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【発明の名称】 燃料電池自動車の制御装置
【発明者】 【氏名】上野臺 浅雄
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】吉川 慎司
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】木村 顕一郎
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】走行用モータやモータ駆動装置を大型化することなく、加速時におけるドライバビリィティの悪化を抑制した燃料電池自動車の制御装置を提供する。

【解決手段】上限目標出力決定部52は、要求出力(PD_CAL)がモータ10又はモータ駆動装置5の連続出力定格に応じて決定された第1の出力リミットを越え、且つ、要求出力(PD_CAL)の増加率が基準増加率を超えたときに、要求出力(PD_CAL)とキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)とに基づいて、モータ10を要求出力(PD_CAL)で連続して作動させることができる時間であるアシスト時間を決定し、該アシスト時間が経過するまで、上限目標出力(PD_LMT)をモータ10又はモータ駆動装置5の短時間出力定格に応じて決定された第2の出力リミット(>第1の出力リミット)とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】走行用モータに対する要求出力を決定するモータ要求出力決定手段と、該要求出力に応じて前記モータの目標出力を所定の上限目標出力以下に制限して算出するモータ目標出力算出手段と、該目標出力に応じた駆動電力を前記モータに出力するモータ駆動手段と、前記モータ駆動手段の電源として使用される燃料電池と、該燃料電池により充電され、該燃料電池の発電量が不足する状態となるときに、放電が生じて不足する発電量を補充するように前記燃料電池と並列に接続された電気二重層キャパシタと、前記目標出力に応じた量の反応ガスを前記燃料電池に供給する反応ガス供給手段とを備えた燃料電池自動車の制御装置において、前記電気二重層キャパシタの充電量を把握するキャパシタ充電量把握手段と、前記要求出力が前記モータ又は前記モータ駆動手段の連続出力定格に応じて決定された第1の出力リミットを越え、且つ、前記要求出力の増加率が所定の基準増加率を超える要求出力急増状態となったときに、前記要求出力と前記電気二重層キャパシタの充電量とに基づいて、前記モータを前記要求出力で連続して作動させることができる時間であるアシスト時間を算出するアシスト時間算出手段とを備え、前記モータ目標出力算出手段は、前記要求出力急増状態にないときは、前記第1の出力リミットを前記上限目標出力とし、前記要求出力急増状態となったときには、前記アシスト時間を超えない範囲で、前記モータ駆動手段又は前記モータの短時間出力定格に応じて決定した前記第1の出力リミットよりも大きい第2の出力リミットを前記上限目標出力とすることを特徴とする燃料電池自動車の制御装置。
【請求項2】前記モータ目標出力算出手段は、前記アシスト時間が経過した時から前記上限目標出力を所定の減少率で前記第1の出力リミットまで減少させることを特徴とする請求項1記載の燃料電池自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池と電気二重層キャパシタを並列に接続して走行用モータの電源とした燃料電池自動車の制御装置に関し、特に、該モータの出力の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池自動車に搭載されて、該燃料電池自動車の走行用モータに出力する駆動電力を制御する制御装置として、例えば図6に示したように構成された制御装置が知られている。
【0003】図6に示した制御装置には、走行用モータ100に駆動電力を供給するモータ駆動装置101及びエアコン等の電装補機(図示しない)の電源として燃料電池102が備えられている。そして、燃料電池102と並列に電気二重層キャパシタ103が接続され、燃料電池102に反応ガスを供給するエアコンプレッサ等の反応ガス供給部104の応答遅れにより、燃料電池102に対する反応ガスの供給が不足して燃料電池102の発電量の不足が生じたときに、電気二重層キャパシタ103からの放電電力により補充がなされるように構成されている。
【0004】そして、モータ駆動装置101は、電気自動車制御ユニット105から出されるトルク指令(TRQ_CMD)に応じた駆動電力をモータ100に供給し、反応ガス供給部104は、目標出力算出部106により算出されたモータ100の目標出力(PD_REQ)に応じた発電量が得られるように、燃料電池102に供給する反応ガスの量を調節する。
【0005】ここで、モータ100の目標出力(PD_REQ)は、基本的には、モータ100の回転数(Nm)とアクセルの踏込み量(Ap)に応じて決定されるモータ100の要求出力(PD_CAL)に基づいて、目標出力算出部106により算出される。
【0006】しかし、目標出力算出部106は、要求出力(PD_CAL)がモータ駆動装置101又はモータ100の連続出力定格(PD_LMT)を超えたときには、目標出力(PD_REQ)を連続出力定格(PD_LMT)以下に制限して算出し、モータ駆動装置101やモータ100が連続出力定格(PD_LMT)を超えて作動することを防止していた。そして、トルク指令算出部107は、目標出力(PD_REQ)に応じてモータ駆動装置101に対するトルク指令(TRQ_CMD)を算出するため、モータ100の出力は連続出力定格(PD_LMT)以下に抑えられていた。
【0007】そのため、燃料電池自動車の運転者がアクセルを踏み込んで燃料電池自動車を加速させようとしたときに、モータ100の出力が連続出力定格以下に抑えられて運転者の意図する加速感が得られず、ドライバビィリティが悪化する場合があった。そして、このようなドライバビリティの悪化を防止するためには、モータ駆動装置101やモータ100に連続出力定格が大きいものを採用することが考えられるが、この場合にはモータ駆動装置101やモータ100が大型化してこれらの搭載スペースが増大するとともに、モータ駆動装置101やモータ100のコストもアップするという不都合がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記不都合を解消し、走行用モータやモータ駆動装置を大型化することなく、加速時におけるドライバビリィティの悪化を抑制した燃料電池自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、走行用モータに対する要求出力を決定するモータ要求出力決定手段と、該要求出力に応じて前記モータの目標出力を所定の上限目標出力以下に制限して算出するモータ目標出力算出手段と、該目標出力に応じた駆動電力を前記モータに出力するモータ駆動手段と、前記モータ駆動手段の電源として使用される燃料電池と、該燃料電池により充電され、該燃料電池の発電量が不足する状態となるときに、放電が生じて不足する発電量を補充するように前記燃料電池と並列に接続された電気二重層キャパシタと、前記目標出力に応じた量の反応ガスを前記燃料電池に供給する反応ガス供給手段とを備えた燃料電池自動車の制御装置の改良に関する。
【0010】そして、前記電気二重層キャパシタの充電量を把握するキャパシタ充電量把握手段と、前記要求出力が前記モータ又は前記モータ駆動手段の連続出力定格に応じて決定された第1の出力リミットを越え、且つ、前記要求出力の増加率が所定の基準増加率を超える要求出力急増状態となったときに、前記要求出力と前記電気二重層キャパシタの充電量とに基づいて、前記モータを前記要求出力で連続して作動させることができる時間であるアシスト時間を算出するアシスト時間算出手段とを備え、前記モータ目標出力算出手段は、前記要求出力急増状態にないときは、前記第1の出力リミットを前記上限目標出力とし、前記要求出力急増状態となったときには、前記アシスト時間を超えない範囲で、前記モータ駆動手段又は前記モータの短時間出力定格に応じて決定した前記第1の出力リミットよりも大きい第2の出力リミットを前記上限目標出力とすることを特徴とする。
【0011】かかる本発明において、前記連続出力定格とは、前記モータから連続して取出すことができる出力又は前記モータ駆動手段から前記モータに連続して出力することができる電力をいい、両者のうちの小さい方により、前記モータから連続して取出すことができる最大出力が規定される。また、前記短時間出力定格とは、前記モータから第1の規定時間に限って取出し得る出力又は前記モータ駆動手段から前記モータに第2の規定時間に限って出力することができる電力をいい、両者のうちの小さい方に応じて、短時間(該第1の規定時間又は該第2の規定時間)に限って前記モータから取出すことができる出力が決定される。
【0012】そして、前記モータ目標出力算出手段は、前記要求出力急増状態となったときに、前記アシスト時間を超えない範囲で、前記第1の出力リミットよりも大きい前記第2のリミットを前記上限目標出力とする。そのため、前記要求出力急増状態となった時から前記アシスト時間を超えない範囲で、前記キャパシタからの放電電力により前記第1のリミットを越える出力を前記モータから出力させることができ、これにより前記要求出力急増状態となったときに、前記モータの出力不足によりドライバビリィティが低下することを抑制することができる。
【0013】また、前記アシスト時間が経過した時に、前記上限目標出力を前記第2の出力リミットから直ちに前記第1の出力リミットに戻すと、前記モータ目標出力算出手段により算出される前記目標出力が急激に低下し、それに応じて前記モータの出力も急激に低下するため前記燃料電池自動車の挙動が不安定となる。
【0014】そこで、前記モータ目標出力算出手段により、前記アシスト時間が経過した時から前記上限目標出力を所定の減少率で前記第1の出力リミットまで減少させることによって、前記アシスト時間が経過した時に前記モータの出力が急激に低下することを防止して、前記上限目標出力を前記第1の出力リミットまで戻すことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例について、図1〜図5を参照して説明する。図1は本発明の燃料電池自動車の制御装置の構成図、図2は図1に示した制御装置の制御ブロック図、図3は図2に示した駆動制御部の作動フローチャート、図4はアシスト時間を決定するための相関グラフ、図5はアシスト時間及びその前後における制御装置の作動状況を示した時系列グラフである。
【0016】図1を参照して、本発明の燃料電池自動車の制御装置1(以下、単に制御装置1という)は、燃料電池自動車に搭載されて該燃料電池自動車に供給する電力を制御するものである。制御装置1の作動はマイクロコンピュータやメモリ等により構成されたコントローラ4により制御される。
【0017】そして、水素と空気を反応ガスとした電気化学反応を生じさせて電流を出力する燃料電池2の発電量が、コントローラ4に備えられた電源管理制御部14と燃料電池制御部16とにより制御される。また、走行用モータ10(以下、単にモータ10という)に対するトルク指令が、コントローラ4に備えられた駆動制御部9により決定される。
【0018】燃料電池2及び電気二重層キャパシタ3(以下、単にキャパシタ3という)の出力電力は、モータ駆動装置5(本発明のモータ駆動手段に相当する)、空調機器6、及びDC/DCコンバータ7を介して12V負荷8に供給される。モータ駆動装置5は、駆動制御部9から出力されるトルク指令(TRQ_CMD)に応じて、モータ10の電機子に流れる電流を制御する。そして、モータ10の駆動力はトランスミッション11を介して駆動輪12に伝達される。
【0019】駆動制御部9は、アクセルペダル13の踏込み量(Ap)とモータ10の回転数(Nm)に基づいて算出したモータ10の目標出力(PD_REQ)を通知する信号を電源管理制御部14に出力する。
【0020】電源管理制御部14には、モータ10以外の電装補機で消費される電力を把握するために、負荷センサ15により検出される負荷電流(I_load)と負荷電圧(V_load)の検出信号とが入力され、これらの検出信号により、電源管理制御部14はモータ10以外の電装補機で消費される電力を把握する。
【0021】そして、電源管理制御部14は、燃料電池制御部16から出力される燃料電池2の上限発電量(Ifc_LMT)と、キャパシタセンサ31により検出されるキャパシタ3の充放電電流(Icap)及び端子電圧(Vcap)等を考慮した上で、モータ10の目標出力(PD_REQ)とモータ10以外の電装補機で消費される電力との合計電力に応じて、燃料電池2から出力される電流の目標値である目標発電量(Ifc_CMD)を決定し、該目標発電量(Ifc_CMD)を指示する信号を燃料電池制御部16に出力する。
【0022】また、電源管理制御部14は、駆動制御部9に対して、燃料電池2及びキャパシタ3からモータ駆動装置5に対して供給可能な電力の上限である出力制限電力(PLD)を通知する信号を出力する。
【0023】なお、燃料電池制御部16には、反応ガスセンサ20から出力される燃料電池2に供給される反応ガス(水素及び空気)の圧力(Pgas)、流量(Qgas)、及び温度(Tgas)の検出信号と、燃料電池2のスタック(図示しない)を構成する燃料電池セル(図示しない)の個々の状態(Vcell_indiv)の検出信号とが入力され、燃料電池制御部16は、これらの検出信号から把握される燃料電池2の状態を考慮して上限発電量(Ifc_LMT)を決定する。
【0024】また、駆動制御部9は、モータ10及びモータ駆動装置5における消費電力が電源管理制御部14から通知された出力制限電力(PLD)を超えないように、モータ駆動装置5に対してトルク指令(TRQ_CMD)を出力し、モータ駆動装置5は、モータ10が該トルク指令(TRQ_CMD)に応じたトルクを発生するようにモータ10の電機子電流を制御する。
【0025】また、燃料電池制御部16は、電源管理制御部14から出力された目標発電量(Ifc_CMD)の電流が燃料電池2から出力されるように、反応ガス供給装置21(本発明の反応ガス供給手段に相当する)に対して、燃料電池2に供給する反応ガスの目標供給量(CMP_CMD)を指示する信号を出力する。これにより、目標発電量(Ifc_CMD)に応じた流量の空気と水素が燃料電池2に供給される。
【0026】そして、反応ガス供給装置21から供給される水素は、イジェクタ(図示しない)及び加湿器(図示しない)を経由して燃料電池2の水素極に供給され、空気極に供給される空気中の酸素と電気化学反応を生じて水となり、排出弁22を介して排出される。ここで、排出弁22の開度は、空気及び水素の供給圧に応じて燃料電池2内部の圧力勾配が一定に保たれるように、燃料電池制御部16からの制御信号(VLV_CMD)により制御される。
【0027】また、燃料電池2には、水冷式の冷却器(図示しない)が備えられ、燃料電池制御部16は、該冷却器の入水温度と出水温度に応じて該冷却器に供給される冷却水の流量と温度を制御する。
【0028】また、制御装置1には、燃料電池2の出力電流を制限するためにトランジスタやFET等のスイッチング素子を備えると共に、燃料電池2の出力電流(Ifc)と出力電圧(Vfc)を検出する出力電流制限手段30(本発明の電流制限手段の機能を含む)が設けられ、電源管理制御部14から出力される電流制限信号(VCU_CMD)のレベル(High/Low)に応じて、出力電流制限手段30は燃料電池2の電流出力をON/OFFする。
【0029】なお、電源管理制御部14は、基本的には、燃料電池2の起動時及び停止時以外は、電流制限信号(VCU_CMD)のレベルを常時Hi ghレベルとして出力電流制限手段をON(通電)状態とし、燃料電池2とキャパシタ3を直結状態に維持する。
【0030】この直結状態においては、モータ10とモータ10以外の電装負荷の総消費電力が増大して、燃料電池2の出力電圧が低下するときは、キャパシタ3の開放電圧と燃料電池2の出力電圧との差に応じた放電電流がモータ10及びモータ10以外の電装負荷に供給される。一方、前記総消費電力が減少して、燃料電池2の出力電圧が上昇するときには、キャパシタ3の開放電圧と燃料電池2の出力電圧との差に応じた充電電流が燃料電池2からキャパシタ3に供給される。
【0031】その結果、いずれの場合もキャパシタ3の開放電圧と燃料電池2の出力電圧が等しい状態に移行する。そのため、残充電量が変化しても開放電圧があまり変化しないバッテリーを燃料電池2と並列に接続する場合のように、大電流のスイッチングが可能な大型のDC/DCコンバータにより常時燃料電池2の出力電圧とバッテリーの開放電圧とを整合させる必要がなく、出力電流制限手段30は、燃料電池2の出力電流が少ない燃料電池2の起動時及び停止時にキャパシタ3と燃料電池2の間の通電を制限するための小型のスイッチング素子を備えればよい。
【0032】以上説明した構成により、モータ10の目標出力(PD_REQ)と負荷電流(Iload)及び負荷電圧(Vload)により算出される電装補機の消費電力とに基づいて決定された目標発電量(Ifc_CMD)に応じた電流が燃料電池2から出力されるように、反応ガスの目標供給量(CMP_CMD)が制御される。
【0033】そして、駆動制御部9は、モータ駆動装置5及びモータ10が定格を超えて作動することのないようにモータ10の目標出力(PD_REQ)を制限するが、この制限に伴ってモータ10の出力が不足して燃料電池自動車のドライバビリィティが低下することを抑制してモータ10の目標出力(PD_REQ)を算出する。以下、図2〜図5を参照して、駆動制御部9によるモータ10の目標出力(PD_REQ)の算出処理について説明する。
【0034】図2を参照して、駆動制御部9は、要求出力算出部50(本発明のモータ要求出力決定手段に相当する)、目標出力算出部51(本発明のモータ目標出力算出手段の機能を含む)、上限目標出力決定部52(本発明のアシスト時間算出手段及びモータ目標出力算出手段の機能を含む)、及び目標出力制限部53を備える。
【0035】要求出力算出部50は、アクセルペダル13(図1参照)の踏込み量(Ap)とモータ10の回転数(Nm)に基づいてモータ10の要求出力(PD_CAL)を算出する。
【0036】目標出力算出部51は、上限目標出力決定部52で決定された上限目標出力(PD_LMT)を超えない範囲で、要求出力(PD_CAL)に応じてモータ10の目標出力(PR_REQ)を算出する。
【0037】上限目標出力決定部52は、通常は、モータ駆動装置5又はモータ10の連続出力定格に応じて決定した第1の出力リミット(L)を上限目標出力(PD_LMT)として決定するが、要求出力(PD_ CAL)が急激に増加した場合には、モータ駆動手段6又はモータ10の短時間出力定格に応じて決定した第2の出力リミット(L)を上限目標出力(PD_LMT)として決定する。
【0038】目標出力制限部53は、基本的には、モータ10から目標出力(PD_REQ)が得られるようにトルク指令(TRQ_CMD)を決定するが、目標出力(PD_REQ)を得るためにモータ駆動装置5で必要となる電力が出力制限電力(PLD)を超えるときには、モータ駆動装置5の消費電力が該出力制限電力(PLD)以下となるようにトルク指令(TRQ_CMD)を制限する。
【0039】ここで、電源管理制御部14は、キャパシタ3からの放電電力を考慮して、出力制限電力(PLD)を算出する。すなわち、先ず、開放電圧算出部60(本発明のキャパシタ充電量把握手段の機能を含む)により、メモリに記憶されたキャパシタ3の内部抵抗(Rcap)のデータとキャパシタ電圧(Vcap)とキャパシタ電流(Icap)とから、以下の式(1)によりキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)が算出される。
【0040】
Vcap_o = Vcap + Icap×Rcap ・・・・・(1)
また、キャパシタ放電電力算出部61により、キャパシタ3の出力電圧が、メモリに記憶された燃料電池2の電流/電圧の出力特性マップに上限発電量(Ifc_LMT)を適用して得られた燃料電池5の発電量が上限発電量(Ifc_LMT)となったときに、キャパシタ3から出力される電力である上限放電電力(Pcap_LMT)が、以下の式(2)により算出される。
【0041】
Pcap_LMT = (Vcap_o−Vfc_LMT)/Rcap × Vfc_LMT ・・・・(2)
そして、モータ駆動上限電力算出部63は、上限発電量(Ifc_LMT)に応じた燃料電池2の出力電力とキャパシタ3の上限放電電力(Pcap_LMT)との和から、電装補機の消費電力(=Vload×Iload)を減じて、出力制限電力(PLD)を算出する。そのため、出力制限電力(PLD)は、キャパシタ3からの放電電力を見込んだものとなる。
【0042】次に、図3に示したフローチャートに従って、上限目標出力決定部52の作動について説明する。コントローラ4への通電により駆動制御部9の作動が開始されると、上限目標出力決定部52は、先ず、STEP1で、初期設定としてフラグをリセット(フラグ=0)すると共に、上述した第1の出力リミット(L)を上限目標出力(PD_LMT)として決定する。
【0043】続くSTEP2は要求出力算出部50による処理であり、要求出力算出部50は、上述したように、アクセルペダルの踏込み量(Ap)等に基づいてモータ10の要求出力(PD_CAL)を算出する。
【0044】そして、目標上限出力決定部52は、次のSTEP3でフラグがセットされているか否かを確認し、フラグがセットされていないとき(フラグ=0)は、STEP4に進んで、要求出力(PD_CAL)の増加率が基準増加率を超えているか否かを確認する。
【0045】要求出力(PD_CAL)の増加率が基準増加率を超えているときはSTEP10に分岐し、上限目標出力決定部52は、要求出力(PD_CAL)が第1の出力リミット(L)以下であるとき(本発明の要求出力急増状態にないときに相当する)はSTEP5に進んでフラグをリセットし、STEP6で第1の出力リミット(L)を上限目標出力(PD_LMT)として、STEP7で運転継続中であればSTEP2に戻る。
【0046】そのため、アクセルペダルの踏込み量(Ap)の増加率が基準増加率以下であり、燃料電池自動車の運転者が急な加速を意図していないときには、STEP2〜STEP7のループが繰り返し実行され、上限目標出力(PD_LMT)は第1の出力リミット(L)に保たれる。
【0047】一方、STEP4でアクセルペダルの踏込み量(Ap)の増加率が基準増加率を超えてSTEP10に分岐し、且つ、STEP10で要求出力(PD_CAL)が第1の出力リミット(L)を超えた状態(本発明の要求出力急増状態に相当する)となったときには、STEP10からSTEP11に進み、この場合はフラグがまだセットされていないので、STEP12に進む。
【0048】そして、上限目標出力決定部52は、STEP12で、第1の出力リミット(L)を超える目標出力(PD_REQ)でモータ10を駆動させることができる時間であるアシスト時間を決定する。上限目標出力決定部52は、図4(a)に示したモータアシスト時間/モータ要求出力(PD_CAL)の相関グラフと、図4(b)に示したキャパシタアシスト時間/キャパシタ開放電圧(Vcap_o)の相関グラフとに基づいて、アシスト時間を決定する。なお、これらの相関グラフのデータは、予めメモリに記憶されている。
【0049】図4(a)の相関グラフでは、縦軸(t)がモータアシスト時間、横軸(W)がモータ10の要求出力(PD_CAL)に設定されており、モータアシスト時間は、要求出力(PD_CAL)でモータ10を連続して作動させることができる時間を示している。そして、モータ10の要求出力(PD_CAL)が大きくなるにつれてモータアシスト時間が減少する。
【0050】また、図4(b)の相関グラフでは、縦軸(t)がキャパシタアシスト時間、横軸(V)がキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)に設定されており、キャパシタアシスト時間は、キャパシタ3から第1の出力リミット(L)よりも大きいレベルの電力をモータ駆動装置5に出力するために、キャパシタ3から補充電力を出力することができる時間を示している。そして、開放電圧(Vcap_o,キャパシタ3の充電量に比例して増減する)が大きくなるにつれて、すなわち、キャパシタ3の充電量が大きくなるにつれてキャパシタアシスト時間が増加する。
【0051】そして、上限目標出力決定部52は、図4(a)の相関グラフに要求出力(PD_CAL)を適用して得られたモータアシスト時間と、図4(b)の相関グラフに開放電圧算出部60により算出されたキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)を適用して得られたキャパシタアシスト時間とのうちの短い方を、アシスト時間として決定する。
【0052】このようにしてアシスト時間を決定した後、上限目標出力決定部52は、STEP13でフラグをセットし(フラグ=1)、STEP14でアシスト時間を設定時間とするタイマをスタートし、STEP15で上限目標出力(PD_LMT)を第2の出力リミットL(>L)に設定して、STEP7に進む。
【0053】これにより、それまで第1の出力リミット(L)を上限としてモータ10の目標出力(PD_REQ)を算出していた目標出力算出部51が、第2の出力リミット(L)を上限として目標出力(PD_REQ)を算出するようになるため、燃料電池自動車を急に加速させようとする運転者の意思に応じてモータ10の出力を増大させることができる。
【0054】そして、STEP10で要求出力(PD_CAL)が第1の出力リミット(L)を超えている間は、STEP11からSTEP20に分岐し、タイマがタイムアップするまで、すなわちアシスト時間が経過するまでは、STEP20からSTEP7に分岐するため、上限目標出力(PD_LMT)が第2の出力リミット(L)に保たれ、モータ10の出力を第1の出力リミットよりも高くすることができる。
【0055】STEP20でタイマがタイムアップすると、STEP21に進み、上限目標出力決定部52は、上限目標出力(PD_LMT)を所定の減少分(ΔPD)ずつ減少させることにより上限目標出力(PD_LMT)を所定の減少率で減少させる処理を行なう。すなわち、上限目標出力決定部52は、STEP21で、現在の上限目標出力(PD_LMT)から減少分(ΔPD)を減算したときに、第2の出力リミット(L)以下((PD_LMT−ΔPD)≦L)となるか否かを確認する。
【0056】そして、((PD_LMT−ΔPD)≦L)とならないときはSTEP22に進み、現在の上限目標出力(PD_LMT)から減少分(ΔPD)を減算して新たな上限目標出力(PD_LMT)とする。これにより、STEP21で、(PD_LMT−ΔPD)>Lとなるまで、上限目標出力(PD_LMT)が減少分(ΔPD)ずつ低下する。
【0057】そして、STEP21で、(PD_LMT−ΔPD)≦L となったときに、STEP30に分岐して、上限目標出力決定部52は、フラグをリセットし(フラグ=0)、続くSTEP31で上限目標出力(PD_LMT)を第1の出力リミット(L)に戻す。
【0058】このように、アシスト時間が経過したときに、上限目標出力(PD_LMT)を所定の減少率をもって徐々に第1の出力リミット(L)まで戻すことによって、アシスト時間の経過時にモータ10の出力が急激に減少することを防止することができる。
【0059】なお、本実施の形態では、アシスト時間が経過するまで上限目標出力(PD_LMT)を第2の出力リミット(L)としたが、アシスト時間を超えない範囲で上限目標出力(PD_LMT)を第2の出力リミット(L)する時間を決定することにより、本発明の効果を得ることができる。
【0060】図5は、以上説明したように、アシスト時間に限って上限目標出力(PD_LMT)を第1の出力リミット(L)から第2の出力リミット(L)に変更した場合のモータ10の出力の推移を示したグラフであり、■が要求出力(PD_CAL)の推移を示したグラフ、■がモータ10の出力(Pmot)の推移を示したグラフ、■がキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)の推移を示したグラフである。
【0061】■のグラフで、時刻tにおいて、それまでAであった要求出力(PD_CAL)が前記基準増加率を超える増加率で急激に増加し始め、時刻tで第1の出力リミット(L)を超えると、上限目標出力決定部52は、それまで第1の出力リミット(L)に設定されていた上限目標出力(PD_LMT)を第2の出力リミット(L)に切り換える。
【0062】これにより、■のグラフに示したように、時刻tからアシスト時間(AS_TIME)が経過するまでの間、モータ10の出力は第1の出力リミット(L)を超える。そして、上限目標出力決定部52は、アシスト時間(AS_TIME)が経過した時刻tから、第1の出力リミット(L)となる時刻tまで、上限目標出力(PD_LMT)を所定の減少率をもって減少させるため、図2のグラフに示したように、時刻tから時刻tにかけてモータ10の出力が緩やかに低下する。
【0063】そして、時刻tから時刻tにかけての第1の出力リミット(L)を超えるモータ10の出力のために、キャパシタ3からの放電電力がモータ駆動装置5で消費されるため、■のグラフに示したように、時刻tからキャパシタ3の開放電圧(Vcap_o)が減少している。
【0064】なお、本実施の形態では、上限目標出力決定部52は、アシスト時間が経過した時から所定の減少率で上限目標出力(PD_LMT)を減少させる処理を行なったが、このような処理を行なわない場合であっても本発明の効果を得ることができる。
【0065】また、本実施の形態では、要求出力算出部50は、アクセルペダルの踏込み量(Ap)とモータ10の回転数(Nm)という2個のパラメータに基づいてモータ10の要求出力(PD_CAL)を算出したが、これらのパラメータのうちのいずれかに基づいて、例えばアクセルの踏込み量(Ap)のみに基づいてモータ10の要求出力(PD_CAL)を算出してもよい。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年5月15日(2002.5.15)
【代理人】 【識別番号】100077805
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 辰彦 (外1名)
【公開番号】 特開2003−70105(P2003−70105A)
【公開日】 平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願番号】 特願2002−139729(P2002−139729)