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【発明の名称】 電気車両用パワーコントロールユニット
【発明者】 【氏名】森田 英樹
【住所又は居所】埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】山岸 倫也
【住所又は居所】埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】前後方向の衝突などによりモータ室が変形した場合でも接続された高電圧ケーブルの取り外しが容易であり、それ自体変形しづらく、小型化可能であり、また、リアクトルが発生する熱の影響を排除することのできる電気車両用パワーコントロールユニットを提供する。

【解決手段】電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックス10と、ボックス10の後方外壁面に設けられてリアクトルRを支持するリアクトル受部11aと、リアクトル受部11aの下端が接続され、ボックス10の底面を覆い、内部に流路壁からなる流路12aを備えて冷却水を通流させることでボックス10と熱交換を行うヒートシンク12と、ボックス10の右側に渡され、ヒートシンク12の下方に配設される走行モータ4に結線されて通電を行うケーブルが係止される仕切13aとを備えた電気車両用パワーコントロールユニット1。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックスと、該ボックスの周囲のいずれかの外壁面に設けられてリアクトルを支持するリアクトル受部と、該リアクトル受部の下端が接続され、前記ボックスの底面を覆い、内部に流路壁からなる流路を備えて該流路に冷却水を通流させることで前記ボックスと熱交換を行うヒートシンクと、前記ボックスにおける前記車両の前後方向に延在する少なくとも一方の側部に渡され、前記ヒートシンクの下方に配設される走行モータに結線されて通電を行うケーブルが取り外し可能に係止される梁部材と、を備えることを特徴とする電気車両用パワーコントロールユニット。
【請求項2】 前記車両に対して前方又は後方に配設された前記リアクトル受部に一端を固定され、前記前後方向に延在して前記リアクトル受部に対し前記前後方向に面する前記ボックスの壁面に他端を固定される第2の梁部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気車両用パワーコントロールユニット。
【請求項3】 前記ヒートシンクの流路壁は、前記前後方向に沿う壁面成分が前記前後方向に直交する壁面成分よりも多くなるように配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気車両用パワーコントロールユニット。
【請求項4】 前記ボックスの側方から前記車両の前後方向に複数並べられた通電線の一部が前記ボックスの下方に置かれかつ前記車両に対しその出力軸を左右方向に向けた走行モータに接続され、そして前記通電線の一部が、前記走行モータの非出力軸側の側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気車両用パワーコントロールユニット。
【請求項5】 電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックスと、該ボックスの側方から前記車両の前後方向に複数並べられた通電線であって、前記ボックスの下方に置かれかつ前記車両に対しその出力軸を左右方向に向けた走行モータに前記通電線の一部が接続されている通電線とから構成され、前記通電線の一部は、前記走行モータの非出力軸側の側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されることを特徴とする電気車両用パワーコントロールユニット。
【請求項6】 前記車両の後方に伸張した通電線は、前記車両の乗員室下方に配置された電力供給装置に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電気車両用パワーコントロールユニット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池電気自動車などの走行用のモータを搭載した電気車両に適用される電気車両用パワーコントロールユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】炭酸ガスなどを排出しないことから、バッテリなどの蓄電池や燃料電池を搭載し、走行用のモータ(以下「走行モータ」という)を駆動して走行する電気車両が注目されている。電気車両は、電池や走行モータのほかに電気車両用パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)を搭載している。例えば(図1参照)、燃料電池102、キャパシタ103及び走行モータ104を搭載した燃料電池電気自動車(以下「車両」という)100の場合、PCU101には、走行モータ104駆動用のインバータ(パワードライブユニット、以下「PDU」という)、燃料電池102とキャパシタ103との間の電圧調整を行うボルテージコントロールユニット(以下「VCU」という)などが内蔵されている。
【0003】また、この車両100は、車室の床下に燃料電池102及びキャパシタ103が、モータ室に走行モータ104が、走行モータ104の上方にPCU101が、それぞれ配設されている(符号Wは駆動輪を示す)。また、各コンポーネント間、つまり燃料電池102、キャパシタ103、走行モータ104、PCU101の間は、図2のブロック図に示すように高電圧ケーブルで接続されており、それぞれ電力の授受を行っている。以後、PCU101と燃料電池102を接続する高電圧ケーブルをFCケーブルという。また、PCU101とキャパシタ103を接続する高電圧ケーブルをCAPAケーブルという。また、PCU101と走行モータ104を接続する高電圧ケーブルをMOTケーブルという。ちなみに、図1に示すように、PCU101が走行モータ104の近くに配設されるのは、MOTケーブルの長さを短くして電力の損失を少なくするためである。
【0004】なお、モータ室における高電圧ケーブルのこれまでのレイアウトは、図11のようになっている。ここで、図11(a)は、モータ室内に配設されたPCU及び走行モータを正面(車両の前方)から見た模式図である。同(b)は、モータ室内に配設されたPCU及び走行モータを側面(車両の左方)から見た模式図である。同(c)は、モータ室内に配設されたPCUを上面から見た模式図(PCUに内蔵された機器を取り除いた状態)である。この図から分るように、FCケーブル及びCAPAケーブルは、走行モータ104とモータ室の隔壁(以下「M/R隔壁」という)の間を通されている。なお、図11において符号Rで示されているのは、PCU101に内蔵されたリアクトル(ノイズ低減用の平滑フィルタなどとして機能する電気部品)である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車両100が前後方向の衝突をした場合、モータ室が前後方向で潰れて変形することがある。こうなると、走行モータ104とM/R隔壁の間の隙間が少なくなってFCケーブルやCAPAケーブルをPCU101から取り外すのが困難になったりする。さらには、FCケーブルやCAPAケーブルが走行モータ104とM/R隔壁の間に挟まれ、PCU101から該ケーブルを取り外すことができなくなってしまうことがある。このような状況になると、PCU101を取り外してのメンテナンスができなくなったり、困難になったりする。従って、前後方向の衝突によりモータ室が変形しても、PCU101から高電圧ケーブルを容易に取り外すことができる構造にする必要がある。なお、現状では、走行モータ104とM/R隔壁の間の隙間を多く取っているが、これでは、ホイールベースが長めになって車両100自体の旋回性能を向上させにくかったり、車室スペースを狭くして居住性を低下させてしまう。また、いずれにしてもモータ室の変形の程度によっては、FCケーブル及びCAPAケーブルが走行モータ104とM/R隔壁の間に挟まれてしまうことに変わりがない。
【0006】また、PCU101は、車両100の走行に対して重要な役割を果たすため、衝突などによる衝撃に対して、PCU101の筐体であるボックス110の変形を少なくし、内部の機器の機能を保護する必要がある。
【0007】また、PCU101に内蔵されるリアクトルRは、通電するとコイルの巻線抵抗によるジュール熱と鉄心に生じる渦電流によるジュール熱によって、その表面が高温になる。このため、PCU101に内蔵された電気部品や電子部品がリアクトルRからの輻射熱などで高温になり、動作が不安定になる恐れがある。また、PCU101の冷却性をよくするために、PCU101(ボックス110)の内部の空間を多く取って通気をよくしようとすると、PCU101が大きくなってしまう。とはいえ、リアクトルRは、機能面からしてPCU101から離した位置に配設するのは好ましくない。
【0008】そこで、本発明は、前後方向の衝突などによりモータ室が変形した場合でも接続された高電圧ケーブルの取り外しが容易であり、それ自体変形しづらく、小型化可能であり、また、リアクトルが発生する熱の影響を排除することのできる電気車両用パワーコントロールユニットを提供することを主たる課題とする。加えて、本発明の別の課題は、通電線の挟み込みを防止可能な電気車両用パワーコントロールユニットを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決した本発明の電気車両用パワーコントロールユニットは、電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックスと、該ボックスのいずれかの外壁面に設けられてリアクトルを支持するリアクトル受部と、該リアクトル受部の下端が接続され、前記ボックスの底面を覆い、内部に流路壁からなる流路を備えて該流路に冷却水を通流させることで前記ボックスと熱交換を行うヒートシンクと、前記ボックスにおける前記車両の前後方向に延在する少なくとも一方の側部に渡され、前記ヒートシンクの下方に配設される走行モータに結線されて通電を行うケーブルが取り外し可能に係止される梁部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】この構成においては、電力供給制御を行う機器はボックスに納められるが、リアクトルは、ボックスのいずれかの外壁面で支持される。つまり、リアクトルは、ボックスの外に配設される。このため、リアクトルからの輻射熱などはボックスの外部に向けられる。リアクトル受部は剛性を向上する作用も有する。また、ヒートシンクは、ボックスの底面を覆ってボックスの底面の剛性を高める作用を有する。ここで、ヒートシンクとリアクトル受部の下端が接続されているので、例えばリアクトル受部に入力された力は、ヒートシンクで覆われたボックスの底面に分散される。また、ケーブルが係止される梁部材がボックスの側部(側壁)の剛性を高める。また、ケーブルはボックスの側方に係止されるので、ヒートシンク(ボックス)の下方に位置する走行モータを避けた位置にケーブルを容易に配設することができる。この際、ケーブルの長さが特に長くなることがない。また、ボックスとして、ケーブルが側方に係止されるので、ボックスの前後方向の長さを短くすることができる。
【0011】また、請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記車両に対して前方又は後方に配設された前記リアクトル受部に一端を固定され、前記前後方向に延在して前記リアクトル受部に対し前記前後方向に面する前記ボックスの壁面に他端を固定される第2の梁部材を備えることを特徴とする。
【0012】この構成では、ボックスに第2の梁部材が備えられる。第2の梁部材は、リアクトル受部に一端を固定される。他端は、前後方向に延在してリアクトル受部に対面する壁面に接続される。つまり、第2の梁部材は、ボックスに前後方向に渡される。このため、前後方向に入力される力に対して、ボックスに剛性を付与する。
【0013】また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2の構成において、前記ヒートシンクの流路壁は、前記前後方向に沿う壁面成分が前記前後方向に直交する壁面成分よりも多くなるように配設されていることを特徴とする。
【0014】この構成によれば、前後方向に力が入力された場合にヒートシンクとしての変形が少なくなるので、ボックス全体としての剛性が向上する。なお、ここでの壁面は、壁と床と天井を区別するものではない。
【0015】また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記ボックスの側方から前記車両の前後方向に複数並べられた通電線の一部が前記ボックスの下方に置かれかつ前記車両に対しその出力軸を左右方向に向けた走行モータに接続され、そして前記通電線の一部が、前記走行モータの非出力軸側の側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されることを特徴とする。
【0016】この構成によれば、通電線(高電圧ケーブル)の取出し箇所が走行モータの側部になることから、特に車両衝突のケースとして多い前後方向衝突に際して、走行モータのモータ室内での後退により通電線の配置空間が狭められることなく、クリアランスが確保される。そのため、モータ室を縮小することができる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに車室の前後長も長く設定することが可能となる。
【0017】このような、ケーブル構成のコントロールユニットは、全く新規である。従って、請求項5に記載の本発明の電気車両用パワーコントロールユニットは、電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックスと、該ボックスの側方から前記車両の前後方向に複数並べられた通電線であって、前記ボックスの側方又は下方に置かれかつ前記車両に対しその出力軸を左右方向に向けた走行モータに前記通電線の一部が接続されている通電線とから構成され、前記通電線の一部は、前記走行モータの非出力軸側の側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されることを特徴とするものである。
【0018】この構成によれば、通電線(高電圧ケーブル)の取出し箇所がモータの側部になることから、特に車両衝突のケースとして多い前後方向衝突に際して、走行モータのモータ室内での後退により通電線の配置空間が狭められることなく、クリアランスが確保される。そのため、モータ室を縮小することができる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに車室の前後長も長く設定することが可能となる。さらに、この構成によれば、通電線の取出し箇所がモータの側部になることから、これらの通電線の挟み込みを防止することが可能となる。
【0019】また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記車両の後方に伸張した通電線は、前記車両の乗員室下方に配置された電力供給装置に接続されていることを特徴とする。この構成によれば、燃料電池等の電力供給装置に延びた通電線(高電圧ケーブル)の取出し箇所がモータの側部になることから、走行モータのモータ室内後退により通電線の配置空間が狭められることなく、クリアランスが確保される。そのため、モータ室を縮小することができる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに車室の前後長も長く設定することが可能となる。さらに、これらの通電線の挟み込みを防止することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、PCUを搭載した車両の側面からの模式的な透視図である。図2は、図1の車両における高電圧ケーブルの接続状態を示すブロック図である。図3(a)は、モータ室内に配設されたPCU及び走行モータを正面(車両の前方)から見た模式図である。同(b)は、モータ室内に配設されたPCU及び走行モータを側面(車両の左方)から見た模式図である。同(c)は、モータ室内に配設されたPCUを上面から見た模式図(PCUに内蔵された機器を取り除いた状態)である。
【0021】なお、本発明において使用する用語「通電線」または「高電圧ケーブル」とは、PCUを介して他の機器に電気的に接続するケーブル全てを包含することを意味する。すなわち、以下の実施形態においては、電気車両の代表例として、従来技術で説明した図1に示すような車両を中心に説明するが、本発明における通電線(高電圧ケーブル)は、従来技術と同様のMOTケーブル、FCケーブル、CAPAケーブルに限定されるものではない。例えばCAPAケーブルの代わりに別の蓄電手段、例えば二次電池と接続するケーブルやFCケーブルの代わりに、別の電力供給装置、例えば太陽電池と接続するケーブルも本発明の言う通電線(高電圧ケーブル)である。
【0022】図1に示すように、本実施形態のPCU(Power Control Unit)1は、車両EVの前部に位置するモータ室に設置された走行モータ4の上部(直上)に配設されている。このようにPCU1が走行モータ4の上部に配設されるのは、モータ室の前後方向の長さを短くし、かつMOTケーブルの長さを短くするためである。本実施形態の車両EVにおける各コンポーネントの基本レイアウト、つまりPCU1、燃料電池2、キャパシタ3、走行モータ4のレイアウトは、従来例のものと同じであっても異なっていてもよい。また、図2を共用するように、各コンポーネント間の高電圧ケーブルの接続状態も従来例と同じである。
【0023】PCU1の筐体であるボックス10は、幅及び奥行きに比べて、高さの低い扁平な箱型をしており、防水性を有する。ボックス10には、燃料電池2用のVCU、走行モータ4用のPDU、冷却水循環用のインバータ、スーパチャージャ駆動用のインバータなどが内蔵され(図示外)、PCU1を構成している。
【0024】モータ室における高電圧ケーブルのレイアウトについて説明する。図3(a)に示すように、PCU1は、車両右方(図面上は左方)にコネクタケース13を備える。図3(c)に示すように、コネクタケース13は、MOTケーブル用の3つのコネクタ(三相)、CAPAケーブル用の2つのコネクタ(単相)、及びFCケーブル用の2つのコネクタ(単相)を有している。つまり、本実施形態のPCU1は、高電圧ケーブルの接続を、すべてPCU1の片側に設けられたコネクタケース13で行い、コネクタケース13の部分でMOTケーブルなどの取り外しができるようになっている。
【0025】なお、符号10aはボックス10の蓋である。また、符号13aは、ボックス10の内部にコネクタケース13を画成する断面L字型をした仕切であり、ボックス10の前方の壁面から後方の壁面に渡る長さを有する。ちなみに、この仕切13aには、MOTケーブルなどを取り外し可能に係止するためのコネクタが実際に取り付けられている。この仕切13aは、請求項の「ボックスにおける車両の前後方向に延在する少なくとも一方の側部に渡され、前記ヒートシンクの下方に配設される走行モータに結線されて通電を行うケーブルが取り外し可能に係止される梁部材」に該当する。
【0026】また、図3(a)(b)に示すように、PCU1から下方に伸びるMOTケーブルは、PCU1の直下に位置する走行モータ4に接続される。また、図3(a)(b)に示すように、FCケーブル及びCAPAケーブルは、PCU1から下方に垂下し、走行モータ4の右脇(図面上は左脇)を通過して後方に伸び、さらにM/R隔壁の下方を通過して、図2に示されるブロック図のように燃料電池2及びキャパシタ3に接続される。
【0027】このように、MOTケーブル、FCケーブル及びCAPAケーブルは走行モータ4の右方(車両EVを基準にしての右方)に退避あるいはオフセットさせてあるので、車両EVの前後方向の衝突などにより、走行モータ4及び/又はPCU1が後方に移動してM/R隔壁との隙間が狭くなっても、これらケーブルをPCU1から取り外す作業に支障が生じることがない。また、衝突などにより、走行モータ4がモータ室を後方に移動しきっても、FCケーブル及びCAPAケーブルが走行モータ4とM/R隔壁に挟まれることがない(図3(b)参照)。この点、図11に示されるPCU101とは異なる。
【0028】なお、MOTケーブルなどの高電圧ケーブルとして、導体(錫メッキ軟銅線)を、絶縁体(架橋ポリエチレン)、編組シールド(錫メッキ軟銅線)、シース(PVC)で絶縁・保護した電気自動車用架橋ポリエチレン絶縁編組シールド高圧電線を、使用している。ちなみに、本実施形態では、CAPAケーブルの導体断面積は、FCケーブルやMOTケーブルの導体断面積よりも小さい。
【0029】次に、リアクトルRについて説明する。図3(b)(c)に示すように、PCU1の車両EVに対する後方外壁面には、リアクトル受部11aとリアクトルカバー11bから構成されるリアクトルケース11が設けられている。即ち、本実施形態では、リアクトルRはPCU1に対して外付けされている。
【0030】図4はリアクトルケース11の分解斜視図であるが、リアクトルRは、この図4に示すようにしてリアクトルケース11の内部に収納される(リアクトルケース11は、防水性を有する)。なお、リアクトルRは、従来の技術の欄でも記載したように、コイルの巻線抵抗によるジュール熱と鉄心に生じる渦電流によるジュール熱によって表面が高温になる。このため、リアクトルカバー11bなどは放熱性をよくするために熱伝導良好な材料(アルミニウムなど)からできている。
【0031】このように、リアクトルRをPCU1(ボックス10)の内部から外部に移すことにより、内部に向けられていたリアクトルRの表面からの輻射熱などが、PCU1の外部に向けられることになる。このため、PCU1に内蔵されている電力供給制御を行う機器などへの熱の影響が低減される。また、リアクトルR自体の冷却が容易になる。
【0032】ヒートシンク12について説明する。図5などに示すように、PCU1の底面にはヒートシンク12が設けてある。このヒートシンク12は、コネクタケース13の部分を除いたPCU1の底面を覆い、内部に流路壁からなる図示しない流路を備える。この流路には冷却水が通流され、PCU1に内蔵されたPDUやVCUが発生する熱が除かれる。つまり、PCU1の冷却が行われる。
【0033】PCU1(ボックス10)の剛性について説明する。PCU1は車両EVにとって重要な機能を有する部品であるので、車両EVが衝突した場合でも、PCU1の機能を維持できるようにボックス10には剛性が持たせてある。
【0034】本実施形態では、ボックス10に剛性を持たせるため、ボックス10は、型物、又は切削品で構成してある。また、ボックス10には図示しないリブが設けてあり、衝突時の衝撃によりボックス10の壁面が内側に倒れ込むことを防止している。
【0035】また、図4などに示すリアクトルケース11(リアクトル受部11a)は、ボックス10の剛性を向上する役割を有する。殊に、リアクトル受部11aは、図5に示すように側面視して略L字型をしており、かつL字型の出っ張り部分がヒートシンク12にオーバラップして接続されている(図5の太線部分参照)。ちなみに、ヒートシンク12は後記するように、ボックス10の底面の剛性を向上する機能を有する。このため、L字型のリアクトル受部11aにより、車両EVの前後方向の衝突時にリアクトルR(リアクトルケース11)がボックス10の内側に倒れこむことが防止される。
【0036】また、図5に示すように、ボックス10の底面はヒートシンク12で覆われているが(コネクタケース13の部分を除く〔図3(a)参照〕)、このヒートシンク12は、ボックス10の底面の剛性を向上する。さらに、図6(a)に模式的に示すように、ヒートシンク12の内部に配設された流路12aの流路壁は、車両EVの前後方向に沿う壁面成分が前後方向に直交する壁面成分よりも多くなるようにしてある。つまり、流路12aは、車両EVの前後方向に流路12aの直線部分が多くなるように配設されている。このようにすることで、図6(b)のように、車両EVの横方向に流路12a’の直線部分が多くなるように配設した場合に比べて、ボックス10に前後方向の力が入力されても、流路壁がリブと同様に変形を防ぐ働きをするので、ボックス10の剛性が向上して変形し難くなる。
【0037】また、図3(a)、図6(a)などに示すように、ボックス10にコネクタケース13を画成する仕切13aは、ボックス10の前方の壁面から後方の壁面に渡って配設されているので、ボックス10に前後方向の力が入力されても、ボックス10の剛性が向上して、ボックス10が変形し難くなる。
【0038】このように、本実施形態のPCU1によれば、PCU1の側方にMOTケーブル、CAPAケーブル及びFCケーブルが接続されているので、例えば車両EVが前後方向の衝突を起こしてモータ室が前後方向に圧縮されるような変形をしても、これらケーブルの取り外しを容易に行うことができる。また、これらCAPAケーブル及びFCケーブルが走行モータ4及びM/R隔壁の間に挟まれることがない。このため、PCU1を取り外しての修理を容易に行うことができる。さらに、PCU1の側方にMOTケーブル、CAPAケーブル及びFCケーブルが接続されているので、PCU1の前後方向の長さを短くすることができる。なお、PCU1の小型化、前後方向の長さの短縮化は、車両EVにおけるモータ室の小型化や車室のスペース確保が達成される。
【0039】また、本実施形態のPCU1によれば、リアクトルRがボックス10の外部に配設してあるので、リアクトルRがボックス10の内部にある場合に比べて、PCU1の機器に対する熱の影響が小さくなる。このため、PCU1を小型化することができる。また、冷却負荷を少なくすることができる。さらに、リアクトルRの冷却を行いやすくなる。なお、PCU1の小型化(前後方向の長さの短縮化)は、車両EVにおけるモータ室の小型化や車室のスペース確保が達成される。
【0040】また、ボックス10の後方壁面に、側面視してL字型の剛性を有するリアクトル受部11aを設け、しかも、ヒートシンク12とリアクトル受部11aの下端をオーバラップして接続したので、前後方向の力に対してボックス10の剛性を高くすることができ、例えば、ボックス10の後方壁面がボックス内に倒れこむことが防止される。加えて、ヒートシンク12は、ボックス10の底面の剛性を向上するが、さらに、ヒートシンク12の内部には、直線部分(壁面成分)が前後方向に多くなるようにして流路12aが配設されているので、前後方向の力に対してボックス10の剛性が向上する。また、ボックス10にコネクタケース13を画成する仕切13aが配設されているので、前後方向の力に対してボックス10の剛性が向上する。
【0041】次に、図7を参照して、さらに前後方向に入力される力に対して剛性を高めた実施形態を説明する(図1〜図6を適宜参照)。なお、前記した実施形態と共通する要素・部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】図7に示すように、ボックス10は、その内部に断面角型(コ字型、L字型…)の梁15を有する。この梁15は、ボックス10に対して前後方向に渡され、一端をリアクトル受部11aに固定され他端をボックス10の前方の壁面に固定されている。この梁15は、請求項における「車両に対して前方又は後方に配設されたリアクトル受部に一端を固定され、前後方向に延在してリアクトル受部に対し前後方向に面するボックスの壁面に他端を固定される第2の梁部材」に該当する。
【0043】この構成によれば、梁15は、ボックス10の前方の壁面と後方の壁面(リアクトル受部11a)を連結しているので、車両EVが前後方向の衝突などをした場合に、ボックス10に入力された前後方向の力は梁15により前方の壁面と後方の壁面に分散される。従って、ボックス10の壁面が変形しづらくなる(剛性が向上する)。また、梁15により前方の壁面及び後方の壁面が図7に示すL1,L2に区分されるので(壁面の1辺の長さが短くなることに相当)、モーメントの関係からボックス10の壁面が変形しづらくなる(剛性が向上する)。この梁15は、蓋10aに設けるようにしてもよい。
【0044】次に、図8に基づいて、本発明に係るPCUの別の実施の形態を説明する。図8は、本発明のPCUを配置した車両の概略正面図であり、図8(a)および図8(b)は、各々PCUが有する通電線のレイアウトを示す。この実施の形態は、本発明のPCUについて、通電線、すなわちMOTケーブル、FCケーブル及びCAPAケーブルの配置にスポットを当てたものであるが、本発明の通電線は、これらの特定の通電線に限定されるものではない。なお、この実施の形態の説明において、適宜図3を参照するものとする。
【0045】図3(b)に示す通り、通電線の一部であるMOTケーブルは、走行モータ4に結線されている。そして、図8(a)、(b)に示す通り残りの通電線であるFCケーブル及びCAPAケーブルは、各々、走行モータ4の非出力軸側4bに延長している。すなわち、走行モータ4の出力軸側4aに延長すると、FCケーブル及びCAPAケーブルとが互いに干渉するからである。そして、FCケーブルは、図8(a)、(b)に示す燃料電池2に接続され、一方CAPAケーブルは、燃料電池2の側面(図8(a)、(b)においては右側)を通ってキャパシタ3と接続される。
【0046】この際に、図3(b)に示す通り、PCU1のFCケーブル及びCAPAケーブルは、車軸Sの位置からやや後方に下がっているので車軸Sと干渉することはない。図8(a)に示す通り、FCケーブルおよびCAPAケーブルは、PCU1の後方(図中破線で示す)から走行モータ4と燃料電池2との間の空間の一部を通り、そして燃料電池2の側部を通って、各々燃料電池2およびキャパシタ3と接続される。
【0047】このように構成することによって、FCケーブルおよびCAPAケーブルは、走行モータ4と燃料電池2との間の空間のほんの一部(走行モータ4の後方側)にしか存在しないこととなる。そのため、走行モータ4と燃料電池2との間に充分なクリアランスを確保することが可能となる。したがって、例えば車両が前又は後方向から衝突して、走行モータ4と燃料電池2との間の空間が縮小された場合においても、図8(a)に示す構成で通電性を配置することによって、通電線が走行モータと燃料電池との間に挟みこまれることを防止することができる。また、走行モータ4と燃料電池2との間に充分なクリアランスを確保することが可能となるので、モータ室を縮小して構成することが可能となる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに全長を縮小しない場合でも車室の前後長を長く設定することが可能となる。
【0048】また、本発明の別の実施形態において、通電線を図8(b)に示す通りに配置することが可能である。すなわち、本発明のPCU1の下側に延びるFCケーブルおよびCAPAケーブルを、まず図中破線で示す通り走行モータ4の非出力軸側4bの側部に延長し、そして燃料電池2の側部を通って、各々燃料電池2およびキャパシタ3と接続することができる。なお、図8(b)に示すようにFCケーブルおよびCAPAケーブルを配置するに当たって、走行モータ4の非出力軸側と駆動輪Sとの間に存在する図示外のホイールハウスとFCケーブルおよびCAPAケーブルとが干渉しないように、FCケーブルおよびCAPAケーブルを配置しなければならいないことを当業者は理解するであろう。
【0049】図8(a)、(b)に示すように構成することによって、車両EVの前後後方への衝突等によりモータ室内で走行モータ4が後退した場合であっても、通電線(FCケーブルおよびCAPAケーブル)は、走行モータ4と燃料電池2の間の空間に全く存在しないので、走行モータ4と燃料電池2との間にこれらの通電線が挟みこまれることはない。また、モータ室およびモータ室(走行モータ4)と燃料電池2との間の空間を縮小することができる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに全長を縮小しない場合でも車室の前後長を長く設定することが可能となる。
【0050】このようなPCU1の側方から前記車両EVの前後方向に複数並べられた通電線の一部(MOTケーブル)が走行モータ4に接続され、そして前記通電線の一部(FCケーブル及びCAPAケーブル)が、走行モータ4の非出力軸側4bの側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されること、特に通電線のうちの一部であるFCケーブルが車両の乗員室下方に配置された燃料電池2に接続されている実施の形態は、本発明のPCUと無関係に新規であり、一般の電気車両用のPCUまで拡張される。
【0051】すなわち、電気車両の電力供給制御を行う機器が納められるボックスと、該ボックスの側方から前記車両の前後方向に複数並べられた通電線であって、前記ボックスの下方に置かれかつ前記車両に対しその出力軸を左右方向に向けた走行モータに前記通電線の一部が接続されている通電線とから構成され、前記通電線の一部は、前記走行モータの非出力軸側の側部を通り前記車両の後方に伸張して配置されることを特徴とする電気車両用パワーコントロールユニット及びこの電気車両用パワーコントロールユニットにおいて、前記車両の後方に伸張した通電線は、前記車両の乗員室下方に配置された電力供給装置に接続されている電気車両用パワーコントロールユニットも本発明の範囲内である。
【0052】さらに、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、広く変形実施することができる。例えば、図9に示されるM/R隔壁に、リアクトルケース11の突出部分との接触を避ける入違い構造を設けてもよい。このようにすることで、モータ室の前後方向の変形に際して、PCU1とM/R隔壁が近接したときでもストロークを稼いでリアクトルケース11と他部材との接触を抑制することができる。入違い構造は、例えばリアクトルケース11が納まる間隔・奥行きを有するように設定する。入違い構造は、例えば図9に示すような所定間隔をおいて設けた2つの所定厚の高圧ユニットから構成することができる。また、図10に示すように、コネクタケース13をボックス10の両側に設けて、ボックス10が前後方向の力の入力に対して剛性をさらに有するようにしてもよい。
【0053】また、リアクトルRは、ボックス10の後方ばかりでなく、側方や前方に配設することができる。また、リアクトル受部11aは略L字型をして、ヒートシンク12にオーバラップして接続される必要はない。両者がオーバラップしていなくとも接触していれば、リアクトル受部11aに入力された力をヒートシンク12に分散することができるからである。また、本発明を燃料電池電気自動車に適用した実施形態を説明したが、本発明は、通常の電気自動車や、エンジン、走行モータ、バッテリを搭載したハイブリッド車両にも適用することができる。その場合、燃料電池2と接続されるFCケーブルは省略され、通電線(高電圧ケーブル)は、MOTケーブルとCAPAケーブルとから構成される。また、本発明においては、モータ室におけるPCU1の固定の手段・手法を特に限定するものではない。なお、図6(b)に示すように流路を設ける場合も、本発明の範疇に属する。
【0054】
【発明の効果】以上説明した本発明のうち、請求項1に記載の発明によれば、ケーブルが電気車両用パワーコントロールユニット側方に配設されるので、例えばモータ室が前後方向に変形しても、ケーブルの取り外し作業などが容易である。また、前後方向の力に対して電気車両用パワーコントロールユニットの剛性を大幅に高めることができる。これにより、最も多く発生する前後方向の衝突に対して、電気車両用パワーコントロールユニットの機能を維持することができる。また、リアクトルをボックスの外壁面に設けられたリアクトル受部で支持するので、電気車両用パワーコントロールユニット内部における熱の問題が解消される。また、リアクトルの放熱が容易になる。リアクトル受部によりボックスの剛性も向上する。また、請求項2に記載の発明によれば、さらに前後方向の力に対して剛性を高めることができ、最も多く発生する前後方向の衝突に対して、さらに電気車両用パワーコントロールユニットの機能を維持することができる。そして、請求項3に記載の発明によれば、一層前後方向の力に対して剛性を高めることができ、最も多く発生する前後方向の衝突に対して、一層電気車両用パワーコントロールユニットの機能を維持することができる。請求項4から請求項6に記載の発明によれば、通電線(高圧ケーブル)の取出し箇所がモータの側部になることから、特に車両衝突のケースとして多い前後方向衝突に際して、走行モータのモータ室内での後退により通電線の配置空間が狭められることなく、クリアランスが確保される。そのため、モータ室を縮小することができる。モータ室を縮小できることにより、車体の全長を縮小して設計することが可能となり、さらに車室の前後長も長く設定することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年7月12日(2002.7.12)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
【公開番号】 特開2003−102111(P2003−102111A)
【公開日】 平成15年4月4日(2003.4.4)
【出願番号】 特願2002−203536(P2002−203536)