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【発明の名称】 車両の走行制御装置
【発明者】 【氏名】田端 淳
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】減速後の再加速時の走行性能を損なうことなく、減速時に所定の制動性能が得られるようにする。

【解決手段】「D」ポジションでの前進走行中のアクセルOFFによる減速時に、再加速時の要求加速度予測量に基づいて自動変速機を変速制御するとともに、シフトレバー操作で設定された減速時の目標減速度に基づいて必要制動量を算出し、駆動力源ブレーキやホイールブレーキの制動制御を行うようにしたため、アクセルOFF→ONで再加速する際の走行性能を損なうことなくアクセルOFF時に所望の制動性能が得られるようになる。特に、ホイールブレーキを制動制御して減速するため、駆動力源ブレーキのみで減速する場合に比較して、自動変速機の変速段が変速比が小さい高速側の変速段の場合でも十分な制動性能を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、減速時に、再加速時の要求走行性能に基づいて前記変速機の変速比を選択し、減速時の要求性能に基づいてホイールブレーキの制動制御を行う減速時変速制動手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、減速時に、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて前記変速機の変速比を選択し、減速時の要求性能に基づいて制動制御を行う減速時変速制動手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項3】 前記減速時変速制動手段は、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて予め定められた変速線を用いて前記変速機の変速比を選択するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】 前記再加速時の要求走行性能は要求加速度予測量であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】 前記減速時変速制動手段は、前記減速時の要求性能に対して前記変速機の変速比に応じて駆動力源ブレーキによって得られる制動力の不足分をホイールブレーキで補うものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項6】 前記減速時の要求性能は減速度であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項7】 前記再加速時の要求走行性能は、運転者によって設定されている走行モードを考慮したものであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項8】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系が共通の操作部材により連続して操作可能であることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項9】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系は前記変速比または変速レンジ毎に前記目標制動性能を設定できるように位置的に相関を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項10】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系の操作方向は互いに相違することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項11】 前記両操作系の操作方向は互いに直交することを特徴とする請求項10に記載の車両の走行制御装置。
【請求項12】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、マニュアル設定状態で前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態から脱した場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項13】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、車両のメインスイッチがOFF操作された場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項14】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、マニュアル設定状態で前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態から脱した場合でも、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を記憶して保持する目標制動性能記憶手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項15】 前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態とされた時に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする請求項14に記載の車両の走行制御装置。
【請求項16】 車両のメインスイッチがOFF操作された場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を前記目標制動性能記憶手段に記憶されているものを含めて解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする請求項14または15に記載の車両の走行制御装置。
【請求項17】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、車両のメインスイッチがOFF操作された場合でも、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を記憶して保持する目標制動性能記憶手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項18】 前記メインスイッチがON操作された場合に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする請求項17に記載の車両の走行制御装置。
【請求項19】 前記メインスイッチがON操作され、且つ前記第1の操作系が前記変速比または変速レンジの設定が可能なマニュアル設定状態とされた時に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする請求項17に記載の車両の走行制御装置。
【請求項20】 走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、該第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、前記第1の操作系によって前記変速比または変速レンジが変更された場合に、該変更前に前記第2の操作系で設定された目標制動性能に基づいて、新たな変速比または変速レンジにおける目標制動性能を相関設定する相関設定手段を有することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項21】 前記減速時は、走行中のアクセルOFFによる減速時であることを特徴とする請求項1〜20の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両の走行制御装置に係り、特に、減速後の加速時の走行性能を損なうことなく減速時に所望の制動性能が得られる走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】走行用の駆動力源と変速機とを備えているとともに、減速時には駆動力源ブレーキによって所定の制動力が得られる車両が広く知られている。駆動力源ブレーキは、例えば駆動力源としてエンジンを有する場合には、そのフリクションロスやポンピング作用によって制動力(エンジンブレーキ)が得られ、電動モータで走行する電気自動車の場合には、電動モータの回生制御で制動力を得ることができ、変速機の変速比が大きい程大きな制動力が得られる。そして、未だ公知ではないが、本願出願人が先に出願した特願2000−597152号には、シフトレバーやスイッチ操作により、駆動力源ブレーキによる減速時の減速度を調整できるようにした車両の走行制御装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提案では駆動力源ブレーキによる減速時の減速度の調整は可能であるが、減速から加速へ移行した時にエンジン回転速度が低いと十分な加速性能が得られない一方、変速機の変速比が大き過ぎると、加速時にアクセルの踏込みに対して大きな駆動力ショックが発生する可能性があるなど、減速後の加速時に所望の走行性能が得られなくなる可能性があった。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、減速後の再加速時の走行性能を損なうことなく減速時に所定の制動性能が得られるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、減速時に、再加速時の要求走行性能に基づいて前記変速機の変速比を選択し、減速時の要求性能に基づいてホイールブレーキの制動制御を行う減速時変速制動手段を有することを特徴とする。
【0006】第2発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、減速時に、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて前記変速機の変速比を選択し、減速時の要求性能に基づいて制動制御を行う減速時変速制動手段を有することを特徴とする。
【0007】第3発明は、第1発明または第2発明の車両の走行制御装置において、前記減速時変速制動手段は、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて予め定められた変速線を用いて前記変速機の変速比を選択するものであることを特徴とする。
【0008】第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両の走行制御装置において、前記再加速時の要求走行性能は要求加速度予測量であることを特徴とする。
【0009】第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの車両の走行制御装置において、前記減速時変速制動手段は、前記減速時の要求性能に対して前記変速機の変速比に応じて前記駆動力源ブレーキによって得られる制動力の不足分をホイールブレーキで補うものであることを特徴とする。
【0010】第6発明は、第1発明〜第5発明の何れかの車両の走行制御装置において、前記減速時の要求性能は減速度であることを特徴とする。
【0011】第7発明は、第1発明〜第6発明の何れかの車両の走行制御装置において、前記再加速時の要求走行性能は、運転者によって設定されている走行モードを考慮したものであることを特徴とする。
【0012】第8発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系が共通の操作部材により連続して操作可能であることを特徴とする。
【0013】第9発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系は前記変速比または変速レンジ毎に前記目標制動性能を設定できるように位置的に相関を有することを特徴とする。
【0014】第10発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、両操作系の操作方向は互いに相違することを特徴とする。
【0015】第11発明は、第10発明の車両の走行制御装置において、前記両操作系の操作方向は互いに直交することを特徴とする。
【0016】第12発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、(a)マニュアル設定状態で前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、(b) 前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態から脱した場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする。
【0017】第13発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、(a)前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、(b) 車両のメインスイッチがOFF操作された場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする。
【0018】第14発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、(a)マニュアル設定状態で前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、(b) 前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態から脱した場合でも、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を記憶して保持する目標制動性能記憶手段を有することを特徴とする。
【0019】第15発明は、第14発明の車両の走行制御装置において、前記第1の操作系が前記マニュアル設定状態とされた時に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする。
【0020】第16発明は、第14発明または第15発明の車両の走行制御装置において、車両のメインスイッチがOFF操作された場合には、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を前記目標制動性能記憶手段に記憶されているものを含めて解除する制動性能設定解除手段を有することを特徴とする。
【0021】第17発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、(a)前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、(b) 車両のメインスイッチがOFF操作された場合でも、前記第2の操作系で設定された目標制動性能を記憶して保持する目標制動性能記憶手段を有することを特徴とする。
【0022】第18発明は、第17発明の車両の走行制御装置において、前記メインスイッチがON操作された場合に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする。
【0023】第19発明は、第17発明の車両の走行制御装置において、前記メインスイッチがON操作され、且つ前記第1の操作系が前記変速比または変速レンジの設定が可能なマニュアル設定状態とされた時に、前記目標制動性能記憶手段に記憶されている前記目標制動性能を自動的に再設定する目標制動性能自動設定手段を有することを特徴とする。
【0024】第20発明は、走行用の駆動力源と変速機とを備えている車両において、(a)前記変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているとともに、(b) 前記第1の操作系によって前記変速比または変速レンジが変更された場合に、その変更前に前記第2の操作系で設定された目標制動性能に基づいて、新たな変速比または変速レンジにおける目標制動性能を相関設定する相関設定手段を有することを特徴とする。
【0025】第21発明は、第1発明〜第20発明の何れかの車両の走行制御装置において、前記減速時は、走行中のアクセルOFFによる減速時であることを特徴とする。
【0026】
【発明の効果】第1発明では、減速時に、再加速時の要求走行性能に基づいて変速機の変速比が選択され、減速時の要求性能に基づいてホイールブレーキの制動制御が行われるため、アクセルOFF→ONなどで再加速する際の走行性能を損なうことなく減速時に所望の制動性能が得られるようになる。特に、ホイールブレーキを制動制御して減速するため、駆動力源ブレーキによって減速する場合に比較して、変速機の変速比が小さい場合でも十分な制動性能を得ることができる。
【0027】第2発明では、減速時に、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて変速機の変速比が選択され、減速時の要求性能に基づいて制動制御が行われるため、アクセルOFF→ONなどで再加速する際の走行性能を損なうことなく減速時に所望の制動性能が得られるようになる。特に、車速と再加速時の要求走行性能とに基づいて変速機の変速比が選択されるため、車速に応じて適切な変速比が設定されるようになり、再加速する際に運転者の所望通りの走行性能が得られるようになる。
【0028】第5発明では、変速機の変速比に応じて駆動力源ブレーキによって得られる制動力の不足分をホイールブレーキで補うようになっているため、駆動力源ブレーキだけで減速する場合に比較して、変速機の変速比が小さい場合でも十分な制動性能を得ることができる。
【0029】第7発明では、再加速時の要求走行性能が、運転者によって設定されている走行モードを考慮して定められるため、運転者の意図に一層適合した変速比が選択されるようになり、運転者の意図通りの走行性能が得られるようになる。
【0030】第8発明〜第20発明では、変速機の変速比または変速レンジを設定する第1の操作系と、その第1の操作系とは別に減速時の目標制動性能を設定する第2の操作系と、を備えているため、第1発明や第2発明と同様にアクセルOFF→ONなどで再加速する際の走行性能を損なうことなく減速時に所望の制動性能が得られるようになる。
【0031】また、第8発明では、前記両操作系が共通の操作部材により連続して操作可能で、第9発明では、前記両操作系が変速比または変速レンジ毎に目標制動性能を設定できるように位置的に相関を有するため、何れも優れた操作性が得られ、変速機および目標制動性能の両設定操作を容易且つ迅速に行うことができる。第10発明では、前記両操作系の操作方向が互いに相違するため、誤操作が抑制されて操作性が向上する。特に第11発明では、両操作系の操作方向が互いに直交するため、誤操作が一層効果的に抑制される。
【0032】第12発明では、第1の操作系がマニュアル設定状態から脱した場合、例えば動力伝達を遮断するニュートラル状態や、総ての変速範囲で自動的に変速する自動変速状態などへ切り換えられた場合等には、第2の操作系で設定された目標制動性能が解除される。これは、減速時において運転者が所望する制動性能は、山道走行か平坦路走行かなどの走行条件や環境によって異なるため、マニュアル設定状態から脱した場合には目標制動性能を一旦解除し、再びマニュアル設定状態として走行する際には、その時の走行条件等に応じて改めて目標制動性能を設定し直すようにした方が、運転者に違和感を生じさせる可能性が少ない場合が考えられるからである。
【0033】第13発明では、車両のメインスイッチ(例えばイグニッションスイッチなど)がOFF操作された場合に、第2の操作系で設定された目標制動性能が解除される。これは、減速時において運転者が所望する制動性能は、走行条件や環境、運転者の好みなどによって異なるため、メインスイッチがOFF操作された場合には目標制動性能を解除し、メインスイッチをON操作して再び走行する際には、その時の走行条件や運転者の好み等に応じて改めて目標制動性能を設定し直すようにした方が、運転者に違和感を生じさせる可能性が少ない場合が考えられるからである。
【0034】第14発明では、第1の操作系がマニュアル設定状態から脱した場合でも、第2の操作系で設定された目標制動性能が記憶して保持されるため、例えば第15発明のように第1の操作系が再びマニュアル設定状態とされた時に、その目標制動性能が自動的に再設定されるようにすることにより、目標制動性能を一々設定し直す必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、走行条件や環境が略同じであれば減速時において運転者が所望する制動性能も略同じであるため、例えば信号待ちなどで一時的にニュートラル状態とされた後、再びマニュアル設定状態として走行する場合には、目標制動性能がそのまま維持されるようにすることが望ましいのである。また、第16発明では、メインスイッチがOFF操作された場合には、第2の操作系で設定された目標制動性能が目標制動性能記憶手段に記憶されているものを含めて解除されるため、第13発明と同様の効果が得られる。
【0035】第17発明では、車両のメインスイッチがOFF操作された場合でも、第2の操作系で設定された目標制動性能が記憶して保持されるため、例えば第18発明や第19発明のようにメインスイッチが再びON操作された場合や、メインスイッチがON操作され、且つ第1の操作系がマニュアル設定状態とされた時に、その目標制動性能が自動的に再設定されるようにすることにより、目標制動性能を一々設定し直す必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、走行条件や環境が略同じであれば減速時において運転者が所望する制動性能も略同じであるため、メインスイッチがOFF操作された場合でも、同じ運転者が運転する場合には目標制動性能がそのまま維持されるようにすることが望ましいのである。
【0036】第20発明では、第1の操作系によって変速比または変速レンジが変更された場合に、その変更前に第2の操作系で設定された目標制動性能に基づいて、新たな変速比または変速レンジにおける減速時の目標制動性能が相関設定されるため、変速比や変速レンジを変更する毎に目標制動性能を一々設定する必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、変速比や変速レンジが相違しても、減速時において運転者が所望する制動性能の傾向は同じ場合が多いため、何れかの変速比または変速レンジで設定された目標制動性能に基づいて他の変速比または変速レンジにおける目標制動性能を設定しても、運転者に違和感を生じさせる可能性は小さいのである。
【0037】
【発明の実施の形態】走行用の駆動力源は、燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のエンジンや、電気エネルギーで動力を発生する電動モータ、或いはそれ等の両方を用いて走行するものなど、種々の態様が可能である。変速機は、変速比を段階的に変化させる遊星歯車式や2軸噛合式等の有段変速機であっても良いし、変速比を連続的に変化させることができるベルト式やトロイダル式等の無段変速機であっても良い。
【0038】第1発明の減速時変速制動手段は、ホイールブレーキを制動制御して所定の制動力を発生させるものであるが、エンジンブレーキや回生制動などの駆動力源ブレーキを併用することもできる。第2発明の減速時変速制動手段は、必ずしもホイールブレーキを用いる必要はなく、駆動力源ブレーキのみを用いて所定の制動力を発生させるものでも良い。エンジンブレーキは、スロットル弁開度や吸排気バルブの開度などを制御することにより、ポンピング作用による回転抵抗、更には制動力を調整することが可能であり、モータジェネレータの場合は、回生制動トルクを制御することによって制動力を調整することができる。なお、駆動力源とは別に設けられた発電機(ジェネレータ)やモータジェネレータを発電制御して制動力を発生させるなど、駆動力源ブレーキやホイールブレーキ以外の制動作用を有する種々の装置を用いることも可能で、駆動力源ブレーキは必ずしも必須ではない。
【0039】エンジンブレーキを制御する上で、吸気弁や排気弁として電気的に開閉制御可能な電動開閉弁を用いたり、スロットル弁開度を電気的に制御できる電子スロットル弁を用いたりすることが望ましい。電動開閉弁は、例えば開閉弁毎に設けられた電磁アクチュエータにより弁体を直線往復移動させて開閉したり、開閉弁毎に設けられたカムシャフトを電動モータにより回転駆動して弁を開閉したりするなど、個々の開閉弁毎にそれぞれ独立に開閉制御できるように構成することが望ましいが、複数の気筒の開閉弁に跨がって配設されたカムシャフトを電動モータにより回転駆動して所定のタイミングで連続的に開閉させるものでも良いなど、種々の態様が可能である。
【0040】第3発明の変速線は、減速時の専用の変速線を新たに設定しても良いが、アクセル操作量および車速等をパラメータとして変速比を自動的に切り換える通常の変速線を補正して、アクセル操作量の代わりに要求加速度予測量などを用いて変速比を決定するようにしても良い。他の発明の実施に際しては、アクセル操作量の代わりに要求加速度予測量などを用いて通常の変速線から求めた変速比を後から補正するようにしても良い。
【0041】第4発明の要求加速度予測量は、例えば運転者の過去の加速時におけるアクセル操作量(出力要求量)やその変化率などから学習して設定したり、スポーツモードやパワーモード、エコノミーモードなどの各種走行モードの設定状態から推定したり、先行車両に対して自動的に追従して走行する追従走行中の場合は要求加速度予測量を大きくしたりするなど、種々の態様を採用でき、それ等の加速要求が重なる程大きくすることもできる。再加速時の要求走行性能としては、上記予測量の他に、運転者がタッチパネルなどの設定装置を用いて予め車速や路面勾配等をパラメータとして変速比や変速段を設定するようにしても良い。
【0042】第7発明の走行モードは、走行性能を重視するパワーモードやスポーツモード、燃費を重視するエコノミーモード、先行車両に自動的に追従して走行する追従走行モードなどで、例えばパワーモード、スポーツモード、追従走行モードでは要求走行性能をより高くし、エコノミーモードでは要求走行性能を低くすれば良い。
【0043】第8発明以降の各発明では、第1の操作系で設定された変速比や変速レンジに応じて変速機を変速制御する変速制御手段や、第2の操作系で設定された目標制動性能で制動するように、減速時に駆動力源ブレーキやホイールブレーキなどの制動装置を制御する制動制御手段を有して構成されるが、第1の操作系は手動操作で機械的に変速段を切り換えるものでも良い。
【0044】第2の操作系で設定される目標制動性能は、例えば一定時間当たりの車速低下量である減速度が望ましいが、一定時間当たりの車速の低下率(=ΔV/V)や、減速させるための制動トルクの大きさ、などで制動性能を設定することもできる。減速度は、通常は車速が減少するように設定されるが、下り坂などで車速が増加しない程度に減速度=0を目標制動性能とすることも可能である。第1発明、第2発明の減速時の要求性能についても、減速度=0の場合を含む。
【0045】変速機の変速レンジは、車速やアクセル操作量などをパラメータとして自動的に変速が行われる変速範囲で、通常は変速比が小さい高速側の変速段が順次異なる複数の変速レンジが設定されるとともに、各変速レンジの最高速段でのみ駆動力源ブレーキが得られるようになっている。本発明においても、例えば各変速レンジの最高速段でのみ減速時に目標制動性能に従って所定の制動制御が行われるように構成されるが、その変速レンジの総ての変速段で目標制動性能に従って制動制御が行われるようにすることもできる。なお、変速比は無段変速機を考慮したもので、有段変速機の場合は変速段を意味する。
【0046】第8発明〜第11発明では、例えばシフトレバー等の操作部材が車両の前後方向へ操作されることにより変速機の変速比や変速レンジが変更されるとともに、共通の操作部材が車両の幅方向へ操作されることにより目標制動性能が変更されるように構成される。操作部材の車両幅方向の操作は、例えば両側に設けられた一対のスイッチによって検出されて、操作時間や操作回数に応じて目標制動性能を増減するとともに、操作部材はスプリングなどにより常には中央の原位置に保持されるように構成することが望ましい。どの変速比や変速レンジでも目標制動性能を設定できるように、両側のスイッチは、変速比や変速レンジを変更するための車両の前後方向の操作範囲の全域で、操作部材の左右操作を検出できるように設けられる。
【0047】第1の操作系のマニュアル設定状態は、例えばシフトレバー等の操作部材がマニュアル設定位置へ操作されることにより成立させられるように構成されるが、押釦スイッチなどでマニュアル設定状態が成立させられるようになっていても良いなど、種々の態様が可能である。そのマニュアル設定状態での変速比や変速レンジの設定は、例えば上記マニュアル設定位置に複数の変速比位置や変速レンジ位置が設けられ、それ等の位置へ操作部材を操作することにより油圧回路が切り換えられるなどして機械的に何れかの変速比や変速レンジが選択されるように構成されるが、押釦スイッチなどで何れかの変速比や変速レンジを電気的に選択できるようにするなど、種々の態様が可能である。
【0048】第1の操作系は、上記マニュアル設定状態とは別に、例えば総ての変速段を車速やアクセル操作量(出力要求量)などに応じて自動的に切り換える自動変速状態(自動変速位置など)や、動力伝達を遮断するニュートラル状態(ニュートラル位置など)等を選択できるように構成されるが、自動変速無しで常に運転者の手動操作で各変速段やニュートラル等を選択するものでも良い。
【0049】制動性能設定解除手段によって目標制動性能が解除された場合、減速時の減速は、例えば予め定められた標準状態(ノミナル状態)で行われるように構成される。標準状態は、例えば一定の標準制動性能、制動制御OFF、スロットル弁開度全閉によるエンジンブレーキなど、適宜定められる。標準制動性能を、変速比や車速、路面勾配などをパラメータとしてきめ細かく設定することもできるし、第2の操作系による目標制動性能の設定は、例えば予め定められた標準制動性能を一定量ずつ、或いは一定割合ずつ増減補正するように構成される。増加側の補正量と減少側の補正量を異なる大きさにすることも可能である。標準制動性能が変速比毎に定められている場合、第9発明のように変速比または変速レンジ毎に目標制動性能を変更できるようにしても良いが、他の発明の実施に際しては、何れかの変速比や変速レンジにおいて行われた第2の操作系の操作に従って、総ての変速比または変速レンジにおける標準制動性能を一律に変更して目標制動性能が設定されるようにしても良い。これは、実質的に第20発明の一実施態様である。
【0050】第9発明では、変速比や変速レンジ毎に目標制動性能を設定できるようになっているが、他の発明の実施に際しては、変速比や変速レンジとは無関係に一定の目標制動性能を設定するようになっていても良い。すなわち、変速比や変速レンジについてはアクセルOFF→ONなどの再加速時の要求走行性能に応じて第1の操作系で設定し、目標制動性能については、減速時の制動性能に応じて変速比や変速レンジとは無関係に第2の操作系で設定するのである。
【0051】第12発明、第13発明、第16発明の目標制動性能設定解除手段は、第1の操作系がマニュアル設定状態から脱した時やメインスイッチがOFF操作された時に目標制動性能を解除するものでも良いが、少なくとも次にマニュアル設定状態になるなどして減速時の制動制御が行われる際に、手動で設定された目標制動性能が解除されて予め定められた標準制動性能などに基づいて制動制御が行われるようになっておれば良い。
【0052】第15発明、第18発明、第19発明では、目標制動性能記憶手段に記憶された目標制動性能を自動的に再設定するようになっているが、運転者が手動操作(スイッチ操作など)で記憶手段から読み出して手動で設定するようにしても良い。複数の運転者が同じ車両を使用する場合は、例えば運転者を識別するIDコードなどと関連付けて目標制動性能を記憶しておき、運転者毎に目標制動性能が設定されるようにすることが望ましい。
【0053】車両のメインスイッチは、例えばエンジン駆動車両のイグニッションスイッチなどで、電気自動車では車両の制御システムをアクティブにするスイッチなどであり、車両を使用する上で最も基本となるスイッチを意味する。
【0054】第21発明のアクセルOFFは、運転者が出力要求量に応じて操作するアクセルペダルなどのアクセル操作部材の操作量が0、言い換えれば運転者の出力要求が0のことであり、それに伴って駆動力源の出力が小さく(0を含む)されるため、一般には走行抵抗などで車速が低下する。また、「アクセルOFFによる減速時」とは、「アクセルOFFによって減速する時」の意味で、必ずしも実際に車速が低下していることを要件とするものではなく、例えば走行中のアクセルOFF時には、実際に車速が低下しているか否かに拘らず、減速時として本発明の減速時変速制動手段による制御を実行すれば良い。他の発明の「減速時」も、同様に「減速する時」乃至は「減速要求時」を意味している。
【0055】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置8の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されているエンジン10の出力は、入力クラッチ12、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記入力クラッチ12とトルクコンバータ14との間には、回転機として電動モータおよび発電機として機能するモータジェネレータ(MG)18が配設されており、上記エンジン10と共に走行用の駆動力源として用いられる。上記トルクコンバータ14は、入力クラッチ12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。
【0056】上記自動変速機16は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速部32と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速部34とを備えている。第1変速部32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0057】第2変速部34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
【0058】上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3および中間軸48に一体的に連結されている。そして、リングギヤR0と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2とリングギヤR0との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0059】キャリアK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0060】以上のように構成された自動変速機16では、例えば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比(入力軸22の回転速度Nin/出力軸46の回転速度Nout)が順次異なる前進5段(1st〜5th)の変速段のいずれかに切り換えられる。図2において「○」は係合で、空欄は解放を表し、「◎」はエンジンブレーキやモータジェネレータ18の回生制動による駆動力源ブレーキ時の係合を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。なお、第4変速段「4th」および第5変速段「5th」は、常に駆動力源ブレーキが作用する。前記クラッチC0〜C2、およびブレーキB0〜B4は何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0061】図3は、運転席50の近傍の各種操作装置や表示装置などを説明する概略図で、運転席50の左右のセンターフロア部およびサイドドア52にはそれぞれシフト操作装置54、56が設けられており、前方のインストルメントパネル58には液晶パネル等の表示装置60が設けられて各種の情報を表示するようになっている。シフト操作装置54、56は基本的に同じ構成で、運転者の好みに応じてどちらでも操作できるものであり、操作部材として単一のシフトレバー62を備えており、前方の「R」ポジションへ倒されることにより前記自動変速機16は後進変速段「Rev」が成立させられ、手前の「D」ポジションへ倒されることにより前進走行モードが成立させられる。前進走行モードでは、自動変速機16の総ての前進変速段すなわち第1変速段「1st」〜第5変速段「5th」を用いて、例えば図6に示すように車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された複数の変速線から成る変速マップ(変速条件)に従って変速制御が行われ、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられる。また、右側の「−」位置へ倒されると目標減速度MGが大きくされ、左側の「+」位置へ倒されると目標減速度MGが減少させられる。シフトレバー62は、常にはスプリング等の付勢手段によって左右方向の中央の原位置に保持されるようになっており、「−」位置または「+」位置への操作回数に応じて目標減速度MGが増減させられる。目標減速度MGは、アクセルOFFによる減速時の目標制動性能で、単位時間当たりの車速Vの低下量であり、アクセルOFFによる減速時の要求性能である。シフト操作装置54、56にはまた、押釦式のP選択釦64およびN選択釦66が配設されており、P選択釦64が押圧操作されることによって自動変速機16は駐車用のパーキング「P」が成立させられ、N選択釦66が押圧操作されることによって動力伝達を遮断するニュートラル「N」が成立させられる。なお、図3の符号68はステアリングホイールである。
【0062】図4は、本実施例の車両用動力伝達装置8が備えている制御系統を説明するブロック線図で、電子制御装置(ECU)70に入力される信号およびその電子制御装置70から出力される信号を例示したものであり、車速(V)センサ72、エンジン回転速度(NE)センサ74、タービン回転速度(NT)センサ76、バッテリ蓄電量(SOC)センサ78、アクセル操作量(θACC )センサ80、スロットル弁開度(θTH)センサ82、シフトポジションセンサ84、減速度設定(−)スイッチ88、減速度設定(+)スイッチ90、フットブレーキスイッチ92、イグニッションスイッチ94、オートクルーズスイッチ96、スポーツモードスイッチ98、エコノミーモードスイッチ100、スノーモードスイッチ102などから、車速V(出力軸46の回転速度Nout に対応)、エンジン回転速度NE、タービン回転速度NT(入力軸22の回転速度Ninと同じ)、モータジェネレータ18によって充電されるとともに力行時に電気エネルギーを供給するバッテリの蓄電量(残量)SOC、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量(運転者の出力要求量)θACC 、電子スロットル弁116のスロットル弁開度θTH、シフトレバー62等によるシフトポジションの選択状態、シフトレバー62の「−」位置または「+」位置への操作の有無、フットブレーキのON・OFF、車両のメインスイッチであるイグニッションスイッチ94のON・OFF、オートクルーズ等の走行モードの選択状態、などを表す信号が供給されるようになっている。シフトポジションセンサ84は、シフトレバー62によって選択される「R」ポジション、「D」ポジションの他、P選択釦64によって選択される「P」ポジション、N選択釦66によって選択される「N」ポジションを検出するもので、複数のON・OFFスイッチなどで構成される。シフトレバー62の「−」位置または「+」位置への操作の有無を検出する減速度設定(−)スイッチ88および減速度設定(+)スイッチ90は、シフトレバー62と共に、アクセルOFFによる減速時の要求性能すなわち目標制動性能を設定する制動性能設定装置として機能している。オートクルーズスイッチ96は、一定車速で走行するとともに先行車両が存在する場合には一定の距離を隔てて自動的に追従するオートクルーズ走行を選択するもので、スポーツモードスイッチ98は図6の変速マップの変速線を高車速側へずらすなどして高い走行性能が得られるスポーツモードを選択するもので、エコノミーモードスイッチ100は図6の変速マップの変速線を低車速側へずらすなどして燃費に優れたエコノミーモードを選択するものである。
【0063】上記電子制御装置70は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、モータ用コントローラ110によりモータジェネレータ18の力行制御や回生制御を行ったり、点火装置112や燃料噴射装置114、電子スロットル弁116、電磁駆動弁118などによりエンジン10の出力制御やエンジンブレーキ制御を行ったり、図示しない油圧回路を切り換えるなどして前記クラッチC0〜C2、ブレーキB0〜B4の係合、解放状態を切り換えて自動変速機16の変速段を変更したり、ABSアクチュエータ120によりホイールブレーキ121の制動力制御を行ったり、前記表示装置60の目標減速度インジケータ122、システムインジケータ124などに目標減速度MGやハイブリッドシステムの作動状態などの各種の情報を表示したりする。電子スロットル弁116は、基本的には図5に示すようにアクセル操作量θACC に応じて開閉制御される。電磁駆動弁118は電気的に開閉制御可能な電動開閉弁で、吸気弁や排気弁を構成しており、アクセルOFF時にこの電動開閉弁118や上記電子スロットル弁116の開度を制御することにより、ポンピング作用による回転抵抗、すなわちエンジンブレーキを調整することができる。
【0064】図7は、前記減速度設定(−)スイッチ88および減速度設定(+)スイッチ90による目標減速度MGの設定制御を具体的に説明するフローチャートで、図8は、アクセルOFFによる減速時の変速制動制御を具体的に説明するフローチャートであり、何れも電子制御装置70による信号処理を主体として実行される。図7の各ステップS1〜S7は、アクセルOFFによる減速時の目標減速度設定手段として機能しており、図8のステップSS4〜SS10は減速時変速制動手段として機能しており、そのうちのステップSS5およびSS8を実行する部分はアクセルOFFによる減速時の変速制御手段として機能しており、ステップSS4、SS6、SS7、SS9、SS10を実行する部分はアクセルOFFによる減速時の制動制御手段として機能している。
【0065】図7のステップS1では、シフトレバー62が「D」ポジションへ操作されて前進走行モードが成立しているか否かを判断し、「D」ポジションであればステップS2以下を実行するが、「D」ポジションでない場合にはステップS7で目標減速度MGをキャンセル(解除)する。ステップS2では、シフトレバー62が「−」位置へ倒されて減速度設定(−)スイッチ88からON信号が供給されたか否かを判断し、ON信号が供給された場合にはステップS3で目標減速度MGを増大する。ステップS2の判断がNO(否定)の場合は、ステップS4でシフトレバー62が「+」位置へ倒されて減速度設定(+)スイッチ90からON信号が供給されたか否かを判断し、ON信号が供給された場合にはステップS5で目標減速度MGを減少させる。そして、このようにして目標減速度MGが増減させられた場合は、ステップS6でその目標減速度MGをRAM等の設定値記憶装置に記憶するとともに前記目標減速度インジケータ122に表示する。
【0066】上記目標減速度MGは、初期状態では設定されておらず、シフトレバー62が「−」位置または「+」位置へ最初に操作されることにより予め定められたノミナル値(基準減速度)が設定され、その後に「−」位置または「+」位置へ操作されることにより図7のフローチャートに従って増減させられる。1回の操作による増大量および減少量は同じであっても良いが、下り坂などでの減速要求は一般にきめ細かく設定することが望まれるため、増大量を減少量よりも小さくするなど、種々の態様が可能である。また、例えば車速Vが高い程大きな減速度となるようにするなど、車速Vや道路の勾配などの走行条件をパラメータとして減速度を設定する演算式やマップなどで目標減速度MGが定められるようにしても良い。本実施例では、「−」位置または「+」位置への操作毎に段階的に増減させられるが、「−」位置または「+」位置にシフトレバー62を保持している時間に応じて目標減速度MGの増減量が定められるようにしても良い。また、シフトレバー62が「D」ポジションから脱した場合には、ステップS7で目標減速度MGがキャンセルされるため、再び「D」ポジションへ操作された場合には改めて目標減速度MGを設定し直す必要があるが、例えば電源OFFでも記憶内容を保持できる不揮発性メモリ等の記憶装置126(図4参照)に目標減速度MGを記憶しておくことにより、シフトレバー62が「D」ポジションから脱したりイグニッションスイッチ94がOFF操作されたりした場合でも目標減速度MGが保持され、運転者が積極的に解除スイッチなどでキャンセルしない限り目標減速度MGが維持されるようにしても良い。「+」位置への所定回数の操作で目標減速度MGがキャンセルされるようにしても良い。
【0067】一方、図8のステップSS1では、シフトレバー62が「D」ポジションへ操作されて前進走行モードが成立しているか否かを判断し、「D」ポジションであればステップSS2でアクセルOFFか否かを、アクセル操作量θACC が略0の所定値以下か否か、或いはアクセル操作量センサ80が内蔵しているアイドルスイッチがONか否かなどによって判断する。アクセルOFFの場合は、続いてステップSS3で減速要求有りか否か、すなわち目標減速度MGが設定されているか否かを判断する。そして、アクセルOFFで且つ減速要求有りの場合はステップSS4以下を実行するが、どちらかの判断がNO(否定)の場合は、ステップSS11で前記図6の変速マップに従って通常の変速制御を行う。この通常の変速制御は、第4変速段「4th」および第5変速段「5th」のみで駆動力源ブレーキが作用し、第1変速段「1st」〜第3変速段「3rd」では駆動力源ブレーキが得られないものである。
【0068】ステップSS4では、前記図7のステップS6で設定された目標減速度MGで減速するのに必要な制動量(車両制動トルクなど)を、走行抵抗に関する車速Vや路面勾配、車両重量などをパラメータとして求めるとともに、実際の減速度と目標減速度MGとの偏差に基づいてフィードバック補正する。実際の減速度と目標減速度MGとの偏差に基づくフィードバック制御だけで必要制動量を求めるようにしても良い。目標減速度MGが車速Vなどの走行条件をパラメータとして定められている場合は、その時の走行条件に応じて具体的な目標減速度MGを求めて必要制動量を算出する。
【0069】ステップSS5では、例えば図9のように車速Vおよび減速後の要求加速度予測量YAをパラメータとして予め定められた複数の変速線から成るアクセルOFFによる減速時の変速マップに従って目標変速段を決定する。この変速マップは、前記図6の変速マップと同様に車速Vが低くなったり要求加速度予測量YAが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられるようになっており、図6の変速マップを基準として設定されるようにしても良いが、この場合は総ての変速段「1st」〜「5th」で駆動力源ブレーキが得られる。また、要求加速度予測量YAは、アクセルOFF→ONの再加速時の要求走行性能で、運転者の過去の加速時におけるアクセル操作量θACC やその変化率などから学習して設定したり、スポーツモードの場合は要求加速度予測量YAを大きくしたり、エコノミーモードの場合は要求加速度予測量YAを小さくしたり、オートクルーズモードで追従走行中の場合は要求加速度予測量YAを大きくしたりするなどして求められ、それ等の加速要求が重なる程大きくされる。なお、オートクルーズモードでは常にアクセル操作量θACC が0であるが、スロットル弁開度θTHが開き制御されている時にはステップSS11の通常の変速制御が行われ、スロットル弁開度θTHが0の場合や所定の減速制御が行われている場合のみステップSS4以下が実行される。
【0070】ステップSS6では、上記ステップSS5で求められた目標変速段の変速比や車速Vに基づいて、駆動力源ブレーキによって得られる最大制動量を演算する。駆動力源ブレーキは、モータジェネレータ18の回生制御およびエンジンブレーキによって得られるもので、それ等の回転速度NM、NEや自動変速機16の変速比をパラメータとして制動量が求められ、この最大制動量がステップSS4で求めた必要制動量より小さい場合はその最大制動量がそのまま出力制動量とされるとともに、ステップSS7では、必要制動量から駆動力源ブレーキによって得られる最大制動量を引き算して、ホイールブレーキ121の出力制動量を算出する。図10は、目標減速度MGに対する駆動力源ブレーキおよびホイールブレーキ121の分担関係を例示したもので、目標減速度MGが大きくなる程、ホイールブレーキ121の分担割合が大きくなる。しかし、駆動力源ブレーキの最大制動量が必要制動量より大きい場合は、モータジェネレータ18による電気エネルギーの回収を優先して、エンジンブレーキの制動量を小さくするとともに、ホイールブレーキ121の出力制動量を0とする。必要に応じて入力クラッチ12を遮断したり、モータジェネレータ18の回生制御による制動量についても小さくしたりする。なお、バッテリの蓄電量SOCを考慮して、エンジンブレーキを優先させることもできる。
【0071】そして、次のステップSS8では、ステップSS5で決定した変速段になるように必要に応じて自動変速機16の変速制御を行うとともに、ステップSS9では、ステップSS6で設定した出力制動量に応じてモータジェネレータ18を回生制御したりエンジンブレーキを制御したりする。モータジェネレータ18による制動量は、回生制動トルクによって調整でき、エンジンブレーキは、電磁駆動弁118や電子スロットル弁116の開度を制御することによって調整することができる。また、ステップSS10では、ステップSS7で求めた出力制動量が得られるように、ABSアクチュエータ120によりホイールブレーキ121の油圧制御を行って制動力を制御する。
【0072】このように、本実施例のハイブリッド車両は、「D」ポジションでの前進走行中のアクセルOFFによる減速時に、再加速時の要求加速度予測量YAに基づいて自動変速機16の変速段が決定されるとともに、アクセルOFFによる減速時の要求性能すなわち目標減速度MGに基づいて、駆動力源ブレーキやホイールブレーキ121の制動制御が行われるため、アクセルOFF→ONで再加速する際の走行性能を損なうことなくアクセルOFFによる減速時に所望の制動性能が得られるようになる。特に、ホイールブレーキ121を制動制御して減速するため、駆動力源ブレーキのみで減速する場合に比較して、自動変速機16の変速段が変速比が小さい高速側の変速段の場合でも十分な制動性能を得ることができる。
【0073】また、車速Vと再加速時の要求加速度予測量YAとをパラメータとして定められた変速マップに従って、アクセルOFFによる減速時の自動変速機16の変速段が決定されるため、車速Vに応じて適切な変速段が設定されるようになり、アクセルOFF→ONで再加速する際に運転者の所望通りの走行性能が得られるようになる。
【0074】また、要求加速度予測量YAは、運転者によって設定されている走行モード、具体的にはスポーツモードやエコノミーモード、オートクルーズモードなどを考慮して求められるため、運転者の意図に一層適合した変速段が選択されるようになり、運転者の意図通りの走行性能が得られるようになる。
【0075】上記実施例は、第1発明〜第7発明、第21発明の実施例であり、次に、第8発明〜第13発明の実施例を説明する。なお、上記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0076】図11のシフト操作装置130は、前記シフト操作装置54、56の代わりに用いられるもので、操作部材としてのシフトレバー132は、略車両の前後方向に設定された駐車用の「P」ポジション、後進用の「R」ポジション、動力伝達を遮断する「N」ポジション、自動変速機16を前記図6の変速マップに従って自動的に切り換えながら前進走行するDレンジを成立させる「D」ポジション、自動的に切り換えられる変速段の範囲(変速範囲)が異なる複数の変速レンジを選択できるマニュアル設定状態を成立させる「B」ポジション、へ操作されるようになっている。「B」ポジションで選択可能な変速レンジは、図12に示すように最高速段、すなわち変速比の下限、が異なる4つの4レンジ、3レンジ、2レンジ、Lレンジで、それぞれその変速段の範囲で前記図6の変速マップに従って自動的に変速制御が行われるとともに、「B」ポジションの車両前側から後方へ向かうに従って、すなわち「D」ポジションから離間するに従って、4、3、2、Lの各変速レンジが設定される。本実施例では、シフトポジションセンサ84によって上記各シフトポジションと共に変速レンジの選択状態が検出されるようになっており、シフトレバー132およびシフトポジションセンサ84により変速レンジを設定する第1の操作系が構成されている。なお、図12の変速段の欄の丸付き数字は駆動力源ブレーキが作用することを意味しており、Dレンジは「D」ポジションで成立させられる。
【0077】図11の(a) はシフト操作装置130の全体を示す平面図で、(b) は「B」ポジションの拡大図であり、「B」ポジションの左右両側には「−」位置および「+」位置が設けられているとともに、シフトレバー132をそれ等の「−」位置および「+」位置、すなわち変速レンジの選択方向と直角な方向へ倒すことができるようになっている。シフトレバー132は、「B」ポジションの全域すなわち4、3、2、Lの総ての変速レンジ位置で「−」位置および「+」位置へ倒すことができるとともに、常にはスプリング等の付勢手段によって左右方向の中央の原位置に保持されるようになっている。シフトレバー132の「−」位置、「+」位置への操作の有無は、前記減速度設定(−)スイッチ88および減速度設定(+)スイッチ90により検出され、その操作回数に応じて目標減速度MGが増減させられるようになっており、シフトレバー132および減速度設定(−)スイッチ88、減速度設定(+)スイッチ90により、アクセルOFFによる減速時の目標制動性能を設定する制動性能設定装置、すなわち第2の操作系が構成されている。本実施例では第1の操作系および第2の操作系が共通の操作部材であるシフトレバー132によって連続的に操作可能で、変速レンジ毎に目標減速度MGを設定できるように位置的に相関を有し、且つ両操作系の操作方向が互いに直交するように定められているのである。
【0078】本実施例では、「B」ポジションの変速レンジ毎に目標減速度MGが設定されるとともに、選択された変速レンジに従って目標変速段が設定され、アクセルOFによる減速時には例えば前記図8と同様のフローチャートに従って、目標減速度MGで減速するように自動変速機16の変速段に応じて駆動力源ブレーキやホイールブレーキ121の制動制御が行われる。図13は、目標減速度MGおよび目標変速段の設定制御の一例を説明するフローチャートで、前記電子制御装置70の信号処理によって実行されるものであり、ステップR1−1では、「B」ポジションすなわち変速レンジを任意に設定できるマニュアル設定状態か否かを判断し、「B」ポジションの場合はステップR1−2以下を実行するが、「B」ポジションでない場合はステップR1−7を実行する。ステップR1−7では、シフトレバー132を「B」ポジションから「D」ポジションへ切換操作するB→Dシフトが行われたか否かを判断し、B→Dシフトでなければそのまま終了するが、B→Dシフトの場合はステップR1−8で目標減速度MGをノミナル値に戻す。ノミナル値は予め設定された標準制動性能で、変速レンジ毎に一定値が設定されても良いが、本実施例では例えば図14に実線で示すように車速Vが高い程大きな減速度となるように車速Vをパラメータとして定められている。このステップR1−8は、イグニッションスイッチ94がON→OFF切換操作されてステップR1−2の判断がYESとなった場合も実行され、目標減速度MGをノミナル値に戻すようになっており、第12発明、第13発明の制動性能設定解除手段として機能している。
【0079】「B」ポジションの場合に実行するステップR1−2では、イグニッションスイッチ94がOFFか否かを判断し、OFFの場合すなわちON→OFF切換操作が行われた場合には、前記ステップR1−8を実行して目標減速度MGをノミナル値に戻すが、OFFでない場合すなわちONの場合には、ステップR1−3で目標減速度MGの設定変更か否かを判断する。目標減速度MGの設定変更か否かは、シフトレバー132が「−」位置または「+」位置へ操作されて減速度設定(−)スイッチ88または減速度設定(+)スイッチ90からON信号が供給されたか否かによって判断され、何れかのON信号が供給された場合は、ステップR1−5で変速レンジ毎に目標減速度MGを増減するとともに、その新たな目標減速度MGをRAM等の設定値記憶装置に記憶して設定変更するとともに目標減速度インジケータ122に表示する。変速レンジ毎の目標減速度MGの設定や設定変更は前記図7と同様にして行われるが、図14に実線で示すように車速Vをパラメータとしてノミナル値が設定されている本実施例では、一点鎖線や点線で示すように全体的に増減させる。また、増加量αは減少量βより小さく、下り坂などでの目標減速度MGをきめ細かく設定できるとともに、速やかにノミナル値等に戻すことができるようになっている。車速Vの大きさに拘らず増加量α、減少量βはそれぞれ一定であるが、車速Vが高い程増加量α、減少量βを大きくするなど、車速Vをパラメータとして増加量αや減少量βが異なるようにしても良い。
【0080】上記ステップR1−3の判断がNOの場合、すなわち目標減速度MGの設定変更の要求が無い場合は、ステップR1−4で現在の目標減速度MGをそのまま維持する。そして、ステップR1−6では、現在の変速レンジの変速範囲内で前記図6の変速マップに従って目標変速段を設定する。自動変速機16は、アクセルON、OFFに拘らず、このステップR1−6で設定された目標変速段に従って変速制御される。
【0081】ここで、本実施例では自動変速機16の変速レンジの設定と、アクセルOFFによる減速時の目標減速度MGの設定とを、それぞれ独立に行うことができるため、アクセルOFF→ONで再加速する際の走行性能を損なうことなくアクセルOFFによる減速時に所望の制動性能が得られるようになる。
【0082】また、自動変速機16の変速レンジの設定と、アクセルOFFによる減速時の目標減速度MGの設定とを、共通のシフトレバー132を用いて連続して行うことができるとともに、変速レンジ毎に目標減速度MGを設定できるように各操作位置が位置的に相関を有して定められているため、優れた操作性が得られ、自動変速機16および目標減速度MGの両設定操作を容易且つ迅速に行うことができる。特に、変速レンジ設定時のシフトレバー132の操作方向(車両の前後方向)と、目標減速度MGの設定時のシフトレバー132の操作方向(車両の幅方向)とが、互い直交するように定められているため、誤操作が抑制されて操作性が一層向上する。
【0083】また、シフトレバー132が「B」ポジションから「D」ポジションへ切換操作されてマニュアル設定状態から脱すると、「−」位置または「+」位置へのシフトレバー操作(第2の操作系の操作)に従って設定された目標減速度MGがキャンセルされてノミナル値に戻されるため、目標減速度MGを一々元に戻す操作が不要であるとともに、目標減速度MGがそのまま維持されて次に「B」ポジションへ操作して走行する際に運転者に違和感を生じさせる恐れがない。すなわち、アクセルOFFによる減速時において運転者が所望する制動性能は、山道走行か平坦路走行かなどの走行条件や環境によって異なるため、マニュアル設定状態から脱した場合には目標減速度MGを一旦キャンセルし、再びマニュアル設定状態として走行する際には、その時の走行条件等に応じて改めて目標減速度MGを設定し直すようにした方が、運転者に違和感を生じさせる可能性が少ないのである。
【0084】また、イグニッションスイッチ94がOFF操作された場合も、目標減速度MGがキャンセルされてノミナル値に戻されるため、目標減速度MGを一々元に戻す操作が不要であるとともに、目標減速度MGがそのまま維持されて次にイグニッションスイッチ94をON操作して「B」ポジションで走行する際に運転者に違和感を生じさせる恐れがない。すなわち、アクセルOFFによる減速時において運転者が所望する制動性能は、走行条件や環境、運転者の好みなどによって異なるため、イグニッションスイッチ94がOFF操作された場合には目標減速度MGをキャンセルし、イグニッションスイッチ94をON操作して再び走行する際には、その時の走行条件や運転者の好み等に応じて改めて目標減速度MGを設定し直すようにした方が、運転者に違和感を生じさせる可能性が少ないのである。
【0085】図15は、第14発明、第15発明、第17発明、第18発明の実施例で、上記図13の代わりに用いられるフローチャートであり、ステップR2−7〜R2−10では図13のステップR1−3〜R1−6と同様にして目標減速度MGや目標変速段を設定する。ステップR2−1では、イグニッションスイッチ94がOFFからONへ切換操作されたか否かを判断し、OFF→ON切換操作された場合は、ON→OFF切換操作時にステップR2−12で記憶装置126に記憶された前回の目標減速度MGをステップR2−2で読み出し、RAM等の設定値記憶装置に再設定するとともに目標減速度インジケータ122に表示する。ステップR2−2は、第18発明の目標制動性能自動設定手段として機能している。
【0086】ステップR2−3では、「B」ポジションすなわちマニュアル設定状態が選択されているか否かを判断し、「B」ポジションでなければステップR2−11で、シフトレバー132を「B」ポジションから「D」ポジションへ切換操作するB→Dシフトか否かを判断する。そして、B→Dシフトの場合、すなわちマニュアル設定状態から脱した場合は、ステップR2−12でその時の目標減速度MGを記憶装置126に記憶する。ステップR2−12は、イグニッションスイッチ94がON→OFF切換操作されてステップR2−6の判断がYESとなった場合も実行され、その時の目標減速度MGを記憶装置126に記憶するようになっており、記憶装置126と共に第14発明、第17発明の目標制動性能記憶手段を構成している。
【0087】「B」ポジションの場合に実行するステップR2−4では、シフトレバー132を「D」ポジションから「B」ポジションへ切換操作するD→Bシフトか否かを判断し、D→Bシフトの場合すなわちマニュアル設定状態へ切り換えられた場合は、B→Dシフト時にステップR2−12で記憶装置126に記憶された前回の目標減速度MGをステップR2−5で読み出し、RAM等の設定値記憶装置に再設定するとともに目標減速度インジケータ122に表示する。ステップR2−5は、第15発明の目標制動性能自動設定手段として機能している。
【0088】また、ステップR2−6では、イグニッションスイッチ94がONからOFFへ切換操作されたか否かを判断し、ON→OFF切換操作された場合は、前記ステップR2−12を実行して、その時の目標減速度MGを記憶装置126に記憶するが、OFFでない場合すなわちONの場合はステップR2−7以下を実行する。
【0089】この場合は、B→Dシフトでマニュアル設定状態から脱した場合でも、「−」位置または「+」位置へのシフトレバー操作で設定された目標減速度MGが記憶装置126に記憶して保持され、D→Bシフトで再びマニュアル設定状態とされた時に、その記憶装置126に記憶された前回の目標減速度MGが自動的に再設定されるため、目標減速度MGを一々設定し直す必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、走行条件や環境が略同じであればアクセルOFFによる減速時において運転者が所望する制動性能も略同じであるため、例えば信号待ちなどで一時的にニュートラル状態とした後、再び「N」ポジションから「D」ポジションを経て「B」ポジションへ切換操作し、マニュアル設定状態として走行する場合には、目標減速度MGがそのまま維持されるようにすることが望ましいのである。
【0090】また、イグニッションスイッチ94がON→OFF切換操作された場合も、その時の目標減速度MGが記憶装置126に記憶して保持され、イグニッションスイッチ94のOFF→ON切換操作時に、記憶装置126に記憶された前回の目標減速度MGが自動的に再設定されるため、目標減速度MGを一々設定し直す必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、走行条件や環境が略同じであれば、アクセルOFFによる減速時において運転者が所望する制動性能は略同じであるため、イグニッションスイッチ94がOFF操作された場合でも、同じ運転者が運転する場合には目標減速度MGがそのまま維持されるようにすることが望ましいのである。
【0091】なお、上記実施例では、ステップR2−1でイグニッションスイッチ94のOFF→ON切換操作が検出されると、直ちにステップR2−2で前回の目標減速度MGを自動再設定するようになっているが、このステップR2−2を省略しても良い。すなわち、イグニッションスイッチ94がOFF→ON切換操作されるとともに、D→Bシフトが為されてステップR2−4の判断がYESになった段階で、ステップR2−5において前回の目標減速度MGを自動再設定するのである。この場合は、第19発明の実施例となる。
【0092】また、図16は第16発明の実施例で、上記図15に比較してステップR2−6を省略し、イグニッションスイッチ94のON→OFF切換操作時に目標減速度MGを記憶しないとともに、ステップR2−2の代わりにステップR2−13を実行し、イグニッションスイッチ94のOFF→ON切換操作時に、記憶装置126の記憶内容を含めて目標減速度MGとしてノミナル値を設定するようにした。ステップR2−13は、第16発明の制動性能設定解除手段として機能している。
【0093】本実施例では、「−」位置または「+」位置へのシフトレバー操作でRAM等の設定値記憶装置に記憶された目標減速度MGや、B→Dシフト時に記憶装置126に記憶された目標減速度MGが、イグニッションスイッチ94のOFF→ON操作時に何れもキャンセルされてノミナル値とされるため、目標減速度MGを一々元に戻す操作が不要であるとともに、目標減速度MGが維持されて運転者に違和感を生じさせる恐れがない。
【0094】図17は、第20発明の実施例で、上記図16に比較して、ステップR2−5とR2−7との間にステップR2−14、R2−15を設け、何れかの変速レンジで設定した目標減速度MGに応じて他の変速レンジでも目標減速度MGが自動的に類推設定されるようになっている点が相違する。すなわち、ステップR2−14で変速レンジが変更されたか否かを判断し、変速レンジが変更された場合はステップR2−15を実行し、例えば図18に示すように元の変速レンジにおける目標減速度MGに基づいて、新たな変速レンジでの目標減速度MGを自動的に設定するのである。図18は、所定の車速Vにおける目標減速度MGの類推設定の一例を説明する図で、元の変速レンジが3レンジで目標減速度MGがAの場合に、2レンジへ切換操作された場合には、その目標減速度MGとして、Aの値に基づいて定められるBを自動的に設定するのである。類推設定は、例えば各変速レンジで予め定められたノミナル値に対して、目標減速度MGが同じ割合になるようにしたり、変速レンジ毎に所定の重み付けを設けたりするなど、所定の相関を有するように演算式やマップなどで定められる。ステップR2−15は、第20発明の相関設定手段として機能している。
【0095】本実施例では、変速レンジが変更された場合に、その変更前の変速レンジで設定された目標減速度MGに基づいて、新たな変速レンジにおける目標減速度MGが自動的に類推設定されるため、変速レンジを変更する毎に目標減速度MGを一々設定する必要がなく、設定操作が容易になる。すなわち、変速レンジが相違しても、アクセルOFFによる減速時において運転者が所望する制動性能の傾向は同じ場合が多いため、何れかの変速レンジで設定された目標減速度MGに基づいて他の変速レンジにおける目標減速度MGを自動設定しても、運転者に違和感を生じさせる可能性は小さいのである。
【0096】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成14年2月19日(2002.2.19)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
【公開番号】 特開2003−237425(P2003−237425A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−41766(P2002−41766)