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【発明の名称】 リニアモータ
【発明者】 【氏名】高橋 孝夫
【住所又は居所】兵庫県尼崎市下坂部3丁目4番1号 日立機電工業株式会社内

【要約】 【課題】1次側往復導線電流から永久磁石部に作用する磁場を最も小さくすることにより、永久磁石の減磁による特性の劣化を防止することができるリニアモータを提供すること。

【解決手段】着磁の方向が互いに逆向きとなる永久磁石1を搬送車2の走行方向に沿って交互に並べるとともに、軌道側に固定した1次側往復導線51、52の電流を、搬送車2に搭載した2次側ピックアップコイル31、32に電磁結合させ、搬送車2に搭載したリニアモータの電機子コイル4に非接触で給電するリニアモータにおいて、搬送車2の左右両側に2次側ピックアップコイル31、32と1次側往復導線51、52とを配設するとともに、各1次側往復導線51、52の略水平方向で互いに対向する導線に流れる電流の向きを同方向にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 着磁の方向が互いに逆向きとなる永久磁石を搬送車の走行方向に沿って交互に並べるとともに、軌道側に固定した1次側往復導線の電流を、搬送車に搭載した2次側ピックアップコイルに電磁結合させ、搬送車に搭載したリニアモータの電機子コイルに非接触で給電するリニアモータにおいて、搬送車の左右両側に2次側ピックアップコイルと1次側往復導線とを配設するとともに、各1次側往復導線の略水平方向で互いに対向する導線に流れる電流の向きを同方向としたことを特徴とするリニアモータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、永久磁石を用いた非接触給電のリニアモータに関し、特に、1次側往復導線電流から永久磁石部に作用する磁場を最も小さくすることにより、永久磁石の減磁による特性劣化を防止することができるリニアモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、半導体、液晶等を製造する工程における搬送においては、これらの工程におけるクリーンな環境を汚染することは極度に忌避される。そこで、接触による発挨を回避するために、これらの搬送を行う搬送車への電力供給についても、電源に接続された導線を1次側として固定的に配置し、この1次側に流れる電流に対し、磁性コアに巻線を巻回した2次側ピックアップコイルを搬送車に搭載し、電磁誘導現象を利用して、非接触的に電力を取る非接触給電装置を備えた可動の搬送車からなる搬送システムが使用されている。
【0003】また、搬送車の駆動に関しても、回転モータによる動輪駆動に伴なう発挨と、動輪ならびにレールの磨耗を大幅に減らするために、軌道側に並べた永久磁石を用いたリニアモータによるダイレクトドライブが行われるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このように永久磁石を用いたリニアモータと非接触給電とを組み合わせ、長期間の実験をした後、軌道に敷設したフェライト磁石の特性を調べた結果、特定の位置に敷設したフェライト磁石すべてについて、減磁により特性が劣化していることが判明した。特定の位置とは、搬送車が分岐・合流するときに非接触給電が途切れることがないように、分岐・合流部以外では片側給電であるところを搬送車の左右両側にある1次側往復導線からの同時給電が行われている位置であり、この位置では、永久磁石の両斜め上方にそれぞれ1次側往復導線が配設されている。
【0005】半導体、液晶等を製造する工程における搬送においては、これらの工程におけるクリーンな環境を汚染することは極度に忌避されるので、軌道外周をアルミニウム製の外壁で覆い、軌道の発塵のクリーンな環境への漏れを極力小さくしている。クリーン搬送における非接触給電システムでは10kHz近傍の高周波電流が使われており、1次往復電流が作る磁場はアルミニウム製の外壁に誘起される渦電流の反作用磁場のために、アルミニウム製の外壁の外へ漏れ難く、フェライト磁石が存在する空間へ閉じ込められる傾向がある。
【0006】フェライト磁石はほぼ絶縁物に近いので、フェライトに誘起される渦電流は小さく、その発生渦電流損は小さいと考えられる。他方、フェライトは電磁波吸収材として使われることがある。この電磁波吸収に寄与する損失の一つにフェライトが絶縁物即ち誘電体であることによる誘電体損失があるが、通常、電波であるメガHz、ギガHz級の超高周波領域で起こりうる損失である。非接触給電システムに使われる10kHz程度の高周波電流がフェライトに誘電体損失を発生する電場を誘起するとは考え難い。そこで、上記した特定の位置に敷設したフェライト磁石すべての特性が劣化した原因としては、フェライト磁石内部において磁場の強さHに対して磁束密度Bが時間的に遅れる磁気的ヒステリシス現象による損失と推定される。いずれにせよ、1次側往復導線に流れる電流がフェライト磁石部に作る磁場の大きさが、フェライト磁石減磁による特性の劣化のキーを握ると考えられる。
【0007】本発明は、叙上の如き実状に鑑み、磁場解析をして得られた、フェライト磁石部に作られる磁場を小さくできる1次側往復導線電流の知見に基づいてなされたものであり、1次側往復導線電流から永久磁石部に作用する磁場を最も小さくすることにより、永久磁石の減磁による特性の劣化を防止することができるリニアモータを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のリニアモータは、着磁の方向が互いに逆向きとなる永久磁石を搬送車の走行方向に沿って交互に並べるとともに、軌道側に固定した1次側往復導線の電流を、搬送車に搭載した2次側ピックアップコイルに電磁結合させ、搬送車に搭載したリニアモータの電機子コイルに非接触で給電するリニアモータにおいて、搬送車の左右両側に2次側ピックアップコイルと1次側往復導線とを配設するとともに、各1次側往復導線の略水平方向で互いに対向する導線に流れる電流の向きを同方向としたことを特徴とする。
【0009】このリニアモータは、左右両側の1次側往復導線の略水平方向で互いに対向する導線に流れる電流の向きを同方向としたことから、これら1次側往復導線で同時に給電するときに同方向に流れる電流が、永久磁石部に作る磁場を最も小さくすることができ、これにより、永久磁石の減磁による特性の劣化を防止し、リニアモータの信頼性を向上させるとともに、永久磁石の磁化強度を維持し、長寿命化を図ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明のリニアモータの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】図1に、本発明のリニアモータの一実施例を示す。このリニアモータは、着磁の方向が互いに逆向きとなる永久磁石1を搬送車2の走行方向(紙面の直交方向)に沿って交互に並べるとともに、軌道側アルミニウム製の外壁6の内側に固定された1次側往復導線51、52に流した電流に対して、搬送車2に搭載した磁性コアに巻線を巻回した2次側ピックアップコイル31、32を電磁結合させ、搬送車2に搭載したリニアモータの電機子コイル4に非接触で給電する構成を有している。そして、このリニアモータは、例えば、搬送車2が分岐・合流するときに非接触給電が途切れることがないように、搬送車の左右両側に2次側ピックアップコイル31、32と1次側往復導線51、52とを配設するとともに、この左右両側の1次側往復導線51、52から同時に給電をするときに、1次側往復導線51、52の略水平方向で互いに対向する導線51a及び52a、51b及び52bに流れる交番電流の同一時刻における電流の向きが、例えば、図示のように同方向となるようにしている。
【0012】図4に、2次元磁場解析を行い、1次側往復導線電流がフェライト磁石部に作るx方向磁場についてまとめたグラフを示す。図4において、aは上記の本発明実施例のリニアモータの磁場を示し、bは、左右両側の1次側往復導線51、52の互いに対向する導線に流れる交番電流の同一時刻における電流の方向が逆方向となるようにした図2に示す比較例のリニアモータの磁場を示す。また、cは、例えば、図3に示すように、分岐・合流部以外のように1次側往復導線51が片側にのみ配設されているリニアモータの磁場を示す。
【0013】図4より明らかなように、本発明のリニアモータのように、左右両側の1次側往復導線51、52の互い対向する導線に流れる電流の向きを同方向とした場合には、比較例のように電流の向きを逆方向にした場合に比較し、1次側往復導線電流がフェライト磁石部に作るx方向の磁場は格段に小さく、また、1次側往復導線51が片側にのみ配設されているリニアモータよりも小さくなっている。この場合、1次側往復導線が片側にのみ配設されているリニアモータでは、フェライト磁石の減磁による特性の劣化が皆無であることは実証されており、1次側往復導線電流がフェライト磁石部に作るx方向磁場が1次側往復導線が片側にのみ配設されている場合よりも小さくなる本発明のリニアモータにおいては、フェライト磁石の減磁による特性の劣化はないといえる。
【0014】一方、1次側往復導線の電流がフェライト磁石部に作る磁場にはy方向成分があるが、このy方向成分の磁場は、永久磁石1の背後にあるアルミニウム製の外壁6に誘起される渦電流の反作用のため、x方向成分に比べて大きさが1桁小さい。しかも、x方向成分と同様に、本発明の実施例のリニアモータのように、1次側往復導線の互い対向する導線に流れる電流の方向を同方向とした場合が、最もy方向成分の磁場が小さくなる。本発明のように導体に流れる電流の向きを同一とした場合に、逆方向とした場合と比較して、永久磁石に作用する磁場が小さくなる理由を以下に説明する。導体に流れる電流は、導体を中心とする同心円状の同じ方向の磁束を発生する。したがって、例えば、導体の左右における磁束の方向は互いに逆向きとなる。永久磁石が配設される位置は対向した導体のそれぞれ右、左の位置であるから、対向した導体に流れる電流の向きを同一とした場合には、左右の導体電流の作る磁束の方向は永久磁石が配設される位置において互いに逆向きとなり、磁束の相殺が起こり、永久磁石に採用する磁場が減少する。一方、本発明によらない、対向した導体に流れる電流の向きが互いに逆方向の場合には、導体に挟まれた永久磁石が配設された空間において、左右の導体電流の作る磁束の方向が同じとなり、磁束が加算され、永久磁石に作用する磁場が増大することとなる。
【0015】このように、この本発明のリニアモータは、左右両側の1次側往復導線51、52の略水平方向で互いに対向する導線51a及び52a、51b及び52bに流れる電流の向きを同方向としたことから、例えば、搬送車2が分岐・合流するときに非接触給電が途切れることがないように、搬送車2の左右両側にある1次側往復導線51、52で同時に給電をするときに、これら1次側往復導線51a及び52a、51b及び52bに同方向に流れる電流が、永久磁石部に作る磁場を最も小さくすることができ、これにより、永久磁石1の減磁による特性の劣化を防止し、リニアモータの信頼性を向上させるとともに長寿命化することができる。その結果、このリニアモータを用いた分岐・合流可能な搬送効率のよいクリーン搬送システムの信頼性向上と長寿命化が可能となる。
【0016】以上、本発明の実施例を説明したが、本発明の構成はこの実施例の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更することが可能である。
【0017】
【発明の効果】本発明のリニアモータによれば、左右両側の1次側往復導線の略水平方向で互いに対向する導線に流れる電流の向きを同方向としたことから、これら1次側往復導線で同時に給電するときに同方向に流れる電流が、永久磁石部に作る磁場を最も小さくすることができ、これにより、永久磁石の減磁による特性の劣化を防止し、リニアモータの信頼性を向上させるとともに、永久磁石の磁化強度を維持し、長寿命化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000233206
【氏名又は名称】日立機電工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県尼崎市下坂部3丁目4番1号
【出願日】 平成13年9月20日(2001.9.20)
【代理人】 【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治 (外1名)
【公開番号】 特開2003−92808(P2003−92808A)
【公開日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願番号】 特願2001−286265(P2001−286265)