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【発明の名称】 ハイブリッド駆動制御装置
【発明者】 【氏名】小島 正清
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】ショックの発生や応答性の悪化を回避しつつ、クラッチC2の係合、C1の開放でエンジンおよびモータジェネレータを共に作動させて走行するETC走行モードから、クラッチC1の係合、C2の開放でモータジェネレータのみを用いて走行するモータ走行モードへ移行できるようにする。

【解決手段】ブレーキスイッチ92がON(ブレーキ作動中)で車速V=0の状態が所定時間以上継続し、且つバッテリ42の蓄電量SOCが所定値SOC2以上の場合に、ETC走行モードからモータ走行モードへ切り換えることにより、ショックの発生や応答性の悪化を回避しつつ不必要なエンジン14の作動が防止されて燃費が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の駆動源を有するとともに該駆動源の作動状態が異なる複数の走行モードを備えているハイブリッド駆動制御装置において、動力伝達経路を切り換えて前記走行モードを変更する経路切換モード変更を車両停止時に実施する停車時モード変更手段を有することを特徴とするハイブリッド駆動制御装置。
【請求項2】 前記複数の駆動源は、燃料の燃焼によって作動するエンジンおよび電動モータで、前記複数の走行モードは、前記エンジンの出力トルクに対して前記電動モータが反力トルクを出力することにより、それ等のエンジンおよび電動モータのトルクを合成して駆動力を発生する合成走行モード、および前記電動モータのみで駆動力を発生するモータ走行モードで、前記経路切換モード変更は、前記合成走行モードから前記モータ走行モードへ変更するものであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動制御装置。
【請求項3】 前記電動モータは、発電機としても機能するモータジェネレータで、前記合成走行モードは、前記モータジェネレータを回生制御してバッテリを充電しながら走行するもので、前記停車時モード変更手段は、前記バッテリの蓄電量が所定値以上であることを条件として前記合成走行モードから前記モータ走行モードへ変更することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動制御装置。
【請求項4】 前記停車時モード変更手段は、ブレーキ作動中で且つ車速が略0の状態が所定時間以上継続した場合に前記経路切換モード変更を実施することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハイブリッド駆動制御装置に係り、特に、動力伝達経路を切り換えて走行モードを変更する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】複数の駆動源を有するとともにその駆動源の作動状態が異なる複数の走行モードを備えているハイブリッド車両が知られている。特開平11−107799号公報に記載されている車両はその一例で、駆動源としてエンジンおよび電動モータを備えており、エンジンを停止するとともにクラッチを遮断して動力伝達経路から切り離すことにより、電動モータのみで走行するモータ走行モードや、電動モータを停止するとともにクラッチを接続してエンジンのみで走行するエンジン走行モードが可能で、クラッチのON、OFFでそれ等の走行モードを変更することができ、車両停止時にはエンジンを停止してクラッチを遮断し、モータ走行モードで発進するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ハイブリッド車両の構成や走行モードによっては、走行モードを変更する際に動力伝達経路を切り換えなければならない場合がある。例えば図2に示すように、(a) エンジン14に連結された第1回転要素(サンギヤ)と、モータジェネレータ16に連結されるとともに第1クラッチC1を介して駆動輪52に連結される第2回転要素(キャリア)と、第2クラッチC2を介して駆動輪52に連結される第3回転要素(リングギヤ)と、を有する遊星歯車装置18を有し、(b) 前記第1クラッチC1を開放するとともに前記第2クラッチC2を係合し、前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が相対回転可能な状態で、前記エンジン14を作動させるとともに前記モータジェネレータ16を回生制御して第1回転要素および第2回転要素にトルクを加え、第3回転要素から第2クラッチC2を経て駆動輪に動力を出力する合成走行モードと、(c) 前記第1クラッチC1を係合するとともに前記第2クラッチC2を開放し、前記モータジェネレータ16を力行制御して前記第2回転要素から第1クラッチC1を経て駆動輪52に動力を出力するモータ走行モードと、(d) 前記第1クラッチC1および前記第2クラッチC2を共に係合し、前記モータジェネレータ16の作動を停止するとともに前記エンジンを作動させて遊星歯車装置18を一体回転させ、クラッチC1およびC2を経て駆動輪52に動力を出力する直結走行モードと、を備えているハイブリッド車両の場合、合成走行モードとモータ走行モードとでは動力伝達経路が相違する。このように動力伝達経路を切り換えてモード変更する場合、制御が難しくてショックが発生し易いとともに、動力伝達経路を一時的に遮断してモード変更すると、切換え途中でアクセル操作された時に十分な応答性が得られないため、好ましくない。このため、上記モータ走行モードから合成走行モードへの変更は、バッテリの蓄電量が不足した場合など必要に応じて実施するが、逆の合成走行モードからモータ走行モードへの変更は行わないようになっており、合成走行モードからは、エンジンが停止しない所定車速以上で直結走行モードへ変更する場合のみ許容されるようになっていた。
【0004】しかしながら、このように合成走行モードからモータ走行モードへの変更が禁止されていると、直結走行モードへ移行できない低速走行時(停車時を含む)には、バッテリが所定の蓄電量に達した後も合成走行モードが維持されるため、燃料を無駄に消費するという問題があった。
【0005】すなわち、動力伝達経路の切換えを伴うモード変更が許容されると、ショックが発生したり応答性が悪化したりする恐れがある一方、そのようなモード変更を制限すると、最適な走行モードに設定できなくなるのである。
【0006】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ショックの発生や応答性の悪化を回避しつつ動力伝達経路を切り換えて走行モードを変更できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、複数の駆動源を有するとともにその駆動源の作動状態が異なる複数の走行モードを備えているハイブリッド駆動制御装置において、動力伝達経路を切り換えて前記走行モードを変更する経路切換モード変更を車両停止時に実施する停車時モード変更手段を有することを特徴とする。
【0008】第2発明は、第1発明のハイブリッド駆動制御装置において、(a) 前記複数の駆動源は、燃料の燃焼によって作動するエンジンおよび電動モータで、(b) 前記複数の走行モードは、前記エンジンの出力トルクに対して前記電動モータが反力トルクを出力することにより、それ等のエンジンおよび電動モータのトルクを合成して駆動力を発生する合成走行モード、および前記電動モータのみで駆動力を発生するモータ走行モードで、(c) 前記経路切換モード変更は、前記合成走行モードから前記モータ走行モードへ変更するものであることを特徴とする。
【0009】第3発明は、第2発明のハイブリッド駆動制御装置において、(a) 前記電動モータは、発電機としても機能するモータジェネレータで、(b) 前記合成走行モードは、前記モータジェネレータを回生制御してバッテリを充電しながら走行するもので、(c) 前記停車時モード変更手段は、前記バッテリの蓄電量が所定値以上であることを条件として前記合成走行モードから前記モータ走行モードへ変更することを特徴とする。
【0010】第4発明は、第1発明〜第3発明のハイブリッド駆動制御装置において、前記停車時モード変更手段は、ブレーキ作動中で且つ車速が略0の状態が所定時間以上継続した場合に前記経路切換モード変更を実施することを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】このようなハイブリッド駆動制御装置においては、動力伝達経路を切り換えて走行モードを変更する経路切換モード変更を車両停止時に実施するため、例えば燃費などが優れた適切な走行モードへ変更することができるとともに、車両停止時には一般にブレーキ操作されているため、モード変更に起因してショックが発生したりアクセル操作に対する応答性が損なわれたりすることが防止される。
【0012】第2発明は、合成走行モードからモータ走行モードへの変更に関するもので、このようなモード変更が車両停止時に実施されることにより、不必要なエンジンの作動が防止されて燃費が向上する。第3発明では更に、バッテリの蓄電量が所定値以上であることを条件として合成走行モードからモータ走行モードへ変更されるため、蓄電量不足によりモータ走行モードでの発進が不能となることが防止される。
【0013】第4発明では、ブレーキ作動中で且つ車速が略0の状態が所定時間以上継続した場合に経路切換モード変更が実施されるため、モード変更に起因してショックが発生したりアクセル操作に対する応答性が損なわれたりすることが一層確実に防止される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、駆動源として内燃機関等のエンジンおよび電動モータを備えているハイブリッド駆動制御装置に好適に適用されるが、走行用に複数の駆動源を有するものであれば同種の駆動源であっても良いなど、種々の態様が可能である。
【0015】経路切換モード変更は、例えば第1クラッチを係合状態から開放状態へ切り換えるとともに第2クラッチを開放状態から係合状態へ切り換えることにより、動力伝達経路を切り換えて走行モードを変更するもので、一時的に動力伝達経路を遮断することが望ましいが、クラッチ等の摩擦係合装置のスリップ係合などにより動力伝達を維持したまま走行モードを変更することも可能である。
【0016】停車時モード変更手段は、第4発明のようにブレーキ作動中で且つ車速が略0の状態が所定時間以上継続した場合に経路切換モード変更を実施するように構成することが望ましいが、車速0を検出した場合、或いはブレーキ作動中で且つ車速0を検出した場合、などの実施条件に従って経路切換モード変更を実施するようにしても良い。
【0017】第4発明のブレーキ作動中の判断は、ブレーキペダルなどの常用ブレーキを操作中か否かによって行うことが望ましいが、パーキングブレーキが作動中か否かも含めて判断するようにしても良い。ブレーキ作動中か否かは、ブレーキ操作の有無でON、OFFが切り換わるブレーキスイッチを用いれば良いが、ブレーキ油圧やブレーキ操作力(ペダル踏力など)が所定値以上か否かによって判断することもできる。
【0018】また、本発明の好適な態様は、(a) エンジンに連結された第1回転要素と、モータジェネレータに連結されるとともに第1クラッチを介して駆動輪に連結される第2回転要素と、第2クラッチを介して駆動輪に連結される第3回転要素と、を有する歯車式の合成分配装置を備えており、(b) 前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合し、前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が相対回転可能な状態で、前記エンジンを作動させるとともに前記モータジェネレータを回生制御して該第1回転要素および該第2回転要素にトルクを加え、該第3回転要素から該第2クラッチを経て駆動輪に動力を出力しながらバッテリを充電する合成走行モードと、(c) 前記第1クラッチを係合するとともに前記第2クラッチを開放し、前記モータジェネレータを力行制御して前記第2回転要素から該第1クラッチを経て駆動輪に動力を出力するモータ走行モードと、(d) 前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを共に係合し、前記モータジェネレータの作動を停止するとともに前記エンジンを作動させて前記合成分配装置を一体回転させ、第1クラッチおよび第2クラッチを経て駆動輪に動力を出力する直結走行モードと、を有して構成される。上記合成分配装置としては、シングルピニオンまたはダブルピニオンの遊星歯車装置が適当であるが、傘歯車式の差動装置を用いることもできる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である車両用のハイブリッド駆動制御装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動制御装置10は、燃料の燃焼で動力を発生する内燃機関等のエンジン14、電動モータおよび発電機として機能するモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されており、車両に横置きに搭載されて使用される。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。エンジン14およびモータジェネレータ16は走行用の複数の駆動源で、遊星歯車装置18は合成分配装置である。
【0020】上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)のシフトポジションに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのシフトポジションに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0021】「B」ポジションは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな駆動源ブレーキが発生させられるシフトポジションで、「D」ポジションは前進走行するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」ポジションは駆動源からの動力伝達を遮断するシフトポジションで、「R」ポジションは後進走行するシフトポジションで、「P」ポジションは駆動源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」ポジションでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。
【0022】クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。
【0023】そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」ポジションまたは「D」ポジションでは、「ETC走行モード」、「直結走行モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETC走行モード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態、言い換えればサンギヤ18s、キャリア18c、およびリングギヤ18rが相対回転可能な状態で、エンジン14を作動させるとともにモータジェネレータ16を回生制御することにより、サンギヤ18sおよびキャリア18cにトルクを加え、リングギヤ18rから第2クラッチC2を経て動力を出力して車両を前進走行させつつバッテリ42(図1参照)を充電する。「直結走行モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16の作動を停止するとともにエンジン14を作動させて遊星歯車装置18を一体回転させ、第1クラッチC1および第2クラッチC2を経て動力を出力して車両を前進走行させる。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を力行制御してキャリア18cから第1クラッチC1を経て動力を出力して車両を前進走行させる。この「モータ走行モード(前進)」ではまた、アクセルOFF時などにモータジェネレータ16を回生制御することにより、車両の運動エネルギーで発電してバッテリ42を充電するとともに車両に制動力を発生させることができる。
【0024】図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETC走行モードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。モータトルクTmはエンジントルクTeに対する反力トルクに相当し、ETC走行モードは合成走行モードに相当する。なお、CVTは無段変速機の意味で、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。
【0025】図4に戻って、「N」ポジションまたは「P」ポジションでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともにモータジェネレータ16を回生制御して発電し、バッテリ42を充電したりする。
【0026】「R」ポジションでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆方向へ回転駆動してキャリア18c更には入力軸22を逆回転させることにより車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」は、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2を開放した状態でエンジン14を作動させ、サンギヤ18sを正方向へ回転させるとともに、そのサンギヤ18sの回転に伴ってリングギヤ18rが正方向へ回転させられている状態で、第1ブレーキB1をスリップ係合させてそのリングギヤ18rの回転を制限することにより、キャリア18cに逆方向の回転力を作用させて後進走行を行うものであり、同時にモータジェネレータ16を逆方向へ回転駆動(力行制御)するようにしても良い。
【0027】前記変速機12はベルト式無段変速機(CVT)で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪(前輪)52に動力が分配される。変速機12は、一対の可変プーリ12a、12bおよびそれ等に巻き掛けられた伝動ベルトを備えており、プライマリ側(入力側)の可変プーリ12aの油圧シリンダによってV溝幅が変更されることにより変速比γ(=入力回転速度Nin/出力回転速度Nout )が連続的に変化させられるとともに、セカンダリ側(出力側)の可変プーリ12bの油圧シリンダによってベルト挟圧力(張力)が調整されるようになっている。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えており、共通の電動式油圧発生装置26から作動油が供給される。
【0028】本実施例のハイブリッド駆動制御装置10は、図1に示すHVECU60によって走行モードを変更するようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γやベルト張力などを制御するものである。
【0029】上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30の操作ポジション(シフトポジション)を表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力回転速度センサ86、出力回転速度センサ88、SOCセンサ90、ブレーキスイッチ92から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力回転速度(出力軸44の回転速度)Nout 、バッテリ42の蓄電量SOC、ブレーキペダルの操作の有無(ON、OFF)を表す信号がそれぞれ供給される。出力回転速度Nout は車速Vに対応し、蓄電量SOCはバッテリ42の残容量で、例えば電圧値でも良いが充放電量を逐次積算するなどして求めることもできる。
【0030】また、本実施例では図6に示すように、上記ハイブリッド駆動制御装置10の他に第2の駆動源としてリヤ側モータジェネレータ100を備えており、インバータ102を介して前記バッテリ42に電気的に接続され、力行制御および回生制御されるようになっている。モータジェネレータ100は差動装置104を介して左右の後輪106に機械的に連結され、力行制御されることにより後輪106を回転駆動するとともに、回生制御により後輪106に回生制動力を作用させる。このリヤ側モータジェネレータ100も前記HVECU60によって制御されるようになっており、例えば車両発進時や低μ路走行時など所定の条件下で前輪52に加えて後輪106を回転駆動するようになっている。
【0031】ここで、前記HVECU60による前進走行時の走行モードの切換制御は、図7のフローチャートに従って行われる。図7のフローチャートは、シフトレバー30が「D」または「B」ポジションへ操作されている場合に、車両停止時も含めてHVECU60の信号処理により所定のサイクルタイムで繰り返し実行されるようになっており、ステップS1では、現在の走行モードが「モータ走行モード」か、「直結走行モード」か、「ETC走行モード」かを判断する。そして、「モータ走行モード」の場合にはステップS2以下を実行し、「直結走行モード」の場合はステップS6以下を実行し、「ETC走行モード」の場合はステップS10以下を実行する。
【0032】「モータ走行モード」の場合に実行するステップS2では、車速Vが予め定められた所定値V1より小さいか否かを判断する。所定値V1は、モータジェネレータ16で走行することが望ましい上限値で、モータジェネレータ16の効率や最大トルクなどに応じて例えば55km/時程度の一定値が設定されており、V≧V1の場合はステップS13で「直結走行モード」へ移行し、V<V1の場合はステップS3で蓄電量SOCが予め定められた所定値SOC1より大きいか否かを判断する。所定値SOC1は、モータジェネレータ16で走行することが可能な下限値で、バッテリ42の充放電効率などに応じて例えば60%程度の一定値が設定されており、SOC≦SOC1の場合はステップS5で車速Vが予め定められた所定値V2より小さいか否かを判断する。所定値V2は、「直結走行モード」でエンジン14が停止することなく走行が可能な下限値で、エンジン14の出力特性などに応じて例えば10km/時程度の一定値が設定されており、V≧V2であればステップS13で「直結走行モード」へ移行するが、V<V2の場合はステップS14で「ETC走行モード」へ移行する。
【0033】上記ステップS3の判断がYES(肯定)の場合、すなわちSOC>SOC1の場合は、ステップS4で運転者の要求駆動力SPが予め定められた所定値SP1より小さいか否かを判断する。要求駆動力SPは、例えばアクセル操作量θacおよび車速Vなどに基づいて予め定められたマップや演算式などから求められる一方、所定値SP1は、モータジェネレータ16で走行することが望ましい上限値で、モータジェネレータ16の効率や最大トルクなどに応じて一定値が設定されており、SP<SP1であればステップS12で現在の走行モードすなわち「モータ走行モード」を維持するが、SP≧SP1の場合はステップS13で「直結走行モード」へ移行する。なお、SP≧SP1の場合は、車速Vが所定値V2より大きく、「直結走行モード」でエンジン14が停止することなく走行できる。
【0034】現在の走行モードが「直結走行モード」の場合に実行するステップS6では、車速Vが前記所定値V1より小さいか否かを判断し、V≧V1の場合はステップS12で現在の走行モードすなわち「直結走行モード」を維持するが、V<V1の場合はステップS7で要求駆動力SPが前記所定値SP1より小さいか否かを判断する。そして、SP≧SP1であればステップS12で現在の走行モードすなわち「直結走行モード」を維持するが、SP<SP1の場合はステップS8で蓄電量SOCが前記所定値SOC1より大きいか否かを判断し、SOC>SOC1であればステップS15で「モータ走行モード」へ移行するが、SOC≦SOC1の場合はステップS9を実行する。ステップS9では、車速Vが前記所定値V2より小さいか否かを判断し、V<V2であればステップS14で「ETC走行モード」へ移行するが、V≧V2であればステップS12で現在の走行モードすなわち「直結走行モード」を維持する。
【0035】現在の走行モードが「ETC走行モード」の場合に実行するステップS10では、車速Vが予め定められた所定値V3より大きいか否かを判断する。所定値V3は、「直結走行モード」との間で所定のヒステリシスが得られるように前記所定値V2より大きな値、例えば20km/時程度の一定値が設定されており、V>V3であればステップS13で「直結走行モード」へ移行するが、V≦V3の場合はステップS11を実行する。ステップS11では、前記ブレーキスイッチ92がONすなわちブレーキペダルを操作中で、車速V=0の状態が所定時間以上継続しており、且つ蓄電量SOCが予め定められた所定値SOC2以上か否かを判断し、総てを満足する場合にはステップS15で「モータ走行モード」へ移行するが、一つでも満たさない場合はステップS12で現在の走行モードすなわち「ETC走行モード」を維持する。上記所定時間は、出力回転速度センサ88の検出精度などを考慮して例えば数秒程度の一定値が定められており、所定値SOC2は、「モータ走行モード」との間で所定のヒステリシスが得られるように前記所定値SOC1より大きな値、例えば65%程度の一定値が設定されている。
【0036】このように、本実施例ではステップS11を満足する場合に「ETC走行モード」から「モータ走行モード」へ変更され、エンジン14が停止させられるとともにモータジェネレータ16で発進させられるため、不必要なエンジン14の作動が防止されて燃費が一層向上する。その場合に、「ETC走行モード」から「モータ走行モード」への変更は、第2クラッチC2を係合状態から開放状態へ切り換えた後、モータ回転速度Nm=0となった段階で第1クラッチC1を開放状態から係合状態へ切り換えるもので、一時的に動力伝達が遮断されるが、ブレーキ作動中で且つ車速V=0の場合に行われるため、モード変更に起因してショックが発生したりアクセル操作に対する応答性が損なわれたりすることが防止される。
【0037】また、本実施例ではバッテリ42の蓄電量SOCが、モータジェネレータ16で発進するのに十分な所定値SOC2以上であることを条件として「ETC走行モード」から「モータ走行モード」へ変更されるため、蓄電量不足により「モータ走行モード」での発進が不能となる恐れがない。
【0038】また、ブレーキ作動中で且つ車速V=0の状態が所定時間以上継続した場合に「ETC走行モード」から「モータ走行モード」へ変更されるため、モード変更に起因してショックが発生したりアクセル操作に対する応答性が損なわれたりすることが一層確実に防止される。
【0039】本実施例では、「ETC走行モード」から「モータ走行モード」への変更が経路切換モード変更で、HVECU60による信号処理のうちステップS11およびS15を実行する部分が停車時モード変更手段として機能している。
【0040】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成13年6月28日(2001.6.28)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
【公開番号】 特開2003−18707(P2003−18707A)
【公開日】 平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願番号】 特願2001−196727(P2001−196727)