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【発明の名称】 電気自動車のモータ制御装置
【発明者】 【氏名】今井 貞雄
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車工業株式会社内

【氏名】堀井 裕介
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車工業株式会社内

【要約】 【課題】勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退を抑制する。

【解決手段】シフトレバー22の操作信号により車両がDレンジもしくはLレンジであることが検出され且つ回転センサ18により車両が後退状態にあることが検出されたときに、回転センサ18で検出された後退車速に基づいて車両の後退を抑制するように後退車速制御手段21によりモータ11の出力を制御し、勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両走行用の電気モータを備えた電気自動車のモータ制御装置において、上記車両が前進走行モードにあるか後退走行モードにあるかを判定する前進後退判定手段と、上記車両の後退を検出する車両後退検出手段と、上記車両の後退車速を検出する後退車速検出手段と、上記車両が前進走行モードで且つ後退状態にあるときに上記後退車速検出手段により検出された後退車速に基づいて上記車両の後退を抑制するように上記電気モータの出力を制御する後退車速制御手段とを有することを特徴とする電気自動車のモータ制御装置。
【請求項2】 車両走行用の電気モータを備えた電気自動車のモータ制御装置において、上記車両が前進走行モードにあるか後退走行モードにあるかを判定する前進後退判定手段と、上記車両の後退を検出する車両後退検出手段と、上記車両の後退車速を検出する後退車速検出手段と、上記車両が前進走行モードで且つ後退状態にあるときに所定の後退車速を越えないように上記電気モータの出力を制御する後退車速制御手段とを有することを特徴とする電気自動車のモータ制御装置。
【請求項3】 請求項1もしくは請求項2において、ブレーキの踏み込み状態に応じてクリープトルクを発生させるクリープ制御手段を備え、上記ブレーキの踏み込み状態が所定値以上のときに上記後退車速制御手段による制御を選択し上記ブレーキの踏み込み状態が上記所定値未満のときに上記クリープ制御手段を選択する選択手段を有することを特徴とする電気自動車のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気モータにより駆動力を得る電気自動車のクリープ走行における電気モータの出力を制御する電気自動車のモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】排気ガス性状や燃費向上、騒音低下等を図るために、電気モータにより駆動力を得る電気自動車が種々開発されている。この中には、電気モータにより駆動力を得、内燃機関(エンジン)により発電機を駆動して電気モータの電源となる電力を発電する、所謂シリーズ式ハイブリッド車や、電気モータとエンジンとを駆動源とし、両者を走行状態により切り換えて走行する、所謂パラレル式ハイブリッド車も含まれる。いずれも、電気モータ走行時には、主にアクセルペダルとブレーキペダルの操作状況に応じて電気モータの出力をモータ制御装置により制御して通常車と同等の運転操作を確保している。
【0003】ところで、一般的に電気自動車には、停車中はモータ回転が止められるが、停車中でもトルクコンバータ式自動変速機を搭載した車両のようなクリープ力が欲しいとの要望もあり、近年ではこのクリープ力を付与する技術も開発されている。そして、クリープ走行時には、ブレーキペダルの踏み込み量により目標クリープ車速を演算し、これに応じて電気モータを制御する方法も考えられる。この場合、ブレーキペダルの踏み込み量が一定以上の場合には目標クリープ車速を0Km/h(クリープ禁止領域)とし、クリープトルクを発生させないようにすることが好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のモータ制御装置によるクリープトルクの制御は、ブレーキペダルの踏み込み量が一定以上の場合には目標クリープ車速を0Km/hとした場合、平坦路では問題ない。しかし、前進走行レンジの登坂路発進時に徐々にブレーキペダルを放した時、クリープ禁止領域ではクリープトルクが発生しないため、走行抵抗(主に勾配抵抗)がブレーキペダルの踏み込みによるブレーキ力よりも大きい領域では車両は速度を増しながら後退することになってしまう。
【0005】このような時に、電気モータの出力を制御してクリープ車速が0Km/hになるように維持して全く後退しないようにすることも考えられる。しかし、クリープ車速が0Km/hになるように維持するためには、電気モータから所定値のトルク(クリープ車速を0Km/hに維持するトルク)を出力し続ける必要があり、一定の素子(インバータの素子)に電流が流れ続ける状態になる。このため、長時間にわたり車両が全く後退しないようにすると、電気モータ側の負担が大きくなり、素子の劣化につながることになる。
【0006】本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、登坂路等の発進時に車両の後退を検出した場合に後退を抑制するトルクを電気モータに発生させることができる電気自動車のモータ制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1に係る本発明では、前進後退判定手段により車両が前進走行モードであることが検出され且つ前進後退判定手段により車両が後退状態にあるときに、後退車速検出手段により検出された後退車速に基づいて車両の後退を抑制するように後退車速制御手段により電気モータの出力を制御し、勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退を抑制できるようにしたものである。
【0008】上記目的を達成するため請求項2に係る本発明では、前進後退判定手段により車両が前進走行モードであることが検出され且つ前進後退判定手段により車両が後退状態にあるときに、所定の後退車速を越えないように電気モータの出力を制御し、ある程度の後退を許容した状態で車両の後退を抑制できるようにして電気モータの負荷を低減するようにしたものである。
【0009】この場合、後退車速が大きくなるにしたがって電気モータのトルクを増加させることで、車両の後退が抑制される。トルクの増加は、後退車速に比例して直線状に増加させてもよいし、二次曲線状に後退車速が大きい領域で増加割合を増してもよい。
【0010】そして、請求項3に係る本発明では、ブレーキの踏み込み状態に応じてクリープトルクを発生させるクリープ制御手段を備え、選択手段により、ブレーキの踏み込み状態が所定値以上のときに後退車速制御手段による制御を選択しブレーキの踏み込み状態が所定値未満のときにクリープ制御手段を選択し、クリープ制御と後退を抑制する制御とを両立させるようにしたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】図1には本発明の一実施形態例に係るモータ制御装置を備えた電気自動車の概略構成、図2にはモータ制御装置のブロック構成、図3にはブレーキペダル踏み込み量と目標車速との関係、図4にはモータ回転速度とモータトルクとの関係、図5には後退抑制制御のフローチャートを示してある。
【0012】図1に示すように、電気自動車は、車両の駆動系を駆動するための2台の電気モータ(モータ)1と、発電専用のエンジン2とを備えたシリーズ式のものである。モータ1の駆動力はトランスミッション3から出力軸4に出力され、出力軸4からデフ5を介して駆動輪6に駆動力が伝達される。エンジン2には発電機7が接続され、エンジン2の駆動よって発電機7が発電して発電機7で発生した電力はバッテリ8に蓄積される。尚、本願発明は、シリーズ式の電気自動車だけでなくパラレル式の電気自動車にも適用可能である。また、モータ1の台数も2台に限らず、1台のモータ1を備えた電気自動車であってもよい。
【0013】バッテリ走行時には、エンジン2の駆動による発電機7の発電(エンジン発電)は行わず、バッテリ8から供給される電力によりモータ1を駆動している。ハイブリッド走行時には、エンジン発電を行い、この発電電力によってバッテリ8を充電すると同時にモータ1を駆動している。また、減速時はモータ1が発電機として作動して発電(回生発電)し、モータ1側からバッテリ8側へと電力が回生され、この回生電力によってもバッテリ8が充電される。つまり、バッテリ8ではモータ1への駆動電力の放電と、発電機7の発電電力及びモータ1の回生電力による充電とが行われる。
【0014】上述した電気自動車には、アクセルペダル10の踏み込み量を検出するアクセル踏み込みセンサ11が設けられると共に、ブレーキペダル12の踏み込み量(踏み込み状態)を検出するブレーキペダル踏み込み状態検出手段としての踏み込みセンサ13が設けられている。また、トランスミッション3の出力軸4には出力軸4の回転数に基づき車両の車速を検出して車両の停車状態を検出する車速センサ14が設けられている。また、モータ1の回転状況を検出する車両後退検出手段及び後退車速検出手段としての回転センサ(レゾルバ)18が設けられ、モータ1の回転速度及び回転方向が検出される。
【0015】図2に示すように、アクセル踏み込みセンサ11、踏み込みセンサ13及び車速センサ14の検出情報は制御装置(ECU)15に入力され、アクセルペダル10やブレーキペダル12の操作状況、及び車速の状況等に応じてモータ1の出力が制御され、通常車と同等の運転操作性を確保している。
【0016】そして、ECU15のクリープ制御手段16によりモータ1の出力を制御することにより、クリープ走行を可能としている。即ち、車両の停車状態が検出され、踏み込みセンサ13によりブレーキペダル12の踏み込みが解除したことが検出されると、車両が設定クリープ車速となるようにクリープ制御手段16によりモータ1の出力が制御されるようになっている。
【0017】クリープ制御手段16では、ブレーキペダル12の踏み込み量に応じて目標クリープ車速が設定されている。即ち、図3に示すように、所定の踏み込み量まで一定の目標クリープ車速が設定され、ある踏み込み量以上で目標クリープ車速が徐々に減少し、所定の踏み込み量以上でクリープ車速が0Km/hになる(クリープ禁止領域)ように、ブレーキペダル12の踏み込み量と目標車速との関係が設定されてマップ化されている。
【0018】また、図2に示すように、回転センサ18の検出信号及び前進後退判定手段としてのシフトレバー22の操作信号がECU15に入力され、回転センサ18の検出信号により車両の後退が検出されると共に後退車速が検出され、シフトレバー22の操作信号により車両が前進走行モード(DレンジもしくはLレンジ)にあるか後退走行モード(Rレンジ)にあるかが判定される。
【0019】また、図2に示すように、ECU15には後退車速制御手段21が備えられ、後退車速制御手段21では、車両が前進走行モードで且つ後退状態にあるときに後退車速に基づいて車両の後退を抑制するようにモータ1の出力が制御される。車両の後退を抑制する場合、所定の後退車速を越えないようにモータ1の出力が制御される。即ち、図4に示すように、モータ回転速度に応じてモータトルクが設定され、前進側ではモータトルクは0にされ、後退側で回転速度(後退車速)が大きくなるのに比例してモータトルクが増加するようにモータ回転速度とモータトルクとの関係が設定されてマップ化されている。
【0020】尚、モータトルクの増加は、後退車速に比例して直線状に増加させるだけでなく、後退車速が大きい領域で二次曲線状に増加割合を増してもよい。二次曲線状に増加割合を増すことで、大きな勾配に対しても確実に車両の後退を抑制することができる。
【0021】このため、勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退が抑制され、ある程度の後退を許容した状態で車両の後退を抑制してモータ1の負荷を低減することができる。つまり、クリープ車速が0Km/hになるように維持するために、モータ1から所定値のトルクを出力し続ける必要がなくなり、一定の素子(インバータの素子)に電流が流れ続ける状態になることをなくし、モータ1側の負担が大きくなって素子の劣化につながることがない。
【0022】更に、図2に示すように、ECU15には選択手段24が設けられ、選択手段24では、ブレーキペダル12の踏み込み量が所定値以上、即ち、クリープ禁止領域の踏み込み量のときに後退車速制御手段21での制御を選択し、ブレーキペダル12の踏み込み量が所定値未満、即ち、クリープ禁止領域に至るまでの踏み込み量のときにクリープ制御手段16での制御を選択する。このため、クリープ制御と車両の後退を抑制する制御とを両立させることができる。
【0023】図5に基づいてECU15における後退制御の処理状況を説明する。
【0024】ステップS1でブレーキペダル12の踏み込み量に応じてクリープ禁止領域か否かが判断され、クリープ禁止領域ではないと判断された場合、ステップS2に移行してクリープ制御手段16によりクリープ制御が実施され、リターンとなる。つまり、図3のマップに基づいて目標クリープ車速が導出され、目標クリープ車速となるようにモータ1の出力が制御される。
【0025】ステップS1でクリープ禁止領域であると判断された場合、ステップS3で車両の後退が検知される。つまり、ステップS3では、クリープ禁止領域の時に、登坂路発進等、シフトレバー22の位置がDレンジもしくはLレンジで、回転センサ18の検出信号により車両の後退が検出されたか否かが判断される。ステップS3で車両の後退が検知されると、ステップS4に移行して後退制御手段21により後退を抑制する制御が実施され、リターンとなる。ステップS3で車両の後退が検知されない場合、そのままリターンとなる。
【0026】ステップS4では、回転センサ18の検出信号により後退車速が検出され、図4のマップに基づいてモータトルクが導出され、後退車速に応じたモータトルクによりモータ1の出力が制御される。モータトルクは後退車速が大きくなるにしたがって増加するようになっているので、ある一定以上に後退車速が大きくならないように車両の後退が抑制される。つまり、後退車速が大きくなるにしたがってモータトルクが増加するマップに基づいてモータ1の出力を制御しているため、所定の後退車速を越えない状態で車両の後退が抑制されるように、車両の後退が抑制される。
【0027】このため、登坂路発進等でシフトレバー22の位置がDレンジもしくはLレンジの時に車両が後退し始めても、車速に応じたモータトルクと走行抵抗(主に勾配抵抗)からブレーキペダル12の踏み込みによるブレーキ力を減じた力が釣り合った時点車速が安定し、後退車速が増すことがない。この時、ブレーキペダル12を踏み増すことにより、走行抵抗(主に勾配抵抗)とブレーキペダル12の踏み込みによるブレーキ力とが等しくなった時点で車両は停止する。
【0028】従って、勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退が抑制され、ある程度の後退を許容した状態で車両の後退を抑制してモータ1の負荷を低減することができる。クリープ車速が0Km/hになるように維持するために、モータ1から所定値のトルクを出力し続ける必要がなくなり、一定の素子(インバータの素子)に電流が流れ続ける状態になることをなくし、モータ1側の負担が大きくなって素子の劣化につながることがない。
【0029】車両が前進するまでのクリープトルクを発生させると、目標車速が0Km/hの領域で車両が前進することになり、フィーリングが悪化するが、ある程度の後退を許容した状態で車両の後退を抑制しているので、フィーリングが悪化する虞がない。また、車両が前進するまでのクリープトルクを発生させた時に車両を停止させるには、モータトルク以上のブレーキ力が得られるまでブレーキペダル12を踏み込む必要があるが、ある程度の後退を許容しているので、モータトルク以上のブレーキ力が得られるまでブレーキペダル12を踏み込む必要がない。
【0030】
【発明の効果】請求項1に係る本発明では、前進後退判定手段により車両が前進走行モードであることが検出され且つ前進後退判定手段により車両が後退状態にあるときに、後退車速検出手段により検出された後退車速に基づいて車両の後退を抑制するように後退車速制御手段により電気モータの出力を制御するようにしたので、勾配に拘らず後退速度を小さくして車両の後退を抑制することができる。この結果、登坂路等の発進時における運転フィーリングを向上させることが可能となる。
【0031】請求項2に係る本発明では、前進後退判定手段により車両が前進走行モードであることが検出され且つ前進後退判定手段により車両が後退状態にあるときに、所定の後退車速を越えないように電気モータの出力を制御するようにしたので、ある程度の後退を許容した状態で車両の後退を抑制できるようにして電気モータの負荷を低減することができる。この結果、電気モータの劣化を抑制して登坂路等の発進時における運転フィーリングを向上させることが可能となる。
【0032】請求項3に係る本発明では、ブレーキの踏み込み状態に応じてクリープトルクを発生させるクリープ制御手段を備え、選択手段により、ブレーキの踏み込み状態が所定値以上のときに後退車速制御手段による制御を選択しブレーキの踏み込み状態が所定値未満のときにクリープ制御手段を選択するようにしたので、クリープ制御と後退を抑制する制御とを両立させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目33番8号
【出願日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【代理人】 【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開2003−61205(P2003−61205A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−243147(P2001−243147)