| 【発明の名称】 |
4輪駆動車両の駆動力伝達装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 司 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】杉野 聡一 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】熊谷 頼範 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】三瓶 忠康 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【氏名】松原 千博 【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
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| 【要約】 |
【課題】クラッチのハンチングを簡単な機械的構造により防止した4輪駆動車両の駆動力伝達装置を供する。
【解決手段】第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が入力されるサンギア11と、サンギア11に噛合うプラネタリギア12と、プラネタリギア12に噛合うリンク゛ア13と、プラネタリギア12を軸支し前記他の車輪2に伝達される回転力が出力されるキャリア14と、リングギア12とともに回転する一方のクラッチ部材16と、キャリア14とともに回転する他方のクラッチ部材16と、両クラッチ部材16を互いに締結する方向に付勢する弾性部材17と、遠心力により両クラッチ部材16を互いに解放する方向に押圧する遠心子部材18とを備え、サンギア14に入力される駆動力に基づいて各ギアの噛合せにより生じるリングギア13のスラスト力が両クラッチ部材16を互いに解放する方向に押圧するようにプラネタリギアセット10を構成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後一方の車輪に第1の駆動源からの駆動力が伝達されるとともに、前後他方の車輪に前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が伝達される4輪駆動車両において、前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が入力されるヘリカルギアを形成するサンギアと、前記サンギアに噛合うヘリカルギアを形成するプラネタリギアと、前記プラネタリギアに噛合うヘリカルギアを形成するリングギアと、前記プラネタリギアを軸支し前記他方の車輪に伝達される回転力が出力されるキャリアと、前記リングギアとともに回転する一方のクラッチ部材と、前記キャリアとともに回転する他方のクラッチ部材と、前記両クラッチ部材を互いに締結する方向に付勢する弾性部材と、遠心力により前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧する遠心子部材とを備え、前記サンギアに入力される駆動力に基づいて前記各ヘリカルギアの噛合わせにより生じる前記リングギアのスラスト力が前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧するようにプラネタリギアセットが構成されることを特徴とする4輪駆動車両の駆動力伝達装置。 【請求項2】 前後一方の車輪に第1の駆動源からの駆動力が伝達されるとともに、前後他方の車輪に前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が伝達される4輪駆動車両において、前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が入力されるヘリカルギアを形成するリングギアと、前記リングギアに噛合うヘリカルギアを形成するプラネタリギアと、前記プラネタリギアに噛合うヘリカルギアを形成するサンギアと、前記プラネタリギアを軸支し前記他方の車輪に伝達される回転力が出力されるキャリアと、前記キャリアと前記サンギアとの間に介装されるワンウエイクラッチと、前記リングギアとともに回転する一方のクラッチ部材と、前記キャリアとともに回転する他方のクラッチ部材と、前記両クラッチ部材を互いに締結する方向に付勢する弾性部材と、遠心力により前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧する遠心子部材とを備え、前記リングギアに入力される駆動力に基づいて前記各ヘリカルギアの噛合わせにより生じる前記プラネタリギアのスラスト力が前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧するようにプラネタリギアセットが構成されることを特徴とする4輪駆動車両の駆動力伝達装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、4輪駆動車両における駆動力伝達装置に関する。 【0002】 【従来の技術】駆動力源に内燃機関と電動機とを併用する4輪駆動車両において、電動機の動力を遠心クラッチを介して駆動輪に伝達される動力伝達装置の例が特開2001−287550公報に開示されている。 【0003】同例には、電動モータの駆動力を減速機構が減速し、減速された駆動力をデファレンシャル装置が車軸側に配分する動力伝達装置において、デファレンシャル装置の一方のサイドギヤとデフケースとの間に遠心クラッチが配置された実施形態(第11実施形態)が開示されている。 【0004】この遠心クラッチは、コイルスプリングにより締結側に付勢されており、車速が所定値まで上昇すると、この付勢力に抗してクラッチが解放される構造となっている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】遠心クラッチが解放される車速はコイルスプリングで設定しているので、所定の車速を超えて解放されていた遠心クラッチが、減速により締結する車速も同じ車速である。 【0006】したがってこの所定の車速近傍で遠心クラッチの解放と締結が繰り返される所謂ハンチングを起こす可能性がある。 【0007】本発明は、斯かる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、クラッチのハンチングを簡単な機械的構造により防止した4輪駆動車両の駆動力伝達装置を供する点にある。 【0008】 【課題を解決するための手段及び作用効果】上記目的を達成するために、本請求項1記載の発明は、前後一方の車輪に第1の駆動源からの駆動力が伝達されるとともに、前後他方の車輪に前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が伝達される4輪駆動車両において、前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が入力されるヘリカルギアを形成するサンギアと、前記サンギアに噛合うヘリカルギアを形成するプラネタリギアと、前記プラネタリギアに噛合うヘリカルギアを形成するリングギアと、前記プラネタリギアを軸支し前記他方の車輪に伝達される回転力が出力されるキャリアと、前記リングギアとともに回転する一方のクラッチ部材と、前記キャリアとともに回転する他方のクラッチ部材と、前記両クラッチ部材を互いに締結する方向に付勢する弾性部材と、遠心力により前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧する遠心子部材とを備え、前記サンギアに入力される駆動力に基づいて前記各ヘリカルギアの噛合わせにより生じる前記リングギアのスラスト力が前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧するようにプラネタリギアセットが構成される4輪駆動車両の駆動力伝達装置とした。 【0009】加速時には遠心子部材の遠心力とともに各ヘリカルギアの噛合わせによるスラスト力が弾性部材の付勢力に抗して作用し、所定車速を越えると締結されていた両クラッチ部材を解放して動力伝達が遮断され、減速時にはスラスト力は働かず遠心力のみが作用するので前記所定車速より高い車速で両クラッチ部材の締結が開始され動力伝達が可能となる。 【0010】このように各ヘリカルギアの噛合わせによるスラスト力は、加速時には働き減速時には働かないことにより、クラッチ部材が加速時の解放する車速と減速時の締結開始する車速は異なり、この車速の差により所定車速の近傍での車両の走行時にクラッチの解放・締結を頻繁に繰り返す所謂ハンチングを防止することができる。 【0011】各ヘリカルギアからなるプラネタリギアセットのリングギアとキャリアとの間に介装されたクラッチ部材が遠心子部材により作動する簡単な機械的構造により車速に応じて動力の伝達および遮断を自動的に行なうことができる。 【0012】請求項2記載の発明は、前後一方の車輪に第1の駆動源からの駆動力が伝達されるとともに、前後他方の車輪に前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が伝達される4輪駆動車両において、前記第1の駆動源または第2の駆動源からの駆動力が入力されるヘリカルギアを形成するリングギアと、前記リングギアに噛合うヘリカルギアを形成するプラネタリギアと、前記プラネタリギアに噛合うヘリカルギアを形成するサンギアと、前記プラネタリギアを軸支し前記他方の車輪に伝達される回転力が出力されるキャリアと、前記キャリアと前記サンギアとの間に介装されるワンウエイクラッチと、前記リングギアとともに回転する一方のクラッチ部材と、前記キャリアとともに回転する他方のクラッチ部材と、前記両クラッチ部材を互いに締結する方向に付勢する弾性部材と、遠心力により前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧する遠心子部材とを備え、前記リングギアに入力される駆動力に基づいて前記各ヘリカルギアの噛合わせにより生じる前記プラネタリギアのスラスト力が前記両クラッチ部材を互いに解放する方向に押圧するようにプラネタリギアセットが構成される4輪駆動車両の駆動力伝達装置である。 【0013】クラッチ締結時には駆動力がリングギアからキャリアに直接伝達され、プラネタリギアセットが一体で回転し、加速時に遠心子部材の遠心力の作用によりクラッチ部材が滑り始めるが、このクラッチ部材の滑りにより生じるリングギアからプラネタリギアさらにサンギアに伝達される駆動力による相対回転は、サンギアとキャリア間に介装されるワンウエイクラッチにより阻止され、結局プラネタリギアセットは一体で回転する。 【0014】クラッチ部材が滑り始めると、遠心子部材の遠心力に加えて各ヘリカルギアの噛合わせによるスラスト力が作用し始めるので、両者の合力が弾性部材の付勢力に抗し、所定車速を越えたところでクラッチ部材を解放する。 【0015】クラッチ部材が解放されると、リングギアからキャリアへの直接伝達はなくなり、リングギアからプラネタリギアさらにサンギアに駆動力が伝達されるが、サンギアはワンウエイクラッチにより回転を許容されるため、プラネタリギアの公転すなわちキャリアには殆ど駆動力は伝達されず車輪への動力伝達が遮断される。また各ヘリカルギアの噛合わせによるスラスト力もクラッチ部材に働かない。 【0016】クラッチ解放状態からの減速時には、遠心力のみが作用するので前記所定車速より高い車速で両クラッチ部材が滑り始めて締結され動力伝達が可能となる。このように各ヘリカルギアの噛合わせによるスラスト力は、加速時のクラッチ部材の滑りが生じているときにのみ働き、減速時には働かないことにより、クラッチ部材が加速時の解放する車速と減速時の締結開始する車速は異なり、この車速の差により所定車速の近傍での車両の走行時にクラッチの解放・締結を頻繁に繰り返す所謂ハンチングを防止することができる。 【0017】 【発明の実施の形態】以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図5に基づき説明する。本実施の形態に係る4輪駆動車両1は、前輪が内燃機関により駆動され、後輪2がモータ4により駆動されるものである。 【0018】モータ4はバッテリに接続され、バッテリの電力で駆動されるが、同モータ4は発電機を兼用しており、回生トルクにより発電機として作動して発電力はバッテリの充電に供することができる。 【0019】図1および図2は、該4輪駆動車両1における後輪2の動力伝達機構3の構成図を示す。動力伝達機構3は、プラネタリギアセット10と減速機構20と差動ギア機構25から構成されている。 【0020】プラネタリギアセット10は、同軸のサンギア11とリングギア13との間に噛合してプラネタリギア12が同軸回転するキャリア14に軸支されて自転しながら公転可能に介装された構造をしている。 【0021】キャリア14は、リングギア13の外周を覆いリングギア13を軸方向に摺動自在に支持するクラッチガイド15と連結され一体に回転する。クラッチガイド15とリングギア13との間に互いに軸方向に接離するクラッチ部材16が介装されている。 【0022】またクラッチガイド15とリングギア13との間に介装されたスプリング17によりリング部材13が押圧されてクラッチ部材16を締結する方向に付勢している。そして回転するクラッチガイド15には遠心子部材18が揺動自在に支持されている。 【0023】該遠心子部材18は、くの字状に屈曲し一側片先端に遠心ウエイト18aが設けられ、他側片が作用片18bとしてリングギア13に当接作用する。キャリア14とともにクラッチガイド15が回転すると、遠心子部材18が遠心ウエイト18aにかかる遠心力により揺動し、クラッチ部材16を解放する方向に前記スプリング17の付勢力に抗してリングギア13を摺動する。 【0024】プラネタリギアセット10のサンギア11,プラネタリギア12,リングギア13の各歯状はヘリカルギアを形成して互いに噛合っており、このヘリカルギアによるスラスト力がリングギア13に作用してクラッチ部材16を解放する方向に付勢している。 【0025】該プラネタリギアセット10は、サンギア11とキャリア14が入出力にあたり、クラッチ部材16が図1に示すように締結状態にあると、クラッチガイド15を介してキャリア14とリングギア13が結合されてプラネタリギア12の自転が阻止されるためサンギア11を含めたプラネタリギアセット10全体が一体に回転し、入出力のサンギア11とキャリア14は同軸で同一回転する。 【0026】車速に基づく遠心子部材18の遠心力とヘリカルギアのギアスラスト力によりクラッチ部材16が図2に示すように解放されると、キャリア14とリングギア13は相対回転可能で、入出力のサンギア11とキャリア14は互いに自由に回転可能で、動力が伝達されない。 【0027】プラネタリギアセット10のサンギア11の回転軸にモータ4の回転軸4aが同軸に連結され、キャリア14の回転軸に減速機構20のギア21が同軸に連結されており、減速機構20はギア21に噛合するギア22に同軸一体のギア23が差動ギア機構25の入力ギア24と噛合している。 【0028】差動ギア機構25は、入力ギア24の回転を左右の後輪2,2の車軸2a,2aに振り分け伝達して後輪2,2を回転する。 【0029】本動力伝達機構3は、以上のように構成されており、クラッチ部材16のトルク容量(伝達可能なトルクの最大値)Tcの車速Vに対する変化を図3に示し、同図3を参照して加速時の動作を図4に減速時の動作を図5に示し説明する。 【0030】なおクラッチ部材16には、締結方向にスプリング17によるスプリング力Fspが常に作用し、解放方向にヘリカルギアの噛合いによるギアスラスト力Fgsと遠心子部材18の遠心力による切離し力Fcfが作用する。 【0031】したがってクラッチ部材16を締結しようとする押付け荷重Fは、次式のようにスプリング力Fspからギアスラスト力Fgsと切離し力Fcfを減算したものである。 F=Fsp−Fgs−Fcf【0032】クラッチ部材16が伝達可能なトルクの最大値であるトルク容量Tcは、押付け荷重Fに比例し、次式で表される。 Tc=μkFここにμは摩擦係数、kはトルク部材16の形態から決まる定数である。 【0033】モータ4が電動機として駆動して4輪駆動で走行を始めたときは、クラッチ部材16にはギアスラスト力Fgsと切離し力Fcfが作用するので、その場合の4輪駆動トルク容量Tc4は、Tc4=μkF=μk(Fsp−Fgs−Fcf) であり、車速Vに対するこの4輪駆動トルク容量Tc4の変化を図3に曲線C4で示す。 【0034】遠心子部材18の遠心力による切離し力Fcfは、車速Vの2乗に比例するので、図3において曲線C4は2次曲線となっている。 【0035】モータ4が電動機として駆動していないで2輪駆動で走行しているときは、クラッチ部材16には遠心力による切離し力Fcfが作用するが、ギアスラスト力Fgsは作用せず、その場合の2輪駆動トルク容量Tc2は、Tc2=μkF=μk(Fsp−Fcf) であり、車速Vに対するこの2輪駆動トルク容量Tc2の変化を図3に曲線C2で示す。 【0036】2輪駆動トルク容量Tc2の方が、ギアスラスト力Fgsを受けない分4輪駆動トルク容量Tc4よりトルク容量が大きく、図3に示すように曲線C2が曲線C4より上方に位置する。 【0037】なお4輪駆動車両の場合、高速になると2輪駆動の方が効率が良いので、モータ4のモータ駆動力は、図3に示すようにある程度の車速に達すると、車速に対して漸次減少させるよう制御して内燃機関の動力に徐々に任せるようにし、トルク容量Tc4を越えてさらにクラッチ部材16が完全に解放されたところで動力伝達されなくなり、2輪駆動となる。 【0038】この加速時の動作を図3および図4に従って説明すると、まず発進時に電子制御装置ECUにより制御されてモータ4が電動機として駆動した当初は、図4■に示すようにクラッチ部材16にスプリング力Fspのほかヘリカルギアの噛合いによるギアスラスト力Fgsが作用しプラネタリギアセット10は一体に回転しようとするが、まだ遠心力による切離し力Fcfが生じておらず、図3の4輪駆動トルク容量Tc4の曲線C4上の■に位置する状態にある。 【0039】後輪2が回転し車速が上昇すると、クラッチ部材16に遠心力による切離し力Fcfが徐々に大きく作用して図3に示すように4輪駆動トルク容量Tc4は2次曲線C4に沿って減少し、別に制御されて減少していたモータ駆動力と一致した曲線C4上の■の位置でモータ駆動力が4輪駆動トルク容量Tc4を上回るとクラッチ部材16は滑り始める(図3■参照)。 【0040】そしてさらに加速され4輪駆動トルク容量Tc4が0になった曲線C4上の■の位置で、クラッチ部材16は完全に解放され(図3■参照)、モータ4の駆動力はプラネタリギアセット10の出力であるキャリア14に伝達されず後輪2を駆動せず2輪駆動状態となる。その後モータ4への通電は停止される。 【0041】2輪駆動で車速がさらに上昇すると、遠心力による切離し力Fcfが増加し、クラッチ部材16は完全に解放され(図5■参照)、図3におけるトルク容量Tc=0の■の位置にある。 【0042】斯かる状態から車速が低下すると、遠心力によるクラッチ部材16の切離し力Fcfが低下してクラッチ部材16は、スプリング力Fspにより互いに接近して引き摺りを始める(図5■参照)。クラッチ部材16が引き摺りを始める時点は、2輪駆動トルク容量Tc2が生じるところで図3において曲線C2とTc=0の直線との交点■の位置にある。 【0043】すなわち加速時のクラッチ部材16が完全に解放される車速(図3の■の位置)よりも高い車速(図3の■の位置)で減速時のクラッチ部材16が引き摺りを生じる。 【0044】さらに減速すると、遠心力による切離し力Fcfの低下で2輪駆動トルク容量Tc2が上昇して2輪駆動トルク容量Tc2の曲線C2上を移動し、図3における回生トルクを上回った点■の位置であるクラッチ部材16の完全締結に至る(図5■参照)。 【0045】クラッチ部材16が完全締結に至れば後輪2の回転トルクは、プラネタリギアセット10が一体に回転される動力伝達機構3を介してモータ4の駆動軸に伝達されるので、モータ4を発電機として作動させて回生を行うことができる。 【0046】以上のようにクラッチ部材16が加速時に解放する車速と減速時に締結する車速には差があるため、所定車速の近傍での車両の走行時にクラッチの解放・締結を頻繁に繰り返す所謂ハンチングを防止することができる。 【0047】クラッチ部材16における解放する車速と締結する車速の差は、4輪駆動トルク容量Tc4と2輪駆動トルク容量Tc2のずれ(図3の曲線C4と曲線C2の開き)を決定するギアスラスト力Fgsによるものであり、よってプラネタリギアセット10のヘリカルギアの歯条の角度により前記車速の差を適当に設定することができる。 【0048】ここにモータ4の制御手順を図6のフローチャートに従って簡単に説明する。なおECUが、車速,機関回転数、スロットル角度,ブレーキ状態、バッテリ残量などの各センサからの情報を入力して演算処理しモータ4を制御している。 【0049】まずパニックブレーキ(急ブレーキ)が掛けられたか否かを機関回転数の変化から判断し(ステップ1)、掛けられたときはステップ11に飛んでモータ4の駆動(アシスト)および回生は禁止し、掛けられていないときはステップ2に進みクルーズ中か否かをスロットル角度(またはアクセルペダルの角度)および車速の変化量および機関回転数から判断する。 【0050】クルーズ中でない場合はステップ4に飛び、スロットル角度がある角度以上あって車速変化が無く機関回転数の変化の少ないクルーズ中はステップ3に進み回生要求があるか否かをバッテリ残量から判断する。 【0051】バッテリ残量が所定量より少ない過不足状態のときに回生要求があるとして、ステップ8に進み、アクセルペダルが踏まれ内燃機関によりクルーズ走行中にモータ4を発電機として作動してクルーズ回生を実行する。走行中に後輪2側に少し制動が掛かることになるが、違和感がないように回生量は制御されている。 【0052】クルーズ中でない場合は、ステップ4に進んで、減速中か否かをスロットル角度が0か否か、機関回転数、車速変化により判断し、減速中でなければステップ6に飛んで加速中か否かをスロットル角度および機関回転数、車速変化から判断する。クルーズ中で回生要求がない場合は、ステップ6に進む。 【0053】減速中ならばステップ4からステップ5に進み車速が条件範囲内(例えば10〜80(または90)km/h)にあるか否かを判断し、条件範囲内にあればステップ9に進みモータ4を発電機として作動して減速回生を実行する。 【0054】あまりにも高車速のときには発電機としての回転が高すぎる場合があるので車速を条件として減速回生をしている。なお車速が条件範囲内になければステップ11に飛び回生を禁止する。 【0055】また加速中であればステップ6からステップ7に進み進み車速が条件範囲内(例えば0〜90(または100)km/h)にあるか否かを判断し、条件範囲内にあればステップ10に進み、モータ4を電動機として駆動して動力のアシストをして4輪駆動とする。 【0056】なおステップ10において加速中で車速が条件範囲内にあっても、前記したように車速の上昇に伴いモータ駆動力を小さくしており(図3参照)、所定車速(図3において■の位置での車速)以上ではモータ4の駆動を停止する制御を行っている。 【0057】加速中でないとき、または車速が条件範囲内にもないときはステップ11に進み、モータ4の駆動および回生は禁止される。 【0058】次いでステップ12に進むと、モータ4の駆動および回生が禁止されているか否かを判断し、禁止されているときは1サイクルの制御は終了となり、禁止されていない状態すなわちモータ4が駆動または回生を行っているときは、ステップ13に進み、ブレーキが掛けられているか否かを判断し、ブレーキが掛けられているときはステップ14に進んで、アクセルペダルが踏まれているかを判断する。 【0059】ブレーキペダルもアクセルペダルも同時に踏まれているときは、ステップ17に進んで、モータの駆動力を制限する。すなわちブレーキペダルとアクセルペダルが同時に踏まれてモータ4が電動機として駆動されているときは、運転者の意図が加速要求にあるのか減速要求にあるのか不明であるため、少なくともブレーキペダルが踏まれていることを重視してモータの駆動を低く制限しようとするものである。 【0060】ブレーキペダルとアクセルペダルの少なくとも一方が踏まれていないときは、ステップ15に進み、車速が極めて低いか否かを判断しており、ここでの車速は前輪の左右平均車速である。車速が極めて低い場合は、ステップ16に進み、後輪2の左右輪の回転差が大きいか否かを判断している。 【0061】車速が極めて低く、後輪の左右輪回転差が大きい場合、すなわち前輪は略停止しているのに後輪の片方だけが、氷上などで空転したり脱輪している場合には、ステップ18に進み、モータ4の駆動力を制限する。車速が極めて低くないか、後輪の左右輪回転差が大くない場合は、1サイクルの処理は終了する。 【0062】以上のようにモータ4は制御されるが、モータ駆動の下で加速しているときは、所定車速(図3において■の位置での車速)を超えるとプラネタリギアセット10に組み込まれたクラッチ部材16が解放され機械的にモータの駆動力の伝達を確実に遮断するようにしている。 【0063】次ぎに別の実施の形態に係る4輪駆動車両31について図7ないし図11に基づき説明する。該4輪駆動車両31における後輪32の動力伝達機構33の構成図を図7および図8に示す。 【0064】動力伝達機構33のギア51,52,53、54からなる減速機構50および差動ギア機構55は、前記実施の形態と同じであり、プラネタリギアセット40のサンギア41,プラネタリギア42,リングギア43がヘリカルギアで同じように噛合わされている。 【0065】プラネタリギア42を軸支するキャリア44と一体に回転するクラッチガイド45が、リングギア43の外周を覆い自身が軸方向に摺動自在に設けられている。クラッチガイド45とリングギア43との間に互いに軸方向に接離するクラッチ部材46が介装されている。 【0066】クラッチガイド45とリングギア43との間に介装されたスプリング47によりクラッチガイド45が押圧されてクラッチ部材46を締結する方向に付勢している。そして回転するクラッチガイド45には遠心子部材48が揺動自在に支持されている。 【0067】該遠心子部材48は、くの字状に屈曲し一側片先端に遠心ウエイト48aが設けられ、他側片が作用片48bとしてキャリア44に当接作用する。キャリア44とともにクラッチガイド45が回転すると、遠心子部材48が遠心ウエイト48aにかかる遠心力により揺動し、クラッチ部材46を解放する方向に前記スプリング47の付勢力に抗してクラッチガイド45を摺動する。 【0068】プラネタリギアセット40のヘリカルギアを形成しているサンギア41,プラネタリギア42,リングギア43の噛合いによりスラスト力がリングギア43に作用してクラッチ部材46を解放する方向に付勢している。 【0069】そしてキャリア44とサンギア41との間にワンウエイクラッチ49が介装されている。以上のプラネタリギアセット40のリングギア43に、発電機兼用のモータ34の駆動が連結部材35を介して入力され、キャリア44の回転が出力として減速機構50のギア51に伝達されるようになっている。 【0070】クラッチ部材46が完全に締結されていると、リングギア43とキャリア44は一体であり、プラネタリギアセット40は全体で一体に回転する。その際モータ34の駆動力はキャリア44と一体のリングギア43に伝達されるので、リングギア43がプラネタリギア42を自転させる力が働かないためヘリカルギアとしてのスラスト力は生じない。 【0071】しかしクラッチ部材46が滑り始めると、リングギア43からプラネタリギア42を介してサンギア41に駆動力が伝達され、ヘリカルギアとしてのスラスト力が発生するが、サンギア41とキャリア44との間にはワンウエイクラッチ49が介装されているためサンギア41が相対回転せず、よってプラネタリギア42も自転せずに全てのギアが一体になって回転すなわちプラネタリギアセット40は依然として全体で一体に回転する。 【0072】ただしクラッチ部材46が滑り始めると、リングギア43にクラッチ部材46を解放する方向にスラスト力が発生する。 【0073】したがって本実施の形態では、4輪駆動トルク容量Tc4は、Tc4=μkF=μk(Fsp−Fcf) であり、クラッチ部材46のトルク容量Tcの車速Vに対する変化を示すと図9の曲線C4のようになる。 【0074】図9には、仮にギアスラスト力Fgsも作用している場合のトルク容量を点線の曲線C´で示している。以下本動力伝達機構33による動作を図9ないし図11に従って説明する。 【0075】まず発進時に電子制御装置ECUにより制御されてモータ34が電動機として駆動した当初は、クラッチ部材46が完全締結されて図10■に示すようにクラッチ部材46にスプリング力Fspのみが作用しプラネタリギアセット40は一体に回転しようとするが、まだ遠心力による切離し力Fcfが生じておらず、図9の4輪駆動トルク容量Tc4の曲線C4上の■に位置する状態にある。 【0076】車速が上昇すると、クラッチ部材46に遠心力による切離し力Fcfが徐々に大きく作用して図9に示すように4輪駆動トルク容量Tc4は2次曲線C4に沿って減少し、別に制御されて減少していたモータ駆動力と一致した曲線C4上の■の位置でモータ駆動力が4輪駆動トルク容量Tc4を上回るとクラッチ部材46は滑り始める(図10■参照)。 【0077】クラッチ部材46は滑り始めるとクラッチ部材46にヘリカルギアの噛合いによるギアスラスト力Fgsが作用することで、トルク容量Tcが変化して図9の下方の曲線C´に移行して曲線C´上に移る。 【0078】ギアスラスト力Fgsの作用でトルク容量Tcは一気に減少して0となると、曲線C´上の■の位置に至り、クラッチ部材46は完全解放される(図10■参照)。なおモータ34の駆動力は、4輪駆動トルク容量Tc4が0となるまでは作用しつづけた後、駆動を停止する。 【0079】車速がさらに上昇すると、遠心力による切離し力Fcfが増加し(図11■参照)、図9におけるトルク容量Tc=0の■の位置にある。斯かる状態から車速が低下すると、遠心力によるクラッチ部材46の切離し力Fcfが低下してクラッチ部材46は、スプリング力Fspにより互いに接近して引き摺りを始める(図11■参照)。 【0080】引き摺りを始めてもモータ34が駆動されていないのでギアスラスト力Fgsは働かず4輪駆動トルク容量Tc4が生じる。クラッチ部材46が引き摺りを始める時点は、4輪駆動トルク容量Tc4が生じるところで図9において曲線C4とTc=0の直線との交点■の位置にある。 【0081】すなわち加速時のクラッチ部材46が完全に解放される車速(図9の■の位置)よりも高い車速(図9の■の位置)で減速時のクラッチ部材16が引き摺りを生じる。 【0082】さらに減速すると、遠心力による切離し力Fcfの低下で4輪駆動トルク容量Tc4が上昇して4輪駆動トルク容量Tc4の曲線C4上を移動し、図9における回生トルクを上回った点■の位置であるクラッチ部材46の完全締結に至る(図11■参照)。 【0083】クラッチ部材46が完全締結に至れば後輪32の回転トルクは、プラネタリギアセット40が一体に回転される動力伝達機構33を介してモータ34の駆動軸に伝達されるので、モータ34を発電機として作動させて回生を行うことができる。 【0084】以上のようにクラッチ部材46が加速時に解放する車速と減速時に締結する車速には差があるため、所定車速の近傍での車両の走行時にクラッチの解放・締結を頻繁に繰り返す所謂ハンチングを防止することができる。 【0085】次に別の実施の形態に係る4輪駆動車両60について図12にその動力伝達機構を示し説明する。本4輪駆動車両60は、モータ駆動はせずに内燃機関61により前輪62と後輪63とを共に駆動する構成のものである。 【0086】内燃機関61から変速機64を介して前輪62に駆動力を伝達するとともに、変速機64からプロペラシャフト65により車体後方へ駆動力を伝達する動力伝達系を有し、前後方向に指向したプロペラシャフト65は前後方向を回転軸方向に配設された前記プラネタリギアセット10(同じ符号を用いる)のサンギア11に連結されている。 【0087】出力のキャリア14の回転中心軸14aは、ベベルギア66に一体に連結され、同ベベルギア66に噛合するベベルギア67が差動ギア機構68を駆動して同差動ギア機構68により左右の後輪63に駆動力を振り分け伝達する。 【0088】本動力伝達機構は以上のように構成されており、内燃機関61の駆動力は常時前輪62に伝達されるが、プラネタリギアセット10を介して伝達される後輪63には車速に応じて自動的に動力伝達が遮断・締結される。その際に所定車速の近傍での車両の走行時にクラッチの解放・締結を頻繁に繰り返す所謂ハンチングを防止することができる。 【0089】上記実施の形態の変形例を図13に示す。本4輪駆動車両70は、前記4輪駆動車両60におけるプロペラシャフト65とプラネタリギアセット10の配置を交換した構成であり、部材の符号は同じものを用いる。 【0090】プロペラシャフト65より前方にプラネタリギアセット10を配置し、プラネタリギアセット10のサンギア11に変速機64の駆動力が入力される構成であり、プラネタリギアセット10を車体前方に配置することができる。 【0091】また別の実施の形態に係る4輪駆動車両80は、図14に動力伝達機構を示すように変速機(図示せず)の出力がプロペラシャフト81に伝達され、プロペラシャフト81の後端にベベルギア82を有し、同ベベルギア82に噛合するベベルギア83が前記プラネタリギアセット10(同じ符号を用いる)のサンギア11に一体に連結されている。 【0092】したがってプラネタリギアセット10は回転軸が左右方向に指向している。そしてプラネタリギアセット10の出力であるキャリア14の回転中心軸14aは減速機構のギア84の回転軸に一体に連結され、ギア84は減速機構の他方のギア85に噛合し、ギア85は差動ギア機構86の入力になり差動ギア機構86を介して後輪87に駆動力が伝達される。 【0093】前記4輪駆動車両60,70のプラネタリギアセット10の回転軸方向を前後方向から左右方向に変えてプラネタリギアセット10の姿勢を変更した構造で減速機構も備えている。 【0094】同動力伝達機構の変形例を図15に示す。本4輪駆動車両90は、プロペラシャフト91の出力をベベルギア92,93を介してプラネタリギアセット10のサンギア11に伝達しているが、同サンギア11は後輪95の車軸95aに回転自在に軸支されている。そしてキャリア14が直接差動ギア機構94の入力となっている。 【0095】以上のように本4輪駆動車両90の動力伝達機構は、減速機構を備えないが、プラネタリギアセット10が後輪95の車軸95aの周りに差動ギア機構94とともに設けられているので、コンパクト化が図れる。 【0096】以上の4輪駆動車両60,70,80,90においてはサンギア11を入力とするプラネタリギアセット10を適用させていたが、プラネタリギアセット10の代わりにリングギア43を入力とする前記プラネタリギアセット40を用いることも可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社 【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
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| 【出願日】 |
平成14年3月20日(2002.3.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067840 【弁理士】 【氏名又は名称】江原 望 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−267076(P2003−267076A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月25日(2003.9.25) |
| 【出願番号】 |
特願2002−77577(P2002−77577) |
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