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【発明の名称】 車輌用2輪4輪駆動切換装置
【発明者】 【氏名】半田 秋男
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】齋藤 充
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】音の発生を防止しつつ、車輌の構成部材のレイアウトの自由度を高めることの可能な車輌用2輪4輪駆動切換装置を提供することを目的とする。

【解決手段】エンジン2と前輪4および後輪5との間にそれぞれ設けられた動力伝達機構(11・12)の何れか一方に設けられ、この動力伝達機構における動力伝達の断続を行う切換ユニットUを備えた車輌用2輪4輪駆動切換装置であって、前記切換ユニットが、前記動力伝達機構の、前記エンジンの近傍に設けられていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンと前輪および後輪との間にそれぞれ設けられた動力伝達機構の何れか一方に設けられ、この動力伝達機構における動力伝達の断続を行う切換ユニットを備えた車輌用2輪4輪駆動切換装置であって、前記切換ユニットが、前記動力伝達機構の、前記エンジンの近傍に設けられていることを特徴とする車輌用2輪4輪駆動切換装置。
【請求項2】 前記切換ユニットが、前記エンジンのクランクケースに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の2輪4輪駆動切換装置。
【請求項3】 前記切換ユニットが、油圧多板式クラッチであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2輪4輪駆動切換装置。
【請求項4】 前記切換ユニットに、前記油圧多板式クラッチへの作動油の供給を制御するソレノイドバルブが設けられ、このソレノイドバルブに、その駆動制御をなすコントロールユニットが接続されていることを特徴とする請求項3に記載の2輪4輪駆動切換装置。
【請求項5】 前記切換ユニットの入力側と出力側とに、これらの回転数を検出する回転センサがそれぞれ設けられ、前記コントロールユニットが、前記両回転センサからの上方に基づき、入力側の回転数と出力側の回転数の差が所定範囲内にある際に、前記切換ユニットを接続状態とするようになされていることを特徴とする請求項4に記載の2輪4輪駆動切換装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車輌用2輪4輪駆動切換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、駆動状態を2輪駆動と4輪駆動とに切り換えて走行できる車輌が知られている。図4は、前述した車輌の一例を示すもので、この図において符号1で示す車輌は、略中央部に搭載されたエンジン2と、前輪4および後輪5と、前記車輌1の前方上部に配設されて、前記前輪4の操舵を行うステアリングハンドル6と、このステアリングハンドル6の後方に取り付けられた燃料タンク7と、この燃料タンク7の後方に取り付けられたシート8とによって概略構成されている。
【0003】前記各前輪4および前記後輪5は、図5に示すように、左右一対の懸架装置9・10によって、車体フレームにそれぞれ上下動可能に支持されている。
【0004】また、前記エンジン2の前後には、このエンジン2の出力を前記各前輪4および各後輪5に伝達するための動力伝達機構としてのプロペラシャフト11・12が設けられており、これらの各プロペラシャフト11・12に、これらの各プロペラシャフト11・12の回転を、前記前輪4や後輪5へ伝達する前輪用最終減速機13と後輪用最終減速機14が設けられている。
【0005】そして、たとえば、前記前輪用最終減速機13とプロペラシャフト11との間に、図4ないし図6に示すように、前記前輪4へ伝達される動力の断続を行い、後輪駆動の状態と4輪駆動の状態とに切り換える2輪4輪駆動切換装置15が設けられている。あるいは、この2輪4輪駆動切換装置15は、後方のプロペラシャフト12と後輪用最終減速機14との間に設けられる場合もある。
【0006】前記2輪4輪駆動切換装置15は、たとえば、図7に示す構造のものが提案されている。この図において符号15で示す2輪4輪駆動切換装置は、前輪用最終減速器13の入力軸16を軸方向に2分割して形成され、同一軸線上において突き合わされるピニオンシャフト16aおよび連結シャフト16bと、これらの接続と切り離しを行う切換ユニット17とによって構成されている。
【0007】詳述すれば、前記前輪用最終減速器13側に位置させられるピニオンシャフト16aの端面中央には、円柱状の位置決め突起18が突設され、また、外側に位置させられる連結シャフト16bの端面中央には、前記位置決め突起18が回転自在に嵌合させられる位置決め凹部19が形成され、これらのピニオンシャフト16aと連結シャフト16bとを、位置決め突起18と位置決め凹部19とを嵌合させるようにして突き合わせることにより、これらのピニオンシャフト16aと連結シャフト16bが、同一軸線上に位置させられるとともに、相対回転自在に連結されるようになっている。
【0008】また、前記ピニオンシャフト16aと連結シャフト16bのそれぞれの突き合わせ部側の外周面には、スプラインS1、S2が形成されているとともに、この突き合わせ部を取り囲むように前記切換ユニット17が設けられている。
【0009】この切換ユニット17は、内面にスプラインが形成されて、前記ピニオンシャフト16aと連結シャフト16bの突き合わせ部に摺動可能に被嵌されて、それぞれのスプラインS1、S2に係脱させられる切換リング20と、この切換リング20を前記ピニオンシャフト16aと連結シャフト16bの軸方向に摺動させて、前記ピニオンシャフト16aのみに噛合させる位置と、前記ピニオンシャフト16aと連結シャフト16bのスプラインS1、S2に同時に噛合させる位置とに選択的に移動させるソレノイドからなる駆動機構21とによって構成されている。
【0010】このように構成された2輪4輪駆動切換装置15は、駆動機構21によって、前記切換リング20を一方向に移動させて、前記ピニオンシャフト16aのみに噛合させて前輪4への駆動力の伝達を遮断することにより、後輪のみ駆動する2輪駆動の状態とし、また、前記切換リング20を摺動させることにより、この切換リング20を、前記ピニオンシャフト16aに噛合させた状態で他方の連結シャフト16bへ噛合させ、これによって、前記ピニオンシャフト16aと連結シャフト16bを連結することにより前輪4へ駆動力を伝達し、前輪4および後輪5を同時駆動する4輪駆動の状態とするようになっている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような従来の2輪4輪駆動切換装置15にあっては、つぎのような改善すべき課題が残されている。
【0012】すなわち、駆動状態の切換時に、前輪4と後輪5との間に少しでも周速差があると、切換リング20と連結シャフト16bとの噛合がうまくいかず、円滑な切り換えができない場合があるといった課題である。また、切り換えが行われた場合にあっても、その切り換え時にスプラインどうしがぶつかり、音が発生するといった課題もある。さらに、前記2輪4輪駆動切換装置5は、前輪用最終減速器13側に取り付けられているが、この前輪用最終減速器13まわりには、前述した懸架装置9やステアリングハンドル6によって操作される操舵機構等が配設されていて、そのまわりのスペースが狭くなっており、この結果、車輌の他の構成部材のレイアウトが制約されてしまうことも想定される。
【0013】本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたもので、音の発生を防止しつつ、車輌の構成部材のレイアウトの自由度を高めることの可能な車輌用2輪4輪駆動切換装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の車輌用2輪4輪駆動切換装置は、前述した目的を達成するために、エンジンと前輪および後輪との間にそれぞれ設けられた動力伝達機構の何れか一方に設けられ、この動力伝達機構における動力伝達の断続を行う切換ユニットを備えた車輌用2輪4輪駆動切換装置であって、前記切換ユニットが、前記動力伝達機構の、前記エンジンの近傍に設けられていることを特徴とする。本発明の請求項2に記載の2輪4輪駆動切換装置は、請求項1に記載の前記切換ユニットが、前記エンジンのクランクケースに取り付けられていることを特徴とする。本発明の請求項3に記載の2輪4輪駆動切換装置は、請求項1または請求項2に記載の前記切換ユニットが、油圧多板式クラッチであることを特徴とする。本発明の請求項4に記載の2輪4輪駆動切換装置は、請求項3に記載の前記切換ユニットに、前記油圧多板式クラッチへの作動油の供給を制御するソレノイドバルブが設けられ、このソレノイドバルブに、その駆動制御をなすコントロールユニットが接続されていることを特徴とする。本発明の請求項5に記載の2輪4輪駆動切換装置は、請求項4に記載の前記切換ユニットの入力側と出力側とに、これらの回転数を検出する回転センサがそれぞれ設けられ、前記コントロールユニットが、前記両回転センサからの上方に基づき、入力側の回転数と出力側の回転数の差が所定範囲内にある際に、前記切換ユニットを接続状態とするようになされていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図3を参照して説明する。なお、以下の説明中、車輌の主要構成部分は、図4ないし図7と共通することから、同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0016】本実施形態における2輪4輪駆動切換装置22は、図1および図2に示すように、エンジン2の前後に配設される前輪用最終減速器13と後輪用最終減速器14の内、前記前輪用最終減速器13側に設けたものであり、前記エンジン2の前方に延設された動力伝達機構としてのプロペラシャフト11の前記エンジン2側に設けられ、本実施形態においては、前記2輪4輪駆動切換装置22が、前記エンジン2のクランクケース2aに一体化されている。
【0017】そして、図2において符号43は、前記前輪用最終減速器13に連結された左右一対のドライブシャフトを示し、符号44は、前記後輪用最終減速器14に連結され、後輪用のドライブシャフトが挿通された左右一対のアクスルハウジングであり、これらの各ドライブシャフト43およびアクスルハウジング44の先端部に、前輪4や後輪5のホイールが装着されるホイールハブ45・46が設けられている。
【0018】前記エンジン2は、内装されたクランクシャフトと平行に設けられた出力軸23が、車輌の前後方向に沿うように、この車輌に搭載されており、前記出力軸23の前端部と前記プロペラシャフト11との間に介装されている。
【0019】詳述すれば、前記2輪4輪駆動切換装置(以下、駆動切換装置と略称する)22は、本実施形態においては油圧多板式クラッチが用いられており、前記エンジン2のクランクケース2aの前端面に取り付けられたハウジング24を備えている。
【0020】前記ハウジング24は、略カップ状に形成されており、前記クランクケース2aの前端面に、前記出力軸23の前端部を覆うようにして、ボルト25によって着脱可能に取り付けられている。
【0021】そして、前記出力軸23の前端部は、前記ハウジング24の軸線上に位置させられ、この出力軸23の前端部を取り囲むようにクラッチ筒26が配設され、これらの出力軸23とクラッチ筒26との間に、多数のクラッチ板27が、前記出力軸23の軸線方向に重畳するように配設されている。
【0022】前記クラッチ筒26は、その前端部が小径部26aとなされており、この小径部26aに取り付けられたベアリング28を介して、前記ハウジング24に回転自在に取り付けられ、さらに、前記小径部26aの前端部に、前記プロペラシャフト11がスプライン嵌合させられている。
【0023】前記出力軸23の前端部外周と、前記クラッチ筒26の内周には、前記出力軸23の軸線方向に沿ったスプラインが形成されており、また、前記重ね合わされた多数のクラッチ板27は、その内周部に、前記出力軸23のスプラインに摺動可能に係合させられる多数の係合突起が形成されたクラッチ板27と、外周部に、前記クラッチ筒26のスプラインに摺動可能に係合させられる多数の係合突起が形成されたクラッチ板27とによって構成され、前記出力軸23に係合させられるクラッチ板27は、その外周部が、前記クラッチ筒26から所定間隔離間させられ、また、前記クラッチ筒26に係合させられるクラッチ板27は、その内周部が、前記出力軸23から所定距離離間させられている。
【0024】さらに、前記クランクケース2aの、前記ハウジング24が取り付けられた部位には、前記出力軸23を取り囲み、かつ、前記クラッチ板27に対向させられるピストン29が装着され、また、前記クランクケース2aには、前記ピストン29を前記クラッチ板27へ向けて押圧してこれらを圧接状態とするための作動油を供給するためのソレノイドバルブ30が取り付けられている。
【0025】また、前記クランクケース2aには、前記ソレノイドバルブ30に電気的に接続されたカプラ31が設けられており、このカプラ31に、前記ソレノイドバルブ30の駆動を制御するコントロールユニット32および電源33が接続されている。そして、本実施形態においては、前記クラッチ板27、ピストン29等によって、切換ユニットUが構成されている。
【0026】一方、前記前輪用最終減速器13には、図3に示すように、リングギア34の回転を検出することにより、前記プロペラシャフト11の回転数を検出する回転センサ34が取り付けられ、また、前記クランクケース2aには、前記出力軸23の回転を検出する回転センサ26が取り付けられている。そして、前記コントロールユニット32は、前記両回転センサ34・35からの検出信号に基づいて、前記プロペラシャフト11と出力軸23の回転差を算出し、この回転差が所定値以下である場合に、前記駆動切換装置22をONにして、前記出力軸23とプロペラシャフト11とを接続状態とするようになっている。
【0027】このように構成された本実施形態に係わる駆動切換装置22にあっては、前記エンジン2のクランクケース2aの前端に一体に取り付けられていることにより、車輌の他の構成部材が多く配設される前記前輪用最終減速器13まわりを大きく開放することができる。この結果、前述した車輌の他の構成部材のレイアウトの自由度が高められる。また、前記駆動切換装置22を、前記クランクケース2aのクラッチカバーの側部といったデッドスペースに設置することが可能となり、この点からも、エンジン2の前方部分のスペースを大きく開放することができる。
【0028】そして、4輪駆動に切り換えるには、前記ソレノイドバルブ30に通電してピストン29をクラッチ板27へ向けて移動させる。このようなピストン29の移動によって、前記多数のクラッチ板27が圧接させられて一体化されることにより、前記出力軸23とクラッチ筒26とが接続されて、前記出力軸23の回転が、前記プロペラシャフト11および前輪用最終減速器13を介して前輪4へ伝達され、これによって、4輪駆動の状態となされる。
【0029】このような4輪駆動への切換時において、前記出力軸23とプロペラシャフト11との接続が、多数のクラッチ板27の面接触によって行われ、かつ、これらのクラッチ板27の移動距離が極めて小さいことから、前述した切換時の音が小さく抑えられる。ここで、前記両回転センサ35・36からの情報に基づき、前記プロペラシャフト11と出力軸23との回転差を監視し、この回転差が所定値以下である場合に、前述した4輪駆動への切換を行うようにすることにより、より円滑で静寂な切り換えを行うことができる。
【0030】また、前記駆動切換装置22をエンジン2の近傍に配設したことにより、前記駆動切換装置22に接続される信号線や電源線等の配線が短くてすみ、車輌の構成を簡素化することができる。そして、本実施形態のように、駆動切換装置22の切換ユニットUを油圧多板式クラッチによって構成した場合、その作動に必要な作動油を供給するためのオイル通路を、前記エンジン2の、たとえば、クランクケース2aに形成されている既存のオイル通路を分岐することによって容易かつ短く形成することができ、構成が極めて簡素になる。
【0031】なお、前記実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、切換えユニットをエンジン近傍に配設することにより、この切換えユニットを、車輌の構成部品が多く配設される最終減速機近傍から離して設置することができ、これによって、前記構成部品の設置のレイアウトの自由度を高めることができる。そして、切換えユニットとエンジンとを近付けて、前記切換ユニットに接続される種々の制御線等を短くすることができ、これによって、構成の簡素化を図ることができる。また、切換えユニットに油圧多板式クラッチを用いることにより、駆動状態の切換時における音の発生を抑制することができる。ここで、プロペラシャフトとエンジンの回転差を監視して、その回転差が所定範囲内にある場合に駆動切換を行うようにすることにより、この駆動切換をより円滑にすることができるとともに、音の発生をさらに抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年3月19日(2002.3.19)
【代理人】 【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
【公開番号】 特開2003−267077(P2003−267077A)
【公開日】 平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願番号】 特願2002−76729(P2002−76729)