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【発明の名称】 四輪駆動用手動変速機
【発明者】 【氏名】山田 研一
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号 富士重工業株式会社内

【要約】 【課題】変速機の動力伝達効率を向上させることにある。

【解決手段】この四輪駆動用手動変速機は前輪を駆動する前輪駆動軸34と後輪を駆動するプロペラシャフトとに動力伝達を行う。入力軸8に設けられた複数の駆動歯車と、入力軸8の下方に配置されて前輪駆動軸34が組み込まれた中空の出力軸9に設けられて駆動歯車と噛合う複数の被駆動歯車によって変速歯車列が形成される。入力軸8と同心上となって中間軸10が配置され、この中間軸10には出力軸9に一体に設けられた駆動歯車24に噛合って連結歯車列を形成する被駆動歯車14が一体に設けられており、この連結歯車列は最高速よりも1段低い変速段を形成している。中間軸10には動力分配装置40が装着され、この動力分配装置40は前輪駆動軸34に一体の被駆動歯車と噛合って前輪駆動歯車列を形成する駆動歯車38とプロペラシャフトが連結される後輪駆動部39とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪を駆動する前輪駆動軸と後輪を駆動する後輪駆動軸とに動力伝達を行う四輪駆動用手動変速機であって、複数の駆動歯車が設けられ、エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸の下方に配置され、前記駆動歯車と噛合って変速歯車列を形成する複数の被駆動歯車が設けられるとともに前記前輪駆動軸が組み込まれる中空の出力軸と、複数の前記変速歯車列を動力伝達状態と遮断状態とに切り換える噛合いクラッチと、前記入力軸と同心上に配置され、前記出力軸に一体の駆動歯車に噛合って連結歯車列を形成する被駆動歯車が一体に設けられた中間軸と、前記中間軸に装着され、前記前輪駆動軸に一体の被駆動歯車と噛合って前輪駆動歯車列を形成する駆動歯車および前記後輪駆動軸が連結される後輪駆動部を備えた動力分配装置とを有することを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【請求項2】 請求項1記載の四輪駆動用手動変速機において、前記連結歯車列を構成する被駆動歯車と前記入力軸とを連結状態と遮断状態とに切り換える噛合いクラッチを有し、前記連結歯車列を複数の前記変速歯車列とは相違するギヤ比としたことを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【請求項3】 請求項2記載の四輪駆動用手動変速機において、前記連結歯車列のギヤ比を最高速段よりも1段低い変速段のギヤ比としたことを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の四輪駆動用手動変速機において、前記連結歯車列と前記前輪駆動歯車列のギヤ比をそれぞれ1.0としたことを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の四輪駆動用手動変速機において、複数の前記変速歯車列、前輪駆動歯車列および前記連結歯車列を形成する歯車を、前輪終減速装置から前記前輪駆動軸に加わる軸方向の荷重に対向する方向に反力を発生させるはすば歯車としたことを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【請求項6】 請求項5記載の四輪駆動用手動変速機において、前記前輪駆動軸と前記出力軸との間に、前記出力軸から前記前輪駆動軸に加わる軸方向の負荷を支持するニードル軸受などのスラスト軸受を設け、前記前輪駆動軸を軸方向荷重を負荷可能なアンギュラコンタクトボール軸受などのボール軸受により支持し、前記前輪駆動軸に加わる負荷を前記スラスト軸受を介して前記ボール軸受に伝達することを特徴とする四輪駆動用手動変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両の前輪と後輪とにエンジン動力を伝達可能とした四輪駆動用手動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】手動変速機は、エンジン動力がクラッチを介して入力されるとともに複数の駆動歯車が設けられたインプット軸つまり入力軸と、それぞれの駆動歯車と常時噛合って変速歯車列を形成する複数の被駆動歯車が設けられた出力軸とを有している。それぞれの変速歯車列を入力軸から出力軸に動力伝達状態と遮断状態とに切り換えるためにシンクロメッシュ機構などの噛合いクラッチが変速機に設けられており、運転者がシフトレバーを操作すると、噛合いクラッチが作動して複数の変速歯車列のいずれかが動力伝達状態に切り換えられることになる。
【0003】四輪駆動用手動変速機は、中空の出力軸の内部に設けられて前輪終減速装置やフロントデファレンシャル装置に連結される前輪駆動軸と、後輪終減速装置とリヤデファレンシャル装置に連結されるプロペラシャフトつまり後輪駆動軸とを有し、前輪駆動軸および後輪駆動軸と出力軸との間には、動力分配装置が設けられている。動力分配装置は、低μ路で駆動輪がスリップしたり、前輪と後輪との間に所定以上の回転差が発生した場合に前輪と後輪とに対する駆動力の分配比率を変化させるように機能する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、入力軸の下方に出力軸を配置するようにした四輪駆動用手動変速機にあっては、動力分配装置が出力軸の後方にこれと同心上に配置されている。このようなレイアウトでは、前輪終減速装置における直交歯車から前輪駆動軸を介して出力軸に軸方向の荷重が大きく作用することになり、出力軸を支持するための軸受に大きな荷重が作用することになる。このため、大きなサイズの軸受を用いる必要があるだけでなく、軸受に大きな軸力が作用することから動力伝達ロスが大きくなり、軸受自体の回転ロスも大きいために、動力伝達効率を向上させることが難しかった。
【0005】一方、トランスミッションケース内には、歯車の噛合い面や軸の摺動面などを潤滑するために潤滑油が収容されており、車両走行時には歯車などにより潤滑油が掻き上げられて所要の部位に潤滑油が供給される。上述のように、動力分配装置をカウンター軸つまり出力軸と同心上に配置すると、動力分配装置がトランスミッションケースの下部側に配置されるので、動力分配装置のかなりの部分が潤滑油の静止油面下に没した状態で回転することになり、潤滑油の攪拌により出力軸などに加わる抵抗が大きくなるという問題点があった。
【0006】これに対して、たとえば、特開平10-166877号公報に開示されるように、入力軸を2本設けてエンジンに連結される第1入力軸に同心上に出力軸を配置し、この出力軸の下方に第1入力軸と歯車を介して連結される第2入力軸を配置し、第2入力軸と出力軸との間に複数の変速歯車列を設けるようにした四輪駆動用手動変速機が開発されている。この変速機にあっては、動力分配装置が第2入力軸よりも高い位置の出力軸と同心上に配置することができ、潤滑油の油面より高くなるので、動力分配装置の攪拌抵抗を低減することが可能となる。
【0007】しかしながら、中空の第2入力軸の内部に前輪駆動軸が組み込まれており、第1入力軸と出力軸とが直結状態となる第4速以外の変速段では、直進走行時においても第2入力軸とこの内部の前輪駆動軸は常に変速比分の回転差を持つことになる。このため、第2入力軸と前輪駆動軸はギヤの噛合い荷重が作用した状態で摺動し合うことになり、動力伝達ロスが発生する。
【0008】本発明の目的は、車両の直進走行時における中空軸とその内部の前輪駆動軸との間の相対回転を無くすことができるようにすることにある。
【0009】本発明の他の目的は、前輪終減速装置の直交歯車から前輪駆動軸に加わる軸方向の荷重を相殺し、軸受に加わる荷重を軽減して動力伝達効率を向上させることにある。
【0010】本発明の他の目的は、動力分配装置に加わる潤滑油の攪拌抵抗を軽減し、燃費の向上を図ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の四輪駆動用手動変速機は、前輪を駆動する前輪駆動軸と後輪を駆動する後輪駆動軸とに動力伝達を行う四輪駆動用手動変速機であって、複数の駆動歯車が設けられ、エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸の下方に配置され、前記駆動歯車と噛合って変速歯車列を形成する複数の被駆動歯車が設けられるとともに前記前輪駆動軸が組み込まれる中空の出力軸と、複数の前記変速歯車列を動力伝達状態と遮断状態とに切り換える噛合いクラッチと、前記入力軸と同心上に配置され、前記出力軸に一体の駆動歯車に噛合って連結歯車列を形成する被駆動歯車が一体に設けられた中間軸と、前記中間軸に装着され、前記前輪駆動軸に一体の被駆動歯車と噛合って前輪駆動歯車列を形成する駆動歯車および前記後輪駆動軸が連結される後輪駆動部を備えた動力分配装置とを有することを特徴とする。
【0012】本発明の四輪駆動用手動変速機は、前記連結歯車列を構成する被駆動歯車と前記入力軸とを連結状態と遮断状態とに切り換える噛合いクラッチを有し、前記連結歯車列を複数の前記変速歯車列とは相違するギヤ比としたことを特徴とする。
【0013】本発明の四輪駆動用手動変速機は、前記連結歯車列のギヤ比を最高速段よりも1段低い変速段のギヤ比としたことを特徴とする。
【0014】本発明の四輪駆動用手動変速機は、前記連結歯車列と前記前輪駆動歯車列のギヤ比をそれぞれ1.0としたことを特徴とする。
【0015】本発明の四輪駆動用手動変速機は、複数の前記変速歯車列、前記前輪駆動歯車列および前記連結歯車列を形成する歯車を、前輪終減速装置から前記前輪駆動軸に加わる軸方向の荷重に対向する方向に反力を発生させるはすば歯車としたことを特徴とする。
【0016】本発明の四輪駆動用手動変速機は、前記前輪駆動軸と前記出力軸との間に、前記出力軸から前記前輪駆動軸に加わる軸方向の負荷を支持するニードル軸受などのスラスト軸受を設け、前記前輪駆動軸を軸方向荷重を負荷可能なアンギュラコンタクトボール軸受などのボール軸受により支持し、前記前輪駆動軸に加わる負荷を前記スラスト軸受を介して前記ボール軸受に伝達することを特徴とする。
【0017】本発明にあっては、入力軸の下方に出力軸を配置するようにしたレイアウト構成において、動力分配装置が装着される中間軸を入力軸に同心上に配置して下側の出力軸から上側の中間軸に対して連結歯車列によりエンジン動力を伝達するようにしたので、動力分配装置をトランスミッションケースの上部に組み込むことができ、動力分配装置に加わる潤滑油の攪拌抵抗を軽減することができる。
【0018】本発明にあっては、前記連結歯車列を入力軸と出力軸との間に設けられた複数の変速歯車列とは相違したギヤ比の歯車列とし、その被駆動歯車を入力軸に直結状態とすることにより、連結歯車列の被駆動歯車を変速段用の歯車として機能させることができる。連結歯車列の駆動歯車と被駆動歯車の歯数を同一とし、前輪駆動歯車列の駆動歯車と被駆動歯車の歯数を同一とすることによって、車両の直進走行時には出力軸と前輪駆動軸の回転数が同一となって両者には相対回転がなくなる。
【0019】また、本発明にあっては、出力軸に前輪終減速装置から加わる軸力を、出力軸に設けられた変速歯車列と連結歯車列とにより対向するようにしたので、軸受に加わる荷重を軽減することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は四輪駆動車両の動力伝達系を示す概略正面図であり、図2は図1に示された手動変速機を示すスケルトン図であり、図3は図1に示された手動変速機の一部を拡大しトランスミッションケースを切り欠いて示す正面図であり、図4は図3の断面図である。
【0021】四輪駆動車両の動力伝達系は、図1に示されるように、原動機つまりエンジン1の動力がクラッチ2を介して入力される変速機3を有し、この変速機3からは前輪4aおよび後輪4bのそれぞれにエンジン動力が伝達されるようになっている。前輪4aには前輪終減速装置5を介して動力が伝達され、後輪4bにはプロペラシャフト6および後輪終減速装置7を介して動力が伝達される。それぞれの終減速装置5,7には図示しない差動機構つまりデフィレンシャル装置が組み付けられている。このように、図示する変速機3は車両に対して進行方向に搭載される縦置き式となっている。
【0022】図2に示すように、トランスミッションケース3a内にはクラッチ2を介してエンジン1のクランク軸1aに連結されてエンジン動力が入力されるインプット軸つまり入力軸8と、この入力軸8に対して平行となってこれよりも下方に配置される中空の出力軸9とがそれぞれ回転自在に組み込まれている。入力軸8には第1速と第2速の駆動歯車11,12が一体に設けられ、第3速と第5速の駆動歯車13,15が回転自在に設けられている。一方、出力軸9には駆動歯車11,12にそれぞれ常時噛合って第1速と第2速の変速歯車列を形成する被駆動歯車21,22が回転自在に設けられ、駆動歯車13,15にそれぞれ常時噛合って第3速と第5速の変速歯車列を形成する被駆動歯車23,25が一体に設けられている。
【0023】入力軸8に同心上となって入力軸8の後方には中間軸10が回転自在に配置されており、この中間軸には入力軸8と中間軸10とを連結させて、たとえば5速変速機における第4速の変速段用の被駆動歯車14が一体に設けられ、この被駆動歯車14に常時噛合って第4速以外の変速出力を伝達する駆動歯車24が出力軸9に一体に設けられている。第4速の変速段用の被駆動歯車14と駆動歯車24は出力軸9の回転を常に中間軸10に伝達する連結歯車列を形成している。
【0024】出力軸9には変速歯車列を第1速と第2速のいずれかを動力伝達状態に切り換えるとともにいずれにも動力を伝達しない中立状態に切り換えるための第1の噛合いクラッチ31が設けられている。一方、入力軸8には第5速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換えるための第2の噛合いクラッチ32と、第3速と第4速のいずれかに切り換えるとともに中立状態に切り換えるための第3の噛合いクラッチ33が設けられている。
【0025】それぞれの噛合いクラッチは同期噛合いクラッチつまりシンクロメッシュ機構により形成されており、第1の噛合いクラッチ31は、出力軸9に固定されるシンクロハブ31aとこれに軸方向に摺動自在に設けられるシンクロスリーブ31bとを有し、シンクロスリーブ31bは歯車21,22に設けられたスプライン21a,22aに係合するようになっている。第2および第3の噛合いクラッチ32,33はそれぞれ入力軸8に固定されるシンクロハブ32a,33aと、それぞれ軸方向に摺動自在に設けられるシンクロスリーブ32b,33bを有しており、それぞれ歯車15,13,14に設けられたスプライン15a,13a,14aに係合するようになっている。
【0026】入力軸8には後退用の駆動歯車17が一体に設けられ、シンクロスリーブ31bには後退用の被駆動歯車27が取り付けられており、アイドラ軸に軸方向に摺動自在に設けられた図示しないアイドラ歯車を駆動歯車17と被駆動歯車27とに噛み合わせると、入力軸8の回転は逆転されて出力軸9に伝達される。アイドラ歯車の軸方向移動は図示しない操作機構により行われる。すべての噛合いクラッチは運転者がシフトレバーを操作することにより作動して所定の変速段が設定される。
【0027】それぞれの噛合いクラッチ31〜33によって、第4速以外の変速段つまり第1速、第2速、第3速または第5速の変速段が設定された場合には、入力軸8に入力したエンジン動力は出力軸9に伝達され、さらに連結歯車列24,14を介して中間軸10に伝達される。これに対して、第4速の変速段が選択された場合には、噛合いクラッチ33によって入力軸8と中間軸10とが直結状態となるので、入力軸8から中間軸10に直接動力が伝達される。
【0028】中空の出力軸9の内部には前輪駆動軸34が回転自在に組み込まれており、この前輪駆動軸34の先端部に設けられた直交歯車35が前輪終減速装置5の減速用歯車36に噛合っている。これにより、前輪4aにはこの前輪駆動軸34によって動力が伝達される。
【0029】中間軸10には動力分配装置40が装着され、この動力分配装置40は遊星歯車列41と多板クラッチやビスカスクラッチ42とを有するセンタデファレンシャル装置により形成されている。この動力分配装置40は、前輪駆動軸34の後端部に一体に設けられた被駆動歯車37に噛合う駆動歯車38を有しており、これらの歯車37,38によって前輪駆動歯車列が形成されている。動力分配装置40はさらに後輪駆動部39を有し、この後輪駆動部39には後輪駆動軸つまりプロペラシャフト6が連結されることになる。この動力分配装置40により旋回時に前輪と後輪に回転差が発生した場合には遊星歯車列の差動回転により回転差を吸収することになる。
【0030】このように、動力分配装置40は入力軸8と同心上となってトランスミッションケース3a内に配置された中間軸10に装着されており、入力軸8よりも下方に配置された出力軸9からは連結歯車列を介して出力軸9よりも上方の中間軸10にエンジン動力が伝達され、この中間軸10からは動力分配装置40にエンジン動力が伝達されるようになっている。したがって、図1に示すように、変速機3の後端部が前端部よりも下側となるようにして傾斜して変速機3が車両に搭載されても、トランスミッションケース3a内に収容されている潤滑油は動力分配装置40の一部に接触するのみとなる。これにより、動力分配装置40を構成する回転体が多量の潤滑油を攪拌することがなくなり、出力軸9などに加わる抵抗を小さくすることができ、動力分配装置40に加わる潤滑油の攪拌抵抗を軽減して、燃費の向上を図ることができる。
【0031】被駆動歯車14と駆動歯車24により形成される連結歯車列としてのギヤ比と、駆動歯車38と被駆動歯車37とにより形成される前輪駆動歯車列のギヤ比はそれぞれ1.0となっている。したがって、全ての変速段において中間軸10の回転数は出力軸9の回転数と同一となり、動力分配装置40が差動回転しない車両の直進走行時には、出力軸9とその内部に組み込まれた前輪駆動軸34の回転数は同一となって一体に回転するので、両者は摺動し合うことがない。これにより、出力軸9と前輪駆動軸34との間における摺動損失の発生を防止できる。
【0032】図4に示すように、前輪駆動軸34の先端部はボール軸受であるたとえば、アンギュラコンタクトボール軸受51(ボール軸受)によりトランスミッションケース3aに回転自在に支持され、この前輪駆動軸34が組み込まれた出力軸9の後端部はローラ軸受52によりトランスミッションケース3aに回転自在に支持されている。出力軸9の前端部には前輪駆動軸34に加わる軸力つまり軸方向の荷重に対向する荷重を負荷させるためにスラスト軸受であるニードル軸受53が設けられている。車両の走行時には、図3に示すように、前輪終減速装置5から直交歯車35を介して前輪駆動軸34に矢印Aで示す方向に軸力が作用し、この軸力はアンギュラコンタクトボール軸受51に作用する。これ対し、変速等の動力伝達歯車列からの軸力は出力軸9のスラスト軸受53を介して対向方向に作用させている。このスラスト軸受53は、車両の直進走行時には出力軸9と前輪駆動軸34とが相対回転しないで、停止した状態となるので、荷重を受けた状態で軸受53が作動することなく、軸受の耐久性を向上させることができる。
【0033】第1速から第5速の変速歯車列、連結歯車列および前輪駆動歯車列を形成する駆動歯車と被駆動歯車は、はすば歯車により形成されており、動力伝達状態の歯車列においてはその歯車の噛合い歯面には図3において矢印Bで示すように矢印Aの方向とは逆方向の分力が発生する。したがって、出力軸9には前輪終減速装置5から矢印A方向に作用する軸力を相殺する方向つまり矢印Cで示す方向に反力が作用することになる。これにより、軸受51に加わる軸方向負荷が軽減され、アンギュラコンタクトボール軸受などのボール軸受が使用でき、動力伝達効率を向上させ、燃費を向上させることができる。なお、図4に示されるように、前輪駆動軸34は直交歯車35が設けられた部分34aと被駆動歯車37が設けられた部分34bとの2つの軸部材からなり、これらはセレーション30により結合されており、被駆動歯車37の端部はスラスト軸受を介して出力軸9の後端部を支持している。
【0034】図5は本発明の他の実施の形態である四輪駆動用手動変速機を示すスケルトン図であり、この変速機は前述した変速機が前進5段の変速段を有するのに対して、前進6段の変速段を有している。入力軸8には第1速〜第4速と第6速の駆動歯車11〜14と16が設けられ、出力軸9にはそれぞれの駆動歯車と常時噛合う被駆動歯車21〜24と26が設けられている。中間軸10に一体に設けられた被駆動歯車15と出力軸9に一体に設けられた駆動歯車25は、ギヤ比が1.0に設定された連結歯車列を形成している。この変速機においては、第2の噛合いクラッチ32は第3速と第4速の切り換えを行い、第3の噛合いクラッチ33は第5速と第6速の切り換えを行うようになっている。変速歯車列の数が相違することを除いて図1に示す変速機と同様の構造となっており、図5においては図1に示す部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0035】図6は本発明のさらに他の実施の形態である四輪駆動用手動変速機を示すスケルトン図であり、図6においては前述した変速機における部材と共通する部材には同一の符号が付されている。この変速機は図1に示す場合と同様に前進5段の変速段を有している。ただし、動力分配装置40は多板クラッチまたはビスカスカップリング42により形成されており、センタデファレンシャル装置を備えていない。この動力分配装置40は、中間軸10の後端部が後輪駆動部39となっており、この後輪駆動部39にプロペラシャフト6が連結されることになる。
【0036】図5および図6に示す変速機においても、図2に示した変速機と同様に、動力分配装置40は入力軸8と同心上となって出力軸9よりも上方に配置されるので、潤滑油の攪拌により出力軸9などに大きな抵抗力が加わることを防止できる。前輪駆動軸34を支持する軸受には大きな軸力が加わることなく、動力伝達効率を向上させることができる。また、車両の直進走行時には、出力軸9とこの中に組み込まれた前輪駆動軸34との間には相対回転運動が発生しないので、動力伝達効率を向上させることができる。
【0037】本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、本発明の手動変速機は前進5段または前進6段の変速機のみならず、前進4段あるいは前進6段以上の変速段を有する変速機にも適用することができる。また、動力分配装置としては、図示するタイプのみならず、傘歯車式など種々のものを搭載することができる。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、車両の直進走行時には出力軸と前輪駆動軸の回転数が同一となって両者には相対回転がなくなるので、摺動抵抗が軽減されて動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0039】本発明にあっては、出力軸と前輪終減速装置からの軸力が対向されるので、軸受に加わる荷重を軽減することができ、動力伝達効率を向上させることができる。
【0040】本発明によれば、入力軸の下方に出力軸を配置するようにしたレイアウト構成において、動力分配装置をトランスミッションケースの上部に組み込むことができ、動力分配装置に加わる潤滑油の攪拌抵抗を軽減することができ、動力伝達効率を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目7番2号
【出願日】 平成14年3月20日(2002.3.20)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和 (外1名)
【公開番号】 特開2003−267078(P2003−267078A)
【公開日】 平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願番号】 特願2002−77514(P2002−77514)