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【発明の名称】 電気車の制御装置
【発明者】 【氏名】山田 博之
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会社日立カーエンジニアリング内

【氏名】安原 隆
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株式会社日立製作所自動車機器グループ内

【要約】 【課題】車両ストール時、電動機電流を増大させることなく、電動機の出力を増大させることにより、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図ることができる電気車の制御装置を提供することにある。

【解決手段】制御手段34は、電動機15の電流をトルク電流と励磁電流に分離して、すべり周波数指令値に応じて、電動機をベクトル制御する。ストール判定手段17が、電気車のストール状態を判定すると、制御手段15は、すべり補正係数演算手段21によって求められたすべり補正係数により、すべり周波数を補正した上で、電動機15を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電動機の電流をトルク電流と励磁電流に分離して、すべり周波数指令値に応じて、電動機をベクトル制御する制御手段と、この制御手段によって制御される電動機の回転数を検出する回転検出手段を有し、上記制御手段は、アクセル開度に応じて、電動機を駆動制御する電気車の制御装置において、電気車のストール状態を判定するストール判定手段と、すべり補正係数を演算するすべり補正係数演算手段とを備え、上記制御手段は、上記ストール判定手段によってストール状態と判定された時、上記すべり補正係数演算手段によって求められたすべり補正係数により、すべり周波数を補正した上で、上記電動機を制御することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項2】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記ストール判定手段は、上記回転検出手段によって検出された電動機回転数が所定値より小さく、アクセル検出手段によって検出されたアクセル開度が所定開度より大きいか若しくはこのアクセル開度に応じて求められる目標トルク指令値が所定値より大きい場合に、電気車のストール状態を判定することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項3】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記制御手段は、上記ストール判定手段によってストール状態と判定された後、所定時間が経過すると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項4】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記制御手段は、上記回転検出手段によって検出された電動機回転数が所定値より大きい状態が所定時間以上継続した場合、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項5】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記制御手段は、アクセル開度が所定値以下になるか、このアクセル開度に応じて求められる目標トルク指令値が所定値以下になると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項6】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記制御手段は、前後進選択手段によってニュートラルが選択されると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項7】請求項1記載の電気車の制御装置において、上記制御手段は、ブレーキが踏み込まれると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項8】電動機の電流をトルク電流と励磁電流に分離して、すべり周波数指令値に応じて、電動機をベクトル制御する制御手段と、この制御手段によって制御される電動機の回転数を検出する回転検出手段を有し、上記制御手段は、アクセル開度に応じて、電動機を駆動制御する電気車の制御装置において、上記制御手段は、ストール状態判定時に、上記電動機に供給する交流電力の周波数を増加制御することを特徴とする電気車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動機により電気車を駆動する電気車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電気車の制御装置としては、例えば、特開平10−309091号公報に記載されているように、交流電流を電流座標変換してトルク分電流と励磁分電流に分離検出し、このトルク分電流をもとにすべり周波数を求め、このすべり周波数をトルク分電流の大きさ又は出力電圧の大きさに従い演算するすべり周波数補正率により補正し、力行・回生それぞれの状態における電動機制御の精度を向上させるものが知られている。
【0003】また、例えば、特開平6−217586号公報に記載されているように、誘導電動機をV/F(電圧/周波数)一定制御を行う際に、すべり周波数一定制御を行う際の最大すべり周波数の制限値を、あらかじめ基準となる基準すべり周波数設定値とすべり周波数補正手段によって演算した補正値をもとに最大すべり周波数の制限値を補正し誘導電動機の温度変化に起因する2次抵抗変化分による出力変動を補償するするものが知られている。
【0004】さらに、例えば、特開平5−83976号公報に記載されているように、低速運転域では電動機をベクトル制御で制御し、高速運転域ではすべり周波数制御によって制御するというように運転条件によって制御方法を切り換えることによって、高速運転域でインバータ電圧利用率をあげて1パルス制御を行うといったような、ベクトル制御が成立しにくい条件下での電動機の制御精度を確保するものが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平10−309091号公報,特開平6−217586号公報,特開平5−83976号公報に記載されたものにおいては、車両が段差を乗り越える必要があるような運転状況、すなわち電動機がロックしていたり、極低速の状態,すなわち、車両ストール時における電動機の出力トルクの制御については何ら考慮されていないものである。
【0006】車両ストール状態を回避するために、電動機に流す電流を大きくして、電動機の出力トルクを増大する方法も考えられるが、電動機電流を大きくすると、バッテリーの消耗の問題や、コントローラやインバータの発熱が大きくなると言う問題がある。
【0007】本発明の目的は、車両ストール時、すなわち電動機がロック状態もしくは極低速で動作している状況において、電動機電流を増大させることなく、電動機の出力、すなわち発生トルクを増大させることにより、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図ることができる電気車の制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成するために、本発明は、電動機の電流をトルク電流と励磁電流に分離して、すべり周波数指令値に応じて、電動機をベクトル制御する制御手段と、この制御手段によって制御される電動機の回転数を検出する回転検出手段を有し、上記制御手段は、アクセル開度に応じて、電動機を駆動制御する電気車の制御装置において、電気車のストール状態を判定するストール判定手段と、すべり補正係数を演算するすべり補正係数演算手段とを備え、上記制御手段は、上記ストール判定手段によってストール状態と判定された時、上記すべり補正係数演算手段によって求められたすべり補正係数により、すべり周波数を補正した上で、上記電動機を制御するようにしたものである。かかる構成により、車両ストール時には、電動機電流を増大させることなく、すべり周波数を補正することにより、電動機の出力を増大させて、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図り得るものとなる。
【0009】(2)上記(1)において、好ましくは、上記ストール判定手段は、上記回転検出手段によって検出された電動機回転数が所定値より小さく、アクセル検出手段によって検出されたアクセル開度が所定開度より大きいか若しくはこのアクセル開度に応じて求められる目標トルク指令値が所定値より大きい場合に、電気車のストール状態を判定するようにしたものである。
【0010】(3)上記(1)において、好ましくは、上記制御手段は、上記ストール判定手段によってストール状態と判定された後、所定時間が経過すると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰するようにしたものである。
【0011】(4)上記(1)において、好ましくは、上記制御手段は、上記回転検出手段によって検出された電動機回転数が所定値より大きい状態が所定時間以上継続した場合、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰するようにしたものである。
【0012】(5)上記(1)において、好ましくは、上記制御手段は、アクセル開度が所定値以下になるか、このアクセル開度に応じて求められる目標トルク指令値が所定値以下になると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰するようにしたものである。
【0013】(6)上記(1)において、好ましくは、上記制御手段は、前後進選択手段によってニュートラルが選択されると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰するようにしたものである。
【0014】(7)上記(1)において、好ましくは、上記制御手段は、ブレーキが踏み込まれると、すべり周波数を補正前のすべり周波数に復帰するようにしたものである。
【0015】(8)また、上記目的を達成するために、本発明は、電動機の電流をトルク電流と励磁電流に分離して、すべり周波数指令値に応じて、電動機をベクトル制御する制御手段と、この制御手段によって制御される電動機の回転数を検出する回転検出手段を有し、上記制御手段は、アクセル開度に応じて、電動機を駆動制御する電気車の制御装置において、上記制御手段は、ストール状態判定時に、上記電動機に供給する交流電力の周波数を増加制御するようにしたものである。かかる構成により、車両ストール時には、電動機電流を増大させることなく、すべり周波数を補正することにより、電動機の出力を増大させて、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図り得るものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態よる電気車の制御装置の構成及び動作について説明する。最初に、図1を用いて、本実施形態による電気車の制御装置の全体構成について説明する。電気車としては、電動フォークリフトや電気自動車が用いられる。図1は、本発明の一実施形態による電気車の制御装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
【0017】制御装置34には、アクセル検出手段1,ブレーキ検出手段2,前後進選択手段3からの出力信号が入力する。アクセル検出手段1は、アクセルペダルの踏込み量(アクセルペダルの開度)を検出して、踏込み量(開度)の信号を制御装置34に出力する。ブレーキ検出手段2は、ブレーキペダルが踏込まれているか否かを検出して、踏込み状態の信号を制御装置34に出力する。前後進選択手段3は、前進若しくは後進が選択されているか、それとも、ニュートラルが選択されているかを検出し、前後進の選択状態を制御装置34に出力する。アクセル検出手段1,ブレーキ検出手段2,前後進選択手段3は、運転者の意志を電気的な信号に変換する手段として備えられている。制御手段34は、アクセル検出手段1,ブレーキ検出手段2,前後進選択手段3からの信号に基づいて、電動機15を制御する。
【0018】電動機15は、誘導電動機であり、車両の駆動力を発生する。制御装置34は、電力変換手段14に制御信号を供給する。電力変換手段14は、電源13の電力を電動機15に印加できる交流電力へと変換し、電動機15に電力が印加され、電動機15が駆動力を発生して、電気車が走行駆動される。
【0019】回転検出手段16は、電動機15の回転速度を検出して、電気的な回転信号Nrに変換して、制御手段34に出力する。回転検出信号Nrは、制御手段34の内部の電動機回転演算手段18に伝達される。電動機回転演算手段18は、回転検出信号Nrから電動機回転数信号Nmを演算して、目標トルク演算手段4,ストール判定手段17,周波数換算手段20に出力する。
【0020】制御装置34の目標トルク演算手段4には、アクセル検出手段1,ブレーキ検出手段2,前後進選択手段3,電動機回転数信号Nmの信号が、入力する。目標トルク演算手段4は、運転者の意志に沿った目標トルク指令値τmを演算する。トルク電流指令演算手段5は、目標トルク演算手段4によって演算された目標トルク指令値τmと、二次磁束値演算手段9によって演算された二次磁束値φ2に基づいて、トルク電流指令値Itを算出する。また、磁束指令演算手段6は、入力した目標トルク指令値τmに基づいて、この目標トルクに応じた磁束指令値φを演算する。磁束制御手段7は、入力した磁束指令値φに基づいて、磁束指令値φに対する電動機15の磁束を演算し、二次磁束値φ2を演算する。励磁インダクタンス演算手段31は、この二次磁束値φ2の結果より、励磁インダクタンス値Lmを演算する。励磁電流演算手段8は、入力した二次磁束値φ2と励磁インダクタンス値Lmの値に基づいて、励磁電流指令値Imを演算する。すべり演算手段19は、入力したトルク電流指令値Itと二次磁束値φ2に基づいて、電動機15の駆動制御に必要なすべり周波数の演算を行い、すべり周波数指令値23を出力する。
【0021】一方、ストール判定手段17は、入力した目標トルク指令値τm及び電動機回転数信号Nmに基づいて、車両がストール,例えば、運転者が車両が通常乗り越えられない段差を乗り越えようとする操作を行っているかどうかの車両走行状態を判断する。車両ストール状態は、例えば、目標トルク指令値τmが所定の値以上でありながら、電動機回転数信号Nmが所定の値よりも小さい(零若しくは極低回転)である場合に、ストール状態であると判定する。ストール判定手段17は、ストール状態であると判定すると、パワーアップフラグPUFをすべり補正係数演算手段21に出力する。すべり補正係数演算手段21は、パワーアップフラグPUFの結果を元に、すべり補正係数Ksの値を補正し、すべり演算手段19に出力する。すべり演算手段19は、すべり補正係数Ksの値に基づき、補正されたすべり周波数指令値ωsを出力する。一方、周波数変換手段20は、入力した電動機回転数信号Nmを、周波数に変換して、同期周波数ω0を出力する。同期周波数ω0とすべり周波数指令値ωsは加算され、一次周波数指令値ω1としてなる。一次周波数指令値ω1は、電動機15の駆動を行う周波数の指令となり、電流位相演算手段10,座標変換手段11,PWM生成手段12にそれぞれに入力する。
【0022】電流位相演算手段10は、トルク電流指令値It,励磁電流指令値Im、一次周波数指令値ω1に基づいて、電動機15に通電する電流の指令値及び電流の位相を演算し、結果を座標変換手段11に出力する。座標変換演算手段11は、電流の指令値及び位相の値に基づき、いわゆるベクトル制御の座標変換を行い、PWM生成手段12に出力する。PWM生成手段12は、電力変換手段14を駆動するための、いわゆるパルス列である駆動信号を生成し、電力変換手段14を駆動する。これにより、電源13の電力が電動機15に印加できる交流電力へと変換され、電動機15に電力が印加され、電動機15が駆動力を発生して、電気車が走行駆動される。
【0023】以上のように構成とすることにより、ストール判定手段17が、車両がストールしている状態、例えば車両が通常の性能では乗り越しができないような段差に差し掛かって、運転者がアクセルを一杯に踏み込んで乗り越しを図ろうとしているような状態を、目標トルク指令値τm及び電動機回転数信号Nmの情報を元に判断検知すると、電動機15に印加しているすべり周波数の指令値ω1を、すべり補正係数演算手段21で演算するすべり補正係数Ksに基づいて、すべり演算手段19により補正し、電動機15の出力トルクを増大させて、車両の段差乗り越しを可能とするような動作を実現することができる。なお、すべり補正係数Ksにより電動機15の出力トルクが増大できる原理については、図2を用いて、後述する。すべり周波数を補正することにより、電動機電流を増大させなくても、電動機の出力、すなわち発生トルクを増大させることができ、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図ることができる。
【0024】次に、図2を用いて、本発明の一実施形態における電気車の制御装置に用いる誘導電動機のすべり−トルク特性について説明する。図2は、本発明の一実施形態における電気車の制御装置に用いる誘導電動機のすべり−トルク特性図である。
【0025】電動機15には、交流で駆動するいわゆる誘導電動機を用い、誘導電動機を高応答かつ安定に駆動制御するための制御方法としては、一般的にベクトル制御が用いられている。ベクトル制御は、基本的には、電動機15に印加する交流電圧,交流電流,交流の周波数を制御するものである。
【0026】ベクトル制御においては、電動機15に印加する電圧、電流をベクトル成分に置換することにより制御する。ここで、誘導電動機を駆動するには、すべり周波数の設定が必要であり、すべり周波数指令値ωsは、以下の式(1)によって、ωs=(r2/Lm)・(It/Im) …(1)
と求めることができる。ここで、r2:電動機2次抵抗値,Lm:励磁インダクタンス値Lm,It:トルク電流指令値It,Im:励磁電流指令値Imである。この式(1)により、電動機に印加するすべり周波数ωsを決定する。
【0027】誘導電動機の発生するトルクτmは、以下の式(2)により、 τm=m・p・(Lm2/Lm+L2)・Im・It …(2)
と表すことができる。ここで、m:相数,p:極対数,L2:2次漏れインダクタンスである。
【0028】このようにして、あらかじめ電動機の定数を用意しておき、トルク電流指令値It及び励磁電流指令値Im、すべり周波数ωsを決定することによって、電動機発生トルクτmの制御が可能となる。
【0029】実際の制御演算においては、電動機発生トルクは、電動機15が発生すべきトルクである目標トルク指令値τmとして指令として与えられるものであるため、その目標トルク指令値τmよりトルク電流指令値It、励磁電流指令値Im等を求めて制御を実現する必要がある。ここで、磁束指令値φ,トルク電流指令値It,励磁電流指令値Imは、それぞれ、以下の式(3),(4),(5)で、φ=f(τm、Vm) …(3)
It=τm/φ …(4)
Im=φ/Lm …(5)
与えられる。ここで、Vm:電動機電圧である。この式(3)〜式(5)により、トルク電流指令値Itと励磁電流指令値Imを求めることができる。この時、磁束指令値φは、電動機15が発生すべきトルクや電動機の電圧によってあらかじめ決めておくことができる値であるため、目標トルク指令値τmまたは電動機電圧Vmに基づく値としてあらかじめ準備しておく。
【0030】式(1)に、式(5)を代入することにより、すべり周波数指令値ωsは、以下の式(6)により、ωs=r2・It/φ …(6)
として求めることができる。
【0031】このすべり周波数指令値ωsより、電動機15に印加する周波数指令値ω1は、以下の式(7)により、ω1=ωs+ω0 …(7)
電動機回転数信号Nmの周波数変換値である同期周波数(すべりが含まれていない周波数)にすべり周波数指令値ωsを加算することによって求めることができる。ここで、ω0:同期周波数である。
【0032】これらの演算結果を元に、電動機15への印加電流の位相は、以下の式(8)により、電流位相角δ、δ=taN-1(It/Im) …(8)
により求めることができる。
【0033】これらの一連の計算により、電動機15のトルクを目標トルク指令値τmに沿ってベクトル制御により制御することができる。ここで、すべり周波数指令値ωsは、式(6)に示されるような演算によって求めることができるが、この演算結果は基本的に電動機二次抵抗値r2,トルク電流指令値It、磁束指令値φによって求められるものであるが、演算処理上では係数によって補正することにより、式(9)に示すように、ωs=r2・It・Ks/φ …(9)
として、すべり周波数ωsの演算結果を変化させることが可能である。ここで、Ks:すべり補正係数Ksである。
【0034】以上のようにして、すべり周波数指令値ωsの演算に、式(6)の代わりに、式(9)を用いることにより、すべり周波数指令値ωsの値を自由に変化させることが可能である。このことによって、電動機15に印加する電圧及び電流は、トルク電流指令値It、励磁電流指令値Im、磁束指令値φ等のパラメータを変えないですべり周波数指令値ωsを単独で変化させることになり、電動機15に印加する電圧及び電流は変化させないまま、すべり周波数指令値ωsだけを増減変化せしめるように動作を行うことが可能となる。また、このすべり補正係数Ksは、先に述べたストール判定手段17からのパワーアップフラグPUFに基づいて、すべり補正係数演算手段21によって求めることにより、すべり補正係数Ksは、すべり演算手段19に伝達される。すべり演算手段19は、その内部において、式(9)に基づき演算を行うものである。また、式(9)におけるすべり補正係数Ksがない場合であっても、電動機二次抵抗値r2の値を変化させることによってもすべり周波数の演算値を変化させることもできる。
【0035】次に、誘導電動機は、印加電圧、電流及び周波数をもとに制御を行うが、そのすべりに対するトルクの特性は、図2に示すようになっている。図2において、横軸は同期周波数を示し、縦軸はトルクを示している。
【0036】電動機15に印加する周波数が、電動機15の回転速度である電動機回転数信号Nmの周波数と等しい場合には、すべりが存在しない状態であるため、この時は周波数ω0で駆動されていることになり、電動機15が発生するトルクはゼロである。ここから、すべり周波数指令値ωsを、図中のωsAまで増加させた場合、電動機15はトルクを発生し、トルクはP点のトルクτAを発生する。このままさらにすべり周波数指令値ωsを図中のωsBまで増加させると、さらにトルクは上昇し、電動機15の発生トルクは、図中Q点のトルクτBまで増大する。さらにすべり周波数指令値ωsを増大させた場合、電動機15の設計及び基本特性で決まる停動点を超えてることとなり、電動機15はいわゆる脱調現象となり、逆にトルクが低下していく特性になる。
【0037】この電動機15のすべり−トルク特性は誘導電動機である電動機15の個々の特性により左右されるものでもあり、また電動機電圧や電流によっても変化するものである。
【0038】ここで先に述べたように、すべり周波数指令値ωsをすべり周波数補正係数Ksによって補正するように動作させた場合、電動機電圧や電流を変化させずに、すべり周波数指令値ωsを増減させることができるので、その場合には図3に示す特性と同様のすべり−トルク特性を示すことになる。
【0039】通常、誘導電動機は、停動点付近まですべりを発生させて運転した場合、電動機回転中の負荷変動外乱や速度変動の影響により出力トルクが不安定になる可能性があるため、出力トルクの安定性等を考慮した上で最大のすべり周波数は、図中のωsAまでに設定して制御することが一般的である。
【0040】それに対して、本実施形態では、電動機15の回転速度が極低速や電動機15がロック状態である場合には、外乱や速度変動の影響が非常に少なくなる。この時に、すべり周波数指令値ωsをωsBまで増加させることにより、通常の制御においては出力トルクがτAまでしか発生しない電動機15をトルクτBまで発生させて駆動することが可能となる。このことを利用し、ストール判定手段17の判定に基づき、すべり周波数ωの値をすべり補正係数Ksによって増加補正することによって、すべり周波数指令値ωsを図中のωsAからωsBまで増加させる。その結果、電動機15の出力トルクを、図中のτAからτBまで増加させることができ、車両の段差乗り越え等の状況で電気車に大きい駆動力を発生させ、通常では乗り越し不可能な段差を乗り越しすることができる等の動作ができる様になり、電気車の性能向上に貢献することが可能となる。
【0041】また、この時、電動機15に印加する電圧及び電流は先に述べたように増加すること無く出力トルクの増大が可能なため、電動機15や電力変換手段14を不必要に大きいものにする必要が無いものである。
【0042】次に、図3〜図6を用いて、本実施形態による電気車の制御装置による制御方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態による電気車の制御装置のストール判定手段17による判定内容を示すフローチャートであり、図4は、本発明の一実施形態による電気車の制御装置のすべり補正係数演算手段21による演算内容を示すフローチャートであり、図5及び図6は、本発明の一実施形態による電気車の制御装置による制御時のタイミングチャートである。
【0043】アクセル検出手段1が踏み込まれて電気車が走行しようとした時に、電気車が段差などを乗り越そうとして乗り越しができない様な状態になったときには、アクセル検出手段1により求められる目標トルク指令値τmがあるしきい値のAC1以上であっても、電動機15が回転せず電動機回転数信号Nmはゼロを維持した状態となる。この時には電動機電流は目標トルク指令値τmに従ってベクトル制御により演算された電流が流れ、すべり周波数指令値ωsについても目標トルク指令値τmに従った値であるωsAの値が出力されている状態となる。
【0044】そこで、図3のステップs10において、ストール判定手段17は、目標トルク指令値τmがしきい値AC1以上かどうかを判定する。しきい値AC1以上でない場合は、電動機15は大きな出力トルクを必要としない状況であるので、ステップs15に進み、ストール判定手段17内のストール判定カウンタをクリアし、パワーアップフラグPUFをリセットして、ストール判定手段17の処理を終了する。
【0045】例えば、図5(A)の時刻t1に示すように、目標トルク指令値τmがしきい値AC1以上である場合には、ステップs20に進み、ストール判定手段17は、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm1より上回るか下回るかを判定する。
【0046】ステップs20において、ストール判定手段17は、電動機回転数信号NmがNm1を下回る場合にはステップs25に進み、ステップs25において、ストール判定手段17は、目標トルク指令値τmがしきい値AC1以上かつ電動機回転数信号Nmがしきい値Nm1以下の状態が、規定時間tc経過したかどうかを判定する。この判定は、ストール判定手段17の内部に備えられたストール判定カウンタによるカウント計数値によって判定する。すなわち、目標トルク指令値τmがあるしきい値AC1以下で、かつ電動機回転数信号Nmがあるしきい値Nm1以下のときは、車両ストール状態となっているので、ストール判定手段17にて判断検出し、このストール状態の継続時間をストール判定カウンタによりカウントする。
【0047】ステップs25において、規定時間tcが経過していない場合には、まだストール状態確定ではないので、ステップs30に進み、ストール判定手段17は、ストール判定カウンタを加算して、パワーアップフラグPUFをリセットしておき、規定時間tcの計数を継続する。
【0048】一方、図5(D)に示すように、時刻t2において、ステップscにて規定時間tcが経過したと判断された場合、すなわち,カウントC1分継続した場合には、ストール判定手段17は、ストール状態確定として、ステップs30に進み、図5(E)の時刻t2におけるストール状態確定のX点にて、パワーアップフラグPUFをセットして、ストール時の電動機15の出力トルクアップ動作を行うようにする。
【0049】次に、図4を用いて、パワーアップフラグPUFをセット時の処理について説明する。
【0050】ステップs110において、すべり補正係数演算手段21は、ストール判定手段17から伝達されるパワーアップフラグPUFがセットされているか否かを判定する。パワーアップフラグがセットされている場合には、ステップs120に進み、セットされていない場合には、ステップs150に進む。
【0051】セットされている場合には、ステップs120において、すべり補正係数演算手段21は、すべり補正係数Ksが、規定のすべり補正係数の上限値KsBより大きいかどうかを判定する。
【0052】ステップs120において、すべり補正係数KsのKsがすべり補正係数の上限値KsBに達していない場合は、ステップs130において、すべり補正係数演算手段21は、すべり補正係数Ksにある任意の値を加算することによりすべり補正係数Ksの値を増加せしめる。なお、すべり補正係数Ksの増加方法は、任意の値の加算による方法でもよいし、ある任意のパターンまたは関数による演算で求めても良いものである。
【0053】以上のようにして、パワーアップフラグPUFがセットされている場合には、図5(F)の時刻t2以降において示すように、すべり補正係数Ksの値が規定任意のすべり補正係数の上限値Ksbに向かって漸次増加していき、やがて規定任意のすべり補正係数の上限値Ksbの値に保たれるようになる。この規定任意のすべり補正係数の上限値Ksbの値は電動機15の設計及び特性より決まる停動点のすべりまでの範囲で任意に決定すれば良いものである。
【0054】図5(F)に示すように、すべり補正係数KsがKsAからKsBまで増加し、それに伴って、図5(G)に示すように、すべり周波数指令値ωsがωsAからωsBまで増加する。この動作により、誘導電動機である電動機15の発生トルクτmは、図5(H)に示すように、τAからτBまで増加する動作となる。この時、電動機電流は、目標トルク指令値τmが変化しないため、すべり周波数指令値ωsが変化する前後でも目標トルク指令値τmによって決定している値を維持したままである。
【0055】ステップs120の判定で、すべり補正係数Ksが上限値Ksbより大きいか等しい場合には、すでにすべり補正係数Ksが上限値に達していることを示しているので、ステップs140において、すべり補正係数演算手段21は、すべり補正係数Ksにすべり補正係数の上限値KsBの値を代入して、すべり補正係数演算手段21の処理を終了する。従って、図5(F)に示すように、すべり補正係数は、上限値KsBに保持される。
【0056】これらの動作により、電動機15の発生トルクが増大して電気車の駆動力が増加し、車両は段差等を乗り越えすることが可能となる。車両が段差を乗り越えすると、電動機15が回転し始めるため、電動機回転数信号Nmがゼロから増加する。
【0057】再び、図3に戻り、ステップs20において、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm1よりも上回っている場合には、ステップs40に進む。
【0058】ステップs40において、このステップに進む以前にストール判定による出力トルクアップがなされている可能性があるため、ストール判定手段17は、パワーアップフラグPUFがセットされているかどうかを判定する。
【0059】ここでパワーアップフラグPUFがセットされていない場合には、以前にストール確定とはならなかったことであるので、ステップs50に進み、ストール判定手段17は、ストール判定カウンタ及びパワーアップフラグPUFをクリアリセットして、ストール判定手段17の処理を終了する。
【0060】一方、ステップs40において、パワーアップフラグPUFがセットされていた場合には、以前にストール状態が確定してパワーアップフラグPUFがセットされていた状態であるので、ステップs45に進み、ストール判定手段17は、電動機回転数信号Nmが、今度は出力トルクアップ解除の条件であるしきい値Nm2を上回るか下回るかを判定する。
【0061】ステップs45において、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm2を上回っていた場合には、電動機15が普通に回転している状態でストールではない状態であると判断できるため、ステップs50に進み、ストール判定手段17は、ストール判定カウンタ及びパワーアップフラグPUFをクリアリセットしてストール判定手段17の処理を終了する。
【0062】また、ステップs45において、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm2を下回っている状態である場合には、ストール状態確定により電動機15の出力トルクがアップされているにも関わらず電動機15が回転していない、もしくは極低速でしか回転していないということであるので、その状態の時間を計測判定すべくステップs55に進む。
【0063】ステップs55において、ストール判定手段17は、ストール判定カウンタの計数値をもとに規定時間tdが経過したかどうかを判定し、規定時間tdが経過している場合にはストール判定による電動機15の出力トルクアップ状態が連続して継続している状態で、かつ電動機15が回転できない状態が継続していると見なしステップs65に進んで、ストール判定カウンタ及びパワーアップフラグPUFをクリアリセットする。
【0064】一方、ステップs55において、規定時間tdが経過していない場合は、ステップs65に進み、ストール判定手段17は、ストール判定カウンタを加算する。
【0065】以上のようにして、図5(B)に示すように、時刻t3において、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm2まで達した場合、ストール判定手段17は、電気車が段差を乗り越えして、ストール状態は解除されたと判断し、Y点において、図5(D)に示すように、ストール判定カウンタをリセットし、パワーアップフラグをリセットする。
【0066】次に、パワーアップフラグPUFがリセットされた場合の動作について説明する。
【0067】図4のステップs110の判定で、パワーアップフラグPUFがセットされていなかった場合には、ストール状態によるパワーアップが解除されていることを示しているので、ステップs150に進む。
【0068】ステップs150において、すべり補正係数演算手段21は、すべり補正係数Ksが、規定任意のすべり補正係数の下限値KsAよりも大きいかどうかを判定する。すべり補正係数KsのKsが規定任意のすべり補正係数の下限値KsAよりも小さいか等しい場合にはステップs170に進み、すべり補正係数KsのKsの値を規定任意のすべり補正係数の下限値KsAの値として処理を終了する。これによりすべり補正係数KsのKsの値が通常の制御を行うための規定のすべり補正係数の値へと復帰する。
【0069】一方、ステップs150において、すべり補正係数KsのKsが規定任意のすべり補正係数の下限値KsAよりも大きい場合には、すべり補正係数KsのKsを漸減する必要があるため、ステップs160に進み、すべり補正係数KsのKsにある任意の値を減算し、すべり補正係数KsのKsの値を減少せしめる動作を行う。このすべり補正係数KsのKsの減少方法は、任意の値の減少による方法でもよいし、ある任意のパターンまたは関数による演算で求めても良いものである。
【0070】以上のようにして、図5の時刻t3において、パワーアップフラグPUFがリセットされた場合には、図5(F)に示すように、すべり補正係数Ksは、規定任意のすべり補正係数の下限値KsAに向かって漸次減少していき、通常の制御によるすべり周波数指令値ωsの演算に復帰できる。
【0071】図5(F)に示すように、すべり補正係数Ksが漸次減少すると、図5(G)に示すように、すべり周波数指令値ωsがωsBからωsAに戻り、図5(H)に示すように、電動機15の出力トルクτmはτBからτAに復帰する動作となる。
【0072】このような一連の処理によって、電気車がストールしているかどうか、ストール判定により電動機15の出力トルクアップを行ってストール状態を脱出できたか、出力トルクアップしてもストール状態を脱出できない状態が規定時間経過しているかどうかの判別を行うことができ、その状況に応じた電動機15の出力トルクの制御を的確に行うことができる。
【0073】以上のようにして、電気車が段差乗り越え等の動作を行う必要が合った場合に一時的に電動機15の出力トルクを増加させるように動作し、電気車の段差乗り越え動作等を容易とすることが可能となり、電気車の性能を向上でき、また、使い勝手を向上することができる。
【0074】また、通常の登坂動作などの動作の場合には、電動機回転数信号Nmの値により車両がストール状態なのか登坂状態であるのかを区別することが可能となり、不必要に電動機15の発生トルクを増加させることがないので、通常動作においてはすべり周波数指令値τmの値の上限がωsAとなり、電動機15を安定に駆動できることになる。
【0075】また、この一連の電動機15の出力トルク増加の動作においても、電動機15に通電する電流が増加することが無いため、電動機15及び電力変換手段14については段差乗り越え等のトルクを考慮する必要のないレベルで容量や大きさを決定することができ、電動機15や電力変換手段14を不必要に大きくする必要が無いものである。
【0076】なお、以上の説明において、ストール判定手段17は、入力した目標トルク指令値τmと電動機回転数信号Nmに基づいて、車両ストール状態を検出するようにしている。すなわち、例えば、目標トルク指令値τmが所定の値以上でありながら、電動機回転数信号Nmが所定の値よりも小さい(零若しくは極低回転)場合に、車両ストール状態であると判定している。しかしながら、ストール判定手段17は、他の車両状態によって、車両ストールを判定することもできる。例えば、ストール判定手段17に、アクセル検出手段1の信号を入力することにより、ストール判定手段17は、アクセル開度が大きく(アクセルペダルが踏み込まれている状態)、しかも、電動機回転数信号Nmが所定の値よりも小さい(零若しくは極低回転)場合に、車両ストール状態であると判定することができる。
【0077】次に、図6を用いて、段差乗り越え不可時動作について説明する。アクセル検出手段1が踏み込まれて電気車が走行しようとした場合に、電気車が段差などを乗り越そうとして乗り越しができない様な状態である場合には、図6(A),(B)に示すように、アクセル検出手段1により求められる目標トルク指令値τmがあるしきい値のAC1以上であっても、電動機15が回転しないので電動機回転数信号Nmはゼロを維持した状態となる。
【0078】この時には、電動機電流は、図6(C)に示すように、目標トルク指令値τmに従った電流が流れ、図6(G)に示すように、すべり周波数指令値ωsについても目標トルク指令値τmに従った値であるωsAの値が出力されている状態となる。
【0079】この目標トルク指令値τmがあるしきい値AC1以下で、かつ電動機回転数信号Nmがあるしきい値Nm1以下である状態を車両ストールであると判断してストール判定手段17にて検知し、この状態の継続時間をストール判定カウンタによりカウントする。図6(D)に示すように、時刻t2において、このストール状態がある任意の時間tc、すなわちカウントC1分継続した場合には、ストール判定手段17よりストール確定のX点にて、図6(E)に示すように、パワーアップフラグPUFを発生する。
【0080】すべり補正係数演算手段21は、このパワーアップフラグPUFを受けて、図6(F)に示すように、すべり補正係数Ksを暫時増加させる。すべり補正係数Ksの変化方法はある任意の関数計算に沿ってもよいし、あらかじめ用意していたパターンに沿って変化させても良いものである。
【0081】この動作により、すべり補正係数KsがKsAからKsBまで増加し、それに伴って、図6(G)に示すように、すべり周波数指令値ωsがωsAからωsBまで増加する。この動作により、先に述べたように誘導電動機である電動機15の発生トルクτmは、図6(H)に示すように、図中のτAからτBまで増加する。この時に電動機電流は目標トルク指令値τmによって決められる値を維持したままである。これらの動作により、電動機15の出力トルクが増加し電気車の駆動力が増加することとなる。
【0082】しかし、電動機15の出力トルクがτBまで増加しても乗り越しができないような段差に差し掛かっていたった場合には、当然ながら車両は段差を乗り越しすることができず、車両ストールしたままの状態となり、電動機回転数信号Nmはしきい値Nm1を下回った状態が継続することとなる。ストール判定カウンタは時間tc経過後、すなわちカウントC1経過後も継続してカウントを行う様に動作しており、図6(D)に示すように、時間カウントの計数値がやがてしきい値C2に達する。
【0083】カウント時間がC2に達した場合、ストール判定手段17では車両が乗り越し不能なレベルの段差に差し掛かっていて電動機15の出力トルクアップを行っても乗り越しができないでいるものと判断し、電動機回転数信号Nmがしきい値Nm2に達しない条件であっても、図6(E)に示すように、時刻t4において、パワーアップフラグPUFをリセットし、また、図6(D)に示すように、ストール判定カウンタをリセットする。これにより、すべり補正係数演算手段21は、図6(F)に示すように、すべり補正係数Ksを漸減し、すべり補正係数KsがKsBからKsAに復帰する動作を行う。すべり補正係数Ksの復帰は、ある任意の関数計算に基づいても良いし、あらかじめ容易したパターンに沿って求めても良い。
【0084】このすべり補正係数Ksの変化により、図6(G)に示すように、すべり周波数指令値ωsはωsBからωsAに戻り、図6(H)に示すように、電動機15の出力トルクτmはτBからτAに復帰する動作となる。
【0085】なお、以上の説明において、時間カウントの計数値がしきい値C2となった場合、すなわち、出力トルクアップが所定時間継続した場合に、補正係数を元の状態に戻し、出力トルクを元に戻している。しかしながら、例えば、運転者がアクセルペダルを戻した場合により、運転者の意志により、段差乗り越えを断念した場合も、ストール判定手段17は、アクセル検出手段1の信号を用いて、アクセル開度を判定し、補正係数を元の状態に戻し、出力トルクを元に戻すようにする。このとき、アクセル検出手段1によりアクセル開度を検出する方法の他に、アクセル開度が小さくなることによって、目標トルク指令値τmがあるしきい値より小さくなったことを検出しても、運転者の意志により、段差乗り越えを断念したとして、補正係数を元の状態に戻し、出力トルクを元に戻すようにすることもできる。
【0086】また、ストール判定手段17は、前後進検出手段3の出力信号により、操作レバー(変速レバー)が前進や後進に選択されていない場合、例えば、ニュートラルが選択されている場合も、段差乗り越えを断念したとして、補正係数を元の状態に戻し、出力トルクを元に戻すようにすることもできる。
【0087】さらに、ストール判定手段17は、ブレーキ検出手段2の出力信号により、ブレーペダルが踏み込まれている場合も、段差乗り越えを断念したとして、補正係数を元の状態に戻し、出力トルクを元に戻すようにすることもできる。
【0088】以上説明したように、本実施形態においては、このような動作とすることにより、電気車が段差乗り越え等の動作を行う必要が合った場合に、一時的に電動機15の出力トルクを増加させることができるが、それでも乗り越し不可能な段差等であった場合には運転者がそのまま段差乗り越しの為の運転操作を継続していた場合、ある任意のカウント時間C2を持って段差乗り越し不能であると判断して出力トルクτmを元に戻す動作を行えるようになり、不必要に電動機15及び電力変換手段14に負担をかけないように動作させることができる。
【0089】次に、図7を用いて、本実施形態による電気車の制御装置を搭載した電気車の構成について説明する。図7は、本発明の一実施形態による電気車の制御装置を搭載した電気車のブロック構成図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。電気車の車体100は、4つの車輪110,112,114,116によって支持されている。この電気車は、前輪駆動であるため、前方の車軸154には、電動機15が直結して取り付けられている。電動機15は、制御装置34によって駆動トルクが制御される。制御装置34の動力源としては、電源13が備えられ、この電源13から電力が制御装置34を介して、電動機15に供給され、電動機15が駆動されて、車輪110,114が回転する。ハンドル150の回転は、ステアリングギア152及びタイロッド,ナックルアーム等からなる伝達機構を介して、2つの車輪110,114に伝達され、車輪の角度が変えられる。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、車両ストール時、電動機電流を増大させることなく、電動機の出力を増大させることにより、車両ストール状態を回避して、車両性能の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【識別番号】000232999
【氏名又は名称】株式会社日立カーエンジニアリング
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市高場2477番地
【出願日】 平成13年9月18日(2001.9.18)
【代理人】 【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
【公開番号】 特開2003−92803(P2003−92803A)
【公開日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願番号】 特願2001−283171(P2001−283171)