイッチ42及び43及び44には電流が流れていない。これは循環電流が永久電流スイッチ41にのみ流れるからである。
【0026】ここで走行時に、例えば超電導コイル21がクエンチした場合、超電導コイル21と永久電流スイッチ41及び超電導コイル22及び永久電流スイッチ42を閉回路とする永久電流回路の電流が減衰し、超電導コイル21及び22以外の超電導コイルは影響を受けない。但し、クエンチが発生するまで電流が流れていなかった永久電流スイッチ42に電流が流れることとなる。
【0027】また、例えば超電導コイル23がクエンチした場合、超電導コイル23と永久電流スイッチ42及び超電導コイル24及び永久電流スイッチ43を閉回路とする永久電流回路の電流が減衰し、超電導コイル23及び24以外の超電導コイルは影響を受けない。このようにどの超電導コイルがクエンチしても、対向する超電導コイルと同時に電流減衰し、他のコイルへ影響を及ぼさないことが分かる。
【0028】ところで、永久電流スイッチのクエンチを想定すると4個ある永久電流スイッチの内、42,43,44がクエンチしても、元々と電流が流れていないため永久電流状態に変化がない。永久電流スイッチ41がクエンチしたときのみ永久電流状態が破れ、超電導コイル21と22が対向消磁することとなる。つまり、本発明による回路では閉回路を構成するある特定の永久電流スイッチがクエンチした時のみ消磁が起こり、それ以外の永久電流スイッチがクエンチした場合は消磁が起らないことになる。
【0029】従来の超電導コイルでは永久電流スイッチと超電導コイルが各1個で閉回路を形成していたため、例えば永久電流スイッチ一個のクエンチの確率をPとするとNコイルで一つの超電導磁石を構成する場合、少なくとも一つの超電導コイルが消磁する確立Q1は1−(1−P)Nと計算されるが、本実施例2ではある特定の永久電流スイッチがクエンチしないと消磁が起こらないため、その確率Q2はPとなり、例えばPを1%、N=8とすると、Q1は7.7%に対して、Q2は1%となり、安全性が大きく向上することが分かる。
【0030】このように本発明では、永久電流スイッチの個数を減らすことが出来、永久電流スイッチが原因のクエンチ確率を下げる効果がある。
【0031】
【発明の効果】以上のように、本発明によると、クエンチによる磁力は左右同時に減衰するため左右に力は働かず、磁気浮上列車が左右に揺れるのを防止できる。また永久電流スイッチの個数を減らすことが出来、永久電流スイッチが原因のクエンチ確率を下げる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1番4号
【出願日】 平成13年10月1日(2001.10.1)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外1名)
【公開番号】 特開2003−111211(P2003−111211A)
【公開日】 平成15年4月11日(2003.4.11)
【出願番号】 特願2001−305144(P2001−305144)