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【発明の名称】 燃料電池車両の制御装置
【発明者】 【氏名】風間 勇
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【要約】 【課題】車両制動時に回生ブレーキによる制動性能を確保した上で、2次電池へ過充電を行うことなく、余剰水素による発電電力を2次電池へ充電する。

【解決手段】コントローラ6は、車両駆動用モータ4の要求消費・回生電力(tPdrv)を演算する要求消費・回生電力演算部7と、車両の補機消費電力(tPaux)を演算する補機消費電力演算部8と、2次電池3の充電状態から2次電池入力可能電力(Pbchg)を演算する2次電池入力可能電力演算部9とを備える。コントローラ6は、車両の要求電力(tPdrv+tPaux)と、2次電池入力可能電力(Pbchg)との和を燃料電池の最大発電可能電力とし、車両減速時に、燃料電池1を残水素により最大発電可能電力で発電制御すると同時に、2次電池入力可能電力(Pbchg)を超えないように車両駆動用モータ4の回生電力を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池と、2次電池と、車両を駆動する一方、車両減速時に運動エネルギーを回生電力に変換することができる車両駆動用モータと、前記燃料電池から前記2次電池または前記車両駆動用モータに電力を供給する電力制御手段と、を備えた燃料電池車両の制御装置であって、前記電力制御手段は、前記燃料電池からの電力取出し要求が大から小へ変化して余剰水素が発生する過渡時には、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先して、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による燃料電池の発電電力とを2次電池に充電することを特徴とする燃料電池車両の制御装置。
【請求項2】 前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)を演算する要求消費・回生電力演算手段と、燃料電池車両の補機消費電力(tPaux)を演算する補機消費電力演算手段と、前記2次電池の充電状態に基づいて2次電池入力可能電力(Pbchg)を演算する2次電池入力可能電力演算手段と、を備え、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)と2次電池入力可能電力(Pbchg)とに基づいて燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)を演算し、余剰水素が発生している場合に、燃料電池の発電電力を前記最大発電電力制限値(tPmax)に制御することにより、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先し、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による発電電力を前記2次電池に充電することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項3】 前記要求消費・回生電力(tPdrv)は前記車両駆動用モータが電力を回生している場合は負の値をとり、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と前記補機消費電力(tPaux)と前記2次電池入力可能電力(Pbchg)の合計を燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)として演算することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項4】 車両が減速する場合に、前記最大発電電力制限値(tPmax)が補機消費電力(tPaux)を下回らないようにモータの要求消費・回生電力(tPdrv)を制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項5】 燃料電池の水素極圧力を検出する水素極圧力検出手段と、燃料電池の負荷に適した目標圧力を演算する目標圧力演算手段と、を備え、前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)から車両に要求される車両要求消費電力(tPvcl0)を演算し、前記検出された水素極圧力が目標圧力以下になる場合には、余剰水素が発生していない状態であると判断し、燃料電池の発電電力を、前記車両駆動用モータの電力回生が生じていない時は車両要求消費電力(tPvcl0)の値に、前記車両駆動用モータの電力回生が生じているときは補機消費電力(tPaux)を下回らない値に制限することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制動時の運動エネルギーを電力に回生する回生機能を備えた燃料電池車両における制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、環境問題に対応して燃料電池を主要な電源とする電気自動車である燃料電池車両の開発が盛んになってきている。図6に燃料電池システム1の概略を示す。燃料電池本体101は、高分子電解質膜102によって燃料である水素が供給される水素極と酸化体である空気を供給する空気極とに別れている。燃料電池の発電は以下のプロセスで行われる。まず水素極で水素が電子(e-)と水素イオン(H+)とに電離する。電子は外部回路(負荷)を通って水素極から空気極に達し、水素イオンは高分子電解質膜を通過して水素極から空気極に達する。空気極では、電子と水素イオンと酸素とが結合して水(H2O)を生成する。
【0003】燃料電池の空気極へ空気を供給するには、コンプレッサ110にて外気を取り込み、圧縮された空気を配管103を介して燃料電池本体101の空気極へ供給する。コンプレッサ110はモータ111で駆動される。104は空気極の排気用の配管で、流路には圧力調整弁112が備えられ、圧力調整弁112の開度を調節して燃料電池の空気極を所定の圧力に制御する。
【0004】105は水素を燃料電池の水素極へ供給する配管で、高圧水素タンクなどに貯蔵されている水素を圧力制御弁108が調圧し、燃料電池本体101の水素極の圧力を所定の圧力に制御する。106は水素極の排気用の配管で、下流にシャット弁109が設置され、通常はここは閉じられている。燃料電池の水つまり等によるセル電圧の低下が検知されると、シャット弁109が開けられ、水素とともに水分を排出して水つまりを解消する。シャット弁109の上流には水素の還流用の配管107が接続され、水素極出口から排出された水素が再び圧力制御弁108の下流に導かれる。これは、セル電圧安定化のために水素のストイキ比(供給流量/消費流量)を1以上にするために、消費しきれなかった水素を再び燃料電池本体101の水素極に供給する。
【0005】図7に燃料電池の取り出し電力(電流)と水素極圧力の一例を示す。一般的に燃料電池からの取り出し電力が小さい時は、水素極圧力も小さくてすみ、取り出し電力を大きくするには、水素極圧力も大きくする必要がある。
【0006】また、燃料電池本体101の空気極と水素極とのガス圧力差が過大となると、高分子電解質膜102が機能低下する恐れがあるので、両者の圧力差が所定値以下となるように制御しなければならない。
【0007】燃料電池からの取り出し電力が小さい時でも、水素極の圧力を大きくした状態で、運転は可能であるが、前述の圧力差を所定値以下とするために空気極も圧力を大きくしておく必要がある。空気極の圧力が大きい状態は、コンプレッサ110を駆動するモータ111にとって負荷が大きい状態であり、その分電力を消費する。このために、高圧力での小電力取り出しという状態は、燃料電池システムとしては効率が悪くなるため、速やかにガス圧力を低下させることが好ましい。
【0008】ここで、図8の線Aのように燃料電池に対する要求電力が大電力(例えば70kW)→小電力(例えば10kW)に急変し、それに従って燃料電池取り出し電力も線Aのように変化した場合を考える。図6に示したように燃料電池の水素極は閉鎖系となっており、発電電力を取り出さない限り水素極の水素は消費されず水素圧力も低下しない。このため、水素極圧力は図8のA´のように緩やかにしか下がらず、水素極圧力に対する差圧を所定内に維持するために、空気極の圧力もこれと同じくなるようにコンプレッサ110も駆動するので、T1の間は燃料電池システムとしては効率の悪い高圧力での小電力取り出しという状態が継続することになる。
【0009】さらに、実際には圧力調整弁108の応答遅れや、従来例で指摘のように改質器への供給済み燃料が改質され、水素として燃料電池へ供給され続けることから、場合によっては線A″のように一旦水素極圧力が上昇することも考えられる。これを避けるために、シャット弁109を開け、水素極内の水素をパージする手段があるが、水素が電力に変換されず捨てられることになるので、これも燃料電池システムの効率としては悪くなることになる。
【0010】このような余剰水素対策の従来技術として、例えば、特開2000−348746号公報記載の技術が知られている。この従来技術によれば、燃料電池電気自動車における負荷安定時には、2次電池に充電許容領域を確保しておき、燃料電池電気自動車における過渡時に発生する残水素(余剰水素)によって発電される余剰電力を2次電池に充電する。また、充電しきれなかった余剰電力によって、エアコンプレッサなどの補機を駆動するために用いる。
【0011】すなわち、2次電池の充電容量を残水素回収用に空けておき、図8の線Bのように、要求電力が大電力から小電力へ変化した過渡時には車両の要求電力より多くの発電を行い、発電量と車両要求電力の差分を2次電池に充電する。その結果、水素極の圧力も線B´,B″のように、線Aで電力を取り出した時(A´またはA″)よりも早く下がることになり、燃料電池システムとして効率の悪い高圧力での小電力取り出しという状態を少なくしている。また、2次電池に充電しきれない分は、補機への電力とすることにしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、燃料電池に対する要求電力が大電力から小電力へ低下する場合というのは、ドライバーがアクセルを戻し、車両にとっては減速となる場合が多い。そのような場合は通常、車両の運転性の観点から所定の減速度が要求され、駆動モータからの回生電力が発生する。従来例では、このような駆動モータからの回生電力が考慮されていないために、残水素消費のための余剰発電分による充電だけで、いっぱいとなっている2次電池に、さらに回生電力による充電が行われるため、過充電となり、2次電池を劣化させるという問題点があった。
【0013】以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、車両制動時に回生ブレーキによる制動性能を確保した上で、2次電池へ過充電を行うことなく、余剰水素による発電電力を2次電池へ充電することができる燃料電池車両の制御装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、上記目的を達成するため、燃料電池と、2次電池と、車両を駆動する一方、車両減速時に運動エネルギーを回生電力に変換することができる車両駆動用モータと、前記燃料電池から前記2次電池または前記車両駆動用モータに電力を供給する電力制御手段と、を備えた燃料電池車両の制御装置であって、前記電力制御手段は、前記燃料電池からの電力取出し要求が大から小へ変化して余剰水素が発生する過渡時には、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先して、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による燃料電池の発電電力とを2次電池に充電することを要旨とする。
【0015】請求項2記載の発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の燃料電池車両の制御装置において、前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)を演算する要求消費・回生電力演算手段と、燃料電池車両の補機消費電力(tPaux)を演算する補機消費電力演算手段と、前記2次電池の充電状態に基づいて2次電池入力可能電力(Pbchg)を演算する2次電池入力可能電力演算手段と、を備え、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)と2次電池入力可能電力(Pbchg)とに基づいて燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)を演算し、余剰水素が発生している場合に、燃料電池の発電電力を前記最大発電電力制限値(tPmax)に制御することにより、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先し、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による発電電力を前記2次電池に充電することを要旨とする。
【0016】請求項3記載の発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置において、前記要求消費・回生電力(tPdrv)は前記車両駆動用モータが電力を回生している場合は負の値をとり、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と前記補機消費電力(tPaux)と前記2次電池入力可能電力(Pbchg)の合計を燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)として演算することを要旨とする。
【0017】請求項4記載の発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置において、車両が減速する場合に、前記最大発電電力制限値(tPmax)が補機消費電力(tPaux)を下回らないようにモータの要求消費・回生電力(tPdrv)を制御することを要旨とする。
【0018】請求項5記載の発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置において、燃料電池の水素極圧力を検出する水素極圧力検出手段と、燃料電池の負荷に適した目標圧力を演算する目標圧力演算手段と、を備え、前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)から車両に要求される車両要求消費電力(tPvcl0)を演算し、前記検出された水素極圧力が目標圧力以下になる場合には、余剰水素が発生していない状態であると判断し、燃料電池の発電電力を、前記車両駆動用モータの電力回生が生じていない時は車両要求消費電力(tPvcl0)の値に、前記車両駆動用モータの電力回生が生じている時は補機消費電力(tPaux)を下回らない値に制限することを要旨とする。
【0019】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、燃料電池と、2次電池と、車両を駆動する一方、車両減速時に運動エネルギーを回生電力に変換することができる車両駆動用モータと、前記燃料電池から前記2次電池または前記車両駆動用モータに電力を供給する電力制御手段と、を備えた燃料電池車両の制御装置であって、前記電力制御手段は、前記燃料電池からの電力取出し要求が大から小へ変化して余剰水素が発生する過渡時には、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先して、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による燃料電池の発電電力とを2次電池に充電するようにしたので、余剰水素が発生した場合に電力回生を優先して、回生ブレーキによる十分な減速度を確保した上で、余剰水素を2次電池の電力として回収し、燃費効率を向上させるという効果がある。
【0020】請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)を演算する要求消費・回生電力演算手段と、燃料電池車両の補機消費電力(tPaux)を演算する補機消費電力演算手段と、前記2次電池の充電状態に基づいて2次電池入力可能電力(Pbchg)を演算する2次電池入力可能電力演算手段と、を備え、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)と2次電池入力可能電力(Pbchg)とに基づいて燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)を演算し、余剰水素が発生している場合に、燃料電池の発電電力を前記最大発電電力制限値(tPmax)に制御することにより、前記車両駆動用モータからの回生電力を優先し、該車両駆動用モータからの回生電力と前記余剰水素による発電電力を前記2次電池に充電するようにしたので、補機消費電力相当分を上積みした回生電力による更なる減速性能を確保した上で、余剰水素による発電電力を2次電池へ回収することができるという効果がある。
【0021】請求項3記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、前記要求消費・回生電力(tPdrv)は前記車両駆動用モータが電力を回生している場合は負の値をとり、前記要求消費・回生電力(tPdrv)と前記補機消費電力(tPaux)と前記2次電池入力可能電力(Pbchg)の合計を燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)として演算するようにしたので、余剰水素が発生した場合に、2次電池入力可能電力よりも大きい車両駆動用モータの電力回生要求がある場合には2次電池入力可能電力を全て使って減速できるため十分減速が得られ、車両駆動用モータの電力回生がない場合には余剰水素による発電を2次電池入力可能電力に全て使ってできるため、水素極圧力及び空気極圧力を早く低下させ補機消費電力を早く低減させることができる。2次電池入力可能電力よりも小さい車両駆動用モータの電力回生要求がある場合には、車両駆動用モータの電力回生を優先して充電すると共に、余剰水素による発電電力を2次電池に充電できる。
【0022】請求項4記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、車両が減速する場合に、前記最大発電電力制限値(tPmax)が補機消費電力(tPaux)を下回らないようにモータの要求消費・回生電力(tPdrv)を制御するようにしたので、補機消費電力で、余剰水素を消費できる。また、燃料電池には充電することができないので、燃料電池の最大発電電力制限値(tPmax)が負の値にならないようにする必要があるが、最大発電電力(tPmax)が補機消費電力(tPaux)を下回らないように車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)を制御することで、(補機消費電力は0よりも少し大きい正の値なので)車両駆動用モータの回生電力を制限でき、2次電池が過充電となるのを防止できる。
【0023】請求項5記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、燃料電池の水素極圧力を検出する水素極圧力検出手段と、燃料電池の負荷に適した目標圧力を演算する目標圧力演算手段と、を備え、前記車両駆動用モータの要求消費・回生電力(tPdrv)と補機消費電力(tPaux)から車両に要求される車両要求消費電力(tPvcl0)を演算し、前記検出された水素極圧力が目標圧力以下になる場合には、余剰水素が発生していない状態であると判断し、燃料電池の発電電力を、前記車両駆動用モータの電力回生が生じていない時は車両要求消費電力(tPvcl0)の値に、前記車両駆動用モータの電力回生が生じているときは補機消費電力(tPaux)を下回らない値に制限するようにしたので、余剰水素の有無およびその量を正確に判断することができ、余剰水素が発生していない場合は、余剰水素による発電を行なわないようにできると同時に、車両の電力回生が生じている場合は補機駆動用の電力のみを燃料電池で発電した状態で車両駆動用モータによる電力回生が行えるという効果がある。なお、余剰水素は発生していない状態で、実際に補機で消費する電力を車両駆動用モータの回生電力で補おうとする場合には補機消費電力の値はゼロとすればよい。
【0024】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る燃料電池車両の制御装置を含む燃料電池車両の実施形態を説明するシステム構成図である。図1において、燃料電池システム(以下、単に燃料電池と呼ぶ)1は、例えば図6に示した構成の燃料電池システムであり、以下の説明では、図6を援用する。燃料電池車両の制御装置であるコントローラ6は、燃料電池システム1の水素と空気の圧力、流量などを圧力調整弁108,112、コンプレッサ110で制御することにより、その発電量を制御する。
【0025】電力制御装置2は、燃料電池1より電力を取り出し、電圧、電流等を接続されている車両駆動用モータ4、補機5、2次電池3にあわせて供給する。2次電池3は、車両駆動用モータ4と補機5で消費される電力が、電力制御装置2から供給される電力より大きければ放電され、逆の場合は、充電する。
【0026】車両駆動用モータ4は、いわゆるモータ・ジェネレータであり、走行時にはモータとして車両を駆動する一方、車両減速時又は制動時には、ジュネレータとして車両の運動エネルギーを回生電力に変換するものである。
【0027】コントローラ6は、アクセル操作量や、車速などの車両状態、2次電池3の蓄電量(SOC)などの情報に基づいて、燃料電池の目標発電量を演算し、燃料電池1や、電力制御装置2に指令を与え、電力を供給する。同時に、車両駆動用モータ4に指令を与え、駆動力を制御する。
【0028】さらにコントローラ6は、車両駆動用モータ4の要求消費・回生電力(tPdrv)を演算する要求消費・回生電力演算部7と、燃料電池車両の補機消費電力(tPaux)を演算する補機消費電力演算部8と、2次電池3の充電状態に基づいて2次電池入力可能電力(Pbchg)を演算する2次電池入力可能電力演算部9と、を備えている。そして、コントローラ6は、電力制御装置2へ指令を発して、燃料電池1からの電力取出し要求が大から小へ変化して余剰水素が発生する過渡時には、車両駆動用モータ4からの回生電力を優先して、車両駆動用モータ4からの回生電力と余剰水素による燃料電池1の発電電力とを2次電池3に充電するように制御するものである。
【0029】図2、図3は、本実施形態におけるコントローラ6の動作を説明する制御フローチャートであり、以下本発明をこのフローチャートに沿って説明する。
【0030】まず。ステップ1(以下、ステップをSと略す)では、2次電池の温度、電圧、電流などの2次電池状態を検出する。S2では検出した2次電池の温度、電圧、電流などに基づいて2次電池の蓄電状態(SOC)を演算する。この演算には、予め、温度、電圧、電流等の2次電池状態に対応するSOCをマップとして記憶しておき、このマップを参照して演算してもよいし、充電電流、放電電流の値に所定の係数(例えば、充電効率など)を乗じて時間積分した値をSOCとしてもよい。S3ではS2で演算したSOCや温度などをもとに、図4のようなマップを参照して、2次電池の入力可能電力Pbchgを演算する。
【0031】図4は、一般的な2次電池におけるSOCに対する入出力可能電力特性例を示すグラフである。図4において、破線で示した入力(充電)可能電力は、SOCが0のとき最大となり、SOCの増加に連れて緩やかに低下する。そして、2次電池の種類により異なるがSOCが約80%程度を超えると、急激に入力可能電力が小さくなり、SOCが100%では、入力可能電力は0となる。
【0032】次いで、S4ではアクセル操作量、車速などを検出する。S5では検出されたアクセル操作量、車速、セレクタのレンジ信号などをもとにマップなどから、ドライバーが要求する駆動トルクを演算し、演算した駆動トルクに車速及び係数を乗じて要求駆動・回生パワーを演算する。
【0033】S6では、車両駆動用モータの効率特性などからS5で演算した要求駆動パワーを補正し、要求駆動・回生パワーを出力するのに必要な電力(または回生電力)である要求消費・回生電力tPdrvを演算する。tPdrvは、車両駆動用モータ4が車両を駆動しているときは正の値となり、車両を制動してエネルギー回生しているときは負の値となる。S7では、補機類のON/OFF状態、または図示しないDC/DCコンバータなどの電流、電圧を直接検知して、補機消費電力tPauxを演算する。S8では、今まで演算した値をもとに車両の要求消費電力tPvcl0を以下の式(1)で演算する。
【0034】
【数1】tPvcl0=tPdrv+tPaux …(1)
この車両の要求消費電力tPvcl0は、これから消費される車両の全消費・回生電力を表すことになる。S9では最大発電電力制限値tPmaxを以下の式(2)で演算する。
【0035】
【数2】tPmax=Pbchg+tPvcl0 …(2)
このtPmaxは、車両の全消費・回生電力と2次電池の充電可能電力を加算したものであるので、この値を超えて燃料電池より電力を取り出すと、2次電池が過充電となる値である。S10ではtPvcl0とtPauxとを比較し、その大きい方を燃料電池の目標発電電力tPgenとする。tPvcl0は車両の全消費・回生電力であるので、正負(正の時消費、負の時回生)があるが、燃料電池の発電電力としては、最低、補機消費分は発電しておくことになる。S11ではtPgenを元に、例えば図7に示したような特性から目標ガス圧力tPrsを演算する。S12では、燃料電池の空気極および水素極の各配管に取り付けられた各圧力センサから、空気極圧力値rPair、水素極圧力値rPh2を読み込む。
【0036】S13では、S12で読み込んだrPairとrPh2との差圧が所定値以下としながら、両者が目標ガス圧力tPrsとなるように、空気圧力制御弁112とコンプレッサ110の操作量、および水素圧力制御弁108の操作量を演算し、それらを制御する。
【0037】なお、車両の要求電力が小さくなるときは、それに応じて、水素圧力制御弁108が閉じる方向に制御するが、車両の要求電力が急に小さくなったときに、水素圧力制御弁108を全閉にしても、シャット弁109は閉じたままなので、還流用配管107内の水素は急に減少できない。したがって、小さくなった電力要求分の水素が徐々に消費されるので、rPh2はゆっくり低下し、すぐには目標ガス圧力tPrsとはならない。
【0038】S14では水素極圧力検出値rPh2が目標ガス圧力tPrsより大きいかどうかを判定する。rPh2>tPrsと判定されると、S15で残水素回収可能電力tPplsを以下の式(3)で演算する。
【0039】
【数3】tPpls=tPmax−tPgen …(3)
一方、S14でrPh2<=tPrsと判定されれば、S16で残水素回収可能電力tPplsは0とする。S17では、電力制御装置指令値tPpmを以下の式(4)で演算し、tPpmの電力を燃料電池で発電する。
【0040】
【数4】tPpm=tPgen+tPpls …(4)
演算されたtPpmが電力制御装置2に指示され、その電力が燃料電池1より取り出される。
【0041】次に、図5を参照して本発明の効果を説明する。図5は、各部の電力及び水素極圧力の時間変化を示すタイムチャートである。このタイムチャートは、T1が一定のアクセル開度が継続した状態、T2がアクセルを徐々に戻す状態、T3及びT4が回生ブレーキによる車両制動状態を示すものである。
【0042】T1の間は、目標ガス圧力tPrsと水素極圧力検出値rPh2が等しい、いわゆる定常状態であるため、目標発電電力tPgenと電力制御装置2の指令値tPpmは同じ値となる。また、燃料電池1からの取り出し電力tPpmと車両の要求消費電力tPvcl0は等しいために、2次電池3への充電は行われない。
【0043】T2になると車両の要求消費電力tPvcl0が減少しはじめ、それに伴い目標発電電力tPgenも減少し、目標ガス圧力tPrsも減少する。しかし水素ガス供給を絞っても直ぐに水素ガス圧力は低下しないので、水素極圧力検出値rPh2>目標ガス圧力tPrsとなり、tPpmはtPgenに残水素回収可能電力tPplsが加算され、燃料電池1より取り出される。この時、tPplsと2次電池充電可能電力Pbchgは等しいので、2次電池3の充電余裕は、すべて残水素回収に用いられ、2次電池3は充電可能電力と同じ値で充電される。
【0044】T3になると、車両駆動用モータの回生電力(負の値)が補機消費電力よりも大きくなるため、tPvcl0が負になる、すなわち車両全体として回生要求が発生している。その結果、tPplsは回生要求の増加に伴いPbchgから0へと変化する。この間は2次電池3にはT2と同様、充電可能電力と同じ値で充電されるが、そのうちの残水素回収電力の占める値がPbchgから0へと変化する。このため、rPh2の減少速度も次第に緩やかになる。tPplsが0になったところで、tPgenとtPpmは等しくなり、2次電池に充電される電力は完全に回生による電力となる。
【0045】T4では残水素は電力として回収していない(補機駆動の発電のみに残水素を消費している)ので、残水素回収分の電力は無く、2次電池には充電されないが、rPh2は、tPrsより大きい状態であるので、rPh2との差圧を無くするために空気極の圧力をrPh2に維持しなければならず、コンプレッサも負荷の高い運転をしなければならない。そのため、燃料電池から取り出される電力(補機消費電力tPaux)は、目標ガス圧で運転したときよりも大きな値とすることができ、その分を残水素による発電で消費することで、rPh2は速く減少できる。
【0046】なお、減速時に発生する残水素が全て消費された場合には、燃料電池で残水素を消費する必要がないので、燃料電池から取り出す補機消費電力はゼロとして、回生電力から補機消費電力を賄うようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
【出願日】 平成13年7月3日(2001.7.3)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開2003−18709(P2003−18709A)
【公開日】 平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願番号】 特願2001−202342(P2001−202342)